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カテゴリー「ブラジル」の記事

2025年7月 5日 (土)

Walter Wanderleyからの今日はMarcos Valleだ(笑)。

_20250703_0001 "Samba '68" Marcos Valle(Verve)

昨日取り上げたWalter Wanderleyのアルバムにも参加していたMarcos Valleであるが,あちらでは曲は取り上げていても,ミュージシャンとしての露出は控えめだったこともあり,今日はMarcos Valle自身のリーダー作である。

本作は米国マーケットを意識したものなので,ブラジル音楽,特にボサノヴァがStan Getz以降ヒットしたことも踏まえての作りのため,「サンバ」と謳っていても,サンバと言うよりボサノヴァ色の方が濃厚に出ている。こういうのをブラジル人が聞くとどうなのかねぇと思いつつ,意識しているマーケットが違うのだから,まぁそれはよしとしよう。Milton Nascimentoの"Travessia"と"Courage"に明らかな違いがあったようなものだが,Milton Nascimentoの場合は私は完全に"Trvessia"なのだ(きっぱり)。なので,私は聞いたことはないが,Marcos Valleのよりブラジル色の濃い音楽にも興味は湧いてくるのだ。でもこの人の音楽にはそれほど土着性を求めてもいけないのかもしれないが。

いずれにしても本作はEumir Deodatoのアレンジメントに乗って,どちらかと言えばソフトな路線の音楽が多く,11曲中サンバ的なのは"Crickets Sing for Anamaria","Pepino Beach","It's Time to Sing"とWalter Wanderleyのアルバムにも入っていた"Batucada"ぐらいのものだ。その4曲とて決して熱量は高くない。だからと言ってそれが悪いというのではない。ここはMarcos Valleの書く佳曲を素直に楽しめばいいのだ。まずはMarcos Valleというシンガー・ソングライターを米国という巨大マーケットで売り出すためにはこういう構成はあって然るべきであったようにも思える。星★★★★☆。

Personnel: Marcos Valle(vo, g, p), Anamaria Valle(vo), Eumir Deodato(arr)

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2025年7月 4日 (金)

Walter Wanderley:このイージーリスニング的な感覚がいいねぇ。

_20250702_0001"Batucada" Walter Wanderley(Verve)

このアルバムを聞くのも久しぶりだ。このアルバムはブラジル音楽の棚に入れているのだが,ブラジルものは聞くソフトに偏りがあるため,本作のプレイバック頻度は決して高くなく,ジャケを見てまたも気まぐれで聞いてみたもの。

Walter Wanderleyはブラジル出身のオルガン奏者だが,このオルガンを中心としたここでの演奏は,ボサノヴァと言ってもよいのだが,相当響きは(いい意味で)軽く,主題の通りイージーリスニング的に感じられる。その辺はプロデューサーがCreed Taylorだけに,完全なイージーリスニングにはなっていないという感覚だが,ここでの音楽は往年のワイドショーのようなTV番組のBGMとしても使われていた記憶がある。8曲目の"So What’s New"あたりがその典型だが,いろいろなシーンに「使えそうな」音楽だと言ってもよいだろう。

久々に聞いたので全然覚えていなかったのだが,4曲目はFrançoise Hardyでお馴染みの「さよならを教えて」だが,この演奏はFrançoise Hardyがレコードを発売する前にレコーディングされていて,なんでやねん?と思っていたら,この曲はもともと"It Hurts to Say Goodbye"(本作でもそのタイトルである)というArnold GolandとJack Goldが書いた曲だったらしい。それにSerge Gainsbourgが歌詞をつけて,Françoise Hardyが歌ったのが「さよならを教えて」だったのであった。私は子供の頃に「さよならを教えて」を聞いていたので,そっちがオリジナルと思っていたら,全然違っていたのねぇ。

それはさておき,本作の売りの一つはMarcos Valleがギターで参加していることだと思うが,一部アレンジにも関わっているとは言っても,本作での主役はあくまでもWalter Wanderleyのオルガンなので,過剰な期待をするべきではない。それでもこれからの猛暑の季節にも合いそうな音楽が流れてきて,気楽に聞けて心地よいことこの上ない。ビアガーデンに遭いそうだなぁなんてことを思いながら,こういうのもたまにはいいねぇと思った次第。星★★★★。

Recorded on May 16-18 and on June 25, 1967

Personnel: Walter Wanderley(el-org, p), Marcos Valle(g), Sebastian Netto(b), Jose Marina(b), Paulinho(ds), Dom Romao(ds), Lu Lu Ferreira(perc), Talya Ferro(vo), Claudio Miranda(vo)

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2025年4月21日 (月)

Jobimで休日をくつろぐ。

_20250420_0001"Terra Brasilia" Antonio Carlos Jobim (Warner Brothers)

新旧のAntonio Carlos Jobimの曲を,Claus Ogermanのアレンジするオーケストラに乗せて演奏するというアルバム。それだけで大体の雰囲気は想像できるが,想像通りの音が出てくるこの安心感。聞いていたのが休日の朝だったのだが,まったりとした時間を過ごすには丁度よい。

まぁJobim本人の歌は,味わい深いと言えるしても,むしろヘタウマと言ってもよいものだが,ここでの演奏へのフィット感は悪くない。それよりも何よりも,このアルバムで楽しむべきは,Jobimのメロディ・メイカーとしての素晴らしさであり,それに寄り添うようなOgermanアレンジのストリングスの美しさだ。一種のイージーリスニングと言ってもよいような響きを持つこのアルバムにおいても,曲の美しさが際立つというところだ。

こういう粗バムは音楽的にどうのこうの言うよりも,ただただ身を委ねればいいのだと思える一作。休日の過ごし方への貢献度含めて星★★★★☆。

Personnel: Antonio Carlos Jobim(key, vo), Claus Ogerman(arr), Oscar Castro-Neves(g), Bucky Pizzarelli(g), Vince Bell(g), Bob Cranshaw(b), Mike Moore(b), Pascoal De Soza Meirelles(ds), Grady Tate(ds), Rubens Bassini(perc), Ana Jobim(vo)

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2025年2月18日 (火)

GRP時代のブラジルに傾斜していた頃のLee Ritenourのアルバム。

_20250215_0001 "Festival" Lee Ritenour (GRP)

現在も尚,ブラジル風味の音楽も聞かせるLee Ritenourであるが,アコースティック・ギター(一部アコギ・シンセもあり)にほぼ専念して,ブラジル風味も結構効かせたアルバムが本作。

Lee Ritenourのアルバムの平均点は高く,明らかな駄作というのは少ない人だ。もちろん,私にも好き嫌いはあるから,ダメだと思うアルバムもない訳ではないが,大概の場合は満足させられてしまうというのは,私のファン心理が働いている部分もあるとは言え,多くの人にとっても同じような感じではないかと思う。だからこそ,私はLee Ritenourが来日するとついついライブに通ってしまうのだ。

このアルバムも盤石と思えるミュージシャンを揃えて質の高い音楽を聞かせているが,裏ジャケにもある通り,ニューヨーク,ブラジル,そしてLAのミュージシャンが参加して,フュージョン好きなら確実に満足するだろう音楽を聞かせているのは立派。特に気になるのがブラジルからの参加メンツで,João Bosco,Caetano Veloso,そしてCarlinhos Brownらを迎えて,まさにわかっているねぇという感じである。

Lee Ritenourは元来エレクトリックでも強烈な技を聞かせる一方,アコースティックも上手いことは従来からわかってはいたことだが,ナイロン弦のアコースティック一本で勝負しても見事なものだ。こういう演奏を聞かせてくれるから,アルバムが出るとついつい買ってしまう人なのだとつくづく思ってしまう。私はLee Ritenourのアルバムを全て購入するところまでは行かないとしても,相当数のアルバムを保有しているが,久々にこのアルバムを聞いてもやっぱり満足してしまう佳作であった。まぁ全部が全部いいという訳ではないが,印象的な曲が多い。ここでの共演は1曲だけだが,Caetano Velosoの声との相性は素晴らしかった。星★★★★。

Personnel: Lee Ritenour(g, g-synth), Dave Grusin(key), Bob James(key), Marcus Miller(b), Anthony Jackson(b), Omar Hakim(ds), Carlinhos Brown(perc), Pahlinho Da Costa(perc), Ernie Watts(ts, as), João Bosco(vo, g), Caetano Veloso(vo), Gracinha Leporace(vo)

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2024年12月25日 (水)

師走にボサ・ノヴァでくつろぐ。

_20241224_0001 "The Sound of Ipanema" Paul Winter with Carlos Lyra(Columbia)

私はブラジル音楽もそこそこ好きだが,ボサ・ノヴァの持つゆったり感(それをサウダージと呼んでもよいのかもしれないが...)はいかなる状況にもフィットするものだと思っている。そんなボサ・ノヴァを聞くならブラジル人ミュージシャンのアルバムを聞いていればいいと思いつつ,アメリカ人でもちゃんとブラジル音楽を理解しているミュージシャンもいるということで,今日はPaul Winterのアルバムである。

Paul Winterと言えば,後のRalph TownerらOregon組を擁したPaul Winter Consort以降の方がよく知られたところだが,それに先んじてブラジル音楽に取り組んでいたことを忘れてはならない。ジャズ界でボサ・ノヴァと言えばStan Getzと考えられるのは仕方ないところだが,Paul Winterが"Jazz Meets the Bossa Nova"をリリースしたのはGetzが"Getz/Gilberto"をリリースするよりも前なのだ。それに続いて本作と"Rio"がリリースされ,ブラジル3部作となる訳で,Paul Winterの名誉のために言えば,"Getz/Gilberto"が売れたからボサ・ノヴァに取り組んだ訳ではないのだ。

ここではCarlos Lyraの何ともソフトな歌声もあって,実に心地よい時間が流れていく。本作を聞いていると「Paul Winter,わかってるねぇ~」と言いたくなってしまうのだ。ブラジル音楽へのちゃんとした理解があってこそできる音楽であり,Paul Winterのソフトなアルトの響きとのマッチ度も素晴らしい。裏ジャケに書かれた"The Warm Sound of Saxophonist Paul Winter, with the Lyrical Songs, the Sensitve Singing and the Gentle Guitar of Carlos Lyra, Brazil's Great Young Composer"という表現こそ,まさに言い得て妙だ。ピアノを弾くSergio Mendesも楚々とした伴奏ぶりも好印象で,総合的に見ても,アメリカ資本によるこの手のアルバムとしては屈指の作品と言いたい。星★★★★★。

Personnel: Paul Winter(as), Carlos Lyra(vo, g), Sergio Mendes(p), Sebastião Neto(b), Milton Banana(ds)

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2024年11月21日 (木)

Lee Ritenour and Dave Grusin with Brasilian Friends Featuring Ivan Lins@Blue Note東京参戦記

Riteour-grusin-lins-at-bnt

ここのところ毎年のように来日しているLee RitenourとDave Grusinのコンビだが,今回は新作"Brasil"のリリースを受けて,Ivan Linsほかブラジル勢を加えた面々でライブを行うということで,Blue Note東京に行ってきた。Lee Ritenourは72歳,Dave Grusinは90歳,Ivan Linsも79歳という高齢者バンドであるが,演奏自体は矍鑠たるものであり,年齢を全く感じさせないのは誠に立派。さすがにDave Grusinは見た目そのものは随分老けたって感じがしたが,繰り出されるピアノやキーボードのプレイには全く衰えは感じられず,以前のままだというのも凄いことだ。ソロで聞かせた映画「ランダム・ハーツ」のテーマにおけるピアノのプレイも,この映画はヒットはしなかったが,曲そのものは印象深いというMCにも全然ぼけたところなしであった(1stでは映画「トッツィー」から"It Might Be You"をやったらしいが,そっちも聞いてみたかった)。Ivan Linsは若干危なっかしいところがなかった訳ではないが,年齢を考えれば声の出方も大したもので,「惚れてまうやろ~」と内心思っていた私であった(笑)。

Riteour-grusin-lins-at-bnt-door 私が現地に到着したのは19:15ぐらいだったと思うが,丁度1stセットが終わって,聴衆が出てくるタイミングであった。随分早いとも思えたが,Blue Noteが今月から採用したスマート決済(当日の飲食は事前登録のクレジット・カードで決済するため,レジに並ぶ必要なし)ゆえというところもあったようだ。しかし,ほぼオンタイムで始まった2ndセットはアンコールの"Rio Funk"まで含めて演奏は約90分に及び,私を含めた聴衆も大満足だったはずだ。"Stone Flower"終了後,ヴォーカルのTatiana Parraは一旦ステージから降りたので,Blue Noteのプログラムでは"Rio Funk"は予定外だったのかもしれないが,聞いているこちらにとっては大歓迎であった。

ご老体3名に加えて,ベースのMunir Hossn,更にはアルバム"Brasil"にも参加していたブラジルからのメンバーの技量も実に高く,それが演奏への満足度を高めた要因でもあった。私はベースのBruno Migottoの指さばきに感心することしきりであったが,ブラジル音楽界のレベルの高さは実証されたと思う。このバンドにおける不安の要因はWesley Ritenourのドラムスであったが,やっぱり叩き過ぎという感じは否めないものの,以前に比べればましになったというのが実感であった。

いずれにしても,総じて満足度は高く,生で聞くブラジル音楽のノリの心地よさも含めて,ライブの楽しさを満喫したのであった。私は何でもかんでもスタンディング・オヴェイションという人間ではないが,超満員の聴衆からのスタンディング・オヴェイションにもうなずける演奏だった。上の写真はBlue Note東京のサイトから拝借したものだが,衣装からすると当日の1stの模様と思われる。

Live at Blue Note東京 on November 19, 2024, 2ndセット

Personnel: Lee Ritenour(g), Dave Grusin(p, key), Ivan Lins(vo, key), Tatiana Parra(vo), Bruno Migotto(b), Munir Hossn(b, vo), Edu Ribeiro(ds), Wesley Ritenour(ds), Marcelo Costa(per)

2024年9月 8日 (日)

追悼,Sergio Mendes。

Sergio-mendes

Sergio Mendesが亡くなった。オーセンティックなブラジル音楽と言うよりも,よりポピュラーなかたちでブラジル音楽を世に広めたという意味で大きな足跡を残したと言っていい人であった。Sergio Mendes版の"Mas Que Nada"(曲を書いたのはJorge Benだ)は誰もが知っているだろうし,その音楽はレコードやCDでなくても,様々なメディアを通して聞く機会が多かったはずだ。

Sergio-mendes-timeless過去の演奏に加えて,私が驚いたのは2006年に出た"Timeless"であった。will i amをプロデューサーに迎え,ヒップホップ系も含めて,多彩なゲストを迎えて制作され,ブラジル音楽を現代風に再構築したこのアルバムの面白さ,あるいは進取の精神を失わないSergio Mendesに驚かされたのも懐かしい。そして,ここに収められたJohn Legendが歌った"Please Baby Don't"は,私がJohn Legendに痺れるきっかけとなったと言っても過言ではないのだ。そうした意味でも意義深い作品であった。

昨今,彼の音楽をフォローしていなかった私ではあるが,いずれにしても,さまざまな意味でブラジル音楽,ポピュラー音楽への貢献度の大きい人であったと思う。

R.I.P.

2024年8月21日 (水)

Michael FranksらしいJobimトリビュート。

_20240819_0001"Abandoned Garden" Michael Franks(Warner Brothers)

アルバムの裏ジャケには”In memoriam,  Antonio Carlos Jobim, with endless admiration, affection and love."とある通り,Michael FranksによるAntonio Carlos Jobimトリビュート・アルバムである。だからと言ってJobimの曲ばかりやるのではなく,Jobimの曲は"Cinema"1曲であり,あくまでもMichael Franksの流儀でトリビュートするという作品。"Blue Pacific"あたりのアルバムはビートを効かした曲もあって,ややオーヴァー・プロデュース気味って気もしたが,このアルバムも複数のプロデューサーが関わっていても,サウンドが落ち着いていて,ずっとMichael Franksらしい。"Art of Tea"や"Sleeping Gypsy"的な感覚が戻ってきた感じと言えばいいだろう。それにしても豪華なメンツがバックを固めていて,これもMichael Franksらしいところ。Carla BleyやArt Farmerさえも招いたミュージシャンのクレジットを見ているだけでも嬉しくなってしまうのだ。

このアルバムはJobimへのトリビュートということを反映してボサノヴァのリズムの曲が多くなっているが,これがMichael Franksの脱力系ヴォイスとマッチしている。私はMichael Franksのアルバムはそこそこ保有しているが,"Art of Tea","Sleeping Gypsy"と並んで堂々一軍の棚に収まっているぐらい結構好きなアルバムだ。マッチしているかどうかは別にして,フュージョン系のビートを効かせたバックにも合わせられるMichael Franksではあるが,やはり本質的にはこういうサウンドの方がずっといいと思えるのだ。

こういう音楽がバックに流れていると仕事も捗る,そういう音楽。Michael FranksのJobimへの敬慕を評価して甘いの承知で星★★★★★。

Personnel: Michael Franks(vo, g), Michael Brecker(ts), Andy Snitzer(as), David Sanborn(as), Joshua Redman(ss), Art Farmer(flumpet), Chuck Loeb(g), Jeff Mironov(g), John Leventhal(g), Russel Ferrante(p), Eliane Elias(p), Gil Goldstein(p), Bob James(p), Carla Bley(p), Jimmy Haslip(b), Christian McBride(b), Marc Johnson(b), Steve Swallow(b), Chris Parker(ds), Lewis Nash(ds), Peter Erskine(ds, perc), Manolo Badrena(perc), Don Alias(perc), Bashiri Johnson(perc), Brian Mitchell(vo), Bob Mintzer(fl, a-fl), Lawrence Feldman(a-fl), Diane Barere(cello), Fred Slockin(cello), Mark Shuman(cello), Randy Brecker(fl-h), Keith O'Quinn(tb)

本作へのリンクはこちら

2024年8月12日 (月)

本年屈指の話題作の一枚だろう:"Milton + esperanza"。

_20240810_0001"Milton + esperanza" Milton Nascimento / esperanza spalding (Concord)

主題の通りである。ブラジル音楽の至宝,Milton Nascimentoと,もはやジャズ界を超越した活動を展開するesperanza spauldingの共演とあっては,これは注目に値するというのが当然だ。バックを支えるのはesperazaのレギュラーの面々が基本だが,そこに多彩なゲストを迎えて制作したもの。Milton Nascimentoは現在81歳ということだが,歌いっぷりには少々危ないところもあるとしても,まだまだ矍鑠としている。

Milton NascimentoのレパートリーはPaul Simonを迎えた"Um Vento Passou"を除けば既発のもの。そこにesperanzaやドラムスのJustin Tysonの曲,更にはBeatlesの"A Day in the Life"やMichael Jacksonが書いた"Earth Song"が加わるという構成はかなりバラエティに富んでいる。そしてMilton Nascimentoは全曲に参加している訳ではないので,ゲスト的な扱いと言ってもよいのだが,そこは大御所,Milton Nascimentoへの気配りってところか。

私はesperanza spauldingがFred Herschと共演したライブ盤ではヴォーカルに徹するよりも,ベースを弾いたらなおよかったなんて思っていたが,ここではちゃんとベースもプレイしていて,やはり本来は彼女はこうあるべきだと思ってしまう。そして,私が認めるべきは彼女のプロデューサーとしての仕事ぶりだと思える。ゲストの迎え方が適材適所という印象を与えるのはesperanza spauldingの審美眼によるものだと言ってもよい。Milton Nascimentoの既発曲に新たな光を当て,新曲とも整合性を保ったアルバムに仕立てたのも立派だと思う。手放しで傑作!という気はないが,よくできたアルバムだと思う。星★★★★☆。

Personnel: Milton Nascimento(vo), esperanza spaulding(vo, b), Leo Genovese(p, el-p,org, vo), Corey D. King(synth, vo), Matthew Stevens(g, vo), Justin Tyson(ds, key, vo), Eric Doob(ds), Kalna Do Jeje(ds), Shabaka Hutchings(sax, fl), Elena Pinderhughes(fl), Guinga(g, vo), Lula Galvao(g), Ronaldinho Silva(perc), Dianne Reeves(vo), Paul Simon(vo), Fernando Lodeeiro(vo, arr), Carolina Shorter(vo), Lianne La Haves(vo), Maria Gadu(vo), Tim Bernades(vo), Orquestra Ouro Preto(strings)

本作へのリンクはこちら。ついでにMilton Nascimentoの自宅で行われたTiny Desk (Home) Concertの模様も貼り付けておこう。アルバムよりシンプルな分,こっちの方が味わい深いって気もしてしまうぐらいいいねぇ。

2024年5月12日 (日)

Marisa Monte@Blue Note東京:最高の夜であった。

Marisa-monte-at-blue-note-offical

私は長年のMarisa Monteのファンではあるが,ライブ参戦の機会に恵まれなかった。しかし,今回Blue Note東京のライブが告知された瞬間からチャージは高いが,絶対観に行くと決めていた。そして念願かなっての参戦となった訳だが,実に素晴らしいライブであった。タキシード・スタイルの衣装での登場には驚いたが,冒頭の"Maria de Verdade"から心を鷲掴みにされてしまった私である。

Marisa-monte-at-blue-note_20240515085401 女性の年齢をばらすのは褒められたことではないとしても,今年で56歳と思えぬその歌声は全く衰えることなく,ギターの腕も確かなものであった。その歌声を聞いているだけで,私は至福の約90分を過ごした訳だが,あまりの幸福感ゆえ,最後は泣けてきたのであった。

当日のレパートリーを確認できた訳ではないが,代表的な曲を万遍なく演奏したと思ってよいだろう。そしてMarisaを支えるバックのメンバーも実に手堅く,いいメンツを連れてきていることは明らかであった。私は演奏中ずっと身体をゆすっていたようなものだが,そうした心地よいグルーブを生み出していたことが素晴らしい。もはや今年の屈指のライブになることは確定したようなものだ。

Marisa-monte-on-stage_20240511091801 今回のライブについては予約開始をすっかり失念しており,若干出遅れたため,今回はステージ横からMarisa Monteの歌唱を眺めることになったが,むしろ,ほかの聴衆に視界を妨げられることはなかったので,むしろよかったかもしれない。それよりも何よりも,私はMarisa Monteの歌が聞けただけでも満足であり,そしてその歌に感動していたのであった。

ステージを降りる際のMarisa Monteの表情からも,このライブへの満足感が表れているようにも思える素晴らしいライブであった。改めて彼女の音源を聞き直したくなった。

Live at Blue Note東京 on May 10, 2024

Personnel: Marisa Monte(vo,g, ukulele), Dadi(b), Davi Moraes(g, mandolin), Pupillo(ds), Pedrinho da Serrinha(per)

ブルーノートのサイトで当日のセットリストと写真(トップのものほか)が公開されたので,それも貼り付けておこう。

1. MARIA DE VERDADE
2. INFINITO PARTICULAR
3. ILUSION
4. VILAREJO
5. AINDA BEM
6. DANÇA DA SOLIDÃO
7. DIARIAMENTE
8. CARINHOSO
9. BEIJA EU
10. É VOCÊ
11. DE MAIS NINGUÉM
12. A PRIMEIRA PEDRA
13. VELHA INFÂNCIA
14. A SUA
15. EU SEI
16. TEMA DE AMOR
17. PRA MELHORAR
18. CARNAVÁLIA
19. ELEGANTE AMANHECER / A LENDA DAS SEREIAS
20. A MENINA DANÇA
EC1. AMOR I LOVE YOU
EC2. JÁ SEI NAMORAR
EC3. PRA MELHORAR

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