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カテゴリー「Hip Hop」の記事

2025年1月19日 (日)

プレイバック頻度の上がらないHerbie Hancockのアルバム:"Future 2 Future"。

_20250113_0001"Future 2 Future" Herbie Hancock(Transparent Music)

本作がリリースされたのが2001年のことなので,もはや四半世紀が過ぎようとしている中,私がこのアルバムをプレイバックしたことが何度あったかと思いたくなるほど,聞いた記憶に欠けるというのが実感だ。多分このアルバムは中古でゲットしたものだと思うが,本当に中身が記憶にない。

Herbie Hancockはその時代に応じて,新しい音楽を提示したり,対応してきたことは間違いのない事実だが,これは改めてBill Laswellと組んで,ヒップホップあるはドラムンベース的なアプローチを打ち出したアルバム。しかし,既にヒップホップについては"Future Shock"でやっちゃっているからねぇというところはあるし,リーダー作としての前作が"Gershwin’s World"だっただけに違いを出そうと思ったのかもしれないが,私が疑問なのはせっかくJack DeJohnetteを何曲かで迎えているのに,こんな単純なビートを叩かせるってどういうこと?って言いたくなることだ。まさに宝の持ち腐れのようではないか。ややジャズ色の濃く,ドラミングもDeJohnetteらしさもある"Virutual Hornets"ですら,大して面白いとは思えないのだ。むしろ,既に亡くなっていたTony Williamsのドラムスの音源を使って仕立てた,その名も"Tony Williams"の方が面白くさえ聞こえてしまうのが難点だ。

もちろん,Herbie Hancockのやることなので,愚作と言うつもりはないが,こっちの期待を越えることを当然と思ってしまうのがHerbie Hancockのようなミュージシャンだとすれば,そうはなっていないのが残念なアルバム。これを聞くぐらいならほかに聞くべきHerbie Hancockのアルバムはいくらでもあるから,プレイバック頻度は今後も上がることはないだろう。星★★★。

Persosnnel: Herbie Hancock(key), Bill Laswell(b), Charnette Moffett(b), Jack DeJohnette(ds), Karsh Kale(ds, prog, beats), Tony Williams(ds), Wayne Shorter(ts, ss), Carl Craig(prog, beats), A Guy Called Gerald(prog, beats), Grandmixer DXT(turntable), Rob Swift(turntable, prog), Elenni Davis-Knihgt(vo), Chaka Khan(vo), Dana Bryant(vo), Imani Uzuri(vo), GiGi(vo)

本作へのリンクはこちら

2024年9月 8日 (日)

追悼,Sergio Mendes。

Sergio-mendes

Sergio Mendesが亡くなった。オーセンティックなブラジル音楽と言うよりも,よりポピュラーなかたちでブラジル音楽を世に広めたという意味で大きな足跡を残したと言っていい人であった。Sergio Mendes版の"Mas Que Nada"(曲を書いたのはJorge Benだ)は誰もが知っているだろうし,その音楽はレコードやCDでなくても,様々なメディアを通して聞く機会が多かったはずだ。

Sergio-mendes-timeless過去の演奏に加えて,私が驚いたのは2006年に出た"Timeless"であった。will i amをプロデューサーに迎え,ヒップホップ系も含めて,多彩なゲストを迎えて制作され,ブラジル音楽を現代風に再構築したこのアルバムの面白さ,あるいは進取の精神を失わないSergio Mendesに驚かされたのも懐かしい。そして,ここに収められたJohn Legendが歌った"Please Baby Don't"は,私がJohn Legendに痺れるきっかけとなったと言っても過言ではないのだ。そうした意味でも意義深い作品であった。

昨今,彼の音楽をフォローしていなかった私ではあるが,いずれにしても,さまざまな意味でブラジル音楽,ポピュラー音楽への貢献度の大きい人であったと思う。

R.I.P.

2024年9月 4日 (水)

また出た!Robert GlasperのApple Music限定音源は新たな企画アルバム。

Code-derivation"Code Derivation" Robert Glasper (Loma Vista Recordings)

今年の6月にもApple Music限定で"Let Go"をリリースしたばかりのRobert Glasperが,非常に短いインターヴァルでまたもApple Music限定でリリースしたのが本作。前作のアンビエントな響きには驚いたが,今度はジャズとヒップホップを対比するという企画アルバムときた。

本作はストレート・アヘッドなRobert Glasperのグループによる演奏を,各々別のプロデューサーに"Flip"(リミックスと言ってもいいし,再構築と言ってもいいかもしれない)させたものを2曲並べて聞かせるというのが基本フォーマットとなっていて,同じ曲でもプロダクションによって大きな違いを感じさせるとともに,共通する因子もあるということを感じさせたいというのが企画の主題のようだ。リスナーの嗜好によって,これを面白いと感じるか,つまらないと感じるかは大きく分かれそうな気がするが,少なくとも"Flip"されていないヴァージョンは,ジャズ・ファンにとっては魅力的に響くメンツであり,演奏である。私のような雑食系リスナーにとってはこういうのもいいんじゃないって思えるレベルだが,これもRobert Glasperのやりたかったことなんだろうねぇと思えばいいのだ。

"Flip"したヒップホップ版の演奏を聞きたくなければスキップしてしまえばいいというところだが,こういうのを聞いていると,さすが"Black Radio"シリーズをものにしたRobert Glasperだと思えてしまう。この間口の広さがRobert Glasperなのだと思えばいいのだ。これも一つの進取の精神である。

Personnel: Robert Glasper(p), Walter Smith III(ts), Marcus Strickland(ts), Keyon Harrold(tp), Mike Moreno(g), Vicente Archer(b), Kendrick Scott(ds), Jamari(rap), MMYYKK(rap), Oswin Benjamin(rap), Taylor McFerrin(vo, prod), Hi-Tek(prod), Black Milk(prod), Kareem Riggins(prod), Riley Glasper(prod)

2022年3月 1日 (火)

ほぼ9年ぶりに登場した"Black Radio"の第3作。

_20220227 "Black Radio III" Robert Glasper(Loma Vista)

"Black Radio"シリーズはこれまで2作がリリースされているが,2枚目が出たのが2013年,それから9年弱の時を経て,第3作が出た。このシリーズは現代のソウル,R&B,ヒップホップをいいところどりのようなところがあって,実に楽しめるものであった。特に私は第1作を高く評価していて,2012年の最高作の一枚にも選んでいる。前2作はRobert Glasper Experiment名義であったが,今回はRobert Glasper単独名義となっている。

それでもって,今回もその筋のミュージシャンを集めてきて,ナイスなアルバムに仕立てるところは,もはやプロデューサーとしての立ち位置の方が強烈に感じられる。これだけのメンツを集める力がRobert Glasperにはあるということにほかならないが,プロデュースだけでなく,作編曲,そしてキーボードの演奏をこなし,明確なリーダーシップを発揮しているところが凄い。

とにかく,このミュージシャンの適材適所の配置ぶりを見て,聴いているだけで,本当にセンスがいいとしか言いようがない。決して尖った音ではないので,これならどのような年代のリスナーにも受け入れられてしまうだろうと感じさせるものであり,やはりこの人の才能は半端ではない。もはやQuincy Jonesの世界である。唯一のカヴァー曲であるTears for Fearsの”Everybody Wants to Rule the World"をLalah Hathawayに歌わせて,Commonがラップを被せるってのもたまりませんな。しかし,それ以外のオリジナル曲のよくできていることも特筆に値する。Ant Clemonsをフィーチャーした"Heaven's Here"のメロウなグルーブにはマジで痺れてしまった。

Robert Glasper,恐るべしと改めて感じさせられたアルバム。星★★★★★としてしまおう。

Personnel: Robert Glasper(key), Isiah Sharkey(g), Marlon Williams(g), Derrick Hodge(b, strings), Berniss Travis II(b), Pino Paladino(b), Chris Dave(ds), Justin Tyson(ds, key), Kenyon Harold(tp), Marcus Strickland(b-cl), Terrace Martin(sax), Jahi Sundance(turntable), DJ Jazzy Jeff(turntable) with Amir Sulaiman(spoken words), Christian Scott aTunde Adjuah(spoken words), BJ the Chicago Kid(vo), Big K.R.I.T.(vo), D Smoke(vo), Tiffany Gouche(vo), Esperanza Spalding(vo), Q-Tip(vo), Yebba(vo), H.E.R.(vo), Meshel Ndegeocello(spoken word), Lalah Hathaway(vo), Common(vo), Musiq Soulchild(vo), Posdnuos(vo), Ledisi(vo), Gregory Porter(vo), Ant Clemons(vo), Jennifer Hudson(vo), PJ Morton(key, vo), India.Arie(vo) & Others

2015年12月29日 (火)

2015年の回顧:音楽編(ジャズ以外)

Lizz_wright今年の回顧の3回目はディスク編の1回目。ジャズ以外の音楽で今年よかったと思えるものについて記したい。

今年は例年に増して,ジャズ以外のアルバムの購入枚数が減っていて,ベスト作を選ぶのにも苦労するというのが本音である。クラシックも,ソウルも,ブラジルも購入枚数は非常に限られていて,記事にしたものも非常に少ないからだが,そんな中でジャズ以外のカテゴリーで今年の最高の作品はLizz Wrightの"Freedom & Surrender"だと思っている。先日のライブ編でも私はこの人への称賛を惜しまなかったつもりだが,それに先立ってリリースされた彼女の新作は本当に素晴らしく,それが彼女のライブを見たいと思わせた要因だったのは疑いようのない事実である。彼女はジャズ・ヴォーカリストとも捉えられているので,今回取り上げるのではなく,ジャズ編で取り上げてもよかったのだが,この作品に私はディープなソウルを感じたので,本日取り上げることにした。これは本当に素晴らしいアルバムであり,より多くの人に聞かれるべき作品だと思っている。

Terrilynecarrington2015mosaicproj_2Lizz Wright絡みでもう1枚挙げると,Terri Lyne Carringtonの"The Mosaic Project: Love And Soul"も非常にいいアルバムであった。Robert Glasperの"Black Radio"をよりメロウにするとこのアルバムの音楽になるという感じだが,様々な個性を持つアーティストを集めて,よくぞここまで作り上げたということで,このアルバムも忘れられないものとなった。これもジャズのカテゴリーで捉えることは可能ではあるが,音楽そのものは完全にソウルのカテゴリーである。いずれにしても,Lizz Wrightについては,J.D. SoutherやKendrick Scottのアルバムにもゲストで参加したりしていて,非常に越境型の活動が目立ったわけだが,どこに出てきてもいい仕事をしているところに,この人の高い実力が表れていると思う。

James_taylor_2Lizz Wright関連のアルバムが非常によかったので,私の中での印象がちょっと薄くなってしまったような気がするのがJames Taylorの13年ぶりのオリジナル・アルバム"Before This World"である。記事にも書いた通り,これが彼の最高傑作とは思っていないが,変わらないことの重要性をつくづく感じさせてくれるアルバムだったと思っている。

また,今年聞いた中で印象に残っているのはRachel Sermani,また,記事にはちゃんとできなかったが,China Crisisによる21年ぶりのアルバム,そして誰が聞いても強烈だと思えたのはKendrick Lamarの"To Pimp a Butterfly"あたりである。おっと,忘れちゃいけない。Steve Reichの新作はいつも通り楽しませてもらったが,クラシックのアルバムはほとんど買っていない。来年はもう少しクラシックも聞こうかねぇと思うが,さてどうなることやら。

尚,リリースは2014年後半なので,ここに挙げるのは抵抗があるのだが,Joni Mitchellのコンピレーション,"Love Has Many Faces: A Quartet, A Ballet, Waiting to Be Danced"は無茶苦茶素晴らしい作品であることは改めて書いておきたい。ということで,音楽的な幅を大して確保できていない中でのセレクションでお恥ずかしい限りだが,Lizz Wrightが私にとってのジャズ以外でのMusician of the Yearってことは間違いない。

2015年12月16日 (水)

Kendrick Lamar:多分これって無茶苦茶評価されるだろう

Kendrick_lamar"To Pimp a Butterfly" Kendrick Lamar(Aftermath/Interscope)

私はヒップホップやラップの積極的な聞き手ではないが,このアルバム,海外のメディアの今年のベスト作という記事において,実に多くのメディアから絶賛されている。これは一体どういうことなんだろうということで,半分怖いもの見たさみたいな感じで聞いてみた。

現在の私の英語力では,彼のラップを100%理解できる訳ではないので,詞については評価できないが,音楽的な要素だけに目を向けてみると,これが極めて質の高い音楽だと言うことは理解できる。一部の曲にRobert Glasperも参加してしまうのもまぁそうだよねぇって感じであるし,キラ星のごときメンツが参加していることからも,Kendrick Lamarという人の立ち位置が理解できそうなものである。だからって私がラップの熱心な聞き手になることはないだろうが,ラップとしてではなく,ソウル・ミュージックとして聞いても,これはかなりいい線であろうと思う。それぐらいバック・トラックの出来がいいのである。

残念ながら,本作に対して評価を下すほど,私はラップに精通していないが,聞いておいて損はないと思わせる作品ではあった。尚,参加ミュージシャンは多数,かつ,ライナーの文字は小さいので省略。

2012年3月10日 (土)

こいつは凄いぞ,Robert Glasperの新作!

Robert_glasper

"Black Radio" Robert Glasper Experiment(Blue Note)

ここのところ,飲み会続きで記事を書く余裕がなかったのだが,通勤途上ではこのアルバムばかり聞いていたような気がする。それぐらい気に入ってしまったし,これは素晴らしい作品である。

Robert Glasperが"In My Element"でデビューした当時からジャズとヒップホップの融合のように言われていたが,演奏としては別にヒップホップ色が強いわけではなく,純粋なジャズ・ピアノ・トリオのアルバムのように感じていた私である。Glasperその人はいろいろなジャンルのアルバムに顔を出しているし,越境型のミュージシャンであることは間違いないが,彼のアルバムではそこまでの融合度を感じなかったというのが正直なところである。しかし,Gretchen Parlatoのアルバムをプロデュースしたり,本当にいろいろなところに顔を出す人だと感じていたのであった。

この作品はそんなGlasperが黒人音楽の様々な要素を融合させた作品だと言ってよいと思うが,その融合度合いがまさしく半端ではない。現代のソウル,ヒップホップ,ジャズの要素を全て取り込んで,そして素晴らしい作品に仕上げたところが凄いのである。Glasperのピアノ自体は一貫したトーンとタッチを持っていて,強面な見た目とは違ってかなり繊細である。だが,そのピアノが乗るのがまさに強烈なソウル/ヒップホップのフレイバーでありながら,全く違和感をもたらさないのである。だが,単にビートを強調するものではなく,どちらかと言えば,落ち着きさえ感じさせるものだからこそ,50歳を過ぎた私にも心地よささえ感じさせる音楽となっている。これがビートばかりが目立つものだったらおそらくは辟易としてしまったはずだが,そうはならない。昨日の記事にも書いた通り,いい意味で「ゆるいグルーブ」なのでだ。

アルバム全体を通して,そうしたトーンの一貫性は維持されていて,曲ごとにゲストが変わっても,全く悪影響を及ぼしていないのである。これはGlasper自身のプロデュースの勝利と言ってもよいが,それにしてもこれは凄い。曲よし,演奏よし,歌よしの三拍子揃ったアルバムとして強く推薦できる。もちろん,純粋ジャズではないから,ジャズ原理主義者には受け入れがたいものだろうが,この音楽のよさは誰にでも理解できるものであるはずである。Glasperのオリジナル(共作)に加えて,David BowieやNirbanaの曲が入っていても全然違和感なしである。最後のNirbanaの"Smells Like Teen Spirit"なんて思わず「おぉっ!」と唸ってしまった私である。

これは間違いなく,私にとってはちょっと気が早いが,本年最高作の候補と言ってもよい優れた作品である。Robert Glasperは黒人音楽の全てを取り込み,全てを越境したと言い切ってしまおう。星★★★★★。まじで最高である。久々にぶっ飛んだ私だった。

Personnel: Robert Glasper(p, el-p, synth), Casey Benjamin(vocoder, fl, sax, synth), Derrick Hodge(b), Chris Dave(ds, perc), Jahi Sundance(turntable), Shafiq Husayn(vo), Erykah Badu(vo), Lalah Hathaaway(vo), Lupe Fresco(vo), Bilai(vo), Ledisi(vo), Amber Stroher(vo), Anita Bias(vo), Paris Stroher(key), Musiq Soulchild(vo, snapping), Chrisette Michele(vo), MeShell Ndegeocello(vo), Stokley(vo, perc), yaslin bey(vo)

2010年9月30日 (木)

John LegendがThe Rootsと挑むカバー・アルバム

Wake_up"Wake Up!" John Legend & the Roots(Columbia)

私はJohn Legendが結構好きだが,前作"Evolver"はLegendのよさを活かしていないと思えて,あまり評価できなかった私である。前作がどちらかというとダンス・フロア向きという感じだったのだが,今回はガラッと趣向を変えて,60~70年代のソウル・ミュージックのカバーが中心となっている。巷ではカバー・アルバムが大流行(特に日本は異常だ)だし,しかも伴奏はヒップホップ・グループThe Rootsであるから,若干の不安がなかったわけではないのだが,それは杞憂に終わった。これは曲の力にもよるところも大きいが,なかなかにいけているソウル・アルバムとなった。

私はThe Rootsというバンドの演奏を聞くのは初めてのはずだが,伴奏に関してはちゃんと生の演奏を行っていて,所謂「ヒップホップ」的でないところがまずよい。確かに今までのLegendのアルバムのバッキングのパターンとは異なるが,それでも相性は結構悪くないと思う。そもそもLegendがこのアルバムを作る動機になったのが,前回の米国大統領選におけるObama支持のムーブメントに感じられた熱気を音楽的に再現しようということだったらしいのだが,その結果やっている曲は政治的な意識を高めるようなトーンの曲が多くなるのは当然のことであろう。

そうしたLegendの意思が良いか悪いかは別にして,私としては純粋に音楽的に評価すれば,このアルバムはかなり好きである。オリジナルの曲を全部聞いたことがあるわけではないから比較することはできないが,それでも黒人の権利を保全しようとした60~70年代当時の熱気を再現することにはほぼ成功しているのではないだろうか。スイートさはないが,非常に熱いパワーを感じさせてくれるものである。

おそらく,このアルバムにケチをつけるとするならば,オリジナルとの比較においてという議論になるのだろうと思うが,そういうこだわりを持たないリスナーには,素直に受け入れられる可能性は高い。もちろん,ベースのミキシング・レベルが高過ぎて何だかなぁと思わされる曲もあるが,そこは伴奏がヒップホップ・バンドならこういうのもありなのは仕方があるまい。

全編を通して聞いても相当楽しめるのだが,白眉はMarvin Gayeの"What's Going On"からの"Wholy Holy"だろうか。これは曲の勝利って気がしないでもないが,Legendの声で聞くMarvin Gayeナンバーがまた心に沁みる。最後に収められたカバー曲ではない"Shine"がこれまたいいねぇ。これこそ私がLegendに期待する歌唱と言っても過言ではない。最後にこれを持ってくるところがにくい。作品中にはやや冗長あるいは凡庸に響く曲もないわけではないが,ゲストも好演でこれなら私には全く問題なしである。John Legendの最高傑作とは思わないが,これはこれで楽しめる作品であった。星★★★★。

Personnel: John Legend(vo, p) & the Roots: ?uestlove(ds, perc), James Poyser(key, org, xylophone), Cap'n Kirk Douglas(g), Owen Biddle(b) with Black Thoughts(vo), Melanie Fiona(vo), Common(vo), CL Smooths(vo) and Many Others

2009年6月 7日 (日)

ラップの元祖?

The_message "The Message" Grandmaster Flash & the Furious Five (Sugarhill)

私がこの手のアルバムをこのブログで取り上げるのは初めてのことである。どちらかと言えば私の音楽的嗜好は幅広い方だと思うが,ラップやヒップホップは実はあまりその魅力がよくわかっていない。ただ,ラップでびしっと韻を踏まれた時の心地よさは理解しているつもりではあるが,それにしても私がなんでとこんなアルバムをと思われる方がいても全く不思議ではない。単なる気まぐれである(爆)。

私がラップが好きか嫌いかは別にしても,このアルバムが出たのは1982年のはずだが,それから四半世紀以上を経て,ラップは完全に市民権を得るものとなった。もはや日本語ラップまであるのだから時の流れと言うのは恐ろしい。

私が本作を初めて聞いたときには,何だかおもろい音楽だなぁと思ったことは思ったのだが,私の指向とは相容れずという感じだった記憶がある。私は完全にジャズに走っていた頃だから当たり前である。しかし,本当に久しぶりにこのアルバムを聞いてみて,ラップあるいはサンプリングもまだまだ創生期のものだなぁと思わせる時代感を漂わせている。それでも,こういう音楽が端緒となって,現在のヒップホップやラップが成立しているとすれば,このアルバムに一方ならぬ思い入れを持つリスナーがいてもそれも当然のことである。

よくよく聞かなくてもわかるとおり,いろんなネタをいじくりながら,このアルバムの曲は構成されていて,今にして思えば結構笑えるネタが多いなぁとつい懐かしんでしまった私である。このアルバムにはラップはもちろん含まれているが,ラップだけではなく,妙にスイートな曲調も含まれているのでので,私でもまぁOKってやつである。いずれにしてもアメリカの音楽界の歴史を紐解くためには聞いておいても損はあるまい。今になっても私の趣味とは言えないが,懐メロだと思えばいい話である。歴史的価値込みで星★★★★。

ちなみに,カラオケで曲が歌えなくなるととたんにラップ化する私である(爆)。私の生活にまで入り込んだラップ恐るべし,なんちゃって。

Personnel: Grandmaster Flash(vo), Grandmaster Melle Mel(vo), Cowboy (Keith Wiggins)(vo),  Duke Bootee(vo), Raheem(vo), Scorpio(vo), Doug Wimbish(b), Dwain Mitchell(key),  Ed Fletcher(perc),  Gary Henry(key), Dwain Mitchell(key), Keith Leblance(ds),  Skip McDonald(g), Jiggs Chase(Prophet),  Reggie Griffin(Prophet), Sylvia Robinson(Prophet)