2022年の回顧:音楽編(その2:ジャズ)

いよいよ今年の回顧も最後である。いつものようにジャズ編で締めくくろう。
実のところ,今年最大の衝撃はAlbert Aylerの"Revelations"だとずっと思っていた。新譜ではないものをここに選出することは望ましいことではないかもしれないが,正直言って,今年これを上回るものは私の中には存在しない。私は遅れてきたAlbert Aylerの聴き手ではあるが,これを聴かずして,私は今年のジャズを総括できないのである。このアルバムについての記事を書いた時,私は「発掘盤大賞」なんて書いているが,発掘盤どころか,私が今年聞いた中で最も強烈かつ記憶に残る音源であった。
純粋な新譜の中で,私が最も感銘を受けたのがWolfert Brederodeの"Ruins and Remains"であった。作曲と即興が交錯するこのボーダレスな音楽こそ,まさにECMの真骨頂と言うべきものであり,Manfred Eicherの美学が如実に表れた傑作と思った。何度聞いても素晴らしい音楽である。
そして,その年のベスト盤を考えるとき,毎年のように出てくるのがCharles Lloydであるが,今年も同じであった。今回,3つの異なる編成での3枚のアルバムを合わせ技としてベスト盤とするというのはいささか反則気味でもあるが,振り返ってみればやはりこれは避けて通れなかった。
Enrico RavaとFred Herschのデュオは,リリースが発表された段階から,誰しもが期待するアルバムだったと思うが,見事に期待に応えてくれた作品であり,何とかこのデュオで来日してくれないかと思わせる逸品であった。
DOMi & JD BECKの"NOT TiGHT"のジャケットには,私のような還暦過ぎのオヤジは思わずのけぞるが,この若い二人が生み出す音楽のフレッシュさ,それによってもたらされる驚き,そして何よりも心地よいグルーブ感を評価したい。まさに新世代のジャズ。
最後も発掘盤となるが,坂田明と森山威男の 「ミトコンドリア」である。よくぞこんな音源を発掘してくれたと言いたくなるような,爽快なフリー・ジャズである。記事にも書いたのだが,「坂田明らしいフレージングを煽る森山威男のドラムスによるパルスに興奮しない奴はもぐり」だ(きっぱり)。
ということで,今年もいろいろな音楽に接してきたが,ストリーミングの広がりもあり,ソフトの購入枚数は本当に減ったというのが実感ではあるが,そうした中でもお知り合いの皆さんからの情報も活用しつつ,これからも優れた音楽に接していきたいと思った年の瀬である。
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