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カテゴリー「映画」の記事

2025年3月17日 (月)

Steven Soderberghの新作「プレゼンス 存在」を見に行った。

Presence 「プレゼンス 存在 ("Presence")」('24,米)

監督:Steven Soderbergh

出演:Lucy Liu, Chris Sullivan, Calina Liang, Eddy Maday, West Mulholland, Julia Fox

カテゴリーとしてはホラーに分類される映画である。私は見た目に似合わず,肝っ玉が小さいせいでホラー映画が嫌いなのだが,ホラー嫌いの私がなんでこれを見に行く気になったかと言えばSteven Soderberghが監督だからという一点に尽きる。新作"Black Bag"も評価が高いようで,日本での公開が待たれるが,その前にこの作品である。

そもそも私の中ではSteven Soderberghの評価はもともと高かったが,「オーシャンズ」シリーズはちっとも見ていないから,ほんまか?と言われても仕方がない。しかし,「イギリスから来た男」,「トラフィック」,「コンテイジョン」,「サイド・エフェクト」等優れた作品を残しているのは間違いないところ。一時引退を表明しながら復帰したのはよかったものの,その後の作品は「ローガン・ラッキー」を機内エンタテインメントで見ただけで,私にとってはお久しぶりということになってしまった。

それでもって,この作品は舞台となる家に棲みついた「霊」の視点から描かれるというのがまずユニークである。定点的なカメラではなく,スマホでも撮影できてしまいそうにも思えるが,ストーリーとしては結構謎な部分が残る作品で,その辺りが評価の分かれ目になるのではないかと思った。私としてはホラーと言うよりサスペンスという感じがしたので,全く問題なく見られたのはよかったが,動的な部分はかなり少ないので睡魔に襲われる瞬間があったことは告白しておかねばなるまい。

正直言ってしまうと,結局この視点を提供する「霊」は何だったのかというのがわかったようでわからないというのが実感だが,むしろこれは「家庭崩壊」の話だと思った方がわかりやすいと思ったのも事実。実験的な映画ではあるが,成功したかと言えばそうでもないってところで,星★★★ってのが妥当な評価だろう。私としては父親を演じたChris Sullivanの方に肩入れしたくなったということだけは言っておく(笑)。父親は結局娘の味方なのだ(きっぱり)。

2025年3月12日 (水)

Amazon Primeで「マルホランド・ドライブ」を見た。

Mulholland-drive 「マルホランド・ドライブ("Mulholland Dr.")」(’01,米/仏)

監督:David Lynch

出演:Naomi Watts, Laura Elena Harring, Justin Theroux, Ann Miller, Lee Grant, Billy Ray Cyrus

先日亡くなったDavid Lynchを偲んで見てみたのがこの作品。私はDavid Lynchとは縁のない人生だったが,昨年同じくAmazon Primeで「ブルー・ベルベット」を見て,このブログにも記事をアップしている(その時の記事はこちら)。「ブルー・ベルベット」もクセの強い映画だったが,やはりDavid Lynchは独特のスタイルを持っていて,実に変わっていると思ってしまった。

この映画がそもそもTVムービーとして製作されたものがベースというのは実に驚きだ。もしそのTVムービーが成功していたらTVシリーズ化されていたのか?と思うと,それは難しかろうと思わされる相当厄介な物語であった。端的に言えば,全編悪夢を見ているかの如き展開とでも言うべきだろうが,このストーリー展開には戸惑う人も多かろうというところだ。しかし,ミステリアスな展開とは言え,ストーリーとしては破綻していないシナリオに仕立てたのは立派だと思える。

あまり詳しく書くとネタバレになってしまうが,多くの役者が「夢(あるいは妄想)」と「現実」の間での役割を演じることからして,役者というのは多重人格的である必要があるよなぁなんて妙な感心の仕方をしてしまった私であった。特に大変だったのはNaomi WattsとLaura Elena Harringだろうが,彼女たちにとっては当たり前の世界か...。いずれにしても,終盤に向けての展開に驚きを覚える作品で,私は「ブルー・ベルベット」よりこっちの方がずっと楽しめた。

ただそれほど難解かと問われれば,私はそんなことはないと思うし,これならはるかに「インセプション」の方が訳がわからんと言ってもよい。しかし,いろいろな仕掛けがあるので,100%意図を理解できたかと言えばそれも怪しいが...(苦笑)。ということで星★★★★。

Ann-miller それにしてもこの映画,面白いキャスティングだと思えたのがCoco役を演じて,結構出演シーンも多いAnn Miller。Ann Millerは往年のMGMミュージカルにも出演していた人だが,私はこの人の名前を「ザッツ・エンタテインメント」を中学生の時に見て以来,ずっと覚えていたので懐かしかった。歌えて踊れたAnn Millerとこんなところで再会するとは思わなかった。ということで,彼女の「ザッツ・エンタテインメント」での出演シーンの写真も併せてアップしておこう。その模様は是非映像で見てもらいたいので,YouTubeで見つけた映像も貼り付けておく。この映像には歌はないが,私が「ザッツ・エンタテインメント」で見たのはこのシーンのはずだ。今の若い人が見たら,何のこっちゃな映像だが(爆)。

「マルホランド・ドライブ」のBlu-rayへのリンクはこちら

2025年3月10日 (月)

「名もなき者/A Complete Unknown」:Timothée Chalametの頑張りは凄いのだが,映画としては少々疑問も。

A-complete-unknown 「名もなき者/A Complete Unknown」(’24,米,Searchlight)

監督:James Mangold

出演:Timothée Chalamet, Edward Norton, Elle Fanning, Monica Barbaro, Boyd Holbrook

Bob DylanがNYCにやってきてから,Newport Folk Festivalで電化サウンドを披露するまでの期間を描いた映画である。今年のOscarでは黙殺された映画だが,Timothée Chalametほか,実在のミュージシャンたちを演じた役者陣の頑張りは評価しなければならない。しかし,映画的に言うとよく出来ているとは言え,傑作とまでは言えないという気がした。それはなぜか。

正直言ってこの映画の背景については音楽ファンにとってはよく知られたものだ。実在の人物も多数出てくるが,Al Kooper参加のくだりなど,そういうことだったのか!という点もある。だが,映画としてのストーリーとしてよりも,音楽が勝ってしまったという部分が否めないと思えるのだ。それがBob Dylanというミュージシャンの存在感とその曲の強力さゆえだろう。上述の通り,実在のミュージシャンを演じた役者陣は歌や楽器の技量を高めるのも大変だっただろうと思いたくなるし,音楽は無茶苦茶楽しめると思う。それに比べるとストーリーが平板に感じられてしまうのはもったいなかった。

それゆえのOscar無冠というのもやむを得ないと思う一方,やはりこれはBob Dylanへの思い入れの有無によって評価は変わるだろう。私としては嫌いじゃないがベストでもないというのが正直なところだが,音楽面を評価して甘めの星★★★★。

2025年3月 5日 (水)

録りだめしてあった「蜘蛛巣城」を初めて見た。

Photo_20250301081001 「蜘蛛巣城」('57,東宝)

監督:黒澤明

出演:三船敏郎,山田五十鈴,千秋実,志村喬,佐々木孝丸,浪花千栄子

録画してあったこの映画をこの歳になって初めて見た。シェイクスピアの「マクベス」を翻案したことでも知られるこの映画だが,ストーリーを舞台を変えつつもかなり忠実に脚色していて,へぇ~,こんな映画だったのかなんて今更ながら思っていた私である。

それにしても山田五十鈴が恐ろしい。マクベス夫人に相当する浅茅こそ悪女を絵に描いたような造形であるが,発狂後の姿もまた恐ろしい。それに操られるかの如き三船敏郎演じる鷲津武時の錯乱ぶりも,カッコいい三船の姿を見慣れているこちらからすれば,大した役者であったと改めて思ってしまった。その一方で乗馬シーンも見事で,何でもこなしてしまうところに感心してしまう。また,この映画のために組まれたセットも凄いもので,この美術を見るだけでも価値があった。

更に面白かったのが,クレジットの監督助手に野長瀬三摩地の名前を見つけたことであった。私たちの世代にとって,野長瀬三摩地は「ウルトラ・シリーズ」の演出でお馴染みであるが,黒澤の助監督を務めていたとは露知らず,これまたへぇ~となってしまったのであった。

いずれにしても,今更ながらでもこういう映画を見ることができて本当によかった。重苦しい映画と言ってもよいが,黒澤明の多様性を認識する上でも価値があると思う。星★★★★★。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2025年3月 2日 (日)

「ブルータリスト」:なかなか厳しい映画だ...。

Brutalist 「ブルータリスト("The Brutalist")」(’24,米/英/加,Universal)

監督:Brady Corbet

出演:Adrian Brody, Felicity Jones, Guy Pearce, Joe Alwyn, Raffey Cassidy, Stacy Martin

Golden Globeも受賞して,オスカー戦線でも有力視されているこの映画,215分という尺にもかかわらず,私が観に行った回はかなりの聴衆でほぼ満席と言ってもよい客入りであった。昨今私が見た洋画でこれほど観客が入っていたのは実に久しぶりな気がする。

迫害を逃れて妻を置いて米国に逃亡したユダヤ人建築家の人生を描いた映画なのだが,Adrian Brody演じるLászló Tóthが自身の建築完遂のために精神的にも壊れていく様は見ていて辛いものがあるし,Felicity Jones演じるその妻もかなり怖いので,見る方も心理的負担の強い映画と言ってもよい。

しかし,「序曲」から始まって,第一部,休憩を挟んで第二部,そしてエピローグとして描かれる映画は古き佳き時代の長尺映画へのオマージュとも言えて,私を含めたベテランの観衆には懐かしさを与えていたのではないか。

各々の役者陣も優れた演技でこの重苦しいドラマに貢献しているが,見ていて重苦しさが勝ってしまう映画とも言えて,これは好き嫌いが分かれても仕方がないだろう。もちろん,この尺をものともしない重厚感は評価されて然るべきだが,見終わった後の疲労感は半端ではなかった。演出,脚本,演技のどれを取っても優れた映画であることは間違いないが,この重さは私には少々厳しいものだったというのが正直なところだ。星★★★★。

Brutalist-booklet_20250304105901 それにしても面白かったのはこの映画を見に行った時に配られたリーフレット。フィクションなのにあたかも実在するかのように仕立てた冊子を配ってしまうのはさすが配給元がPARCOって感じか。さすがに本国でもここまではやっているまい。

2025年2月23日 (日)

実話に基づく「セプテンバー5」:スリリングかつ真面目に撮られた映画。

September-5 「セプテンバー5("September 5")」(’24,独/米,Paramaount)

監督:Tim Fehlbaum

出演:Peter Saasgard, John Magaro, Ben Chaplin, Leonie Benesch, Zinedine Soualem

1972年のミュンヘン・オリンピックで起きた黒い九月によるテロ事件は,人質全員死亡という悲劇的な結果に終わったことは私は子供心に記憶している。その後,Steven Spielbergが映画「ミュンヘン」でも描いたから,事件そのものについては理解しているつもりだ。この映画はその事件を報道する米国ネットワークABCのスタッフの対応について描いたもので,まさに事実は小説より奇なりと言うべきサスペンスフルな映画。

出てくるABCの面々は実在の人物で,私にとっては在米中にニュースのアンカーだったPeter Jenningsの名前が懐かしかった。リアルな報道と同時にスクープのために結構なことをやっていたのだなぁなんて感じてしまうが,ギリギリの中での取材への取り組みぶりは相当リアルな世界だったのだろうと思わせる。そうした中での「伝えるべきか,伝えざるべきか」という判断も絡んで,相当高いテンションが続く映画であり,この緊張感は90分強という尺が適切と思わせるものであった。

ほぼTVの中継スタジオという密室で描かれるドラマはシナリオもよく出来ており,オスカーへのノミネーションにもうなずけるもので,私は見ていて緊張を強いられながらも,大いに嬉しくなっていたのであった。今年観た映画はみんな当たりということで,評価も甘くなり星★★★★★にしてしまおう。

それにしても,こんな事件がありながら,オリンピックを一時中断だけで継続させたIOCの判断は本当に正しかったのかと今更ながら思うのであった。

2025年2月16日 (日)

舞台劇を見るかのような「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」。そしてこの色彩感にまいる。

The-room-next-door_20250212192601 「ザ・ルーム・ネクスト・ドア("The Room Next Door")」(’24,西/米/仏,Warner Brothers)

監督:Pedro Almodóvar

出演:Tilda Swinton, Julianne Moore, John Turturro, Alessandro Nivola

安楽死という深刻なテーマを扱いながら,二人の名女優が舞台劇のような演技合戦を繰り広げると言ってもよい作品。先のヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲得した映画だが,この二人の演技にも目を奪われる一方,私の印象に残ったのがテーマとは対照的と言ってよい衣装,そしてセットに見られる見事なまでの色彩の美しさであった。このヴィヴィッドなカラーは二人の演技同様に強い印象を残したと言ってよい。

そうした中で,スクリプトには非常にリベラルなセリフがある一方で,Tilda Swinton演じるMarthaが安楽死を遂げた後,Julianne Moore演じるIngridを取り調べるAlessandro Nivola演じる警官の執拗なまでに原理的な宗教観との対比が面白いと思ってしまった。脚本も書いた監督のPedro Almodóvarのリベラリズムの発露っていうところか。この辺りは気にいらない人も出てきそうだが,私のようなリベラルな人間にとっては全く問題ない。

Buster Keatonの映画やJohn Hustonの『ザ・デッド/「ダブリン市民」より』を引用しながらのストーリー展開も違和感がなかったが,エンディング近くのサプライズも「こう来るか」という見事な映画だったと思う。星★★★★☆。私が行った時はそこそこ客が入っていたが,これほどの映画にもかかわらず,上映館,上映回数が少な過ぎるのが惜しい。昨今の洋画の不人気ぶりは何とかして欲しいと思うのはきっと私だけではあるまい。もっとこういう映画を見たいのだ!

2025年2月 9日 (日)

こういうのをいい映画だと言いたくなる「リアル・ペイン ~心の旅~」。

A-real-pain 「リアル・ペイン ~心の旅~("A Real Pain")」(’24,米/ポーランド,Searchlight)

監督:Jesse Eisenberg

出演:Jesse Eisenberg, Kieran Culkin, Will Sharpe, Daniel Oreskes, Liza Sadovy, Jennifer Grey, Kurt Egyiawan

Jesse Eisenbergが監督と主演を兼ねた一種のロード・ムービーだが,その背景にはホロコーストの記憶が横たわるという映画。1時間30分という昨今としては短い上映時間ながら,シナリオともども非常によくできた映画となっている。

元々ポーランド移民のユダヤ人としてのJesse Eisenbergがこの物語を書かせたことは間違いないところだが,本人演じるDavidと,Kieran Culkin演じるBenjiという従兄弟のキャラクターの違いに加えて,ルワンダ虐殺の生存者を演じたKurt Egyiawanの存在を通じて,ユダヤ人社会に起きたホロコーストという悲劇が強く炙り出されるという感覚を覚えた。Kieran Culkinはその名からもわかる通り,あの「ホーム・アローン」のMacaulay Culkinの弟であるが,この映画でオスカーの助演男優賞にノミネートされている。助演と言っても,ほぼ主演と言ってもよい役回りであるが,オスカー受賞確実の演技と言われているのも納得できるものであった。

ある意味Kieran Culkin演じるBenjiは無垢な人であるがゆえに,人々との間にいらぬ軋轢を生むこともあれば,その純粋さゆえの親しみを生むこともあるというのに対し,Jesse Eisenberg演じるDavidは現実的な人物としての対比も効いているし,その周りの登場人物の造形も面白いのはよくできたシナリオゆえというところだろう。主題にも書いた通り,これは実にいい映画であった。監督,シナリオ・ライターとしてのJesse Eisenbergも大したものだ。星★★★★★。

2025年2月 1日 (土)

今年最初の映画館で見た映画が「ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー」であった。

High-low-john-galliano_20250126105301 「ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー("High & Low ‐ John Galliano")」(’24,英/米/仏)

監督:Kevin Macdonald

出演:John Galliano, David Harrison, Hamish Bowles, Jeremy Healy

少し前のことになるが,珍しや家人の誘いでミニ・シアターに観に行ったのがこの映画であった。本作は昨年公開されたものだったが,細々と公開が続けられていたようだ。

正直言ってファッションに何の関心もない人間にとってはJohn Gallianoって誰よ?ってことになるのだが,これはその姿を追ったドキュメンタリー映画。"High & Low"のタイトルは黒澤明の「天国と地獄」の英語タイトルだが,John Gallianoにとっての「天国と地獄」を描いたもの。私にとっては何の前提となる知識もない中で見たことになるが,これがなかなか面白い映画であった。

デザイナーとして大きな成功を収めていたJohn Gallianoが,奇異な行動や人種差別発言によって,転落の道を歩みながら,その後,復活を遂げる姿が描かれているから「天国と地獄」な訳だが,なかなかにドラマチックな人生だと思ってしまう映画だ。天才には天才なりの悩みがあって,それが暴発することによる自業自得に陥るというものだが,私は見ながらずっと「へぇ~」なんて思い続けていたのであった。よくできたドキュメンタリーだというのが正直な感想。私の通常見に行く映画のテリトリーには決して入ってこない作品だが,勉強になりました。星★★★★。

2025年1月27日 (月)

Amazon Primeで見た「危険がいっぱい」。

Photo_20250126092701 「危険がいっぱい("Les Félins")」(’64,仏)

監督:René Clément

出演:Alain Delon, Jane Fonda, Lola Albright, André Oumansky, Carl Studer

監督がRené Clémentで,主演がAlain Delonだからと言って,「太陽がいっぱい」にあやかって,「危険がいっぱい」という何とも安直な邦題が笑えるこの映画をAmazon Primeで見た。本作も見放題の収量が近いということで慌てて見たというのが実態。

まぁ原題の"Les Félins"ってのも,「ネコ科の動物」みたいな意味らしいから,それでは何のことかわからないが,映画を見ればなるほどと思えるタイトルだ。「太陽がいっぱい」がPatricia Highsmithの"The Talented Mr. Ripley"を原作としたのと同様,本作も米国人作家Day Keeneの"Jou House"が原作というのが面白い。おそらくこの辺はRené Clémentの趣味って気がする。

明らかに設定に無理のあるサスペンス劇ではあるが,この映画は完全にAlain Delonの美貌を楽しめばいいって感じではあるものの,なかなか楽しめる映画であった。Jane FondaはAlain Delonに相手にしてもらえないMilanda役を演じているが,まぁその細いことよ。その可愛らしくて若々しい姿を見ているだけでも実は嬉しくなっていた私である。もう一人の主役と言ってよいLola Albrightはこの映画の公開当時は,軸足をTVに移していた人のようで,結構な別嬪だと思えたが,Jane Fondaの何となく初々しい感じと違いがあってこの人もなかなかよい。

それにしてもAlain Delonだ。少々情ないような部分も示しながら,最終的にはカッコいいのである。運転手の恰好でサングラスをかけるだけでさまになってしまうのだから,美形は得だ(笑)。それを引き立てるのが名手Henri Decaëによるカメラ・ワーク。風光明媚なニースの風景や冒頭のNYC等,やっぱりこの人上手いわって感じなのもよかった。

そして音楽はLalo Schifrinのジャジーな響きが,この映画へのフィット感が大きかったと思う。演奏者はクレジットされていなかったが,ベースはPierre Michelotが弾いていたらしく,冒頭からいい感じを生み出していた。そうした要素も含めて星★★★☆ぐらいだと思うが,このラストは因果応報的に結構ひねりが効いていて,原題はこれで理解できるというところ。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

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