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カテゴリー「ECM」の記事

2023年1月17日 (火)

久しぶりにEgberto Gismontiを聴く。

_20230115 "Dança das Cabeças" Egberto Gismonti(ECM)

「輝く水」という邦題でリリースされていた本作はEgberto Gismontiによる記念すべきECM第一作。近年Egberto Gismontiのレコーディングは新録としては"Saudações"が最後で,それ以来行われていないようだが,最近はどうしているのだろうか?私は近年では2007年と2016年の来日公演を観ているが,どちらも強烈な印象を残すライブであった。2007年は晴海の第一生命ホール,2016年は練馬文化センターというちょっと変わったヴェニューでのライブというのも記憶している理由になるかもしれない。

それはさておき,このアルバムを聴いたのも実に久しぶりのことであった。ECMのミュージシャンの中でもギタリストとしてはRalph Towner,Pat Methenyのアルバムと並んで別格扱いにしているにもかかわらず,あまりプレイバックしていないのも困ったものということもあり,取り出してきたもの。ECMレーベルに相応しいボーダレス感に溢れたアルバムと言ってよいだろうが,アナログであればA面に相当するPart 1がより土俗的な感覚が強いのに対し,B面に相当するピアノで演じられるPart 2前半はKeith Jarrettがかつてよく聞かせたフォーク・タッチにも通じるところを感じさせながら,より美的な展開を図るのが実に面白い。そして後半に改めてギターにチェンジしても,Part 1とは明らかに異なるリズム感覚を打ち出している。

私が二度接したライブでも第一部はギター,第二部はピアノという構成だったと記憶しているが,楽器によって感覚の違いを出すっていうアプローチだったのかもしれないと思わせる演奏と言ってもいいだろう。私としてはEgberto Gismontiはギタリストという位置づけではあるが,本人にとってはピアノもギターも主楽器なんだろうなぁと思わせるに十分。ピアノもうまいRalph Townerに通じるところも感じていた私である。

久々に聴いたが,これは傾聴に値する作品であることは間違いない。これ以外のEgberto Gismontiのアルバムもちゃんと聞き直すことにしよう。星★★★★☆。

Recorded in November, 1976

Personnel: Egberto Gismonti(g, p, wood-fl, vo), Nana Vasconselos(perc, berimbau, corpo, vo)

2023年1月 9日 (月)

Keith Jarrett温故知新。

Solo-concerts"Solo Concerts: Bremen Lausanne" Keith Jarrett(ECM)

何を今更と言われそうだが,このアルバムを取り上げることにしよう。正直なところ,このアルバムを聴くのも実に久しぶりのことであった。Keith Jarrettのソロ・アルバムはこれに先立って"Facing You"があったが,リリースされた当時の衝撃度からすれば,このアルバムの方が圧倒的だったんだろうと思わせる演奏である。

多分このアルバムが出た際の反応は「これは一体何なんだ?」という驚きが勝っていただろうと想像されるが,長大のコンサートを完全即興でやってしまうという発想そのものがなかったはずだ。そして紡ぎ出されるメロディ・ラインが書かれたものではないことが驚きに輪を掛ける。そして,こうしたソロ・ピアノがKeith Jarrettの代名詞とも言うべき唯一無二のスタイルとして確立する契機となったアルバムは,リリースから半世紀近く経っても魅力的に響く。

Keith Jarrettが慢性疲労症候群を患った後,ソロ・コンサートのスタイルは長大な曲をやるスタイルから,短い即興を何曲もやるというかたちに変貌を遂げ,コンサートの前半は特に現代音楽的アプローチが増え,後半でメロディアスに転じるというパターンが多くなった。しかし,Keith Jarrettの魅力というのは,まさに湧き出てくるような見事なフレージングの塊のようにも思えたこうした長編ライブの方に,より強く感じるというのが私としては正直なところである。それは美的な部分だけでなく,フォーク・タッチが強く感じられる演奏の親しみやすさにも要因があったように感じる。

アナログでは3枚組というボリュームで出た本作は,現状CD2枚に収まって,1枚目がブレーメン,2枚目がローザンヌという区切りができるとともに,曲間で途切れることがないというのメリットも感じられるようになった。演奏としては私はブレーメンでの演奏の方が好きだが,私の好みがどうこうと言うよりも,このアルバムはまさにエポック・メイキングな作品として評価すべきもの。星★★★★★。

Recorded Live in Bremen on July 12, 1973 and in Lausanne on March 20,1973

Personnel: Keith Jarrett(p)

2022年12月22日 (木)

この静謐さがたまらない:Ketil BjørnstadとDavid Darlingのデュオ第2作

_20221217-4 "Epigraphs" Ketil Bjørnstad / David Darling(ECM)

David Darlingが亡くなったのは2021年初頭のことであった。David Darlingの音楽はニューエイジとも取れる響きを持っているが,そのDavid DarlingがKetil Bjørnstadと組んだデュオ作"The River"については私は「実に静謐にして美しい。ささくれ立った心さえ落ち着かせるであろう音楽である。」なんて書いている(記事はこちら)。"The River"でもKetil BjørnstadはByrd,Gibbonsにインスパイアされていると言っていたが,このアルバムでは二人のオリジナルに加え,そのByrd,Gibbonsの曲や,これまたルネッサンス期の作曲家,DufayやGregor Aichingerの曲もやっている。

それでもって,この音楽を聞いていても,私が抱く感想は「実に静謐にして美しい。ささくれ立った心さえ落ち着かせるであろう音楽である。」でしかないのだから,私のボキャブラリーも実に限定的なものだと言いたくなる。しかし,そう思わざるをえない響きなのだ。

正直,ここまで行くと,これはもはやジャズではないでしょうと言いたくもなるが,ジャンルを超越するのがECMレーベルのECMたる所以であり,そもそも総帥Manfred Eicherにはジャンルなんて関係ないだろうと思いたくなるような,美的音源。こういうのがバーとかで流れていると,環境として気持ちよくなって酒量が増えること必定という意味では,これは良質なアンビエント・ミュージックだと言いたい。好きなんだよなぁ,こういうの。星★★★★☆。

Recorded in September, 1998

Personnel: Ketil Bjørnstad(p), David Darling(cello)

2022年11月 8日 (火)

こんなアルバムはECM New Seriesでしか作れないと思ってしまう”L’Aurore”。

_20221106 "L’Aurore" Carolin Widmann(ECM New Series)

Carolin Widmannはドイツのヴァイオリニストで,現代音楽を得意とするらしい人らしい。このアルバムはCarolin Widmannのソロ・ヴァイオリンによる作品なのだが,現代音楽だけならさておき,ここでの選曲ってECM New Series以外ありえないだろうと言いたくなるようなものなのだ。

そもそも冒頭のHidegard von Bingenは中世ヨーロッパ最大の賢女と言われているらしい宗教家であり,神秘家であり,そして作曲家らしい。ここに収められた"Spiritus sanctus vivificans vita"も元々は聖歌として作られたもののはずで,そのメロディ・ラインをヴァイオリンで奏でたものと思われる。そして間に近現代の作曲家(全然知らない)の曲をはさんで,最後を締めるのがバッハの無伴奏パルティータ2番なのだ。こんなプログラムって,ヴァイオリンのソロ・リサイタルならないとは言えないかもしれないが,アルバムとして残してしまうのが,ECM New SeriesのECM New Seriesたる所以である。

ECM New Seriesっていうのは古典と近現代音楽をマージするというのが実に得意だと思うが,これはおそらくManfred Eicherの指向によるものと思える。そして,こういう異質の音楽の同居が実に新鮮な感覚を生むということを,私はこのレーベルのピアノ音楽でも経験している。Alexei Lubimov然り,Anna Gourari然りである。そして,それは楽器が変わって,ヴァイオリンでも全く同じであった。結局,こういうのが私の嗜好にもマッチするってことだが,Manfred Eicherの術中にまんまとはまっているだけなのかもしれない。この記事を書くにあたって,過去の記事を振り返ってみると,Alexei Lubimovにそろ,Anna Gourariにしろ,ほとんど同じようなことを書いているのは,私の表現能力の限界だが,同じ感覚を与えるということこそが,Manfred Eicherの狙いだと思ってしまう。

しかし,バッハはさておき,こういうアルバムでないとおそらく接することのなかったであろう音楽を聞くことができたのは,偏にECM New Seriesというレーベル・パワーだったということなる。だからこそ,ECM New Seriesのアルバムは侮れないし,ちゃんとフォローしないといかんのである。私の場合は器楽曲専門みたいな感じだとしても,そこで何度もはまっているのも事実なのだ。

このアルバムも,傾聴するもよし,聞き流すもよしのオプションを与えてくれるアルバムだと思う。星★★★★☆。

Recorded in July, 2021

Personnel: Carolin Widmann(vln)

2022年11月 6日 (日)

Benjamin LacknerのECMデビュー作:作曲能力の高さはわかるんだけどねぇ...。

_20221104-2 "Last Decade" Benjamin Lackner(ECM)

Benjamin LacknerというピアニストはBrad Mehldauに師事したらしいとの情報もあり,気になって入手したアルバムである。昨今,私はECMのアルバムの購入も本当に気になるものに限定しているが,本作はメンツもいいし,リリース情報を仕入れた段階で買おうと思っていたもの。

聞いてみると,全編を通じてメロディアスな曲が多く,作曲能力の高さは理解できるし,ECMらしい静謐で美的なアルバムだと言ってもよい。しかし,私は聞き進めていくと,もう少しメリハリをつけてもよかったのではないかと思えてしまった。Mathias Eickのラッパを含めて,抒情的なトーンは魅力的にも響くのだが,全編を通じて一本調子な感覚がぬぐえない。かつ,誰のリーダー作なのかわからないぐらいMathias Eickの露出度が高い。リーダー,Benjamin Lacknerはピアノよりもコンポーザーとしての位置づけが強いようにさえ思えてしまう。

決して演奏が悪いという訳ではない。各人の音色は魅力的で,Mathias EickやManu Katchéの実力は誰しもが認めるところである。そうした中で私がいいと思ったがの,ベースのJérôme Regardの音色であった。Benjamin Lacknerとの共演歴も長く,リーダーの音楽性を理解し,支えるという役割を十分に果たしているし,一曲提供した"Émile"がこれまた魅力的である。

しかし,アルバム全体を聴いていると,昨日取り上げたWolfert Brederodeの"Ruins and Remains"のような感銘が得られないというのが正直なところで,私としては星★★★☆程度の評価となってしまう。"Ruins and Remains"があまりに素晴らし過ぎて,その後に聞いたことが本作の印象を薄くしてしまったとも言えるが,私としてはもう少し痺れる展開があってもよかったと思う。

Recorded in September, 2021

Personnel: Benjamin Lackner(p), Mathias Eick(tp), Jérôme Regard(b), Manu Katché(ds)

2022年11月 5日 (土)

Wolfert Brederodeと弦楽クァルテットの共演:実に素晴らしい”Ruins and Remains” #WolfertBrederode

_20221104 "Ruins and Remains" Wolfert Brederode(ECM)

Steve Lakeのライナー・ノーツによれば,もともとは第一次世界大戦の休戦100周年を記念して委嘱され,2018年の第一次世界大戦休戦記念日(11月11日)に初演された組曲に,新たに曲を追加して出来上がったのがこのアルバムである。これが実に素晴らしい。

どこまでが「書かれた」もので,どこからが「即興」なのかもはっきりしないのは,ECMの総帥,Manfred Eicherのディレクションによるものだったと,これもSteve Lakeのライナーに書かれているが,もともとはよりジャズ的なアプローチで書かれていたらしい曲が,完全にボーダレスな響きに転じていて,その狙いは完全に成功していると言える。全編を通じて感じられる寂寥感のような感覚は,美しくも聴覚を刺激する。明確なテーマを持った曲を,イメージを膨らませた上に,より優れた音楽に昇華させたプレイヤーはもちろん,プロデューサーとしてのManfred Eicherの手腕に唸らされてしまう。

これは本年のベスト盤の候補となりうる逸品であり,実にECMらしくも素晴らしい出来を示したアルバム。文句なしに星★★★★★。

Recorded in August, 2021

Personnel: Wolfert Brederode(p), Matangi Quartet [Maria-Paula Majoor(vln), Daniel Torrico Menacho(vln), Karsten Kleijer(vla), Arno van der Vuurst(cello)], Joost Lijbaart(ds, perc) 

2022年10月 4日 (火)

音楽シーズン到来! 続々届く新譜群から,今日はKeith Jarrett。 #KeithJarrett

_20221002"Bordeaux Concert" Keith Jarrett(ECM)

秋口になると,音楽シーズン到来ということで,続々と新譜が届いている。昨今,CDの購入枚数が減少する中でも,やはり音楽シーズンということで,この季節になると購入枚数が自然と増えるってところか。そんな中で今日はこのKeith Jarrettの新譜である。

新譜と言っても,Keith Jarrettは健康状態ゆえにもはや引退状態であるから,蔵出し音源ということになるが,それでも買ってしまうというのがファンの性ってところである。近年のKeith Jarrettのソロは第一部がアブストラクトな現代音楽的な響きが強く,第二部に入ると美メロやブルーズ,あるいはフォーク色を炸裂させるという構成が多かったが,このアルバムも出だしは結構アブストラクトで,あぁ,いつも通りねって感じなのだが,近年のアルバムとしては前半のアブストラクトさは抑制加減で,比較的聞き易い感じがする。その辺は前作のブダペストのライブと近いと言ってもいいかもしれない。それでもやはりアブストラクトさが勝っていることには変わりはないが...。。

このアルバムは最近には珍しく,アンコールの定番となっているスタンダードの演奏が行われていないが,それでも後半の美的なメロディ・ラインは健在なので,構成としてはKeith Jarrettのライブのパターンにははまっている。それをよしとするか否かは,各々のリスナーが考えればいいとして,もはや蔵出ししかないので,どれを聞いても大きな違いはないと言ってもよいだろう。厳しい言い方をすれば,それでも聞くか,もうええわとするかの時期に来ているようにも思える。

全盛期の長大なピアノ・ソロを知る人間としては,そっちを聞いている方がいいような気もするし,こういう短いインプロヴィゼーションを複数やる方が聞き易いというのも一方で事実である。私も長年Keith Jarrettのアルバムを買っては聞いている訳だが,もはや以前のような驚きはなくなっているところは微妙なのだ。

今回のアルバムもこれはこれでいい演奏だが,まぁこの辺でKeith Jarrettのソロ・アルバムは打ち止めでもいいかなって気がしている。それでもKeith Jarrettの快復を祈って星★★★★☆としよう。でもまた出たら買っちゃうかな...(苦笑)。

尚,ストリーミング版では聴衆の拍手がカットされていたが,CDには拍手が入っているので収録時間が若干違う。また,私はECMのCDは極力ドイツ盤を好んで買ってきたが,昨今の円安で国内盤の方が安いというのは困ったもんだなぁ。

Recorded Live at Auditorium de l’Opera National de Bordeaux on July 6, 2016

Personnel: Keith Jarrett(p)

2022年9月28日 (水)

Barre Phillips:「最後のソロ・アルバム」は「最後のアルバム」じゃなかったのねぇ(苦笑)。 #BarrePhillips

_20220924-3 "Face à Face" Barre Phillips / György Kurtág, Jr.(ECM)

Barre Phillipsがアルバム,"End to End"をリリースした時,「最後のソロ・アルバム」としてECMに自らオファーしたとライナーには書かれていた。即ち,年齢を考えれば,それはBarre Phillipsにとっての「最後のアルバム」だと思っていた私の早とちりっていうのが,本作で明らかになった。

"End to End"が制作に至る経緯がなかなか感動的だっただけ(詳しくはこちら)に,おいおい,まだ出るのかと思ったのも事実なのだが,今回,ECM New Seriesに自らのピアノ演奏でのアルバムも持つGyörgy Kurtágの息子との共演とあってはかなり気になる。しかし,絶対ハードルは高いはずだと思いつつ(笑),今回購入したものの一枚がこれである。

一聴して,これはやっぱりハードルが高い(きっぱり)。もはや現代音楽と言っても通じる感覚であるが,こういう音楽に耐性を身に着けてしまった私には,これがまた実に興味深く響くのだ。本作はBarre Phillipsのベースに,György Kurtág, Jr.のライブ・エレクトロニクスが加わるというものだが,ライナーはまたまたSteve Lakeが書いているし,やっぱりECMにおけるBarre Phillipsのポジションは特別なのかもしれない。

本作のSteve Lakeのライナーにも,ソロ作は"End to End"で最後としても,これは「コラボレーション」としての取り組みだって書いてある。今年の10月で米寿を迎えるBarre Phillips,まだまだやる気満々ってところか。だが,2020年9月から2021年9月までの1年を掛けて完成させたこのアルバムは,普通のリスナーにとっては「何のこっちゃ?」って感じのアルバムだろう。メロディ・ラインも,リズム・フィギュアもほとんど感じられないのだから,こんなものは音楽と認められないという人もいるはずだ。

まぁ,確かに「鑑賞音楽」としては結構辛いよなぁってのは私も感じるところなのだが,Barre Phillipsの本音はさておき,聴く方はこれはアンビエント・ミュージックとして捉えた方がいいかもしれない。何となくプレイバックしていて,これに耳をそばだてるかというと,それも微妙であり,何となく流れているという感覚の方が,私としてはわかり易い気がする。むしろ,こういうアルバムをリリースしてしまうところが,ECMというレーベルの真骨頂であり,こんなことができるレーベルはそうはない。出しただけでも凄いよねって感覚をお判り頂ける方だけが聞けばいいでしょう。私としては星★★★★ぐらいだが,さて,普通の人はどう捉えるか(笑)。

Recorded between September 2020 and September 2021

Personnel: Barre Phillips(b), György Kurtág, Jr.(electronics)

2022年9月27日 (火)

Enrico RavaとFred Herschの共演は期待通りと言ってよい。 #EnricoRava #FredHersch

_20220924-2 "The Song Is You" Enrico Rava / Fred Hersch (ECM)

本作のリリースがアナウンスされた時から,私としては大いに期待していたアルバムである。Fred HerschがEnrico Ravaとライブで共演しているという情報は,Fred HerschのFBページ等でもわかっていたが,その時はほぉ~,HerschにRavaかって思っていた私だが,このレコーディングを踏まえてという意味合いだったのだろう。いずれにしても,この二人に期待するのは究極のリリシズムってところであるが,その期待は決して裏切られることはない。冒頭のAntonio Carlos Jobimの"Retrato em Branco e Preto"から掴みはOKである。

二人が即興で演じた2曲目の"Improvisation"や,そのほかの曲でのRavaのソロにややアブストラクトな響きが強まる瞬間はあるが,基本的に歌心に溢れた素晴らしい演奏である。Fred Herschのファンとして言えば,Fred Herschらしいピアノの響きであり,実に嬉しくなる作品だ。最後をFred Herschのソロによる"'Round Midnight"で締めるのも,これまたファンには嬉しい演出である。

そして,Enrico Ravaがフリューゲル・ホーンで通したことも,Fred Herschのピアノとのいい混じり具合を生み出したと思える。こういうのを聞いていると,名人が二人揃えばこんなものよと思わなくもないが,ちゃんと期待に応えてくれるところが素晴らしい。そうした点も評価して,星★★★★★。こういう音楽は,本当にツボにはまる...。このコンビで是非来日して欲しいと思うし,続編も期待してしまうなぁ。

Recorded in November 2021

Personnel: Enrico Rava(fl-h), Fred Hersch(p)

2022年5月29日 (日)

これも久しぶりに聞いたStefano BollaniのECM初リーダー作。 #StefanoBollani

_20220526 "Piano Solo" Stefano Bollani(ECM)

これを聞くのも久しぶりだ。私はてっきりこのアルバムをこのブログで記事にしていたと思っていたのだが,このアルバムがリリースされたのが,このブログを開設する前ということもあって,取り上げたことはなかったというのが実態である。ブログを始めて結構な時間が経っている私だが,ではその間にこのアルバムを何度聞いたかと聞かれると,あまり記憶にないかもしれない。それを考えれば,CDの枚数が増えすぎるのは決していいことではないなぁと改めて思う。

それはさておき,レーベルにおける初リーダー作がピアノ・ソロということもあって,多彩なピアノ・スタイルを収めた感じになっているのは,ショーケースとしてはまぁ納得できるものかなと思う。美的なるものと,現代音楽的なタッチを交えながら,実に粒立ちのよいピアノを聞かせるStefano Bollaniである。オリジナルに,スタンダード,クラシックのアダプテーションに,Beach Boysまで入っているというところに,Stefano Bollaniのピアノ・スタイルの出自をうかがうこともできる。

しかしである。さすがに"Maple Leaf Rag"はやり過ぎだろうと思うのは決して私だけではないと思う。どう考えても総帥Manfred Eicherの趣味に合致する訳でもないところに,なんでこれが入っているのか?ECMで同じような思いを経験したのがKeith Jarrettのライブ・アルバム,"My Foolish Heart"であったがそれと同じ違和感を覚えてしまった。

多彩なスタイルを吸収しているのはわかるのだが,それを全部開陳しなくたっていいんじゃないの?と思えてしまうのがこのアルバムの難点。それでも全体としては出来は悪くないので星★★★★はつけられるが,やっぱり"Maple Leaf Rag"は浮いている...。

Recorded in August 2005

Personnel: Stefano Bollani(p)

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