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カテゴリー「ジャズ(2023年の記事)」の記事

2023年2月 4日 (土)

今日は趣向を変えて,Count Basieの「猫ジャケ」アルバム。

Lester-leaps-in "Lester Leaps in" Count Basie and His Orchestra Featuring Lester Young (Epic)

クラシックな音源である(笑)。これは1939~40年という古い音源で,私がこうした時期の音楽について,このブログにアップした記憶はないし,基本的にジャズはビ・バップ以降しか聞いていない私がなぜこれを保有しているかと言えば,「猫ジャケ」がおしゃれだからである。Epicレーベルの「猫ジャケ」のアルバムは6枚あって,それが一度紙ジャケで再発された時に全部買ったのは,こういう企画は好き者しか買わないから,持っていれば後々何かの役に立つ(?)だろうという思惑からという,極めて不純な動機による。だが,こうした時期はCount BasieバンドにおけるLester Youngの全盛期ということもあって,音楽的な興味があったことは一方で事実である。

そして本作を聞いていると,この時期,ジャズはダンス音楽だったんだろうなぁと思ってしまうようなスイング感に満ちた演奏群である。古い音源だけに当然音はよくないが,往時のジャズの演じられ方を想像させるに十分な楽しさは感じられる。そして何よりもLester Youngの流れるようなフレージングが素晴らしい。そうは言っても,サウンドはどうやってもCount Basieだという感じで,Count Basieのピアノってのはスタイルが明確だったなんて改めて思ってしまった。最後に収められてあ"Boogie Woogie"にはJimmy Rushingのヴォーカルも入るが,さすがに声が若々しい。

購入の動機は不純でも,こうして楽しんでいるからよしとしよう(笑)。プレイヤー多数なので,詳細のPersonnelは省略するが,Lester Youngに加えて,Buck ClaytonやVic Dickenson等の名プレイヤーも参加している。この二人はJimmy RushingとEddie Condon All Starsで来日していたなんてこともあったなぁ。その時のライブ・アルバムについても記事にしたことがあったのも懐かしい(記事はこちら)。

Recorded on March 19,20,April 4, 5,August 4, September 5,1939 and on August 28, 1940

2023年1月31日 (火)

Michel Petruccianiの"Pianism":このトリオはやっぱりいいと思う。

_20230130 "Pianism" Michel Petrucciani Trio(Blue Note)

以前にも書いたが,何枚かCDは保有していても,私は決してMichel Petruccianiを熱心に聞いてきた訳ではない。そんな私がこれまでのMichel Petruccianiのアルバムで最も聞く頻度が高かったのは,Concordから出たVillage Vanguardでのライブ盤であった。そこにおけるPalle DanielssonとElliot Zigmundとのトリオはバランスもよく,魅力的に響くトリオだったと思っている。本作はその後,Michel PetruccianiがBlue Noteレーベルと契約してリリースした第1弾のアルバムだが,そのトリオによる演奏ということで,改めて中古でCDをゲットして聞いてみた。

これがトリオのメンバーに恵まれてと言うところを強く感じさせる,ナイスなアルバムであった。全6曲中4曲がPetruccianiのオリジナルで,残るが"Night and Day"と"Here's That Rainy Day"という鉄板のような構成で,どれもがMichel Petruccianiのピアノの美学が表出した演奏で,アルバム・タイトル"Pianism"に偽りなしって感じだ。決してBlue Note第1作だからと言って,派手派手しくならず,力みなく抑制された演奏は非常に好感度が高い。そして,このアルバムのピークは最後の"Regina"でやって来る。これが実にいい曲で,作曲能力も大したものだったと改めて思わされてしまった。

このアルバムのレコーディング時には,Michel Petruccianiは23歳になる直前であったということからも,いかにこの人が早熟なミュージシャンであったかを示している。まさに天賦の才能と言ってもよいのかもしれない。思えば,肉体的なハンディキャップを抱えながらのピアノ・プレイだったにもかかわらず,これだけの演奏を聞かせることには驚きを禁じ得ないが,36歳での早逝にもかかわらず,そこそこの枚数のアルバムを残せたことは不幸中の幸いであった。こういうのを改めて聞いてしまうと,ほかのアルバムもちゃんと聞かないといかんなぁと,今更ながら思っている私である。反省も込めて星★★★★☆。

Recorded on December 20, 1985

Personnel: Michel Petrucciani(p), Palle Danielsson(b), Elliot Zigmund(ds)

2023年1月30日 (月)

豪華メンツによるAlex Sipiaginの新作をストリーミングで聞く。

Mels-vision "Mel’s Vision" Alex Sipiagin(Criss Cross)

Alex Sipiaginのアルバムは大体がよく出来ていて,非常に平均点が高いミュージシャンだと思っている。だからと言って全部買いをしている訳ではなく,昨年リリースした"Ascent to the Blues"はスルーしてしまっていた。このブログで最後に彼のアルバムを取り上げたのはその前の"Upstream"に遡る(記事はこちら)。そこでもCriss Crossレーベルのことを書いているが,創設者Gerry Teekensの死によって,一時期存続が危ぶまれたものの,その後も活動は継続され,本作のような新譜がリリースされることは実に喜ばしい。そして,このいかにもCriss Crossらしい豪華なメンツには期待が高まる訳だ。

そうは言っても,この時代,何でもかんでもフィジカルな媒体を購入するという訳でもないので,まずはストリーミングで聞いてから購入を検討というのが,本当に好きなミュージシャンを除いた私の昨今の行動パターンなので,本作もまずはストリーミングで聞いてみた。

Criss CrossのWebサイトによれば,もともとGerry TeekensにはAilex Sipiaginにスタンダードのアルバムを吹き込ませたいという考えがあったようだが,Teekensの死によって,その計画は頓挫していた。新生Criss Crossに吹き込まれた本作では,「スタンダード」という訳ではないが,Don Friedman, McCoy Tyner,Ornette Coleman, そしてCharlie Mingusのジャズマン・オリジナル(それもなかなか珍しい選曲である)を交えたアルバムになっている。そこにSipiaginのオリジナル2曲,クリポタのオリジナル1曲,そしてウクライナ民謡"Vesnianka"が加わるというプログラムである。

このアルバムを聞いていると,やはりSipiaginとクリポタというフロントは強烈だし,リズム・セクションもパワフルである。アルバムとしても相応に楽しめることは間違いない。だが,ストリーミングで聞いているせいもあるかもしれないが,このアルバムを買いたい!ってところまでには至っていないというのが正直なところだ。このメンツとしては珍しいとも言えそうなDon Friedmanの"Summer's End"をはじめ,スロー・チューンの方に意外なよさを感じてしまうのが,私の天邪鬼なところと言ってもいいかもしれないが,アルバム全体でSipiaginとクリポタの対位法的なアプローチが出過ぎじゃないのって気もしてしまう。各人のソロは素晴らしいと思うが,アレンジメントとしてはどうかなぁってところだ。また,Ornetteの"Bird Food"を2テイク入れる必要性についても疑問を感じる。

だがこれだけのメンツである。がっかりさせられることはないが,私にとっては当面はストリーミングで聞いていればいいやって感じである。星★★★★。

Recorded on April 22, 2022

Personnel: Alex Spragin(tp, fl-f), Chris Potter(ts), David Kikoski(p), Matt Brewer(b), Johnathan Blake(ds)

2023年1月29日 (日)

長年未発表だったことが不思議なHampton Hawesのアルバム。

_20230126-3 "Bird Song" Hampton Hawes(Contemporary/OJC)

このアルバムは50年代に録音されていながら,1999年まで長年未発表だったアルバムである。このブログでHampton Hawesのアルバムを取り上げる機会は稀ではあるが,私にとってはCharlie Hadenとのデュオ盤である"As Long As There's Music"が印象深いが,バップ・スタイルのHampton Hawesも素晴らしいと思っているし,ちゃんとContemporaryからのアルバムも何枚かは保有している。記事にしていないだけなのだ(苦笑)。

改めて,このアルバムを聴いてみると,なぜ40年以上未発表だったのか全く理解できないナイスな出来である。全12曲中9曲はPaul Chambers,Lawrence Marableとのトリオだが,残りの3曲では何とScott LaFaroがベースを弾いているのが珍しい(ドラムスはFrank Butlerだ)。

そしてこのアルバム,特にPaul Chambers,Lawrence Marableとの56年録音の方は,ジャズマン・オリジナルにスタンダードを交えて,これが快調そのものなのだ。それに比べると,Scott LaFaro参加の58年の方はイマイチしっくりこないところがある。このアルバムの2つのセッションには2年以上のインターバルがあるから,元からこのフォーマットでリリースするつもりだったのかどうかはわからない。ライナーによれば,Scott Lafaroが参加した3曲は"For Real!"レコーディング時に録音されたトリオ・テイクではないかということだが,例えば”What’s New"とかを聞いていると,ベースのピッチがおかしいようにも聞こえるし,”I’ll Remember April"のアルコ・ソロなんかはこれが本当にLaFaro?と思ってしまう。なので,本作のデータには誤りがあると考える人がいるのも事実だし,確かに私もそう感じる部分がある。

とは言え,お蔵入りさせておくにはもったいないレベルのアルバムであったことは間違いなく,相応に楽しめる一枚ではある。星★★★★。

Recorded on January 18, 1956 and in March, 1958

Personnel: Hampton Hawes(p), Paul Chambers(b), Scott LaFaro(b), Lawrence Marable(ds), Frank Butler(ds)

2023年1月28日 (土)

Mike Mainieriとノルウェー軍団の共演。クールな響きが印象的。

_20230126-2 "Northern Lights" Mike Mainieri(NYC)

ライナーにも書いてある通り,Steps Aheadにも在籍したサックス奏者Bendik Hofsethの紹介により,Mike Mainieriがノルウェーのミュージシャンと共演したアルバムである。"Norwegian Posse"と書いているから,訳せば主題の通り,ノルウェー軍団(笑)ってところである。

アメリカのミュージシャンには北欧のミュージシャンとの共演は魅力的に映るのかもしれないが,Keith Jarrettはもとより,Billy Cobhamにも"Nordic"というアルバムがあって,本作である。参加しているのはまさに当時(現在も含めてと言ってもよいが...)の気鋭のノルウェーのミュージシャンたちである。

それでもって,いきなり"Nature Boy"から始まるのにはびっくりするが,サウンド的には所謂nuジャズってやつで,エレクトロニクスも多用した音楽なので,決してコンベンショナルなジャズではない。コンテンポラリーな響きが強い中で,演奏はクールで,決して熱くならないところが北欧的と言ってもよいかもしれないが,それをよしとするか否かで好みはわかれるはずだ。私のような雑食音楽リスナーにとっては,これはこれでありだ。

そして2曲目"Poochie Pie"の冒頭から響くLars Danielssonのベースの音が実に生々しくも腹に響く。エレクトリックとアコースティックをうまく配分,両立させた音楽は刺激的である。それに続くのがBjorkが主演した"Dancer in the Dark"から”I’ve Seen It All"だったり,"Flamenco Sketch"やら"Naima"までやっているのは何とも不思議な感覚であるが,どんな曲をやってもクールな感覚には変化がない。

同じようなテンポの曲が続くので,全編を聞いていて変化に乏しいと感じるリスナーもいるだろうが,そういう音楽だと思えば腹も立たない。音量を絞ってバーでプレイバックしてもおかしくない響きとも言えるし,ある意味どのようなアンビエンスにもフィットしてしまいそうなのがnuジャズたるところ。まぁ,バーと言っても,オーセンティックなバーよりも,ちょっと尖った感じのバーの方が適切だが(笑)。 星★★★★。

Personnel: Mike Mainieri(vib, marimba), Nils-Petter Molvær(tp), Bendik Hofseth(sax), Bugge Wesseltoft(key, synth, p, prepared-p), Elvind Aarset(g), Lars Danielsson(b), Andere Engen(ds), Paolo Vinaccia(perc), Jan Bang(sample, prog), DJ Strangefruit(turntable), Joyce Hammann(vln), Laura Seaten(vln), Ron Carbone(vla), David Eggar(cello), Gil Goldstein(string-arr)

2023年1月27日 (金)

バブル期に向かう日本を象徴するようなOTBのライブ・アルバム。

_20230126 "OTB Live at Mt. Fuji" OTB(Blue Note)

今にして思えばマウント・フジ・ジャズ・フェスティバルというのは,日本のバブル経済を象徴するようなイベントであった。私も確か一度だけ参戦した記憶はあるのだが,誰を聞いたのかの記憶が全くない。結局参加することに意義があるみたいな感じだったのかと思うが,バブルが崩壊した後も続いていたのだから,ある意味大したものだ。

そんなマウント・フジ・ジャズ・フェスティバルにおけるOTBのライブ盤は,バブル期に向かうその当時の日本にフィットしたイケイケ感たっぷりって感じの演奏を収めている。

前半4曲はピアノ・トリオ,後半3曲をセクステットという構成はなかなか面白いと思え,前半はピアノのHarry PickensがBud Powellに捧げるというかたちで演奏しているが,私はこの人のピアノは実力あるなぁと思っていた。だが,その後,あまり名前を聞かなくなってしまったのはちょっと惜しい気もするここでの演奏ぶりである。

後半のセクステット演奏は,それこそ勢いでブチかますという感じの演奏となっていて,オーディションを経て集められただけあって,相応に実力のあるメンツが揃っていたと思える。Ralph Petersonは亡くなってしまったが,今ではKenny Garrettが一番現役感を醸し出しているってところか。そう言えば,ここに参加しているRalph BowenとKenny Davisは出張中にSmallsで観たことがあったのも懐かしいが,彼らやMichael Philip Mossmanは教鞭を執っているというのも面白い。まぁ,人に教えるだけの実力はあるってことの裏返しだ。

まぁ,当時はみんな若かったってこともあり,勢いが勝ってしまって,コクとかは感じられないってのも事実なのだが,時代がそういう方向に流れていたってことにすればいいと思う。星★★★★。

Recorded Live at Mt. Fuji Jazz Festival on August 31, 1986

Personnel: Michael Philip Mossman(tp), Kenny Garrett(as), Ralph Bowen(ts), Harry Pickens(p) Kenny Davis(b), Ralph Peterson, Jr.(ds)

2023年1月26日 (木)

Harper Brothersを迎えたTete Montlieuのライブ盤。

_20230124 "En el San Juan" Tete Montlieu(Nuevo Medios)

このアルバムを初めて聞いたのは,今はなき高田馬場のマイルストーンだったはずだ。マイルストーンは学生時代からよく通った店であったが,卒業後もたまに顔を出していたのだが,店のアンビエンスに合致したリラックス感が心地よく感じられて,その後すぐに購入したように思う。

Tete Montlieuが亡くなったのは97年だが,このライブが録音されたのが95年なので,晩年のアルバムということになるが,ここではHarper Brothersを迎えての演奏というのが珍しい。Harper Brothersの活動期間からはちょっとはずれた時期になっているが,このライブのために特別に再編したって感じだろうか。北川潔も参加しての演奏である。

Tete Montlieu以外のプレイヤーに注目されるところであるが,Harper Brothersはそれなりの演奏。もう一人Danny Harperなるフリューゲルホーンが参加しているが,この人はHarper Brothersの弟らしいのだが,トランペットのPhillip Harperに比べると技量はかなり落ちるって感じである。むしろここでの演奏で注目されたのがテナーのStephen Rileyだろう。この人,その後SteepleChaseにリーダー作を何枚も吹き込んでいる人だが,このライブの当時は20歳そこそこの若手だったはずにもかかわらず,なかなかの実力者だと思わせるのが拾い物であった。

最近,このアルバムはアナログ2枚組で再発されたようだが,演奏としては特に優れたものということでもない。しかし,上述の通り,リラックス感はあって,そこそこ楽しめるアルバムだと思う。星★★★☆。

因みにHarper BrothersのWinard Harper,Phillip Harperは現在は個別に活動しているようだが,あまり目立った活動とは言えないし,あまりアルバムのリリースもされていない。以前はVillage Vanguardでのライブ音源も残しているが,その後の失速感は否めない。私の感覚では,Stephen Rileyの活動ぶりが当然と思えるのと対照的だ。

Recorded Live at Colegio Mayor San Juan Evangelista on June 19, 1995

Personnel: Tete Montlieu(p), Phillip Harper(tp), Danny Harper(fl-h), Stephen Riley(ts), 北川潔(b), Winard Harper(ds)

2023年1月25日 (水)

フィジカルでリリースされないのが惜し過ぎるLizz Wrightのライブ音源。

Holdingspace"Holding Space: Live in Berlin" Lizz Wright (Blues & Greens)

私が最初にLizz Wrightの音楽に接したのは"The Orchard"でのことだったが,そこから遡ってデビュー作含めて,ずっとLizz Wrightの音楽を聞いてきたし,彼女のアルバムが出れば,高く評価してきたつもりだ。彼女のさまざまなタイプの音楽に根差した歌唱,そして声は実に魅力的であり,これまでも,そしてこれからも期待できる歌手だと思っている。

そんなLizz Wrightの最新作は,彼女自身が設立したと思しきBlues & Greensレーベルからのもので,去年の夏場にはリリースされていたはずだ。しかし,このアルバム,フィジカルな媒体では発売されず,ストリーミング/ダウンロード・オンリーというかたちになっていたため,私は聞いてはいたものの,このブログにアップできていなかった。

このライブ音源は,2018年の欧州ツアーの模様を収めたものらしく,録音から少々時間は経過しているが,改めて聞いても,その音楽の魅力は不変である。私が彼女のライブに接したのはもう7年以上前のCotton Clubにおいてであったが,その時の感動が甦るような素晴らしいアルバムだと思う。

バック・バンドもタイトなまとまりを示し,Lizz Wrightの歌唱を適切にサポートしているのも嬉しいが,とにもかくにもLizz Wright本人の歌が魅力的過ぎる。来日時にも歌ったNeil Youngの"Old Man"のカヴァーなんか最高だよなぁと思ってしまう。私がフィジカルな媒体にこだわってさえいなければ,このアルバムは間違いなく昨年のベスト・アルバムの一枚に加えていたと思わざるをえない素晴らしい音源。星★★★★★。

このアルバムとタイミングは違うが,North Sea Jazz Festivalで歌った"Old Man"の映像を貼り付けておこう。MCやらイントロやらに続いて,Lizz Wrightが歌いだした瞬間,くぅ~っとなること必定。また来日してくれないものか...。

Recorded Live in Berlin in 2018

Personnel: Lizz Wright(vo), Chris Bruce(g), Bobby Ray Sparks II(key), Ben Zwerin(b), Ivan Edwards(ds)

2023年1月24日 (火)

改めてEnrico Pieranunziの美音に浸る。

_20230122"Untold Story" Enrico Pieranunzi(IDA)

私はEnrico Pieranunziのアルバムはそこそこ保有していると思うが,いかんせん多作の人なので,全部なんてことにはならない。しかし,私が彼のファンであることは間違いないところなのだが,このブログにおいては,新譜としてリリースされたアルバムは記事にすることもあったが,手持ちのディスクはあまり書いていなかったなぁということで,今回取り出したのがこのアルバムである。

Enrico PieranunziがIDAレーベルに吹き込んだ3枚は,プレス枚数が少なかったのか何なのかよくわからないが,なかなか入手が難しいようで,オリジナルのフランス盤は結構な高値で取引されている。まぁ,音だけ聞くなら,ジャケ違いの再発盤でもいいのだが,私はなぜかそのIDA盤をすべて持っている。だが,なんで買う気になったのか,いつ,どこで買ったのかという記憶が欠落している。いずれにしても,90年代の初頭に”No Man’s Land"で初めて接した彼の音楽に魅かれて,その後いろいろなアルバムを買い足していった頃のものだろう。

そんな本作を久々に聴いたのだが,これが音もよく,聞いている方が嬉しくなるような美音,美旋律の連続なのだ。Marc Johnson, Paul MotianというBill Evansゆかりの二人との共演だが,Bill Evans的に響く部分もありながら,Enrico Pieranunziならではの個性は十分に確立していると思えるピアノ・トリオ演奏となっている。全9曲中,Pieranunziのオリジナルが5曲,Paul Motianのオリジナル2曲,3者のインプロヴィゼーションと思われるその名も"Improlude"に,John Lewisの"Django"という構成も魅力的であり,美的な面だけでなく,ややハード・ドライヴィングに響く演奏も含まれていて,全編を通じてだれることがないのは立派。星★★★★☆。

Recorded on February 15 & 16, 1993

Personnel: Enrico Pieranunzi(p), Marc Johnson(b), Paul Motian(ds)

2023年1月22日 (日)

Art Pepperの”No Limit”を聴くのも実に久しぶり。

_20230118 "No Limit" Art Pepper(Contemporary)

Art Pepperの音楽に関しては,50年代から60年代前半までと,70年代になってからの復帰後でどちらがいいかという議論は今でも存在していると思う。前にも書いたと思うが,私としては古い音源の方に愛着はあるものの,復帰後には復帰後なりの魅力があると思っている。

本作は"Living Legend"で本格的に復帰して,3作目のアルバムということになるが,アルトとテナーの両方を吹く"Mambo De La Pinta"に象徴されるような,John Coltraneに影響を受けたと思しき激しいブロウっぷりには今更ながらびっくりさせられる。アルバム全体を通して,Art Pepperに関しては問題ないのだが,このアルバムになかなか手が伸びない理由を考えると,ベースとドラムスにあると今回久しぶりに聴いて思ってしまった。

私が聞いていていかんなぁと思うのがTony Dumasの増幅感ありありのベースで,この音色が相当気持ち悪い。またドラムスのCarl Burnettは昔から私の中では評価が低い人なので,この二人がうるさく感じてしまうのがこのアルバムの難点だろう。このリズム隊を聞いていると,Vanguardでのライブのバック(George MrazとElvin Jones)がいかに優れているかっていうのは明らかなのだ。音も違えば,味わいそのものも違ってきてしまうという感じだ。ついでに言っておけば,ピアノのGeorge Cablesもフレージングはさておき,音がしょぼい。

No-limit よって,Art Pepperの演奏は評価できても,収められた音自体で積極的に聞く気がなくなるという不幸なアルバム。"Ballad of the Sad Young Man"とか"My Laurie"のバラッド表現はいいと思えるだけに惜しいねぇ。星★★★☆。因みに"Ballad of the Sad Young Man"は,Art PepperがラジオでRobert Flackのこの歌を聴いて,感動して吹き込みを決意したという意外なエピソードもライナーに書かれている。

尚,CD化に際してタイトル・トラック"No Limit"が追加収録されているが,なんでオリジナルには入れなかったんだろうねぇと思わせるような演奏。国内盤初出時はArt Pepperの写真が使われたジャケットだったのも懐かしい。私はこの写真はあまりいいとは思わないけどね(笑)。

Recorded on March 26, 1977

Personnel: Art Pepper(as, ts), George Cables(p), Tony Dumas(b), Carl Burnett(ds)

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