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2022年のおすすめ作

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カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2024年1月 3日 (水)

年末年始に読んだ姫川玲子シリーズ最新作。新たなキャラ登場でシリーズも安泰?(笑)但し私としては文句ありだが。

Photo_20231231164301 「マリスアングル」誉田哲也(光文社)

なんだかんだと言って姫川玲子シリーズを読んでいる私である。昨年暮れに久々のこの長編新作が出て,読み始めてはいたものの,ちょっと時間が経ってしまったので,改めて年末年始で音楽を聴きながら読んだのであった。

ストーリーとしてはなるほどと思わせる部分もあるが,今回の作品におけるポイントは,新たなるキャラクターとして登場する魚住久江巡査部長だろう。明らかに姫川玲子と異なる造形で,今後,この二人の対比でストーリーを創造できそうだと思ってしまう。そうした部分も含めて今回も小説として面白く読めたのは否定しない。

だが,私が気になったのは誉田哲也の明らかな右翼的な言説であった。私がリベラルだからということもあるだろうが,あまりにも露骨なある意味「ネトウヨ」もどきとでも言いたくなるシチュエーション設定や思想的な表現は,姫川玲子シリーズがいくら好きでも,さすがに行き過ぎだと感じさせる部分があった。エンタテインメントにこうしたイデオロギー的なところが入り込んできてもろくなことはないと言っておこう。

誉田哲也がどのような思想に与しようと彼の勝手だし,私はどうこういう資格はないが,エンタテイメント小説というメディアを使って,自分の考える方向に読者を誘導しようとするのには同調できない。それこそこの小説のタイトルの言うところの「悪意に満ちたアングル」を自分でやっているということではないのか。はっきり言って,ストーリーテリングはよりニュートラルな視点で創作してこそ,私は価値が高まると思う。ストーリーには大して文句はないが,そうした批判も含めて星★★★。

姫川玲子シリーズのストーリーが次も同じように展開されるのだったら,その次はない(きっぱり)。

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2023年12月21日 (木)

「リマリックのブラッド・メルドー」という書籍について。

Photo_20231219180901「リマリックのブラッド・メルドー:<ポスト・ジャズからの視点>I」牧野直也(アルテスパブリッシング)

先日,書店をうろついていて,この本が目に入ってしまった。帯には「ジャズ空間の拡張に挑み続けるピアニスト,ブラッド・メルドーの軌跡を軸に現代ジャズの状況を読み解く!」とあって,ほぉ~と声を発し(笑),中身もチェックせず購入した私である。この本,実は2017年の半ばに発売されたものであり,新刊でも何でもないことには後から気づいたのであった。

帯にある「軸に」というのが実は曲者で,この本,Brad Mehldauには相応のページ数は割いているが,Brad Mehldauに関する考察から逸脱して余談に走るページの多さがどうも納得がいかない。そもそもやたらに小難しい表現を用いる序論からしてこの本に必要なのかと思わせるが,著者は序論を読み飛ばして「第1章から読み始めてもらってもまったく問題ない」なんてするところもいかがなものかと思ってしまう。そもそも裏帯に書いてある次のような表現を見てもらえば,私の言いたいことはわかるはずだ。

『ブラッド・メルドーはよく耐えている。かつてセシル・テイラーやコルトレーンたちが理路を進もうとした果てに踏み越えていったジャズ本来の「語法」,その共通言語としてのフレーズという「構築物の枠組み」の中にとどまって,メルドーは原初的衝動へ踏み出すことなく耐えている。そして,半歩あるいは一歩,前へにじり出て,その枠組みを内側から拡張している。これは決して小さなことではない。』

何のこっちゃ?(爆) 同じことはもっとシンプルな表現で言えそうなものだが,意図的に小難しくしているとしか思えない。

それはさておき,著者のBrad Mehldauに対する意識の根底にはArt of Trio時代のトリオがまずあって,おそらくそれに加えて,Fresh Sound New Talentでのアルバム群へのシンパシーが感じられる。そして,ソロ・ピアノについてはライブ盤を「コンサート」として捉え,トリオ演奏以上には評価しないというスタンスが表れている。しかし,この本が発売された頃には既にリリースされていたあの超ド級"10 Years Solo Live"に言及しないのはあまりにも中途半端だろう。執筆のタイミングと違ったということはあるとしても,出版までには間に合ったはずで,明らかに聞くべき音を聞かず,取るべき対応を取っていないとしか言いようがないのだ。

音楽は個人の好みが反映するものだから,好き嫌いがあることは別に否定しない。その一方で"Largo"や"Taming the Dragon"を手放しで褒めるような感覚を与えるのは著者の単なる音楽的嗜好だろうと言いたくなるのだ。しかも後者に関してはMark Giulianaを論じたいのかと思えるような感じなのだ。

ということで,私としては余談の多さ,話の逸脱感,Brad Mehldau自身の音楽のカバレッジの半端から全然面白いと思えなかった。結局読んでいて「ふぅ~ん,そうかねぇ...」としかならなかったと言っておこう。どう考えても頭でっかちな本で,こういう本を読んでいると,四谷「いーぐる」の店主,後藤雅洋の,難しいこと一切なしで,ジャズの魅力を的確,適切に伝える能力は実に素晴らしいと思ってしまうのだ。本書の著者,牧野のような書き方をしていれば,ジャズに関心のない人々の心はジャズという音楽からますます離れていくだけだと思える。ということで,全部読んだものの,中身をチェックしてから買うべきだったと反省した私である。

2023年10月18日 (水)

加賀恭一郎シリーズの新作読了。

Photo_20231015122401 「あなたが誰かを殺した」東野圭吾(講談社)

私は東野圭吾の本は何でもかんでも買うという訳ではないが,最近はガリレオと加賀恭一郎のシリーズは出るたびに買っている。この加賀恭一郎のシリーズでは「新参者」が圧倒的によかったと思うが,まぁどれを読んでも安定感のある読み物にはなっていると思う。その新作だが,いつもの加賀恭一郎シリーズに通奏低音のように流れる「人情」的な要素が今回は希薄で,加賀恭一郎がクラシックな名探偵物のような謎解きを行っていくのは,今までと様子が異なるという感じである。加賀恭一郎が本作ではいくら休暇中という設定だからと言って,こんな活動がOKなのかねぇというところから違和感はあるが,まぁそれはよかろう。

あまり細かく書くとネタバレになるので控えるが,さすがにこの設定には無理があるのではないかというのが正直なところであった。もちろん,ページをめくらせるストーリーテリングのうまさは健在ではあるが,登場人物の相関関係にはそんな訳ないだろうと感じていたのも事実。その辺りも減点対象となり,今回は星★★★ぐらいでいいと思う。まぁ面白く読めることは事実だが,やはりこの設定は強引過ぎたな。

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2023年9月27日 (水)

荒唐無稽の極致:伊坂幸太郎の「777」

777

「777(トリプルセブン)」伊坂幸太郎(角川書店)

先日、お彼岸でお墓参りに行った際、行き帰りに気楽に読める本はないかと思い、この本を購入した。 伊坂幸太郎の「マリアビートル」を原作とする「ブレット・トレイン」を配信で観た時も荒唐無稽だと思ったが、この本もシリーズものだけに同様だと分かっていても、暇つぶしとして考えればよしとしよう(と開き直る)。

今回もついていない男、天道虫こと七尾が主人公だが、それにしてもいろんな殺し屋が出てくるものだ。 伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」は非常に面白かったが、このシリーズもエンターテイメントとしては良いとしても,やっぱりこれはやり過ぎ感が強いよなぁと思いながら読んでいた。まぁそれでもあっという間に読了(頁数が少ないってのもあるが)してしまったのには,我ながら呆れてしまった。文句を言いながらやめられないんじゃん!ってところである。

詳しく書くとネタバレになるのでやめておくが,読みながら伊坂幸太郎は「なりすまし」が好きだねぇと思っていた。それはさておき,この小説を映像化した時には,誰をキャスティングするかというのを考えながら読むのも一興かもしれない。それでも決して私の好みのストーリーではないので,星★★★ぐらいにしておこう。

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2023年8月25日 (金)

なかなかユニークな編集方針のMM増刊「モダン・ジャズ」。

Modern-jazz 「モダン・ジャズ」原田和典(ミュージック・マガジン)

先日,お盆でお墓参りに行った際に,帰りの電車で読むものはないかということで,現地の書店で買ったのがこの本であった。ミュージック・マガジンからはアルバム・ディスク・ガイドとして,様々な増刊が出ているが,同社からジャズ関係の本が出たのはこれが初めてかもしれない。著者はマガジン誌ではJポップ/歌謡曲のアルバム・レビューを担当する原田和典だが,この人,もとは「ジャズ批評」の編集長もやっていたし,Blue Note東京ではライブ・レポートをアップしているので,ジャズについて語る資格は十分である。

一方,「モダン・ジャズ」を論じる上で,アナログ盤が似合うとしながら,更には選盤の期間を1945年から68年という時間で区切ったのはなかなかユニークと言えばユニークである。まぁ,確かにモダン・ジャズ黄金期は50~60年代というのは異論の出ないところだとは思うが。

この手のディスク・ガイドを見ていると,大体において「あのレコードはどうした? なんでこれが入っていて,あれが入っていないんだ?」みたいな指摘が出てくるものであり,この本でもなんでこれが...みたいなアルバムもある(例えばPerry RobinsonのSavoy盤とか) 。そもそも「Milesのエレクトリック化前(~68年)」「アメリカ人アーティストによるアメリカ吹き込み」「楽器奏者がリーダー」という編集方針は現在のジャズ・シーンを考えれば,相当偏っていると言われて然るべきものだ。しかし,よくよく考えてみれば,今や私も相応に欧州ジャズを聞くようになったとは言え,往時のジャズ喫茶でプレイバックされて,ついつい反応して,ジャケットを手に取って眺めてしまうというのは,ここで紹介されているようなアルバム群であったようにも思える。

そういう意味で,いかにも「モダン・ジャズ」らしいアルバムが選ばれているとも言える。一般的には敷居が高いと思われがちなジャズも,こういうところを入口にして,自分の好みの音を見つけていけばいいだろう。しかし,自分にフィットする音を見つけて,ジャズの泥沼にはまっていくには,それなりに場数を踏む必要もあるだろうし,そこへ至るハードルはそんなに低くはないだろうなぁ。それでも,往時であればジャズ喫茶に入り浸って触れた音に,今ではストリーミングで触れられるのだからいい時代ではあるのだが。

いずれにしても,私のようなロートルが気楽にパラパラと眺めるには丁度よかったということにしておこう。墓参りには老眼鏡を持って行っておらず,電車の中では結局読めなかったのだが(爆)。

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2023年7月 9日 (日)

「永遠と横道世之介」を読んで思った「あまちゃん」との同質性。

Photo_20230706084201

「永遠と横道世之介」吉田修一(毎日新聞出版)

私はデビュー以来,長年に渡って吉田修一の本を結構読んでいる。この人の本はこの「横道世之介」シリーズのような軽いタッチの作品と,「悪人」のようなヘヴィーでシリアスな作品が混在しているのが特徴だが,私はどっちも評価している。昨今はあまり彼の本も読んでいないが,「横道世之介」シリーズ完結編が出たとあっては,これは読まずにいられない。

私はこの「横道世之介」シリーズが相当好きで,これまでも「横道世之介」,「続 横道世之介(現在は「おかえり横道世之介」と改題)を読んでいるが,続編を読んだ時にこのブログに書いた「登場人物が全て善良に思えるという,性善説に則ったような」感覚は,殺伐とした現代において貴重だし,読後の爽やかさに読書の楽しさをつくづく感じさせてくれる作品であった。それはこの完結編でも一切変わることがなく,前2作を読んだ人ならば,満足すること間違いない。本作を含めたシリーズ全体で星★★★★★としたい。

そして主題に関してであるが,現在再放送されている「あまちゃん」は再ブレークと言ってもよい状態で,毎日のようにネットに情報が上がってきている。かく言う私も毎日録画して見ているクチだが,Blu-rayも持っているんだから,敢えて録画しなくてもいいだろう?というのも尤もな話だ。しかし1日15分という時間を楽しむこと自体には相応の楽しさがあるのも事実なのだ。「あまちゃん」を見ていても,「笑い」の方が若干勝っているとは言え,笑いと涙が同居している部分があるが,私は同じような感覚をこの横道世之介シリーズには感じてしまうのだ。そう言えば,「あまちゃん」の登場人物も基本は善良な人ばかりだ。

今回もくすっとしながらこの本を読んでいる時間の方が多かったが,そこにいい塩梅に泣かせる逸話も入り込んで,これはやっぱり「あまちゃん」と同じだなと思ってしまうのだ。だからどっちも好きなのだってことになるが,改めて第1作から読み返そうかなんてさえ思ってしまった。これも「あまちゃん」再放送が終わったら,Blu-rayで見直そうとするのと同じ感覚だな。

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2023年5月 2日 (火)

ようやく読了:「街とその不確かな壁」。

Photo_20230501101201 「街とその不確かな壁」村上春樹(新潮社)

4/13日に発売されたこの村上春樹の新作を約3週間弱でようやく読了した。つくづく私も本を読むのが遅くなったと思う。それはさておき,この本の出自はいろいろなメディアでも取り上げられているから皆さんご存知だと思うが,私が読み始めて最初に思ったのが,「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」との同質性であった。物語の二重構造がそう思わせたのは間違いないが,現実と「意識下の感情」のようなものが交互に描かれるかたちを取りつつ,最後の第三章まで読むと落とし前がつけられるというかたちは,いかにも村上春樹的であるが,やはりこの物語性は満足度が高い。

アンチ村上春樹の読者からすれば,またいつもの村上春樹じゃねぇか!という批判もあるかもしれない。しかし,この一種の訳のわからなさから感じる感覚こそ,村上春樹の小説の魅力であり,真骨頂だと思う。私は長年,村上春樹の小説を読み続けているが,そのどれにも相応の魅力があるとしても,近年の作品の中ではこの小説が最も楽しめたように思う。喜んで星★★★★★とする。

いずれにしてもほかの小説からも感じられる,村上春樹的パラレルな構造におけるストーリーテリングは,結局「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」から始まったのかもしれないなぁと改めて思った次第。やっぱりあれは傑作だったし,一番好きな作品だったかもしれないと今更ながら思う。

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2023年4月23日 (日)

Brad Mehldauの回顧録が届く。いつ読むんだ?

Formation "Formation: Building a Personal Canon Part One" Brad Mehldau (Equinox)

先日,発注していたBrad Mehldauの回顧録がデリバリーされた。私の英語力も年々衰える中,英語のテキストを読むのは正直きつい。しかし,Brad Mehldauの追っかけとしては読まねばならないので,時間はかかっても取り組むつもりだ(きっぱり)。

しかし,Part Oneってことは次もあるってことだろうから,さっさと読まねば。

その前に村上春樹の新作はようやく6割過ぎってところなので,そっちをさっさと終わらせてから取り組もう。

それにしても,Paul Thomas Andersonが本書への推薦文を寄せているが,どういうつながりなのかなぁ。

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2023年4月16日 (日)

村上春樹の新作を読む前に,川上美映子の「黄色い家」を読んだ。

Sisters-in-yellow 「黄色い家」川上美映子(中央公論新社)

世の中,村上春樹の新作発売で盛り上がっているが,かく言う私も購入済みで読み始めているが,その前に読んだのがこの本であった。川上未映子は村上春樹同様,海外でも評価が高い人だが,近年,めっきり読書量が減った私は,彼女の小説は今まで読んだことがなかったはずだ。まぁ,でもものは試しってことで購入したもの。

これは新聞の連載小説だったらしいが,一種のピカレスク小説でありながら,とにかく,全編を通して「金,カネ,かね」である。ここまで書かなくてもよかろうと思えてしまうぐらいの金への執着が描かれるが,それにより登場人物の精神の破綻も招いてしまうという読んでいて恐ろしくなるような話である。

物語のほとんどを占める回想のストーリーにおいては,主人公がティーンエイジャーだという設定にもげんなりしてしまう(特に私を含めた高齢の)読者が多いのではないかと思わせる。あっという間に読み終えてしまったが,読後にはどっと疲れが出た。読んでいて,これが現実にあれば世も末だと思いつつ,結構あるかもなと思わせる実に恐ろしい小説。星★★★★。

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2022年7月22日 (金)

「スタッフロール」:久々に小説を読んだが,映画好きにこそこの本は受けるだろう。

Photo_20220721184801 「スタッフロール」深緑野分(文藝春秋)

7/20に発表された直木賞では受賞を逃したが,舞台が映画界ということもあって,私はこの本を購入していたのだが,読了するのには時間が掛かってしまった。前半は特殊造形師のマチルダ,後半はCGクリエイターのヴィヴィアンが主役となるが,この二人や他の登場人物が交錯していくところなどは,読んでいて,映画を観ているようだと思えた作品。

実在の人物の名前や映画のタイトルもぽんぽん飛び出してきて,長年の映画好きにとっては,郷愁さえ誘う部分がある一方,CGや特殊技術については,専門用語連発で,映画に関心がない読者にとっては,結構ハードルを上げてしまったようにも思える。

ストーリーはかなり劇的と言ってよいのだが,その劇的な部分を作り出すために,ストーリーは強引な部分もあるところで,直木賞を逃したってところかもしれないが,逆に言えば,映画を好きな人間にとっては,小説という枠を越えて楽しめる部分もあるように思える。

そして,タイトルの「スタッフロール」という部分がエンディングに向けて,これまたなるほどと思わせる展開を示し,映画人にとってのスタッフロールの重要性を改めて感じてしまった。だから映画はエンディング・ロールまで全部見るのが礼儀ってことである。

ということで,ストーリーは完璧ではないとしても,実に面白く読めた小説であった。星★★★★。

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