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カテゴリー「クラシック」の記事

2025年2月 2日 (日)

人生初の声楽リサイタルを聞きに,お馴染みイタリア文化会館に出向く。

Carolina-lippo私はクラシック音楽もそこそこ聞くものの,オペラはさておき,声楽は極めて少ない例外を除いてスルーというのが実態である。そんな私であるから,声楽家によるリサイタルなんて全く縁のない話であったが,今回,毎度おなじみイタリア文化会館における無料コンサートで,Carolina Lippoなるソプラノ歌手のリサイタルが行われるということで,ネットで申し込みの上,九段下まで行ってきた。

当日は武道館でMC Tysonなるラッパーのライブがあったらしく,私とは全く異なる風体の若者たちがうようよしていたのだが,彼らを横目に私は市ヶ谷方面に向かって,九段の坂を上って行ったのであった。

当日のイタリア文化会館はいつもの無料コンサート同様,(私自身を含めた)高齢者が多数派という客層であったが,いつも思うが,大概同じ人間が来ているのではないかと感じてしまうのだ。そんな中,私にとって人生初の声楽のリサイタルであったが,このCarolina Lippoという人については詳しくは知らない。声楽とピアノを学び,舞台にデビューし,現在は教鞭も執っているようだ。知っている曲はアンコールで歌ったロッシーニの"La Danza"だけというところに私の声楽音痴ぶりが表れているようにも思うが,イタリア人,スペイン人作曲家のレパートリーはあまり知られていないものではなかったかと思えた。そんな中,Carolina Lippoは表情豊かに歌いこなしていたが,聞きながらこういうのもたまにはいいねぇなんて感じていた。

まぁこういう機会を与えてくれるイタリア文化会館には感謝だが,次はどんな企画なのか楽しみに待ちたい。久しぶりにジャズ系のミュージシャンも呼んで欲しいと思っているのはきっと私だけではあるまい。無料なんだからどうこう言えた立場ではないが...(笑)。

プログラムは本人の休憩10分(聴衆は着席で待機)とアンコール含めて約80分だったが,帰り道に武道館帰りの連中とは遭遇しない時間に終了というのはよかった。

イタリア文化会館のFBページに当日の写真が掲載されていたので,貼り付けておこう。

Live at イタリア文化会館 on January 30, 2025

Personnel: Carolina Lippo(vo),小埜寺美樹(p)

Carolina-lippo-at-iic

2025年1月22日 (水)

またもブート(まがい)の話:今度はBernsteinのマーラー5番。

_20250120_0001"Mahler: Symphony No.5 in C Sharp Major" Leonard Bernstein / Wiener Philharmoniker

最近,全然新譜を聞いていないので,やたらにブートレッグを取り上げているこのブログだが,Brad Mehldauの連続投稿に続くのはこのBernstein/VPOのマーラー5番である。こういうチョイスをしているから変態と言われても仕方がない。

これって結構知られた音源で,CD-Rの真正ブートレッグ(笑)もあって,実は私はそれも保有しているが,今日アップした写真はプレスCDのブートまがいって奴だ。これは2枚組で4番,5番のカップリングで前者は84年,後者は87年の録音。今回取り上げる5番の方はBBCのPromsでの演奏なので,当然のことながら放送音源がソースなので音には問題ない。この録音が興味深いのはドイツ・グラモフォンからリリースされている5番はこの数日前の録音ということだ。世の中のマーラー好きはどっちがいいと言っているようだが,どうも軍配はこちらに上がるようだ。何てたってProms史上最も有名な演奏とも言われているぐらいだ。

この演奏が評価されるのはその熱量だろう。Royal Albert Hallという全然クラシック向きとは思えないヴェニュー(日本で言えば武道館みたいな感じ)で,燃えに燃えるBernsteinって感じだ。この強烈極まりない終楽章には当然聴衆も燃えるわ。ドイツ・グラモフォンの正規録音よりこっちの評価が高いのにもうなずけるなぁ。Royal Albert Hallという場がそうさせたって感じだ。それもBernsteinらしいと言えばそうなんだろうなぁ。

Recorded Live at Royal Albert Hall on September10, 1987

Personnel: Leonard Bernstein(cond), Wiener Philharmoniker

2025年1月20日 (月)

Martha Argerichが弾くリスト。強烈としか言いようがない。

_20250118_0001 "Liszt: Sonata H-moll / Schumann: Sonate G-moll" Martha Argerich(Deutsche Grammophon)

グラモフォンのArgerichボックスからこのアルバムを久しぶりに聞いた。リスト唯一のピアノ・ソナタをMartha Argercihが弾いた訳だが,半世紀以上前の録音にもかかわらず,この演奏の強烈さは失われることはない。静と動の対比,アーティキュレーションともに完璧と言ってよいように思える。カップリングされたシューマンのソナタ2番の激しさには若気の至りみたいなところも感じるが,リストの方はそれがいい方に影響していると言ってもよいかもしれない。いずれにしても高度な技術の裏付けあっての演奏。

陳腐な表現覚悟で言えば「ほとばしるパッション」ってところだ。えぐいと言われても仕方のない部分こそあれ,ここまでやってくれれば満足してしまう私であった。星★★★★★。

Recorded in June 1971

Personnel: Martha Argerich(p)

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2024年12月30日 (月)

今年最後の音楽記事は,残念ながら来日できなかったHilary Hahnの無伴奏ヴァイオリン。

_20241228_0001 "Eugène-Auguste Ysaÿe:Six Sonata for Violin Solo op.27" Hilary Hahn(Deutsche Grammophon)

今年最後の音楽記事は何にしようか考えていたのだが,前々から買おうと思いつつ,入手しそこなっていたHilary Hahnによるイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタにしよう。

Hilary Hahnは今年の12月に来日が予定されていたが,神経系の病により長期療養が必要と診断されて,あえなく中止となってしまったのは残念なことであった。と言いつつ,私はそのチケットを買っていた訳でもないが,このアルバムを聞くと,彼女の病気からの早期の復活を祈りたくなる。それほど本作はよいのだ。

不勉強にしてイザイの無伴奏ソナタは初めて聞いたが,自らもヴァイオリニストとして名を成したイザイが書く曲であるから,多分技巧的には相当難しいのだろうと思わせるが,一聴してこれは大変な曲だと思えた。しかし,Hilary Hahnは見事に弾きこなしていて,こんな演奏ならもっと早く聞いておけばよかったと反省してしまった。

亡くなった父の影響もあって,私はヴァイオリンの演奏を好む傾向はあるが,無伴奏と言えばついついバッハとバルトークになってしまうというその程度のリスナーであり,イザイなんて名前も知らんわってのが実態であった。しかし,こんな演奏を聞かされては,自らの不見識を反省せざるをえないし,そう思わせてくれたHilary Hahnには感謝しなくてはならない。実に見事な演奏であった。星★★★★★。リリース後にすぐに聞いていれば,昨年のベスト作の一枚に入っていたこと間違いなし。

Recorded in November and December 2022

Personnel: Hilary Hahn(vln)

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2024年12月17日 (火)

2024年の回顧:ライブ編

Mw-trio-at-cotton-club_20241213185101

年の瀬も押し詰まってきたし,年内はもうライブに行く予定もないので,今年の回顧はライブから。私が今年行ったライブが全部で31本で,これは私の中ではこれまでの最高記録だと思う。月2本を超えるペースで通っていたのだから,結構行ってるねぇ。ジャズを中心にロック,クラシックと満遍なくライブに通ったという気がするが,どのライブもそれぞれに楽しめた記憶が残っていて,これは決定的な失敗だったというのがなかったのは実に嬉しい。

そんな中で今年のライブで最も感動したのはMarcin Wasilewski Trioであった。これで1stと2ndで曲を変えてくれていたら尚よかったが,私はCotton Clubで身じろぎもせずに彼らの演奏を聞き,そして感動していた。

正直言って2月にMeshell Ndegeocelloのライブを観た時には,もはや今年最高のライブはこれだろうと思っていたのを覆したMarcin Wasilewskiではあったが,だからと言ってMeshell Ndegeocelloのライブの素晴らしさも改めて強調しておかなければならない。実に素晴らしいメンツを揃えて,Meshell Ndegeocelloの創造力は尽きることがないと思わせた。

更にジャズ界の長老,Charles Lloydも年齢を感じさせない素晴らしい演奏を聞かせ,相変わらずの不老不死モードであったのが凄い。

クラシック界では何と言ってもBlomstedt/N響のシューベルトだった。特に「グレイト」が素晴らしかった。97歳のBlomstedtは一体いつまで振るのか?思ってしまいつつ,あれだけの素晴らしい演奏を引き出す力は,こちらも不老不死だ(笑)。

そのほかで印象に残るのがNik Bärtsch’s Ronin。音楽だけでなく,照明とも一体化したライブの雰囲気そのものが実に魅力的であった。そのほかにもMarisa Monteを観られたのも嬉しかったし,Daniil Trifonovの現代音楽づくしも面白かった。

ということで,来年はどれぐらいのライブに行けるかはわからないが,今年以上に楽しませてくれるライブを期待しつつ,本年を代表するライブとしてMarcin Wasilewskiのライブの模様を改めてアップしておく。

2024年11月27日 (水)

またまたイタリア文化会館での無料コンサートに行ってきた。

Alognagullotta

先日,Salvatore Sciarrinoの作品を取り上げた無料コンサートに行ったばかりだが,極めて短いインターヴァルでまたもイタリア文化会館に行ってきた。今回はイタリア人ヴァイオリニスト,Davide Alognaとピアニスト,Giuseppe Gullottaによるデュオであった。前回がThe現代音楽って感じだったのに対し,今回は純粋クラシック・メインにピアソラが加わるって感じのプログラム。

二部構成の第一部はペルゴレージ,ファーノの小品にブラームスのヴァイオリン・ソナタ第3番,第二部がロッシーニ,サン=サーンス,そしてピアソラというなかなかユニークなプログラムと言ってよいものだった。そこにアンコールが3曲,最後は「チャルダッシュ」で締めて盛り上げた。

正直言って第一部はヴァイオリンの音が硬い感じがしたし,ピアノは少々弾き過ぎという感じがあってニュアンスに乏しいと感じさせたが,第二部はピアノの弾き過ぎ感はあまり変化はなかったものの,印象はだいぶ良くなったと思えた。サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」は初めて聞いたが,なかなか面白い曲だと思えたのに加え,更にピアソラの「アディオス・ノニーノ」がよかった。

アンコールの1曲目はEnnio Morriconeと言っていたはずだが,曲名は不明。2曲目も曲名はわからないが,哀愁帯びたワルツであった。さすがイタリア人,こういう曲はうまいねぇ。イタリア語を解さないこっちとしては,イタリア語でMCをされても全くわからないが,さすがイタリア文化会館のイベントだけに,イタリア語を解する聴衆も結構いたようだ。最後のモンティ作「チャルダッシュ」は一時期フィギュア・スケートの音楽としてやたらに使われていたと記憶するが,生で聞いたのは初めてだった。まぁ,ヴァイオリンの技巧を聞かせるためのような曲だけに盛り上がるよねぇ。

演奏についてはいくらでもケチのつけようはあると思うが,まぁ無料でそこそこ楽しめたのだからよしとしよう。面白かったのはクラシック畑の人に珍しく,譜面にタブレットを使っていたことか。ヴァイオリンの譜めくりはフット・スイッチでクリック(?)操作していたようだが,ピアノのめくりは手指での操作のようで,しくじったらどうするんだろうと余計なことを考えながら見ていた私であった。まぁ,その辺はプロだから心配なしなのかもしれないが...。

年内にここでの無料コンサートはあと2回予定されているので,予約が取れればまた行きたいと思う。来年はそろそろジャズ系ミュージシャンを呼んで欲しいなぁ。

Live at イタリア文化会館 on November 25,2024

Personnel: Davide Alogna(vln), Giuseppe Gullotta(p)

2024年10月27日 (日)

Blomstedt/N響でシューベルトを聞く。

Blomstedt

Herbert Blomstedt,97歳にしていまだ現役。しかし,昨年のN響公演は来日そのものがキャンセルされたものの,今年もN響とやると発表され,次はあるのか?と思うと,さすがに今回はチケットを買ってしまった私である。こういうのはCharles Lloydのライブとかと同じ感覚なのだ。しかし,そんなことを考えていたら,来年のN響定期にはBlomstedtの名前が...。マジか!?。それはさておき,今回のCプロのシューベルトの「未完成/グレイト」というプログラムは相当魅力的であった。「未完成」は生で聞いた記憶はないし,「グレイト」の生は88年にロンドンでTennstedt/LPOで聞いて以来だ。

Blomstedtはこのプログラムを3年前にライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とレコーディングしているが,97歳のBlomstedtが2曲で90分を生で指揮できるのかという不安もありつつも,やっぱりこれを逃す訳にはいかない。そもそも来日できるのかという不安はBプロ,Aプロを既に振っていたので解消していたが,さて一体どうなるのかという心持ちでNHKホールに向かった私である。

第一部は「未完成」だったが,正直言ってそれほど感銘を受けるってほどではなく,淡々と演じられた感覚が強かった。だが,休憩後の「グレイト」で印象は一変した。「未完成」は前菜に過ぎず,メイン・ディッシュは間違いなく「グレイト」であった。BlomstedtもはN響「グレイト」に向けて力を温存していたとしか思えない素晴らしい演奏であった。

これが97歳の指揮者か?と言うべき演奏であり,終演後の怒涛の「ブラボー」を聞いても,聴衆も同じように感じていたはずだ。私は真にGreatな「グレイト」を聴いたと思ったというのが実感だ。Blomstedtは下半身の衰えは顕著でもその指揮っぷりは活力に満ちたものであり,実に素晴らしかった。私は血湧き肉躍る感覚さえおぼえていたが,こんなのはKleiberでベト4/7を聴いて以来だと言ってもよかった。

正直言ってここまでの演奏を聴けるとは思えなかったが,まさに望外の喜びを感じる演奏であった。Herbert Blomstedt恐るべし。感動した!

Live at NHKホール on October 25, 2024

2024年9月26日 (木)

高橋アキ@豊洲シビックセンターホールを聞く。

Photo_20240925074601

現代音楽のスペシャリストと言ってもよい高橋アキである。彼女の現代音楽のアルバムについては結構な数を保有するに至った私であるが,その一方でシューベルトにも取り組んでいることは認識していても,私にとってシューベルトのピアノ曲と言えば,Radu Lupuと決まってしまっているので,いくら高橋アキの音楽に接する機会が多くても,そこまではフォローしていなかった。しかし,今回は現代音楽3曲+シューベルトのD.960というプログラムだったので,私にとっては高橋アキの初生演奏ということで,会場の豊洲シビックセンターホールに行ってきた。

このホール,上の写真を見て頂ければわかるが,ガラス張りで,遠くにはレインボー・ブリッジも見えるというなかなか小じゃれたヴェニューであり,キャパは300人という高橋アキを聞くには適切なサイズと言ってもよいホールであった。聴衆は7割程度の入りってところだったように思う。高橋アキは毎年のようにここでリサイタルを開いており,常に現代音楽にシューベルトの曲を加えるというプログラムで臨んでいるようだが,今回は大曲,ピアノ・ソナタ第21番をメインに据えるというものであった。

舞台に登場した高橋アキは今年で傘寿を迎えた訳だが,その佇まいはずっと若々しく見え,凛とした風情さえ感じさせるのがまず凄い。私もこうした後期高齢者となりたいと思ってしまったのがまず第一印象。前半は現代音楽3曲で,冒頭は去る7月にこの世を去った湯浅譲二の「内触覚的宇宙」からスタート。このアブストラクトな響きがたまらん!ということで,こういう音が好物の私は最初から痺れてしまった。続く佐藤聰明とPeter Garlandの2曲は献呈曲,世界初演となったが,どちらもアブストラクト度は控えめで調性の範囲内での曲に思えた。私にとっては会場にも来ていた佐藤聰明の"Pieta"におけるサステインの効いた響きが印象的であった。それに比べるとPeter Garlandの"Autumn"はやや印象が薄い。高橋アキが弾いた"Birthday Party"を聞いた時にも思ったが,どうも私はこのPeter Garlandの曲と相性がよくないようだ(それに関する記事はこちら)。

第一部は3曲で35分程度で休憩に入り,第二部がシューベルトである。上述の通り,私にとってはRadu Lupuによる刷り込みが強い。しかし,Lupuが2012年にオペラシティでD.960を弾いた時にも若干の違和感を覚えていたと書いているから,それも大したことではないかもしれない。今回の高橋アキの演奏に関しては独特の間合いのようなものを感じさせるもので,特に第1楽章の演奏時間がやや長めで,好き嫌いが分かれそうだと思っていた。その辺りは個人の主観に任せるが,これはこれでありだとしても,私が高橋アキに惹かれるのは,やはり現代音楽の方だなと思っていたのは事実であった。アンコールは小曲を2曲。曲名はよく聞き取れなかったが,カメラータ東京のサイトに情報がアップされたらこのページも更新したい。

演奏終了後にサイン会もあって,後ろ髪を引かれる思いだったが,何分現地で売られていたほとんどの現代音楽のCDを保有している私としては,購入するものがなかったので,それは来年のリサイタルに取っておこう。

Live at 豊洲シビックセンターホール on Septeber 24, 2024

Personnel: 高橋アキ(p)

2024年7月28日 (日)

何十年かぶりで聞くGouldのMozart。

Gould-mozart "Plays Mozart Piano Sonatas" Glen Gould (Columbia)

主題の通りである。私は以前,Glenn Gouldによるアナログのモーツァルトのピアノ・ソナタ全集を保有していたが,いつ手放したのかも覚えていないぐらいの時期に手放したはずだ。その時は正統的な内田光子や,父の遺品のChristoph Eschenbachの全集を聞いていればいいやって感覚もあったかもしれない。だが,それから幾星霜を経て,突然ではあったが,やっぱりまたGouldのモーツァルト演奏が聞いてみたいと思えてきてしまった。そう思って見てみると,CDの全集は随分安く手に入るではないか。ポイントもたまっていることだし,まぁいいかってことでの再購入となった。

全てを聞き通すのはこれからということにはなるのだが,前々からわかってはいるとは言え,やはりこれは普通じゃないよなぁと改めて感じさせる演奏である。それはやはりGlenn Gouldによるテンポの設定があると思えた。極端に遅いか,極端に速いかどっちかって感じであり,変わっているなぁと思わせるに十分。だが,これって変わっているがゆえに,はまると抜けられない麻薬的な部分があるのかもと思ってしまった。今,私が聞いているのはソナタの#1~#6を収めたディスク1であるが,もうそれだけでずっぽしはまった感をおぼえる私であった。

この演奏を異端と言うのは簡単だが,そうした異端性が普遍的な魅力にも変容するということを強く感じるそんな演奏。聞いていて楽しいことこの上ないと思う私はやはり変態なのか?(笑) いずれにしてもあのK331を改めて聞くのが楽しみになってきた。

Personnel: Glenn Gould(p)

本作へのリンクはこちら

2024年6月14日 (金)

Isabelle Faustがバッハの無伴奏を弾くとあっては行かねばならん!

Faust Isabelle Faustは私の中では極めて信頼できるヴァイオリニストだと思っている。彼女のCDはほぼ私が満足できるものばかりで,現在のヴァイオリニストの中では一番だと言っても過言ではない。彼女が昨年出したバロック音源集の"Solo"も,私は昨年のベスト作の一枚に選んでいるぐらいで,何を弾いてもうまいのだ。

そんな彼女が,バッハの無伴奏ソナタとパルティータの全曲演奏会を二夜に渡ってやると知ったからには,これは行くぞ!と思って私は二夜分のチケットをすかさずゲットしていた。しかし,浮世の義理とでも言うべき「諸般の事情」により,第二夜に行くことがかなわなくなってしまい,シャコンヌが一番聞きたかったという思いを抱えていたから,ある意味忸怩たる思いで第一夜に行ってきた。

今回のヴェニューは横浜市青葉台のフィリア・ホールだったが,元町田市民の私としては,町田時代なら近場と言えたが,引っ越した現在では何とも遠いなぁと思いつつ,1時間も掛からないのだから贅沢は言ってはならん。このフィリア・ホールはキャパ500人ぐらいのホールだが,どうせなら同じようなキャパの紀尾井ホール辺りでやって欲しいというのがわがままな本音だったが,まぁそれは言いっこなしってことにしよう。私は二十数年前,このホールに子供のためのコンサートみたいな企画で当時3~4歳ぐらいの娘ともども行って以来の再訪であった。その時はジブリの音楽とかやっていたなぁ...。

それでもって私が行った第一夜はソナタの1番/3番,パルティータの1番というプログラムであったが,ステージに登場した瞬間,何と笑顔が素敵な人だと思ったというのが正直なところである。無茶苦茶第一印象の良い人だ。そんなIsabelle Faustが一旦演奏を始めると表情はぐっと引き締まりながらも,ある意味「踊りながら」のようにヴァイオリンを演奏する姿に釘付けになってしまったのであった。音色は素晴らしく,アーティキュレーションも見事なのだが,こんな曲をある意味身体を揺らしながら弾いてしまうというところに驚きつつも,演奏には満足していた私であった。

そもそもIsabelle Faustは最初のアルバムにバルトークの無伴奏を選んでしまうような人なので,ある意味チャレンジャーと言ってもよいが,今回のバッハは余裕で弾きこなしたってところか。それでも満席の聴衆からは大喝采を受けていたから,ほかのオーディエンスにとっても満足感が高い演奏だったと思う。やっぱりこの人は「できる人」だと思った。だからこそ,第二夜のシャコンヌが聞けないことは痛恨事ではあるのだが,それはCDを聞いて補うことにしたい。ってことで,帰り道も遠いなぁとは思いつつ,心地よい気分で家路についた私であった。

Live at フィリア・ホール on June 12, 2024

Personnel: Isabelle Faust(vln)

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