「スタッフロール」:久々に小説を読んだが,映画好きにこそこの本は受けるだろう。
7/20に発表された直木賞では受賞を逃したが,舞台が映画界ということもあって,私はこの本を購入していたのだが,読了するのには時間が掛かってしまった。前半は特殊造形師のマチルダ,後半はCGクリエイターのヴィヴィアンが主役となるが,この二人や他の登場人物が交錯していくところなどは,読んでいて,映画を観ているようだと思えた作品。
実在の人物の名前や映画のタイトルもぽんぽん飛び出してきて,長年の映画好きにとっては,郷愁さえ誘う部分がある一方,CGや特殊技術については,専門用語連発で,映画に関心がない読者にとっては,結構ハードルを上げてしまったようにも思える。
ストーリーはかなり劇的と言ってよいのだが,その劇的な部分を作り出すために,ストーリーは強引な部分もあるところで,直木賞を逃したってところかもしれないが,逆に言えば,映画を好きな人間にとっては,小説という枠を越えて楽しめる部分もあるように思える。
そして,タイトルの「スタッフロール」という部分がエンディングに向けて,これまたなるほどと思わせる展開を示し,映画人にとってのスタッフロールの重要性を改めて感じてしまった。だから映画はエンディング・ロールまで全部見るのが礼儀ってことである。
ということで,ストーリーは完璧ではないとしても,実に面白く読めた小説であった。星★★★★。
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