これまた痺れたVigleik Storaasのトリオ作
"Epistel #5" Vigleik Storaas (Inner Ear)
2012年の回顧シリーズをちょっとお休みして,年末に現れたナイスなアルバムを紹介したい。本作のリーダー,Vigleik StoraasについてはJohn Surmanの"Nordic Quartet"が初聞きであったが,その存在を強く意識したのはInner Earレーベルにおける"Now"だった。それは非常に美しいピアノ・トリオであり,このブログでも相応の評価をし(記事はこちら),Inner EarレーベルはECMライクな部分とも相俟って,俄然私の中では注目のレーベルとなった。その後は,リリースされても日本になかなか入ってこないことや,??なアルバムもあり,今イチ注目度が上がってこなかったのだが,久々のStoraasトリオといことで購入したものだが,これがまたこの手のピアノ好きにはたまらない出来である。
最後の1曲を除いてRainbow Studioにおける録音で,エンジニアリングもJan Erik KongshaugというところがECM的であるが,ノルウェイのピアニストなのだから,オスロで録音するのは当たり前と言えば当たり前なのだ。だが,本作から聞こえてくるサウンドはECM的だと言っても十分通じるものであるのは"Now"と同様である。メンツも"Now"と同じであるから,それもまたむべなるかなというところだ。だが,そうしたサウンドの同質性など忘れてしまうぐらい,ここには美しいピアノ・サウンドが収められていて,寒い冬も少し暖かさを取り戻すような気がしてくるのだ。
冒頭のKenny Wheeler作"Aspire"からして静謐な出だしで,まずはこれで心をつかまれ,時に美しく,時に哀愁さえ感じさせるメロディに時間の経つのも忘れると言っては大袈裟か。イントロは不思議な感じで始まる曲もあるが,途中からはメロディにやられてしまうのである。やはりこれはいいねぇ。そして8曲目にはSam Riversの"Beatrice"が控え,最後はMichel Legrandの「シェルブールの雨傘("I Will Wait for You")」で締められてはまいったというしかない。「シェルブール」はライブ音源というのも凄いねぇ。
今月になってアップする新作ピアノ・トリオ盤はこれで3枚目で,そのどれもがいい出来だが,本作も勝るとも劣らぬものとして推薦できる。今年来日も果たし,お知り合いのブロガーの皆さんも話題にされていたMats Eilertsenも素晴らしい助演ぶりである。星★★★★☆。欧州ジャズ・ファンは必聴。いやいや,これはええですわぁ。
Recorded May 31, 2011 except Track 9 Recorded Live on May 4th, 2010 at Festiviteten, Eidsvoll
Personnel: Vigleik Storaas(p), Mats Eilertsen(b), Per Oddvar Johansen(ds)
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