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カテゴリー「ソウル/R&B」の記事

2025年2月 6日 (木)

"More Stuff":これが私が買った最初のStuffのアルバムであった。

_20250205_0001 "More Stuff" Stuff(Warner Brothers)

本作がリリースされたのが1977年であったから,私はまだ高校1年だ。本作が私が買ったStuffとしては最初のものなのだが,購入したのが出てすぐだったか,少し後だったかは全然おぼえていない。いずれにしても,ロックからジャズへと聞く音楽を広げつつある時期か,もう少し前のことだったであろう。いずれにしても,このアルバムのミュージシャンがどの程度の人たちなのかなんてのは後からわかったことであって,当時はほとんど知る由もなかったのだ。当然,まだCornell DupreeとEric Galeの個性の違いすら分かっていなかったのだから私も若かった(笑)。しかし,その後,様々なジャンルのアルバムのクレジットにStuffのメンバーの名前を見ないことがないぐらいで,このバンドの意味合いは後付けで理解したようなものだった。

それはさておき,Stuffとして第2作となる本作にはプロデュースにVan McCoyが関わっている。Van McCoyと言えば,私の世代は「ハッスル」ってことになるが,その「ハッスル」にはCornell DupreeとChris Parker以外のStuffのメンツが関わっているという関係性からの縁ってところだろう。

この第2作にはヴォーカル・チューンも入っているのが第1作との違いで,よりソウル的な感覚が強くなっているところをリスナーがどう感じるかだろうが,久しぶりに聞いた感覚で言うと,例えばStevie Wonder作の"As"はもう少しソフトにやっていた記憶があったが,ちょっと違っていたのは私の中で第1作の"My Sweetness"の印象が強くなっていたからではないか。この辺りには前作のプロデュースがTommy Lipumaだったところもあり,今となっては私個人としてはStuffは第1作から聞くべきだったなぁと考えている。

もちろん,本作とて悪い出来ではなく,第1作同様のレベルだとは思うので星★★★★とするが,こうなると結局は好みの問題。フュージョン好きとしては第1作,R&B好きとしては本作って感じか。

Personnel: Cornell Dupree(g), Eric Gale(g), Richard Tee(p, key, vo), Gordon Edwards(b, vo), Steve Gadd(ds), Christopher Parker(ds), Genen Orloff(vln)

2024年12月10日 (火)

年末になってまたも届けられたRobert Glasperの"Apple Music Sessions(EP)"。

Apple-music-sessions "Apple Music Sessions(EP)" Robert Glasper(Loma Vista Recordings)

これまでもApple Music限定の音源をリリースしているRobert Glasperが12月に入ってリリースしたのがこの4曲のEP音源。Electric Lady Studioで収録されたライブ音源であるが,今回は映像付き。

今年リリースしてきた6月の"Let Go",9月の"Code Derivation",そして10月の"Keys to the City Volume One"はそれぞれ趣の異なるものであり,まさに変幻自在という感じであったが,今回は4人のミュージシャンによる無観客ライブである。そこで展開される音楽はまさにメロウ・グルーブであった。

正直なところ,強面のRobert Glasperからこのような音が繰り出されること自体にアンマッチな感覚はあるが,Robert Glasperがこれまで公開してきた音源を考えれば,こういうのも想定内になってしまうというところがこの人の凄いところだ。まさに尽きることのない創造力ってところ。まずは貼り付けた映像を見てもらえばわかるだろう。Robert Glasperが歌まで歌ってしまう"Never Too Late"の映像を貼り付けておこう。いやはや凄い人である。

Personnel: Robert Glasper(key, vo), Burniss Travis(b), Justin Tyson(ds), DJ Jahi Sundance(turntable)

2024年11月14日 (木)

Quincy Jonesの業績をA&M時代のベスト盤で振り返る。

_20241112_0001 "Greatest Hits" Quincy Jones (A&M)

Quincy Jonesがリーダーとしてリリースしたアルバムで,最もヒットしたのはA&Mレーベル時代だったろうと思う。リーダーとしての彼の業績を振り返るなら,4枚組ボックス・セットのDisc 4の方がその後のアルバムも含んでいるので,本来ならそっちを聞いてもよかったのだが,私としてはこちらの方が馴染み深いということもあってのチョイスとなった。

A&Mにはベスト盤を除いて"Walking in Space"から"The Dude(「愛のコリーダ」)"まで10枚のリーダー作があって,それらのアルバムから満遍なく選曲したのがこのベスト盤である。これが日本編集なら"Ironside"が絶対入っていただろうと思わせるが,その辺に彼我の嗜好もしくは指向の違いがあるように感じられて面白い。

Quincy Jonesはジャズ・ミュージシャンとしてキャリアをスタートしているから,ジャズのイメージが強いかもしれないが,このアルバムを聴いていると,早い時期から様々な音楽の要素を取り入れていて,元祖フュージョンみたいなところを強く感じた。そしてQuincy Jonesのアルバムの特徴としてはヴォーカリストの上手い使い方があると思える。インストに留まらないヴォーカルの付加は,確実に音楽の幅を広げたと思えるし,それがこの人のプロデュースの優れたところであった。Leon WareとかBenard Ighnerなんかを使ってしまうセンスそのものが,Quincy Jonesを偉人たらしめた要因だと思ってしまった。

そして後期のアルバムにおけるJames Ingramの登用によって,ポップ・センスは更に上がって,これは売れるよなぁと感心してしまうのであった。最後を飾る"Just Once"はやはり名曲中の名曲である。

このベスト盤を聞いていると,あれがない,これがないと言いたくなる部分もあるが,それでも十分楽しめるベスト盤であり,A&M時代の業績を振り返るには丁度よかった。面白かったのは初期から中期のアルバムにはRay Brownが共同プロデューサーとしてクレジットされていることであった。本作の冒頭の"Killer Joe"でも野太いベースを聞かせるRay Brownだが,Quincy Jonesとのつながりは相当深かったということを今更知った私である。

2024年10月15日 (火)

またまた出た!Robert GlasperのApple Music限定音源。ライブ版"Black Radio"の趣が最高なのだ。

Key-to-the-city-volume1 ”Keys to the City Volume One" Robert Glasper(Loma Vista Recordings)

ここのところ,Apple Music限定で音源を続々リリースするRobert Glasperだが,6月の"Let Go",9月の"Code Derivation"に続いて,早くも今年3作目のリリースとなったのが本作。毎度毎度企画を変えてくるというのも凄いが,本作はRobert Glasperがここのところ毎年連続出演するBlue Noteでのライブ音源をもとにしたもの。

Robert Glasperは"Robotober"と呼ばれる形で,10月にさまざまなメンツで1か月連続でBlue Noteに出演している(今年も出演中だ)が,こういうジャズ・クラブにおけるResidencyスタイルの出演は,Chick Coreaが始めたものをRobert Glasperが引き継いだってところか。そこでのライブ演奏を録りだめしたものを蔵出ししたというのがこの音源だ。

そして聞いてみると,これがまさに主題の通り,"Black Radio"シリーズに収められているような音楽をライブで再現したものという感じがする。Robert Glasperとゲストが生み出すグルーブが心地よいことこの上ない。ゲストも豪華だし,これはたまらん。お聴きになれる方は早い機会にお試しになることをお勧めしたくなるアルバムである。

細かいメンツは不明ながら,曲目とゲストは次の通り。前の2枚とは全く異なる趣で出してくるところは,まさに尽きることのない創造力である。Volume Oneということは続編も出てくるということだろうから,早く出してくれ~!と言いたくなる。ストリーミング・オンリーなので採点はしないが,これは好きだなぁ。

1. Step Into The Realm (feat. Black Thought), 2. Paint The World (feat. Thundercat), 3. Prototype (feat. Norah Jones), 4. Love You Down (feat. Meshell Ndegeocello), 5. Packt Like Sardines In A Crushd Tin Box, 6. Didn’t Find Nothing In My Blues Song Blues (feat. Esperanza Spalding), 7. One For Grew, 8. The Look Of Love (feat. T3 & Bilal), 9. Over (feat. Yebba)

2024年9月14日 (土)

O.V. Wrightのディープ・ソウルにしびれる。

_20240910_0003 "A Nickle and a Nail - and - Ace of Spades" O.V. Wright (Back Beat)

実に不思議なことだが,このブログにおいてWrightはWrightでもLizz Wrightはかなりの頻度で登場しているが,O.V. Wrightについては一度も記事化していないというのには我ながら驚いた。Hiレーベルのアルバムに加えて,ボックス・セットだって保有しているにもかかわらずだ。なんでやねん?

まぁそれはさておき,ボックス・セットの一枚である本作を久しぶりに聞いたが,聞いていて完全に痺れてしまった。70年代後半にHiレーベルで復活を遂げて,"Into Something (Can’t Shake Loose)"が話題になっていた頃は,まだ私はソウルの世界には到達していない。しかし,その後,年齢を重ねてソウルの良さにも触れる中で,O.V. Wrightの声は100%私の好みとは言えない部分もあるのだが,改めてこのアルバムを聞いて,そのディープな歌いっぷりの魅力を再確認した。

Willie Mithcellプロデュースの下,メンフィスでレコーディングされた本作は,これぞサザン・ソウルという感じで,実に素晴らしい。このアルバムを聞いていると最高!としか言えないではないか。これはマジでたまらん。ほかのアルバムも聞かねば。当然星★★★★★である。

Personnel: O.V. Wright(vo), Mobon "Teenie" Hodges(g), Leroy Hodges(b), Charles Hodges(p, org), Howard Grimes(ds), Wayne Jackson(tp), Andrew Love(ts), James Mitchell(bs), Ed Logan(ts), Rhodes Chalmers & Rhodes(vo)

本作へのリンクはこちら

2024年9月 8日 (日)

追悼,Sergio Mendes。

Sergio-mendes

Sergio Mendesが亡くなった。オーセンティックなブラジル音楽と言うよりも,よりポピュラーなかたちでブラジル音楽を世に広めたという意味で大きな足跡を残したと言っていい人であった。Sergio Mendes版の"Mas Que Nada"(曲を書いたのはJorge Benだ)は誰もが知っているだろうし,その音楽はレコードやCDでなくても,様々なメディアを通して聞く機会が多かったはずだ。

Sergio-mendes-timeless過去の演奏に加えて,私が驚いたのは2006年に出た"Timeless"であった。will i amをプロデューサーに迎え,ヒップホップ系も含めて,多彩なゲストを迎えて制作され,ブラジル音楽を現代風に再構築したこのアルバムの面白さ,あるいは進取の精神を失わないSergio Mendesに驚かされたのも懐かしい。そして,ここに収められたJohn Legendが歌った"Please Baby Don't"は,私がJohn Legendに痺れるきっかけとなったと言っても過言ではないのだ。そうした意味でも意義深い作品であった。

昨今,彼の音楽をフォローしていなかった私ではあるが,いずれにしても,さまざまな意味でブラジル音楽,ポピュラー音楽への貢献度の大きい人であったと思う。

R.I.P.

2024年8月29日 (木)

Netflixで観た「ポップスが最高に輝いた夜」:懐かしの"We Are the World"の裏側。

The-greatest-night-in-pop 「ポップスが最高に輝いた夜 ("The Greatest Night in Pop")」(’04,米,Netflix)

監督:Bao Nguyen

出演:Lionel Richie, Quincy Jones, Bruce Springsteen, Cyndi Lauper, Huey Lewis, Dionne Warwick And Many More

私たちの年代にとっては,"Do They Know It’s Christmas?"を契機とするチャリティ音楽,イベントはリアルタイムで触れているので実に懐かしい訳だが,英国発の"Do They Know It’s Christmas?"に触発されて,米国側で対応したのが"USA for Africa"であった。そこに参加したミュージシャンはロック,ポップ,ソウルの垣根を越えたまさにキラ星と言ってよい面々が揃っていた。このドキュメンタリーはその裏側を描いたものだが,Lionel RichieとMichael Jacksonがここに描かれているレベルで関わっていたとは露知らなかった。

あの"We Are the World"が一晩で制作されたというのも驚きだが,そこに集ったミュージシャンのキャラが見え隠れするのも面白かった。私にとって一番面白かったのはBob Dylan。Bob Dylanが参加したことも意外だったのだが,あのソロ・パートの制作過程が面白いのだ。あとは結局現場に来なかったPrinceの代役に指名されたHuey Lewisの緊張っぷりや,Princeのだしに使われたと感じて,結局途中で帰ってしまったShiela E.の逸話にもへぇ~となってしまった。

これを以て「ポップスが最高に輝いた夜」とするのはいかがなものかという気もするが,これだけのミュージシャンが無償で集ったという奇跡的なイベントであることは認めよう。そして往時を懐かしみながら,ここに登場するミュージシャンたちの姿を見ているだけで音楽ファンは相応に楽しめるだろう。Dan AykroydやLindsey Bucknghamもいたのか~なんて改めて思った次第。まぁアルバムのジャケをよくよく見れば,彼らの名前もちゃんと書いてあるのだが...(笑)。

以前中古でゲットした"USA for Africa"のアルバムを久しぶりに聞いてみようかな。"We Are the World"には参加しなかったPrinceがアルバムには"4 the Tears in Your Eyes"を寄せているからそういう気持ちはあったんだねぇ。

2024年8月11日 (日)

早くも登場したMeshell Ndegeocelloの新作。

_20240809_0001 "No More Water: The Gospel of James Baldwin" Meshell Ndegeocello (Blue Note) 

昨年,傑作"The Omnichord Real Book"をリリースしたMeshell Ndegeocelloだが,その後,Sun Raトリビュート作をプロデュースしたりして活動が活発化している中,1年という短いインターバルでリリースされた新作である。今年2月のライブも素晴らしかったので,ただでさえ期待値が高い人であるから,本作もリリースがアナウンスされた段階から首を長くして待っていた。

Meshell Ndegeocelloがかくも短いスパンで本作をリリースしたのは,偏にアルバム・タイトルにも挙がっているJames Baldwinの生誕100年を祝う気持ちゆえだろう。しかもリリース日はJames Baldwinの誕生日の8月2日という徹底ぶりである。現物が届くまでストリーミングで聞いていた時の印象は少々地味かなという感じもあったのだが,現物がデリバリーされて,しっかりと聞き込んでみると,これがまた素晴らしいアルバムであった。コンセプト・アルバムであり,メッセージ性の強い音楽なので,いつものMeshell Ndegeocelloよりもファンク度は抑え目な感じもしたのだが,彼女らしいさまざまな要素を吸収した音楽は,聞けば聞くほど深みが増してくるという感じだ。

ほぼ来日メンバーと同じメンツのレギュラー陣での演奏が中心であるから,コンビネーションがタイトに決まっているのは当然だが,そこに交えられるSpoken Wordsがまた雰囲気を高める。昨今はアナログ・リリースを意識して長時間収録が減っているように思えるが,その中で76分超えという大作に仕上げたところにもMeshell Ndegeocelloの力の入りようを感じる。"The Omnichord Real Book"と比べてどっちが好きかと言えば"The Omnichord Real Book"の方だろうが,アルバムとしてのパワーを評価してこれも星★★★★★としてしまおう。

Peresonnel: Meshell Ndegeocello(vo, b, key, perc, spoken words), Justin Hicks(vo), Kenita Miller(vo), Hilton Als(spoken words), Staceyann Chin(spoken words), Caroline Fontanieu(spoken words), Alicia Garza(spoken words), Chris Bruce(g, synth, key), Jebin Bruni(p, key, perc, vo), Jake Sherman(el-p, org, perc), Julius Rodriguez(org, el-p), Abe Rounds(ds, perc, vo), Paul Thompson(tp, perc, vo), Josh Johnson(sax, effects)

Meshell Ndegeochelloは本作リリース前にNPRのTiny Desk Concertに出演していたので,その映像を貼り付けておこう。くぅ~っとなりまっせ。

本作へのリンクはこちら

2024年8月 8日 (木)

D'Angeloのデビュー・アルバム:掛け値なしの傑作。

_20240806_0001"Brown Sugar" D'Angelo(EMI)

本作がリリースされてもう30年近くになるが,私が聞いたのは随分後になってからのことであった。しかしリリースからの経過時間を考えれば,この音楽の鮮度は全く衰えていない。このアルバムをレコーディングした当時,D'Angeloはまだ20歳そこそこだったことや,ほぼ全面的にD'Angelo自身が演奏を行っていることを考えれば,まさに天賦の才能を持つ者という感じだったと思える。こうした制作スタイルはStevie Wonderを想起させ,70年代の天才がStevie Wonderだったとすれば,D'Angeloは90年代に現れた天才である。しかも超寡作で,デビュー以来アルバムは3枚しか出していないというのも凄いことだ。最新作の"Black Messiah"のリリースからももう10年だ!

そしてここで演じられる音楽は,今にして思えば,新しいソウル・ミュージックを定義したと言ってもよいという感じだ。どのようなタイプの曲でも魅力的に聞かせてしまう才能には驚くしかないが,オリジナルに加えて,Smokey Robinsonの"Cruisin'"をかくも魅力的にカヴァーしてしまうところも素晴らしい。また,6曲目の"Smooth"にはギターにMark Whitfield,ベースにLarry Grenadier,ドラムスにGene Lakeというジャズ界のミュージシャンを1曲だけ招くというセンスも只者ではないのだ。

もし私がD'Angeloの音楽をアルバム・リリースの順で聞いていたら,彼の音楽にもっと早い時期からはまっていただろうと思うと,音楽に接するにあたってのリアルタイム感が欠如していたのは,今にしてみれば実にもったいなかったような後悔の念をおぼえる。それほどに優れたアルバムと評価したいし,これほど聞いていて心地よいサウンドはなかなかない。ほどよいメロウ度といい,完璧なグルーブといい,まさに鉄壁の傑作。星★★★★★しかあるまい。素晴らしい。

Personnel: D'Angelo(vo, all instruments), Bob Power(g), Mark Whitfield(g), Raphael Saadiq(b, g), Larry Grenadier(b), Will ee(b), Gene Lake(ds), Ralph Rolle(ds), Gerald Tarack, Marilyn Wright, Regis Iandorio, Matthew Raimondi, Masako Yanagita, Natalie Kriegler, Alexander Simionescu, Winterton Garvey(vln), Julien Barber, Olivia Koppell, Sue Pray, Eufrosina Railenu(viola), Jesse Levy, Seymour Barab(cello)

本作へのリンクはこちら

2024年7月25日 (木)

Me'Shell Ndegéocelloのデビュー・アルバム:今更ながら超カッコいい。

_20240723_0002 "Plantation Lullabies" Me'Shell Ndegéocello (Maverick)

間もなく新作のリリースも予定されているMe'Shell Ndegéocello。今年の2月のライブも無茶苦茶カッコよかったこともあり,新作にも期待がかかるが,今日は彼女のデビュー・アルバムである。私が初めてMe'Shell Ndegéocelloのアルバムを聞いたのは次作の"Peace Beyond Passion"だったのだが,同作の印象が強過ぎて,なぜかこの1stアルバムはずっと聞かないままで来てしまった。しかし,やっぱりこれは聞かねばと思ってストリーミングで初めて聞いたのがつい先日のことだったのだが,あまりにカッコよ過ぎてなぜ買わなかったのかと後悔して,ネット経由で中古をゲットしたのであった。

はっきり言ってこれは"Peace Beyond Passion"と同様に強い印象を与えてくれるアルバムで,私がこの人にはまったのはこういう世界からだったよなぁと懐かしく思ってしまう一方,こんなアルバムならもっと早く聞いておけばよかったとつくづく反省したのであった。よくよくクレジットを眺めてみると,プロデューサーの一人はDavid Gamsonではないか。David GamsonはScritti Polittiのメンバーとして"Cupid & Psyche ’85"や"Provision"という傑作を出した後,プロデュース業に転じたのだが,"Peace Beyond Passion"にもDavid Gamsonが関わっていたことを踏まえれば,本作も同様の作風であることは予想できたはずだった。こういう場合の無知は恐ろしいと思うし,今回,このアルバムを聞いたのも気まぐれの所産であったのだが,聞いてよかったと強く思えたアルバムであった。

逆に私がこのアルバムを聞かないまま過ごしていたことを想像すると,それは大げさかもしれないが,私の人生にとってはもったいないことになっていたはずだ。それぐらいカッコいいのだ。ここでMe'Shell Ndegéocelloはほかにクレジットされているゲストを除けば,全ての楽器をこなしていることになっているから,最初からマルチな才能を持ったミュージシャンだったのだ。そしてジャズ界からJoshua RedmanやGeri Allenをゲストに迎えるセンスも素晴らしいと思える。

Plantation-lullabies そしてこのアルバムはジャケからしてユニークだ。ジャケは通常ならば裏の面のジャケがスリーブに印刷されていて,バック・インレイに掲げられているのが右の写真なのだ。この辺の「とんがり」具合がいかにもって感じだが,最初からMe'Shell Ndegéocelloの音楽は優れていたということを改めて再確認し,かつこの人の音楽は私にフィット感が非常に強いのだなぁと感じてしまった。こんなアルバムを聞かずにいたことを反省するのも含めて星★★★★★。ライブに感動し,古いアルバムに感動しているのでは,ますます新作に対する期待が高まるではないか。いやいや最高である。

Personnel: Me'Shell Ndegéocello(vo, all instruments), David Gamson(ds) with Wah Wah Watson(g), Geri Allen(p), Joshua Redman(ts), Luis Conte(conga), Bill Summers(shekere), Byron Jackson(vo), David "Fuze" Fiuzynski(g), James "Sleepy Keys" Preston(p), Andre Betts(prog), DJ Premier(turntable)

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