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カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2024年12月20日 (金)

東野圭吾の「架空犯」読了。

Photo_20241219092301 「架空犯」東野圭吾(幻冬舎)

正直言って昨今の東野圭吾は濫作だ。次から次へと新作が出るが,私としては結構東野圭吾の本は読んでいても,全部読むなんてことはやってられないので,当然取捨選択をすることになるが,本作は結構面白いと思えた「白鳥とコウモリ」のシリーズ作なので読むことにした。

犯罪の発生と,それに続く地道な捜査を描くシークエンスは悪くないと思う。相変わらずページをめくらせるのは上手い東野圭吾だと思わせるのだが,最終局面に向かうプロットには少々無理があるように思えるのは残念だ。詳しくはネタバレになるので書かないが,さすがにそれはないだろうというストーリーには,それまでの本書への好意的な感覚を失わせかねないものだ。一言で言えば「なんじゃ,そりゃ?」なのだ。

「白鳥とコウモリ」について書いた記事にも私は「結末に向けてはやや性急感,悪く言えば取ってつけた感があったように思えるのも事実である。」なんて書いているが,それに近い感覚を本作にも覚えたということは言っておかねばならないだろう。面白く読ませてもらったことは事実だが,結末への展開には疑問もあり,星★★★☆。世の中そんなにうまく行かんだろうと思っていたというのが正直なところ。

それにしても,昨今のAmazonのレビュワーのネタバレのさせ方には問題があるように思える。本作についても,ストーリーの根幹に触れるようなレビューが掲載されているのはさすがにまずいと思える。ネタバレがある場合,米国の映画サイト,IMDbのレビュー欄には"Spoler Alert"という表示が出てくるし,国内の映画サイトにも「ネタバレ」表示がされるが,Amazonはネタバレを含むレビューに関してあまりに無頓着に過ぎる。平気でネタバレを書く方も書く方だと思うが,少なくとも映画や書籍のレビューに関するAmazonの姿勢は批判されて然るべきものと思う。

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2024年11月 7日 (木)

久しぶりに本の話。有栖川有栖の「日本扇の謎」をようやく読了。

Photo_20241103142301 「日本扇の謎」有栖川有栖(講談社)

有栖川有栖の職業作家生活も30周年を迎え,エラリー・クイーンの国名シリーズに倣ったシリーズも同じく30周年となったのを記念して(?),その第11作に選ばれたのが日本である。私は有栖川有栖の国名シリーズはほとんど未読だと思うが,このブログで本作と同じ火村英生シリーズの「捜査線上の夕映え」を取り上げて以来の登場である。

とにかく最近は老眼がきつくなったこともあり,読書に取り組む時間がめっきり減ってしまっているが,たまに思い出したように書籍に関する記事も書いているって感じだ。しかし,読了するのに時間がかかり過ぎなのは何とも情けない限りだ。まぁ本作は二段組だけにページ数に比して時間が仕方ないのだが...。

ストーリーの構成はなかなかよく出来ていると思うが,さすがにそれは...って感じの設定が含まれていると言えなくもない。ちゃんとタイトル通り「扇」は重要な要素として使われているので,そこには文句はない。しかし,一気にストーリーが展開しだすまでにはかなりのページ数を要するところには,少々回りくどさを感じたのも事実であった。そのため,私は中盤までの読書のスピードと後半のスピードには大きな違いがあった。

まぁそれでも安定の火村英生シリーズなので,エンタテインメントとしてはちゃんと読ませると思う。多少甘いかなと思いつつ星★★★★としよう。結局,何だかんだ言いながら火村英生のシリーズが結構好きということだな(笑)。

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2024年4月20日 (土)

レココレの「フュージョン・ベスト100」に思う。

Photo_20240419090601

レコード・コレクターズ誌の2024年5月号に「フュージョン・ベスト100 洋楽編」と題してランキングが掲載されている。執筆陣20名が69年から89年という時間軸においてランダムに選択した30枚をベースにランキングが設定されているので,この100枚というのが本当に「ベスト」なのかというと実は疑問を感じてしまう部分がある。例えばShakatakの"Night Birds"が9位ってのは私からすればありえない評価だ。別にShakatakが悪いという訳ではなく,これがトップ10に位置づけられるアルバムか?ということなのだ。Herbie Hancockも"Mr. Hands"が入っていて,"Flood"じゃないってどういうこと?ってのもある。レココレらしいと言えばレココレと思ってしまうのが,Azymuthが4枚も選ばれていることや,Egberto Gismontiも入っていることか。私はEgberto Gismontiは一度たりともフュージョンだと思ったことはないからこの辺りにも違和感がある。このランキングを参考にアルバムを購入する人もいるだろうから,フュージョンと言い切るのはどうかなと思うチョイスも含まれているのは事実だ。

だったら,自分だったら何を選ぶか考えてみればいいじゃないかということで,試しに私も30枚を選んでみた。69年から89年という縛りさえなければ,絶対入れたいJukkis Uotila Bandのライブ(90年なのだ...)等が入れられないのは残念だが, 私だったらこんな感じかなぁってところで選んでみた。基本,1ミュージシャン1アルバムとしたが,複数選んでいいのなら入れたであろうアルバムが抜けているのは少々残念なので,これも捨てがたいってのも追記しておく。正直1位から30位までランク付けするのは難しいので,かなり適当って気もするが,思い入れも含めてのものと思ってもらえばいいだろう。まぁかなり当たり前のチョイスになってしまった気もするが,ご参考ってことで。Jeff BeckとBrand Xはもっと上でもいいのだが,「フュージョン」ということを考えてちょっと遠慮がちにトップ10から意図的に外した。あれがないぞっ!,こんなのおかしいだろうっ!という声も聞こえてきそうだが,まぁリスナーとしての私の趣味の反映と思って頂ければ。

  1. Miles Davis: Bitches Brew (or Jack Johnson)
  2. Pat Metheny Group: Travels (or Still Life(Talking))
  3. Herbie Hancock: Flood (or Thrust)
  4. David Sanborn: Straight to the Heart
  5. Chick Corea: Return to Forever (or Friends)
  6. Dave Grusin: One of a Kind (or Mountain Dance)
  7. Arista All Stars: Blue Montreux
  8. Bob James & David Sanborn: Double Vision
  9. Weather Report: Black Market (or Heavy Weather)
  10. Jaco Pastorius: Word of Mouth (or Jaco Pastorius)
  11. Jeff Beck: Blow by Blow (or Wired)
  12. Brand X: Livestock (or Unauthodox Behavior)
  13. Mike Stern: Upside Downside
  14. John Scofield: Blue Matter (or Still Warm)
  15. Al Di Meola: Elegant Gypsy
  16. Lee Ritenour: Gentle Thoughts
  17. Brecker Brothers: Heavy Metal Be Bop
  18. Quincy Jones: Sounds...and Stuff Like That! (or The Dude)
  19. Stuff: Stuff (or More Stuff)
  20. John McLaughlin: Inner Mounting Flame (or Birds of Fire)
  21. Larry Carlton: Larry Carlton
  22. Joe Sample: Rainbow Seeker
  23. George Benson: Weekend in L.A. (or Breezin')
  24. Billy Cobham: Spectrum
  25. Crusaders: Scratch
  26. Pat Martino: Joyous Lake
  27. Steve Khan: Eyewitness (or Modern Times)
  28. Grover Washington Jr.: Mr. Magic (or Winelight)
  29. Yellowjackets: Four Corners
  30. Deodato: Prelude (or Deodato 2)

2024年4月 6日 (土)

「デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界」:さすがにこれはやり過ぎではないか...。

Dsm「デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界」村上春樹(文藝春秋)

David Stone Martinと言っても,普通の人々にとっては誰それ?にしかならないだろうが,ClefやNorgran,Verveといったジャズ・レーベルのアルバム・デザインを担ったデザイナーである。これらのレーベルでのDavid Stone Martinの活動は1950年代が中心と随分昔のことになるので,もはやクラシックな世界と言ってもよい。このDavid Stone Martinのデザインのファンは結構多いが,村上春樹もその一人ということで,この書籍に至ったということになろう。これは私がECMのスリーブ・デザインに惹かれるのと同じようなものなので,デザインの観点から語るという行為自体には特に異論はない。

だが,音楽関係の書籍として見ると,取り上げられているミュージシャンが,Charlie ParkerやStan Getzを除けば,必ずしも私の嗜好にフィットした人たちばかりではないし,音楽についての記述も決して細かいものではないところには不満が残る。そもそもデザインが音楽のクォリティと比例しないことは村上春樹の記述からも明らかなところに,この書籍の無理矢理感を覚えるのだ。結局私にとってはどっちつかずな感じがしてしまうし,「ふぅ~ん」ぐらいの反応しか示せなかったというのが実感。星★★★。

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2024年1月 3日 (水)

年末年始に読んだ姫川玲子シリーズ最新作。新たなキャラ登場でシリーズも安泰?(笑)但し私としては文句ありだが。

Photo_20231231164301 「マリスアングル」誉田哲也(光文社)

なんだかんだと言って姫川玲子シリーズを読んでいる私である。昨年暮れに久々のこの長編新作が出て,読み始めてはいたものの,ちょっと時間が経ってしまったので,改めて年末年始で音楽を聴きながら読んだのであった。

ストーリーとしてはなるほどと思わせる部分もあるが,今回の作品におけるポイントは,新たなるキャラクターとして登場する魚住久江巡査部長だろう。明らかに姫川玲子と異なる造形で,今後,この二人の対比でストーリーを創造できそうだと思ってしまう。そうした部分も含めて今回も小説として面白く読めたのは否定しない。

だが,私が気になったのは誉田哲也の明らかな右翼的な言説であった。私がリベラルだからということもあるだろうが,あまりにも露骨なある意味「ネトウヨ」もどきとでも言いたくなるシチュエーション設定や思想的な表現は,姫川玲子シリーズがいくら好きでも,さすがに行き過ぎだと感じさせる部分があった。エンタテインメントにこうしたイデオロギー的なところが入り込んできてもろくなことはないと言っておこう。

誉田哲也がどのような思想に与しようと彼の勝手だし,私はどうこう言う資格はないが,エンタテイメント小説というメディアを使って,自分の考える方向に読者を誘導しようとするのには同調できない。それこそこの小説のタイトルの言うところの「悪意に満ちたアングル」を自分でやっているということではないのか。はっきり言って,ストーリーテリングはよりニュートラルな視点で創作してこそ,私は価値が高まると思う。ストーリーには大して文句はないが,そうした批判も含めて星★★★。

姫川玲子シリーズのストーリーが次も同じように展開されるのだったら,その次はない(きっぱり)。

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2023年12月21日 (木)

「リマリックのブラッド・メルドー」という書籍について。

Photo_20231219180901「リマリックのブラッド・メルドー:<ポスト・ジャズからの視点>I」牧野直也(アルテスパブリッシング)

先日,書店をうろついていて,この本が目に入ってしまった。帯には「ジャズ空間の拡張に挑み続けるピアニスト,ブラッド・メルドーの軌跡を軸に現代ジャズの状況を読み解く!」とあって,ほぉ~と声を発し(笑),中身もチェックせず購入した私である。この本,実は2017年の半ばに発売されたものであり,新刊でも何でもないことには後から気づいたのであった。

帯にある「軸に」というのが実は曲者で,この本,Brad Mehldauには相応のページ数は割いているが,Brad Mehldauに関する考察から逸脱して余談に走るページの多さがどうも納得がいかない。そもそもやたらに小難しい表現を用いる序論からしてこの本に必要なのかと思わせるが,著者は序論を読み飛ばして「第1章から読み始めてもらってもまったく問題ない」なんてするところもいかがなものかと思ってしまう。そもそも裏帯に書いてある次のような表現を見てもらえば,私の言いたいことはわかるはずだ。

『ブラッド・メルドーはよく耐えている。かつてセシル・テイラーやコルトレーンたちが理路を進もうとした果てに踏み越えていったジャズ本来の「語法」,その共通言語としてのフレーズという「構築物の枠組み」の中にとどまって,メルドーは原初的衝動へ踏み出すことなく耐えている。そして,半歩あるいは一歩,前へにじり出て,その枠組みを内側から拡張している。これは決して小さなことではない。』

何のこっちゃ?(爆) 同じことはもっとシンプルな表現で言えそうなものだが,意図的に小難しくしているとしか思えない。

それはさておき,著者のBrad Mehldauに対する意識の根底にはArt of Trio時代のトリオがまずあって,おそらくそれに加えて,Fresh Sound New Talentでのアルバム群へのシンパシーが感じられる。そして,ソロ・ピアノについてはライブ盤を「コンサート」として捉え,トリオ演奏以上には評価しないというスタンスが表れている。しかし,この本が発売された頃には既にリリースされていたあの超ド級"10 Years Solo Live"に言及しないのはあまりにも中途半端だろう。執筆のタイミングと違ったということはあるとしても,出版までには間に合ったはずで,明らかに聞くべき音を聞かず,取るべき対応を取っていないとしか言いようがないのだ。

音楽は個人の好みが反映するものだから,好き嫌いがあることは別に否定しない。その一方で"Largo"や"Taming the Dragon"を手放しで褒めるような感覚を与えるのは著者の単なる音楽的嗜好だろうと言いたくなるのだ。しかも後者に関してはMark Giulianaを論じたいのかと思えるような感じなのだ。

ということで,私としては余談の多さ,話の逸脱感,Brad Mehldau自身の音楽のカバレッジの半端さから全然面白いと思えなかった。結局読んでいて「ふぅ~ん,そうかねぇ...」としかならなかったと言っておこう。どう考えても頭でっかちな本で,こういう本を読んでいると,四谷「いーぐる」の店主,後藤雅洋の,難しいこと一切なしで,ジャズの魅力を的確,適切に伝える能力は実に素晴らしいと思ってしまうのだ。本書の著者,牧野のような書き方をしていれば,ジャズに関心のない人々の心はジャズという音楽からますます離れていくだけだと思える。ということで,全部読んだものの,中身をチェックしてから買うべきだったと反省した私である。

2023年10月18日 (水)

加賀恭一郎シリーズの新作読了。

Photo_20231015122401 「あなたが誰かを殺した」東野圭吾(講談社)

私は東野圭吾の本は何でもかんでも買うという訳ではないが,最近はガリレオと加賀恭一郎のシリーズは出るたびに買っている。この加賀恭一郎のシリーズでは「新参者」が圧倒的によかったと思うが,まぁどれを読んでも安定感のある読み物にはなっていると思う。その新作だが,いつもの加賀恭一郎シリーズに通奏低音のように流れる「人情」的な要素が今回は希薄で,加賀恭一郎がクラシックな名探偵物のような謎解きを行っていくのは,今までと様子が異なるという感じである。加賀恭一郎が本作ではいくら休暇中という設定だからと言って,こんな活動がOKなのかねぇというところから違和感はあるが,まぁそれはよかろう。

あまり細かく書くとネタバレになるので控えるが,さすがにこの設定には無理があるのではないかというのが正直なところであった。もちろん,ページをめくらせるストーリーテリングのうまさは健在ではあるが,登場人物の相関関係にはそんな訳ないだろうと感じていたのも事実。その辺りも減点対象となり,今回は星★★★ぐらいでいいと思う。まぁ面白く読めることは事実だが,やはりこの設定は強引過ぎたな。

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2023年9月27日 (水)

荒唐無稽の極致:伊坂幸太郎の「777」

777

「777(トリプルセブン)」伊坂幸太郎(角川書店)

先日、お彼岸でお墓参りに行った際、行き帰りに気楽に読める本はないかと思い、この本を購入した。 伊坂幸太郎の「マリアビートル」を原作とする「ブレット・トレイン」を配信で観た時も荒唐無稽だと思ったが、この本もシリーズものだけに同様だと分かっていても、暇つぶしとして考えればよしとしよう(と開き直る)。

今回もついていない男、天道虫こと七尾が主人公だが、それにしてもいろんな殺し屋が出てくるものだ。 伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」は非常に面白かったが、このシリーズもエンターテイメントとしては良いとしても,やっぱりこれはやり過ぎ感が強いよなぁと思いながら読んでいた。まぁそれでもあっという間に読了(頁数が少ないってのもあるが)してしまったのには,我ながら呆れてしまった。文句を言いながらやめられないんじゃん!ってところである。

詳しく書くとネタバレになるのでやめておくが,読みながら伊坂幸太郎は「なりすまし」が好きだねぇと思っていた。それはさておき,この小説を映像化した時には,誰をキャスティングするかというのを考えながら読むのも一興かもしれない。それでも決して私の好みのストーリーではないので,星★★★ぐらいにしておこう。

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2023年8月25日 (金)

なかなかユニークな編集方針のMM増刊「モダン・ジャズ」。

Modern-jazz 「モダン・ジャズ」原田和典(ミュージック・マガジン)

先日,お盆でお墓参りに行った際に,帰りの電車で読むものはないかということで,現地の書店で買ったのがこの本であった。ミュージック・マガジンからはアルバム・ディスク・ガイドとして,様々な増刊が出ているが,同社からジャズ関係の本が出たのはこれが初めてかもしれない。著者はマガジン誌ではJポップ/歌謡曲のアルバム・レビューを担当する原田和典だが,この人,もとは「ジャズ批評」の編集長もやっていたし,Blue Note東京ではライブ・レポートをアップしているので,ジャズについて語る資格は十分である。

一方,「モダン・ジャズ」を論じる上で,アナログ盤が似合うとしながら,更には選盤の期間を1945年から68年という時間で区切ったのはなかなかユニークと言えばユニークである。まぁ,確かにモダン・ジャズ黄金期は50~60年代というのは異論の出ないところだとは思うが。

この手のディスク・ガイドを見ていると,大体において「あのレコードはどうした? なんでこれが入っていて,あれが入っていないんだ?」みたいな指摘が出てくるものであり,この本でもなんでこれが...みたいなアルバムもある(例えばPerry RobinsonのSavoy盤とか) 。そもそも「Milesのエレクトリック化前(~68年)」「アメリカ人アーティストによるアメリカ吹き込み」「楽器奏者がリーダー」という編集方針は現在のジャズ・シーンを考えれば,相当偏っていると言われて然るべきものだ。しかし,よくよく考えてみれば,今や私も相応に欧州ジャズを聞くようになったとは言え,往時のジャズ喫茶でプレイバックされて,ついつい反応して,ジャケットを手に取って眺めてしまうというのは,ここで紹介されているようなアルバム群であったようにも思える。

そういう意味で,いかにも「モダン・ジャズ」らしいアルバムが選ばれているとも言える。一般的には敷居が高いと思われがちなジャズも,こういうところを入口にして,自分の好みの音を見つけていけばいいだろう。しかし,自分にフィットする音を見つけて,ジャズの泥沼にはまっていくには,それなりに場数を踏む必要もあるだろうし,そこへ至るハードルはそんなに低くはないだろうなぁ。それでも,往時であればジャズ喫茶に入り浸って触れた音に,今ではストリーミングで触れられるのだからいい時代ではあるのだが。

いずれにしても,私のようなロートルが気楽にパラパラと眺めるには丁度よかったということにしておこう。墓参りには老眼鏡を持って行っておらず,電車の中では結局読めなかったのだが(爆)。

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2023年7月 9日 (日)

「永遠と横道世之介」を読んで思った「あまちゃん」との同質性。

Photo_20230706084201

「永遠と横道世之介」吉田修一(毎日新聞出版)

私はデビュー以来,長年に渡って吉田修一の本を結構読んでいる。この人の本はこの「横道世之介」シリーズのような軽いタッチの作品と,「悪人」のようなヘヴィーでシリアスな作品が混在しているのが特徴だが,私はどっちも評価している。昨今はあまり彼の本も読んでいないが,「横道世之介」シリーズ完結編が出たとあっては,これは読まずにいられない。

私はこの「横道世之介」シリーズが相当好きで,これまでも「横道世之介」,「続 横道世之介(現在は「おかえり横道世之介」と改題)を読んでいるが,続編を読んだ時にこのブログに書いた「登場人物が全て善良に思えるという,性善説に則ったような」感覚は,殺伐とした現代において貴重だし,読後の爽やかさに読書の楽しさをつくづく感じさせてくれる作品であった。それはこの完結編でも一切変わることがなく,前2作を読んだ人ならば,満足すること間違いない。本作を含めたシリーズ全体で星★★★★★としたい。

そして主題に関してであるが,現在再放送されている「あまちゃん」は再ブレークと言ってもよい状態で,毎日のようにネットに情報が上がってきている。かく言う私も毎日録画して見ているクチだが,Blu-rayも持っているんだから,敢えて録画しなくてもいいだろう?というのも尤もな話だ。しかし1日15分という時間を楽しむこと自体には相応の楽しさがあるのも事実なのだ。「あまちゃん」を見ていても,「笑い」の方が若干勝っているとは言え,笑いと涙が同居している部分があるが,私は同じような感覚をこの横道世之介シリーズには感じてしまうのだ。そう言えば,「あまちゃん」の登場人物も基本は善良な人ばかりだ。

今回もくすっとしながらこの本を読んでいる時間の方が多かったが,そこにいい塩梅に泣かせる逸話も入り込んで,これはやっぱり「あまちゃん」と同じだなと思ってしまうのだ。だからどっちも好きなのだってことになるが,改めて第1作から読み返そうかなんてさえ思ってしまった。これも「あまちゃん」再放送が終わったら,Blu-rayで見直そうとするのと同じ感覚だな。

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