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カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2022年3月12日 (土)

火村英生シリーズ最新作。旅情ミステリーみたいな展開である。

Photo_20220311180501 「捜査線上の夕映え」 有栖川有栖(文藝春秋)

私が現在の住まいに引っ越して10年近くになるが,それにより通勤環境が変わり,読書量が大幅に減少したという話は前にも書いたことがある。それに加えてコロナ禍により,在宅勤務が当たり前になってくると,通勤時間すらない訳で,現在の私の読書の主たる時間は入浴中である(笑)。

そんな私がこのところ読んでいたのがこの本なのだが,先日の地方出張の道すがらで結構ページが進んでしまった。まぁ安定の火村英生シリーズってところなのだが,今回は主題のごとく,旅情ミステリーっぽいところがあるのがユニークって感じか。結構淡々とした展開で,実際の警察の捜査ってのはこんなものかもしれないなぁと思わせるが,それでもまぁ面白く読ませてもらった。

淡々としているというのは,ギミック満載の驚きの展開ではない部分によるものだが,設定には若干の無理があったとしても,妙に納得してしまうストーリーだと言ってもよい。読者の嗜好によっては,もっと劇的な展開を求める向きもあろうが,これはこれでありだと思えたということで星★★★★。

2021年12月 4日 (土)

追悼,新井満。

Photo_20211204141601

新井満が亡くなったそうだ。私の年代であれば新井満を最初に意識したのは,シンガー・ソングライターとしての「ワインカラーのときめき」においてであったのではないかと思える。しかし,私が評価していたのは小説家としての新井満であった。

しかし,新井満は小説を書くのをやめてしまって,やれ「千の風になって」やら,自由訳を連発するようになってからは全くの興味の対象外とはなっていたが,「ヴェクサシオン」から「海辺の生活」あたりまでは,少なくとも出版された当時の私の嗜好には相当フィットしていたと思う。今や彼の本はクロゼットの奥に鎮座しているが,訃報を受けて今一度取り出して再読してもいいかなと思っている。三十数年前に読んだ本を,還暦も過ぎた今読めば,全然違う感覚をおぼえそうな気もするからだ。

いずれにしても,いろいろな才能を持っていた人だったが,私にとってはあくまでも小説家,新井満であった。

R.I.P.

2021年10月26日 (火)

新潮社版の文庫本は持っていたはずだが,新装版で改めて読んだ「霧越邸殺人事件」。

Photo_20211025221101 「霧越邸殺人事件」綾辻行人(角川文庫)

綾辻行人と言えば「館」シリーズ。私はその殆どを読んでいるはずだが,その番外編とでも言ってよいのが,以前は新潮社から発売されたこの本である。私は本作を新潮文庫版を持っている(あるいは持っていた)ことは間違いない。以前は上下巻ではなく,一冊で発行されていたが,今は角川から上下巻で出ていたなんてことは知る由もなしであった。今回,何の気まぐれか,この本が気になって,かつ読みたくて仕方がなくなり,改めての購入となった。

まぁ,いつも通りの綾辻行人って感じであるが,ややオカルト的な展開には無理があるなぁと思って読んでいた。そもそも私はこの本を昔読んだことがあったはずなのだが,内容は全く覚えていなかった。まぁ,「館」シリーズだってほとんど内容は覚えていないから,そんなもんだと思いつつ,実際にこれを読んだことがあったのかなかったのか,正直言って自信がなくなっていたのも事実である。

Photo_20211025221001しかし,このカヴァーはどうなのかねぇ。私は新潮文庫版のカヴァー(右)の方がいいのではないかと思える。一体この女性は誰を描いたものなのか。登場する美女,芦野深月のイメージなのかもわからないので,意図が全くよくわからないカヴァーだと言っておこう。

何だかんだと言いながらも,あっという間に読み終わらせてしまうのは大したものだと思いつつ,謎解き部分の唐突な展開は賛否がわかれるところであろう。私としてはイマイチ感を覚えつつも,結構なスピードで読了したが,この本を読んだことがあったような気もすれば,ちゃんと読んでなかったような気もする。そもそも私は単行本だって買ったような気さえするのだからいい加減なものだ。高齢者の記憶力の低下は仕方ないとしても,何だかなぁって感じである。まぁ読み物としては星★★★★ぐらいとしてもよかろうってところであるが,この改訂版においても,登場人物の連動性,関係性にはまだ問題があるようには思える。偶然が偶然を呼ぶってことも否定はしないが,ここでの「偶発性」はさすがにやり過ぎ感ありである。

エンタテインメント小説なんてそんなものだと思えばいいのだが,どうしても理屈っぽくなってしまう自分がいるなぁ...。まぁ,面白ければいいのだが。

2021年9月11日 (土)

ガリレオ・シリーズの新作なんだけどねぇ...。これはいかんだろう。

Photo_20210906180601「透明な螺旋」東野圭吾(文藝春秋)

「沈黙のパレード」以来のガリレオ・シリーズの新作である。前作をこのブログで取り上げた際に,『東野圭吾のストーリーにはそこはかとなく「人情」が通奏低音のように流れている』と書いたが,この作品でもそれは同様だと思うのだが,ガリレオ・シリーズにしては,その「人情」が勝り過ぎたというのが実感である。そもそも,いくら頭脳明晰な主人公,ガリレオこと湯川学とは言え,その情報からだけで真相を明らかにできる訳ないだろうと思わせてしまうのがそもそもの難点である。ガリレオにはもう少しちゃんとした「ロジック」が必要なはずだが,どうにもそれが曖昧模糊としていて居心地が悪いのだ。

読み進めさせる技術については,今回も私はどんどんページをめくらされたので,そこは大したものだと思うのだが,これをガリレオ・シリーズと言ってよいのかというと,何だかなぁって気がしてしまうのだ。登場人物の関係性についてもどうなのよって思わせるし,これはガリレオ・シリーズとしては読者の期待を裏切る部分が大きかったと言わざるをえないだろう。そういうことを気にしなければ面白く読めるとも言えるのだが,やはりこれは微妙な出来であった。星★★★。本作に対して『今、明かされる「ガリレオの真実」 』というコピーは確信犯的な悪意に満ちているとしか言いようがなく,文藝春秋にはそういう点は反省してもらいたいし,東野圭吾には,次はちゃんと「ガリレオ」らしい作品を書いて欲しいものである。

2021年9月 8日 (水)

久しぶりに読んだ本は西川美和。

Photo_20210904162501 「スクリーンが待っている」西川美和(小学館)

前にも書いたことがあるが,今の住まいに引っ越してから,それまでと比べて通勤時間が圧倒的に短くなって以降,私の読書量は激減してしまった。それまでは結構長い通勤時間だったので,その時間を使って相応に読書していたのだが,今やほとんど本を読まなくなってしまったと言っても過言ではない。しかし,たまには本でも読むかということで,週末に読んだのがこの本であった。映画も見ながら,本も読むというのはなかなか久しぶりの経験であった。

私は映画監督としての西川美和を高く評価しているが,文筆家としても侮れないこともこのブログには書いてきたし,彼女の小説やエッセイも結構読んでいる方だ。本作は彼女の映画の最新作「すばらしき世界」の製作途上で記述されたエッセイを中心に,最後にはなかなか面白い短編小説が添えられている。

西川美和は「すばらしき世界」を除いてはオリジナル脚本にこだわってきただけに,イマジネーション豊かな文章を書くと思うが,エッセイも実に魅力的であった。映画製作の裏話として読むこともできれば,純粋にエッセイとして読むこともできるという感じで,楽しく読んだ私であった。やはりこの人有能である。星★★★★。

2021年4月20日 (火)

珍しくもあっという間に読み終えてしまった東野圭吾の新作。

Photo_20210417142401 「白鳥とコウモリ」東野圭吾(幻冬舎)

最近,本を読む機会もスピードも落ちまくっているが,先日,久しぶりにオフィスに行く機会があって,近隣の書店に行ったらこの本が並んでいた。私は東野圭吾の本はそこそこ読んでいると思うが,昨今の出版ペースは濫作ではないのかと思っていたので,今回の本は結構久しぶりの東野圭吾となった。最後に読んだのはガリレオ・シリーズの「沈黙のパレード」はずだから,多分それ以来だろう。

東野圭吾の出版ペースを見ていると,よくもまぁこれだけストーリーラインが浮かぶものだと感心するのだが,正直手が伸びなくなっていたのも事実である。しかし,今回の新作は足掛け4年に渡る雑誌への断続的な連載を経て,それを長編としてまとめたものであるから,時間を掛けてストーリーの構想は練っていたのだろうと想像される。私もそうした東野圭吾の術中にはまり,週末にあっという間に読み終えてしまった。そうさせる筆力は大したものだと思う。日頃,私が家庭内で本を読んでいる姿など見たことがないであろう家人さえ,そんな私の姿を怪訝に思っていたのではないかというぐらいの感じで読み進めていたのには我ながら驚いている。

特に前半から中盤にかけての展開は実に面白く,次への展開を楽しみにさせるものだったと思うが,結末に向けてはやや性急感,悪く言えば取ってつけた感があったように思えるのも事実である。しかし,ストーリーに破綻はないので,実に面白く読めたということは認めなければならないだろう。そういうところも評価して星★★★★☆としよう。私の中ではよく出来た感では「新参者」の方が上だが,これはこれでベストセラー街道一直線というのは納得できる。

読み終えて,この話を映画にするなら,どういうキャスティングがいいかかなぁなんて思ってしまった私である。

2021年3月 8日 (月)

出張の道すがらに読むには丁度よかった姫川玲子シリーズ。

Photo_20210306163001「オムニバス」誉田哲也(光文社)

このブログで取り上げたことはないが,姫川玲子を主人公とするシリーズは,ついつい買ってしまう私である。今回は7編からなる短編集で,こういう本は出張の移動中に読んでしまえるというもので,その気楽さが丁度よい。

まぁ,短編集なので,いつものようなエグい感じはないし,あっさりしたストーリーと言えばその通りだが,主人公,姫川玲子の発するつぶやきが結構笑える感覚あって,地方出張の移動時間で読み終えてしまった。やっぱりこのキャラクターと姫川玲子を取り巻く登場人物の造形は面白いと思う。姫川玲子の直感が当たり過ぎだろうってのは感じつつ,星★★★☆ぐらいとしておこう。

読んでいて,姫川玲子を演じた竹内結子は亡くなってしまったが,2代目には誰がいいのかなぁなんて思っていた。

2021年2月 9日 (火)

最近立て続けに入手した音楽関係書の話。

Books

最近,立て続けに音楽関係の本を入手。まぁ,Patti Smithの「Mトレイン」は音楽書と言うよりも,ちゃんとした文学と言ってもよいので,Patti Smith教信者の私としては,襟を正して読むしかない(きっぱり)。

それとJoni Mitchellのアルバム・ガイド,そして一部で話題の「50年後のアルバート・アイラー」。この3冊の中で一番気楽に読めるのはJoni Mitchellのアルバム・ガイドなので,風呂で読み進めているところ(笑)。一番難儀なのは一部のフォントが小さいアイラー本。500ページ超の大冊というのも風呂で読むには厳しいねぇ(爆)。

2020年9月23日 (水)

Patti Smithの詩を味わうための一冊。

Patti-smith-complete "Patti Smith Complete 1975-2006" Patti Smith(Harper Perennial)

こんな本があったとは...。私は遅れてきたPatti Smith教の信者であるが,彼女のアルバムは結構保有していたとしても,その歌詞を完全に把握している訳ではない。先日取り上げた"The Coral Sea”もテキストなしでは厳しいが,彼女の歌う歌はしっかり詞のレベルまで把握したいと思う,そんな私の欲求を満たす書物がこれである。

Patti Smithのアルバムのブックレットにはちゃんと歌詞が掲載されているから,それを見ればいいって話もあるが,こうやってちゃんとまとまっていることが重要なのだ。真剣に詞に対峙したいと思わせる数少ないミュージシャンとして,この本は私にとっては実に貴重。遅れてきた信者だけにその存在に気がつくのが遅すぎるわってところだが,今更でもいいのである。実に奥深いPatti Smithの世界に浸るのはこれからでも遅くない。私にとってはそれほどの人なのである。星★★★★★以外ありえない。

2020年3月31日 (火)

「蜜蜂と遠雷」の原作を読了。実に面白かった。

Book 「蜜蜂と遠雷」 恩田陸(幻冬舎)

先日の米国出張の際に,機内エンタテインメントで見た本作の映画化版がなかなか面白く,猛烈に原作が読みたくなったということは既にこのブログに書いた(記事はこちら)。なかなかの大冊ではあったが,あっという間に読み終えてしまった。エンタテインメントとしてよく出来ているのはもちろんだが,クラシックの世界を描いたというところが画期的という気がする。本作には賛否両論があることも承知しているが,私としてはクラシックの世界を描いたという点で,評価が上がってしまったことは言うまでもない。

ある意味,クラシックのピアニストってのは大変だよなぁと漠然と思っていたところを,コンクールという舞台を通じてその葛藤とかを描いたところが実に面白かったし,曲の解釈にドラマ性を加えてしまうところも,そこまで言う?という感覚もありつつも,実にユニークだと思っていた私である。

いずれにしても,恩田陸が音楽を描く様は,実にビビッドであり,各々の曲に対する感覚も首肯できる部分があり,この人の「耳のよさ」というのも感じられる作品であった。今更ながらこの本を読んで,大いに楽しませてもらった。ということで,星★★★★★としてしまおう。直木賞,本屋大賞の二冠にもなるほどとなった私であった。これで改めて映画を見直すと,別の感慨も生まれるかもしれないなぁ。

文庫版は上下巻にわかれているが,上巻を読めば,下巻に進まざるを得なくなることは必定と言っておこう。

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