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カテゴリー「ECM」の記事

2025年2月25日 (火)

哀愁と抒情を絵に描いたようなMathias Eickの"Lullaby"。いいねぇ。

_20250223_0001"Lullaby" Mathias Eick(ECM)

Mathias Eickという人はトランぺッターでありながら,ラッパらしい熱量を感じさせない人だ。トランぺッターと言えば,ハイノートを炸裂させるとか,優れた技巧を聞かせるとか,いろいろな個性の発揮の仕方があると思うが,Mathias Eickはラッパらしからぬところその個性と言ってもよいかもしれない。常に美的なフレージングを聞かせて,ECM好きの心を捉えているが,まさにノルウェイという場所から生まれる音楽だと思ってしまう。今回の新作も主題の通り,哀愁と抒情に満ちた音楽にうっとりしてしまった私である。

全編,Mathias Eickのオリジナルで構成された本作では,Manfred EicherはExecutive Producerの役割なので,実質的にはMathias Eick本人によるプロデュースであろう。Mathias Eickのラッパも魅力的なのだが,このアルバムの魅力を増幅させるのがKristjan Randaluのピアノだ。この人のECMでのアルバム"Absence"もよかったが,クラシックのアダプテーションにも取り組む(最近は「詩人の恋」もやっているようだ)ところから感じられる繊細なタッチが,Mathias Eickの音楽の魅力を増幅させている。

本作において,Mathias Eickはその声も聞かせているが,トランペットでのフレージンや音を声で置き換えている感じがあって,これがまた面白く,私の「ツボ」に入る音楽だ。まさに楚々としたサウンドが実に素晴らしい。そして最後の"Vejle (for Geir)"になってリズミックな展開を見せつつ,きょくのエンディングはしっとりと締めるというのも面白かった。こういう音楽は何回でもプレイバックできると思ってしまうアルバム。星★★★★★。

Recorded in January 2024

Personnel: Mathias Eick(tp, vo, key), Kristjan Randalu(p), Ole Morten Vågan(b), Hans Hulbækmo(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年2月11日 (火)

ECM New Seriesの"A Compendium"がデリバリーされた。

A-compendium"A Compendium" (ECM New Series)

ECM New Seriesからリリースされたアルバムを紹介する,その名も「概要」と題された本がデリバリーされた。まさにECM New Seriesのアルバム群を概観するには最適な書籍と言ってもよい。本の体裁としてはデザイン系に重きを置いたと思われる"Sleeves of Desire"や"Windfall Light"に近いのだが,よりカタログ的な色彩が強い。

前半は作曲家別,後半はプレイヤー別にアルバム群が整理されているが,アルファベット順で並んでいる訳ではないので,この並びにはManfred Eicherの思い入れが働いているのかもしれない。まぁ,作曲家のトップがArvo Pärtなのは,ECM New Seriesの始まりがArvo Pärtの"Tabula Rasa"だったから,理解はできるのだが,ちょいとわかりにくいと言えばわかりにくい。まぁ巻末にインデックスが付いているからよしとしよう。

しかし,単なるカタログにしてはデザインにしろ,紙質にしろにECMらしいこだわりが出ていると言うべきか。一種の美術書としての楽しみ方もあるかもしれないなと思わせるのがECMのECMたる所以。

ECM関係の書籍としては"ECM - A Cultural Archaeology"や"Horizons Touched ‐ The Music of ECM"も保有している私だが,単なる蔵書化しており,デザイン系の書籍はさておき,これらをいつ読むんだ?って思ってしまった(爆)。それにしてもどれもこれも随分値段が上がっているなぁ。状態良好で保存せねば(笑)。

2025年1月30日 (木)

Terje Rypdalの"Blue":プログレ的なるものとアンビエント的なるものの融合。

_20250126_0001 "Blue" Terje Rypdal and the Chasers(ECM)

Terje Rypdalはロック的なセンスを有するギター・プレイヤーであるが,この典型的トリオ編成でのアルバムは,ロック的な感覚は残しつつも,サウンドは主題の通り,よりプログレ的であり,アンビエント的と呼べるものと思う。ビートが明確な曲もあるが,むしろ多数派はノー・リズムで緩やかな音とが流れる。

本作と同じメンツで吹き込んだ"Chaser"というアルバムがあるので,本作ではChasersというバンド名になっているというのはちょいと安直ではないかと思いつつ,まぁバンド名何てそんなもんか...(笑)。しかし同じメンツにしては"Chaser"の,特にその冒頭の"Ambiguity"のよりロック・フレイヴァーが強いスリリングな響きや,フリーさえ吸収してしまうような音とは随分違うと感じてしまう。

こうなるとどっちが好みかって話になるだろうが,私としてはまぁどちらもTerje Rypdalだよなぁと思う。そうは言いつつ"Chaser"とていろいろな響きが混在しているから,それがTerje Rypdalの個性と考えればよいだろう。

いずれにしても,本作はややエッジは抑え気味のTerje Rypdalってところ。星★★★☆。

Recorded in November 1986

Personnel: Terje Rypdal(g, key), Bjørn Kjellemyr(b), Audun Kleive(ds, perc)

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2025年1月 2日 (木)

新年最初に聞いたのはBill Connors。

_20250101_0001 "Theme to the Guardian" Bill Connors(ECM)

新年最初に何を聞こうかと考えても,実は年末年始というのは音楽を聞くには最適な環境とは言えないところがある。家族との時間を大事にするべきということもあるし,そもそも自室から隣室へ音が響くこともあり,スピーカーから音出しをするのは少々気が引ける。ということで,チョイスしたのが本作であるが,そもそも一人だけ早起きの私は,ディスクも保有しているが,ストリーミング音源のAirPods経由でのリスニングとなったのであった(笑)。これが我が家の家庭内力学である(爆)。

元来,往時のECMレーベルはギタリストのアルバムを結構リリースしていたが,Return to Foreverの「第7銀河の讃歌("Hymn of the Seventh Galaxy")」ではAl Di Meolaの前任として,激しいギターを聞かせたBill ConnorsがECMからアルバムを出すこと自体驚きだったのではないか。しかもここで繰り広げられる静謐と言ってよい響きにはRTFとのギャップが大きかったと思える。しかし,私にとっては,それよりも本作がリリースされて半世紀ということにより大きな感慨を覚えてしまう。

本作はBill Connorsによる多重録音によるソロ作であるが,この響きからすればアンビエントと言ってもよいように思える部分もあり,新年を穏やかに過ごすには丁度よかったって気もする。一部エレクトリック・ギターにエフェクターをかましている部分もあるが,基本はアコースティックな響きの本作は,リリースから約半世紀を経た現在の耳にも十分フィットするところがECMレーベルの素晴らしいところだと思える。かつ,そもそも当時は音のよさを語られることの多かったECMであるから,音にも全然古臭さを感じさせないと思ってしまった。

いずれにしても,ここで聞かれる響きは新年最初の音楽としては適切だったと思う次第。今回,ストリーミング音源を見ていて,Bill ConnorsってPaul Bleyとも共演していたのねぇなんて新たな発見もあったが,RTFとPaul Bleyって対極ではないかと思ってしまった。どういう頭の構造をしていたらこんなばらけた音楽をやれるのか...って感じである。

Recorded in November 1974

Personnel: Bill Connors(g)

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2024年12月27日 (金)

Arild Andersenのソロ作:ECMでしか成り立たないよなぁ。

Landloper "Landloper" Arild Andersen(ECM)

ECMというレーベルはベースやチェロのソロ・アルバムをリリースしてしまう稀有な存在と言ってよいが,それは総帥Manfred Eicherがベーシストだったという出自による部分もあるのかもしれない。今回はそのEicherはExecutive Producerとなっているので,これはArild Andersenの持ち込み音源なのかもしれない。

冒頭の"Peace Universal"こそ宅録ながら,それ以外はライブ音源で,Arild Andersenによる完全ソロだが,シークェンサーのようなエレクトロニクスも駆使しているので,相応に色彩感は確保されている。もはやジャズと言うよりアンビエントな世界であるが,想定以上の聞き易さもあって,これはなかなか楽しめるアルバムである。

アンビエントな響きと言いつつ,オリジナルに加えて,スタンダード"A Nightingale in Sang in Berkley Square"やOrnette Colemanの"Lonely Woman"をCharlie Hadenの"Song for Che"をメドレーでやったり,Albert Aylerの"Ghost"も別のメドレーの一部に組み込んだりと,幅広い選曲が面白い。また先述の冒頭に収められた"Peace Universal"はドラマーのBob Mosesのオリジナルのようだが,よくぞこんな曲を見つけてくるものだと感心してしまうほど,掴みはOKなのだ。

まぁ,このアルバムを聞いて面白いと思えるかどうかはそれぞれのリスナーの嗜好次第だが,私はこのサウンドは結構いいと思う。ECMならではの世界観としか言いようがないが,ついつい評価も甘くなり,星★★★★☆。

Recorded Live at Victoria National Jazzscene on June 18, 2020 and at Home

Personnel: Arild Andersen(b, electronics)

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2024年12月22日 (日)

"Ambience of ECM"に行ってきた。

Ambience-of-ecm 今年はECMレーベルの創立から55周年を迎え,1984年にスタートしたクラシック・シリーズ「ECM New Series」も40周年を迎えることを記念して,12/13~12/21日の期間,"Ambience of ECM"なるエキシビションが日本で初めての開催されるということで,九段下の九段ハウスにて開催されるということで行ってきた。

この九段ハウスというのは旧山口萬吉邸ということで,瀟洒な建築にECMというのはなかなかのフィット感である。そこで岡田拓郎,岸田繁,原雅明,三浦透子,SHeLTeR ECM FIELDが選曲したプレイリストを,オーディオ・メーカーの機器を使って聞くというのがこのイベントであり,これをエキシビションと言えるかというと,若干微妙な部分はあるものの,まぁ雰囲気を楽しめばいいという類のものと思う。だが,本質的な「回顧展」と呼ぶにはいささか規模が小さいと感じたのも事実であった。

音楽を聞く楽しみはもちろんなのだが,ゆっくりと時間を過ごす余裕もなかったのは少々残念ながら,私がむしろ楽しんだのが,ECMに関連するアーティストのポスター群の方であった。ジャケット・デザインには一貫性と美的な感覚を備えたECMレーベルのことである。ポスターもやはりおしゃれなのだ。どうせならこういうポスターを復刻して販売してくれたらいいのになんて思っていた私であった。

まぁECM好きは確実に刺激されるイベントだったということでのご報告である。

Ambience-of-ecm-posters

2024年12月16日 (月)

これも現物未着のためストリーミングで聞いたThomas Strønenの"Relations"。自由度高っ!(笑)

Relations"Relations" Thomas Strønen (ECM)

これも発注のタイミングで,リリースされたものの現物が届かないので,ストリーミングで聞いている。このジャケを見ると魅力的なメンツが並んでいるので,バンド形態での演奏と思ったら,基本的にはリーダーThomas Strønenのソロ及び参加したメンツとのデュオ・アルバムである。

いきなりThomas Strønenのソロ・チューンでスタートし,おぉっ,これは何か雰囲気が違うと思わせるのだが,各々のメンバーと繰り広げられる演奏は主題の通り極めて自由度が高い。破壊的なフリー・ジャズという感じではないが,書かれた音楽ではなく,スポンテイニアスなインプロヴィゼーションと言ってよいものばかりだ。1曲当たりの収録時間は短く,最長でも冒頭の"Confronting Silence"の4分4秒だし,全体でも35分程度だ。まぁこういう即興的な演奏はこれぐらいが丁度いいと思わせるが,これがいかにもECM的でなかなか面白い。「高野山」なんて曲もあるしねぇ。

ECMのサイトによれば,Thomas Strønenがアルバム"Bayou"のレコーディングを早めに終了させたことで生まれたスタジオの空き時間に,総帥Manfred Eicherがソロ・パーカッションでの演奏を示唆したのが契機で,そこから数年かけて出来上がったのがこのアルバムということらしい。

メンツにはJorge Rossyも含まれているが,ここではJorge Rossyはピアノをプレイしている。Jorge Rossyはドラムスだけでなく,ヴァイブやピアノのプレイも多くなっているが,"Nonduality"をはじめとして,静謐で現代音楽的な響きを聞かせて,何でもできるねぇと思わせる。

アルバム全体を貫くのは現代音楽にも通じるクールな音空間であり,即興性を重視した演奏はおそらくはリスナーの好みは大きく分かれるはずだ。Craig Tabornはまぁわかるとしても,日頃のクリポタの演奏とは一線を画するところがあるが,私は結構楽しんだクチだ。正直言ってしまえば何度も,あるいは頻繁にプレイバックしようという感じの音楽ではないのだが,私にとっては好物に近い音楽と言ってよいだろう。こういう想定外のアルバムが出てくるところがいかにもECMである。ちょいと甘いと思いつつ,星★★★★☆としてしまおう。尚,Sinikka Langelandが弾いているカンテレというのはフィンランドの民族楽器だそうだ。へぇ~。

Recorded between 2018 and 2023

Personnel: Thomas Strønen(ds, perc), Chris Potter(ts, ss), Craig Taborn(p), Jorge Rossy(p), Sinikka Langeland(kantele, vo)

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2024年11月12日 (火)

ECMお得意(?)のKeith Jarrett音源拾遺集。

Old-country"The Old Country: More from the Deer Head Inn" Keith Jarrett(ECM)

引退状態のKeith Jarrettの新作はもはや望むべくもないが,ECMが過去の音源を掘り起こすというのは,Keith Jarrettがまだ元気に演奏をしている時からあったから,まだまだ眠っている音源はあるはずだと考えて然るべきだ。

そんな中,リリースされたのが本作だが,これは92年に録音され,94年にリリースされた"At the Deer Head Inn"の残りテイクだから,リリース30周年という意味合いもあるように思える。まぁ聞けばわかる通り,安定のKeith Jarrettの演奏であり,眠らせておくのはもったいないと考えるのが当然だ。

"At the Deer Head Inn"が珍しかったのは,そのメンツである。Keith JarrettはGary PeacockとはStandards Trioで演奏を続けていたが,Paul Motianとは久々の共演(16年ぶりだったらしい)だったし,更にこの3人によるレコーディングは前作並びに本作以外にはないということで,その珍しさがリリース当時からあった。だが,Jack DeJohnetteのシャープなドラミングに慣れてしまっていると,Paul Motianのドラミング(特にスティック使用時)は少々ドタドタ感があるように思える。そう言えば,Paul MotianがEnrico PieranunziとやったVillage Vanguardでのライブでも同じような感覚を持っていた(それに関する記事はこちら)。Paul Motianは黄金のBill Evans Trioも支えたドラマーであるし,リーダーとしても一流だったが,ここでの演奏には若干違和感を感じる部分が一部あるように思えた。Keith Jarrettとの共演に関して言えば,American Quartetや"Hamburg '72"では全く違和感はなかったのだが,ドラムスのセッティングゆえか,あるいはスタイルの経年変化もあったのかもしれないなんて思いつつ聞いていた。

しかし,上述の通り,トリオの演奏としては安定感があって,十分に楽しめる。よく知られたスタンダードやジャズ・オリジナルでも,彼らの手にかかればやはり凡百のミュージシャンが演じるものとは異なる魅力的な音楽が生まれることを実証している。残りものと言ってしまえばそれまでだが,そんじょそこらの残りテイクとは異なるってことで,リリースされた意義も認めて星★★★★☆。

余談だが,本作が収録されたDeer Head Innがあるのはペンシルバニア州アレンタウンである。あのBilly Joelが歌った"Allentown"そのものだが,先の大統領選挙でも話題になったまさにラスト・ベルトの代表のような街だ。Keith Jarrettがこの街の出身というのは,Keithのイメージと少々違う面白い事実だと思った。

Recorded Live at the Deer Head Inn on September 16, 1992

Personnel: Keith Jarrett(p), Gary Peacock(b), Paul Motian(ds)

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2024年10月 3日 (木)

素晴らしくも静謐な雰囲気のNorma Winstoneの新作。

_20241001_0001 "Outpost of Dreams" Norma Winstone / Kit Downes (ECM)

とうに傘寿を過ぎたNorma Winstoneの新作。リリースされたのは少々前になるが,買い合わせの関係で今頃の入手となった。ECMでの前作,"Descansado: Songs for Films"はその名の通りの映画音楽集であったが,今回は自身もECMにリーダー作を持つKit Downesとのデュオ作。全10曲中,1曲のトラッドを除いて,全てNorma Winstoneが詞を書いている。

Ralph Towner好きの私としては"Beneath an Evening Sky"についつい注目してしまうが,これがまたよいのだ。そのほかにもJohn TaylorやらCarla Bleyやらの曲も選んでいるが,曲の良さもあるが,Norma Winstoneの声に衰えが感じられないところが凄い。もちろん,ヴォーカリストとしてのピークとは言えないだろうから,やや危なっかしいと思わせる部分がない訳ではない。しかし,Kit Downesの適切かつ楚々とした美しいバッキングもあり,瑕疵と感じさせないレベルであるし,何よりも傘寿を過ぎていることを考えればこの歌いっぷりは見事と言うしかない。

こうした活動を見ていると,クリエイティブな活動をしている人には「老い」というものがないのかとさえ思わされる。Charles Lloyd然りであるが,精神的に矍鑠としているのは頭や指を使っているからだと思ってしまう。私もせいぜい見習わねば。因みにKit DownesはかつてECMでもプロデュースを務めたSun ChungのRed Hookレーベルで,Bill Frisell,Andrew Cyrilleと"Breaking the Shell"というかなりアバンギャルド度の高いアルバムを出しているが,そのAndrew Cyrilleだって84歳だしなぁ。ミュージシャンには年齢差とかは関係ないらしいが,ここでのKit Downesとは全然違うのも面白い。共演者によって演奏スタイルを完全に分けているのも見事なものだ。星★★★★☆。

Recorded in April, 2023

Personnel: Norma Winstone(vo), Kit Downes(p)

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2024年9月29日 (日)

Tord Gustavsen待望の新作。やっぱりいいですわぁ~。

_20240928_0001 "Seeing" Tord Gustavsen (ECM)

諸般の事情から1日で復活だ(笑)。

前作"Opening"から約2年半の時を経てリリースされたTord Gustavsenの新作である。前作ではエレクトロニクスも使用していたが,今回はアコースティックに専念し,不動のトリオにより,彼ららしい内省的で思索的な音楽を展開している。

このいかにもECMらしい演奏やサウンドを好物とする私にとっては,Tord Gustavsenのトリオのアルバムは常に待望と言ってもよい。ストリーミングが主流となったご時勢においても,必ずフィジカルな媒体を購入したくなる人なのだ。

Tord Gustavsenの音楽はかなり濃厚に宗教に紐づいており,祈りにも似たところを感じさせるのはいつもの通りであるが,それこそ居酒屋で有線で掛かっているようなジャズとは完全に一線を画するものだ。 この静謐な音楽に対して魅力を感じるか否かは完全にリスナーの好みではあるが,私にとっては身体がこういう音楽を求めることもあるという点において,重要にして欠くべからざるミュージシャンであり,アルバムだ。星★★★★☆。

Recorded in October 2023

Personnel: Tord Gustavsen(p), Steinar Raknes(b), Jarle Vespestad(ds)

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