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カテゴリー「新譜」の記事

2023年1月30日 (月)

豪華メンツによるAlex Sipiaginの新作をストリーミングで聞く。

Mels-vision "Mel’s Vision" Alex Sipiagin(Criss Cross)

Alex Sipiaginのアルバムは大体がよく出来ていて,非常に平均点が高いミュージシャンだと思っている。だからと言って全部買いをしている訳ではなく,昨年リリースした"Ascent to the Blues"はスルーしてしまっていた。このブログで最後に彼のアルバムを取り上げたのはその前の"Upstream"に遡る(記事はこちら)。そこでもCriss Crossレーベルのことを書いているが,創設者Gerry Teekensの死によって,一時期存続が危ぶまれたものの,その後も活動は継続され,本作のような新譜がリリースされることは実に喜ばしい。そして,このいかにもCriss Crossらしい豪華なメンツには期待が高まる訳だ。

そうは言っても,この時代,何でもかんでもフィジカルな媒体を購入するという訳でもないので,まずはストリーミングで聞いてから購入を検討というのが,本当に好きなミュージシャンを除いた私の昨今の行動パターンなので,本作もまずはストリーミングで聞いてみた。

Criss CrossのWebサイトによれば,もともとGerry TeekensにはAilex Sipiaginにスタンダードのアルバムを吹き込ませたいという考えがあったようだが,Teekensの死によって,その計画は頓挫していた。新生Criss Crossに吹き込まれた本作では,「スタンダード」という訳ではないが,Don Friedman, McCoy Tyner,Ornette Coleman, そしてCharlie Mingusのジャズマン・オリジナル(それもなかなか珍しい選曲である)を交えたアルバムになっている。そこにSipiaginのオリジナル2曲,クリポタのオリジナル1曲,そしてウクライナ民謡"Vesnianka"が加わるというプログラムである。

このアルバムを聞いていると,やはりSipiaginとクリポタというフロントは強烈だし,リズム・セクションもパワフルである。アルバムとしても相応に楽しめることは間違いない。だが,ストリーミングで聞いているせいもあるかもしれないが,このアルバムを買いたい!ってところまでには至っていないというのが正直なところだ。このメンツとしては珍しいとも言えそうなDon Friedmanの"Summer's End"をはじめ,スロー・チューンの方に意外なよさを感じてしまうのが,私の天邪鬼なところと言ってもいいかもしれないが,アルバム全体でSipiaginとクリポタの対位法的なアプローチが出過ぎじゃないのって気もしてしまう。各人のソロは素晴らしいと思うが,アレンジメントとしてはどうかなぁってところだ。また,Ornetteの"Bird Food"を2テイク入れる必要性についても疑問を感じる。

だがこれだけのメンツである。がっかりさせられることはないが,私にとっては当面はストリーミングで聞いていればいいやって感じである。星★★★★。

Recorded on April 22, 2022

Personnel: Alex Spragin(tp, fl-f), Chris Potter(ts), David Kikoski(p), Matt Brewer(b), Johnathan Blake(ds)

2023年1月16日 (月)

Ondřej Štveráčekの新作登場:Space Projectのライブ盤。

_20230114 "Space Project Live" Ondřej Štveráček(Stvery)

ジャズ界のおんどれ君ことチェコのテナー・サックス奏者,Ondřej Štveráčekについてはこのブログにも何度も登場し,その都度,結構贔屓にしてきた。John Coltraneの影響を受けたOndřej Štveráčekのテナーは,多くのリスナーの耳を惹きつけるだけの魅力を持つものと思っている。そんなOndřej Štveráčekの前作は"Space Project"というエレクトリック・サウンドを追求したものであり,それまでのイメージを覆す感じで私を驚かせたのであった。そのおんどれ君の最新作がリリースされたので,本人に連絡を取り,チェコから飛ばしたものが先日デリバリーされた。本作はそのSpace Projectによるライブ盤である。

当然,Space Project名義であるから,またエレクトリック路線でブイブイ言わせるものと思わせるのだが,これがちょっと違うのだ。冒頭の2曲こそエレクトリックで始まるが,3曲目の"Spanish"はアコースティックで,John Coltraneフォロワー路線が明確に打ち出され,私としてはおやっ?と思ってしまう。まぁ,Space Projectと言ったって,ドラマーは最近共演の多かったGene JacksonからDavid Hodekに代わっているが,基本的にメンツはいつものメンツなのだから,エレクトリックだろうが,アコースティックだろうがやれてしまうことはわかる。しかし,Space Projectを名乗る以上,路線は明確にした方がよくないか?それに続く"Control"もKlaudius KováčのMcCoy Tynerライクなピアノが聞こえてきるのはいいとして,1分19秒で唐突にフェードアウトしてしまう構成は一体どういうことなんだと思ってしまう。そして,それに続く"The Ferret"はエレクトリックに戻るのだ。この辺に私は戸惑ってしまったというのが正直なところだ。

更にそれに続く"Speed"はDavid Hodekのドラムス・ソロなのだが,これも1分50秒でフェードアウトし,次の"To Nowhere And Back"は13分越えの演奏となっていて,その次の"Sonic"はフェードインから2分弱でフェードアウトと,これらのフェードアウトされる曲はインタールード的なものと解釈すればいいのかと思ってしまう。しかし,それが成功しているかと言えば,そこは少々疑問に感じる。おんどれ君としては,レコーディングしたものは何らかのかたちで音源として残そうとしたのかもしれないし,9曲目の3分程度の"Vibe"がベース・ソロであることを考えると,短い尺の曲はメンバーのショーケース的なものとしたかったのもしれないが,聴き手に違和感をおぼえさせてしまっているのは何とももったいない。

そして,最後が"Maiden Voyage"をアコースティック路線で締める訳だが,私としてはやはりこのエレクトリックとアコースティックの混在,そしてアルバムとしてのプロダクションには中途半端さを感じてしまい,いつものおんどれ君のようにはこのアルバムに没入できなかったというのが正直なところである。

演奏自体は悪いとは思わないので,ここはプロデューサーとしてのおんどれ君に,もう少し修行して欲しいという感じか。いつも贔屓にしているがゆえに辛口になってしまったが,今回は「う~む...」となっても,次にはまた期待したいと思う。星★★★☆。

尚,本作は本人から直接送ってもらったので,ライナーには下の写真のようにサインを入れて送ってくれた。

Recorded Live at U Malého Glena, Prague on March 26, 2022 

Personnel: Ondřej Štveráček(ts,effects),Klaudius Kováč(p, synth), Tomáš Baroš(el-b, b), David Hodek(ds)

_20230114-2

2023年1月 5日 (木)

今年最初の新作ジャズ・アルバムはFred Hersch & Esperanza Spalding。

Hersch-and-esperanza "Alive at the Village Vanguard" Fred Hersch & Esperanza Spalding (Palmetto)

新年最初のジャズの新譜はこれからにしよう。彼らがVanguardでライブ録音をしたことは認識されているばかりでなく,実はこの時の模様は5曲だけながら,ダウンロード・オンリーで公開されている。それについては2020年6月に既にこのブログにも書いている(記事はこちら)が,その時はコロナ禍におけるミュージシャン救済を目的としたベネフィット音源であり,Rough Mixというかたちでの公開であったが,ようやく公式にそれがリリースされることになったものである。

Rough Mixは5曲のEP扱いだったのに対し,このアルバムでは8曲に拡大されたヴァージョンとなっている。ここではEsperanza Spaldingはヴォーカルに専念しているが,むしろベースを弾きながら歌うというオプションもあったと思ったというのが元々のRough Mixを聞いた時の感覚だったが,このオフィシャル・リリースで私の感覚に変化が生じるかには実は関心があった。

聞いてみたところ,感覚的には大きな違いはなかったが,Fred Herschのピアノにはリリカルなだけでなく,若干アウト気味なフレージングもあったのだなぁというのが新たな発見と言えば発見であった。しかしながら,やはりEsperanza Spaldingの声がジャズのスタンダードにフィットしているとはあまり思えないところで,折角ならベースをプレイしながらの演奏の方がよかったのではないかという思いはぬぐい切れなかったというのが実感。確かにライブらしい楽しさに溢れていて,聴衆には受けていることも事実だが,Fred Herschとヴォーカリストの演奏なら,よりリリシズムを感じさせるNorma Winstonとの"Songs and Lullabies"とか,Janis Siegelとの"Short Stories"の方に軍配を上げてしまうかなってところである。せっかくだったら,Fred Herschのオリジナル"Valentine"にNorma Winstoneが歌詞をつけた"A Wish"のような曲がもう少し欲しかった。

もちろん,この二人の演奏であるから,おかしなことにはならないとしても,"Girl Talk"のように12分超の演奏をされてもなぁってところは感じてしまったというのが正直なところである。星★★★★。そもそも4年以上寝かさなくてもよかったんじゃない?って思うのは私だけだろうか。EPからだって2年以上経過しているのも何か理由があったのかと問いたくなる。

Recorded Live at the Village Vanguard on October 19-21, 2018

Personnel: Fred Hersch(p), Esperanza Spalding(vo)

2022年12月 8日 (木)

Brad Mehldauの新譜はもはやオフィシャル・ブートレッグ?(笑)

Your_mother_should_know"Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays the Beatles" Brad Mehldau(Nonesuch)

Nonesuchレーベルから告知が出ているが,Brad Mehldauの新作が延期された来日に合わせるように,来年の2月10日にリリース予定となっている。タイトルは文字通り,Brad MehldauによるBeatles曲集である(1曲だけDavid Bowieが"Hunky Dory"で発表した"Life on Mars?"が最後に入っているが...)。これまでもBrad MehldauはBeatlesの曲を演奏することはあったから,このアルバム自体は予想がつかなかった訳ではないので,これはこれで喜ぶべきだ。

だが,Nonesuchからの告知を見ると,このアルバムは2020年9月にPhilharmonie de Parisで録音とある。この時,9月19日と20日の2日間に渡ってBrad Mehldauは同地で演奏している。しかもその時の様子は既にブートレッグで聞くことができるのだ(それに関する記事はこちら)。既にレコーディングから1か月も経たないうちに私はこの時の演奏を聞いていた訳だが,私が聞いているのは1日目がオーディエンス録音,2日目がサウンドボード。私は見ていないが,2日目の模様はプロショットのDVDとしてブートも売られているはずだ。

そうなるとこれはもはやオフィシャル・ブートレッグの趣である。当然,公式盤であるから音は更によくなっているものと思うので,私としては買うことは言うまでもないのだが,若干の何だかなぁ~って感覚は避けられないところ。因みに私が保有する2日目のサウンドボード版のブートは,この公式盤以上の曲が収録されている。ご参考ではあるが,次のような曲目である。ご覧頂ければわかる通り,Beatles,David Bowieに加え,Paul McCartneyのソロ,Zombies,Beach Boys,Billy Joelにジャズ・スタンダードと,この時の演奏が相当にポップ畑を意識した音源であることは間違いない。

Disc  1:

  1. I Am the Walrus
  2. Your Mother Should Know
  3. I Saw Her Standing There
  4. For No One
  5. Baby’s in Black
  6. She Said She Said
  7. Here There And Everywhere
  8. If I Needed Someone
  9. Maxwell's Silver Hammer

Disc 2:

  1. Goleden Slumber
  2. Mabe I'm Amazed
  3. A Rose for Emily
  4. God Only Knows
  5. Life on Mars?
  6. New York State of Mind
  7. Strike up the Band
  8. Smoke Gets in Your Eyes
  9. Blackbird
  10. The Nearness of You

1日目にはDisc 2の7,8,10曲目に代わって,"And I Love Her","Come Rain or Come Shine","Brownie Speaks","Pannonica"を演奏している。

私はこの音源を既に聞いてしまっているので,内容は保証できるのだが,どうせならスタジオで再録して欲しかったなぁってのも正直なところ。しかし,公式盤コンプリートを目指す立場としては買わない訳にはいかないのだが(苦笑)。どういう音になっているかは2月のリリースを待つことにしよう。

2022年12月 4日 (日)

まさかChristine McVieの追悼記事になってしまうとは...:Fleetwood Macのオルタネイト・テイク集成ボックス。

Alternate-fleetwood-mac "The Alternate Collection" Fleetwood Mac(Reprise/Warner Brothers)

まさかこの記事がChristine McVieの追悼記事になってしまうとは思わなかった。それぐらい突然の訃報だった。彼女の訃報に接する前に本作に関する記事は書いていたのだが,急遽書き直しとなった。

これは,今年のRSD Black Fridayでリリースされたボックス・セットである。このAlternate音源集は,Record Store Dayの度に,Fleetwood Macの最盛期のアルバムを小出しにしてきたものを,今回CD6枚(アナログは8枚組)に集成したもの。そう言えば,私もアナログの"Alternate Tusk"は保有していたのであった。まさかその購入直後に訃報に接することになるとは夢想だにしなった。

私はFleetwood Macの熱烈なファンとは言えないが,アルバムはそこそこ保有しているし,このブログに最後に書いたのは69年から74年のアルバムを集めたボックスについてであった(記事はこちら)。そこにも書いているが私がFleetwood Macを聞くのはChristine McVieが聞きたいからにほかならない。今回のボックスを買ってしまったのはそれが理由と言っても過言ではない。だからこそ,今回の訃報に対するショックは大きい。

確かに"Alternate XXX"は別テイクやデモ音源を集めたものに過ぎないから,本質的にはオリジナルのアルバムを聞いていればいいのは間違いないのだ。それでも買ってしまうのは,無駄遣いと言われればその通りであり,レコード会社の策略にまんまと乗せられているのだが,ストリーミング全盛の時代に,フィジカルな媒体を残すことに貢献している訳だが,そこに今回はChristine McVieを偲ぶという意味合いが加わってしまったのは実に悲しい。

スタジオ録音に関しては,完成前の不完全テイク(ほぼ完成していると言っていいものもある)や,完成に向けてクォリティを高めていく様子を聞けるのはそれなりに価値はあるとしても,多くの人には勧めにくいというのが正直なところ。また,既に発売されているExpandedあるいはDeluxe Editionで公開されているものと変わらないから,そっちを持っている人には用なしだろう。

Christine McVieの訃報のショックが大きく,彼女のアルバムや,Fleetwood Macのオリジナル音源を聞くのに時間を取られてしまい,まだボックスのすべてを聞いた訳ではないのだが,私としては"Alternate Live"を面白く聞いた。オリジナルの"Live"については,私はあまり評価していない(そちらに関する記事はこちら)のだが,この"Alternate Live"はオリジナルと曲のダブりがないというところが魅力なのだ。こういうプロダクションはいいと思うし,単体で買うなら,私はこの"Alternate Live"は推奨してもいいだろう。まぁ,そうは言ってもオリジナル同様,粗っぽい部分はあることは否定しがたいが,これなら許せる。これはオリジナル"Live"のデラックス・ヴァージョンのCD3と同じと思われるので,このボックスを買わなくても入手は可能だから,ご関心のある方はそちらをどうぞってところか。

ということで,Christine McVieを偲びながら,暇を見つけて,ゆっくり聞き進めることにしたいと思う。

改めてR.I.P.

Personnel: Stevie Nicks(vo), Lindsay Buckingham(g, vo), Christine McVie(key, vo), John McVie(b), Mick Fleetwood(ds)

2022年11月30日 (水)

Charles Lloydのトリオ3部作完結:最終作にして,最もユニークな編成だが,Zakir Hussainが効いているだけでなく,Julian Lageも素晴らしい。

_20221126 "Trios:Sacred Thread" Charles Lloyd(Blue Note)

異なった編成のトリオで3枚のアルバムを連続リリースするという離れ業を展開するCharles Lloyd。その3部作の最終作がリリースされた。既にリリースされた2枚も味わい深く,素晴らしい出来だったが,この最終作は静謐な感覚もありながら,盛り上げるところは盛り上げていて,これまたよく出来たアルバムとしか言いようがない。

本作も2020年のパンデミック最盛期にストリーミングで配信された音源がもとになっているようだが,困難なタイミングにおいても,音楽を通じた創造を忘れないCharles Lloydの執念のようなものを感じる。これを80歳を過ぎた人がやっているということ自体が奇跡的と言ってもよいかもしれない。

曲はCharles LloydとZakir Hussainのオリジナルがそれぞれ4曲,3曲を分け合っているが,アルバムとしてのサウンドは一本筋が通っていて実に見事。Charles Lloydの演奏とZakir Hussainのヴォイスの混じり具合も凄いのだが,それをバックで支えるJulian Lageのギターが輪を掛けて素晴らしい。正直言って,私はJulian Lageのリーダー作にはあまり関心を持てないのだが,ここでのギターを聞くと,この人の才能が完璧に捉えられているようにも思える。ギターの音色も魅力的で,こういう演奏を引き出してしまうのもCharles Lloydのマジックか?

収められた曲はどれもが魅力的だが,最後に収められた"The Blessing"で締めて,深い余韻を感じさせる構成には心底感心してしまった。

このトリオ3部作は,単体ではどれも星★★★★☆っていう評価でいいと思うが,3枚の合わせ技ならば星★★★★★とせざるをえまい。

そう言えば,Charles LloydとZakir Hussainには"Sangam"って共演作もあったなぁ。暫く聞いてないので,改めて聴いてみることにしよう。

Recorded Live at the Paul Mahder Gallery, Healdsburg on September 26,2020

Personnel: Charles Lloyd(ts, a-fl, tarogato, maracas), Zakir Hussain(tabla, perc, vo), Julian Lage(g)

2022年11月27日 (日)

日野元彦の未発表音源:バンド全体も強烈だが,中でも渡辺香津美が凄い。

_20221125-2 "Flying Clouds" 日野元彦カルテット+2(Days of Delight)

Three Blind Miceレーベルが録音しておきながら,ライナーに書かれているような様々な理由でお蔵入りしていた音源が,46年という時を経てリリースされたもの。あの名盤「流氷」から3か月後の演奏で,ほぼメンツも同じということからも,期待が高まる音源であった。そして,期待は裏切られることはなかった。

この日,日野元彦は時差ボケの体調不良だったらしいが,ここでの音楽を聞いている限り,そうした感じは全然感じられないぐらいパワフルである。それはゲスト参加したパーカッションの今村祐司のサポートゆえってところもあるが,全編に渡って「流氷」同様の熱いジャズを聞かせてくれる。

とりわけ私が強烈だと思ったのが,渡辺香津美のソロ。若い頃から凄かったんだねぇというのがよくわかる,目くるめくようなフレージングにはまいったとしか言いようがない。あまりに渡辺香津美のソロに耳が行きすぎて,2テナーの音にまで注意が向かなかったではないか(爆)。

いずれにしても,70年代の日本のジャズがいかに強力だったかを改めて痛感させられる痛快ライブ音源。それにしても古い音源をここまで復活させるとは現代のデジタル技術,恐るべし。星★★★★☆。

Recorded Live at ヤマハ・ホール on May 27, 1976

Personnel: 日野元彦(ds), 山口真文(ts), 清水靖晃(ts), 渡辺香津美(g), 井野信義(b) 

2022年11月18日 (金)

当たり前の話だが,ReichはどうやってもReichであったというアルバム(笑)。

_20221117 "Steve Reich: Runner / Music for Ensemble and Orchestra" Susanna Mälkki / Los Angeles Philharmonic (Nonesuch)

Steve Reichの音楽は今年"Reich/Richter"がリリースされて,それも素晴らしい出来だと思ったが,またも新作がNonesuchからリリースされた。こちらも100%Reichらしさに溢れていて,Reichの音楽が好きな人間にとってはたまらない作品と言ってよい。

このアルバムには表題の通り,2曲が収められているが,先に初演されたのが"Runner"で,"Music for Ensemble and Orchestra"は編成を拡大したそのヴァリエーションと捉えることも可能だと思えるほど,曲のコンセプトは非常に似通っている,というかほぼ同じである。♩=100で,曲名も16分音符~8分音符~4分音符~8分音符~16分音符と全く同じであり,並びも全く一緒なのだから,そう考えてよいだろう。

収録時間は2曲で35分強と短いものだが,あっという間に時間が経過していき,何度でもリピートしてしまうのが,これまたReichのReichたる所以である。

こういう音楽に評価は不要って気もするが,ついつい星も甘くなり今回も星★★★★★。

Recorded on November 1-4, 2018 and on November 6-7

Personnel: Susanna Mälkki(cond),Los Angeles Philharmonic

2022年11月 9日 (水)

John Legend: もはやソウル界のVIPだな。

_20221107 "Legend Act I & Act II" John Legend (Republic)

Kanye Westに見出されて2004年にデビューした段階から,この人のレベルの違いは明らかであったが,その後,順調に積み重ね,アルバムには若干の出来,不出来はあったものの,極めて信頼するミュージシャンであることを実証してきたJohn Legendである。Kanye Westのミュージシャンとしての人生が,馬鹿げた発言等により風前の灯であるのと対照的としか言いようがないが,このアルバムを聞いても,この人の今後は十分に期待できると確信した。

長年所属したColumbiaレーベルを離れた第一弾となる本作は2枚組で,ディスクはAct IとAct IIと題されているが,テーマは「土曜の夜と日曜の朝」だそうである。Act Iのディスク1が「土曜の夜」で,Act IIのディスク2が「日曜の朝」ということになるが,ディスク間の雰囲気の違いは明らかであり,これは完全に狙ったものってことになる。

「土曜の夜と日曜の朝」と言えば,我々の世代にはAlan Sillitoeの小説だったり,それを原作とするAlbert Finney主演の映画を思い出してしまう訳だが,別にその線を狙ったわけではないとしても,「土曜の夜」と「日曜の朝」のギャップを感じさせる構成になっていることは同様かもしれない。いずれにしても,アッパーとダウナーを織り交ぜつつも,全編を通じていい曲書くねぇと思わせるアルバムは,2枚組の長さを感じさせない。もちろん,John Legendのあの声,あの歌唱は健在であり,これはやはりよく出来ていると思わせる。私としては"Love in the Future"以来の出来と評価したい。星★★★★☆。

尚,ライナーの文字が小さ過ぎてほとんど読めない老眼の私なのでPersonnelは省略するが,ゲストは適材適所と思う。

2022年11月 8日 (火)

こんなアルバムはECM New Seriesでしか作れないと思ってしまう”L’Aurore”。

_20221106 "L’Aurore" Carolin Widmann(ECM New Series)

Carolin Widmannはドイツのヴァイオリニストで,現代音楽を得意とするらしい人らしい。このアルバムはCarolin Widmannのソロ・ヴァイオリンによる作品なのだが,現代音楽だけならさておき,ここでの選曲ってECM New Series以外ありえないだろうと言いたくなるようなものなのだ。

そもそも冒頭のHidegard von Bingenは中世ヨーロッパ最大の賢女と言われているらしい宗教家であり,神秘家であり,そして作曲家らしい。ここに収められた"Spiritus sanctus vivificans vita"も元々は聖歌として作られたもののはずで,そのメロディ・ラインをヴァイオリンで奏でたものと思われる。そして間に近現代の作曲家(全然知らない)の曲をはさんで,最後を締めるのがバッハの無伴奏パルティータ2番なのだ。こんなプログラムって,ヴァイオリンのソロ・リサイタルならないとは言えないかもしれないが,アルバムとして残してしまうのが,ECM New SeriesのECM New Seriesたる所以である。

ECM New Seriesっていうのは古典と近現代音楽をマージするというのが実に得意だと思うが,これはおそらくManfred Eicherの指向によるものと思える。そして,こういう異質の音楽の同居が実に新鮮な感覚を生むということを,私はこのレーベルのピアノ音楽でも経験している。Alexei Lubimov然り,Anna Gourari然りである。そして,それは楽器が変わって,ヴァイオリンでも全く同じであった。結局,こういうのが私の嗜好にもマッチするってことだが,Manfred Eicherの術中にまんまとはまっているだけなのかもしれない。この記事を書くにあたって,過去の記事を振り返ってみると,Alexei Lubimovにそろ,Anna Gourariにしろ,ほとんど同じようなことを書いているのは,私の表現能力の限界だが,同じ感覚を与えるということこそが,Manfred Eicherの狙いだと思ってしまう。

しかし,バッハはさておき,こういうアルバムでないとおそらく接することのなかったであろう音楽を聞くことができたのは,偏にECM New Seriesというレーベル・パワーだったということなる。だからこそ,ECM New Seriesのアルバムは侮れないし,ちゃんとフォローしないといかんのである。私の場合は器楽曲専門みたいな感じだとしても,そこで何度もはまっているのも事実なのだ。

このアルバムも,傾聴するもよし,聞き流すもよしのオプションを与えてくれるアルバムだと思う。星★★★★☆。

Recorded in July, 2021

Personnel: Carolin Widmann(vln)

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