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カテゴリー「ECM」の記事

2026年9月25日 (金)

今,ECMに求めうる理想の音と言ってもよい田中鮎美のトリオ作。

_20260924_0001 "Windflower" 田中鮎美(ECM)

昨今は以前ほどECMレーベルのアルバムを追うということも減ってきているが,気になるアルバムはチェックするようにはしている。このアルバムもそうした対象となったものであるが,これが実に素晴らしい作品であった。ECMから想起されるクールで静謐なサウンドそのものが体現されていて,長年のECMレーベルのファンとしては嬉しくなってしまったのであった。

もはやECMから日本人プレイヤーのアルバムが出ても驚くことはないとしても,田中鮎美は本人のアルバムや本作にも参加しているThomas Strønenなどが残っていて,いかにもECM的な響きを生み出してきていたとは思う。リーダー作の"Subaqueous Silence"ではミニマルな響きさえ感じさせたが,このアルバムにもミニマルな部分はない訳ではないが,よりピアノのサウンドがより明確に感じられるように思う。そしてこういうアルバムにはフィット感が強いThomas Morganのベースもよろしく,"Subaqueous Silence"でも感じられた冷え冷えとした感覚は,クールさの強いタイプのECMレーベルの作品の典型みたいなものだ。だからこそ,私はここでのサウンドには惹かれてしまうのだ。完全に私のツボにずっぽしはまってしまったというところだ。

ただ,そうは言ってもこういうサウンドだけに,万人向けの音源とは言えない部分があるのも事実。しかし,私にとってはここ暫くで聞いたECMのアルバムの中でも最も評価したくなるアルバム。星★★★★★。

Recorded in May, 2025

Personnel: 田中鮎美(p),Thomas Morgan(b),Thomas Strønen(ds) 

本作へのリンクはこちら。

 

 

2026年7月 2日 (木)

滋味溢れるとでも言うべきSteve Swallowの新作。

Steve-swallow "Winter Songs" Steve Swallow (ECM)

伴侶のCarla Bleyがこの世を去ったのが2023年のことであったが,その死から約1年を経過した頃に吹き込まれたアルバムがリリースされた。曲名は"One"から"Nine"の数字のみという単純なものであるが,これが主題の通り,実に滋味溢れたアルバムである。An ECM Productionとあるので,本作には総帥Manfred Eicherは絡んでおらず,Steve Swallowが持ち込んだものであろう。

バンドのメンバーにはこれまでSteve Swallowとの付き合いも多いミュージシャンの名前が並んでいるが,本来ならCarla Bleyがいたであろう場所を今回はGil Goldsteinが担っている。冒頭からブルーズ・フィーリングさえ感じさせるこのアルバムは通常のECM的なサウンドとは異なると言ってもよい。

そもそもこれから真夏に向かおうというこの時期に"Winter Songs"と題して,涼ませようってところかとすら思えてしまうような演奏である。換言すれば「熱くなる」ことはなく,淡々としていると言ってもよいのだが,Steve Swallowの書く曲のよさもあり,これが実によい感じなのだ。

各々のメンバーのソロによる貢献度も高く,Steve Swallowの曲の魅力を増幅させるというところだ。フロントには2管が据えられていつつも,アンサンブルも内省的な響きすら感じさせ,基本的にクールなサウンドはまさに"Winter Songs"と呼ぶに相応しいという気がしてくる。ジャズに何を求めるかにもよるが,ハードさや熱っぽさはなくとも魅力的な演奏になることを実証した,私には完全OKなアルバムであった。確かに刺激は少ないが,まさに大人の音楽と呼びたくなる作品。星★★★★☆。

Steve Swallowは今年で86歳になるが,老いてますます盛んと言いたい。成熟とはこういうものだ。

Recorded in September, 2024

Personnel: Steve Swallow(b), Mike Rodriguez(tp), Chris Cheek(ts), Steve Cardenas(g), Gil Goldstein(p), Adam Nussbaum(ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年6月23日 (火)

現物はこれからだが,ストリーミングで聞いたMick GoodrickとFred Herschのデュオ。この発掘は素晴らしい。

Mick-goodrick-fred-hersch "Feebles, Fables And Ferns" Mick Goodrick / Fred Hersch(ECM)

このアルバムの告知がされた時から期待していたので,現物も発注しているが,デリバリーがまだなので,まずはストリーミングで聞いた。Mick Goodrickは2022年に亡くなっているので,生前の録音であるとしても,まさかこの音源の録音が1988年にまで遡るとは思わなかった。40年近くを経て,素晴らしい音源の発掘である。

当時のFred Herschと言えば,"Sarabande"をリリースした後ぐらいになるだろうが,このデュオ音源を聞くと,今のリリシズムに満ちたスタイルは出来上がっていたと感じさせる。このアルバムもMick Goodrickとのリリカルなデュオが聞けて,実に嬉しくなる。

中盤の"Five Excursions"こそやや即興性の強い演奏も聞かれるが,基本的にはこの二人による実に美しい演奏が継続する。冒頭のタイトル・トラックからリスナーの心を捉えて離さないと思わせるが,それに加えてFred Herschのオリジナル"Heartsong"やら,Steve Swallowの"Falling Grace"やら,更にはMal Waldronの"Soul Eyes"なんてやられてはこっちとしてはまいるしかないのだ。

このアルバムを完全無欠とは言わない。例えば唯一のスタンダードである"Out of Nowhere"は即興パートを経て,最後にテーマが出てくるが,この辺はもう少し普通にプレイしてもよかったようにも思える部分はある。だが,この音源は発掘され,リリースされたことにこそ意義があると考えるべきだ。星★★★★☆。

Recorded in August 1988

Personnel: Mick Goodrick(g), Fred Hersch(p)

本作へのリンクはこちら。

2026年6月 2日 (火)

Joe LovanoとJulian Lageの双頭作と呼びたい"Parmount Quartet"。

_20260601_0001 "Paramount Quartet" Joe Lovano(ECM)

「最高四重奏団」とは大きく出たものだ(笑)。しかし,あながちはずれてはいないと思わせるのは大したものだ。主題の通り,このアルバムのキモはJoe LovanoとJulian Lageの共演にほかならない。まさに二人の双頭アルバムと言ってもよさそうな寄り添い具合だ。

冒頭のCharlie Hadenの名曲"First Song"からつかみはOKである。この演奏を聞けば,アルバム全体への期待が一気に高まるものであった。少々フリー的なアプローチを交えながら,演奏は淡々とした感じで進むが,クァルテットによるアンサンブルは滋味溢れるものと言ってよい。"Fanfare for Unity"でリズミカルなアプローチも聞かせるが,ビートそのものは抑制されたもの。

そしてここでドラムスを叩いているのがLiving ColourのWill Calhounというのも面白い。Living Colourのロックの世界からは完全に別ものになっていて,楚々と演奏を支えているのだ。だからこそ,Joe LovanoとJulian Lageの演奏っぷりが際立つという助演ぶりが麗しい。ベースのAsante Santi Debrianoはパナマ出身らしいが,Joe Lovanoと同年代のベースで,このブログはStanley Cowellのアルバムで登場したに過ぎない。しかしここでもベースの音色が素晴らしく,アコースティック・ベースの音はこう録って欲しいと思えるのも素晴らしい。

Joe Lovanoのオリジナルに加えて,"First Song"と並んでカヴァーしているのがWayne Shorterの"Lady Day"というのも渋い。こういう演奏を聞くとオリジナルが収められていた"Soothsayer"が聞きたくなるという効果も絶大だ(笑)。

いずれにしても,ここでのJoe Lovanoのフレージングが実に魅力的で,Julian Lageとの共演も相まって,実に聞き応えのアルバムとなった。星★★★★☆。

Recorded in February 2025

Personnel: Joe Lovano(ts, ss, tarogato), Julian Lage(g), Asante Santi Debriano(b), Will Calhoun(ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年5月28日 (木)

Egberto Gismonti & Daniel Murray@渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール参戦記。

Gismonti-and-murray

練馬文化センター大ホールでEgberto Gismontiのソロを見たのがもう10年前のことになる。その時はNana Vasconcerosとのデュオが予定されていたのだが,Nanaの急逝により,ソロ・コンサートに変更になったのであった。その前が2007年の晴海の第一生命ホールで,私にとっては今回が3回目の生Egberto Gismontiとなった。そして今回はギターのDaniel Murrayとのデュオをさくらホールで聞いた。

Photo_20260527070401 この渋谷区文化総合センター大和田さくらホールというヴェニューは初めて名前も聞いたが,キャパ735人という中規模のホールなので,チケットもあっという間に売り切れてしまい,私は2階の席をギリギリで入手したもの。聴衆はさすがに年齢層が高いって感じで,さすがにティーンエイジャーは皆無ってところであったが,まぁ当たり前か(笑)。

ライブはEgberto Gismontiのピアノ・ソロからスタートしたが,とにかくフレージングも打鍵も強烈。どうしたらあのような目くるめくフレーズや美旋律が出てくるのか,そして右手,左手とも強弱がはっきりした打鍵はとても78歳という後期高齢者の演奏とは思えないと感じていた私である。演奏自体はほぼPAなしの原音に近いものだったように思うが,Egberto GismontiのMCは少々難聴気味の私にとっては聞きづらいものであったが,演奏を聞く分には支障はなかった。

ピアノ・ソロで3曲ぐらいやって,相棒のDaniel Murrayをステージに呼び込んで,ギター・デュオに転じた。ステージが遠かったので,Egberto Gismontiが弾いていたのは10弦か12弦かはっきりしないが,ずっと多弦ギターで通していた。ギターのデュオもこんな難しい曲をユニゾンするか?みたいな感じで,これまた凄いやとずっと思っていた。デュオで3曲ぐらいやってから,Daniel Murrayが1曲ソロでやった後,GismontiのピアノとMurrayのギターのデュオが1曲,そしてギター・デュオに戻ってアンコールはGismontiのソロで木製の笛で1曲とピアノで1曲というプログラムで約1時間45分ってところだったと思う。

演奏中はほぼ身じろぎもせず聞いていた聴衆の,アンコールを求める熱狂的とも言うべき反応ぶりからも明らかな素晴らしい演奏であったが,約10年ぶりのEgberto Gismontiのライブは全く衰えを感じさせないところに,私自身も改めて大きな感銘を受けたライブであった。

FBに当日のアンコールの模様と翌日のギター・ソロの映像が上がっていたので,貼り付けておこう。

Live at 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール on May 26, 2026

Personnel: Egberrto Gismonti(p, g, willow-fl), Daniel Murray(g)

2026年4月10日 (金)

いかにもECM的な音:Marilyn CrispellとAnders Jorminのデュオ作。

Memento_ecm "Memento" Marilyn Crispell & Anders Jormin(ECM)

静謐にして内省的と言ってよいアルバム。ECMと言えば「沈黙の次に美しい音」という惹句が出てくるが,まさにそれを体現するかのようなアルバムである。

Marilyn Crispellは結構な数のアルバムをECMに残しており,私もそこそこの数は保有しているのだが,正直言ってプレイバック頻度は高くない。それは彼女のアルバムに関するこのブログの扱いにも表れていて,私がこれまで取り上げたアルバムは"Storyteller"の一枚だけ(その時の記事はこちら)だ。そこにも似たいようなことを書いていて,私の印象が変わっていないことが笑える。

本作はこちらもECMにリーダー・アルバムを残すAnders Jorminとのデュオ作だが,Anders JorminについてもBobo Stensonのアルバムは取り上げても,リーダー作は"Ad Lucem"しか保有していないし,記事化もしていない。そんな二人のアルバムなので,積極的には聞こうと思っていなかった。しかし,ブログのお知り合いであるSuzuckさんが「まさにECM的美学の一枚」,風呂井戸さんは「ECM的な世界の極み」とおっしゃっているので,これは聞かねばということになってストリーミングで聞いたのであった。

主題の通り,いかにもECM的なデュオ演奏であるが,全編を通じてこの筋の音楽が好みであれば一発で気に入るであろう演奏だ。私も例外ではないが,冒頭の"For the Children"の美的なサウンドからこれにははまる。そしてアルバムの中で私に最も訴求してきたのが,Marilyn Crispellが複数の共演盤を残している今は亡きGary Peacockに捧げ,アルバムの最後に収めた"Dragonfly"であった。この曲のリリカルなメロディ・ラインと美しさがこのアルバムの白眉と言ってもよいが,最後にこの曲を置くことで私の印象は更によくなったと言ってもよい。

ここにはアブストラクトな展開はほぼ皆無と言ってよく,ピアノとベースの静かな対話が続くが,Anders Jorminのベースもピチカートとアルコの双方でこの音楽を支えているが,リアルに響く音がストリーミングで聞いても優秀な録音と感じさせるのも素晴らしい。多少なりとも好みは分かれる音楽とは思うが,ECM好きには何の問題もなしである。星★★★★☆。

Recorded in July 2025

Personnel: Marilyn Crispell(p), Anders Jormin(b)

本作へのリンクはこちら。

2026年3月18日 (水)

Björn MeyerのECM第2作。これはやっぱりECMでしかできないな。

Bjorn-meyer "Convergence" Björn Meyer(ECM)

早いもので,Björn MeyerがECMでの第1作である"Provenance"をリリースしてから,もう10年近くの時間が経過している。もうそんなに経ったのかと時の流れに驚いてしまうのだが,Björn Meyerとしては「満を持して」というところかもしれない。

そもそも6弦エレクトリック・ベースでアルバムを一枚作ってしまえるのがECMたる所以とも言えるが,こうした音楽がどのような環境にフィットするかはなかなか難しい。ある意味アンビエントな響きを持ちながら,アルペジオによりメロディ・ラインを紡ぐ瞬間もあるとは言え,やはりこのアルバムを購入しようという人はある程度限定されるのは仕方ないと思える。

しかし,穏やかに音楽は流れていき,刺激的な部分は少ないにしてもなかなか面白い。6弦ベースでミニマル的な演奏を行ったり,アルペジオなどの奏法を展開するのは握力的にも相当大変なのではないかとも思ってしまうが,そこは多少シークェンサーの力も借りてってところだろう。更に多重録音を加えている部分もあるようだ。

前作でも同じようなことを書いているが,こういう音楽は小音量でプレイバックするのが適切のようにも思える。鑑賞にも堪えるが,どちらかと言えばやはりこれは環境音楽だと思う。まぁこれを面白いと思えるか思えないかがECMに対する絵踏みだろうな。甘いの承知で星★★★★。

Recorded in April 2024

Personnel: Björn Meyer(b)

本作へのリンクはこちら。

2026年1月20日 (火)

追悼,Ralph Towner。

Ralph-towner

Ralph Townerが亡くなった。2023年にリリースした"At First Light"でも,衰えることのない音楽を聞かせていただけに,突然の訃報はショックだ。しかし,考えてみればRalph Townerも既に85歳だったという年齢を踏まえれば,いつかこういう時が来ることは覚悟はしておかなければならなかった。

私が初めて買ったRalph Townerのレコードが"Solo Concert"だったが,そこで聞かれたクラシック・ギターと12弦ギターの素晴らしい響きに魅せられ,私はそれ以来のRalph Townerのファンとなった。このブログを開設したのが2007年1月だったが,その2日目の記事にこの"Solo Concert"をアップしていることからしても,私がいかにこのレコードを愛していたかの表れだ。プレイバックにはもっぱらCDを使うこのアルバムも,ドイツ盤のアナログは決して手放すことはない。

その後,ECMのアルバムを中心に参加作も含め,数多くのRalph Townerの音源を集めたが,必ずしも傑作揃いとは言わずとも,失望させられることはなかった。このブログを開設後に出たECMの新譜はどれも素晴らしいと思ったが,中でもPaolo Fresuとのデュオ,"Chiaroscuro"が今でも印象深い。

私がRalph Townerのライブ演奏に接したのは,NYCのBottom LineにおけるOregon Trioとお台場にあったTribute to the Love Generationにおけるソロのたった2回だったのは返す返すも残念だ。そもそも海外出張時を除いて,私がライブ通いを再開したのが2009年以降のことであるから,それも仕方がないことではあるのだが,2019年の最後の来日となった高崎でのライブを日程の関係で見逃したのは本当に残念なことであった。それでもOregon Trioの時はピアノを聞けたのも懐かしいが,この人はギターだけでなく,ピアノも非常に上手い人だったことは改めて強調しておかねばならない。

さまざまなアルバムを通じて,私の音楽的な嗜好を明確にし,生活に潤いを与えてくれた人として,Ralph Townerには感謝しても感謝しきれない。世界はまた素晴らしいミュージシャンを失った。

R.I.P.

Ralph-towner-12strings

2025年12月29日 (月)

2025年の回顧:音楽編(その2::ジャズ)

2025-best_2

今年の回顧も最終回。今回はジャズのアルバム。現物がまだ届いていないものもあるが,ストリーミングも含めて今年を振り返ってみると,最高評価の星★★★★★を付けたものは何枚かあるが,その中でこれは絶対はずせないと思ったのがFred Herschの"The Surrounding Green"であった。聞いた瞬間から本年屈指のアルバムと書いているし,その感覚に変わりはない。

同じピアノ・トリオという編成でも全く違うタイプの音楽を生み出したのがBanksia Trioの"Live"であった。これまでの3作も優れた出来だったが,本作で示されたテンションや演奏能力はもはや世界レベルと確信した私である。

哀愁と抒情という観点ではMathias Eickの"Lullaby"とDino Saluzziの"El Viejo Caminante"がたまらなかった。結局私はこういう音が好きなのだなということを改めて痛感したが,特にDino Saluzziはあやうく聞き逃すところだったのを避けられたという点でも印象が強く残った。

そして毎度のことながらのBrad Mehldau絡みでは,リーダー作の"Ride into the Sun"もよかったのだが,ここではAl Fosterとの"Live at Smoke"を挙げたい。Christian McBride~Marcus Gilmoreとのトリオでも聞かせたオーセンティックな演奏への渇望感がそうさせたと言ってもよいが,だからと言って"Ride into the Sun"の評価が下がる訳ではない。あれはあれでいいアルバムなのだ。

少し変わったところではCraig Taborn~Nels Cline~Marcus Gilmoreの変則トリオによる "Trio of Bloom"を挙げたい。とにかくこの何でもありのようなサウンドには興奮させられた。ジャズもいろいろだねぇと思わせるに十分な刺激的なアルバムであった。

最後に挙げた2作はまだ現物がデリバリーされていないが,ストリーミングでもその魅力は十分伝わるとは言え,さっさとデリバリーされないかと待ちわびる私である。そのほかにもジョンスコ~Dave HollandやらJoe Lovano~Marcin Wasilewski Trioやらも挙げて然るべきであるが,印象の強さを優先した結果のチョイスとなった。

ここには挙げていないが,James Brandon Lewis,Patricia Brennan,そしてKris Davis等,これまでちゃんと聞けていなかった人たちの音楽に触れられたのもよかったと思える2025年であった。

2025年12月17日 (水)

Dino Saluzziの新作は哀愁度高く心に沁みるアルバムであった。

_20251215_0001 "El Viejo Caminante" Dino Saluzzi(ECM)

リリースからは5か月ぐらい経過しているが,今年リリースの新作である。卒寿を迎えたDino Saluzziが息子のJosé María Saluzziに,何とJacob Youngを加えた2ギター編成で吹き込んだこのアルバムは,彼らのオリジナルにスタンダード等を加えた構成なのだが,これが哀愁度が極めて高く,聞けば聞くほど味わいが増す好アルバムであった。どう経緯でJacob YoungがSaluzzi親子との共演に至ったのかはわからないが,全く違和感なしだ。

息子の方はクラシック・ギター,Jacob Youngの方はスチール弦のアコギに,エレクトリックはテレキャスを弾いているとECMのサイトには記載されているが,テレキャスとは思えぬソフトな音がここでの音楽にマッチしている。こういう音を聞くとやっている音楽は違っても,Ed Bickertのテレキャスの音を想起してしまった。

それにしてもDino Saluzzi,齢90とは思えぬ元気さである。本作が録音された時期こそ88歳になる直前というタイミングではあるものの,全く衰えを感じさせないのが素晴らしい。

先日,Enoのアンビエント・アルバムを「忙しない師走に聞くのに最適」と書いた私だが,こういうアルバムこそ落ち着きを取り戻すのにフィット感が強いと思えるアルバムであった。地味と言えば地味な音楽であるが,ここで展開される演奏は私のツボに完全にはまった。これには聞いた瞬間に星★★★★★と正直思えた一作。

Recorded in April 2023

Personnel: Dino Saluzzi(bandneon), Jacob Young(g), José María Saluzzi(g)

本作へのリンクはこちら。

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