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カテゴリー「新譜」の記事

2020年2月24日 (月)

これは凄い。Pat Methenyによる壮大なる音楽絵巻,あるいは叙事詩。

_20200224 "From This Place" Pat Metheny(Nonesuch)

盟友Lyle Maysの訃報という衝撃的なニュースからまだ数週間というところで,ショックも冷めやらぬところではあるが,そこへPat Methenyの新作のリリースとは何と因果なことか。そして,リリースされた直後は現物が届いていなかったので,ストリーミングで聞いていたが,遅からずしてCDがデリバリーされた。

ストリーミングで聞いている時から,このアルバムのキモはオーケストレーションだなぁと思っていた私である。もちろん,Pat Metheny以下,バンドのメンバーの演奏も実に素晴らしいのだが,それを増幅させたのが,私はGil Goldstein,Alan Broadbentによるオーケストレーションであったと思えたのだ。ただでさえ優れた演奏には余計なオーケストレーションは不要だという考え方もあるだろう。だが,これこそ音楽の魅力をさらに増す効果を持つ,実に見事な仕事っぷりである。

私はPat Methenyが現行のバンドを結成した時に,実はどうなるのかなぁとも思っていたのだが,ライブを聞いた限り今のメンツは機能しそうだと思ってはいたものの,このアルバムを聞いていると,ツアーを重ねて,コンビネーションは確実に深化したと思える。その前のUnity Groupも実に優れたバンドだったが,それと比べても勝るとも劣らないレベルに達しているのには正直言って驚いた。そして,Gwilym Simcockが聞かせるピアノ・フレーズの鋭さが実に素晴らしい。もともと有能だとは思っていたが,完全に一皮むけた感じというところだろう。

それにしても,おそらくは相当の予算を掛けて録音されているアルバムであり,バンド・サウンドだけで完結させてもよかったところに,ゲストとオーケストラを加えて,実にカラフルに仕立てているのにもまいった。Unity Groupのアルバムも優れていたが,私は本作をそれを軽く越えてしまったと思えるのだ。おそらく,それに貢献したのが共同プロデュースを務めたSteve Rodbyであろうことは想像に難くない。Lyle Maysは不在だとしても,やはりPMGのメンバーが揃うと何かが起こるのだなぁとしみじみと感じてしまった。

2月の段階で言うのは時期尚早ではあるが,今年度ベスト作に確実に入ってくるであろう傑作。これはマジで凄い。星★★★★★。尚,ライナーにはオーケストラのメンバーも記載されているが,ここでは省略。でもSteve Kujalaみたいな懐かしい名前も入っていたことは書いておこう。

Personnel: Pat Metheny(g, key), Gwilym Simcock(p), Linda May Han Oh(b, vo), Antonio Sanchez(ds) with Meshell Ndegeocello(vo), Gregoire Maret(hca), Luis Conte(perc) and the Hollywood Studio Symphony Orchestra, Joel McNeely(cond)

2020年2月21日 (金)

突如登場したBryan Ferryの1974年のライブ・アルバム。

Bryan-ferry-live "Live at the Royal Albert Hall 1974" Bryan Ferry(BMG)

このアルバムのリリースが告知された時は驚いた。なぜ今頃になって1974年のライブ音源がリリースされるのか?と思っていた私である。しかし,昨年見たBryan Ferryのライブは実にスタイリッシュであったし,楽しめるものだったこともあり,そもそもBryan Ferryのアルバムを結構買っている私としては,今回も購入である。

いきなり"Symapathy for the Devil"で幕を開けるが,当たり前のことだが,Bryan Ferryの声が若々しい。ただ,ここで歌っている曲はロックンロールやらポップス系の曲が多いため,Bryan Ferryの声がどうも私には濃厚に過ぎるような気がしてしまう。ここに収められた曲,例えば"Baby I Don't Care"や"Don't Worry Baby",更には"Smoke Gets in Your Eyes"を歌うには強烈なクセを感じてしまうのだ。まぁ,このツアーはBryan Ferryにとって初のソロ・ツアーってこともあって,やりたいこともあったのだろうと思うのだが,どうも私がBryan Ferryに求める音とはちょっと違う気がする。

そういう感覚は,ここでバックを務めているメンバーにはPhil Manzaneraもいれば,Eddie JobsonやらJohn Wettonもいるし,更にはPaul Thompsonもいるのだから,違うサウンドも出せたのではないかと思ってしまう。Roxy Musicとは違うんだぜという感覚を打ち出したかったのだろうが,それを聞き手がどう受け止めるかってところだろう。ライブの場ではBryan Ferryもバンド・メンバーもブラック・タイで演奏していたようだから,そういうショーだったというのはわかる。でもやっぱり私が求めているBryan Ferryの音ではなかった。

なので,まずはストリーミングで聞いた時には,強烈に違和感があり,CDで聞いて多少は印象は改善したとしても,これは違うのだ。私が求めてしまうのはスタイリッシュ,あるいはもっとロックなサウンドであったということで,ちょっと残念なアルバムとなってしまった。星★★★。ストリーミングで確認する前に発注してしまった私のミスだな。これなら絶対"Viva! Roxy Music"の方が楽しめると言っておこう。

Recorded Live at the Royal Albert Hall on December 19, 1974

Personnel: Bryan Ferry(vo), John Porter(g), Phil Manzanera(g), Paul Thompson(ds), Vicki Brown(vo), Doreen Chanter(vo), Helen Chappell(vo), Jobson(p, vln), John Wetton(b), Paul Thompson(ds), Vicki Brown(vo), Doreen Chanter(vo), Helen Chappell(vo), Paul Thompson(ds), Vicki Brown(vo), Doreen Chanter(vo), Helen Chappell(vo), Peter Robinson(key), Mike Moran(key), Morris Pert(perc), Chris Mercer(ts), Jeff Daley(as), Ronnie Ross(bs), Paul Cosh(tp), Martin Drover(tp), Malcom Griffith(tb), Geoff Perkins(tb), Martyn Ford(orchestra direction)

2020年2月19日 (水)

Carla Bley,Andy Sheppard,Steve SwallowのトリオによるECM第3作。

Life-goes-on "Life Goes on" Carla Bley / Andy Sheppard / Steve Swallow(ECM)

このトリオによるECMレーベル第3作がリリースされた。彼らの初レコーディングは95年の"Songs with Legs"に遡るので,今年で結成25年という節目になるらしい。私は"Songs with Legs"は未聴であるが,ECMでの第1作”Trios",そして第2作"Andando di Tiempo"については絶賛を惜しまなかった。その2枚は2013年と2016年の年間ベスト盤の一枚にも選んでいるから,どれほど評価しているかはお判り頂けるだろう。そうした彼らの新作である。期待しない訳にはいかない。

このアルバムには次のように書かれている。”Carla was hit by a bucket of shit and the band played on. She opened the door and was hit by some more and the band played on. Could this be the ending or just the biginning of life without music or fun?" これをどう解釈するかはなかなか難しいところであるが,皮肉な感覚に満ちているのは間違いないところである。それがどう音楽に反映するのか?

今回のアルバムは3つの組局から構成されているが,冒頭のタイトル・トラックはいきなりのブルーズにびっくりする。それに続く"Life Goes On"組曲に含まれた曲を聞いていて,私は前作に感じたような「深み」は感じなかったのだが,むしろ,音楽を通じたポジティブな感覚をおぼえていた。

しかし,2つ目の組曲"Bearutiful Telephone"はダークな響きで始まる。この曲はECMのサイトによれば,Donald Trumpがホワイト・ハウスに足を踏み入れた時に,“These are the most beautiful phones I’ve ever used in my life"と言ったとか言わないとかいう逸話への皮肉としか思えない。まさに何言ってやがるみたいなCarla Bleyの心証を反映したものと言いたくなってしまう。

3つ目の組曲"Copycat"の意味するところは不明であるが,”After You"~”Follow the Leader"~"Copycat"というタイトルには別な皮肉を感じてしまうのはうがち過ぎだろうか。いずれにしても,ここでは比較的中庸な表現が用いられているって感じである。

トータルで考えると,やはり"Andando di Tiempo"に感じた音楽的な深さは薄れたが,それでも非常に三者によるレベル高い会話を聞かせてくれるという点では評価したいし,彼らにしか出せない音だと思う。Carla Bleyも80歳を過ぎても,まだまだいけるところを実証したアルバム。半星オマケしてちょいと甘めの星★★★★☆ということにしよう。

Recorded in May, 2019

Personnel: Carla Bley(p), Andy Sheppard(ts, ss), Steve Swallow(b)

2020年2月11日 (火)

実に素晴らしい須川崇志Banksia Trio。

_20200211 "Time Remembered" 須川崇志Banksia Trio(Days of Delight)

ブログのお知り合いの皆さんが次々と取り上げられていて,非常に気になっていたアルバム。それを聞いてみて皆さんがこのアルバムを好意的に捉える意味がわかった。実によくできた作品であり,レベルが高いのだ。

Bill Evansの"Time Remembered"から始まるが,Bill Evans的な響きではなく,ECMで聞かれるような北欧系の響きすら感じられるオープニングである。それに続くメンバーによるオリジナルも,美的なるものと,清冽な緊張感が同居する非常に魅力的なトリオの演奏であることに,私は日頃の不勉強を恥じることとなった。これなら世界のどこに出ていっても勝負できると言っては大げさかもしれないが,彼らのレベルの高さにはまさに瞠目させられた。

例えば,林正樹のオリジナル"Nigella"のようなスロー・チューンを,ここで聞かれるような表現に仕立てるところに,私は彼らに欧州的な響きを感じてしまう。それはリーダー須川のオリジナル"Banksia"でも同様である。その辺りに私は強く魅かれてしまうのだろう。これはまさに「ずっぽしはまった」感が強いアルバムであり,日本からこうしたアルバムが生まれたことを喜びたい。

こういう感覚,以前にも覚えたことがあるが,今回の購入に至る経緯もそうだし,感心の仕方も,須川崇志も参加した本田珠也のIctus Trioに感じたものと同質だと思えた。Ictus Trio同様の評価とすべく,喜んで星★★★★★を謹呈しよう。緊張感に満ちた美学が継続する43分間である。

Recorded on July 31, 2019

Personnel: 須川崇志(b),林正樹(p),石若駿(ds)

2020年2月 9日 (日)

Ben Watt,およそ4年ぶりのアルバム。

_20200208-2 "Storm Damage" Ben Watt(Unmade Road)

この新作を携えての4月の来日も決まっているBen Wattの新作である。早いもので,前作から4年も経っているのかと思ってしまった。月日の経つのがつくづく早くなった...。

Ben Wattの前作,"Fever Dream"はポップな感覚もあり,実に好きなアルバムであったが,本作は前々作の"Hendra"の内省的な響きが戻っているような気がする。Ben Wattの声がかなりリアルな響きで録られているということもあるが,そうした感覚をより強くさせるのは全編でアコースティック・ベースが使われているところによるような気がする。それも含めて,サウンドがどちらかと言えば,よりアコースティックな方向へシフトしていると思えるのだ。

最初にストリーミングで聞いた時には,そうしたサウンドの変化に若干戸惑いをおぼえたのだが,CDが届いて,何度か聞いていると,違和感はなくなってくる。それでもここに流れる音楽にはそこはかとない「暗さ」を感じるのも事実である。もちろん,Ben Wattはこれまでだってチャラチャラした音楽はやっていないが,ここには聞きようによっては,これまで以上に負の感情の発露のようなものが強まっているように思えるところが,評価は別にして,好き嫌いの違いにつながるかもしれない。

私としては"Fever Dreams"が非常によかったと思えただけに,サウンド的にはあの路線を継続してもよかったと思えるが,これはこれでBen Wattの側面として聞くべきアルバムと言える。私が本質的にこの音楽を理解するには,もう少し歌詞を読み込む必要がありそうだが,そうしたいと思わせてくれるアルバムだと思う。星★★★★☆。

Personnel: Ben Watt(vo, p, el-p, g, synth, synth-prog), Rex Horan(b, viola), Evan Jenkins(ds, perc), Alan Sparhawk(g, vo), Ewan Pearson(vocoder), Jennifer Valone(vo)

2020年1月26日 (日)

やっぱりWayne Krantzの真骨頂はライブにありだと思わせた新作CD。

Write-out-your-head

"Write Out Your Head" Wayne Krantz(自主制作盤)

先日のWayne Krantzのライブの印象も冷めやらぬ中,リリースされたばかりの新譜を聞いた。今回の新譜にはKeith Carlockに加えて,クリポタことChris Potterも全面参加ということで,期待が高まる中でのリスニングとなったのだが,ライブとだいぶ印象が違う。その要因は,このアルバムではKrantzがギターに加えて,Rhodesも弾いているのだが,むしろギターの音が控えめになっている感じがするからのように思える。なので,ビシビシとギターを炸裂させたライブの印象よりも,はるかにルースな印象を与えている。これまでのWayne Krantzのアルバムとも雰囲気が違うとも言えるし,こうした路線をどう評価するかだろう。

正直言っていしまうと,私はせっかくクリポタも入っているのだから,もっと激しく,ブイブイやって欲しかったというところだ。スピード感,あるいは疾走感があってもよかったように思う。まぁそうは言っても,Wayne Krantzも還暦を過ぎているから,多少の変化はあるのだろうが,ライブとのギャップにはやはり戸惑うというのが正直なところである。

もちろん,相応にカッコいい曲もあるからちゃんと楽しめることは楽しめるのだが,Wayne Krantzがライブで放出するエネルギーをスタジオに持ち込むことの難しさもあるのかなぁなんて思ってしまった。それでもKrantz本人に加えて,Keith CarlockとTim Lefebvreのサインももらってきて,ご満悦の私なのだが...(笑)。それにも免じて(?)星★★★★。それにしても,8曲31分ってのはやっぱり短いなぁ。

Personnel: Wayne Krantz(g, rhodes), Chris Potter(ts), Keith Carlock(ds), Orlando Le Fleming(b), Pino Palladino(b), Will Lee(b), Tim Lefevbre(b), Gabriela Anders(vo, perc) 

2020年1月20日 (月)

Peter Brötzmannの咆哮。たまりまへん。

_20200118-2"Fifty Years After" Brötzmann / Schlippenbach / Bennink(Trost)

昨日,坂田明のアルバムを取り上げたところで,今日はPeter Brötzmannである。私はBrötzmannの咆哮を聞いているだけで,身体がむずむずしてくるところがあるのだが,その興奮をピークに持っていたのが,佐藤允彦,森山威男との"Yatagarasu"で,あれこそ興奮の極致と言った感じで,フリーの快感を徹底的に味合わせてくれたものであった。そして今回は楽器編成は同じであるが,Alexander von SchlippenbachとHan Benninkとのトリオという,これまた強烈なパワー・トリオである。

本作はアルバム"Machine Gun"のレコーディングから50年という節目で録音されたものらしいが,録音時Peter Brötzmannは77歳,Schlippenbachが80歳,そしてHan Benninkが76歳って一体どういうこと?とさえ言いたくなるような老人たちが繰り広げる音楽の激しさに身をよじってしまう。とにかく,こうした音楽を繰り広げる彼らの体力には脱帽としか言いようがないぐらいの激しさなのだ。

このアルバムも坂田明同様に,家人がいるところでのプレイバックは厳しいものであるが,Peter Brötzmannたちの生み出すフリーには精神を解放してくれる効果すら私は感じてしまうのだ。まぁ,このアルバム,決して音がいいとは言えないレベルだが,クリアな音質よりも,この人たちの音楽にはこれぐらいのくぐもった感じが丁度いいのかなぁなんてさえ思ってしまう。私としては"Yatagarasu"のより破壊的なパワーの方が上だと思うが,それでもこの3老人の激しい音楽に敬意を表し,星★★★★☆としよう。リリースされたのは昨年だが,まだ3か月ぐらいしか経っていないので,併せて新譜扱いとさせて頂く。

Recorded Live at the Lila Eule Bremen on May 26, 2018

Personnel: Peter Brötzmann(ts, cl, tarogato), Alexander von Schlippenbach(p), Han Bennink(ds)

2020年1月 8日 (水)

昨年後半にリリースされたE.S.T.の未発表ライブ音源。

Est-gothenburg "Live in Gothenburg" E.S.T.(ACT)

私は決してE.S.T.の熱心なリスナーではない。彼らのアルバムで持っているのは"Live in Humburg"だけのはずである。そんな私が新年のショップ詣で仕入れた1枚である。

E.S.T.は私の中ではいかにも北欧的な美的な感覚と,サウンド・エフェクトを用いた一般的には北欧には感じることがないようなグルーブをうまく組み合わせた音楽を奏でる人たちだったと思っている。そうした特性はこのライブ・アルバムにも明確に表れていて,こういう音楽を日夜展開していたのだなぁということを改めて感じさせられた。

私は彼らのライブに触れる機会はなかったが,このアルバムを聞いていると,この人たちはライブにおける盛り上げ方をよくわかっているという感じである。私の感覚からすれば,美的なるものと,ある種の「毒」さえ感じさせる音のバランスによって,聴衆はトランス状態に入っていくのではないかと思えた。アルバム最後に収めれらた"Dodge the Dodge"なんてまさにそういう感じである。

情報によれば,今は亡きEsbjorn Svenssonはこの時の演奏を彼らのベスト・ライブの一つと捉えていたらしいが,確かによく出来たアルバムであり,優れた演奏。私がもう少し早い時期に彼らの音楽に触れていれば,もっとはまっていたかもしれないが,その一方で彼らのやっていた音楽は「パターン化」という壁にぶつかっていたのではないかという想像も成立してしまう。だが,レコーディングされてから20年近く経過しても,音楽的な魅力は毀損されていないということからすれば,私の想像は間違っていると言われても仕方がない。星★★★★☆。尚,本作がリリースされたのは昨年だが,まだ3か月も経っていないので,新譜扱いとさせて頂こう。

甚だ余談だが,このアルバムが録音されたGothenburgは仕事で行くチャンスがあったのに,結局行くことができなかったのは実に残念である。多分ほかの仕事とのバッティングだと思うが,惜しいことをしたと言わざるをえない。結局,その後もスウェーデンを訪れるチャンスには恵まれていない私である。

Recorded Live at Gotherburg Concert Hall on October 10, 2001

Personnel: Esbjorn Svensson (p), Dan Berglund (b), Magnus Ostrom (ds)

2019年12月24日 (火)

ようやく到着。Chick Coreaの限定ホリデイ・アルバム。

_20191223 "Flying on the Wings of Creativity" Chick Corea & Gayle Moran Corea(自主制作盤)

このアルバムはChick Coreaのメルマガで知って,発注していたものだが,ホリデイ・シーズンのギリギリのタイミングでデリバリーされた。本作は本当に限定生産だったらしく,現在ではフィジカルな媒体での入手はできない状態で,MP3ダウンロードのみで入手可能となっている。Chick Coreaのサイトには"Hear arrangements of Christmas songs never heard on Earth or other parts of the galaxy."なんて記述があって,その大袈裟さには笑ってしまうが,まぁ,事実と言えば事実である。

私はクリスチャンではないので,ホリデイ・シーズンにどうこうということはない訳だが,やはりそういう季節感というのは大事にすべきだと思うし,公共交通機関さえ止まってしまうロンドンのような街もあって,静かに家族と過ごしながら,こういう音楽を聞けばいいのである。そういう時期に届けられたアルバムに収められた音楽は,純粋に音楽として楽しめばいいと思う。

パッケージを開いてみると,この音源に収められている演奏は,最新のものではなく,2006年に録音されたものである。なぜそれをChick Coreaが今になってリリースする気になったのかは全く不明であるが,普通の音楽ではちょっとなぁと思わせるGayle Moran Coreaの声が,こういう音楽にはフィットしているように思えるから私も勝手なものだ。収録されているのはわずか4曲であるが,スイング感溢れる冒頭の"Pennies from Heaven"から,しっとりした"A Child Is Born",そして"Greensleeves"を経て,Mel Tormeが1945年に書いた"The Christmas Song"で締めるという構成はなかなかよく出来ていると感じさせる。そして,Chick Coreaのピアノがどの曲においても実にいい感じなのである。やっぱり何を弾いてもうまいねぇと改めて感心してしまった。

媒体での入手は難しくなってしまったが,一聴に値する音源だと思う。

Recorded on November 26, 2006

Personnel: Chick Corea(p), Gayle Moran Corea(vo), Hans Glawischnig(b), Tom Brechtlein(ds)

2019年12月23日 (月)

おだやかにして渋いJoe Henryの新作。

_20191222 "The Gospel According to Water" Joe Henry (earMusic)

今年も押し迫ってきたところで,当ブログで取り上げる新譜もこれが最後ではないかと思えるが,Joe Henryからまたも素晴らしいアルバムが届いた。正直言って,Joe HenryのWebサイトをチェックもしていなかった私は,このアルバムがリリースされたことも全く認識していなかったので,危うく越年するところであったが,年内に間に合ったのはよかった。

Joe Henryは現在,前立腺がんの治療を受けているということだが,このアルバムをレコーディングしたのは,闘病に関するアナウンスをしてからのことである。それがこの音楽に影響を与えているとは言い切れないかもしれないが,実に穏やかな感覚に満ちたアルバムである。非常にシンプルな構成で演じられたこともあるが,昔のSSW,あるいはフォーク的な渋さも感じられるように思うのは私だけではあるまい。

ある意味,私はシンガーとしても,プロデューサーとしてもJoe Henryという全幅の信頼を寄せているので,おかしなアルバムをリリースするはずはないとは思っていても,毎度毎度こう素晴らしい音を聞かされると,この人への信頼感はまず一方である。一言でいえば,このアルバムに収められた歌は,心にしみるのだ。穏やかに新年を迎えるには最適なアルバムとして,高く評価したい。そして,彼の病からの治癒を祈って星★★★★★としよう。

Recorded on June 10 & 11,2019

Personnel: Joe HenryJoe Henry(vo, g), Levon Henry(ts, cl), John Smith(g), Peter Warren(p, key), with David Piltch(b), Alison Russell(vo), JT Nero(vo)

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