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カテゴリー「ジャズ(2026年の記事)」の記事

2026年10月15日 (木)

椎名豊 Inspired Swing Special Quartet Featuring Max Ionata@赤坂B-flat参戦記。

Photo_20261014072701

Max Ionataが椎名豊のバンドに客演するライブがあるという「夜の部活」メイトからのお誘いに乗って,赤坂のB-flatに行ってきた。ここに行くのは超久しぶりで,Steve Kuhnのトリオが先だったか,Tom Harrellがひっそり来た時のライブが先だったかの記憶は定かではない。よくよく見返すとTom Harrellは2008年のことだったようだが,記事には某所としか書いていない。ではSteve Kuhnはいつだったのか?まぁそれはさておきだ。

Max Ionataを生で観るのはイタリア文化会館でのDado Moroniとのデュオ以来だが,それからもう12年も経っているとは我ながら驚きだ。昨今はMax Ionataのレコーディングも停滞しているようなので,こうして改めてライブが見られるのはよいことだ。私が知らなかっただけで,スカンジナビアのミュージシャンたちと"Tivoli"というアルバムをリリースしていたようなので,それは改めてストリーミングで聞いてみることにしよう。

現地に到着すると会場はフルハウス。椎名豊のトリオにMax Ionataを加えたクァルテットに,上の写真には写っていないが,アルトの中島朱葉がゲストで加わったクインテットでの演奏は,オリジナル,Kenny Dorham,Lee Morgan,Mulgrew Millerらのジャズマン・オリジナルにスタンダード交えた2セットで,いい意味でコンベンショナルな響きのジャズを味わうことができた。Max Ionataをフィーチャーした"Stardust"では,ステージから外れたところもを歩きながらのソロを聞かせたが,やはりイタリア人の歌心というものを改めて感じたのであった。B-flatぐらいの箱なら,PA不要とすら感じたのであった。

椎名豊のトリオはレギュラーだと思うので,さすがに安定感のあるトリオだと思ったが,どのようなテンポでも対応できる万能型であった。ドラムスの広瀬潤次はライブでは初めて聞いたと思うが,この人のバスドラ使いはなかなかのものだと思いながら聞いていた。バスドラでドライブ感を生み出すってのは大したものである。

更にゲストの中島朱葉だが,小柄な体格から生み出すフレージングは切れ味鋭く,日本の女性プレイヤーの実力には改めて驚いた私であった。バークリーに行っていたのも伊達ではない。特に速いパッセージでは,この人はJackie McLean好きかなぁなんて思っていたが,まだまだバラッドよりもミディアム以上のテンポの曲の方がこの人には合っていると感じた。まぁそれでも音は結構でかいし,大したもんだと思っていたのも事実である。

Max-ionata-and-us_mosaic1 終演後はMax Ionataはサインだ,撮影だと聴衆に大人気であったが,結構隅の席に座っていた「夜の部活メイト」を目ざとく見つけて寄ってきたMax Ionataである。彼女はイタリア語もこなすイタリア・ジャズ通として,Max Ionataとも長年の知り合い(日本のファン第1号ならぬ第0号と言っていたような...)であるから,私も便乗して,ちょっと話をしたり,自分のスマホでの3ショットを撮影したりであった。Max Ionataは酒や炭水化物の制限で14kg減量したと言っていたから,随分ほっそりしたのは見ての通りで,写真もなかなかいい具合になったが,ここではMax Ionata以外にはモザイクを掛けておく。

余談ではあるが,この赤坂B-flatの料理はなかなか美味くて,Jazz Diningを称するだけのことはある。Body & Soulなき今,プログラム次第で,この店がBody & Soulに代わるヴェニューになるかもなぁなんて思っていた私である。ってこともあり,そんなこんなで気持ちよく家路についた私であった。

Live at 赤坂B-flat on October 13, 2026

Personnel: 椎名豊(p), Max Ionata(ts), 中島朱葉(as), Pat Glynn(b), 広瀬潤次(ds) 

2026年10月13日 (火)

Art Farmerの東京ライブを人生初聞き(笑)。これがCTIから出る不思議。

Art-farmer-in-tokyo "Live in Tokyo" Art Farmer (CTI)

人生において聞いたことがないアルバムなんていくらでもあると思いつつ,往時のジャズ喫茶でも一度も聞いた記憶がないというアルバムをストリーミングで聞いた。Art Farmerと言えば70年代の「おもいでの夏」等のアルバムでのソフトな印象があるが,元々はバッパーなのはSonny Clarkの"Cool Struttin'"のみならず,Jazztet等のアルバムでも承知している。だが,フリューゲルホーンの響きもあって,Atlanticレーベル時代のアルバムを聞いても,ハードな演奏をする印象はあまりないというところだ。このアルバムはバックは「おもいでの夏」同様のCedar Waltonのトリオで,ゲスト的に"Cool Struttin'"でも共演したJackie McLeanも参加しているところがひとつの目玉だろう。

アルバムはいきなりCharlie Parkerの"Constellation"で幕を開け,Jackie McLeanを含めた正調ハードバップ的な演奏に驚かされるが,続く"What’s New"と"In the Wee Small Hours of the Morning","Love Letters"はほぼワンホーンみたいなかたちでしっとりと演奏するところは当時のArt Farmerのイメージに合致したものと言ってもよいだろう。そして最後は再度Jackie McLeanを加えて,Sonny Rollinsの"Moving Out"で締めるという構成。Art Farmerは特に"Love Letters"では若干ハイノートに苦しいところもない訳ではないが,まぁアルバムとしてはこういう構成になるだろうって感じだ。因みにCedar Waltonトリオの面々はさすがの安定感だ。

Art-farmer-in-tokyo-complete ということで,Jackie McLeanの出番は2曲だけなので,もったいないって気もするが,あくまでもゲストだったと思えばこういう構成でも仕方ないってところ。アルバムとしては悪くはないが,突出していいとも言えないので星★★★☆。尚,このアルバムに4曲追加したコンプリート盤も存在して,そちらでは"Bag’s Groove"や"Round Midnight"もやっているようだから興味深いところだが,ストリーミングでも見つからないし,アルバムも入手困難のようだなので,ジャケのイメージだけアップしておこう。

こういうアルバムがCTIレーベルから出るというのはイメージが相当違うが,当時Art FarmerはCTIからアルバムを出していたから,その契約関係によるものだろう。

Recorded Live at 郵便貯金会館 on April 26 & 27, 1977

Personnel: Art Farmer(fl-h), Jackie McLean(as), Cedar Walton(p), Sam Jones(b), Billy Higgins(ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年10月12日 (月)

今だ現役,ナベサダの旧譜を聞く。

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"Swing Journal Jazz Workshop 2: Dedicated to Charlie Parker" 渡辺貞夫(日本コロムビア)

90歳を過ぎても現役のナベサダである。私はフュージョン期の"My Dear Life"がナベサダの初聞きだったので,ある程度バップ・フィーリングに満ちたアルバムは追って"I'm Old Fashoned"や"Bird of Paradise"を聞いたぐらいだ。廉価盤でリリースされたCBSソニー時代のアルバムにおいても,純粋バップ的な音は全然聞いたことがなかった。そこでストリーミングを活かして聞いたのが1969年のこのライブ・アルバム。

当時36歳で脂ものってきたナベサダによるCharlie Parkerの13回忌における演奏ということで,当然Birdゆかりの曲が選ばれているが,ここでのほぼワンホーンのクァルテットでの演奏が実によい。現在は加齢もあって,やや音が細くなったように思えるナベサダの当時の力強い演奏は,フュージョンとも異なる魅力に満ちていたということを今更ながら知ったのであった。

冒頭の"Parker’s Mood"からいい演奏が続くが,特に,全曲を完全無伴奏で吹く"I Can’t Get Started"がこれまた素晴らしいもので,往時のナベサダの演奏の魅力を再認識できると言ってよい。そしてそれは次の"Au Privave"の序盤へ引き継がれていくが,無伴奏のカデンツァでこれだけ吹けてしまうのが凄い。

まぁ現在につながる手癖のようなものも感じない訳ではないのだが,繰り出される見事なソロには感心せざるをえないし,ライブでこれだけの演奏をしてしまうところがナベサダのナベサダたる所以だろうと思うのであった。

バックの八代一夫,原田政長,渡辺文男のトリオも好演で応えるが,私はゲストで入る日野皓正のラッパの適当さがどうにも気に入らない。手練れの曲をやると言っても,もう少しリハーサルをするとかあるだろうと思ってしまうのだ。ソロはさておき,"Au Privave"のナベサダのソロのバックでの何がやりたいのかわからないような吹きっぷりは単に邪魔なだけで,辟易とさせられるところがあったのが惜しい。ライブだからと言ってもそれなりの演奏をして欲しいものだ。

私ならワンホーン・クァルテットで一枚仕立てたなというところだ。そこが気に入らないということで星★★★★。

Recorded Live at ヤマハホール on March 15, 1969

Personnel: 渡辺貞夫(as),八代一夫(p),原田政長(b),渡辺文男(ds),日野皓正(tp)

本作へのリンクはこちら。

2026年10月11日 (日)

Dave Hollandの未発表ライブ音源が早くもデリバリーされた。つくづく凄い人だ。

_20261010_0001 "Freedom Call" Dave Holland (Edition)

11月にAzizaを率いて久々の来日を果たすDave Hollandの未発表ライブ音源を集めた3枚組がリリースされ,私は英国から飛ばしたものが早くも到着した。送料はかかるが,Editionレーベルは発送が早くて好感度が高いが,今回もそうであった。

このボックス・セットは3種類のバンドの演奏を収めており,それぞれが"Unity","Synergism","Freedom"と題されている。ボックスのイメージが見つからないので,各々のディスクのジャケのイメージをアップしておくが,上から上記の順番である。

_20261010_0002 1枚目の"Unity"がセクステット,2枚目の"Synergism"がクインテット,そして3枚目の"Freedom"がPrismによる演奏を収めているが,まさにどのような編成でも素晴らしい演奏を展開することが実証されているようなボックスで,文句のつけようがない。こんな音源を惜しむことなく発表してくれたことは実にありがたいし,しかもすべてのディスクが70分越えの大盤振る舞いだ。そもそも各々のバンド・メンバーの素晴らしさを見れば,Dave Hollandというミュージシャンがどれほどリスペクトされているかの裏返しであるが,この演奏の質の高さ,スリリングな展開を聞けばジャズ・ファン興奮間違いなしである。

_20261010_0003 各々のディスクは聞きどころ満載ところだが,私にとってはDave Hollandはもちろんなのだが,やはりクインテットのクリポタことChris Potterと,PrismのKevin Eubanksの注目度が高い。クリポタについてはやはりテナーのソロが強烈で,聞いていて興奮してしまったし,Kevin EubanksについてはPrismのアルバムがリリースされた際に,そのギターのフレーズが素晴らしいと思ったのをライブでもきっちり引き継いでいる。また,ドラマーがEric Harland(disc 1/3)とNate Smith(disc 2)が分け合うという,現在これ以上望めないと言ってもよいドラムスである。悪いはずがないのだ。

まさに文句のつけようがない興奮必至のボックスとして星★★★★★。たまりまへん。

Recorded Live in 2008, 2010 and 2014

Personnel: Dave Holland(b), <disc 1>Antonio Hart(as), Alex Sipiagin(tp, fl-h), Robin Eubanks(tb), Mulgrew Miller(p) Eric Harland(ds), <disc 2> Chris Potter(ts, ss), Robin Eubanks(tb), Steve Nelson(vib, marimba), Nate Smith(ds), <disc 3>Kevin Eubanks(g), Criag Taborn(p, el-p), Eric Harland(ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年10月 9日 (金)

JD Allenの濃い~新作はリズム隊のドローン的な響きにテナーが乗ると言えばいいか。

Sowt "SÖWT" JD Allen(Savant)

JD Allenがモロッコを訪問したことにインスパイアされて,作り上げたアルバムだそうだ。Web情報によれば,北アフリカ・モロッコを中心に伝わる精霊信仰(アニミズム)とイスラム神秘主義(スーフィズム)が融合した伝統的なトランス音楽であるグナワ音楽的なものの再現ということらしいから,なるほどと感じられる響きを持つ音楽である。「トランス音楽」とすれば,主題の通りドローン的な響きを持つことになる訳だ。そこにJD Allenのテナーがかぶさるこのサウンドは,かなり濃厚な響きと言ってよい。例えて言えば,一時期のBilly Harperにもつながる吹奏という気がする。

現代において,こうした一種暑苦しいとも思える音楽がどの程度受けるかは微妙にも思えるが,こういうかつてのスピリアル・ジャズの亜種と呼んでいいような響きを持つジャズを好むリスナーに受けるだろうし,ジャズとある種の民族音楽と言ってよいグナワ音楽を融合させた響きは刺激的で面白い。

JD Allenは多数のアルバムをリリースしているものの,リーダー作はこれまで"Victory!"1枚しか聞いていないはずで,Jeremy Peltのクインテットでの演奏を聞いていたぐらいだが,Jeremy Peltとの演奏は比較的コンベンショナルな感覚だったのに対し,リーダー作はより自由度が高い人だった。そんなJD Allenが更にこうした新しいチャレンジする姿勢は評価してよいように思う。ただ終盤の"Lil Lullaby"がそれまでのアルバムの流れから浮いているのが惜しい。星★★★★。

Personnel: JD Allen(ts), Leo Montana(p), Hamza Souissi(b), Ruy Adrián López-Nussa(ds), ​Yazid Alaoui(guembri, vo)

本作へのリンクはこちら。

2026年10月 3日 (土)

Yellowjackets@Blue Note東京参戦記。

Yellowjackets-on-bnt-stage

Yellowjacketsももう結成45年だそうだ。Bob Mintzerは47年と言っていたので,そちらが正しいのかもしれないが真偽は不明だ。

Yellowjackets-at-bnt それはさておき,結成当初はRobben Fordのバンドだと思われていた節もある彼らだが,Robben Fordが抜けて以降は一貫してワンホーンの編成のはずだ。今回来日するメンバーと同じ編成で7年前に来た時も私はライブを見ているが,苦手のBob Mintzerがいる割には結構いい評価であった(その時の記事はこちら)。実は長年私はBob Mintzerを苦手としていて,どうも彼のリーダー作にしても,参加作にしても響いてこないというのが実感だったのだが,前回ライブではその評価に変化が生じた。

しかし,その後,彼らのアルバムを買う訳でもなかったのだが,今回はBlue Note東京の7回行けばもらえる招待券をゲットしての参戦となり,相変わらずタイトな演奏ぶりで,大いに楽しめた。プログラムも,長いキャリアの中での曲をセレクトしていたように思えるが,ベースのDane Andersonを除けば,メンバーは結構なお年にもかかわらず,そんなことを感じさせない演奏だったと言える。

前回聞いた時はBob MintzerはEWIがよかったと感じたが,今回のライブでは圧倒的にテナーの方がよく,EWIの演奏が平板に聞こえるぐらいであった。テナーのフレーズを聞いていると,なぜ私がBob Mintzerを苦手としていたのかよくわからん!と思ってしまったが,それぐらい切れが良かった。演奏の切れのよさはメンバー全員に言えるが,Russell Feranteはシンセの利用は限定的な範囲に抑え,ピアノでこれまたいいソロを連発していた。Dane Andersonはスラップは使わないが,ベースはこう弾くんだぜって感じのソロを聞かせ,Will Kennedyはやはりこのバンドにはこのドラマーだという感じのタイトな叩きっぷりで楽しませたのであった。

感覚的に言えば,彼らはフュージョンと言うより,エレクトリックなジャズ・バンドとしての立ち位置を明確にさせたライブで,招待だからということで行ったにしては満足度の高いライブであった。

尚,トップの写真はBlue Note東京から拝借。

Live at Blue Note東京 on October 1, 2026

Personnel: Bob Mintzer(ts, EWI), Russell Ferrante(p, key), Dane Alderson(b), Will Kennedy(ds)

2026年10月 2日 (金)

私の推しの一人,Lizz Wrightの新作。相変わらずいいねぇ。

Lizz-wright-nearness "Nearness" Lizz Wright & Kenny Banks, Sr.(Candid)

私はデビュー以来,Lizz Wrightの推しである。この人の声は先日亡くなったCassandra Wilsonほどではないが,適度なディープさを持っていて,ジャズとゴスペル・フィーリングを融合させたその音楽は実に魅力的に響く。出したアルバムもことごとく出来のよいものであり,常にこの人の動きはウォッチしている。

そんなLizz Wrightの"Shadow"に続く新作は約2年という短いインターヴァルで届けけられたが,今回はKenny Banks, Sr.とのデュオ作である。Kenny Banks, Sr.という人については初聞きだと思ったら,Lizz Wrightのアルバムにはほぼ参加しているアトランタ・ベースのピアニストであった。この人は教会の音楽監督もやっているとのことなので,ゴスペル・フィーリングを持つLizz Wrightとの長年の付き合いもあり,相性は相当よいのだろうと想像させる。

ここでも"Nearness of You"や"All the Things You Are"等のジャズ・フィールドのスタンダードも歌っているが,半数以上はゴスペル曲であり,Lizz Wrightの音楽的ルーツに即した選曲と言える。そしてLizz Wrightの歌の上手さはここでも健在だし,Kenny Banks, Sr.の伴奏も適切。"All the Things You Are"で使っているのがクレジットに書かれたフェルト・ピアノだと思うが,この音色選びが何とも曲にフィットしている。

まぁ全体的にゴスペル色が強いので,ジャズ・ヴォーカルとして聞くと不満をおぼえるリスナーもいるだろうが,Lizz Wrightを元来純粋ジャズ・ヴォーカリストと捉えること自体に無理がある。こういう歌手だと認識して聞くと,これが何とも渋くも心に響く音楽である。昨日取り上げたGretchen Parlatoもジャズ・ヴォーカルの範疇を越えていたと思うが,Lizz Wrightも範疇は超越しつつ,全く違うアプローチなのが面白いのだ。

こんな歌を聞かされては,私のLizz Wright推しは永遠に続くとしか言いようがない。やや曲調にばらつきがあって,私としてはゴスペル・タッチ強めの曲の方に惹かれるところはあるのも事実だが,甘いの承知で星★★★★★としてしまおう。私の気持ちは下記の"Soon I Will Be Done"の映像を見てもらえばおわかり頂けよう。

Lizz Wrightが来日して時のライブを見てからもう11年の時が経過しているが,また来日して欲しいものだ。

Personnel: Lizz Wright(vo), Kenny Banks, Sr.(p, org)

 

2026年10月 1日 (木)

このメロウなサウンドこそGretchen Parlatoの魅力。2月の来日が本当に楽しみだ。

_20260926_0001 "The Wise Ones" Gretchen Parlato(Edition)

私が初めてGretchen Parlatoのアルバムを聞いたのは2011年の"The Lost And Found"だったのだが,そのコンテンポラリーな感覚が,コンベンショナルなジャズ・ヴォーカルとは異なっていた。日頃,あまりジャズ・ヴォーカルを聞かない私にもフィットするそのサウンドは記憶に残るものだった。それ以来,彼女のアルバムは結構買っているし,2023年にはライブも観に行った。

そんなGretchen Parlatoの新作であるが,前作"Lean in"は私が苦手とするLionel Louekeとのデュオということもあり,完全にスルーしたが,その前の"Flor"のよかった。今回はメンツを見て,まずはストリーミングで聞いて,そのメロウなサウンドが素晴らしかったので,現物も購入と相成った。

ここでGretchen Parlatoと共同プロデュースをしているAlan Hamptonは,本人自身SSWとしてアルバムをリリースしていて,私はそっちも支持してきたので,そのポイントも高いのだ。それに加えて"The Lost And Found"でプロデュースにも関わったRobert Glasperとの再会,あるいはゲストとしてMeshell Ndegeocello,更にはMoonchildのAmber NavranやMax Brykの参加等,私に訴求するポイントだらけなのだ。

2曲目のMeshell Ndegeocelloの野太いベース音には少々びっくりするが,全面的にメロウなサウンドが支配していて,これは聞いていて気持ちよいことこの上ない。これこそ本質的なGretchen Parlatoの魅力だと再認識した私である。特にRobert GlasperとGerald Claytonのエレピのサウンドの貢献度大だ。

来年2月にはここには参加していないTaylor Eigstiに,Alan Hamton,そして旦那のMark Giulianaという強力なメンツで来日が予定されていて,このアルバムを聞いて,それが猛烈に楽しみになってきた。そうした楽しみを増幅させるに十分なアルバムとして星★★★★★。記事の分類としてはジャズにカテゴライズしたが,ジャズの概念だけでは捉えきれない魅力炸裂だ。

これだけのクォリティのアルバムをわずか2日で仕立てるとはまさに驚き。尚,国内盤はボートラが1曲追加(この曲だけ録音が先)されているが,エンジニアも違うし,結構雰囲気が異なるのは仕方ないところだろう。

Recorded on November 17 & 21, June 18(Bonus Track), 2025

Personnel: Gretchen Parlato(vo), Alan Hampton(b, g, p, vo), Robert Glasper(p, el-p), Gerald Clayton(p, el-p, celeste, org), Mark Giuliana(ds, perc), Meshell Ndegeocello(b, vo), Amber Navran(vo, woodwinds, synth), Becca Stevens(vo, kora), Jacob Mann(synth), Josh Mease(g), Max Bryk(synth), Marley Giuliana(vo), Lauren Desberg(clap), John Clayton(b)

本作へのリンクはこちら。

2026年9月25日 (金)

今,ECMに求めうる理想の音と言ってもよい田中鮎美のトリオ作。

_20260924_0001 "Windflower" 田中鮎美(ECM)

昨今は以前ほどECMレーベルのアルバムを追うということも減ってきているが,気になるアルバムはチェックするようにはしている。このアルバムもそうした対象となったものであるが,これが実に素晴らしい作品であった。ECMから想起されるクールで静謐なサウンドそのものが体現されていて,長年のECMレーベルのファンとしては嬉しくなってしまったのであった。

もはやECMから日本人プレイヤーのアルバムが出ても驚くことはないとしても,田中鮎美は本人のアルバムや本作にも参加しているThomas Strønenなどが残っていて,いかにもECM的な響きを生み出してきていたとは思う。リーダー作の"Subaqueous Silence"ではミニマルな響きさえ感じさせたが,このアルバムにもミニマルな部分はない訳ではないが,よりピアノのサウンドがより明確に感じられるように思う。そしてこういうアルバムにはフィット感が強いThomas Morganのベースもよろしく,"Subaqueous Silence"でも感じられた冷え冷えとした感覚は,クールさの強いタイプのECMレーベルの作品の典型みたいなものだ。だからこそ,私はここでのサウンドには惹かれてしまうのだ。完全に私のツボにずっぽしはまってしまったというところだ。

ただ,そうは言ってもこういうサウンドだけに,万人向けの音源とは言えない部分があるのも事実。しかし,私にとってはここ暫くで聞いたECMのアルバムの中でも最も評価したくなるアルバム。星★★★★★。

Recorded in May, 2025

Personnel: 田中鮎美(p),Thomas Morgan(b),Thomas Strønen(ds) 

本作へのリンクはこちら。

 

 

2026年9月21日 (月)

John Coltrane Centennialの年における最大の話題作かもしれないBranford MarsalisとDianne Reevesによるトリビュート・アルバム。

_20260919_0001 "Dedicated to You" Branford Marsalis Quartet & Dianne Reeves(Blue Note)

昨今,フィジカルの媒体を購入する機会がすこぶる減少した私だが,買うとしても大概はストリーミングで試聴してからというのが通常のパターンだ。しかし,事前にこれは必ず買うと決める場合もあって,このアルバムなどはその最たる事例だ。

今年はMiles DavisとJohn Coltraneの生誕100年が重なって,両者に対する様々なトリビュートが行われているが,アルバム単位で最も注目に値すると思われたのが本作である。私はジャズ・ヴォーカルをあまり聞かないとしても,Branford MarsalisがDianne Reevesと組んで,"John Coltrane & Johnny Hartman"のレパートリーを再演するとなれば気にならない訳がない。

Branford Marsalisが現在のJoey CalderazzoとEric Revisを含むクァルテットを編成して四半世紀以上の年月が経過したが,ドラムスがJeff ’Tain’ WattsからJustin Falknerに代わっただけで,ほぼ不変のメンツを維持しているから,もはや鉄壁のコンビネーションであることに疑いはない。彼らがどのようにColtraneの世界に挑むかということになるが,まぁ既に「至上の愛」に取り組んだこともあるから,その成果を踏まえれば悪かろうはずはないが,バラッド表現ではどうかというところが注目点になろう。

そしてこれが実に渋い。特にDianne Reevesを迎えた6曲は"John Coltrane & Johnny Hartman"へのリスペクトに満ちたものであり,これらが枯れた味わいを示す一方,Dianne Reevesが抜けるクァルテット演奏とのメリハリがついていて,このバランスがナイスだと思う。因みに私が購入したのはCDだが,最後の3曲はボーナス・トラックとなっているのはなぜなのかは謎だ。アナログLPは2枚組でこの3曲も含まれているから何を以てボートラ?ってのはさておき,そのうち2曲は"Ballads"から"Say It"と"Nancy",そして最後はピアノレスで"Big Nick"だ。たまりませんなぁ。

Dianne Reevesが歌う曲では上述の通り,Branford Marsalisも枯れた味わいを示すが,"Central Park West"をJoey Calderazzoとのデュオでやってしまうというのも渋過ぎである。彼ももう66歳なのだから,年齢相応の演奏ということもできるが,テナーの音はJohn Coltraneとは全然違うとは言え,違った魅力が生み出したという感じだ。

"Nancy"なんかはムーディに流れ過ぎだとか,このアルバムに対しては純粋John Coltraneファンでなくともいろいろ言いたいこともあるだろう。先達としてのJohn Coltraneが偉大過ぎて,面々にはプレッシャーの掛かる部分もあったのではないかと推察するが,ハードルはクリアしたという感じで,この意気やよしという点も含めて星★★★★☆。小難しいことは考えずに楽しめばいいと思う。いずれにしても聞きものはDianne Reevesが入った6曲の方だな。

Recorded on August 25-29, 2025

Personnel: Branford Marsalis(ts, ss), Dianne Reeves(vo), Joey Calderazzo(p), Eric Revis(b), Justin Falkner(ds)

本作へのリンクはこちら。

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