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カテゴリー「新譜」の記事

2024年3月29日 (金)

またもブートの話。Chris Potter Circuitsの最新欧州ライブ。

_20240327_0001 "Vienna 2024" Chris Potter Circuits (Bootleg)

いつも言っているように,ストリーミングの利用が増えると,現物CDの購入は確実に減るのだが,その代わりに増えるのがブートレッグの購入ってことになる。よって,以前に比べるとこのブログにブートが登場する機会も随分増えたと思う。それは魅力的に響くブートが世の中に出回っているからにほかならないのだが,しかも最近は最新音源に触れるならブートの方が圧倒的に早い。この音源だって,今年の2月のウィーンにおけるライブ音源である。しかもメンツが超強力。何てたって,クリポタことChris Potterに,Undergroundからの盟友Craig Taborn,そしてドラムスはEric Harlandなのだ。そんなもん,誰だって聞きたくなるわ!(笑)

クリポタと言えば,先日,オールスターによる新作"Eagle’s Point"では落ち着いた感じの演奏ながら,世のリスナーを興奮させたばかりであるが,こちらはメンツからしても,よりぶちかましのクリポタである。Circuits名義とはなっているが,Craig Tabornがアコースティック・ピアノを多用していることもあり,エレクトリック感は若干控えめながら,ぶいぶい吹きまくるクリポタが楽しめる。それに対して,Craig Tabornはフリー的なアプローチも加えながら応え,Eric Harlandは的確かつ強力に二人を煽る。このブートレッグは当日の2セットを完全収録したものと思われるが,これをライブで見ていたら悶絶していただろうと思わざるを得ない。

この時の演奏にはプロ・ショットの映像もあるので,ソースはそちらだろうが,クリポタの「現在」を知る上では,新作アルバムを楽しむのに加えて,こういうブートに依存することになるのは仕方がない。そう思わせるほど,またそうしたくなるほど,昨今のクリポタは絶好調なのである。昨年はSF Jazz Collectiveで来日したクリポタだが,それはそれで素晴らしかったとしても,たまにはこういうバンドでも日本に来て欲しいと思うのはきっと私だけではないはずだ。まさに高揚感の塊。たまりまへん。

Recorded Live at Porgy & Bess Jazz and Music Club on February 19, 2024

Personnel: Chris Potter(ts, ss), Craig Taborn(p, el-p, key), Eric Harland(ds)

2024年3月 9日 (土)

Julian Lageの新作はJoe Henryプロデュース。この邂逅は必然だったと言える。

Julian-lage "Speak to Me" Julian Lage (Blue Note)

世間では非常に評価の高いJulian Lageであるが,正直なところ,私はそれほど思い入れはない。彼がGary Burtonのバンドに参加した頃は注目の若手だと思ったし,Charles Lloydのバンドでの演奏も素晴らしかった。しかし,Julian Lageのリーダー・アルバムは,ストリーミングで聞いてもあまりピンとこなかったというのが事実なのだ。私はアメリカーナ的なサウンドは決して嫌いではないのだが,Julian Lageの魅力が十分理解できていなかったことは間違いない。そんな私でも,本作のプロデューサーがJoe Henryと知ってはちゃんと聞かない訳にはいかない。

私はJoe Henryを歌手としても評価しているが,そのプロデュースのセンスが大体においては素晴らしい(もちろん失敗作もある)。そこから生まれる音はアメリカーナ的なサウンドが主であり,Joe Henry組と言ってもよいミュージシャンを集めて,短期間でレコーディングするというのがこの人のやり方だ。そこから生み出される渋くも味わい深い音楽に私は結構惚れ込んできたと言ってもよい。そんなJoe Henryがこれまで生み出してきたアルバム群におけるサウンドを踏まえれば,Julian Lageがやっている音楽との親和性は保証されたようなものだと思える。だから私はこの組み合わせはもはや必然的であったと思えるのだ。

そして,本作でも展開される音楽はやはり渋い。コンベンショナルなジャズの範疇からは少々離れているところはあっても,Joe Henryのプロダクションもよく,聞き応えのアルバムに仕上がった。Julian Lageは自身のサイトで,Joe Henryの的確なガイダンスについて語っているが,やはり名プロデューサーは音の仕立て方が違うと思わされる。本作も数日でレコーディングしたようだが,それに先立って,Julian LageとJoe Henryは数か月に渡って,議論を重ねていたらしいから,ちゃんと準備はしているってことだ。そしてゲストの配置も的確で,一部で話題のKris Davisを参加させているのには驚いてしまった。メンバーにはJoe Henry組のPatrick Warrenも加わっているが,そこにKris Davisのピアノをアドオンするというのがユニークでありながら,適切に響くのだ。そして,そのソロも強烈。

もちろん,Julian Lageのフレージングやギターのサウンドも素晴らしく,私はようやく彼のリーダー作の魅力に気づくことができたと言ってもよいだろう。明らかにJoe Henryというプロデューサーを迎えたことが吉と出たことを強く感じるアルバムであった。星★★★★☆。

Personnel: Julian Lage(g), Jorge Roeder(b), Dave King(ds), Patrick Warren(key, p), Kris Davis(p), Levon Henry(ts, as, cl, a-cl)

2024年3月 8日 (金)

今年最大の注目作の一枚と言ってよいクリポタの新譜が英国より到着。

_20240307_0001"Eagle’s Point" Chris Potter (Edition)

主題の通り,本作は今年最大の注目作の一枚となることは必定と思われたアルバム。何と言ってもクリポタことChris Potterを支えるのがBrad Mehldau,John Patitucci,そしてBrian Bladeなのだ。レコーディング情報が伝わった時から,私はまだかまだかと待っていたというのが正直なところである。私は英国から飛ばしたものが到着したので,早速CDを聞いてみた。

こうしたオールスターのクァルテットはベースをChristian McBrideに代えたJoshua Redmanの例があったが,正直言って私はJoshua Redman盤には失望感さえ抱いていたが,クリポタならちゃんとやってくれるだろうと思っていたが,その期待は裏切られることはなかったと言い切ってしまおう。

冒頭の"Dream of Home"からキレキレのクリポタ・フレーズ全開である。そして,バックとの親和性も十分で,やっぱりクリポタ,仕事のレベルが高いと思わせる。現代No.1のサックス・プレイヤーはクリポタだと改めて感じてしまう。それに対して,ここでのBrad Mehldauはリーダーを結構立てた感じもするが,こうしたコンベンショナルなセッティングでもきっちり聞かせるソロを取り,バッキングも的確であることは言うまでもない。そして"Aria for Anna"前半のクリポタのソプラノとのデュオ・パートにおけるピアノの響きの美しいことよ。

ということで,私にとっては再編Joshua Redman Quartetよりもはるかに評価が高いアルバムとなった。ないものねだりとは思いつつ,全体的には比較的落ち着いた曲調が多いので,更にハードな展開があってもよかったような気もするが,ここは少々甘いの承知で星★★★★★としよう。まぁクリポタらしいフレーズは十分発揮されているので不満は全くない。何だかんだ言っても,全8曲56分余りを聞き終えるとウハウハしていた私である。

それにしてもこのアルバム,実にクリアに音が録れている。典型的なジャズ的サウンドと言うよりも,更にクリアな音場って感じだが,私のしょぼいオーディオでもわかるレベルの好録音だと思う。

尚,Brad Mehldauオタクの私は,本作の250セット限定の黄色とミント・グリーンのアナログ2枚組もゲットしたが,あぁ無駄遣いと思いつつ,オタクだからいいのだと開き直っておく(きっぱり)(爆)。でもいつ聞くんだ?(笑)

ついでに言っておくと,国内盤にはボーナス・トラックとしてクリポタの無伴奏"All the Things You Are"が入っているらしいが,私がゲットしたアナログにはボーナス収録となっているが,アナログには入っていないから,これからメールで届くはずのダウンロード音源に入っているってことだろうな。まぁ,別にストリーミングでもいいんだけど。

Personnel: Chris Potter(ts, ss, b-cl), Brad Mehldau(p), John Patitucci(b), Brian Blade(ds)

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2024年3月 4日 (月)

"Touch of Time": この静謐さがたまらん!

Touch_of_time"Touch of Time" Arve Henriksen / Harmen Fraanje (ECM)

これは堪らん!と最初に言ってしまおう。とてもトランペットと思えぬ音色とそれに寄り添うピアノとエレクトロニクス。静謐な中に繰り広げられるこの美学には,世間のECM好きは間違いなくはまる。"The Most Beautiful Sound Next To Silence"を地で行くと言ってよいサウンドなのだ。私も当然はまった。

Arve Henriksenのトランペットはあたかも尺八のようにさえ響き,ラッパ(あるいはブラス)の概念を完全に覆してしまう音色で,決して熱を帯びることはない。「ジャズ原理主義者」から言わせれば,こんなものはジャズではないという声も聞こえてきそうだが,それが何か?と開き直りたくなる。コンベンショナルなジャズではないとしても,こうした音楽も含められるところがジャズの間口の広さなのだと原理主義者には抗弁することにしよう,と音楽は全然熱くないのに,ついつい熱くなる中年音楽狂(笑)。

まぁこういう音楽であるから,万人向けの音楽とは言わない。しかしこの静謐さと美しさを受け入れることで,私は自分の音楽生活は更に豊かになると感じてしまう。おそらくは先日取り上げた,高橋アキの「橋」のようなミニマルな現代音楽のピアノを愛するのと同じ感覚なのだ。私は全方位的な音楽のリスナーだと思っているが,身体がこういう音楽を欲する瞬間もあるし,たとえ身体が欲しなくとも,こういう音楽を聞いているとついつい強いシンパシーを感じてしまうこともある。結局好きなんだってことが明らかになるだけだが,このいかにもECM的な音にはやはり強い磁力を感じてしまったのであった。

この音楽は間違いなく聞く人を選ぶ。しかし,この世界に一旦足を踏み入れれば,決して抜けられないのだ。まさにECMの魔力。星★★★★★としてしまおう。

Recorded in January 2023

Personnel: Arve Henriksen(tp, electronics), Harmen Fraanje(p)

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2024年3月 3日 (日)

Brad Mehldauの新曲を捉えたブートレッグ。

_20240301_0001 "Zellerbach Hall 2024" Brad Mehldau (Bootleg)

Brad Mehldauが各所から委嘱を受けて作曲した新作"14 Reveries"がロンドンで初演されたのが昨年の9月のことであった。正式録音はそのうち行われるだろうが,できるだけ早く新曲を聞きたくなるのがファン心理。だが,ブートレッグもある程度の音のクォリティが確保されていないとなかなか手が出ないところであるが,今回届いたこのブートレッグはオーディエンス録音ながら,かなりよく録れているのが視聴してわかっていたので,購入と相成った。録音されたのはつい先日の2月10日,UC Berkeley内にあるZellerbach Hallでの演奏の模様がもう聞けてしまうというブートの世界恐るべし。

上述の通り,オーディエンス録音にしてはかなりよく録れているのだが,一部がさがさノイズが入るのは少々惜しい。しかし,ほとんど気にならないレベルなので,これなら十分だと思える。それでもって新作"14 Reveries"であるが,この時のプログラム後半では,"Suite: April 2020"からの曲が10曲演奏されていることからも,新作が同作の姉妹編のような位置づけにあるのではないかと想像させる。姉妹編と呼んだが,Brad Mehldauとしては,当然新作には発展性も持たせたと思われる美しいピアノ曲が並んでいる。

詳細については正式録音が出てからということにしたいが,一聴してアドリブ・パートがどの程度あるのかはよくわからなかった。しかし,Brad Mehldauのサイトで"Reverie #1"の楽譜がダウンロードできるので見てみると,完全に書き譜のようで,更には"Fourteen Reveries runs 38-42 minutes in performance."とまで書いてある。ということで,本人に限らず,他のピアニストが演奏することも念頭に置いて書かれた作品ってところか。

そういう意味でBrad Mehldauの越境型活動の一環という気もするが,どうやってもBrad Mehldauの音楽だと思わせるのは立派なものだと思う。Disc 2に収められた新作以外の演奏も含めて,なかなかに聞き応えのあるブートレッグであった。

Live at Zellerbach Hall, UC Berkeley on February 10, 2024

Personnel: Brad Mehldau(p)

2024年2月29日 (木)

不思議な編成のJohn Surmanの新作:でも昔のECMならこういう編成は結構あったような...。

_20240227_0002 "Words Unspoken" John Surman (ECM)

私は最近は以前ほどECMのアルバムを追わなくなっているが,それでも食指が動くミュージシャンというのは存在する。John Surmanもそんな一人だ。そうは言いながら,John SurmanのECMの前作"Invisible Threads"は購入していないみたい(買ったかもしれない:爆)だし,アルバムだってそれほど保有している訳ではないのだから,結構適当なものなのだが,今回はついついこの編成につられての購入となった。何てたってJohn Surmanにギター,ヴァイブ,ドラムスというなかなかにユニークな編成なのだ。

70年代から80年代のECMなら,様々なメンツの組み合わせでのアルバムは結構あったと思うが,最近ではなかなかこういう編成は少なくなった。それでもやはりこういうのが出てくるのがECMだなぁと思わせる。

総帥Manfred EicherはExecutive Producerとなっているので,これはおそらくJohn Surmanの持ち込み音源なのだが,レコーディングはRainbow Studioだし,出てくる音も実にECMライクなのだ。静謐に流れる部分もあれば,メロディアスな曲もあって,これがなかなか面白い。ベースレスということが全く気にならないというのも,この編成の妙というところだろう。激しさは皆無な中で,淡々と音楽は流れていくのだが,結局はこのサウンドがかなり耳に残るという点では,John Surmanの術中にはまったと感じる私であった。

John Surmanも今年で80歳になるが,そのクリエイティビティにはまだ衰えはないと感じさせるに十分なアルバム。星★★★★。

Recorded in December 2022

Personnel: John Surman(bs, ss, b-cl), Rob Luft(g), Rob Waring(vib), Thomas Strønen(ds)

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2024年2月28日 (水)

相変わらずのScott Hendersonの新譜。

_20240227_0001 "Karnevel!" Scott Henderson(自主制作盤)

Scott Hendersonはだいたい4~5年に1枚のペースで新作をリリースしているが,レコード会社との契約はないようで,このアルバムもレコード会社の企業情報が全く記載されていないところを見ると,今回も自主制作ということでよいだろう。一部ではカルト的な人気を誇るスコヘンのような人でも契約を取れないというのは何とも不幸なことだが,そう売れるって訳でもないだろうから仕方なしってところか。

本作は前作"People Mover"と同じメンツでレコーディングされており,これが現在のスコヘンのレギュラー・バンドってことになるだろうが,リズムは欧州ベースのようなので,現在行っているツアーも3月いっぱいは欧州ということになっている。その後中国~インドと回るようだが,日本でのライブはなかなか難しそうなのが残念。情報によるとブッキングしてもらえないそうだ。中国まで来ているんだから呼べばいいのにと感じざるをえないが,やっぱりこの人はライブで観ると燃えるよねぇと思っているので,また日本にも来て欲しいものだ。

それにしても,ここでの音楽を聴いていると,Scott Hendersonが今年古希を迎えるとは信じがたいが,やる音楽に年齢は関係ないって感じで,相変わらずのスコヘン節炸裂である。むしろこの人の場合,変わりようがないって方が正しいんだろうが,いかにもスコヘンらしいフレージングや音を聞いているだけでファンは嬉しくなること必定。アルバムとして突出した出来とは思わないが,このレベルを維持してくれれば私としては文句も出ない。そして"Sky Coaster"みたいな曲でギターとドラムスのバトルみたいなのをやられてしまえば,こっちはウハウハになってしまうのである。ということで今回も星★★★★。

尚,ベースのRomain Labayeのサイトにバンドでのライブの模様の写真がアップされていたので貼り付けておこう。

Personnel: Scott Henderson(g), Romain Labaye(b), Archibald Ligonniere(ds), Scott Kinsey(e-perc), Roland Ajate Garcia(conga)

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Scott-henderson-band

2024年2月27日 (火)

高橋アキが弾く佐藤聰明:このミニマルな響きがたまりません。

_20240226_0001「佐藤聰明:橋」高橋アキ(カメラータ東京)

昨年秋にリリースされていた本作に気づかないでいたのだが,先日CDをまとめ買いしようと思ってサイトを見ていて見つけてしまった。まだリリースから半年も経っていないので新譜扱いとさせて頂く。

これはまさに私の好物と言ってよい曲であり,演奏なのだが,この連作ピアノ曲「橋」は2000年より8年に渡り全5曲が作曲され、高橋アキに献呈されたものということで,高橋アキが弾くべくして生まれた曲と言ってよい。流れ出る音はMorton Feldman的なミニマリズムと言ってよいが,朝日新聞のインタビューで高橋アキは「聡明さんの音楽は『一音成仏』。ぽつん、ぽつんと置かれた数少ない音のすべてに魂が込められている。一瞬もおろそかにできないんです」と語っているが,まさにそういう感じの音楽である。

更に高橋アキは「音の数が少ないから誰でも弾けるけど、それじゃ『音楽』にならない。本当に難しい」とも言っているが,こういう話を聞いていると,この音楽への理解レベルが我々と違うという気がする。それこそ献呈された高橋アキにしか出せない音である。まさにミニマルであるから,人によっては何がいいのかわからないと言われても仕方ないが,とにかくここでの演奏には強くひきつけられてしまった私である。好きなものは仕方ないのだ(笑)。星★★★★★。

Recorded on April 18, 2023

Personnel: 高橋アキ(p)

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2024年2月18日 (日)

デンマークの叙情派ピアニスト,Søren Bebeの新作がまたも到着。今度は未発表曲の拾遺集。

First-song"First Song" Søren Bebe Trio (From Out Here Music)

先日,Søren Bebe Trioの新作"Here Now"を取り上げたが,非常に短いインターバルで,またまた新作が届いた。新作と言っても,これはこれまでリリーズ済みのレコーディングで,未発表となっていた演奏の拾遺集という位置づけなので,純粋な新作とは言えない。しかし,この人が紡ぎ出す美的フレージングは,北欧ジャズ・ファンには訴求力を以て迫ってくるはずなので,今回も本人のサイトから直接仕入れたもの。

そして今回のアルバムのキモは,Charlie Hadenの名バラッド,"First Song"の収録だと思えるが,冒頭に収められたこの曲の演奏はこちらの期待値にちゃんと応えるものとなっていて,相変わらず美しいピアノが楽しめる。そのほかの曲も実に美的でうっとりしてしまうような演奏ばかりだと言ってもよい。

まぁ,そうは言っても,未発表音源を集めたものなので,オリジナル・アルバムと同列に扱ってはいけないとは思いつつ,かなり満足度は高い。ただ,Ravelの「亡き王女のためのパヴァーヌ」だけは,どうもそもそもの主題のメロディ・ラインが生硬な感じがするのは惜しいと思えた。アドリブ・パートになれば気にならなくなるのだが,それでもこの曲に関してはちゃんとテーマを弾いてこそ評価されるべきだということを差し引いて星★★★★。

それでも,これだけの演奏を聞かせてもらえれば,相応に満足度は高い。結局,何だかんだと言って,私がSøren Bebeのアルバムを買い続けていることからすれば,彼のマーケティング戦略にはまっていることは間違いないのだが,それでもより幅広いオーディエンスに知られてよいピアニストということで,これからも応援していきたいと思う。

Recorded in November 2015, January 2019 and April 2023

Personnel: Søren Bebe(p), Kasper Tagel(b),Knut Dinsrud(ds), Anders Mogensen(ds)

2024年2月16日 (金)

Vijay Iyerの新作:これは凄い!近年稀に見る傑作と言いたい。

_20240215_0001"Compassion" Vijya Iyer (ECM)

プレイバックを開始した瞬間から心を捉えられてしまう音楽というのはなかなか出会えるものではない。先日のMeshell Ndegeocelloのライブの素晴らしさにも似た感覚を,CDで味わってしまったというのがこのVijay Iyerの新作である。

鋭いテンションに満ちた演奏が続き,一部フリーな展開もあることはあるのだが,決して聞きづらい音楽ではない。全編を通じてジャズ的なスリルを感じさせながら,熱量だけではないVijya Iyerらしい理知的な部分を持ち合わせた音楽は,近年のピアノ・トリオのアルバムでも最も傑出した一枚と言ってもよいかもしれない。私はVijay Iyerのアルバムは参加作を含めて高く評価し続けてきた。昨年も異色のアンビエント・ライクな"Love in Exile"さえベスト作の一枚に選んでいる(同作に関する記事はこちら)ぐらいなので,基本的に評価に値する活動を継続していると思っている。そんな中でもこのアルバムは,私の中でのVijay Iyerへの評価を更に高めるアルバムとなった。まだ2月ではあるが,今年のベスト作の有力候補であることは間違いないところ。

Vijay Iyerの魅力的なオリジナルに加えられたカヴァー曲がまた見事。Stevie Wonderの"Overjoyed"をこれほどスリリングな演奏にアダプテーションしたところからして興奮させられるし,Roscoe Mitchellの"Nonah"のフリーな展開も,アルバム中のChange of Paceとして適切。そして最後を飾るのがJohn Stubblefieldの"Free Spirits"とGeri Allenの”Drummer’s Song"のメドレーなのだが,Geri Allenをカヴァーするのはわかるが,John Stubblefieldというのが意外でありつつ,この"Free Spirits"というのがなかなかの佳曲でびっくりであった。大した審美眼である。

本作は体裁としてはManfred EicherとVijay Iyerの共同プロデュースってかたちになっているが,おそらくEicherとしてもVijay Iyerにかなり自由にやらせたって気がする。いずれにしても,Linda May Han Oh,Tyshawn Soreyという強力な共演者に恵まれたことも有効に作用して,これこそ真の傑作と評価したくなる逸品。星★★★★★。素晴らしい。

Recorded in May 2022

Personnel: Vijay Iyer(p), Linda May Han Oh(b), Tyshawn Sorey(ds)

本作へのリンクはこちら

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