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カテゴリー「新譜」の記事

2020年8月 7日 (金)

Laura Marlingの新作の媒体到着!やっぱり最高だ。

_20200803-3 "Song for Our Daughter" Laura Marling (Chrysalis)

この音源を先行公開のストリーミングで聞いて最高だと思った私である(記事はこちら)。そこにも書いた通り,「現物が出たら買う」という初志を貫徹し,現物がデリバリーされたので早速聞いているのだが,これが本当によい。本国である英国のメディアも大絶賛であるが,これは英国に限らず,グローバルで普遍的な魅力を持つ音源と思える実に素晴らしい作品である。但し,言っておかねばならないのはこれが売れるとは限らないということだ。いい音楽は必ずしも売れる音楽にはならないが,本作などは日本においてもちゃんと売れて欲しいと思ってしまった。

Laura Marlingという人はEthan Johnsをにプロデューサーに迎えることによって,完全にその才能を開花させたと思う。Ethan Johnsが関わっていないファースト・アルバムにはまだ青臭さを感じさせるが,プロデューサーによってこれほど変わるのかと思わせるほどレベルに変化が生じたと思うのだ。

本作はEthan JohnsとLaura Marlingの共同プロデュースとなっているが,ここでもいい曲を書き,しかもいい声で歌うねぇという感じである。彼女が書き,歌う曲を聞いていると,Joni Mitchellとの同質性すら感じてしまうぐらいこの人は優れていると私は評価したい。落ち着いて聞くと,曲によってクォリティに若干のバラツキもあるように感じない訳でもないのだが,私はこの音楽は全面的に評価なのだ。惚れた弱みで星★★★★★。もはや彼女はこの分野で,現在最も信頼に値するミュージシャンの一人であると言っておこう。歌詞はこれからゆっくり吟味することにしよう。

それにしてもChrysalisというレーベル名は久しぶりに聞いたが,まだ残存していたんだねぇ。そして,Chris Hillmanの名前をクレジットに見出すことの懐かしさ。ミュージシャン同士,やっぱりわかる人にはわかるのだ。

Personnel: Laura Marling(vo, g), Dan See(ds), Nick Pini(b), Ethan Johns(ds, continuum, g, synth, perc), Anna Corcoran(p), Dom Monks(loop), Chris Hillman(pedal steel), Gabriel Cabazas(cello), Robert Moose(strings)

 

2020年8月 1日 (土)

ようやくデリバリーされたJoshua Redman Quartetのリユニオン・アルバムなのだが...。

Roundagain "RoundAgain" Redman Mehldau McBride Blade(Nonesuch)

本国でリリースされていながら,ちっともデリバリーされなかった本作がようやく到着である。コロナ禍の影響がないとは言わないが,それにしても時間が掛かり過ぎで,イライラさせられた。最近のAmazonは新譜がまともにデリバリーされたことがないのはどういう了見かと文句も言いたくなる。

それはさておき,このメンツが集結するのは94年に"MoodSwing"をリリースして以来なので,四半世紀以上ぶりということになるが,当時の若手が,今や現代のジャズ界を支える面々となってのリユニオンである。期待するなって方が無理である。そういう意味では,今年一番の話題作,注目作と言ってもいいぐらいの作品だろう。よって,私としてもCDがデリバリーされる前からストリーミングで期待しながら聞いていたことは言うまでもない。

既にストリーミングで聞いていた時から音の具合はわかっていたのだが,やはり媒体で聞いてみないとわからない部分もあるだろうということで,記事にすることは控えてきた私である。ようやくアルバムを我が家のオーディオで,家人がいないことをいいことに「相応の音量」で聞き直した訳だが,期待値が大き過ぎたかなとついつい思ってしまったというのが正直なところである。

聞いた感じで言えば,ストリーミングで聞いていた時よりは,音の粒立ちが違うこともあって印象はやや好転したのだが,聞き進むにつれて,ストリーミングで聞いていた時にも思っていた感覚が甦ってきたのである。はっきり言ってしまえば高揚感がないのだ。このメンツであれば,オーディエンスをワクワクさせるような演奏を展開できると思うが,最大の難点は曲があまり面白くないことではないか。アドリブ・パートはいいとして,どうも没入できない。贔屓の引き倒しと言われそうだが,私がいいと思えたのは結局Brad Mehldauの2曲なのだ。

演奏のレベルの高さはケチのつけようがないところなのだが,特にJoshua Redmanのオリジナルがイマイチだなぁという感覚に囚われ続けてしまう私である。更に言わせてもらえば,リズム・セクションに比べて,Joshua Redmanの吹奏も音色も魅力的に響かないのである。94年にはリーダーであったJoshua Redmanが今や一番つまらないと思わせるというのが象徴的な気もするが,私にとってはもう少しやれたのではなかったのかと思ってしまうのだ。今や,各々がリーダーとして活躍しているから,Joshua Redman Quartetではなく,4人の連名表記となっているのも仕方ないと思わせるというところか。こういう表記を見ると,私なんかはAnderson Bruford Wakeman Howeを思い出してしまうねぇ(笑)。

はっきり言ってしまえば,このメンツならこれぐらいできて当たり前。オーディエンスは我がままだから,更なる高みを求めるのだが,彼らに期待する高みに達していないのが残念なのだ。これではJames Farmの方がずっとよかったと思えてしまったのが残念である。今回に関しては,いくら私がBrad Mehldauの追っかけだからと言って,何でもかんでももろ手を挙げて最高と言うつもりはないってことだ。Brad Mehldauの演奏については特に文句はないとしても星★★★☆が精一杯。はぁ~。

Recorded on September 10-12, 2019

Personnel: Joshua Redman(ts, ss), Brad Mehldau(p), Christian McBride(b), Brian Blade(ds)

 

2020年7月29日 (水)

John ScofieldのSteve Swallow集:これがECMから出ることが実に意外。

_20200726-3 "Swallow Tales" John Scofield(ECM)

昨日,Steve SwallowとJohn Taylorのデュオを取り上げたからという訳ではないが,このアルバムの記事をアップしていなかったってことで,遅くなったが本作を取り上げよう。

正直言って,ジョンスコとECMってイメージ的にはあまり結びつかない。私の記憶ではJack DeJohnetteとやったTrio Beyondと,Marc JohnsonのBass Desiresぐらいって感じだが,どっちもECMっぽくないと言えばその通りだと思う。しかし,Bass Desiresのカッコよさは永久に不滅だと思うし,結局は「結びつかない」と言ったって,私のイメージだけの問題である。

それでもって,本作のメンツはジョンスコにSteve Swallow,そしてビルスチュなので,Verveの"EnRoute"と同じである。この3人はこの編成に加えて,別の組み合わせでもことあるごとに共演しているから,勝手知ったるトリオってことになるが,今回のキモはSteve Swallow曲集ってことになる。だが,このアルバム,録音されたのがニューヨーク大学のSteinhardt School of Culture, Education and Human Developmentにあるスタジオでの録音,かつエンジニアリングもECMとは縁のないであろうTyler McDiarmidということで,これは明らかに(そしておそらくはSteve Swallowによる)持ち込み音源ってことだろう。そういうことなので,ECMからでなくても出て不思議はないアルバムであり,ECM的な感覚は実は薄い。なので,これはECMレーベルのアルバムとして聞くことにはあまり意味はないように思う。

なので,このアルバムを評価するためには,企画としてのSteve Swallow集をどう捉えるかというところになる。Steve Swallowが優れたメロディ・メイカーであることは,John Taylorとのデュオ作のところでも書いた通りだが,ここでは素材としてSwallowの曲を使いつつ,ジョンスコが気持ちよさそうにソロを展開しているのが聞きものって気がする。ジョンスコも来年は古希を迎えるってことを考えると,ガンガン引き倒すって感じではなくなっているが,むしろ枯れた味わいを感じさせるというところか。もちろん,ジョンスコのことであるから,「枯れた」と言っても,デニチェンとやっているのとかと比べると随分おとなしくなったということだが,フレージングのアウト具合は不変である。

そして,付き合いの長いSteve Swallowの曲を,きっちりプレイしているところにジョンスコのSteve Swallowに対するリスペクトなり,友情なりが感じられる。正直言って,刺激には乏しいと思えなくもないが,優れたミュージシャン同士によるレベルの高い対話であり,かつ丁寧な演奏っぷりが実にいいと思う。そうした取り組み姿勢も評価し,ちょいと甘いと思いつつも星★★★★☆としよう。

それにしても,大学の中にレコーディング・スタジオを持っていることがまさにNYUらしい。

Recorded in March 2019

Personnel: John Scofield(g), Steve Swallow(b), Bill Stewart(ds)

2020年7月 6日 (月)

Brad Mehldauのベネフィット・アルバムが届いた。

Suite-april-2020-front "Suite: April 2020" Brad Mehldau(Nonesuch)

このアルバムについてはその意図については既に記事にした(記事はこちら)ので詳しくは書かないが,そのアルバムが先日届いた。ストリーミングでは既に聞いていたものの,改めてLPで聞くと,新たな感慨が生まれるものである。

ここに収められた音楽はコロナウイルス禍による厳しい現実を表すと言うよりも,癒しのための音楽である。ジャケットにもあるように"lullaby" is for everyone who might find it hard to sleep now.というのがそれを如実に示し,組曲に続いて演じられる"Don't Let It Bring You Down"や"New York State of Mind",そして”Look for the Silver Lining"はBrad Mehldauの現在の心象を反映したものだろう。

Suite-april-2020-innerこういう音楽はその制作意図を含めて評価すべきであることは言うまでもなく,前にも書いた通り,私はその心意気を買う。当然星★★★★★である。この1,000枚限定のベネフィット盤は逸早くリリースされたが,通常盤は9月にリリースされるようである。そして,CDの国内盤にはボートラ収録の告知がなされているが,それが事実ならばBrad Mehldauのコンプリートを目指す私としてはそっちも買わねば...(爆)。

因みに私のところに届いたアルバムに振られたシリアル・ナンバーは#214であった。そしてBrad Mehldauのサインは中のスリーブに施されていた。

Recorded on April 23 & 24, 2020

Personnel: Brad Mehldau(p)

2020年7月 3日 (金)

来た!Paul Desmondのトロント・レコーディング・ボックス!

Paul-desmond-toronto-box_20200702182501 "The Complete 1975 Toronto Recordings" Paul Desmond(Mosaic)

5月にこのブログでも紹介したボックス・セット(記事はこちら)がようやく到着した。7枚組CDを全部聞いてから記事にすべきだとは思うが,このボックスは聞かなくても魅力的なのは,既発音源に痺れまくっている私からすれば,言わずもがなの世界である。いろいろな手違いがあって,国内に到着してからなかなかデリバリーされないのにはイライラさせられたが,まずは入手できたことを喜びたい。私にとっては家宝とすべき音源である。じっくり楽しませてもらうことにしよう。まだ2枚聞いただけだが,それだけでも星★★★★★。

尚,一部の音源に,Rob McConnellがゲストで入っているのが,やっぱりトロントっぽい(笑)。

2020年6月26日 (金)

これは凄い!Bob Dylanの新作は掛け値なしの傑作。

_20200624 "Rough and Rowdy Ways" Bob Dylan(Columbia)

Bob Dylan,79歳,ノーベル文学賞受賞者として放つ8年ぶりのオリジナル・アルバムである。これが実に素晴らしい。と言うよりも凄いねぇとしか言いようのない深みのあるアルバムをリリースした。オリジナル・アルバムとしては"Tempest"にまで遡るが,なぜか私は"Tempest"をこのブログにアップしていない。全く理由が見つからないのだが,書こうと思って失念したってところかもしれない。

それはさておきとして,まずは私は本作をストリーミングで聞いて,あまりのよさにアルバムの購入を決めたのだが,私が最初にこのアルバムを聞いて思い起こしたのがLeonard Cohenの遺作となった"You Want It Darker"であった。そこには詩人,あるいは文学者としての同質性ってところだろうか。アルバムに先んじてリリースされた"Murder Most Foul"のストーリーは音楽と相まって実に深みを持つものだと感じざるをえない。

このアルバムを評価するにはBob Dylanの書いた歌詞をしっかりと吟味する必要があるのだが,歌詞抜きでサウンドだけを評価しても,これは星★★★★★以外にはありえないと思わせるような傑作。突然,オリジナルでシングルをリリースしたり,アルバムをリリースした背景には,おそらく今回のコロナウイルス禍があると想像される訳だが,それについては今のところDylanは何も語っていないはずである。そして,いろいろな人たちの名前が歌詞のそこかしこに出てくるのも何らかのメタファーなのかもしれないなぁ。

Personnel: Bob Dylan(vo, g), Charlie Sexton(g), Bob Britt(g), Donnei Herron(steel-g, vln, accor), Tony Garnier(b), Matt Chamberlain(ds) with Blake Mills, Benmont Tench, Alan Pasqua, Fiona Apple, Tommy Rhodes

2020年6月24日 (水)

Simon Phillipsライブのアナログ盤が到着。カッコいいねぇ。

Simon-phillips-live "Studio Live Session" Simon Phillips(Lo End Recs)

Simon PhillipsのFacebookページで紹介されていたライブ・アルバムを米国に発注していたのだが,私の予想より早く到着した。私はこのメンツでのライブを一昨年の正月休み明けに,ブルーノート東京で観たのだが,実はその時,会社の新年会の後に駆けつけたものだから,相当酔っぱらっており,演奏中かなりの時間寝ていたという信じられない失態を演じたのであった。しかし,この音源を聞いて,よくこの演奏を聞きながら寝られたものだと我ながら感心してしまうぐらいのタイトな演奏である。

このアルバムはリヒテンシュタインにあるらしいLittle Big Beat Studiosという会場に少数のオーディエンスを招いてレコーディングされたものなのだが,リヒテンシュタインってのが珍しいなぁなんて思ってしまう。少なくとも私はリヒテンシュタイン・レコーディングの音源って,もしかすると聞いたことはあるのかもしれないが,全く記憶にはない。

そして,なぜこのアルバムが限定LPとしてリリースされたのかはよくわからなかったのだが,このヴェニューでのセッションは結構アルバムとしてリリースされているようだ。これもその一枚としてのリリースだが,昨今のSimon PhillipsのバンドであるProtocolの音楽は実にカッコいいので,高いのは承知で発注したのであった。だったら,ライブでも寝るなよ!なんてお叱りを受けそうだが,ここでもまさに彼ららしい演奏を展開していると言ってよい。まぁギターのGreg Howeは前任のAndy Timmonsに比べると,華に欠ける気がしないでもないが,テクは万全って感じで,ここでの演奏に違和感はない。そして,全曲Simon Phillipsのオリジナルってのも,才能を示すねぇなんて思ってしまう。

やっぱりこういう音源を聞いていると,私はハード・フュージョンが結構好きなんだねぇなんて思うが,こういうのは私に限らず好き者はゲットすべき音源だろうと思う。リリースされたこと,入手したことを喜んで,かつ彼らのライブで寝落ちした反省も込め,甘いの承知で星★★★★☆としてしまおう(笑)。尚,私としては,出来はA面の方がいいかなぁって思っている。

Recorded Live at Little Big Beat Studios on December 2, 2017

Personnel: Simon Phillips(ds), Greg Howe(g), Otmaro Ruiz(p, key),Ernest Tibbs(b)

2020年6月20日 (土)

突如現れたBrad Mehldauのベネフィット・アルバム。

Suite-april-2020

"Suite: April 2020" Brad Mehldau(Nonesuch)

コロナウイルス禍に影響を受けるミュージシャンは多いが,そうしたミュージシャンを支援するためにJazz Foundation of America(JFA)が立ち上げた基金,COVID-19 Musician's Emergency Fundのためのベネフィットを目的に,Brad Mehldauが新しいアルバムを突如リリースした。

Brad Mehldauは家族ともどもオランダに滞在していたらしいが,アムステルダムで録音したこのアルバムにはタイトル通りの組曲と,Neil Youngの"Don't Let It Bring You Down",Billy Joelの"New York State of Mind",そしてスタンダード"Look for the Silver Lining"が収められている。この組曲についてBrad Mehldauは,”A musical snapshot of life [at the time] in the world in which we've all found ourselves",そして "I've tried to portray on the piano some experiences and feelings that are both new and common to many of us." と述べているが,まさしくコロナウイルス禍がもたらした環境下での心象風景と言ったところだろう。

まずは1,000枚限定のサイン入りLPとしてリリースされたが,音源はストリーミングでも聞くことができる。また,追ってCDでのリリースも予定されているはずである。限定LPは送料込みで$110と決して安価ではないが,送料を除く$100は全額JFAに寄付されるとのことであるから,これは基金への貢献するためにも,速攻で発注した私であった。実はその直後にブログを1週間休むこととなった原因に直面することになるのだが...。

お聞き頂けばわかる通り,いかにもBrad Mehldauらしい美しいピアノである。音楽的な評価というより,私はこの心意気を買いたい。このアルバムはBrad Mehldauだけでなく,ジャケットのデザイナー,オランダのレコード・プレス企業,そして発送担当企業も,全て無償で対応しているという,本当のベネフィット・アルバムである。そうした観点でも当然星★★★★★であるが,このアルバムに関しては星の数など関係ないと思って頂けばよいだろう。ご関心のある方は下記のURLへどうぞ。

https://store.nonesuch.com/artists/brad-mehldau/suite-april-2020-limited-edition-180g-signed-lp-mp3-bundle.html

NonesuchのサイトにはBrad Mehldauのコメント付きの映像もアップされているので,それも貼り付けておこう。それにしても,彼の英語は実にわかりやすい。

2020年6月 8日 (月)

コレクターはつらいよ (26):Nonesuchの企画アルバムで2曲演奏するBrad Mehldau。

I-still-play ”I / Still / Play" Various Artists(Nonesuch)

これは長年,Nonesuchレーベルの社長を務めたBob Hurwitzの業績へのトリビュートのために,11人の作曲家が作曲したピアノ曲を収めた企画アルバムである。John Adams,Steve Reich,Philip Glass,Laurie Anderson,更にはPat Metheny,Brad Mehldau,そしてRandy Newman等,よく知られた人もいれば,Louis Andriesson,Donnacha Dennehy, Nico Muhlyのようなそうでもない人(私が知らないだけ?) の作品を収めたものだが,弾いているピアニストは4人。11曲中7曲は自身も1曲提供したTimo Andresが弾き,残りの4曲のうち,Brad Mehldauが2曲,Jeremy Denkが1曲,そしてRandy Newmanが1曲という構成である。

私がこのアルバムを購入したのは偏にBrad Mehldauゆえであるが,このアルバムは,現代音楽的なアプローチのアルバムであり,ジャズ・ピアニストとしてのBrad Mehldauを期待すべきものではない。まぁ,私は現代音楽のピアノ曲もかなり好きな方なので,こういうアルバムはBrad Mehldauが参加していなくても買ったかもしれない。やっぱり買ってないか...(苦笑)。

比較的短い曲が多くて,最長はPat Methenyが作曲し,Brad Mehldauが演奏した”42 Years"で6分36秒,最後のRandy Newmanの"Recessional"なんて1分に満たないし,2分台の曲も5曲あるから,まぁ小曲集の趣である。そうした中で,Brad Mehldauの弾く2曲だが,Timo Andresとは明らかにタッチが違うとわかるのが面白い。ここで演奏されているほかの曲をBrad Mehldauが弾いたら,また別の感覚が生まれたかもしれないと思いつつ,様々な曲想を楽しめるという点で面白かった。

曲としては,Philip Glassが書いた"Evening Song No.2"が実に美しいと思ったが,ほかの曲についても聞きどころが多数あると思えた。Pat Methenyの”42 Years"は序盤はややアブストラクトな響きを醸し出しながら,いかにもPat Metheny的なメロディ・ラインに移行していくところが面白かった。

まぁ,企画アルバムだし,現代音楽的なところもあり,万人には勧めにくいのも事実なのだが,これはこれでありだと思えた。だが,一般的な感覚からすれば,やはり「コレクターはつらいよ」と言いたくなるような作品であることも事実。私としてはこの作品を支持したいが,一点だけ言っておくべきことがあるとすれば,最後のRandy Newmanは必要だったのかということである。ほかの曲とのトーンが違い過ぎて,バランスを崩しているような感じるのは私だけだろうか?

Personnel: Timo Andres(p), Brad Mehldau(p), Jeremy Denk(p), Randy Newman(p)

2020年6月 4日 (木)

来た!Marcin Wasilewski Trioの新作。Joe Lovanoとの共演やいかに?

_20200601 "Arctic Riff" Marcin Wasilewski Trio with Joe Lovano (ECM)

私にとって今の時代,最も期待させ,それに応えてくれるピアニストはBrad Mehldau,Fred Hersch,そしてこのMarcin Wasilewskiだと言ってもよい。昨年1月のMarcin Wasilewski Trioのライブはまさに完璧と言いたくなるような素晴らしい演奏であったし,それに先立つ"Live"も2018年のベスト盤に選んでいる。それぐらい私を痺れさせてくれるピアニストなのだ。

そのMarcin Wasilewski Trio待望の新作だが,今回はゲストでJoe Lovanoが加わるところがポイントである。Marcin WasilewskiのトリオはもともとTomasz Stankoのバックを務めていたし,自身のアルバムでもサックス奏者Joakim Milderを迎えた"Spark of Life"というアルバムもあるから,管が入っていてもそれは問題とはならないのだが,Joe Lovanoがどうなのかという点に,やはり注意が向いてしまう。しかし,冒頭からそんなことは全く気にならないほど,美しい音楽が聞こえてくる。

このアルバムはWasilewskiの曲が4曲,Joe Lovanoが1曲,4人の共作が4曲,そしてCarla Bleyの"Vashkar"が2回というプログラムであるが,今までにないのはこの4人の共作ということなる。これは共作というよりも,コレクティブ・インプロビゼーション:集団即興と捉えるべきであり,Marcin Wasilewskiにとっては珍しい展開と言ってもよいだろう。これが「熱くならないフリー」って感じを醸し出していて,それでアルバムのタイトルが「北極のリフ」ってことになるのかと思ってしまう。

はっきり言ってしまえば,こういうのは私がMarcin Wasilewskiに求めている世界とはちょっと違うのだが,それ以外については文句はない。でもやっぱりこの人たちはピアノ・トリオでの音楽を追求すべきだろうというのが正直なところ。それでもJoe Lovanoとの相性は決して悪いとは思わないので,それはそれでありなのだが,やっぱり集団即興がなぁ...って感じなのである。

しかし,その一方でWasilewskiのオリジナル,”L'Amour Fou"でのフレージングを聞いていると,おぉ,Herbie Hancockに影響されていたのかなんて思ってしまったのが面白かった。でもよくよく考えてみれば,"Actual Proof"も"Spark of Life"や"Live"でもやってるんだから気づけよ!ってところだが,フレージングで影響を感じたのは今回が一番強烈だったかなってところである。

いずれにしても,本作も十分によく出来たアルバムだとは思うが,いつものように手放しで喜べないのがちょっと残念。それでもやはり彼らには甘く,星★★★★☆。

Recorded in August 2019

Personnel: Marcin Wasilewski(p), Slawomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz (ds), Joe Lovano(ts)

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