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カテゴリー「新譜」の記事

2025年6月28日 (土)

Fred Herschの新作が素晴らしい。

_20250627_0001"The Surrounding Green" Fred Hersch (ECM)

Fred Hersch待望の新作がデリバリーされたので,早速聞いている。ECMに吹き込むようになって,これが第3作となるが,ECMでは初のトリオ作,そしてメンツはDrew Gress,Joey Baronとあっては期待するに決まっている。そしてその期待は裏切られることはない。

まさにSascha Kleisのジャケット・デザインの如き,水彩画もしくはパステル画のような響きと言えばよいだろうか。冒頭の"Plainsong"からして,これこそ我々がFred Herschに期待する音だ。美しくも抒情的な響きには心を鷲掴みにされること必定の音楽と言いたい。

全7曲中3曲がFred Herschのオリジナルで,そのほかのレパートリーがOrnette Coleman,Egberto Gismonti,George Gershwin,そしてCharlie Hadenという構成からしてこっちはまいってしまうではないか。特にCharlie Hadenの"First Song"をこのトリオがどう料理するのかがプレイバック前の最大の注目点であったのだが,私はそこに至るまでの間で,既にこのアルバムに魅了されていたと言っても過言ではない。どれもがいい演奏だが,超絶美しいタイトル・トラックやEgberto Gismontiの"Palhaço"の素晴らしさには,これはまじでいいと独り言ちた私である。

そして"First Song"だが,Drew Gressのベース・ソロから始まり,Fred Herschはこの曲のテーマ・メロディを明示的に提示しないかたちで演奏しているのが面白い。この曲にこういうアプローチで来るか~って感じだが,原曲の持つ雰囲気は維持しながら,Fred Hersch的に昇華させているところがポイントだろう。そして最後にあのメロディ・ラインを楚々とプレイして締めるのも雰囲気たっぷりである。それをよしとするかどうかはリスナー次第だが,私はこれは十分にありだと思った。

最後はFred Herschのオリジナル"Anticipation"でクロージングとなるが,冒頭のDrew Gressとのユニゾンも印象的に響いた後に出てくるFred Herschらしいソロに嬉しくなって,あっという間にプレイバック終了である。やはりFred Herschは素晴らしいと再認識させられたアルバム。昨今,ややアブストラクト度も高まっていると感じさせたFred Herschであったが,このアルバムこそ真骨頂だと言いたい。

という感じなので,私の中では今年聞いた新譜(大して聞いていないが...)の中でも屈指のアルバムと位置付けたい。喜んで星★★★★★である。このトリオで来日してくれないものかと思うのは私だけではあるまい。

Recorded in May, 2024

Personnel: Fred Hersch(p), Drew Gress(b), Joey Baron(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年6月23日 (月)

Gary BurtonとKirill Gersteinの共演音源が発見され,ストリーミングでリリース。

The-visitors "The Visitors" Gary Burton and Kirill Gerstein(ECM)

Chick Coreaのメルマガで告知されていて知ったのだが,Chick Coreaが書いた曲をGary Burtonとクラシックのピアニスト,Kirill Gersteinがデュオで演奏した"The Visitors"の音源が発見されて,1曲だけながらECMからデジタル・オンリーでリリースされたことを知って,早速聞いてみた。

もともとこの曲はKirill GersteinがChick Coreaに委嘱して書いてもらった曲らしい。不勉強にして今回知ったのだが,Kirill Gersteinは現在はクラシックのフィールドで活躍しているが,わずか14歳でバークリー音楽院で学んだ経験があるらしく,それを実現させたのがGary Burtonらしい。当時はジャズをやっていた訳だが,その後クラシックにフィールドを移したということにはなるものの,Gary Burtonとの師弟関係は続いていたということになる。

この曲は書いたのがGary Burtonの盟友,Chick Coreaであるから,Gary Burtonの美点を引き出す術を知って書いたということにもなろうが,やはりCorea~Burtonの演奏と印象が被るところがあるのは当然だろう。いかにもGary Burtonらしい演奏が楽しめる。Kirill Gersteinのピアノも非常に粒立ちがはっきりしていて,演奏の相性は実によいと思える。Chick Coreaが存命であれば,自分でもこの曲をGary Burtonとやったのではないかと想像をかき立てる演奏である。一方のGary Burtonは引退して暫くの時間が経過しているが,この演奏が行われた2012年当時はまだまだ現役バリバリであり,素晴らしい演奏を聞かせている。

ダウンロード・オンリーとは言え,こうした音源をECMの総帥,Manfred Eicher自らがKirill Gersteinともどもミキシングに関わり,そしてChick Coreaの誕生日である6月12日に公開するというところに,Manfred Eicherの思い入れを感じるのは私だけではないだろう。きっとこれが縁となってKirill GersteinがECM New Seriesに登場する日も来るのではないかと想像させる音源であった。

Recorded Live in 2012

Personnel: Gary Burton(vib),Kirill Gerstein(p)

2025年6月 8日 (日)

来日目前:Klaus Mäkelä+パリ管の「幻想」をストリーミングで聞く。

Symphonie-fantastique "Berlioz: Symphonie Fantastique / Ravel: La Valse" Klaus Mäkelä / Orchestre de Paris(Decca)

来日を目前に控えたKlaus Mäkelä(クラウス・マケラ)+パリ管であるが,私もサントリーホールにおけるコンサートに行くことになっている。何てたってプログラムがサン・サーンス「オルガン付き」とベルリオーズ「幻想」なのだ。そもそも私の「幻想」好きは筋金入りと言ってもよいが,まだ30歳にも満たないにもかかわらず,今年だけでパリ管とコンセルトヘボウで来日するKlaus Mäkeläがどのように「幻想」を振るのかということに興味は集中してしまう。ということで,予習も兼ねてストリーミングで公開されたばかりの「幻想」と「ラ・ヴァルス」のカップリングを聞いた。

「幻想」は冒頭の第1楽章から随分とゆったりとしたテンポで入るなぁというのが第一印象。そして徐々にダイナミズムを増すというのはこの曲の特性と言ってもよいが,ここで高揚感を盛り上げる必要があるので,そこは問題なくクリア。それにしても録音のせいもあるかもしれないが,弦の分離が明確に感じる。そして私が「幻想」で最も好きな第2楽章だが,ここではコルネットなし版。私が好きな「幻想」の演奏はほぼコルネット入りと決まっているのだが,ここはパリ管の「幻想」と言えばCharles Munchということで,Munchに倣ったと解釈しよう。弦の鳴らせ方がここでも明確かつ明瞭に聞こえるところが,この人の特徴か。ここでのワルツの振りっぷりはなかなかよかった。

私の中ではいくら好きな曲でも,牧歌的にも響く次なる第3楽章はやや冗長に感じられる「中だるみ」楽章(笑)なのだが,そういう楽章でもそれなりには聞かせる演奏だと思えるのは立派。そして第4楽章,「断頭台への行進」はオーケストラのダイナミズムが最も顕著に表れる部分だが,弦のみならず,管もよく鳴っていると感じられた。まぁこの楽章の繰り返しが必要かどうかは議論のあるところだと思うが,盛り上がるからよしとしよう。そして終楽章は私が「幻想」に感じる魅力が凝縮されていると言ってもよい。この何とも劇的な感覚をうまく引き出した演奏だと思えた。これをライブで聞けば確実に燃える(きっぱり)。

全体的に見ればよく出来た演奏だが,これが私の中で最高の「幻想」となるかと言えば,必ずしもそうではないかもしれない。しかし,それでも東京でのライブへの期待値は高まった。サントリーホールでは是非とも私を燃えさせて欲しいものだ。

私にとってはオマケと言ってもよいので,ここでは「ラ・ヴァルス」については多くを語らないが,ここでも弦の響きが美しく,中盤~後半の管の響きもよかった。

Klaus Mäkeläは2027年からコンセルトヘボウの首席のみならず,シカゴの音楽監督にも就任予定って凄いことだなぁと思うが,それだけ期待の集まる指揮者ってことなのは明らかで,ライブではどのように「幻想」を振るのかを楽しみに待ちたい。

Recorded in September and December, 2024

Personnel: Klaus Mäkelä(cond),Orchestre de Paris

本作へのリンクはこちら

2025年6月 6日 (金)

Danny Grissettの新作がリリースされたので,まずはストリーミングで聞いた。

Travelogue "Travelogue" Danny Grissett(Savant)

現在はウィーンに拠点を移しているダニグリことDanny Grissettであるが,それにより昨今の動静が伝わりにくくなっているのは,実力者であるだけに少々残念である。本人のWebサイトによれば,欧州を中心に演奏者としての活動もしながら,教育者としての活動も強化しているようだ。そんなこともあって,アルバムのリリース頻度も低くなり,前作"Remembrance"から8年の時間が経過している。コロナ禍を挟んだとは言え,これだけ間が空いてしまうのは本当にもったいないことだ。

本作は媒体は既にリリース済みだが,まずはストリーミングで聞いた。"Stride"以来となる久々のピアノ・トリオによる演奏だが,相変わらずこの人らしいノーブルなピアノ・タッチが聞かれて,こちらも嬉しくなってしまう。これまでのアルバム同様,この人の演奏は熱く燃えたぎるという感じではなく,繊細かつソフトなピアノなので,ジャズの好みによって好き嫌いがわかれるところではあろうが,私はこの人のピアノにはTom HarrellやJeremy Peltのバンドにいた頃から好ましい印象しかない。だから本作も期待して聞いた訳だが,オリジナル8曲にスタンダード2曲を加えた構成も丁度いい塩梅で,相変わらずの優れた演奏ぶりに安堵した私であった。

前作,前々作でも共演したVicente Archer,Bill Stewartとのコンビネーションも良好であり,久々にダニグリらしいピアノを大いに楽しんだ私が媒体を発注したことは言うまでもない。星★★★★☆。

Recorded in October, 2024

Personnel: Danny Grisett(p), Vicente Archer(b), Bill Stewart(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年6月 3日 (火)

Keith Jarrett生誕80周年記念!ウィーンでのライブ・アルバムを聞く。

New-vienna"New Vienna" Keith Jarrett (ECM)

Keith Jarrettが活動を休止したのが2017年のことだったが,その少し前の2016年のアルバムはこれまでミュンヘン,ブダペスト,ボルドーでの演奏がリリースされているが,本作もその2016年,ウィーン,ムジークフェラインザールにおける音源である。ウィーンでのライブは1991年の"Vienna Concert"があったが,前作は国立歌劇場,そして今回はムジークフェラインザールと,またジャズ・ピアニストとしては異例とも言うべきヴェニューでの演奏である。

これまで私はKeith Jarrettのアルバムが出れば,ごく一部の例外を除いて媒体を購入してきたが,ボルドーでのライブの記事で「まぁこの辺でKeith Jarrettのソロ・アルバムは打ち止めでもいいかなって気がしている。 」なんて書いている通り,Keith Jarrettの演奏のパターン,そしてプレイバックの頻度を考えると,ストリーミングでいいかなという感じになってきて,今回はストリーミングで聞いたもの。

一旦の半引退状態からの復帰後は,長大なソロから短い演奏へシフトしたKeith Jarrettであるが,前半のアブストラクトな現代音楽的な演奏から,後半のメロディアスな演奏に移行するというパターンは本作でも踏襲されている。ここではアブストラクトな演奏は前半3曲+Part VIに留まっており,それ以外はいかにもKeith Jarrettらしい美的な演奏やフォーク・タッチの演奏が展開されていて,大概のリスナーは嬉しくなってしまうだろう。大体こうなるだろうという安心感みたいなものは確実に存在するので,パターン化された中での創造性を楽しめばよい。公開されている音源からすると,2016年の演奏はややアブストラクト度控えめっていうのが特徴だったってことになるかもしれない。

本作はKeith Jarrettの生誕80周年を記念してのリリースということらしいが,もはや演奏への復活は望めない中,どのようなかたちでもライブの模様が公開されることはありがたいと言えばありがたい。おそらくは常にレコーディングはしていたはずだから,どうせならハプニングのあった2014年の大阪の演奏とか公開すれば面白かろうにと思ってしまうが,完全主義者のKeithのこと,生きているうちはリリースを絶対許さないだろうなぁなんて思ってしまう。まぁ,それでも安定のKeith Jarrettが聞けるだけでよしとするべきだろう。星★★★★。

Recorded Live at Goldener Saal, Musikverein in July, 2016

Personnel: Keith Jarrett(p)

本作へのリンクはこちら

2025年6月 2日 (月)

Brad Mehldauの新作はElliot Smithの曲を中心とするアルバムで8月リリース予定!

Ride-into-the-sun先日,Christian McBride,Marcus Gilmoreと来日して,ジャズ・フレイヴァー溢れる演奏を聞かせたBrad Mehldauであるが,Nonesuchレーベルからのメールで告知された通り,Brad Mehldauの新作"Ride into the Sun"が8月29日にリリース予定となっている(詳しくはこちら)。

今回はElliot Smithの曲を中心にBrad MehldauのオリジナルとNick Drakeの曲が収められているらしい。既にNonesuchのWebサイトで2曲の映像が公開されていて,もはや期待が無茶苦茶高まっている私である。今回一部で歌やストリングスも入るのがこの映像からわかるが,これはまじで楽しみだ。Nonesuchのサイトからも飛べるが,期待を込めてここにも映像も貼り付けておこう。

2025年5月31日 (土)

ストリーミングで公開されたGilad Helselmanのアルバムがなかなかよい。

Gilad-hekselman "Downhill from Here" Gilad Helselman(Far Star)

世界的なトレンドとして,媒体のリリースをせず,デジタル・オンリーのアルバムが増えているが,私のような基本現物主義の人間にとっては残念なことである。ネットをうろついていて,このGilad Helselmanの新作に遭遇したのだが,本作はアナログではリリースされているようだ。しかし,送料を含めると結構な散財となってしまうので,ここはストリーミングで我慢である。

一聴して,編成はコンベンショナルではあるが,サウンド的には完全にコンテンポラリーな作品と言ってよい。そして実に繊細な感覚を聞かせていて,これはなかなか出来が良い。このブログではGilad Hekselmanのリーダー作は"This Just In"を取り上げたことがあるだけだが,そのほかにもAri Hoenig盤やWill Vinson盤も記事にしたことがある。また,記事にしていないだけで,Village Vanguardでのライブ盤も聞いている。

そんなGilad Helselmanの新作はバックのメンツがLarry GrenadierとMarcus Gilmoreという魅力的なトリオである。Larry GrenadierとはVanguardでのライブでも共演しており,"This Just In"にも参加のMarcus Gilmoreとは長年の朋友のようである。この二人の的確なバッキングもあり,Gilad Helselmanのフレージングは淀みなく展開され,実に耳に心地よい。

全8曲中6曲がHelselmanのオリジナルで,残る2曲がBurt Bachrachの"Alfie"と母国イスラエルのフォーク・ソング"Like a Wildflower"というプログラムもよいが,特に面白いのが7曲目のオリジナル"Scoville"だろう。タイトルからもうかがえるが,これがもろにJohn Scofield調なのだ。ある意味,この曲が浮いているとも言えるのだが,Gilad Hekselmanとジョンスコがなかなか結びつかないところもあり,意外な感じもした。まぁそれだけジョンスコの影響力は大きいということなのだが。

いずれにしても,いかにも今日風のギターが聞けるアルバムであり,私としても面白く聞かせてもらった。星★★★★。

Recorded on December 21, 2023

Personnel: Gilad Helselman(g), Larry Grenadier(b), Marcus Gilmore(ds)

本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年5月24日 (土)

Laura Marlingの"Patterns in Repeat"のDeluxe Edition現る。

Laura-marling-patterns-in-repeat-deluxe "Patterns in Repeat (Deluxe)" Laura Marling(Chrysalis) 

昨年リリースされたLaura Marlingの"Patterns in Repeat"は相変わらずの素晴らしいアルバムで,私は昨年のベスト作の一枚に選んでいる(アルバムに関する記事はこちら)。その"Patterns in Repeat"のDeluxe Editionにストリーミングで公開されていた。今のところ,媒体でのリリースはないようだが,これがまた注目すべきものだった。

ストリーミング・サイトでも2枚組扱いとなっていて,Disc 1は昨年リリースされたものと同じだが,今回付加されたのがDisc 2の同作をライブで再現した音源である。基本的にはオリジナルを踏襲した作りとなっていて,非常にインティメイトな感覚に溢れた音となっている。基本はLaura Marlingの弾き語りで,一部ストリングスとコーラスが入る。元々映像化も考えられていたもののようで,YouTube上にこの時の模様がアップされているので,全体像を把握するには映像を観る方がいいかもしれない。

私としてはこの演奏についてもほぼ満足しているのだが,一点だけ難点があると思っている。それは女性コーラス隊の質だ。どうもこのコーラス隊の歌いっぷりが私には気に入らない部分がある。音の乱れのようなものが感じられて,Marlingの歌唱をサポートすべきものが,むしろ邪魔にさえ感じさせるのだ。これは私の一聴した感覚なので,改めて映像でもチェックしようとは思うが,映像でもわかるのだが,ステージも親密度を上げた折角のライブだけに,このコーラスのやや貧弱とも思える歌いっぷりはもったいなかったという気がする。

まぁそれでもLaura Marlingのファンの私としては,こういう音源や映像が出てくるだけでよしとしようと思う。ついでにこのライブの映像も貼り付けておこう。

Recorded Live at the Albert Hall, Manchester on March 6, 2025

Personnel: Laura Marling(vo, g) with Strings and Chorus

2025年5月17日 (土)

Wayne Krantzに何があったのか...。新作は驚きの弾き語りアルバム。

Player-songwriter "Player-Songwriter" Wayne Krantz(自主制作盤?)

ストリーミング・サイトを見ていたら突然ニュー・リリースとして表示されたWayne Krantzの新作。Wayne Krantzのひとかたならぬファンとしては,媒体での入手必須ということで,Bandcampで早速発注したのだが,現物はこれから届くとしても,ダウンロードした音源を聞いてびっくりしてしまった。これが一部を除いて全編がWayne Krantzのギター弾き語りなのだ。確かにBandcampのサイトにも"WK plays electric guitar, sings, taps his foot. There's a loop on one song. No bassists, drummers, keyboardists or saxophonists were harmed during the making of this record."と書いてあるのを後から確認したが,一体これはどうしたことか。

歌に関しては本人も"minimal vocal ability"なんて自虐的に書いている通り,所謂「ヘタウマ」の域を出ないと思うが,Wayne Krantzにとってはテーマとしては「作詞」の方が重かったようだ。Wayne Krantzが敢えてこのアルバムをリリースしたのは,"Howie 61"における作詞の部分に納得がいっていなかったところが大きいようだが,それにしてもである。ここでの音楽がWayne Krantzの本来の音楽性にフィットしているかと言えば少々疑問はあるが,長年のファンと立場としては,いいか悪いかは別にして,これも一つのWayne Krantzの側面として捉えることとしたい。

私は彼のファンであるがゆえに,媒体も発注したものの,これは相当コアなファン向きとしか言えないので,まずはストリーミングでお試しになることを推奨しよう。私としても星をつけにくいアルバムであることこの上ない(笑)。

Personnel: Wayne Krantz(g, vo)

2025年5月14日 (水)

初聞きだった"Pink Floyd at Pompeii – MCMLXXII":Pink Floydでこれが一番好きかもしれないと感じるほどの興奮作。

Pink-floyd-at-pompei "Pink Floyd at Pompeii – MCMLXXII" Pink Floyd (Sony)

これを新譜と言っていいかは微妙なところだが,大幅リストア版らしいからよしとしよう。

私のプログレッシブ・ロック遍歴はまずYesがあって,そこからKing Crimsonへ流れたというものだ。もちろん,そこにPink FloydやGeneisも割り込んでくる訳だが,前者2バンドに比べると,そこそこは聞いていると言っても,後者に対する熱心さには欠けるというのが本音だ。だからこれまでPink Floydによるこのポンペイでの映像を見たこともなければ,音も今回初めて聞いたというのが実態であった。

そして,今まで聞いたPink Floydの音源の中で最も興奮されられたのがこのアルバムだったというのが正直なところだ。バンドとしてのキレもよければ,演奏のレベルも高い。私はかつて彼らのベスト盤"Echoes"の記事には「Pink FloydはAORである」なんて挑発的なことを書いている(結局は褒めているが...。その記事はこちら)が,これは私の中でのPink Floydのイメージを変えるに十分な音源だったと言っても過言ではない。

これほど素晴らしい音源だと知る由もなかったとは,無知とは何と恐ろしいことか...。ということで,完全に私は本作の前にひれ伏したのであった。星★★★★★以外はありえない。私が購入したのはBlu-ray同梱版だが,映像を見るのも楽しみだ。いや~,マジでまいった。

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