Fred Herschの新作が素晴らしい。
"The Surrounding Green" Fred Hersch (ECM)
Fred Hersch待望の新作がデリバリーされたので,早速聞いている。ECMに吹き込むようになって,これが第3作となるが,ECMでは初のトリオ作,そしてメンツはDrew Gress,Joey Baronとあっては期待するに決まっている。そしてその期待は裏切られることはない。
まさにSascha Kleisのジャケット・デザインの如き,水彩画もしくはパステル画のような響きと言えばよいだろうか。冒頭の"Plainsong"からして,これこそ我々がFred Herschに期待する音だ。美しくも抒情的な響きには心を鷲掴みにされること必定の音楽と言いたい。
全7曲中3曲がFred Herschのオリジナルで,そのほかのレパートリーがOrnette Coleman,Egberto Gismonti,George Gershwin,そしてCharlie Hadenという構成からしてこっちはまいってしまうではないか。特にCharlie Hadenの"First Song"をこのトリオがどう料理するのかがプレイバック前の最大の注目点であったのだが,私はそこに至るまでの間で,既にこのアルバムに魅了されていたと言っても過言ではない。どれもがいい演奏だが,超絶美しいタイトル・トラックやEgberto Gismontiの"Palhaço"の素晴らしさには,これはまじでいいと独り言ちた私である。
そして"First Song"だが,Drew Gressのベース・ソロから始まり,Fred Herschはこの曲のテーマ・メロディを明示的に提示しないかたちで演奏しているのが面白い。この曲にこういうアプローチで来るか~って感じだが,原曲の持つ雰囲気は維持しながら,Fred Hersch的に昇華させているところがポイントだろう。そして最後にあのメロディ・ラインを楚々とプレイして締めるのも雰囲気たっぷりである。それをよしとするかどうかはリスナー次第だが,私はこれは十分にありだと思った。
最後はFred Herschのオリジナル"Anticipation"でクロージングとなるが,冒頭のDrew Gressとのユニゾンも印象的に響いた後に出てくるFred Herschらしいソロに嬉しくなって,あっという間にプレイバック終了である。やはりFred Herschは素晴らしいと再認識させられたアルバム。昨今,ややアブストラクト度も高まっていると感じさせたFred Herschであったが,このアルバムこそ真骨頂だと言いたい。
という感じなので,私の中では今年聞いた新譜(大して聞いていないが...)の中でも屈指のアルバムと位置付けたい。喜んで星★★★★★である。このトリオで来日してくれないものかと思うのは私だけではあるまい。
Recorded in May, 2024
Personnel: Fred Hersch(p), Drew Gress(b), Joey Baron(ds)
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