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カテゴリー「ECM」の記事

2020年8月13日 (木)

Paul Bleyの”Fragments":ECMの本領発揮って感じの音。

_20200812 "Fragments" Paul Bley(ECM)

正直言ってしまうと,私はPaul Bleyと相性があまりよくない。この人のアルバムを聞いて,これは凄いって思ったことが実はないのだ。そういうこともあって,実はこのブログでもPaul Bleyはあまり取り上げていないのも仕方がないのである。ECMでのアルバムは全部ではないとしてもそこそこ保有しているが,この人のアルバムを聞く頻度は決して高くない。結局苦手なのである。

そんな私が久々に取り出したのが本作なのだが,基本は幽玄な響きを聞かせながら,"Line Down"などではアブストラクトな路線も聞かせるという一方,Carla Bley作の"Seven"等では美的に迫ってくるこのアルバムは,普通の人にとっては結構ハードルが高いと思わせるに十分である。だが,ここでのメンツの組み合わせなんて,まさにECMの妙とでも言うべきものであり,こんな編成はECM以外では絶対にありえないものなのが,ECMのECMたる所以だろう。

本作のライナーには珍しくもSteve Lakeによる長文が寄せられている。私が不勉強なだけかもしれないが,ECMではNew Series以外ではあまりライナーへの寄稿は見たことがないような気がする。しかも書いているのが,Manfred Eicherがプロデュースしないようなフリー系ミュージシャン(?)のアルバムの制作担当をしているSteve Lakeである。アルバムを聞いていて,なんだかECMにしては雰囲気が違うと思うと,Steve Lakeがプロデューサーだったって経験は何度かしたことがあると思う。だが,このアルバムはSteve Lakeはあくまでもライナー担当で,音楽に関してはEicherの美学炸裂って感じというのが率直な思いである。

決して難解ではないのだが,ハードルが高い。しかも普通の一般的なジャズとは全然違う。そういう音楽であり,このアルバムは特定のリスナー(かつ結構限定的だろう...)には訴求しても,大多数の人にとっては「何のこっちゃ」にしかならないと思えるのだ。だが,ECMというレーベルの音楽をかなり聞いていれば,こういうのが苦にならなくなるのである。苦にならないどころか,むしろ快感になってくるのではないかという感覚と言ってもよい。世の中は猛暑に襲われているが,これを聞けば,8割方の曲で冷気が漂ってくる感じがするってところか。気まぐれで聞いたのだが,部屋の温度が数℃は下がった気がした私であった。星★★★★。

Recorded in January 1986

Personnel: Paul Bley(p), John Surman(ss, bs, b-cl), Bill Frisell(g), Paul Motian(ds)

2020年8月 3日 (月)

これも久々に聞いたら,またもスリリングな響きに痺れてしまった"Extensions"。

_20200802"Extensions" Dave Holland Quartet(ECM)

このアルバムを聞くのも久しぶりだったのだが,これほどスリリングでカッコいい音楽だったのか...と絶句してしまった私である。はっきり言ってしまおう。このアルバムの鍵を握るのはKevin Eubanksである。後にPrismのメンバーとして改めてDave Hollandと共演するKevin Eubanksの鋭いギターが,このアルバムのスリルを倍加させたと言っても過言ではない。Prismも素晴らしいアルバムだった(記事はこちら)が,このアルバムも同列に並べたい。

そもそもSteve ColemanやMarvin "Smitty” Smithというメンバーからも鋭い演奏になるのは想定できる。しかし,ここでのKevin Eubanksが加えたギターの音は,実に刺激的であり,PrismにKevin Eubanksを呼んだのも,Dave Hollandがこのアルバムでの共演を忘れられなかったのではないからではないかとさえ思ってしまった。

全6曲をHolland,Coleman,Eubanksがオリジナルを2曲ずつ提供して構成しているが,これはどこから聞いても刺激的で実に素晴らしいアルバム。こういうのはもっと頻度を上げて聞かねばならん!と改めて思った次第。反省も込めて星★★★★★。次は"Triplicate"でも聞くか(笑)。

Recorded in September 1989

Personnel: Dave Holland(b), Steve Coleman(as), Kevin Eubanks(g), Marvin "Smitty” Smith(ds)

2020年8月 2日 (日)

久しぶりに聞いたらタイトル・トラックのスリリングな響きに引き込まれてしまったEnrico Rava盤。

_20200730 ”The Pilgrim and the Stars" Enrico Rava (ECM)

ECMレーベルもリリースされるアルバムの数が多過ぎて,さすがに最近はストリーミング頼みになり,買うアルバムも随分減ったと思う。そうは言いながら,過去にリリースされたアルバムは結構な枚数を保有しているのだが,家人の言葉を借りれば,「いつ聞くの?死ぬまでに一回も聞かなんじゃない?」ということになってしまう可能性なきにしもあらずである。保有しているアルバムは記憶しているつもりだが,しょっちゅう聞くって感じのアルバムはそう多くはないのも事実だ。

Enrico RavaのECMのアルバムも結構な枚数になっているし,私もほぼ保有していると思うが,プレイバックの回数が多いかと言えば,必ずしもそうでもない。実のところ,RavaのアルバムではVenusレーベルの"Renaissance"をプレイバックする回数の方が多いのではないかとさえ思ってしまう。だが,こうして久しぶりに聞いてみると,タイトル・トラックのECMらしい出だしから始まって,熱を帯びてくる展開に痺れてしまった。今回久しぶりに聞いてみて,編成も同じということもあり,Paolo FresuのDevil Quartetの源流はこの辺にあったのではないかなんて思ってしまった。

まぁ,ここに揃ったメンツを考えれば,間違いないよねと思うのが普通なのだが,やっぱりこれはよい。私がラッパのワンホーン好きというのも影響しているところは多分にあるが,この硬派な(と言っても「どフリー」ではない)サウンドには痺れる。ECMの比較的初期のアルバムであり,既にリリースから45年を経過しているのに,全く古さを感じさせないって凄いことである。ちゃんと昔のアルバムも聞かないといかんという反省と自戒も込めて星★★★★★としてしまおう。Ravaのラッパの音は素晴らしいし,マジでカッコいいですわぁ~。

Recorded in June 1975

Personnel: Enrico Rava(tp), John Abercrombie(g), Palle Daelsson(b), Jon Christensen(ds)

2020年7月29日 (水)

John ScofieldのSteve Swallow集:これがECMから出ることが実に意外。

_20200726-3 "Swallow Tales" John Scofield(ECM)

昨日,Steve SwallowとJohn Taylorのデュオを取り上げたからという訳ではないが,このアルバムの記事をアップしていなかったってことで,遅くなったが本作を取り上げよう。

正直言って,ジョンスコとECMってイメージ的にはあまり結びつかない。私の記憶ではJack DeJohnetteとやったTrio Beyondと,Marc JohnsonのBass Desiresぐらいって感じだが,どっちもECMっぽくないと言えばその通りだと思う。しかし,Bass Desiresのカッコよさは永久に不滅だと思うし,結局は「結びつかない」と言ったって,私のイメージだけの問題である。

それでもって,本作のメンツはジョンスコにSteve Swallow,そしてビルスチュなので,Verveの"EnRoute"と同じである。この3人はこの編成に加えて,別の組み合わせでもことあるごとに共演しているから,勝手知ったるトリオってことになるが,今回のキモはSteve Swallow曲集ってことになる。だが,このアルバム,録音されたのがニューヨーク大学のSteinhardt School of Culture, Education and Human Developmentにあるスタジオでの録音,かつエンジニアリングもECMとは縁のないであろうTyler McDiarmidということで,これは明らかに(そしておそらくはSteve Swallowによる)持ち込み音源ってことだろう。そういうことなので,ECMからでなくても出て不思議はないアルバムであり,ECM的な感覚は実は薄い。なので,これはECMレーベルのアルバムとして聞くことにはあまり意味はないように思う。

なので,このアルバムを評価するためには,企画としてのSteve Swallow集をどう捉えるかというところになる。Steve Swallowが優れたメロディ・メイカーであることは,John Taylorとのデュオ作のところでも書いた通りだが,ここでは素材としてSwallowの曲を使いつつ,ジョンスコが気持ちよさそうにソロを展開しているのが聞きものって気がする。ジョンスコも来年は古希を迎えるってことを考えると,ガンガン引き倒すって感じではなくなっているが,むしろ枯れた味わいを感じさせるというところか。もちろん,ジョンスコのことであるから,「枯れた」と言っても,デニチェンとやっているのとかと比べると随分おとなしくなったということだが,フレージングのアウト具合は不変である。

そして,付き合いの長いSteve Swallowの曲を,きっちりプレイしているところにジョンスコのSteve Swallowに対するリスペクトなり,友情なりが感じられる。正直言って,刺激には乏しいと思えなくもないが,優れたミュージシャン同士によるレベルの高い対話であり,かつ丁寧な演奏っぷりが実にいいと思う。そうした取り組み姿勢も評価し,ちょいと甘いと思いつつも星★★★★☆としよう。

それにしても,大学の中にレコーディング・スタジオを持っていることがまさにNYUらしい。

Recorded in March 2019

Personnel: John Scofield(g), Steve Swallow(b), Bill Stewart(ds)

2020年7月15日 (水)

Stanley Cowellの「幻想組曲」:これを聞くのは何年ぶりか?(苦笑)

"_20200713Illusion Suite" Stanley Cowell Trio(ECM)

在宅勤務のいいところは,本当はよくないのだろうが,「ながら仕事」ができることである。音楽をプレイバックしながら作業をしていると,結構捗るのだ。音楽は生産性を上げると言い張りたくなるようにも思えるが,ここ数カ月の在宅勤務で,滅多に聞かないアルバムを聞くチャンスに恵まれることが多くなった。それにより私は温故知新であったり,「こんなのも持っていたか?」なんて自分の記憶の曖昧さに驚いたりと様々な感情に襲われるのだ。

それでもって,今日はStanley Cowellの唯一のECMでのアルバムである本作なのだが,このアルバムを保有していることは認識していても,正直言ってなかなかプレイバックのチャンスはなかった。本作のCDがリリースされたのは日本だけらしいが,私の保有盤の帯を見るとECM30周年なんて書いてあるではないか。即ち20年以上前である。買ってすぐには聞いたはずだが,それ以来何度プレイバックしたのかと聞かれると,答えに窮してしまう。だからいつも家人に「死ぬまでに一回も聞かないCDだらけじゃないの?」なんて言われ続けるのだが,日頃聞いていなかった音源に触れるチャンスを与えてくれた在宅勤務には感謝しなければならない(笑)。

そんな本作であるが,レコーディングされた1972年という時代を反映していると言ってもいいかもしれないが,フリー的なものあり,ファンク的なものあり,美的なものもあるという若干とっ散らかった印象はあるものの,なかなか楽しめるアルバムである。そしてエレピを使っている"Ibun Mukhtarr Mustapha"なんて全くECMらしくないサウンドと言ってもよい。

Stanley Cowellは後に結構コンベンショナルな演奏も聞かせるようにはなるが,この頃はStrata-Eastレーベルの主宰者の一人としての活動もしていたことを考えると,やっぱりECMはカラーが違うのではないかと思わせつつ,このアルバムはECMというレーベルにフィットしているように結局は思わせるところが実に面白い。

このアルバムが異色に感じさせるところがあるとすれば,それはStanley Clarkeによるところが大きいが,それは一部でエレクトリック・ベースを弾いていることも影響していると思える。まぁ,"Return to Forever"だってStanley Clarkeのプレイぶりは変わらないのだが,現在のECMレーベルからは考えにくい音だとは思う。それでも,こういう時代のこういう音を経て,ECMはレーベル・カラーを確立したと言える訳で,こういうアルバムを聞いて,「へぇ~」ってなるのも必要なことなんだと思う。

超久々に聞いたはずのこのアルバムだが,なかなか面白かった。ということで星★★★★。

Recorded on Novemver 29, 1972

Personnel: Stanley Cowell(p, el-p), Stanley Clarke(b, el-b), Jimmy Hopps(ds)

2020年6月 4日 (木)

来た!Marcin Wasilewski Trioの新作。Joe Lovanoとの共演やいかに?

_20200601 "Arctic Riff" Marcin Wasilewski Trio with Joe Lovano (ECM)

私にとって今の時代,最も期待させ,それに応えてくれるピアニストはBrad Mehldau,Fred Hersch,そしてこのMarcin Wasilewskiだと言ってもよい。昨年1月のMarcin Wasilewski Trioのライブはまさに完璧と言いたくなるような素晴らしい演奏であったし,それに先立つ"Live"も2018年のベスト盤に選んでいる。それぐらい私を痺れさせてくれるピアニストなのだ。

そのMarcin Wasilewski Trio待望の新作だが,今回はゲストでJoe Lovanoが加わるところがポイントである。Marcin WasilewskiのトリオはもともとTomasz Stankoのバックを務めていたし,自身のアルバムでもサックス奏者Joakim Milderを迎えた"Spark of Life"というアルバムもあるから,管が入っていてもそれは問題とはならないのだが,Joe Lovanoがどうなのかという点に,やはり注意が向いてしまう。しかし,冒頭からそんなことは全く気にならないほど,美しい音楽が聞こえてくる。

このアルバムはWasilewskiの曲が4曲,Joe Lovanoが1曲,4人の共作が4曲,そしてCarla Bleyの"Vashkar"が2回というプログラムであるが,今までにないのはこの4人の共作ということなる。これは共作というよりも,コレクティブ・インプロビゼーション:集団即興と捉えるべきであり,Marcin Wasilewskiにとっては珍しい展開と言ってもよいだろう。これが「熱くならないフリー」って感じを醸し出していて,それでアルバムのタイトルが「北極のリフ」ってことになるのかと思ってしまう。

はっきり言ってしまえば,こういうのは私がMarcin Wasilewskiに求めている世界とはちょっと違うのだが,それ以外については文句はない。でもやっぱりこの人たちはピアノ・トリオでの音楽を追求すべきだろうというのが正直なところ。それでもJoe Lovanoとの相性は決して悪いとは思わないので,それはそれでありなのだが,やっぱり集団即興がなぁ...って感じなのである。

しかし,その一方でWasilewskiのオリジナル,”L'Amour Fou"でのフレージングを聞いていると,おぉ,Herbie Hancockに影響されていたのかなんて思ってしまったのが面白かった。でもよくよく考えてみれば,"Actual Proof"も"Spark of Life"や"Live"でもやってるんだから気づけよ!ってところだが,フレージングで影響を感じたのは今回が一番強烈だったかなってところである。

いずれにしても,本作も十分によく出来たアルバムだとは思うが,いつものように手放しで喜べないのがちょっと残念。それでもやはり彼らには甘く,星★★★★☆。

Recorded in August 2019

Personnel: Marcin Wasilewski(p), Slawomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz (ds), Joe Lovano(ts)

2020年5月12日 (火)

東京録音でもECMらしさが横溢するWolfgang Muthspielのトリオ・アルバム。

_20200510-3 "Angular Blues" Wolfgang Muthspiel(ECM)

このアルバムがリリースされて結構時間が経過しているが,なかなか記事にできていなかったものをようやくアップである。私はライナーを見るまで,このアルバムが東京で録音されたものだとは認識していなかったのだが,同じメンツで来日し,Cotton Clubに出演した際に録音されたものである。このメンツがライブをやるのであれば,私は見に行ってもよさそうなものだったのだが,当時の記事を見返してみると,丁度バングラデシュに出張していた時期とかぶっていたのであった。よって,彼らのライブには参戦していないが,ここでやっているような音楽をやっていたのであれば,見に行っておけばよかったと思っても後の祭りである( ノД`)。

冒頭から3曲はアコースティック・ギターによる演奏,その後がエレクトリックに転じるが,序盤の印象としては静謐で穏やかな響きである。ライブでこういう演奏をしていたとすれば,心地よい睡魔に襲われたかもしれないが,それは退屈を意味するのではなく,あくまでも心地よいいのである。エレクトリックに転じても印象は大きく変わらないが,5曲目の"Ride"でこれぞジャズ・ギターって響きを聞かせて,私をワクワクさせてくれた。先日,私はKurt Rosenwinkelの新譜におけるギターの音に違和感をおぼえたと書いたが,私がギターに期待する音ってのはどちらかと言えばこっちの方なのだ。今はトータルなミュージシャンとしての実力はKurt Rosenwinkelの方が上かもしれないが,私にとっては,アルバムとしてはこのWolfgang Muthspielの方が魅力的に響くのだ。これはあくまでも好みの問題であるが,結局は最後はリスナーとしての私の好みに行きつく(きっぱり)。

全体を通じて,刺激的ではないとしても,奏者3人が一体となった実にレベルの高い演奏で,久しぶりにインタープレイなんて言葉を使いたくなるような演奏を大いに楽しんでしまった。多分ライブでもこんな感じだったんだろうと思うと,ますます行けなかったのが残念である。最後の"I'll Remember April"なんかは,策を弄し過ぎというか,アンコール・ピース的に,もう少しストレートにやってもよかったのではないかと思えるところもあって,星★★★★とするが,なかなかの味わい深い佳作だと思う。おそらくはCotton Clubでの演奏が満足感が高かったため,急遽なのか計画的かはわからないとしても,ライブの熱気が冷めぬうちにレコーディングし,それをECMに持ち込んだものということだろうが,それが東京で起こったことは実にめでたいということにしておこう。

Recorded in August, 2019

Personnel: Wolfgang Muthspiel(g), Scott Colley(b), Brian Blade(ds)

2020年3月23日 (月)

Anna Gourari:ECM New Series得意のパターンだが,こういうのにはまるのだ。

_20200321"Elusive Affinity" Anna Gourari(ECM New Series)

以前にも書いたように,私はECMの結構なファンだが,ECM New Seriesまではなかなか全面的にフォローできていない。ReichやSchiffのアルバムは例外として,そのほかで買うのは若干の例外はありつつも,ほぼ現代音楽系のピアノ音楽に限定と言ってもよい。私はPeter Serkinのピアノを通じて,現代音楽のピアノに目覚めさせられたと言ってもよいが,ECM New Seriesからリリースされるピアノ音楽は,ストレートに私に訴求してくるのだ。なので,このアルバムも後追いで買ったものだが,やっぱりはまってしまう魅力があった。

ECM New Seriesではこのブログにおいては,最近ではAlexei Lubimovの"Der Bote"を取り上げた(記事はこちら)が,そこでもバロックと現代音楽が混在するプログラムであった。まさにこういうプログラムは,リサイタルのプログラムならありえようが,レコーディングとしてはECM New Series以外ではありえないものだと思っている。本作においても同様で,冒頭と最後にバッハ編曲によるヴィヴァルディとマルチェッロを配置し,その間に現代音楽曲を挟み込むというものなのだが,これが実に心地よい。結局のところ,私は現代音楽のピアノの響きが好きな訳だが,そうした私の嗜好にストレートにフィットしてしまった。

なかなかこういう音源まで追い切れないのは歯がゆいが,それでもちゃんと聞くことができてよかったし,春先のまったりした気分の中で,涼やかな気分さえ味合わせてくれたと言っては言い過ぎか。おそらくこれからもこうしたアルバムはリリースされ続けると思うが,それを見逃さないようにしたいものである。反省も込めて星★★★★★としてしまおう。いやぁ,ええですわ。

Recorded in January 2018

Personnel: Anna Gourari(p)

2020年2月19日 (水)

Carla Bley,Andy Sheppard,Steve SwallowのトリオによるECM第3作。

Life-goes-on "Life Goes on" Carla Bley / Andy Sheppard / Steve Swallow(ECM)

このトリオによるECMレーベル第3作がリリースされた。彼らの初レコーディングは95年の"Songs with Legs"に遡るので,今年で結成25年という節目になるらしい。私は"Songs with Legs"は未聴であるが,ECMでの第1作”Trios",そして第2作"Andando di Tiempo"については絶賛を惜しまなかった。その2枚は2013年と2016年の年間ベスト盤の一枚にも選んでいるから,どれほど評価しているかはお判り頂けるだろう。そうした彼らの新作である。期待しない訳にはいかない。

このアルバムには次のように書かれている。”Carla was hit by a bucket of shit and the band played on. She opened the door and was hit by some more and the band played on. Could this be the ending or just the biginning of life without music or fun?" これをどう解釈するかはなかなか難しいところであるが,皮肉な感覚に満ちているのは間違いないところである。それがどう音楽に反映するのか?

今回のアルバムは3つの組局から構成されているが,冒頭のタイトル・トラックはいきなりのブルーズにびっくりする。それに続く"Life Goes On"組曲に含まれた曲を聞いていて,私は前作に感じたような「深み」は感じなかったのだが,むしろ,音楽を通じたポジティブな感覚をおぼえていた。

しかし,2つ目の組曲"Bearutiful Telephone"はダークな響きで始まる。この曲はECMのサイトによれば,Donald Trumpがホワイト・ハウスに足を踏み入れた時に,“These are the most beautiful phones I’ve ever used in my life"と言ったとか言わないとかいう逸話への皮肉としか思えない。まさに何言ってやがるみたいなCarla Bleyの心証を反映したものと言いたくなってしまう。

3つ目の組曲"Copycat"の意味するところは不明であるが,”After You"~”Follow the Leader"~"Copycat"というタイトルには別な皮肉を感じてしまうのはうがち過ぎだろうか。いずれにしても,ここでは比較的中庸な表現が用いられているって感じである。

トータルで考えると,やはり"Andando di Tiempo"に感じた音楽的な深さは薄れたが,それでも非常に三者によるレベル高い会話を聞かせてくれるという点では評価したいし,彼らにしか出せない音だと思う。Carla Bleyも80歳を過ぎても,まだまだいけるところを実証したアルバム。半星オマケしてちょいと甘めの星★★★★☆ということにしよう。

Recorded in May, 2019

Personnel: Carla Bley(p), Andy Sheppard(ts, ss), Steve Swallow(b)

2020年1月 3日 (金)

今年最初の音楽鑑賞はEgberto Gismonti。

_20200102-2 "Solo" Egberto Gismonti(ECM)

新年最初に何を聞こうかって思いながら,手に取ったのがこのアルバム。今や,ECMの保有アルバムの枚数も結構増えた私だが,私が最初期に購入したECMのアルバムのうちの一枚である。本作は,当時受験生だった私が,予備校の夏季講習の帰りに確か京都の輸入盤屋で購入したような気がする(遠い目...)。だが,何でこれを買う気になったのかは全く記憶から飛んでいる(爆)。

それから月日を経ても,相変わらずEgberto Gismontiのアルバムがリリースされると購入している私だが,購入した当時に彼の音楽の魅力に本当に気づいていたかと問われれば,「否」と答えざるをえないかなぁなんて思う。血気盛んな高校生がこの音楽に魅かれるようなことがあれば,逆にそれもおかしいのではないかとさえ思ってしまう。

だが,年齢を重ねて改めて聞いてみると,ここで展開されるEgberto Gismontiのギターとピアノの音色には惚れ惚れとしてしまう私がいるというのが実態である。特にGismontiのピアノの美感は実に素晴らしく,こういう音楽を聴いていると,今年一年も何とか乗り切れてしまうような気がしてしまう。ソロ演奏だけに刺激的な感じはしないが,穏やかに新年を過ごすにはちょうどいいって感じなのである。しかも,ここで聞かれる8弦ギターは,私が愛してやまないRalph Townerからの借り物らしいが,ギターもピアノもうまいというところに,Ralph Townerとの同質性も感じさせるところに私は魅かれるのかもしれないなぁなんて思ってしまった。

実はこのアルバムを聞くのも久しぶりのことだったのだが,非常に楽しめてしまった私である。星★★★★★。

Personnel: Egberto Gismonti(g, p, vo, bell)

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