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2019年おすすめ作

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カテゴリー「新譜」の記事

2021年9月25日 (土)

私は上原ひろみのファンではないが,こういうのはなかなか面白いと思う。

_20210919 "Silver Lining Suite" 上原ひろみ(Telarc)

私は上原ひろみのファンではない(きっぱり)。むしろ彼女の音楽は評価しつつ結構辛口な感じだったと思うってのが正直なところだ。だから,私は彼女のアルバムが出れば買うということはないので,本作も久しぶりにアルバムを購入したという感じが強い。

Anthony Jackson~Simon Phillipsとのトリオはそれなりに面白いと思っていたが,いつも感じるのが彼女のピアノのやり過ぎ感。うまいのはわかったけど,そこまでやらなくてもいいじゃんっていう感覚である。そうした演奏が相応の高揚感をもたらすことは事実だが,常に満腹になってしまうと,飽きるのも早いっていうのが私の彼女に対する正直なところである。

では,この新作,なんで買う気になったのか?と皆さん思われるかもしれないが,先日「報道ステーション」にこのクインテットで出演していたのを見ていて,これって結構面白いかもなぁって思ったからってのが正直なところである。ということで,ボーナス・ディスクもついたお得感のある2枚組をゲットした私であった。

ジャズ・ミュージシャンがストリングスと共演するというのはCharlie Parkerの時代から続いてきていることだが,弦楽四重奏との共演と言えば,私の年代はChick Corea~Gary Burtonとの共演盤を思い出すってのが普通ではないか。そのほかだって,上原ひろみのようなコンテンポラリー感覚が強い人と言えば,またもChick Coreaの"Mad Hatter"の時期が想起される。それはいいか悪いか,あるいは好きか嫌いかは別にして,どうしてもチャレンジしたくなってしまうというミュージシャンの「性」みたいなところがあるのかなって思ってしまう。ましてやChick Coreaとの共演盤も残している上原ひろみだから,更にそういうところはあるのではないかと勝手に想像してしまう。

それでもって,今回のストリングスのアレンジメントを聞いていると,まぁよく頑張ったねっていう感じだろうか。破綻していないのは立派だとは思いつつ,あまり面白いと思えるものではない。ちょっとした違いを感じるとすれば,チェリストにピチカートでリズムを刻ませる展開だろうか。それ以外はよく出来ましたとは思うが,「普通だなぁ」って感じは否めない。ストリングスがユニゾンで演奏するシーンが多いからかもなぁという気もするが,まだまだ成長の余地はあるって気がする。

ピアノはいつもながらの上原ひろみで,目眩くフレージングで圧倒するってところだが,もはやこれは個性として捉えるべき領域と思う。そこに弦楽クァルテットが加わって,いつもと違う感じも付加していてなかなか面白いと思えた。

このご時世を踏まえて“Silver Lining Suite”と名づける気持ちもわかるってところもあり,星★★★★。それでもファンの方からすれば,まだ辛口って言われそうだが(笑)。

そもそもSilver Liningってのは”Every cloud has a silver lining."から来ているが,端的に言えば,「希望の光」みたいな意味である。上原ひろみはコロナ禍でライブ活動が制限される中,Blue Note東京で"Save Live Music"という趣旨でライブを行っていたが,ボーナス・ディスクはそのBlue Note東京でのピアノ・ソロの模様を収めたもの。65分超の音源なので,お買い得感はあるし,その「志」は認めなければならないと思う。こちらは"Ballads"と題されていて,そういう演奏が収められていて,いつものような手数やスピード感は抑制されていて,好みはわかれるかもしれないが,私には結構味わい深いものがあった。ということで,こちらとの合わせ技で星★★★★☆としよう。購入されるなら私はボーナス・ディスク付きの2枚組を推奨したい。

Recorded between April 28 and 30, 2021

Personnel: 上原ひろみ(p),西江辰郎(vln),ビルマン聡平(vln),中恵菜(vla),向井航(cello)

Bonus Disc Recorded Live at Blue Note東京 on September 10 & 11,2020

Personnel: 上原ひろみ(p)

2021年9月24日 (金)

Pat MethenyのSide Eyeが遂にリリース。

_20210923"Side Eye NYC V.1.IV" Pat Metheny(Modern Recordings)

Pat Methenyが新プロジェクトとしてSide Eyeを立ち上げ,その初ライブとして日本で公演を行ったのが2019年1月のことであった。私もそのライブに参戦し,このブログでも記事にしている(記事はこちら)。その時はPAの不調に辟易とさせられたが,それでも新しい取り組みは面白いと思ったし,何よりもその時はドラマーがNate Smithということもあり,そこへの注目度も高かった。  

そんなSide Eyeとしてのアルバムがようやくリリースされることとなったが,このV.1.IVの意味するところはジャケの中身を見るまでは謎であった。結局のところ,このSide EyeはPat MethenyとキーボードのJames Franciesを核として,ドラマーをいろいろ入れ替えるというのが基本的な考え方ということらしい。ジャケを見るとV.1.Iから現在はV.1.Vまで5人のドラマーが使われている。順にEric Harland,Anvar Marshall, Nate Smith, Marcus Gilmore, Joe Dysonとなっている。それで今回はV.1.IVということでMarcus Gilmoreとの共演である。

そして,ライナーを見ると,2019年9月のSony Hallにおける実況録音とある。ということで思い当たったのが,以前NHKのBSで放送された彼らのライブであったが,このアルバムを聴いた後,確認のためにビデオをプレイバックしてみた。すると,やはりこのアルバム,放送された時の音源(放送での収録はは9/13)も含まれている。そしてその番組でPat Methenyがインタビューに答えているのだが,ちょっと世代の離れたミュージシャンとの共演ということを念頭に置いているとのことであった。Marcus Gilmoreには最初断られると思っていたなんて言っていたが,それはまぁないだろう(笑)。

このアルバムはライブ音源であるが,3人のミュージシャンによる音楽としては,かなり音が分厚い部分があるが,放送を見直してみると,小型のオーケストリオンを使っていた。私はアンチ・オーケストリオンであり,あんな大人のオモチャがなくても,ちゃんとした音楽はできるはずと思っているので,う~むとなってしまうのだが,まぁそれでも曲によって,使ったり,使わなかったりということで,演奏に変化をつけたということになるのだろう。余談だが,インタビューで2025年ぐらいにはオーケストリオンV.2.0を作りたいなんて言っていたが,そんなことに金と時間を掛けるより,ちゃんとバンドで音楽をやって欲しいと思っていた私である。

曲としては旧作と新作が混ざっているが,どれも相応に聞きどころはあると思うが,Pat Methenyのデビュー・アルバム,"Bright Size Life"から2曲をやっているのが目を引く。BSのインタビューでも,古い曲だからと言ってやらないということはなく,キャリアの一環として捉えているというようなことを言っていたが,そのほかにも"80/81"にも入っていた”Turnaround”や,Michael Breckerのために書いた"Timeline"なんかもやっている。そうした中で旧作で一番面白くないのが"Better Days Ahead"かもしれない。それは多分,私がこの曲にPat Metheny Group的な音を求めてしまう部分もあるからかなぁなんて思っていた。一方,新作のコンテンポラリー感は更に強まっていて,その辺に時の流れも感じるが,アルバム全体としてはやはり魅力的に響く。

実力者が集まることで,優れた演奏が可能ということが実証されているが,James Franciesの貢献度はかなり大きいように思える。私はJames Franciesのリーダー作は未聴であるが,ストリーミングで聴いてみようと思わせるところはあったと思う。そして,Marcus Gilmoreは実に器用なもので,何でも叩けるというところを示している。Antonio Sanchezのような派手さはないが,実に堅実さとうまさを兼ね備えたドラマーだと思った。

ということで,やっぱりこれは相応に評価しないといかんと思えるアルバム。星★★★★☆。尚,私が購入したのは輸入盤であるが,国内盤には最後にこれまた"80/81"からの"The Bat"が加えられているが,これはストリーミングで聴ける。アンコール的な感じ(実際はアンコールではないと思うが...)でこれも悪くなかった。

Recorded Live at Sony Hall on September 12&13,2019

Personnel: Pat Metheny(g, guitar-b, orchestronic), James Francies(org, p, synth), Marcus Gilmore(ds)

2021年9月19日 (日)

一部で話題沸騰(笑),Nicole Gloverのアルバム。

_20210917 "Strange Lands" Nicole Glover(Savant)

テナー・サックスに一家言をお持ちと言えば,惜しくも閉店した新橋のテナーの聖地,「Bar D2」のマスターだった河上さんだが,その河上さんが最近ことあるごとに(笑)推しを入れているのが,このNicole Gloverである。NYCのSmallsには結構出ているようではあるが,いかんせんレコーディングはまだまだ少ないので,私は河上さんのお話から想像するに留まっていた。そうは言っても,George Colliganのアルバムで吹いているのとかは聞いていて,なるほど,さもありなんと思っていたが,そこへ彼女のアルバムが登場である。

Nicole Gloverの音楽を表すとすれば,アルバムのライナーの冒頭の文章が最適である。そこには"Her name is Nicole Glover; she is thirty years old; and she burns.” 年齢はさておき,重要なのは"She burns."ってことだろう。この目くるめくようなハードでリスナーを燃えさせるブローイングこそが,彼女の魅力と言ってよい。そして,本作は4曲にGeorge Cablesをピアノに迎えつつ,そのほかの曲はピアノレスのトリオである。サックス・プレイヤーとしての自信がなければ,そのフォーマットは取らないというところだろうが,冒頭のタイトル・トラックからして,吹きまくりである。河上さんが推すのもよくわかる演奏と言ってよい。

スタンダード3曲以外は,本人もしくはバンド・メンバー(及びその関係者?)のオリジナルである。このアルバムを聞いて思うのは,Nicole Gloverはスタンダードだってちゃんと吹けるとは思うのだが,私にはこうしたスタンダードよりも,よりハードな吹きっぷりの方が似合っていると思えてしまう。George Cablesとデュオで演じた”A Flower Is Lovesome Thing"だってちゃんとやってはいるし,ラストの"I Concentrate on You",あるいは中盤の"Dindi"だって破綻はない。ではあるのだが,これらの曲にはまだ彼女に成長,あるいは成熟の余地があると思わせるもので,やはり私にはよりハード・ブローイングな曲の方に魅力を感じてしまう。若気の至りだってよいのだ。

このアルバムを聞いていて,Lee Morganって最初から出来上がっていたのねぇと思ってしまったが,Nicole GloverをLee Morganと比べてはさすがに可哀想か...。

そうは言っても,Nicole Gloverがライブの場でブイブイ吹く姿を見れば,間違いなく悶絶させられるだろうと思うが,こうしたスタジオ・アルバムではまだまだ発展途上って感じが残るのは事実である。やはりこの人,まずはSmalls辺りでライブを観るところから始めていれば,更にはまっていたかなと思う。それでも彼女が注目に値するRising Starであることは間違いないと思えるアルバム。星★★★★。

尚,本作のプロデュースをしているのがJeremy Peltってことも,リリースしているレーベルがJerry Bergonziと同じSavantであるってことも,「その筋」のリスナーのシンパシーは間違いなく誘うな(笑)。

Recorded on December 15, 2020

Personnel: Nicole Glover(ts), George Cables(p), Daniel Duke(b), Nic Cacioppo(ds)

2021年9月17日 (金)

私の好物と言ってよい定冠詞付きの現代音楽,ブーレーズのピアノ曲全集。

Boulez "Pierre Boulez: Constellation-Miroir" Michael Wendeberg / Nicolas Hodges(Bastille Musique)

私が現代音楽のピアノ曲が結構好きなことは,おそらくこのブログの読者の皆さんにはバレていると思うが,そうした私の趣味嗜好に合致するアルバムの登場である。

私にとってはPierre Boulezは指揮者としての位置づけの方が強く,彼の作曲した音楽にはほぼ接することなく過ごしてきたと言ってもよい。だが,彼の指揮する音楽にはなるほど,そういうこともあるよなと感じさせるような理知的な解釈が感じられて実に面白いと思うことも多かった。最も印象深かったのはロンドン響とやったベルリオーズの「幻想」だったかもしれない。「断頭台への行進」のテンポの設定って,まさに解釈としてはこれが正しいのではないかと思っていた。

それはさておきである。このアルバムはそのBoulezのピアノ曲をすべて録音したアルバムということらしい。そこには主題の通り,"The 現代音楽"と言ってよい響きがディスク2枚に渡って収められている。私が現代音楽のピアノ曲を聴く場合,何が好みかと言えば,そこに示される「間」なのだが,ある意味フリー・ジャズの時として苛烈な音列と対極にあるような,この「間」こそが私にとって快感なのだ。そして,このアルバムもそれがたまらないのだ。

世界発録音を含む二手と四手のピアノ曲の集成として,それはそれとして価値があると思えるが,私としてはそれよりもこの響きに身を委ねていることが重要ということで,実に邪な聞き方と言われても仕方ない。それでもこの清冽な響きこそが,私が現代音楽のピアノに求めるものである。リリースされたことの重要性も含めて星★★★★★としよう。

それにしても,本作をリリースしたBastille Musiqueというレーベル,パッケージングには相当のこだわりを持っているようだが,ボックスの体裁は昔のブートレッグのようでもある。しかし,箱を開けると結構凝った作りって感じなのはユニークだと思った。これもレーベルとしてのこだわりなのかもしれないが,ここまでやらなくてもって思うのも事実。まぁ,でも音楽がよければそれでいいのだが,私としてはECMライクな方がいいなぁ(笑)。

Recorded between 2018 & 2020

Personnel: Michael Wendeberg(p), Nicholas Hodges(p)

2021年9月14日 (火)

待望!Marcin Wasilewski Trioの新作。やっぱり痺れるわ。

_20210913 "En Attendant" Marcin Wasilewski Trio(ECM)

今年の音楽シーズンの幕開けを飾ると言ってもよい待望の新作の登場である。このブログにも何度か書いているが,今,私が最も信頼するピアニストはBrad Mehldau,Fred Hersch,そしてこのMarcin Wasilewskiである。そのMarcin Wasilewskiのトリオによる新譜とあってはデリバリー,即記事アップである。

前作"Arctic Riff"はJoe Lovanoを迎えたある種の企画盤であったが,あれはあれでいいとして,私としては彼らの魅力はやはりピアノ・トリオでこそ発揮されると思っていた。特に私が引っ掛かったのは前作におけるコレクティブ・インプロヴィゼーションの部分であった。では本作ではどうなっていたか?

結論から言えば,私としては前作よりはるかに評価したい。トリオの3人による即興のようなアブストラクトな展開ももあるにはあるのだが,それを上回る美感がこのアルバムを支配している。録音時期は"Arctic Riff"同様,2019年8月なので,どっちが先だったのか?ってのは実に興味深いところではあるし,前作でも演奏していた"Glimmer of Hope"と"Vashkar"をここでも演奏しているのが,この2枚のアルバムの関係性を示しているような気もする。私にとってはこっちが本番,"Arctic Riff"が番外編のように思えてしまうが,彼らにとっては逆だったかもしれない。

いずれにしても,いつもながらの美学を感じさせる演奏なのだが,Doorsの"Riders on the Storm"のような意外な選曲もありながら,Doorsのメロディが実は非常に優れていたものであることをあぶり出しているような演奏だし,もっと驚いたのは「ゴルトベルク変奏曲」の第25変奏をアダプテーションしたことである。しかし,彼らの手にかかれば,バッハもこうなるかぁみたいな感じで,これがまたまたびっくりである。しかし,そこには彼らの音楽的資質と相俟った深遠なる世界が現れるというところで,実に味わい深い演奏である。

今回このアルバムを聞いても,彼らはやはり現代最高峰のピアノ・トリオの一つだという思いを強くしてしまったが,私にとってはもはやこれは惚れた弱みなのかもしれない。どうしても星★★★★★としてしまうのがその証(笑)。

Recorded in August 2019

Personnel: Marcin Wasilewski(p), Slawomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz(ds)

2021年9月 1日 (水)

Lee MorganのLighthouseボックス:これを聞いて燃えなければモグリだ(笑)。

Lee-morgan-complete-lighthouse"The Complete Live at the Lighthouse" Lee Morgan (Blue Note)

私は長年このアルバムをCD3枚組で聞いてきたのだが,スリリングな演奏の連続に大いに興奮させられてきた。3枚組は曲のダブりもなく,優れた編集盤だったと思うが,更にそれを8枚組に拡大したものが出るとなっては,更なる興奮を求めて買わざるをえない。

この8枚組は1970年7月10日から12日の演奏をフルに収録したもので,彼らのライブがどのように演奏されていたのかを生々しく伝えるものであるが,1セット当たりの演奏は結構短かったということがわかる。まぁ,一晩に4セットもやっているのだから,セット当たりの時間が短くなるのは当然だろうが,それでも3日間,これだけの演奏を残すところにミュージシャンとしての質の高さを感じざるをえない。

Lee Morganがいいのは当たり前なのだが,想定以上にいいのがBennie Maupin。ついついHerbie HancockとのHeadhuntersの演奏を想起してしまうが,ここでのBennie Maupinははるかにハードな感じで,これが実にいい。そして,メンバーのオリジナルも取り入れて,バンドとしてのバランスを保つところにLee Morganがリーダーとしても優れていたということを感じる。この辺りはArt Blakeyの薫陶を受けたことが大きいように思える。

この8枚組は曲のダブりもあるし,普通のリスナーには3枚組のCDで十分って気もするが,8枚聞いても飽きることはなかった。その中で実は一番印象が薄いと言ってもいいのが"The Sidewinder"かもしれない。ヒット曲をやるのはわかるが,このバンドには明らかにフィットしていない。むしろ,"The Sidewinder"に依存する必要がないほど,この時のバンドは充実していたと言える。8枚組のどこから聞いても失望することはないという感じだし,こういうかたちでリリースされた意義は大きいが,編集という観点では3枚組の方が上だとは思う。それでもやっぱりこれを聞くと燃えてしまうのが,ジャズ・ファンの「性」だろうな。星★★★★☆。

Recorded Live at the Lighthouse on July 10, 11 & 12, 1970

Personnel: Lee Morgan(tp, fl-h), Bennie Maupin(ts, fl, b-cl), Harold Mabern(p), Jymie Merritt(b), Micky Roker(ds), Jack DeJohnette(ds)

2021年8月10日 (火)

エレクトリック・ポップ的なLaura Marlingもまたよしってことで。

_20210808-2"Animal" Lump(Chrysalis)

私がLaura Marlingを初めて聞いたのが"A Creature I Don’t Know"の時で,今から約10年前に遡る。それ以来,私は彼女の音楽に惹かれるところ大で,今やリーダー作は全て保有(ひっそり出たライブ盤は未入手だが,それは現在取り寄せ中)しているほどである。彼女のシンガー・ソングライター的な魅力は本当に私の嗜好にぴったりで,アルバムが出れば買うモードになっている。

そんなLaura MarlingがプロデューサーのMike Lindsayと組んだバンドがLumpであるが,その存在には不勉強で気づいていなかった。しかし,今回,彼らの第2作がリリースされるということで,ロゴ入りTシャツ付きのバンドルでCDを入手した。おまけにサイン入りのプリントも付いていたが,こういうのを買ってしまう私は,既にバレバレではあるが,ミーハーと言えばミーハーである。

それはさておき,ここに収められている音楽は,いつものLaura Marlingとはちょっと違う。声や歌はLaura Marlingそのものだが,バックがエレクリック・ポップ的なのだ。アメリカならばThe Bird and the Bee的な感じだが,こっちの音楽はずっとウェットな感じがするのがイギリス的。私は聞いていてへぇ~と思ってしまったのだが,これはこれで面白い。

もちろん,私としてはいつものLaura Marlingの音楽の方が好みではあるのだが,スタジオに入って歌詞を載せたという即興性のようなものも感じられて,本当に才能あるねぇと感心してしまった。このバンドの1stも聞いてみたくさせるには十分な出来。星★★★★。しかし,これってカテゴリーが難しいところだが,ポップスなんだろうなぁ。

Personnel: Laura Marling(vo, b-cl), Mike Lindsay(key, p, g, b), Laura J. Martin(fl), Matt Ingram(ds)  

2021年8月 5日 (木)

John Mayerの新譜は80年代がテーマだそうだ。

_20210803"Sob Rock" John Mayer(Columbia)

最近のJohn Mayerのアルバムは,カントリー的な響きが強かったりして,かなり渋い,あるいは地味な印象を与えていたと思うところに,新譜の登場である。題して"Sob Rock",巷の情報によれば,テーマは80年代音楽,そしてこのジャケである。ジャケを見るまでもなく,ストリーミングで先行公開されていた曲を聞けば,ポップな世界への回帰は明らかであったが,まさにポップな響き,あるいは時に甘美なメロディ・ラインが聞こえてくる。

John-mayer このアルバムをプロデュースしたのがJohn Mayer本人と,今やBlue Noteレーベルの社長となっているDon Wasってのは正直意外な気がしないでもないが,80年代というテーマを決めて,その方向性の確かさをサポートしたのがDon Wasってことなのかもしれない。80年代を意識したってのはファクトリー・シールに貼られた懐かしのNice Priceのステッカーからも明らかであるが,私がアメリカに在住していた頃は$8.99とか$9.99のColumbiaレーベルのCDには貼られていたもので,実に懐かしい。

そんな凝ったことをしつつ,出てくる音も何ともソフトなロックという感じである。私としてはギタリストとしてのJohn Mayerがもっと聞きたいという思いにも駆られるが,まぁこれはこれでありかなとも思う。昨今はこういう音楽をヨット・ロックとも呼ぶようだが,我々の世代からすれば,AOR的と呼べばいいとも言える。訳のわからんジャンルを作らなくてもいいのになぁと思うのは年寄りの感覚なのかもしれない。

いずれにしても,私はJohn Mayerは渋い路線よりも,こういう路線の方が合っていると思うので,甘いの承知で星★★★★とするが,AORの名曲群に比べると曲のクォリティはもっと上げて欲しいと感じるのは,きっと私だけではないだろう。その辺りは実に微妙。

Personnel: John Mayer(vo, g, b, p, key), Greg Leisz(pedal steel), Greg Phillingaines(key, synth), Larry Goldings(key), Jamie Muhoberac(key), Jeff Babko(key), Sean Hurley(b), Pino Palladino(b), Aaron Sterling(ds, perc), Lenny Castro(perc), Maren Morris(vo)

2021年8月 3日 (火)

リリースされたのを全然知らなかったJeff Lorber Fusionの新作。

_20210802 "Space-Time" Jeff Lorber Fusion(Shanachie)

昨今はショップに行くこともあまりないし,新譜に関する情報はショップのWeb情報やら,ブログのお知り合いの情報に依存しているというのが実態だ。特にジャズ系情報は専門誌を読む訳でもないので,情報は結構限定的になっていると言っても過言ではない。そんなこともあって,Jeff Lorber Fusionが新譜をリリースしたのも全然知らなかった訳だが,今回たまたまWeb上で知って,慌てて発注したのであった。こういうのって彼らには多くて,前の"Impact"の時もリリースには唐突感があったが,今回も似たようなものである。

今回,ジャケに写っているのは3人である。Jeff Lorberと相方のJimmy Haslipはわかるが,一番右は?と思ったらGary Novakであった。以前,ジャケにも写っていたAndy Snitzerはクレジットからも完全に消えているが,Gary Novakの場合,5年前の来日公演にも同行していたし,"Prototype","Impact"にも全面参加だったから,レギュラー化するのは時間の問題だったのかもしれない。

それでもって出てくる音楽は安定のJeff Lorber Fusionである。ある意味,車の運転にこれほどフィットする音楽はないのではないかと思える爽快感は今回も健在。この決して突出したことはしないが,一定以上のクォリティを保つのがこのバンドの特長であるが,今回も全く破綻がない。私のようなファンが聞いても,彼らの音楽に初めて接するリスナーが聞いても,決して悪い感情が芽生えないだろうなぁというところである。逆に言えば,絶対的な傑作とはならないのだが,これだけのレベルが保たれていれば,文句も出ない。

今回のアルバムにおいては,亡くなったChick Coreaに捧げたその名も"Chick"という曲があるが,Hubert Lawsが客演して,いかにものフルートを聞かせているものの,Chick Corea的なところは感じられず,どうやってもJeff Lorber Fusion的サウンドになっているのはむしろ微笑ましい。

ということで,いつもながらの安定感ではあるが,もう少しちゃんとプロモーションすればいいのにと思うのは私だけか?商売っ気たっぷりの音楽のようなのに,商売っ気があまりないのは実に面白いねぇ。ほかの彼らのアルバム同様,評価はいつも通り星★★★★。好きなんだからしょうがないね(笑)。

Personnel: Jeff Lorber(key, synth-b, g), Jimmy Haslip(b), Gary Novak(ds), Bob Mintzer(ts), David Mann(horn), Hubert Laws(fl), Gary Meek(ss), Michael Landau(g), Paul Jackson, Jr.(g), Robben Ford(g), Gerald Albright(b)

2021年7月26日 (月)

Tedeschi Trucks Bandによる"Layla"再演セッションなのだが...。

_20210720 ”Layla Revisited: Live at Lockn’” Tedeschi Trucks Band Featuring Trey Anastacio(Fantasy)

Allman Brothers Bandとも縁深いだけでなく,Derekという名を持つDerek Trucksが奥方とのバンド,Tedeschi Trucks BandでDerek & the Dominosの”Layla And Other Assorted Love Songs"をライブでカヴァーするという企画は,誰だって気になるってところだろう。しかもゲストにPhishのTrey Anastacioを迎えてのことであるから,更に注目度は増すのが当たり前である。そういうこともあって,リリースがアナウンスされてすぐにこのアルバムを発注した私である。現物が手許に届く前にはストリーミングで聞いていたが,実はその時から違和感があった。しかし,現物を聞いたら印象が変わることもあると期待してプレイバックをした私であった。

まぁ,この人たちのことであるから,水準は保つに決まっているのだが,私は現物で聞いてもどうもピンと来ない。はっきり言ってしまえば「軽い」のだ。演奏能力に問題があるはずはない。よって,この違和感はヴォーカルのせいだと思える。さすがにこういうライブであると,Susan Tedeschiが全面的に対応することは難しかろうということで,Trey Anastacioをゲストに迎えるとともに,Doyle Bramhall IIも歌って,バランスを取っていると思う。しかし,どうしても我々の耳にはオリジナルのイメージが埋め込まれてしまっていて,どうやってもそれを越えることはできなかったという印象なのだ。

ここはあくまでも別物として聞くべきものだとは思うのだが,どうしてもそうならないというのが人情なのだ。こういうのはライブ・イベントとして参加して感じるイメージと,純粋に音だけを鑑賞するのではかなり印象が異なると思えるが,私にはこれを大成功だとは思えなかったというのが実感。こういうトリビュート物には,このアルバムのように基本的にオリジナルに忠実に演奏するパターンと,ミュージシャンの個性として,解体と再構築を図るパターンがあって,前者は前者,後者は後者なりの難しさがあるが,本作はその難しさを改めて痛感させたと言ってもよいと思う。期待が大きかっただけに,ちょっと残念という気もするので,星★★★☆ということにしよう。嫌いじゃないが,どうしても没入できなかったというのが正直なところ。

Recorded Live at Lockn’ on August 24, 2019

Personnel: Susan Tedeschi(g, vo), Derek Trucks(g), Trey Anastacio(g, vo), Doyle Bramhall II(g, vo), Tyler "Falcon" Greenwell(ds), J.J. Johnson(ds), Gabe Dixon(key, vo), Brandon Boone(b), Mike Mattison(vo), Mark Rivers(vo), Alecia Chakour(vo), Kebbi Williams(sax), Ephrain Owens(tp), Elizabeth Lee(tb)

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