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カテゴリー「ジャズ(2024年の記事)」の記事

2024年3月 5日 (火)

Famous Doorと言えばこのアルバムと思っていたが,記事にしていなかったZoot Simsのアルバム。

Zoot-at-ease "Zoot at Ease" Zoot Sims(Famous Door)

Famous Doorレーベルのアルバムには結構好きなものがある。Butch Miles然り,Scott Hamilton然りである。しかし,このレーベルのアルバムでダントツで好きなのがこのZoot Simsのアルバムである。モダン・スウィングってのはこういうものだという感じのアルバムは,アナログも持っているし,追加の別テイクが聞きたくて,CDでも保有している。だから,このアルバムを今までこのブログにアップしていなかったというのは実に意外としか言いようがない。私はこのブログでZoot Simsのアルバムを何枚か取り上げているが,実はこの人のアルバムでプレイバック頻度が高いのは本作なのだ。

テナーのイメージが強いZoot Simsだが,冒頭の"Softly as in a Morning Sunrise"をソプラノ・サックスで演奏するところからして意外な感覚があったが,これが実にいいのである。私は多分往時のジャズ喫茶において初めてこのアルバムを耳にしたはずだが,この演奏にまさに「ひと聴き惚れ」と言った感覚を覚えて,すぐさまアルバムの購入に走ったはずだ。そして全編で繰り広げられる演奏はテナーとソプラノを交えながら,心地よいスウィング感を与えてくれる。アルバムを購入した頃はまだ私も若かったはずだが,こういう演奏に魅力を感じてしまったのだから若年寄みたいなもんだ(爆)。

まぁ,このメンツである。リーダーもよければ,バックも素晴らしいのだから,良くて当たり前だが,このくつろぎ感に満ちた演奏はジャズのある一面を如実に示すものとして,若い私にとっても魅力的に響いたし,それは還暦を過ぎた現在になっても変わることはない。むしろ更にその魅力は増していると言っても過言ではない。必ずしも有名曲ばかりをやっている訳ではなくとも,実に心地よく時が流れていくのだ。大げさに言えば,私にとってZoot Simsと言えば本作と言ってもよい最初から最後までええわぁ~と言いたくなる傑作。星★★★★★。

こういうアルバムが簡単にCDで入手できるのだから本当にいい時代である。

Recorded on May 30 and August 9, 1973

Personnel: Zoot Sims(ts, ss), Hank Jones(p), Milt Hinton(b), Louis Bellson(ds), Grady Tate(ds)

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2024年3月 4日 (月)

"Touch of Time": この静謐さがたまらん!

Touch_of_time"Touch of Time" Arve Henriksen / Harmen Fraanje (ECM)

これは堪らん!と最初に言ってしまおう。とてもトランペットと思えぬ音色とそれに寄り添うピアノとエレクトロニクス。静謐な中に繰り広げられるこの美学には,世間のECM好きは間違いなくはまる。"The Most Beautiful Sound Next To Silence"を地で行くと言ってよいサウンドなのだ。私も当然はまった。

Arve Henriksenのトランペットはあたかも尺八のようにさえ響き,ラッパ(あるいはブラス)の概念を完全に覆してしまう音色で,決して熱を帯びることはない。「ジャズ原理主義者」から言わせれば,こんなものはジャズではないという声も聞こえてきそうだが,それが何か?と開き直りたくなる。コンベンショナルなジャズではないとしても,こうした音楽も含められるところがジャズの間口の広さなのだと原理主義者には抗弁することにしよう,と音楽は全然熱くないのに,ついつい熱くなる中年音楽狂(笑)。

まぁこういう音楽であるから,万人向けの音楽とは言わない。しかしこの静謐さと美しさを受け入れることで,私は自分の音楽生活は更に豊かになると感じてしまう。おそらくは先日取り上げた,高橋アキの「橋」のようなミニマルな現代音楽のピアノを愛するのと同じ感覚なのだ。私は全方位的な音楽のリスナーだと思っているが,身体がこういう音楽を欲する瞬間もあるし,たとえ身体が欲しなくとも,こういう音楽を聞いているとついつい強いシンパシーを感じてしまうこともある。結局好きなんだってことが明らかになるだけだが,このいかにもECM的な音にはやはり強い磁力を感じてしまったのであった。

この音楽は間違いなく聞く人を選ぶ。しかし,この世界に一旦足を踏み入れれば,決して抜けられないのだ。まさにECMの魔力。星★★★★★としてしまおう。

Recorded in January 2023

Personnel: Arve Henriksen(tp, electronics), Harmen Fraanje(p)

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2024年3月 3日 (日)

Brad Mehldauの新曲を捉えたブートレッグ。

_20240301_0001 "Zellerbach Hall 2024" Brad Mehldau (Bootleg)

Brad Mehldauが各所から委嘱を受けて作曲した新作"14 Reveries"がロンドンで初演されたのが昨年の9月のことであった。正式録音はそのうち行われるだろうが,できるだけ早く新曲を聞きたくなるのがファン心理。だが,ブートレッグもある程度の音のクォリティが確保されていないとなかなか手が出ないところであるが,今回届いたこのブートレッグはオーディエンス録音ながら,かなりよく録れているのが視聴してわかっていたので,購入と相成った。録音されたのはつい先日の2月10日,UC Berkeley内にあるZellerbach Hallでの演奏の模様がもう聞けてしまうというブートの世界恐るべし。

上述の通り,オーディエンス録音にしてはかなりよく録れているのだが,一部がさがさノイズが入るのは少々惜しい。しかし,ほとんど気にならないレベルなので,これなら十分だと思える。それでもって新作"14 Reveries"であるが,この時のプログラム後半では,"Suite: April 2020"からの曲が10曲演奏されていることからも,新作が同作の姉妹編のような位置づけにあるのではないかと想像させる。姉妹編と呼んだが,Brad Mehldauとしては,当然新作には発展性も持たせたと思われる美しいピアノ曲が並んでいる。

詳細については正式録音が出てからということにしたいが,一聴してアドリブ・パートがどの程度あるのかはよくわからなかった。しかし,Brad Mehldauのサイトで"Reverie #1"の楽譜がダウンロードできるので見てみると,完全に書き譜のようで,更には"Fourteen Reveries runs 38-42 minutes in performance."とまで書いてある。ということで,本人に限らず,他のピアニストが演奏することも念頭に置いて書かれた作品ってところか。

そういう意味でBrad Mehldauの越境型活動の一環という気もするが,どうやってもBrad Mehldauの音楽だと思わせるのは立派なものだと思う。Disc 2に収められた新作以外の演奏も含めて,なかなかに聞き応えのあるブートレッグであった。

Live at Zellerbach Hall, UC Berkeley on February 10, 2024

Personnel: Brad Mehldau(p)

2024年3月 2日 (土)

Wolfert Brederode@晴れたら空に豆まいて参戦記。

Wolfert-brederodes-piano

Wolfert Brederodeの"Ruins and Remains"は素晴らしいアルバムであった。同作を私は2022年のベスト作の一枚に選んでいるぐらい評価している(記事はこちら)が,そのWolfert Brederodeが来日するということで,代官山の晴れたら空に豆まいて(何とも不思議な店名だ...)に行ってきた。前日のBanksia Trioからの連チャンとなったが,2月はこれで5本目のライブというなかなかないハイペースである。

私がWolfert Brederodeのライブに参戦するのはこれで2回目になる。前回は約7年前の武蔵野スイングホールにおけるトリオ公演だったが,今回はピアノ・ソロ。先週にはJoost Lijbaartとのデュオ公演も行っているが,私はスケジュールが合わず,今回のソロに行くこととなった。私は最前列でかぶりつきで見ていたので,正確にはわからないが,箱の半分ぐらいの入りだったのではないか。

今回のライブは本人も語っていたが,完全即興で臨んだ演奏が約60分,その後,アンコール的に"American Folk Song"と言っていたが,曲名は失念したショート・ピースを1曲というプログラムであった。完全即興は相応の集中力を要すると考えられるから,この程度の演奏時間が限界という気がするが,徹底して美的で静謐な音楽を展開していた。時としてもう少しダイナミズムを加えてもいいかなと思わせる瞬間もあったのも事実だが,生音でこれだけの美音を聞かせてもらえばこちらの満足度も高いというものだ。ピアノの音が天井にす~っと吸い込まれていくような感覚は,以前カザルス・ホールでFred Herschを聞いて以来だったかもしれない。音楽と同時にピアノの響きを堪能した一夜であった。

Live at 晴れたら空に豆まいて on February 29, 2024

Personnel: Wolfert Brederode(p)

2024年3月 1日 (金)

Banksia Trio@公園通りクラシックス参戦記

Banksia-trio_20240301084701

須川崇志率いるBanksia Trioが2日間のクラブ・デイトということで,その2日目に渋谷の公園通りクラシックスに行ってきた。私にとっては初ヴェニューである。山手教会の地下というユニークな場所,かつ入口は駐車場のスロープを降りて行ったところにあるというロケーションは実に不思議(笑)。キャパは最大120人前後と思われるが,立ち見も出る盛況ぶりであった。彼らを観るのは一昨年末の武蔵野市民会館小ホールでのライブ以来となるが,その間に3枚目のアルバム,"Masks"をリリースし,それもいい出来だっただけに,今回も期待のライブであった。

__20240229083501 そして行われた演奏は静謐さ,美的なるもの,ダイナミズム,フリーなイディオム等の様々な演奏様式において,どれもが極めて高いレベルを実現していて,このトリオの実力を改めて実証したものであった。菊地雅章の"Drizzling Rain"から始まり,アンコールのWayne Shorter作"Lady Day"まで,約100分のプログラムは弛緩するところ全くなしの演奏で誠に見事であった。

当日のプログラムは正確さには少々自信はない(曲順も若干曖昧)が,次のようなものであったはず。私にとって特に印象的だったのが,Ornette Colemanの"When Will the Blues Leave"で,ここで聞かれた,ややコンベンショナルながら強烈なブルーズ感覚をこのトリオで聞けるとは思わなかった。とにかくトリオの全員が何でもできてしまう人たちなのだ。

改めて彼らが現在の日本において屈指のピアノ・トリオであることを確信した一夜となった。上の写真はご同行頂いた先輩から拝借。右は同地でのショットにモザイクを掛けたもの。モザイクを掛けているのでこれではよくわからないが,二人とも演奏への満足度が表れた表情になっている。

  1. Drizzling Rain(菊地雅章)
  2. First Dance(市野元彦)
  3. Untitled(新曲,須川崇志)
  4. 曲名失念(石若駿作曲のバラッド)
  5. Masks(須川崇志)
  6. When Will the Blues Leave(Ornette Coleman)
  7. Doppo Movimento(林正樹)
  8. Algospeak Suite(新曲, 須川崇志)

    (Ec.)Lady Day(Wayne Shorter)

Live at 公園通りクラシックス on February 28,2024

Personnel: 須川崇志(b),林正樹(p),石若駿(ds)

2024年2月29日 (木)

不思議な編成のJohn Surmanの新作:でも昔のECMならこういう編成は結構あったような...。

_20240227_0002 "Words Unspoken" John Surman (ECM)

私は最近は以前ほどECMのアルバムを追わなくなっているが,それでも食指が動くミュージシャンというのは存在する。John Surmanもそんな一人だ。そうは言いながら,John SurmanのECMの前作"Invisible Threads"は購入していないみたい(買ったかもしれない:爆)だし,アルバムだってそれほど保有している訳ではないのだから,結構適当なものなのだが,今回はついついこの編成につられての購入となった。何てたってJohn Surmanにギター,ヴァイブ,ドラムスというなかなかにユニークな編成なのだ。

70年代から80年代のECMなら,様々なメンツの組み合わせでのアルバムは結構あったと思うが,最近ではなかなかこういう編成は少なくなった。それでもやはりこういうのが出てくるのがECMだなぁと思わせる。

総帥Manfred EicherはExecutive Producerとなっているので,これはおそらくJohn Surmanの持ち込み音源なのだが,レコーディングはRainbow Studioだし,出てくる音も実にECMライクなのだ。静謐に流れる部分もあれば,メロディアスな曲もあって,これがなかなか面白い。ベースレスということが全く気にならないというのも,この編成の妙というところだろう。激しさは皆無な中で,淡々と音楽は流れていくのだが,結局はこのサウンドがかなり耳に残るという点では,John Surmanの術中にはまったと感じる私であった。

John Surmanも今年で80歳になるが,そのクリエイティビティにはまだ衰えはないと感じさせるに十分なアルバム。星★★★★。

Recorded in December 2022

Personnel: John Surman(bs, ss, b-cl), Rob Luft(g), Rob Waring(vib), Thomas Strønen(ds)

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2024年2月28日 (水)

相変わらずのScott Hendersonの新譜。

_20240227_0001 "Karnevel!" Scott Henderson(自主制作盤)

Scott Hendersonはだいたい4~5年に1枚のペースで新作をリリースしているが,レコード会社との契約はないようで,このアルバムもレコード会社の企業情報が全く記載されていないところを見ると,今回も自主制作ということでよいだろう。一部ではカルト的な人気を誇るスコヘンのような人でも契約を取れないというのは何とも不幸なことだが,そう売れるって訳でもないだろうから仕方なしってところか。

本作は前作"People Mover"と同じメンツでレコーディングされており,これが現在のスコヘンのレギュラー・バンドってことになるだろうが,リズムは欧州ベースのようなので,現在行っているツアーも3月いっぱいは欧州ということになっている。その後中国~インドと回るようだが,日本でのライブはなかなか難しそうなのが残念。情報によるとブッキングしてもらえないそうだ。中国まで来ているんだから呼べばいいのにと感じざるをえないが,やっぱりこの人はライブで観ると燃えるよねぇと思っているので,また日本にも来て欲しいものだ。

それにしても,ここでの音楽を聴いていると,Scott Hendersonが今年古希を迎えるとは信じがたいが,やる音楽に年齢は関係ないって感じで,相変わらずのスコヘン節炸裂である。むしろこの人の場合,変わりようがないって方が正しいんだろうが,いかにもスコヘンらしいフレージングや音を聞いているだけでファンは嬉しくなること必定。アルバムとして突出した出来とは思わないが,このレベルを維持してくれれば私としては文句も出ない。そして"Sky Coaster"みたいな曲でギターとドラムスのバトルみたいなのをやられてしまえば,こっちはウハウハになってしまうのである。ということで今回も星★★★★。

尚,ベースのRomain Labayeのサイトにバンドでのライブの模様の写真がアップされていたので貼り付けておこう。

Personnel: Scott Henderson(g), Romain Labaye(b), Archibald Ligonniere(ds), Scott Kinsey(e-perc), Roland Ajate Garcia(conga)

本作へのリンクはこちら

Scott-henderson-band

2024年2月24日 (土)

不思議なことに今まで記事にしていないJack DeJohonette Special Editionのアルバム群。ってことで,今日は"Audio Visualscapes"から。

_20240220_0001 "Audio Visualscapes" Jack DeJonette's Special Edition (Impulse!)

長年ブログをやっていても,このアルバムを取り上げていなかったかと気づいて驚いてしまうことがある。今日取り上げるJack DeJonette's Special EditionのアルバムもECM,Impulse両レーベルのアルバムを一度も記事にしていなかったのは我ながら意外であった。本来ならECMのアルバムから取り上げるべきではあるが,気まぐれでSpecial Editionとしての最終作となった本作を選ぶのが私の天邪鬼なところだが,まぁよかろう。

このメンツでのSpecial EditionはLive under the Skyにも1987年に登場していて,私は現場で観たような気もするのだが,記憶が飛んでいる。あるいはここにPat Methenyが参加したレーザーディスク(死語!)を以前保有していたので,観たつもりになっていただけかもしれない。我ながらいい加減なものだ。だが,同じ年のMiles DavisのグループとWayn ShorterとDave Liebman入りのJohn Coltrane Tributeは確実に見ている。

本作はSpecial Editionとしては,ECMからImpulseに移籍しての第2作,通算6作目のアルバムである。Impulseの初作となった"Irresistable Forces"は満面の笑みのJack DeJohnetteのジャケに違和感があって,聞いたことがない(爆)。まぁメンツは本作にNaná Vasconcelosが加わっただけなので,大きくは変わらないと想像しているが,そのうちストリーミングで聞いてみることにしよう。

それでもってこのアルバムであるが,私の中ではSpecial Editionというと,どうしてもECMの第1作の強烈なイメージが残っており,そこからはサウンド的には大きく変化したと思わせる。ここではそのアルバムでも演奏した"One for Eric"を再演しているが,曲の印象は変わらなくとも,半ばエレクトリック化したSpecial Editionもなかなか面白いと思わせる。そしてECMのアルバムよりはずっと聞きやすいようにも思える。その辺りが後期Special Editionへの評価の分かれ目になるのではないかと思える。私の場合,ECM第1作のハイブラウな感覚がどうしても頭から離れない。それぐらい強烈な印象を残すアルバムだったが,本作も凡百のアルバムに比べれば,ハイブラウであることには間違いない。

まぁ全編を通しで聞くと74分以上の長尺ではあるが,だれずに聞かせるところはやはり大したものだと思わざるをえないが,このメンツであるから,これぐらいは軽々と行けそうだというのも正直なところ。それでも硬軟取り混ぜて,この長編を聞かせるのがJack DeJohnetteのJack DeJohnetteたる所以。星★★★★。

Recorded on February 1-3, 1988

Personnel: Jack DeJohnette(ds, key), Gary Thomas(ts, fl, b-cl), Greg Osby(as, ss), Mick Goodrick(g), Lonnie Plaxico(b)

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2024年2月21日 (水)

"Secrets":Herbie Hancockのファンク・アルバムだが,ゆるくて燃えないなぁ...。

_20240219_0001 "Secrets" Herbie Hancock (Columbia)

Herbie HancockのColumbiaボックスから本作を聞いた。本作の次に出るのが”V.S.O.P."となるのだが,アナログならそのD面に収められているファンク・チューンを演奏しているのが,このアルバムの主要メンツなのだが,随分印象が違う。"V.S.O.P."の演奏がファンク度が強い演奏だったのに比べると,ここでの演奏はよく言えばメロウ度が高く,悪く言えばゆるい。特にアナログで言えばA面の3曲はいけていない。典型的なのが"Cantaloup Island"の再演だろうが,なんじゃこれは?のレベルではがっくり来る。

まぁ,アナログだとB面に転じて,"V.S.O.P."にも収められた"Spider"はライブ音源同様の演奏で許せる出来だと思えるし,後にLee Ritenourがバンド名とした"Gentle Thoughts"はソフトながらもなかなかの佳曲だとは思う。Paul Jacksonのベースかくあるべしと思わせる"Swamp Rat"や,ラストのBennie Maupin作"Sansho Shima"もHerbie Hancockのピアノ・ソロがいかにもでいいのだが,全体的にもう少しヘヴィな感覚があってもよかったように思える。

ということで,私が本作をアナログで保有していれば,おそらくB面しか聞いていなかったであろうアルバム。こういうのを聞くと,やっぱり"Flood"って最高だったよなぁなんて思ってしまう私である。星★★★。このアルバム,7曲中5曲にMelvin Raginなる人物が作曲で絡んでいるが,これはWah-Wah Watsonのことだそうだ。ということで,このアルバムのサウンドにはWah-Wah Watsonの関与度が高いということになるな。

Personnel: Herbie Hancock(p, el-p, key, synth), Bennie Maupin(ts, ss, saxello, b-cl), Wah-Wah Watson(g, synth, b, vo), Ray Parker, (g, synth, b, vo), Ray Parker, Jr.(g, vo), Paul Jackson(b), James Levi(ds), Kenneth Nash(perc), James Gadson(ds, vo), Art Baldacci(vo), Fred Dobbs(vo), Don Kerr(vo), Chris Mancini(vo)

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2024年2月20日 (火)

Wayne Shorterのブートレッグ:テンション高過ぎである。

Zero-gravity-2016 "Zero Gravity 2016" Wayne Shorter Quartet (Bootleg)

早いもので,Wayne Shorterがこの世を去って間もなく1年になる。私がWayne Shorterのライブを観たのは2014年に遡る(その時の記事はこちら)が,それは物凄いテンションで迫ってきたのが今でも忘れがたい。このWayne Shorterが率いた最後のクァルテットはアルバムでも,ライブでも無茶苦茶高度な演奏をしていた訳だが,こういうブートを聞いていると,それを改めて追体験するには最適だと思えてしまう。

このブート,Definitive Blu-ray Editionとなっていて,演奏の模様がBlu-rayに映像でも格納されていて,音源は映像をソースとするものだと思う。ただ,私の場合,音楽に関しては映像よりも音指向なので,音だけでも十分なのだが,まぁ付加価値として映像が付いていることに文句はない。

それにしても,2014年に聞いた彼らのライブを思い起こさせる緊張感には改めて驚いてしまうが,この時,Wayne Shorterは80歳を過ぎていたということには驚愕させられる。後に"Children of the Light"としても活動を続けるバックのトリオも超優秀で,この4者の一体感も素晴らしい。

しかし,これだけのテンションの高さゆえ,しょっちゅう聞きたいとは思えないのも事実だが,Wayne Shorterのクリエイティビティを振り返る意味では避けては通れない音源である。まさにこの時点でWayne Shorterは人間国宝と呼ぶに相応しい人であった。

Recorded Live at Bela Bartok National Concert Hall, Budapest, Hungary on April 11, 2016

Personnel: Wayne Shorter(ts, ss), Danilo Perez(p), John Patitucci(b), Brian Blade(ds)

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