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カテゴリー「クラシック」の記事

2023年9月15日 (金)

還暦過ぎてブルックナーの生演奏初参戦。

Mario-venzago

恥ずかしながら私はブルックナーの音楽と無縁なまま還暦を過ぎたのだが,ここに来てオーケストラの響きを生で聞きたいという欲望が増してきているのは,私がこのブログでクラシックのコンサートについての記事をアップすることが増えていることと無関係ではない。ロックにはロックの良さがあれば,ジャズにはジャズの良さがあるように,クラシックにはクラシックの良さがあるのだ。

ということで,私が今回行ったのが読響定期で演じられたブルックナーの交響曲4番であった。そもそも私はブルックナーのいい聞き手ではないどころか,これまでほとんど聞いたことがなかったというのが実態だ。しかし,私の周りにはブルックナー好きが存在していて,ようやく聞いてみるかとなったのは1年ちょっと前ぐらいだと思う。

そして臨んだのが今回のコンサートだったのだが,指揮したMario Venzagoは気のいい爺さんっていう感じであった。それはさておき,今回の演奏は周りの聴衆の熱狂具合に比べるとしっくりこなかったというのが正直なところであった。私にとっては聞いていて違和感が強かったのがなぜなのかよくわからなかったので,この演奏を聞かれたブルックナー通の方に聞いてみたのだが,非常にユニークな演奏だったそうだ。なるほどそういうことかと思ってしまった。ブルックナー初心者のような私にとっては,よりオーセンティックな演奏の方がピンとくるという感じだったんだなというところであった。結局は経験値の不足ということをよく理解したのだが,まだまだ修行が足りないってことだ(笑)。

ということで,私にとっては第一部で演奏された大編成現代音楽と言ってよさそうな,読響とも縁の深いスクロヴァチェフスキの交響曲の方が面白かったという結果になったのであった。

Live at サントリーホール on September 12, 2023

Personnel: Mario Venzago(cond), 読売日本交響楽団

2023年7月27日 (木)

Cecile Licadって最近どうしているのか。デビュー作のラフマニノフを聞いて,何だかもったいないと感じた。

_20230724 "Rachmaninoff: Piano Concerto No.2 / Rhapsody on a Theme of Paganini" Cecile Licad / Claudio Abbado / Chicago Symphony Orchestra (CBS)

全くの気まぐれで,AbbadoのRCA/Sonyのボックスから何枚かを取り出して聞いていたうちの一枚。今年はラフマニノフの生誕150周年とかで,やたらに生でもラフマニノフが演奏される機会の多い年だが,それに引っ掛けて選んだと言っても過言ではない。

ここでの主役であるピアノのCecile Licadはフィリピン出身で,これがデビュー・レコーディング。バックをAbbado/Chicagoという鉄壁のコンビが支えるという恵まれたデビューを飾った訳だが,当時のCBSの期待の大きさが表れていたと言ってもよいだろう。その後のキャリアでは,必ずしもレコーディングには恵まれているとは言い難いのはちょっともったいない気がする。そう感じさせる演奏であった。

私は特にラフマニノフの音楽に大した関心がある訳でもないので,演奏を評価する資格は正直言ってないのだが,ピアノ協奏曲2番はまぁそれなりの演奏って感じか。むしろ,このアルバムで私がより興奮してしまったのが「パガニーニの主題による狂詩曲」の方であった。この血沸き肉躍るダイナミズムには正直身体が反応してしまった。なので,私にとってはこのアルバムは「パガニーニの主題による狂詩曲」を聞くためのものだと思った。ということで,トータルでは星★★★★ってところ。

気まぐれでもたまにはこういうのも聞かないといかんなぁと感じるが,これを廃盤にしておくのももったいない話だ(Amazonにはジャケすら出てこない)。特に「パガニーニの主題による狂詩曲」はマジで強烈なのだ。

Recorded on February 12 & 14, 1983

Personnel: Cecile Licad(p), Claudio Abbado(cond), Chicago Symphony Orchestra

#CecileLicad #ClaudioAbbado

2023年7月 5日 (水)

先日のCharles Dutoitの幻想がよかったので,N響とのアーカイブ音源を聞いてみた。

_20230702-2 「ベルリーズ:幻想交響曲/ラヴェル:道化師の朝の歌」Charles Dutoit/NHK交響楽団 (NHK) 

先日,生で聴いたCharles Dutoit(以下デュトワと記す)と新日本フィルの幻想がよかったので,以前,デュトワがN響の常任指揮者就任記念コンサートのアーカイブ音源を聞いてみた。

録音されて四半世紀以上経過しているとは言え,96年の演奏なので,もう少しクリアな音で録られていてもよさそうだが,おそらくは放送を目的としたものであろうから,繊細なエンジニアリングが施されているとは言えないのはちょっと残念だが,まぁ音源として残っているだけでもよしとすべきだろう。

この演奏会当日には,本CDの2曲に加えて,Martha Argerichをソリストとするショパンのピアノ協奏曲という強力なプログラムで常任指揮者就任を祝った訳だが,ここでの「幻想」は当時から評判の演奏だったらしい。

まぁ,そうは言ってもやはり生音の魅力に触れてしまった後では,いい演奏だと思っていても,感慨が違うってところなのは仕方がないが,それでもライブ音源としては十分その価値は認められる。これでもう少しクリアに録られていれば...と思わざるをえないが,私が苦手とする「幻想」の3楽章をここでもちゃんと聞かせるものにしているのは立派。短いながらもラヴェルも好印象。星★★★★☆。そう言えば,私はデュトワがモントリオールを振ったラヴェルの全集を持っていたなぁ。久しぶりに聞いてみるか。

ところで,デュトワとN響の関係は,件のセクハラ事件を受けて名誉音楽監督の地位が継続するかどうか疑問視されたが,現在もN響のWebサイトには名誉音楽監督としてデュトワの名前が残っているから,不問としたということなのかもしれないが,N響を振る機会はその後なくなっているようなので,多少なりとも影響はしているってことだろう。

Recorded Live at NHKホール on December 21, 1996

Personnel: Charles Dutoit(cond),NHK交響楽団

2023年7月 2日 (日)

今度は山田和樹が振るバーミンガム市響をサントリー・ホールで聞いた。

Photo_20230702073901

私がクラシックのコンサートに足を運ぶ頻度は,ジャズやロックに比べれば低い方だが,先日のCharles Dutoitが振った新日本フィルから間もない6/30に,山田和樹率いるバーミンガム市交響楽団を聞きに,またもサントリー・ホールに出掛けてきた。

今回,当初は全然行く気はなかったのだが,直前割みたいなかたちで¥2,500ディスカウントされていたので,急遽の参戦みたいになった。プログラムも今年生誕150年とあって,やたらに演奏されるラフマニノフの交響曲2番に,樫本大進をソリストとするブラームスのヴァイオリン協奏曲というなかなか魅力的なものであったことも理由と言ってよい。

第一部のブラームスでは樫本大進のヴァイオリンの響きが魅力的であったが,オケとの親和性はどうかなぁって感じていた。特に私が違和感をおぼえていたのが,ヴァイオリン,ヴィオラ・セクションの響きのイマイチ感か。まぁ英国のオケにありがちな,金管,木管が勝ってしまう感じと言えばいいだろうか。だからこそ樫本大進のヴァイオリンが引き立つ結果になるのだが...。

第二部のラフマニノフでもチェロ,コントラバスはいい感じだったのだが,やはりヴァイオリン,ヴィオラの響きに透明感がないように思えた。曲が曲だけに,別にあまりこだわる必要はないと言えばないのだが,コンサートを通じてそうした感覚は消えず,これなら先日の新日本フィルの弦の方が圧倒的によかったとさえ思ってしまったぐらいである。まぁ,そうは言ってもドラマチックでロマンチックな曲想を持つラフマニノフのこの交響曲2番は,ダイナミズムを感じさせる演奏で楽しめたからよい。山田和樹は完全に踊っているって感じなのも笑えた。前回,山田和樹を見たのは読響との「アルプス交響曲」だったが,あの時はあんなに踊ってなかったよなぁなんて思っていた私である。

Photo_20230702084201 それにしても,演奏開始前に前説みたいな感じで山田和樹がこのオケがどうのこうのと喋っていたが,指揮者が前説のごとく登場するってのは初めて見た(笑)。いずれにしても,今回も客席はほぼ満席で,山田和樹は人気あるねぇと改めて感心してしまった。尚,上掲の写真はネットから拝借。

Live at サントリー・ホール on June 30, 2023

Personnel: 山田和樹(cond),樫本大進(vln),バーミンガム市交響楽団

2023年6月29日 (木)

Argerichのリストのピアノ・ソナタ。いやいや強烈。

_20230618-2 "Liszt: Sonate H-Moll / Schumann: Sonate G-Moll" Martha Argerich (Deutsche Grammophon)

Martha Argerichのドイツ・グラモフォンにおけるソロ録音ボックスから,久しぶりにこのアルバムを取り出したのだが,もはや半世紀以上前のレコーディングとは言え,全然古びたところを感じさせないアルバムだと思った。

リストとシューマンから成る演奏ではあるが,リストのロ短調ソナタが強烈過ぎて,シューマンの演奏が若干印象が薄れるって感じがしてしまった。もちろんシューマンの演奏も立派なものだが,それよりも何よりも技巧,スピード,打鍵の強さのどれを取っても,リストの印象が強い。

これはCDのデメリットという気もするが,リストとシューマンで明らかに雰囲気が違うのだ。アナログであれば,A面,B面でレコードをひっくり返すという行為が発生するから,聞くのがどちらかの面に偏るというのはよくあることだ。私がアナログでこのアルバムを保有していたら,おそらくA面偏重になったであろうことは確実だと思ってしまった。いかにもMartha Argerichらしい演奏。でも好き嫌いはわかれそうだが...。私にとってはリストだけで星★★★★★にしたい。

Recorded in June 1971

Personnel: Martha Argerich(p)

2023年6月27日 (火)

Charles Dutoit,86歳,その矍鑠たる指揮ぶりに驚き,感動した。

_-2

Charles Dutoit(以下デュトワと記す)が来日して,新日本フィルを指揮する2日間の2日目を,家人ともどもサントリー・ホールに聞きに行った。今回のプログラムは「牧神の午後への前奏曲」,「火の鳥組曲」,そして「幻想交響曲」というなかなかないもので,そもそも「幻想」を偏愛する私としてはどうしても聞きたいと思わせるものであった。しかもデュトワは既に86歳である。とっくに後期高齢者のデュトワに次があるかはわからないと思ったこともあった。しかし,そんな思いを一笑に付されるようなデュトワの矍鑠とした指揮ぶりだったとしか言いようがない。

映画「Tar/ター」において,James Levineと共にセクハラ指揮者として実名を挙げられたデュトワは,世界のオーケストラとの関係は悪化している。一方,日本においてはそれほど問題視されていないということなのかもしれないが,もちろんそうした疑惑に対して批判的に捉える人もいるだろう。それでもサントリー・ホールはほぼ満席(チケットはソールド・アウトだったらしい)の聴衆であったから,やはりデュトワに対する期待が勝ったということだろう。私でさえ行く気になるぐらいだから,きっとそうなのだ(笑)。

タクトを使わずに振った「牧神の午後への前奏曲」で静かに滑り出した前半であるが,私は「火の鳥組曲」における「カスチェイ王の魔の踊り」におけるダイナミズムにまず圧倒され,Yesがライブのオープニングで使う「終曲」にもぐわ~っと盛り上がっていたのであった(笑)。

だが,今回の私にとっての目玉はあくまでも「幻想」である。以前,このブログにも書いた通り,私は「幻想交響曲」に関しては何枚もアルバムを保有していた(過去形。今は6~7枚を残す程度)こともあり,オーケストラ音楽としての「幻想」には若い頃から親しんできた。だから,今回デュトワがどのような演奏を聞かせるのかには非常に興味があった。第1楽章から弦をよく鳴らしているなぁとは思っていたが,CDやレコードの再生では完全に把握できない弦楽器群の分離した響きを生で,そしてそれを手に取るように堪能できたことは感慨深かった。それは私がいくらこの曲が好きでも,いつも冗長性を感じてしまう第3楽章にさえ当てはまったのだから,これは大したことなのだ。

「幻想」においては第2楽章のワルツが大好きな私であるが,私はコルネット入りの演奏を好んでいるので,コルネットが入らない第2楽章にはいつも違和感を覚えてしまうのだが,ここは響きの美しさで補ってくれて文句なし。そして終盤第4,第5楽章は「火の鳥」同様の強烈なダイナミズムで押し切った演奏は,実によかった。「幻想」を聞いた~っていう満足感を覚える演奏であった。

演奏後の聴衆の反応も強烈で,何度もカーテン・コールに応えるデュトワを見て,デュトワ本人にとっても満足のいく演奏だったのではないか。今更ながら,やっぱりオケの演奏はいいよねぇと改めて感じた私である。さぁ,次は山田和樹とバーミンガム市響だ。そっちも楽しみにしておこう。

Live at サントリー・ホール on June 25, 2023

Personnel: Charles Dutoit(cond),新日本フィルハーモニー交響楽団

2023年6月12日 (月)

Brad MehldauとIan Bostridgeの"The Folly of Desire":至極真っ当な歌曲集である。

Folly-of-desire_20230610090301 "The Folly of Desire" Brad Mehldau / Ian Bostridge (Pentatone)

このアルバムがデリバリーされて,何度か聞いているものの,記事化することを躊躇していた。なぜなら,このアルバムはクラシックのリートの手法に則った真っ当な歌曲集だったからだ。正直言って,私はクラシックの歌曲に関しては,Peter SchreierとKonrad Ragossnigのギターによる「美しき水車小屋の娘」しか保有していないというのが実態なのだ。一方,Brad MehldauとRenée Fleming, Anne Sofie von Otterの共演盤は保有していても,滅多に聞かないというのも事実なので,こういうアルバムの評価は正直難しいのだ。

このアルバムにおいては11曲で構成された”The Folly of Desire"がメインで,それに続く5曲はコンサートであればアンコール的な位置づけになると思われる。その5曲中4曲はジャズ・スタンダードと呼んでよいものであり,もう1曲はIan Bostridgeが得意とするであろうシューベルトの「夜と夢」である。なので,このアルバムを評価する際にはタイトル・トラックからというのが筋だ。

ここでのテキストはシェークスピア,ブレイク,イェーツ,ゲーテ等から構成され,それにBrad Mehldauが曲をつけ,ピアノ伴奏をするものだが,ピアノの響きは実に美しいと思う。Ian Bostridgeのテナーは,いかにもテナーらしい歌唱でそれに応えているが,以前,このアルバムに関する記事にも書いた通り,真面目に作られているがゆえに,こっちもついつい身構えてしまうというのが正直なところだ。更に"A song cycle inquiring the limits of sexual freedom in a post-#MeToo political age"というテーマからして小難しく(笑),こっちもどういうことなのかとついつい考えてしまうのだ。だから,後半のアンコール・ピース的な曲の方が,メロディ・ラインにも馴染みがあって,気楽に聞けてしまうのは仕方ないところだろう。ただ,シューベルトとジャズ曲のBostridgeの歌い方の違いには戸惑う部分もある。

私はBrad Mehldauのこういうチャレンジは応援したいとも思うものの,必ずしも成功しているとは思っていない。そうした中では,本作はまだいいと思えるが,それでも越境はそこそこにしておいて,また私たちを痺れさせるようなジャズ・アルバムの制作を期待したくなってしまう。ということで,星★★★★ぐらいにしておこう。

Recorded in July, 2022

Personnel: Ian Bostridge(vo), Brad Mehldau(p)

2023年6月 5日 (月)

Brad Mehldauの更なる越境。でもまだ評価するほど聞けていない。

Folly-of-desire Brad Meldauがジャズの世界を越境して,クラシックにアプローチするというのは今に始まった話ではない。これまでもRenée Fleming, Anne Sofie von Otter等のクラシック界の歌手陣との共演に加え,オルフェウス室内管弦楽団との共演や,ピアノ協奏曲の作曲もあって,ジャズの枠に留まらない活動は広く知られてきたことである。

私はBrad Mehldauのコンプリートを目指す(あくまでも公式音源であって,原則としてブートレッグは含まないが...)人間であることはこのブログにも書いてきた。上述のアルバムももちろん保有しているが,決してプレイバックの頻度は高くはない。私が痺れているのはあくまでもジャズ・ピアニストとしてのBrad Mehldauなのだから,それはそれで当然なのだ。正直言ってピアノ協奏曲は成功したとは思えないし,オルフェウスとの共演盤も微妙な感覚を覚えた。私はどうせ越境するならクラシックよりロックじゃねぇのか?と思っているのが正直なところなのだが,それでも新たな音源が出れば聞かざるをえないし,買わざるをえないのだ。

それでもって,今回のお題はテノール歌手,Ian Bostridgeとの共演盤である。この二人の共演はこれまでコンサートという形態で行われてきたものだが,それが正式にレコーディングされたものである。私としては,まだ十分に聞けていないので,内容については改めて書くが,表題曲は11曲から構成される組曲で,作曲はBrad Mehldauだが,詞はシェークスピアとか,イェーツとか,ゲーテとかいちいち敷居が高い(爆)。

これを面白いと感じられるかどうかは私自身まだわからないので,もう少し聞き込んでから改めて記事にすることとしたい。でもこれって真面目に作っていることはわかるが,この生真面目さは多少重荷と感じる向きもあるのではないかと思う,というのが正直なところ。

2023年6月 2日 (金)

Mompouのピアノ曲を改めて聞く。いいねぇ。

_20230601 "Piano Music by Federico Mompou" Stephen Hough (Hyperion)

以前,このブログでStephen Houghが弾くMompouの「沈黙の音楽(ひそやかな音楽)」を取り上げた時に,その時の気分にマッチするピアノの響きが心地よく,90年代に同じStephen Houghが吹き込んだMompouのアルバムを発注したと書いた(その時の記事はこちら)。その時にはアルバムを現代音楽のカテゴリーに入れたのだが,所謂現代音楽が持つ小難しさは皆無であり,実に美しいピアノの響きを楽しめたのだが,このアルバムも同様である。

本作においてはMompouのピアノ曲でも比較的有名な曲を集めているようだが,選ばれたのが「歌と踊り」,「前奏曲集」,「魅惑」,「3つの変奏曲」,「対話」,「風景」等である。聞いていて思うのは,スペインの作曲家でありながら,スペイン風味というのがほとんど感じられないということだろうか。そしてアブストラクトな感覚もなく,「ドビュッシーの後継者」と評されたことも頷ける作風だと思えた。

それを弾いたStephen Houghの演奏はグラモフォン賞を受賞し,更にはペンギン・ガイドの最高評価であるRosetteに叙せられていることからしても,名盤の誉れ高いものというのはわかる。一方,私が知らないだけという話もあるが,いかんせんFederico Mompou自体がそれほどメジャーな存在ではない(だろう)から,私の周りではこのアルバムについて語る人を見たことはなかった。しかし,これだけ優れたピアノ音楽を聞かせてもらえば,実に幸せって感じで,改めてまだまだ修行が足りないと思ってしまった私である。ということで喜んで星★★★★★としよう。いずれにしても,Stephen Houghの「沈黙の音楽」と本作は長く聞くに値するアルバムだと言いたい。

Recorded on July 22 and 23, 1996

Personnel: Stephen Hough(p)

2023年4月15日 (土)

Andrei Gabrilov@白寿ホール鑑賞記。

Hakuju-hall Andrei Gavrilovを聴きに,白寿ホールに行ってきた。Gavrilovはドイツ・グラモフォンからもアルバムをリリースしているピアニストだが,キャパ300人の白寿ホールさえもフルハウスにならないのかぁって思っていた。やはり一時期の隠遁生活が影響しているのかもなぁなんて思っていた。

私にとってGabrilovと言えば,Sviatoslav Richterとピアノを分け合ったヘンデルの「鍵盤組曲」だが,あれから40年以上,見た目も完全におっさん化したGabrilovであった。

それはさておき,今回のリサイタルは平均律第一巻全曲とフランス組曲5番のオール・バッハという魅力的プログラムだったのだが,聞いた上での感覚は若干微妙であった。

平均律冒頭から前半はなかなかいい感じで,弱音は魅力的に響いていたのだが,打鍵が強くなる局面でのフォルテッシモでは流石に叩き過ぎって感じが気になった。また左手のアタックが強過ぎて,右手とのバランスが崩れているところも気になってしまった。Gabrilovは今回の演奏は,解釈(Interpretation)ではなく,バッハの内面に迫ることを目指すようなことを会場で言っていたが,私はもう少し内省的な取り組みでもよかったように思っていた。

しかし,今更ながら「平均律」は素晴らしい曲だったと感じたし,フランス組曲の演奏は平均律以上によかったと思う。私がバッハの曲の生演奏を聞いたのはPeter Serkinの「ゴルトベルク変奏曲」以来のことではあったが,改めてバッハの音楽をちゃんと聞き直したくなる効果は十分にあったと思う。

Piano-at-hakuju-hall 全くの余談となるが,Gabrilovが使っていた譜面が,遠目に見てもカラフルな感じだったのは,本人が何らかの書き込みをしているのかもしれないが,演奏を聴きながら,よくあれで弾けるなぁなんて思うと,譜面が気になって仕方がなかった私である(笑)。休憩中にズームで写真を撮ってみたが,これではちょっとわかりにくいかもなぁ...。

Live at 白寿ホール on April 13, 2023

Personnel: Andrei Gabrilov(p)

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