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カテゴリー「ジャズ(2024年の記事)」の記事

2024年12月29日 (日)

2024年の回顧(音楽編:その2):ジャズ編

2024-best-albums-2

結局のところ,私は音楽のジャンルではジャズが一番好きということで,ジャズのカテゴリーでは独立した回顧をずっと続けているが,ジャズという音楽もその幅広さゆえ,カテゴライズ不能というアルバムも存在する中,今年は比較的コンベンショナルなチョイスになったかもしれない。

私が聞いた瞬間から,これを上回る作品は難しいと思わされたのがVijay Iyerの"Compassion"であった。本作が新譜でリリースされたのは今年の2月のことだったはずだが,やはりこのアルバムの持つインパクト,質の高さは私は頭抜けていたと思っている。そもそもVijay Iyerがアルバムを出すたびに,この年間ベスト作に選んでいるようにも思うが,これだけの優れた作品群を出し続けること自体がこれは凄いことだと思える。

同じことはクリポタことChris Potterにも言える。クリポタの"Eagle’s Point"はそのメンツからしても,今年屈指の注目作だったと言ってもよいが,軽々とこちらの期待を越えてしまうところがクリポタの凄いところである。クリポタはこうしたリーダー作に限らず,客演したマイキーことMike Sternの"Echoes and Other Songs"でもいい仕事ぶりで,マイキーとしても近年で最も優れた作品となったことへの貢献度も忘れがたい。

今年のライブとの合算値として評価したいのがNik Bärtsch’s Roninの"Spin"であった。ライティングとも一体化したライブも素晴らしかったが,ECMではなく,自身のレーベルから出たこの新譜は,ECMの諸作よりもファンク度が強いように感じられたが,そもそも好きなバンドの現行メンバー編成による最新作として,ファンにとっては非常に嬉しい作品となった。このミニマル・ファンク,マジではまると抜けられないのである。

Brad Mehldauが放った2作,"After Bach","Apres Faure"も相変わらずの越境度にはわくわくしたものの,今回のベスト作では選外としたが,いいアルバムであったことに変わりはない。ほかにもここには挙げきれていないアルバムも多数あるが,新譜としてはこの3枚を挙げておこう。

今年のベストとして挙げることには疑問もあるものの,評価しなければならないのが発掘音源である。Wayne Shorterの"Celebration Volume 1"は,今後も登場するであろう未発表音源への期待を高めるに十分であり,亡くなってもきっちりレガシーを残したと思わせるものであった。

Wayne ShorterはWayne Shorterで高く評価するが,年末に届いたMcCoy TynerとJoe Hendersonの"Forces of Nature: Live at Slugs'"はジャズ的スリルという観点では他のどのアルバムをも凌駕するものであったと言っても過言ではない。マジで興奮させられたのはこのアルバムだった。

もう一枚は新作に戻るが,音楽的評価はさておき,楽しませてもらったという点でJohn Beasleyがビッグバンドで挑んだChick Corea集を「特別賞」として挙げておきたい。改めてChick CoreaのReturn to Foreverにおける曲のカッコよさを感じさせると同時に,アレンジメント,ソロイストともにリスペクトを感じさせながら,新しい感覚を生み出したことを評価したい。

ということで,今年もいろいろな音楽を楽しませてもらったことに感謝しながら,来年も更に優れた音楽に触れられることを祈りたい。

2024年12月27日 (金)

Arild Andersenのソロ作:ECMでしか成り立たないよなぁ。

Landloper "Landloper" Arild Andersen(ECM)

ECMというレーベルはベースやチェロのソロ・アルバムをリリースしてしまう稀有な存在と言ってよいが,それは総帥Manfred Eicherがベーシストだったという出自による部分もあるのかもしれない。今回はそのEicherはExecutive Producerとなっているので,これはArild Andersenの持ち込み音源なのかもしれない。

冒頭の"Peace Universal"こそ宅録ながら,それ以外はライブ音源で,Arild Andersenによる完全ソロだが,シークェンサーのようなエレクトロニクスも駆使しているので,相応に色彩感は確保されている。もはやジャズと言うよりアンビエントな世界であるが,想定以上の聞き易さもあって,これはなかなか楽しめるアルバムである。

アンビエントな響きと言いつつ,オリジナルに加えて,スタンダード"A Nightingale in Sang in Berkley Square"やOrnette Colemanの"Lonely Woman"をCharlie Hadenの"Song for Che"をメドレーでやったり,Albert Aylerの"Ghost"も別のメドレーの一部に組み込んだりと,幅広い選曲が面白い。また先述の冒頭に収められた"Peace Universal"はドラマーのBob Mosesのオリジナルのようだが,よくぞこんな曲を見つけてくるものだと感心してしまうほど,掴みはOKなのだ。

まぁ,このアルバムを聞いて面白いと思えるかどうかはそれぞれのリスナーの嗜好次第だが,私はこのサウンドは結構いいと思う。ECMならではの世界観としか言いようがないが,ついつい評価も甘くなり,星★★★★☆。

Recorded Live at Victoria National Jazzscene on June 18, 2020 and at Home

Personnel: Arild Andersen(b, electronics)

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2024年12月26日 (木)

Archie Sheppの"Montreux" 2 in 1:終曲のフェード・アウトが痛い...。

Archie-shepp-montreux "Montreux" Archie Shepp (Freedom)

本作は元々は"Montreux One","Montreux Two"という2枚のアルバムとして分売されていたもので,それが2 in 1のCDとして発売されたのがほぼ30年前のことだが,私は中古でゲットしたもの。それがいつ頃だったかは覚えていない。2 in 1というのは聞く方にとっては安く上がるのでありがたいことはありがたいのだが,残念なのはアルバム中で最も激しいと言ってよい最後の"Blues for Donald Duck"が演奏途中でフェード・アウトってことだ。まぁCDの収録時間には限界があるから,仕方がないとは言え,これはやはり惜しい。そうは言いながら,これを2枚組でリリースしたところで売れる枚数は限られているだろうというレコード会社の判断も,それはそれで仕方ない。しかし惜しいと言えばやはり惜しいと思えるのだ。

70年代以降のArchie Sheppはコンベンショナルなスタイルでの演奏が増えたが,昔ながらの激しい演奏ばかりやっていればいいってものでもないし,こういうミュージシャンの変化そのものはあっても不思議ではない。私は60年代の演奏も70年代以降の演奏のどちらも受け入れOKである。よく言われる50年代のArt Pepperと復帰後のArt Pepperのどちらがいいかという論争と同じで,私は両方いいと思っているのと同じである。

ここでの演奏はArchie Sheppのフレージングもよく,大いに楽しめる。そうした中で"Blues for Donald Duck"が突出した激しさを持っているだけにこれをフェード・アウトするか,ほかの曲をフェード・アウトにするかってのは難しい判断だ。全編を通じていい演奏が続くので,これは致し方ない判断だったという気もする。

そうした中で,1曲目のArchie Sheppのソロ・カデンツァから入る"Lush Life"が素晴らしく,冒頭からこういう演奏をされれば完全に掴みはOKで,そのまま好調な演奏が続いて嬉しくなってしまうのだ。

Montreux-two

こういうアルバムはもう少し入手を簡単にしてもよいと思わせる演奏だが,やっぱり売れないのか...(苦笑)。久しぶりに聞いてもこのアルバムの時のArchie Sheppは好調だった。ということで,フェード・アウトなかりせばということで,半星減らして星★★★★☆。ついでに"Montreux Two"のジャケ写真もアップしておこう。

Recorded Live at Montreux Jazz Festival on July 18, 1975

Personnel: Archie Shepp(ts, ss), Charles Majid Greenlee(tb), Dave Burrell(p), Cameron Brown(b), Beaver Harris(ds)

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2024年12月25日 (水)

師走にボサ・ノヴァでくつろぐ。

_20241224_0001 "The Sound of Ipanema" Paul Winter with Carlos Lyra(Columbia)

私はブラジル音楽もそこそこ好きだが,ボサ・ノヴァの持つゆったり感(それをサウダージと呼んでもよいのかもしれないが...)はいかなる状況にもフィットするものだと思っている。そんなボサ・ノヴァを聞くならブラジル人ミュージシャンのアルバムを聞いていればいいと思いつつ,アメリカ人でもちゃんとブラジル音楽を理解しているミュージシャンもいるということで,今日はPaul Winterのアルバムである。

Paul Winterと言えば,後のRalph TownerらOregon組を擁したPaul Winter Consort以降の方がよく知られたところだが,それに先んじてブラジル音楽に取り組んでいたことを忘れてはならない。ジャズ界でボサ・ノヴァと言えばStan Getzと考えられるのは仕方ないところだが,Paul Winterが"Jazz Meets the Bossa Nova"をリリースしたのはGetzが"Getz/Gilberto"をリリースするよりも前なのだ。それに続いて本作と"Rio"がリリースされ,ブラジル3部作となる訳で,Paul Winterの名誉のために言えば,"Getz/Gilberto"が売れたからボサ・ノヴァに取り組んだ訳ではないのだ。

ここではCarlos Lyraの何ともソフトな歌声もあって,実に心地よい時間が流れていく。本作を聞いていると「Paul Winter,わかってるねぇ~」と言いたくなってしまうのだ。ブラジル音楽へのちゃんとした理解があってこそできる音楽であり,Paul Winterのソフトなアルトの響きとのマッチ度も素晴らしい。裏ジャケに書かれた"The Warm Sound of Saxophonist Paul Winter, with the Lyrical Songs, the Sensitve Singing and the Gentle Guitar of Carlos Lyra, Brazil's Great Young Composer"という表現こそ,まさに言い得て妙だ。ピアノを弾くSergio Mendesも楚々とした伴奏ぶりも好印象で,総合的に見ても,アメリカ資本によるこの手のアルバムとしては屈指の作品と言いたい。星★★★★★。

Personnel: Paul Winter(as), Carlos Lyra(vo, g), Sergio Mendes(p), Sebastião Neto(b), Milton Banana(ds)

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2024年12月21日 (土)

McCoy TynerとJoe Hendersonの凄い発掘音源。マジで物凄い!

Forcesofnature"Forces of Nature: Live at Slugs'" McCoy Tyner / Joe Henderson (Blue Note)

なかなかデリバリーされないでイライラしていたのだが,届いたのは国内盤で,リリース日のデリバリーだったので文句は言えない。私としては輸入盤でOKだったのだが,まぁいいや。

そんな状態だったので,音源は公開された段階からストリーミングで聞いていたのだが,これはけだし強烈な発掘音源だ。演奏にも参加しているJack DeJohetteが個人的に所有していた音源を世に出したもので,ジャケ裏には"DeJohnette Legacy Series"なんて書いてあるから,ほかにも音源があるってことか?いかんせん60年近く前の音源であるから,音質的には少々厳しい部分があるのは仕方がないが,十分に聞けるレベルではある。

そんな音質的な瑕疵はものともせず,ここに収められたエネルギーが凄い。まさに「熱い!」ジャズである。こんな演奏が定常的演奏されていたという当時のジャズ・シーンについつい思いを馳せてしまうが,冒頭の"In ’n Out"からして,ぶちかましモード炸裂なのだ。Blue Noteのスタジオ録音でのオリジナルだって熱い演奏だったが,それを越える強烈さで迫ってくるのはライブゆえの興奮ってところか。この演奏に興奮しなければジャズ・ファンじゃねぇよ!と思わず言いたくなるような激演である。

同じような感覚はDisc 2の最初の"Taking Off"でも感じられるが,全編に渡って繰り広げられる演奏が実に素晴らしい。私が聞いたJoe Hendersonの演奏の中でも最も激しいものの一つと思えるし,若き日のJack DeJohnetteが強烈なドラミングを聞かせるのも大きな聞きものと言える。 とにもかくにも,よくぞこんな演奏が残っていたものだと思わざるをえない。本年屈指の発掘音源の一つと評価したい。もちろんこれならば星★★★★★だ。

Recorded Live at Slugs’ Saloon in 1966

Personnel: Joe Henderson(ts), McCoy Tyner(p), Henry Grimes(b), Jack DeJohnette(ds)

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2024年12月19日 (木)

久々にショップを訪れて見つけた新譜:Carl Allenの"Tippin'"

_20241218_0001 "Tippin'" Carl Allen(Cellar Records)

先日,ちょっとした時間があって立ち寄ったショップで見かけて,即購入を決定したアルバム。何てたってリーダーCarl Allenを支えるのはクリポタことChris PotterにChrisitian McBrideである。これはどう考えても気になるメンツだ。本来のリリース時期は来年初頭のようだが,あるところにはあるのである(笑)。

まぁクリポタのピアノレス・トリオでの演奏はJohn Patitucci,Brian Bladeとの"Live in Italy"もあったし,そちらのトリオでの新作は来年にリリースを控えているから,そっちも楽しみな訳だが,こちらのメンツも相当期待できると思っての購入であった。Carl Allenのライナーによれば,Renee RosnessのアルバムでCarl AllenとChristian McBrideがバックを務めた際のサックス・プレイヤーがクリポタで,その時にSonny RollinsのVanguardライブの如きピアノレス・トリオでの演奏を思いついたとのことである。

"Parker's Mood"で始まるこのアルバムはオリジナルに交えて,スタンダードやジャズマン・オリジナルを演奏していて,こうしたセッティングでのクリポタの吹きっぷりがどうなるのかというところに期待してしまったのだが,どんなシチュエーションでもちゃんと個性を打ち出すクリポタの実力は十分に感じられて,相当に楽しめるアルバムだと言ってよい。テナー,ソプラノ,バスクラを持ち替えて,コンベンショナルなセッティングでの吹奏を聞かせるクリポタは実に魅力的だし,このフレージングはたまらん...。

そして何よりも気になるのがJohn Coltraneゆかりの"The Inchworm"と"They Say It’s Wonderful"をクリポタがどう吹くかというところであったが,"The Inchworm"はさすがにColtraneに比べると軽いかなぁと感じさせるのはソプラノ・サックスのミキシングのせいもあるかもしれない。"They Say It’s Wonderful"の方はテナーでじっくりかつストレートにという感じだが,ColtraneはJohnny Hartmanとのアルバムでの演奏だったから,ちょいと比較が難しい。クリポタもColtraneヴァージョンがあるだけにやりにくい部分もあったのではないかとも思えるが,こちらの印象の方がいいのはテナーだからって気もする。

ただこのアルバム,後半にはちょっとどうなのかと思わせるようなプロデュースぶりが気になる部分があることも事実だ。8曲目のKenny Barron作の"Song for Abdullah"には,ピアニストJohn Leeを招いての演奏となっているが,美しい演奏ではあるものの,敢えてこの曲を入れる必要が本当にあったのかと感じさせる。またこのメンツでPat Methenyの"James"って選曲はほかの曲とテイストが違い過ぎて,どうなのよと思わざるをえない。確かにUnity Bandのライブでもやっていたとは言え,ここでのフィット感は???だ。また,最後のミュージカル"Bye Bye Birdie"からの"Put on a Happy Face"もこの重量級トリオには軽過ぎる選曲ではないか。前半と後半の選曲によるムードの落差があると感じるのだ。

そうした点も考慮して星★★★★ってところ。私としてはもう少し激しくやる部分があってもいいように思うが,クリポタのフレージングは傾聴に値すると思う。それがファンの弱みってところだな。

Recorded on January 13, 2024

Personnel: Carl Allen(ds), Chris Potter(ts, ss, b-cl), Christian McBride(b)

2024年12月18日 (水)

ようやく到着:Ben Monderの3枚組超大作"Planetarium"。

Planetarium"Planetarium" Ben Monder(Sunnyside)

ストリーミングでは結構早くから公開されていたこのアルバムの現物がようやくデリバリーされた。Ben Monderは現在Bad Plusのメンバーとしても活躍中であり,今年来日も果たしたが,バンドへのフィット感を維持しているのは立派だと思った。しかし,ソロ・アルバムとは少々趣が違うとも思いつつ,変態的アルペジオを聞かせるなど,やはりこの人は面白いと思わせた。

そんなBen MonderのソロはなんとCD3枚組の超大作である。しかし,派手派手しいところもなく,あくまでもいつものBen Monder的なサウンドと言ってもよいが,自身のギターの多重録音も交えつつ,ヴォイス,あるいはリズムとの共演が展開される。これがもはやアンビエントと言ってもよい趣もあれば,プログレと言ってもよいサウンドもあって,まさにBen Monderの音楽となっている。全15曲,3時間近い演奏時間というのはさすがに普通のリスナーには厳しいかもしれないが,Ben Monderのサウンドスケープにはまったことがある私のような人間にとっては,おぉっ,やっぱりBen Monderだ!と言いたくなってしまうような音の連続で嬉しくなってしまうのだ。ただ,普通の人にはこれの何がおもろいねん?と言われても仕方がないのも事実だが...。

しかし,ここで聞かれるBen Monderらしいアルペジオやフレージングの連続は,もはやOne and Onlyだろう。以前はBill Frisell的と感じる部分もあったが,ここまでくれば,これは完全にBen Monderの世界だ。約3年を掛けて作り上げたこのアルバムのボリュームには圧倒されるが,ずっと聞いていても心地よい。また,バックのヴォイスの面々の声がBen Monderの音楽にマッチして,実にいい感じだ。本作がリリースされたことだけでも価値があるということで,星★★★★☆としよう。

Recorded between December 2020 and December 2023

Personnel: Ben Monder(g), Theo Bleckmann(vo), Charlotte Mundy(vo), Emily Hurst(vo), Theo Sable(vo), Chris Tordini(b), Ted Poor(ds), Joseph Branciforte(ds), 武石聡(ds)

本作のストリーミングへのリンクはこちら

2024年12月17日 (火)

2024年の回顧:ライブ編

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年の瀬も押し詰まってきたし,年内はもうライブに行く予定もないので,今年の回顧はライブから。私が今年行ったライブが全部で31本で,これは私の中ではこれまでの最高記録だと思う。月2本を超えるペースで通っていたのだから,結構行ってるねぇ。ジャズを中心にロック,クラシックと満遍なくライブに通ったという気がするが,どのライブもそれぞれに楽しめた記憶が残っていて,これは決定的な失敗だったというのがなかったのは実に嬉しい。

そんな中で今年のライブで最も感動したのはMarcin Wasilewski Trioであった。これで1stと2ndで曲を変えてくれていたら尚よかったが,私はCotton Clubで身じろぎもせずに彼らの演奏を聞き,そして感動していた。

正直言って2月にMeshell Ndegeocelloのライブを観た時には,もはや今年最高のライブはこれだろうと思っていたのを覆したMarcin Wasilewskiではあったが,だからと言ってMeshell Ndegeocelloのライブの素晴らしさも改めて強調しておかなければならない。実に素晴らしいメンツを揃えて,Meshell Ndegeocelloの創造力は尽きることがないと思わせた。

更にジャズ界の長老,Charles Lloydも年齢を感じさせない素晴らしい演奏を聞かせ,相変わらずの不老不死モードであったのが凄い。

クラシック界では何と言ってもBlomstedt/N響のシューベルトだった。特に「グレイト」が素晴らしかった。97歳のBlomstedtは一体いつまで振るのか?思ってしまいつつ,あれだけの素晴らしい演奏を引き出す力は,こちらも不老不死だ(笑)。

そのほかで印象に残るのがNik Bärtsch’s Ronin。音楽だけでなく,照明とも一体化したライブの雰囲気そのものが実に魅力的であった。そのほかにもMarisa Monteを観られたのも嬉しかったし,Daniil Trifonovの現代音楽づくしも面白かった。

ということで,来年はどれぐらいのライブに行けるかはわからないが,今年以上に楽しませてくれるライブを期待しつつ,本年を代表するライブとしてMarcin Wasilewskiのライブの模様を改めてアップしておく。

2024年12月16日 (月)

これも現物未着のためストリーミングで聞いたThomas Strønenの"Relations"。自由度高っ!(笑)

Relations"Relations" Thomas Strønen (ECM)

これも発注のタイミングで,リリースされたものの現物が届かないので,ストリーミングで聞いている。このジャケを見ると魅力的なメンツが並んでいるので,バンド形態での演奏と思ったら,基本的にはリーダーThomas Strønenのソロ及び参加したメンツとのデュオ・アルバムである。

いきなりThomas Strønenのソロ・チューンでスタートし,おぉっ,これは何か雰囲気が違うと思わせるのだが,各々のメンバーと繰り広げられる演奏は主題の通り極めて自由度が高い。破壊的なフリー・ジャズという感じではないが,書かれた音楽ではなく,スポンテイニアスなインプロヴィゼーションと言ってよいものばかりだ。1曲当たりの収録時間は短く,最長でも冒頭の"Confronting Silence"の4分4秒だし,全体でも35分程度だ。まぁこういう即興的な演奏はこれぐらいが丁度いいと思わせるが,これがいかにもECM的でなかなか面白い。「高野山」なんて曲もあるしねぇ。

ECMのサイトによれば,Thomas Strønenがアルバム"Bayou"のレコーディングを早めに終了させたことで生まれたスタジオの空き時間に,総帥Manfred Eicherがソロ・パーカッションでの演奏を示唆したのが契機で,そこから数年かけて出来上がったのがこのアルバムということらしい。

メンツにはJorge Rossyも含まれているが,ここではJorge Rossyはピアノをプレイしている。Jorge Rossyはドラムスだけでなく,ヴァイブやピアノのプレイも多くなっているが,"Nonduality"をはじめとして,静謐で現代音楽的な響きを聞かせて,何でもできるねぇと思わせる。

アルバム全体を貫くのは現代音楽にも通じるクールな音空間であり,即興性を重視した演奏はおそらくはリスナーの好みは大きく分かれるはずだ。Craig Tabornはまぁわかるとしても,日頃のクリポタの演奏とは一線を画するところがあるが,私は結構楽しんだクチだ。正直言ってしまえば何度も,あるいは頻繁にプレイバックしようという感じの音楽ではないのだが,私にとっては好物に近い音楽と言ってよいだろう。こういう想定外のアルバムが出てくるところがいかにもECMである。ちょいと甘いと思いつつ,星★★★★☆としてしまおう。尚,Sinikka Langelandが弾いているカンテレというのはフィンランドの民族楽器だそうだ。へぇ~。

Recorded between 2018 and 2023

Personnel: Thomas Strønen(ds, perc), Chris Potter(ts, ss), Craig Taborn(p), Jorge Rossy(p), Sinikka Langeland(kantele, vo)

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2024年12月15日 (日)

現物はまだ届いていないが,M.T.B.の30年ぶりの新譜。

Solid-jackson "Solid Jackson" M.T.B. (Criss Cross)

昨今のネット・ショップにおける輸入盤の流通状態は必ずしも良好とは言えず,発注のタイミングを間違えるとデリバリーが非常に遅くなることがある。本作も某ショップで発注していたのだが,いつまで経っても入荷しないので,別のショップに切り替えたものの,今度は入荷待ちになって,年内にデリバリーされるかは怪しい状態になっている。なので,通常は現物が届いてからレビューするのだが,今回はストリーミングで本作を聞いた。

M.T.B.と称するユニットはBrad Mehldau,Mark Turner,Peter Bernsteinの頭文字を取ったものだが,第1作も同じCriss Crossからリリースしていて,それが1994年のことであるから,30年ぶりのレコーディングということになる。Brad MehldauはことあるごとにPeter Bernsteinとの共演は続けてきたし,Mark Turnerのアルバムにも"Yam Yam"と"In This World"に参加しているから,相応に縁の深い人たちのユニットと言ってもよい。前作が出た94年の段階ではBrad Mehldauのメジャーでの初リーダー作である"Introducing Brad Mehldau"もリリースされていない時期であるから,まだまだ駆け出しと言ってもよかった時代だ。それが30年を経て,Brad Mehldauはジャズ・ピアノ界を代表するミュージシャンの一人となったが,若い頃からの付き合いは大事にしているってところだろう。

前作も久しく聞いていないが,前作からの変更はドラマーがLeon ParkerからビルスチュことBill Stewartに代わっているが,やっている音楽そのものはコンベンショナルなジャズである。メンバーのオリジナルに,ジャズマン・オリジナルを交えるという構成は前作同様だ。面白いのは前作でも"Limbo"を取り上げたWayne Shorterの"Angola"をやっていることだが,この曲,お蔵入りしていた"The Soothsayer"からのチョイスというのが渋い。ついでに言えば,それに続いて演奏されるHank Mobleyの"Soft Impression"も発掘音源"Straight No Filter"からだし,もう1曲もHarold Landの"Ode to Angela"っていう選曲にはどれだけこの人たち勉強熱心なのか?とさえ思いたくなってしまう。

Brad Mehldauは客演モードになると,個性の発露を少々抑える感覚があるが,この共同リーダー作と言ってよい本作でもそんな印象だ。三者がバランスよく演奏をしている感じなので,Brad Mehldauのソロは相応にレベルは高いが,いかにもBrad Mehldauだと思わせるのは本人のオリジナル"Maury's Grey Wig"だろう。

まぁこれだけの真っ当なメンツを揃えたアルバムなので全く破綻はないが,痺れるってほどではないのは惜しい気もする。だが,旧友が集まって作り上げた同窓会的なアルバムだと思えば腹も立たないってところか。星★★★★。

Recorded on November 25 & 26, 2023

Personnel: Brad Mehldau(p), Mark Turner(ts), Peter Bernstein(g), Larry Grenadier(b), Bill Stewart(ds)

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