2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
フォト

2022年のおすすめ作

無料ブログはココログ

カテゴリー「ブラジル」の記事

2024年12月25日 (水)

師走にボサ・ノヴァでくつろぐ。

_20241224_0001 "The Sound of Ipanema" Paul Winter with Carlos Lyra(Columbia)

私はブラジル音楽もそこそこ好きだが,ボサ・ノヴァの持つゆったり感(それをサウダージと呼んでもよいのかもしれないが...)はいかなる状況にもフィットするものだと思っている。そんなボサ・ノヴァを聞くならブラジル人ミュージシャンのアルバムを聞いていればいいと思いつつ,アメリカ人でもちゃんとブラジル音楽を理解しているミュージシャンもいるということで,今日はPaul Winterのアルバムである。

Paul Winterと言えば,後のRalph TownerらOregon組を擁したPaul Winter Consort以降の方がよく知られたところだが,それに先んじてブラジル音楽に取り組んでいたことを忘れてはならない。ジャズ界でボサ・ノヴァと言えばStan Getzと考えられるのは仕方ないところだが,Paul Winterが"Jazz Meets the Bossa Nova"をリリースしたのはGetzが"Getz/Gilberto"をリリースするよりも前なのだ。それに続いて本作と"Rio"がリリースされ,ブラジル3部作となる訳で,Paul Winterの名誉のために言えば,"Getz/Gilberto"が売れたからボサ・ノヴァに取り組んだ訳ではないのだ。

ここではCarlos Lyraの何ともソフトな歌声もあって,実に心地よい時間が流れていく。本作を聞いていると「Paul Winter,わかってるねぇ~」と言いたくなってしまうのだ。ブラジル音楽へのちゃんとした理解があってこそできる音楽であり,Paul Winterのソフトなアルトの響きとのマッチ度も素晴らしい。裏ジャケに書かれた"The Warm Sound of Saxophonist Paul Winter, with the Lyrical Songs, the Sensitve Singing and the Gentle Guitar of Carlos Lyra, Brazil's Great Young Composer"という表現こそ,まさに言い得て妙だ。ピアノを弾くSergio Mendesも楚々とした伴奏ぶりも好印象で,総合的に見ても,アメリカ資本によるこの手のアルバムとしては屈指の作品と言いたい。星★★★★★。

Personnel: Paul Winter(as), Carlos Lyra(vo, g), Sergio Mendes(p), Sebastião Neto(b), Milton Banana(ds)

本作へのリンクはこちら

2024年11月21日 (木)

Lee Ritenour and Dave Grusin with Brasilian Friends Featuring Ivan Lins@Blue Note東京参戦記

Riteour-grusin-lins-at-bnt

ここのところ毎年のように来日しているLee RitenourとDave Grusinのコンビだが,今回は新作"Brasil"のリリースを受けて,Ivan Linsほかブラジル勢を加えた面々でライブを行うということで,Blue Note東京に行ってきた。Lee Ritenourは72歳,Dave Grusinは90歳,Ivan Linsも79歳という高齢者バンドであるが,演奏自体は矍鑠たるものであり,年齢を全く感じさせないのは誠に立派。さすがにDave Grusinは見た目そのものは随分老けたって感じがしたが,繰り出されるピアノやキーボードのプレイには全く衰えは感じられず,以前のままだというのも凄いことだ。ソロで聞かせた映画「ランダム・ハーツ」のテーマにおけるピアノのプレイも,この映画はヒットはしなかったが,曲そのものは印象深いというMCにも全然ぼけたところなしであった(1stでは映画「トッツィー」から"It Might Be You"をやったらしいが,そっちも聞いてみたかった)。Ivan Linsは若干危なっかしいところがなかった訳ではないが,年齢を考えれば声の出方も大したもので,「惚れてまうやろ~」と内心思っていた私であった(笑)。

Riteour-grusin-lins-at-bnt-door 私が現地に到着したのは19:15ぐらいだったと思うが,丁度1stセットが終わって,聴衆が出てくるタイミングであった。随分早いとも思えたが,Blue Noteが今月から採用したスマート決済(当日の飲食は事前登録のクレジット・カードで決済するため,レジに並ぶ必要なし)ゆえというところもあったようだ。しかし,ほぼオンタイムで始まった2ndセットはアンコールの"Rio Funk"まで含めて演奏は約90分に及び,私を含めた聴衆も大満足だったはずだ。"Stone Flower"終了後,ヴォーカルのTatiana Parraは一旦ステージから降りたので,Blue Noteのプログラムでは"Rio Funk"は予定外だったのかもしれないが,聞いているこちらにとっては大歓迎であった。

ご老体3名に加えて,ベースのMunir Hossn,更にはアルバム"Brasil"にも参加していたブラジルからのメンバーの技量も実に高く,それが演奏への満足度を高めた要因でもあった。私はベースのBruno Migottoの指さばきに感心することしきりであったが,ブラジル音楽界のレベルの高さは実証されたと思う。このバンドにおける不安の要因はWesley Ritenourのドラムスであったが,やっぱり叩き過ぎという感じは否めないものの,以前に比べればましになったというのが実感であった。

いずれにしても,総じて満足度は高く,生で聞くブラジル音楽のノリの心地よさも含めて,ライブの楽しさを満喫したのであった。私は何でもかんでもスタンディング・オヴェイションという人間ではないが,超満員の聴衆からのスタンディング・オヴェイションにもうなずける演奏だった。上の写真はBlue Note東京のサイトから拝借したものだが,衣装からすると当日の1stの模様と思われる。

Live at Blue Note東京 on November 19, 2024, 2ndセット

Personnel: Lee Ritenour(g), Dave Grusin(p, key), Ivan Lins(vo, key), Tatiana Parra(vo), Bruno Migotto(b), Munir Hossn(b, vo), Edu Ribeiro(ds), Wesley Ritenour(ds), Marcelo Costa(per)

2024年9月 8日 (日)

追悼,Sergio Mendes。

Sergio-mendes

Sergio Mendesが亡くなった。オーセンティックなブラジル音楽と言うよりも,よりポピュラーなかたちでブラジル音楽を世に広めたという意味で大きな足跡を残したと言っていい人であった。Sergio Mendes版の"Mas Que Nada"(曲を書いたのはJorge Benだ)は誰もが知っているだろうし,その音楽はレコードやCDでなくても,様々なメディアを通して聞く機会が多かったはずだ。

Sergio-mendes-timeless過去の演奏に加えて,私が驚いたのは2006年に出た"Timeless"であった。will i amをプロデューサーに迎え,ヒップホップ系も含めて,多彩なゲストを迎えて制作され,ブラジル音楽を現代風に再構築したこのアルバムの面白さ,あるいは進取の精神を失わないSergio Mendesに驚かされたのも懐かしい。そして,ここに収められたJohn Legendが歌った"Please Baby Don't"は,私がJohn Legendに痺れるきっかけとなったと言っても過言ではないのだ。そうした意味でも意義深い作品であった。

昨今,彼の音楽をフォローしていなかった私ではあるが,いずれにしても,さまざまな意味でブラジル音楽,ポピュラー音楽への貢献度の大きい人であったと思う。

R.I.P.

2024年8月21日 (水)

Michael FranksらしいJobimトリビュート。

_20240819_0001"Abandoned Garden" Michael Franks(Warner Brothers)

アルバムの裏ジャケには”In memoriam,  Antonio Carlos Jobim, with endless admiration, affection and love."とある通り,Michael FranksによるAntonio Carlos Jobimトリビュート・アルバムである。だからと言ってJobimの曲ばかりやるのではなく,Jobimの曲は"Cinema"1曲であり,あくまでもMichael Franksの流儀でトリビュートするという作品。"Blue Pacific"あたりのアルバムはビートを効かした曲もあって,ややオーヴァー・プロデュース気味って気もしたが,このアルバムも複数のプロデューサーが関わっていても,サウンドが落ち着いていて,ずっとMichael Franksらしい。"Art of Tea"や"Sleeping Gypsy"的な感覚が戻ってきた感じと言えばいいだろう。それにしても豪華なメンツがバックを固めていて,これもMichael Franksらしいところ。Carla BleyやArt Farmerさえも招いたミュージシャンのクレジットを見ているだけでも嬉しくなってしまうのだ。

このアルバムはJobimへのトリビュートということを反映してボサノヴァのリズムの曲が多くなっているが,これがMichael Franksの脱力系ヴォイスとマッチしている。私はMichael Franksのアルバムはそこそこ保有しているが,"Art of Tea","Sleeping Gypsy"と並んで堂々一軍の棚に収まっているぐらい結構好きなアルバムだ。マッチしているかどうかは別にして,フュージョン系のビートを効かせたバックにも合わせられるMichael Franksではあるが,やはり本質的にはこういうサウンドの方がずっといいと思えるのだ。

こういう音楽がバックに流れていると仕事も捗る,そういう音楽。Michael FranksのJobimへの敬慕を評価して甘いの承知で星★★★★★。

Personnel: Michael Franks(vo, g), Michael Brecker(ts), Andy Snitzer(as), David Sanborn(as), Joshua Redman(ss), Art Farmer(flumpet), Chuck Loeb(g), Jeff Mironov(g), John Leventhal(g), Russel Ferrante(p), Eliane Elias(p), Gil Goldstein(p), Bob James(p), Carla Bley(p), Jimmy Haslip(b), Christian McBride(b), Marc Johnson(b), Steve Swallow(b), Chris Parker(ds), Lewis Nash(ds), Peter Erskine(ds, perc), Manolo Badrena(perc), Don Alias(perc), Bashiri Johnson(perc), Brian Mitchell(vo), Bob Mintzer(fl, a-fl), Lawrence Feldman(a-fl), Diane Barere(cello), Fred Slockin(cello), Mark Shuman(cello), Randy Brecker(fl-h), Keith O'Quinn(tb)

本作へのリンクはこちら

2024年8月12日 (月)

本年屈指の話題作の一枚だろう:"Milton + esperanza"。

_20240810_0001"Milton + esperanza" Milton Nascimento / esperanza spalding (Concord)

主題の通りである。ブラジル音楽の至宝,Milton Nascimentoと,もはやジャズ界を超越した活動を展開するesperanza spauldingの共演とあっては,これは注目に値するというのが当然だ。バックを支えるのはesperazaのレギュラーの面々が基本だが,そこに多彩なゲストを迎えて制作したもの。Milton Nascimentoは現在81歳ということだが,歌いっぷりには少々危ないところもあるとしても,まだまだ矍鑠としている。

Milton NascimentoのレパートリーはPaul Simonを迎えた"Um Vento Passou"を除けば既発のもの。そこにesperanzaやドラムスのJustin Tysonの曲,更にはBeatlesの"A Day in the Life"やMichael Jacksonが書いた"Earth Song"が加わるという構成はかなりバラエティに富んでいる。そしてMilton Nascimentoは全曲に参加している訳ではないので,ゲスト的な扱いと言ってもよいのだが,そこは大御所,Milton Nascimentoへの気配りってところか。

私はesperanza spauldingがFred Herschと共演したライブ盤ではヴォーカルに徹するよりも,ベースを弾いたらなおよかったなんて思っていたが,ここではちゃんとベースもプレイしていて,やはり本来は彼女はこうあるべきだと思ってしまう。そして,私が認めるべきは彼女のプロデューサーとしての仕事ぶりだと思える。ゲストの迎え方が適材適所という印象を与えるのはesperanza spauldingの審美眼によるものだと言ってもよい。Milton Nascimentoの既発曲に新たな光を当て,新曲とも整合性を保ったアルバムに仕立てたのも立派だと思う。手放しで傑作!という気はないが,よくできたアルバムだと思う。星★★★★☆。

Personnel: Milton Nascimento(vo), esperanza spaulding(vo, b), Leo Genovese(p, el-p,org, vo), Corey D. King(synth, vo), Matthew Stevens(g, vo), Justin Tyson(ds, key, vo), Eric Doob(ds), Kalna Do Jeje(ds), Shabaka Hutchings(sax, fl), Elena Pinderhughes(fl), Guinga(g, vo), Lula Galvao(g), Ronaldinho Silva(perc), Dianne Reeves(vo), Paul Simon(vo), Fernando Lodeeiro(vo, arr), Carolina Shorter(vo), Lianne La Haves(vo), Maria Gadu(vo), Tim Bernades(vo), Orquestra Ouro Preto(strings)

本作へのリンクはこちら。ついでにMilton Nascimentoの自宅で行われたTiny Desk (Home) Concertの模様も貼り付けておこう。アルバムよりシンプルな分,こっちの方が味わい深いって気もしてしまうぐらいいいねぇ。

2024年5月12日 (日)

Marisa Monte@Blue Note東京:最高の夜であった。

Marisa-monte-at-blue-note-offical

私は長年のMarisa Monteのファンではあるが,ライブ参戦の機会に恵まれなかった。しかし,今回Blue Note東京のライブが告知された瞬間からチャージは高いが,絶対観に行くと決めていた。そして念願かなっての参戦となった訳だが,実に素晴らしいライブであった。タキシード・スタイルの衣装での登場には驚いたが,冒頭の"Maria de Verdade"から心を鷲掴みにされてしまった私である。

Marisa-monte-at-blue-note_20240515085401 女性の年齢をばらすのは褒められたことではないとしても,今年で56歳と思えぬその歌声は全く衰えることなく,ギターの腕も確かなものであった。その歌声を聞いているだけで,私は至福の約90分を過ごした訳だが,あまりの幸福感ゆえ,最後は泣けてきたのであった。

当日のレパートリーを確認できた訳ではないが,代表的な曲を万遍なく演奏したと思ってよいだろう。そしてMarisaを支えるバックのメンバーも実に手堅く,いいメンツを連れてきていることは明らかであった。私は演奏中ずっと身体をゆすっていたようなものだが,そうした心地よいグルーブを生み出していたことが素晴らしい。もはや今年の屈指のライブになることは確定したようなものだ。

Marisa-monte-on-stage_20240511091801 今回のライブについては予約開始をすっかり失念しており,若干出遅れたため,今回はステージ横からMarisa Monteの歌唱を眺めることになったが,むしろ,ほかの聴衆に視界を妨げられることはなかったので,むしろよかったかもしれない。それよりも何よりも,私はMarisa Monteの歌が聞けただけでも満足であり,そしてその歌に感動していたのであった。

ステージを降りる際のMarisa Monteの表情からも,このライブへの満足感が表れているようにも思える素晴らしいライブであった。改めて彼女の音源を聞き直したくなった。

Live at Blue Note東京 on May 10, 2024

Personnel: Marisa Monte(vo,g, ukulele), Dadi(b), Davi Moraes(g, mandolin), Pupillo(ds), Pedrinho da Serrinha(per)

ブルーノートのサイトで当日のセットリストと写真(トップのものほか)が公開されたので,それも貼り付けておこう。

1. MARIA DE VERDADE
2. INFINITO PARTICULAR
3. ILUSION
4. VILAREJO
5. AINDA BEM
6. DANÇA DA SOLIDÃO
7. DIARIAMENTE
8. CARINHOSO
9. BEIJA EU
10. É VOCÊ
11. DE MAIS NINGUÉM
12. A PRIMEIRA PEDRA
13. VELHA INFÂNCIA
14. A SUA
15. EU SEI
16. TEMA DE AMOR
17. PRA MELHORAR
18. CARNAVÁLIA
19. ELEGANTE AMANHECER / A LENDA DAS SEREIAS
20. A MENINA DANÇA
EC1. AMOR I LOVE YOU
EC2. JÁ SEI NAMORAR
EC3. PRA MELHORAR

2023年6月 9日 (金)

私が保有する唯一のAstrud Gilberto名義のアルバム。

_20230608 "The Astrud Gilberto Album" Astrud Gilberto (Verve)

亡くなったAstrud Gilbertoを偲んでということで,取り出したのがこのアルバムである。正直言って,歌手としてのAstrud Gilbertoをあまり評価していない私としては,基本Stan Getzとの共演盤しか興味の対象にならないが,唯一の例外として保有しているが本作。

"Getz / Gilberto"がヒットして,急遽制作されたと思しきAstrud Gilbertoの初リーダー作なのだが,まぁ並んでいる曲のよさゆえに保有していてもいいかなぁって感じで購入したはずだ。だからと言って,私が不勉強なだけだが,全部が全部有名曲って訳でもない(と思う)。その一方で,Antônio Carlos Jobimも全面参加というのもポイントになったと思う。付帯している帯を見ると,再発されたのは98年だからもはや四半世紀前だが,それ以来何度プレイバックしたかは正直疑問。

まぁ,ボサ・ノヴァの名曲をAstrud Gilbertoのアンニュイな感じのヴォーカルで歌われれば,雰囲気は出るよなぁと思うし,ここではBud Shankほかのホーンに加えて,ストリングスまで付いてくるってことで,かなり力の入った作りであった。しかもアレンジャーはMarty Paich。さすが策士Creed Taylorである。11曲収録で29分にも満たないというのは,現在の感覚で言えばEPか!って感じでいかにも短いが,Astrud Gilbertoの歌唱を考えれば,この程度が丁度よかったという気もしてくる。

いずれにしても,歌唱や演奏を聞いていると,1960年代半ばという時代を感じさせるが,気楽に聞くには丁度よいってところだろう。尚,アルバムのクレジットにはドラマーの表記がないが,DiscogsによるとLulu Ferreiraらしい。

Recorded on January 27 & 28, 1965

Personnel: Astrud Gilberto(vo), Antônio Carlos Jobim(g, vo), João Donato(p), Joe Mondragon(b), Bud Shank(fl, as), Stu Williamson(tp), Milt Bernhart(tb)

本作へのリンクはこちら

2023年6月 8日 (木)

追悼,Astrud Gilberto。

Astrud-gilberto1-2

Astrud Gilbertoが亡くなった。私は正直言って彼女の歌唱力には疑問を感じており,このブログでも時に辛らつに評価したこともあるが,それでも"Getz / Gilberto"への参加によって,歴史にも記憶にも残ることになったことは事実だ。決して偉大な歌手だったとは思わないが,ボサノヴァのイメージを高めたことへの貢献については忘れるべきではない。

R.I.P.

2023年4月 4日 (火)

久しぶりに聴いたEgberto Gismontiの"Dança dos Escravos"。

_20230402 "Dança dos Escravos" Egberto Gismonti(ECM)

このアルバムを聞くのも久しぶりのことだ。ECMのアルバムは相当数保有している私だが,カタログの枚数が多くなり過ぎて,到底全部を購入するということはないし,昨今はストリーミングで聞ければいいやってアルバムも結構ある。そうした中で,基本的に全部買いを基本とするミュージシャンの一人がEgberto Gismontiなのだが,それでもアルバムをしょっちゅう聞いているかというと,そんなこともない。このアルバムは89年で,私が保有しているのはBMGから出たアメリカ盤。普通ならドイツ盤を買っているはずなので,本作に関してはおそらく在米中に購入したものと思われる。だが,買ってから本当に何回聞いたかなんてのは自分でも疑問なのだから,家人から死ぬまでに何回聞くわけ?と聞かれても抗弁できない(苦笑)。しかし,気まぐれでもなんでも,たまに聞きたくなるのがEgberto Gismontiだと思っている。

Egberto Gismontiは何枚もECMにアルバムを吹き込んでいるが,ECM作品ではソロと言ってもほかの楽器を弾いていることもあり,純粋ギター・ソロのアルバムというのは本作だけではないか。そして,本作では6弦,10弦,12弦,14弦を弾き分けながら,ギタリストとしての卓越した技量を聞くことができるのは貴重と言ってもよいだろう。

そして聞こえてくるのは,どこを切ってもEgberto Gismontiって感じで,2007年,2016年に聞いた生での彼の演奏を思い起こしていた。ギタリストにもいろいろなタイプが存在するが,やはりこの個性,テクニックは素晴らしいと思った。星★★★★★。

Recorded in November 1988

Personnel: Egberto Gismonti(g)

本作へのリンクはこちら

2023年1月17日 (火)

久しぶりにEgberto Gismontiを聴く。

_20230115 "Dança das Cabeças" Egberto Gismonti(ECM)

「輝く水」という邦題でリリースされていた本作はEgberto Gismontiによる記念すべきECM第一作。近年Egberto Gismontiのレコーディングは新録としては"Saudações"が最後で,それ以来行われていないようだが,最近はどうしているのだろうか?私は近年では2007年と2016年の来日公演を観ているが,どちらも強烈な印象を残すライブであった。2007年は晴海の第一生命ホール,2016年は練馬文化センターというちょっと変わったヴェニューでのライブというのも記憶している理由になるかもしれない。

それはさておき,このアルバムを聴いたのも実に久しぶりのことであった。ECMのミュージシャンの中でもギタリストとしてはRalph Towner,Pat Methenyのアルバムと並んで別格扱いにしているにもかかわらず,あまりプレイバックしていないのも困ったものということもあり,取り出してきたもの。ECMレーベルに相応しいボーダレス感に溢れたアルバムと言ってよいだろうが,アナログであればA面に相当するPart 1がより土俗的な感覚が強いのに対し,B面に相当するピアノで演じられるPart 2前半はKeith Jarrettがかつてよく聞かせたフォーク・タッチにも通じるところを感じさせながら,より美的な展開を図るのが実に面白い。そして後半に改めてギターにチェンジしても,Part 1とは明らかに異なるリズム感覚を打ち出している。

私が二度接したライブでも第一部はギター,第二部はピアノという構成だったと記憶しているが,楽器によって感覚の違いを出すっていうアプローチだったのかもしれないと思わせる演奏と言ってもいいだろう。私としてはEgberto Gismontiはギタリストという位置づけではあるが,本人にとってはピアノもギターも主楽器なんだろうなぁと思わせるに十分。ピアノもうまいRalph Townerに通じるところも感じていた私である。

久々に聴いたが,これは傾聴に値する作品であることは間違いない。これ以外のEgberto Gismontiのアルバムもちゃんと聞き直すことにしよう。星★★★★☆。

Recorded in November, 1976

Personnel: Egberto Gismonti(g, p, wood-fl, vo), Nana Vasconselos(perc, berimbau, corpo, vo)

本作へのリンクはこちら

より以前の記事一覧