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カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2026年8月26日 (水)

有栖川有栖の旧作「スウェーデン館の謎」を読んだが,今まで読んだ火村シリーズでは一番面白くなかった。

Photo_20260822084001 「スウェーデン館の謎」有栖川有栖(講談社文庫)

お馴染み火村英生~作家アリスシリーズの旧作である。これもクロゼットに埋もれていたものを救出(笑)して読んだもの。いつ買ったんだよ!って感じの本を気まぐれで取り出してきた。私は有栖川有栖の作品をそんなに読んでいる訳ではないが,正直言ってこれまで読んだ中で,これが一番面白くなかったという感覚だ。

この手の小説に関しては内容を書けばネタバレになってしまうので,それは控えるとしても,この結末は...という感じが強かった。そもそも犯罪者科学者,火村英生が登場するまでの前置きが長過ぎたという感が否めない。謎解きもイマイチ感があるしなぁ。この謎解きの難しさは「視覚的」要素がないとそうなのかなぁ...,あるいはわかりにくいという感が強いところだろう。

まぁエンタテインメントとしてはそこそこ面白くは読めるとしても,今まで読んだ有栖川有栖ので,ページをめくるスピードが一番上がらなかったというのが実感。星★★★。

本作へのリンクはこちら。

2026年8月11日 (火)

東野圭吾の遺作,「永遠の記憶」を読了。死期を悟って書いたとしか思えない。

Photo_20260810213401「永遠の記憶」東野圭吾(文藝春秋)

先日世を去った東野圭吾の最新作にして遺作と思われる本作を読了した。この本を読んでいると,主題の通り,東野圭吾は自らの死期を悟っていたのではないかと思えてならない。本作の第一部は「履歴る:たどる」,そして第二部は「終活る:ふりかえる」という副題なのがそもそも象徴的に思える。

そして,ネタバレになるので詳しく書くことはできないが,この物語の結末が「そう来るか...」と思わせる展開であり,自分の著作に落とし前をつけようとしていると感じさせる部分があった。読み始めてあっという間に読了してしまったが,正直なところ,ストーリー展開にはケチをつけようと思えばつけられると思いつつ,最後まで見事なストーリーテリング力であったことは認めなければなるまい。

ECサイトでも,近所の書店では売り切れになっていたし,相当なペースで売れているようだが,つくづく惜しい人を亡くしたと感じさせる一作であった。

改めてR.I.P.

本作へのリンクはこちら。

2026年8月 4日 (火)

辻村深月の「ファイア・ドーム」を読了。

Photo_20260730084801

「ファイア・ドーム」辻村深月(小学館)

椎間板ヘルニアの手術を受けた後の湯治に行った際に,滞在先の部屋でやることもないので,読み始めたこの小説をようやく読了した。辻村深月の著作を読むのはこれが初めてだが,上下巻2冊の大作ながら,面白く読めたことができた。

地方都市における犯罪と,それに巻き込まれた家族にまつわる「噂」による悲劇の増幅というのがテーマにありつつ,登場する犯罪者が同情の余地のない異常さを持つという描き方がされ,それを取り巻く登場人物は数少ない例外を除けば基本的に善人という「善悪の対比」が明確であった。ここで描かれた根拠のない「噂」がまことしやかに語られるのは,現在のSNSにおけるフェイク情報や誹謗中傷の流布に対するアンチテーゼという気もするが,ストーリーにおける「噂」の描き方や捉えられ方はやや極端という指摘も可能のように思う。ただ,人間心理としてはゴシップが人の注意を惹いてしまうという現実を踏まえれば,確かにこういうこともあるだろうとは思わせるから,そこはよしとしよう。

この小説には主要な登場人物が複数いるから,多面的な心理の描き方をする必要があったこともあってのこのボリュームという気もするが,もう少し話は圧縮できたようにも思える。しかしこれだけのボリュームでも読ませてしまうのが辻村深月の筆力ってところだろう。ミステリーとしてよりも心理的なドラマとして読む方がしっくりくる小説だと思う。星★★★★。

本作へのリンクはこちら。

2026年7月28日 (火)

追悼,東野圭吾。

Photo_20260727170201 本来は別の記事をアップするつもりだったのだが,東野圭吾の訃報に接して方針変更である。大腸がんだったそうだ。68歳というのは若過ぎる死である。

私は何だかんだと言って東野圭吾に関する記事をこのブログにもアップしてきたが,正直濫作気味の中で,作品には出来不出来があると感じていた。なので新作が出れば何でも買うという感じではなかったが,ガリレオや加賀恭一郎シリーズは例外的に買い続けていた。間もなくガリレオ・シリーズの新作「永遠の記憶」の発売と映画化された「白鳥とコウモリ」の公開を控える中での訃報には驚きを隠せない。

全部読んでいる訳ではないので異論もあろうが,私が読んだ東野圭吾の作品で評価しているのは「容疑者Xの献身」,「新参者」,そして「白鳥とコウモリ」あたり。それ以外の作品もストーリーテリングの上手さは認めつつも,やや性急な展開を示す感があるというのが正直な感想であった。しかし,文句を言いつつも読んでいるのだから,相応の魅力を持った作家だったと思っている。

エンタテインメントという観点で「読ませる作家」を一人失ったのは誠に残念だ。

R.I.P.

2026年7月14日 (火)

村上春樹の新作「夏帆」を読了。

Photo_20260713071901 「夏帆 The Tale of KAHO」村上春樹(新潮社)

「街とその不確かな壁」以来3年ぶりとなる村上春樹の新作である。私は昔から村上春樹のファンであるが,発売日深夜に書店店頭で騒ぐ熱狂的「ハルキスト」とは異なる。出れば必ず読むが,一刻も早くとまでは思っていない。そういうスタンスで,今回も新作をゲットし,この度読了である。

まぁいつもながらの村上春樹であり,二重構造の寓話的なストーリーテリングは相変わらずで,今回もそうした村上春樹節を大いに楽しんだことは間違いない。今回もシュールと言えばシュールだが,話の展開は前作よりはわかりやすいというところだろう。新小岩の叔父の人物造形は結構笑えるし...。

「新潮」への連載により発表済みの4作の短中編を合体して,一本の長編に仕立てるというのは村上春樹には珍しいパターンだが,話の展開に破綻はない。改題,改稿も施しているので,それなりにいじっている部分はあるかもしれないが,話の展開に齟齬はなかった。若干「守護天使」については唐突感があるようにも思えたが,まぁ目をつぶれるレベルと言えばいいだろう。それがファンの弱みってところだな。

傑作という感じではないが,大病を患ったらしい村上春樹のリハビリテーション的一作と思ってもよいかもしれない。それでも十分に楽しんだ私であった。星★★★★☆。

本作へのリンクはこちら。

2026年6月25日 (木)

「タイム・アフター・タイム」:吉田修一の作風の多様さに改めて感心する。

Photo_20260623071101「タイム・アフター・タイム」吉田修一(幻冬舎)

映画「国宝」のヒットで,原作も大いに売れた吉田修一の新作である。日経に連載されていたのは知っていたが,新聞の連載小説を読み続けるのはなかなか難しいこともあり,単行本が出るまで待っていた私である。

そして読みだすとこれが止まらなくなってしまい,あっという間に読了してしまった。甘酸っぱくもほろ苦い青春時代と現在の生活の時間軸が交錯するこのストーリーには,自分の人生における過去と現在を投影してしまう読者も多いのではないかと思える作品であった。

そもそも吉田修一は様々な作風を併せ持つ作家であり,どこがこの人の本質なのかつかみどころがないと言えばその通りだ。例えば本作は「横道世之介」シリーズと通じる部分もあるとは言え,ずっとほろ苦い。一方,「悪人」や「さよなら渓谷」のような作品の持つ一種の暗さとは異なる。そして歌舞伎界を描いた「国宝」とも全く違う。もはやカメレオン作家とでも言いたくなるのだが,本作においてもそのストーリーテリングにやられてしまったのであった。

わたしがこの本にはまってしまったのは全く同じではないとしても,自分の「過去と現在」とついつい比べてしまうところがあったからかもしれない。甚だ青臭い言い方ではあるが,人生においては様々な恋愛模様や仕事上の挫折,更には心の再生みたいなことは存在するよな,なんて思ってしまったのである。ついつい自分に当てはめながら,あんなこと,こんなことを思い出しつつ読み進めてしまったというのが実感だ。

吉田修一は本作について「負と思うことも肯定できる、それが書けた作品です」と語っているが,まさにそういう感じの作品であり,読後の余韻に浸りたいと思えた小説であった。やや唐突な展開もあるが,こういうストーリーが好きな私はやっぱり年齢を重ねても青臭いと思いつつ,星★★★★☆としたい。

本作へのリンクはこちら。

2026年6月13日 (土)

映画公開目前の「黒牢城」の原作を読了。

Photo_20260611075901 「黒牢城」米澤穂信(角川文庫)

一時期店頭で非常に見つけにくくなっていたこの本である。本作の映画化を受けてメディア戦略を打つなら,もう少しやりようもあったのではないかと思えるが,何であんなに品薄だったのかが解せない。

それはさておきである。黒澤清監督のもと,映画化され,間もなく公開となる本作は直木賞ほか,さまざまな賞を総なめにした作品であった。私は時代劇好きということもあり,映画も見に行くつもりで,予習も兼ねてこの本を読んだ。

現在大河ドラマで放送中の「豊臣兄弟!」にも描かれる荒木村重の謀反,籠城と黒田官兵衛との関係性を軸に戦国時代を背景にした本格ミステリーというのがまずユニーク。文体としては少々読みづらい部分もあるもの,舞台設定やストーリーテリングも含めて,本作が提示した取り組みが評価されたものと思う。

最後の最後まで謎に満ちている中,その謎の回収はきっちり行われていると思うが,この小説を読んでいて,これを映画化する場合,脚色が難しそうだというところであった。これは映画を見てから判断したいが,演出以上に脚色が映画の成否に影響しそうに思えた。

いずれにしても,映画の公開を楽しみに待つことにしよう。

本作へのリンクはこちら。

2025年12月30日 (火)

年末年始休みにクロゼットに埋もれた本を読む。

Photo_20251224181801 「鍵の掛かった男」有栖川有栖(幻冬舎文庫)

買ったきり,クロゼットの肥やしと化している本なんていくらでもあるのだが,今回の休みは特にやることもないので,こうした本を救出(笑)するかってことで取り出したのがこの本。

お馴染み火村英生と有栖川有栖(アリス)のコンビが活躍するシリーズなのだが,この本が結構長い。あとがきまで含めると700ページ越えという長編であったが,そこは有栖川有栖,ちゃんと読ませる。これは本格推理というより,地道な情報収集から大団円を迎えるというものなので,いつもの火村シリーズとはちょっと趣を異にし,一種,警察小説的と言ってもいいかもしれない。そして本来の主役たる火村英生が活躍を始めるのは中盤過ぎで,それまではアリスの足を使った情報収集が中心に描かれる。

大阪の中之島が舞台ということもあり,中之島ってそんな感じだったかなぁなんて思いながら読んでいたが,私が関西在住していた頃とは中之島も大きく変貌したことは承知していても,何とも懐かしい地名が出てくると思いながら読み進めたのであった。

ストーリーを語るのは野暮なので控えるが,まぁ少々この筋運びには少々無理があると思わせる部分がない訳ではない。それでもちゃんと読ませるところは有栖川有栖の実力発揮ってところだろう。そして最後は泣かせてくれるしねぇ。

ということで,休みをゆったり過ごすには丁度よい読み物だったと思う。星★★★★。さて,次は何を救出するかねぇ。と言いつつ,新しい本も買っているので,まずはそっちから片付けるべきだろうなぁ。

本書へのリンクはこちら。

2025年12月16日 (火)

「このミス」とかのランキングは信用していないが,これはなかなかの出来と思えた「失われた貌」。

Photo_20251213111901 「失われた貌」櫻田智也(新潮社)

私は以前は「このミステリーがすごい!」とかのランキングにつられて本を買っていたこともあるが,どうも自分の趣味とは全く合わないと思わされる経験が続いて,もはやこの手のランキングは信用しないことにしていたのだが,先日本屋に立ち寄ったついでに別の小説とこの本を入手してきたもの。単なる気まぐれである(笑)。それを出張の道すがら+αで読了した。

「このミス」とかで評価されている本のどこが私の趣味に合わなかったかと言えば,無理などんでん返しを仕掛けるギミックみたいなところがあって,「それだけ?」と思わされるようなものをつかまされたと感じたからだが,今年高く評価されているこの本は,いろいろ伏線は張っているものの,純粋な警察小説としても読めるところがよかったと思う。

ストーリーとしてはなかなかよく出来ているとは思えるし,相応に読みごたえもあったが,伏線回収に腐心した感じもある。だが,つまらないギミックを弄した訳ではないので,この本は私としてはまだ真っ当と感じた。脇役で出てくるバーのマスターがいい味を出していると思えるのもよかった。星★★★★。

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2025年11月17日 (月)

出張中に見た映画と読んでいた本の話。

Movies-2025_11

今回の出張のように長いフライトだと,ついつい映画を見てしまう私だが,往路は到着後あまり時間を置かずに仕事があるということで,控えめに成田~アブダビ間で2本,復路は時差ボケのピークということもあり,あまり見るつもりはなかったのだが,結局ワルシャワ~アブダビ間で2本,アブダビ~成田間で2本の都合4本,往復で6本だから,以前出張が多かった時とあまり変わらなかったというのが実態(笑)。今回見たのが次の6本。「パピヨン」,「スーパーマン」,「バレリーナ」,「サンダーボルツ*」,「裸の銃(ガン)を持つ男 」,「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」。

それぞれに感想はあるが,「パピヨン」は後にリメイクもされているが,73年に製作されたこの映画を見たのは初めてであった。当時,Steve McQueenとDustin Hoffmanの共演が大きな話題になった記憶があるが,正直言ってしまえば,なぜこの映画を評価する人が多いのか全く理解できない,私にとっては冗長な映画であった。6本の中での最低作は「裸の銃(ガン)を持つ男 」。彼我の笑いのセンスの違いもあるとしてもギャグはすべっているし,あまりのくだらなさに辟易としていた。途中でやめるというオプションもあったが,そのうち改善するのではないかと期待した私がバカだった(爆)。Liam Neesonには出る映画はもう少し選べよと言いたくなるような駄作で時間潰しにもならんと思えた。

一方で意外に面白いと思えたのが「サンダーボルツ*」。私はMarvelの映画に思い入れはないが,エンタテインメントとしてどうかという観点で,私が想定したよりは面白かったってところだ。まぁ話に無理はあるのだが,最後はやり過ぎ感があった「アベンジャーズ」シリーズよりはいいんじゃないかと思えた。そのほかの3本は私がどうこう言うまでもないだろうが,「バレリーナ」は劇中でいったい何人死んでいるんだと数えたくなると思ってしまった(苦笑)。

Photo_20251116073401

因みに往路ではもう少し映画を見ていてもよさそうだが,ワルシャワ~アブダビ間は到着後の仕事に備え,休息に重きを置いていたこともあり,映画を見る代わりに読んでいた本が川本三郎の「サスペンス映画 ここにあり」(平凡社)であった。私が昨今Amazon Primeで見る往時の白黒映画をチョイスする際に参考にしているのが川本三郎と逢坂剛の対談本「さらば愛しきサスペンス映画」なのだが,「サスペンス映画 ここにあり」はサスペンス映画55本についての更に細かい論評ということで,450ページを越える大冊ながら,結構なページ数を読み進めてしまった。この本,2015年発行にもかかわらず,もはや入手が難しく,私はネットでプレミア付きの値段で購入したものだが,入手の甲斐もあったってものだ。しかし探すところを探せば定価で買えた...。いずれにしても今後の白黒映画鑑賞の手引きになること必定(笑)。

ということで,明日からはまた音楽関係の記事に移行することにしよう。

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