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カテゴリー「現代音楽」の記事

2024年2月27日 (火)

高橋アキが弾く佐藤聰明:このミニマルな響きがたまりません。

_20240226_0001「佐藤聰明:橋」高橋アキ(カメラータ東京)

昨年秋にリリースされていた本作に気づかないでいたのだが,先日CDをまとめ買いしようと思ってサイトを見ていて見つけてしまった。まだリリースから半年も経っていないので新譜扱いとさせて頂く。

これはまさに私の好物と言ってよい曲であり,演奏なのだが,この連作ピアノ曲「橋」は2000年より8年に渡り全5曲が作曲され、高橋アキに献呈されたものということで,高橋アキが弾くべくして生まれた曲と言ってよい。流れ出る音はMorton Feldman的なミニマリズムと言ってよいが,朝日新聞のインタビューで高橋アキは「聡明さんの音楽は『一音成仏』。ぽつん、ぽつんと置かれた数少ない音のすべてに魂が込められている。一瞬もおろそかにできないんです」と語っているが,まさにそういう感じの音楽である。

更に高橋アキは「音の数が少ないから誰でも弾けるけど、それじゃ『音楽』にならない。本当に難しい」とも言っているが,こういう話を聞いていると,この音楽への理解レベルが我々と違うという気がする。それこそ献呈された高橋アキにしか出せない音である。まさにミニマルであるから,人によっては何がいいのかわからないと言われても仕方ないが,とにかくここでの演奏には強くひきつけられてしまった私である。好きなものは仕方ないのだ(笑)。星★★★★★。

Recorded on April 18, 2023

Personnel: 高橋アキ(p)

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2023年12月16日 (土)

高橋アキによる早坂文雄のピアノ小品集。小難しいところ一切なし(笑)。

_20231214_0001 「早坂文雄:室内のためのピアノ小品集」高橋アキ(カメラータトウキョウ)

作曲家早坂文雄がコンサート用ではなく,室内で誰に聴かせるでもなく,自らが弾いて自らが楽しむような曲として書いた17曲からなる小品集に数曲のピアノ曲を加えて高橋アキが吹き込んだアルバム。

作曲者の意図からしても想像がつくが,テンションとかは無縁の,耳にも心地よい小品が並んでいて,こういうのを小音量で流していると,仕事も捗るってものだ(笑)。

私にとっての早坂文雄は黒澤明の映画音楽を手掛けたことの印象の方が強いのだが,こうしたピアノ曲を聞いていると,いかにも素描的な響きのようなものを感じる。日本的な旋律を持ちながら,映画音楽とは随分と異なる響きだが,これはこれで早坂文雄の個性ということになるのだろう。

これらの曲を吹き込んだのはこれまで高橋アキだけというのも,全く彼女らしいと思いつつ,こういう音楽はひそかに楽しみたいと思う私である。星★★★★☆。現代音楽のカテゴリーには入れるが,現代音楽的な難しさはないので,多くの人にも受け入れられるはずだ。

Recorded on April 2 & 3, 2003

Personnel: 高橋アキ(p)

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2023年10月 3日 (火)

改めて聞いても実に面白いReichの"Drumming"。

_20231002_0001 "Drumming" Steve Reich & Musicians (Deutsche Grammophon)

このディスクに収められたPart 1~4から成る"Drumming"は演奏時間が80分を超える大作だが,パーカッション・アンサンブルだけのPart 1の演奏は,普通の人にとってはなかなかハードルが高い音楽だと思う。一方,私のようなSteve Reich好きにとっては,この微妙にリズムがずれていくミニマルな感覚が心地よくさえ思えてしまうのだ。それでもPart 2 に転じてマリンバでの演奏になると,いかにもReich的なサウンドと言うべき響きに更に心地よさが増す。

この2枚組には"Drumming"に加えて"Six Pianos"と"Music for Mallet Instruments, Voices and Organ"も併録されており,全編を聞き通すには2時間以上を要するので,なかなかプレイバック頻度は高まらないのも事実だ。しかし,久々に聞いてみて,ミニマル音楽の「聴き流し」の快感を覚えた私であった。仕事の邪魔には一切ならないところはアンビエントと言ってもよい。いずれにしても,やっぱり私はReichの音楽が好きなのねぇと再確認。

因みに"Drumming"は,Nonesuchレーベルからもリリースされているが,そちらでは演奏時間が57分弱と大幅に短くなっているのはどういう訳かはわからない(CD1枚に収録するため説もあり)。まぁそっちも"Phases"というボックス・セットに入っているので,そのうち聞いてみることにしよう。

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2023年6月 2日 (金)

Mompouのピアノ曲を改めて聞く。いいねぇ。

_20230601 "Piano Music by Federico Mompou" Stephen Hough (Hyperion)

以前,このブログでStephen Houghが弾くMompouの「沈黙の音楽(ひそやかな音楽)」を取り上げた時に,その時の気分にマッチするピアノの響きが心地よく,90年代に同じStephen Houghが吹き込んだMompouのアルバムを発注したと書いた(その時の記事はこちら)。その時にはアルバムを現代音楽のカテゴリーに入れたのだが,所謂現代音楽が持つ小難しさは皆無であり,実に美しいピアノの響きを楽しめたのだが,このアルバムも同様である。

本作においてはMompouのピアノ曲でも比較的有名な曲を集めているようだが,選ばれたのが「歌と踊り」,「前奏曲集」,「魅惑」,「3つの変奏曲」,「対話」,「風景」等である。聞いていて思うのは,スペインの作曲家でありながら,スペイン風味というのがほとんど感じられないということだろうか。そしてアブストラクトな感覚もなく,「ドビュッシーの後継者」と評されたことも頷ける作風だと思えた。

それを弾いたStephen Houghの演奏はグラモフォン賞を受賞し,更にはペンギン・ガイドの最高評価であるRosetteに叙せられていることからしても,名盤の誉れ高いものというのはわかる。一方,私が知らないだけという話もあるが,いかんせんFederico Mompou自体がそれほどメジャーな存在ではない(だろう)から,私の周りではこのアルバムについて語る人を見たことはなかった。しかし,これだけ優れたピアノ音楽を聞かせてもらえば,実に幸せって感じで,改めてまだまだ修行が足りないと思ってしまった私である。ということで喜んで星★★★★★としよう。いずれにしても,Stephen Houghの「沈黙の音楽」と本作は長く聞くに値するアルバムだと言いたい。

Recorded on July 22 and 23, 1996

Personnel: Stephen Hough(p)

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2023年5月26日 (金)

今回も素晴らしい出来のZsófia BorosのECM第3作。

_20230522 "El Último Aliento" Zsófia Boros (ECM New Series)

Zsófia BorosがECMから最初のアルバム,"En Otra Parte"をリリースして今年で10年になるが,10年目にして3作目というのは寡作ってことになると思うが,前作"Local Objects"からも7年近くが経過しているというのには,我ながら驚いてしまった。現代の曲を専門的に取り上げながら,実に美しい響きを提示してきたZsófia Borosのギターはここでも全く変わりがない。

今回のテーマに据えたのはアルゼンチンの作曲家の曲と,前作でも取り上げたフランスのMathias Duplessyの曲であるが,紡がれるアルペジオを同期するメロディ・ラインの美しい曲ばかりで,今回も難解さはゼロである。それでも演奏するのは結構難しそうだなぁとは思える曲を,完璧に弾きこなしている。これまでのアルバムでもそうだったが,よくぞこうした曲を見出してくるものだと思わざるをえない。この目配りの素晴らしさがECM New Seriesとマッチしていることは言うまでもなく,全2作に続いて大いに楽しめる作品となった。静謐でありながら,実に刺激的なギター・アルバム。

第1作の驚きや衝撃は薄れたとしても,アルバムのクォリティは極めて高い。本当に素晴らしいギタリストである。星★★★★☆。

Recorded in March and April, 2022

Personnel: Zsófia Boros(g)

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2023年3月31日 (金)

Mompouのピアノ曲:菜種梅雨にはぴったりだった。

_20230326-2 "Federico Mompou: Música Callada" Stephen Hough(Hyperion)

先日の菜種梅雨のような陽気で雨の日が多いと,私はついつい現代音楽に手が伸びてしまう。それは先日取り上げたArvo Pärtの「鏡の中の鏡」でも同じだったのだが,今回はMompouの「沈黙の音楽(aka ひそやかな音楽)」である。私はこの曲の演奏はECM New SeriesのHerbert Henckのものを保有しているのだから,また敢えて買う必要もないだろうと言われてしまえばその通りなのだが,別のCDとの併せ買いで購入したもの。ECMとHyperionでは随分エンジニアリングも違うだろうってこともあった。

Stephen Houghというピアニストは不勉強にして初めて聞いたが,英国ではKnightに叙せられているので,Sir Stephen Houghと呼ばねばならないな(笑)。それはさておき,Stephen Houghは90年代にMompouのアルバムをリリースしているので,約四半世紀を経てこのMompouの代表作と言われているこの4部作をレコーディングすることは,ある意味必然だったのかもしれない。

この「沈黙の音楽」はタイトル通り,静寂感に満ちた音楽であり,私はこういう音楽を聞いていると雨音とシンクロさせたくなってしまうのだ。我ながらワンパターンな思考回路だと思いつつ,そういう感覚をご理解頂ける方にご理解頂ければよい。もちろん,天候に関わりなく,こういう音楽を聞きたくなることはあるものの,コンテンポラリーなピアノ曲というのは私にとっては雨音とこそフィットするっていう感覚だ。もちろん,それは豪雨ではなく,しとしとと降る雨の音でなければならないのだが。

音楽的にどうこうとか,技巧的にどうこうとかを語る資格は私にはないが,自分が過ごす環境や時間とのマッチング度合いを考えると,これはArvo Pärtの音楽同様,私にとって精神衛生上大変良い効果を持つ音楽だと言いたい。この演奏がよかったので,90年代にStephen Houghが録音したMompouのアルバムも発注してしまった私であった。

もはや自分の嗜好へのフィット感だけでの評価となるが,こういう音楽を必要とすることがあると痛切に感じることもあって,星★★★★★だ。結局こういう音楽が好きなのだ。

Recorded on October 22-24, 2020

Personnel: Stephen Hough(p)

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2023年3月29日 (水)

Arvo Pärtの「鏡の中の鏡」:この上なく美しい響き。夢見心地とはこれのことか。

_20230326 "Arvo Pärt: Speigel im Spiegel" Benjamin Hudson / Sebastian Klinger / Jürgen Kruse(Brilliant Classics)

ECMの総帥,Manfred EicherがECM New Seriesを立ち上げたのはエストニアの作曲家,Arvo Pärtの音楽を世に広めるためだったという話もあるが,そのArvo Pärtの邦題「鏡の中の鏡」を聞いていると,まさにEicherの指向と合致しているよなぁって気がしてくる。

一般の現代音楽に感じられる難解さなんてものは皆無であり,ミニマリズムの中から浮き上がる美的な感覚は,もはやアンビエント・ミュージックと呼びたくなる。この「鏡の中の鏡」はその後もさまざまな楽器編成で連作として発表されているが,ここに収められたものが初出の編成(ヴァイオリン+ピアノ,ヴィオラ+ピアノ,チェロ+ピアノ)ということになるようだ。それに"Für Alina"ほかの3曲を加えた全6曲には心地よい響きだけが収められていると言ってよく,まさに夢見心地になるような音楽なのだ。

音楽に刺激を求めるリスナーにとっては全く無縁の音楽と言えるだろうが,私にとっては精神衛生上実に好ましい音である。心がささくれ立った時に確実に役立つと思える美的音源。素晴らしい。星★★★★★。

Personnel: Benjamin Hudson(vln, vla), Sebastian Klinger(cello), Jürgen Kruse(p)

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2023年3月19日 (日)

雨の日には現代音楽なのだ(笑)。

_20230318「近藤譲:線の音楽」Various Artists(ALM)

ライナーの冒頭に近藤譲が「これは拒絶の音楽を探し求める旅のひとつの道程である。」なんて書いていて,そこからしてハードルが上がりそうだが,私が現代音楽を聞く場合,それは一種のアンビエント・ミュージックみたいになってしまう部分がある。つまり,私にとっては拒絶の真逆みたいな感じで現代音楽に接することが多い,と言うか,私が好んで聞く現代音楽はピアノ音楽がほとんどであり,そこには激しさよりも静謐さが勝っていることがほとんどなのだ。

近藤譲は更に『「線の音楽」は,切目なく続く際限のない音の列といった形体をもち,常に或種の単純さに取り巻かれている。」なんて書いていて,正直言って実に小難しいのだが,私にとってはここでの音列に身を委ねればいいように思ってしまう。

私にとってこういう音楽を聞くのに適しているのは大抵が雨の日って感じなのだが,今回これを聞いたのも雨の日の午後であった。家人が出掛けている間に料理を作りながら,こういう音楽をプレイバックしている私も変態だと思うが,ここでの楽器群の響きが何とも心地よく感じてしまうのである。

ここには複数のミュージシャンが複数の編成で演奏を行っているが,特に面白いと思ったのは篠崎史子がハープの多重録音を行った"Orient Orientation"であった。あたかもプリペアド・ピアノのようにさえ響くハープの音色というのが何ともユニーク。また,バンジョー,ギター2本,大正琴,ハープにハーモニカという何とも奇妙な編成の"Pass"なんかは,普通の人が聞いたら何じゃこれは?としか思えない響きだが,これまた聞いたことがないって感じなのだ。でも料理の邪魔にはならない(爆)。そうは言いつつ,アルバムとしては後半に向かうほど,ハードルは高くなるというところ。

全編を通して,何とも不思議な響きに包まれたアルバムではあるが,こういうのもたまに聞きたくなってしまうという私を不思議に感じる人がいても,まぁそれは仕方ないだろう。でも結局は何だかんだ言って好きなんだよねぇ。

Personnel: 高橋悠治(p), 篠﨑史子(harp),小泉浩(fl),山口恭範(marimba, hca),高橋アキ(p,大正琴,el-p),佐藤紀雄(bjo),志村菊夫(g),曽我傑(g),川合良一(cond),篠﨑功子(vla),篠﨑正嗣(vla),永島義男(b)

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2022年12月29日 (木)

2022年の回顧:音楽編(その1:ジャズ以外)

2022-albums1

今年の回顧,音楽編の第1回である。私の場合,全方位ではありながら,結構偏った音楽の聞き方をしているが,そうした中で私が感銘を受けたアルバムを挙げておこう。今回はジャズ以外の音楽からのチョイス。昨今は購入する前にストリーミングで大体はチェックできるから,無駄遣いは減ってはいると思うが,そうした中でも最も印象に残ったアルバムということになる。

今年,私が一聴した瞬間から素晴らしいと思っていたのがAoife O’Donovanの"Age of Apathy"であった。Joe Henryがプロデュースした本作は,まさに私にとっての「どストライク」であった。そもそもJoe Henryへの信頼度が基本的に高い私であるが,やはりこのプロデュース力は素晴らしいと思えたし,それに応えたAoife O’Donovanも見事であった。当ブログで本作を取り上げた際に私は「清新な音」と書いているが,リモートで制作されたとは思えない素晴らしいアルバムだったと思う。

そして,アメリカン・ロック好きの私としては,こういう音を出されるだけで全面的にOKだと思えてしまったのが,Taj Mahal とRy Cooderの"Get on Board"であった。これぞ渋さの極致,歳を取っても枯れることない彼らの音楽に触れて,還暦過ぎのオヤジである私ももっと頑張れるのではないかと思ってしまったのである。

アメリカン・ロック好きにとって,もう一枚忘れられないのがBonnie Raittの"Just Like That..."であった。ほぼ固定メンツのバンド・スタイルでレコーディングしてしまうところも現役感に満ちているが,こちらの想像をはるかに上回る出来のよさだったのには驚かされた。正直,これをストリーミングで済ませようとしていた自分を恥じたアルバム。それぐらい素晴らしいのだ。

そして最後は,Larry KleinがプロデュースしたLeonard Cohenトリビュート作である"Here It Is: A Tribute to Leonard Cohen"である。これぞ見事なプロダクションと言わざるをえない逸品であり,多様なミュージシャンを招きつつ,一本筋が通った優れたトリビュート作品となっていた。Larry Klein,さすがである。これはジャズ編に入れる価値もあるが,歌手の多様性を重視してこちらに入れた。

ほかにもあれはどうした,これはどうしたというものもあるが,私の中ではこれらのアルバムへのシンパシーが非常に強いということにしておこう。付け加えるとすれば,Steve Reichの2作品,そしてECM New Seriesでの現代音楽(+α)作品も大いに楽しんだ私であった。

そして今年残念だったのがChristine McVieの突然の訃報。彼女のソロ・キャリアからのリメイクも施したベスト盤である"Songbird: A Solo Collection"を聞いて,改めて追悼したいと思う。

Christine-mcvie-songbird

2022年11月18日 (金)

当たり前の話だが,ReichはどうやってもReichであったというアルバム(笑)。

_20221117 "Steve Reich: Runner / Music for Ensemble and Orchestra" Susanna Mälkki / Los Angeles Philharmonic (Nonesuch)

Steve Reichの音楽は今年"Reich/Richter"がリリースされて,それも素晴らしい出来だと思ったが,またも新作がNonesuchからリリースされた。こちらも100%Reichらしさに溢れていて,Reichの音楽が好きな人間にとってはたまらない作品と言ってよい。

このアルバムには表題の通り,2曲が収められているが,先に初演されたのが"Runner"で,"Music for Ensemble and Orchestra"は編成を拡大したそのヴァリエーションと捉えることも可能だと思えるほど,曲のコンセプトは非常に似通っている,というかほぼ同じである。♩=100で,曲名も16分音符~8分音符~4分音符~8分音符~16分音符と全く同じであり,並びも全く一緒なのだから,そう考えてよいだろう。

収録時間は2曲で35分強と短いものだが,あっという間に時間が経過していき,何度でもリピートしてしまうのが,これまたReichのReichたる所以である。

こういう音楽に評価は不要って気もするが,ついつい星も甘くなり今回も星★★★★★。

Recorded on November 1-4, 2018 and on November 6-7

Personnel: Susanna Mälkki(cond),Los Angeles Philharmonic

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