追悼,Jeff Beck。

Jeff Beckの突然の訃報であった。突発性の細菌性髄膜炎で78歳の生涯を閉じたとのことであるが,生涯現役を貫きそうだと思えた人だっただけに,この訃報はあまりにショッキングであった。
思えば,私がJeff Beckのライブに接する機会は結局一度しかなかったが,Jeff Beckの音楽との付き合いは45年ぐらいになるはずだ。初めて買ったアルバムは"Wired"だったはずだが,「歌のないロック」(決してフュージョンではない)は当時の私にも非常に新鮮に感じられたし,"Goodbye Pork Pie Hat"のような曲を通じて,まだジャズを大して聞いていなかった私にCharles Mingusという名前に触れる機会を与え,Jan HammerやNarada Michael Waldenのようなミュージシャンに初めて触れたのも"Wired"だったはずだ。また,Jeff Beckが"Jorney to Love"やほかのアルバムに参加していることで,Stanley Clarkeを聞くということもあった。それは私がReturn to Foreverのアルバムを聞く前のことである。その頃,Jeff BeckとStanley Clarkeは来日公演をしたはずだが,残念ながらチケットが取れず,行くことはできなかった。
"Wired"に続いて,"Blow by Blow"やJan Hammerとのライブ盤を買い,更にJeff Beckにはまっていった私だが,当時久々のスタジオ録音作となった”There and Back"リリース当時の盛り上がりも懐かしい。その頃,ぶっ飛んだのはJan Hammerとのライブにおける超高速"Scatterbrain"と,"There and Back"の"Space Boogie"だったように思う。その後もアルバムが出る度に買っていたような気がするし,遡及してJeff Beck GroupやBB&Aのアルバムも購入したが,いいものもあれば,そうでもないものあったとは言え,やはり好きだったことには間違いない。Jeff Beck Groupのメンツによって結成されたHummingbirdだって追っかけてしまうのだから,我ながら相当なものだ。そうは言っても,結局のところ,私にとっては上述の"Blow by Blow"から"There and Back"に至る4枚がJeff Beckのイメージを作り上げたものであったことは間違いない。この4枚が出たのがミドル~ハイ・ティーンに至る時期だから,そう思えるのも当然と言えば当然なのだ。
Jeff Beckのイメージとは,私にとってはギター1本で勝負して,その場をかっさらっていくというものだが,さまざまなテクニックを駆使したプレイぶりはまさに孤高の境地という感じであった。だからこそ,陳腐な表現ではあるが,「ギター・ヒーロー」という呼び方が最も似つかわしいのはJeff Beckその人であった。"Blow by Blow"が出た時の邦題は「ギター殺人者の凱旋」なんてなっていたはずだが,噴飯ものだと思っていた「ギター殺人者」という表現があながちはずれていないとさえ思えてきてしまった。
そんなJeff Beckは昨年Johnny Deppとの共演盤を出してびっくりさせた(私はストリーミングで聞くに留まったが...)が,この二人でライブもやっていたはずなので,それだけに今回の訃報は急に過ぎるのだ。しかし,Jeff Beckが亡くなっても,彼の業績は不滅のものであるし,これからも私はJeff Beckのアルバムをことあるごとにプレイバックしていくはずだ。本当に惜しい人を亡くしたと思わざるをえない。いずれにしても,2016年のDavid Bowieの訃報並みの衝撃を受けた私であった。
R.I.P.
最近のコメント