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カテゴリー「ジャズ(2022年の記事)」の記事

2022年5月13日 (金)

Wes MontgomeryのCTIに先立ってのイージーリスニング路線。 #WesMontgomery

_20220507-2"California Dreaming" Wes Montgomery(Verve)

Wes Montgomeryのイージーリスニング路線と言えば,CTIの3作ってことになると思うが,それに先立って,Verveレーベルの時代からそういう路線は始まっていた。それをよしとするか否かは人それぞれであるが,私にとってのWes Montgomeryは"Full House"ってことになるので,こういう路線のアルバムはそれほど保有していないし,積極的にプレイバックするという訳でもない。それでもたまに取り出してみたくなるのがWesのWesたる所以である。

冒頭からThe Mamas & the Papasの"California Dreaming"を超ポップな感じで演奏して,ここから「う~む」となってしまうのだが,ほかの曲と比べても,この1曲が飛びぬけて浮いているというのが正直なところである。それでも,やはり"Full House"の世界とは落差はあまりにも大きい。まぁ,そういう音楽だと思って聞けばいいのだが,ジャズの世界から乖離していくWes Montgomeryを当時のリスナーはどう見ていたのだろうと思ってしまう。ジャズ・ファンに留まらないより幅広いオーディエンスに訴求するにはよかっただろうが,やっぱりゆるいよなぁ。同じ"Sunny"でもPat Martinoが弾くのとえらい違いやんけ!と言いたくなるのも事実。しかし,"Sunny"の2ヴァージョンは結構違いが感じられるのは面白かったりするのだが。

Wes Montgomeryのオリジナル,"Sun Down"や"Mr. Walker"ではジャズっぽさが多少は濃くなるが,それでもそれだけでは満足できないのが当たり前だろう。最後の"South of the Border"のイントロでまたずっこけさせてくれるし(笑)。Wesのオクターブ奏法等の技は楽しめるとは言え,星★★★が精一杯ってところだろう。私からすれば,このアルバムにパーカッションが要る?って感じだし,やっぱりタイトル・トラックが浮き過ぎだなぁ。

Recorded on September 14,15 & 16,1966

Personnel: Wes Montgomery(g), Don Sebesky(arr, cond), Mel Davis(tp), Bernie Glow(tp), James Nottingham(tp), Wayne Andre(tb), John Messner(tb), Bill Watrous(tb), Don Butterfield(tuba), Ray Beckenstein(as, fl, piccolo), Stan Webb(as, bs, eng-h, cl), James Buffington(fr-h), Herbie Hancock(p), Richard Davis(b), Grady Tate(ds), Ray Barretto(perc)

2022年5月 7日 (土)

Miles Davisの歌心:”Miles Ahead”のモノラル・ヴァージョンを聞く。

_20220504"Miles Ahead" Miles Davis(Columbia)

先日,Gil Evansとのカーネギー・ホールにおける共演盤を取り上げたばかりだが,実のところ,私が最も好きなGil Evansとの共演盤はこのアルバムである。今や,Columbiaのコンプリート・ボックスの一枚として保有しているこのアルバムであるが,元のモノラル音源とはヴァージョンが違う。更にジャケットもオリジナル(上)とボックス所収のその後のヴァージョン(下)では全く異なるということもあり,無駄遣いとは思いつつ,モノラル・ヴァージョンのCDを改めて入手した。よくよく考えてみれば,全然聞いていないが,MilesとGil Evansのボックスだって保有しているのだから,何やってんだかというところである。だが,ボックスって持っていても聞かないんだよなぁってのが正直なところなのだ。今回の場合,廉価盤だったから言い訳も成り立つが,こういうことをやっているから,CDの枚数だけが増えていく。どうせならアナログのオリジナルを買えよと思いつつ,そこまでの気力と財力がない(苦笑)。

_20220504-2 それはさておきである。主題の通り,ここでのMiles Davisの歌心が実に素晴らしい。フリューゲル・ホーンの丸みを帯びた音が,Gil Evansのアレンジメントに乗っかり,見事な調和ぶりを示すとともに,Miles Davisのメロディストぶりを十二分に感じさせる。まぁ,このアルバム,Prestigeから大枚はたいて引き抜いたたMiles Davisを,プロデューサーのGeorge Avakianがより幅広いオーディエンスに訴求し,コスト回収すべく(笑)制作し たということもあるかもしれないが,アルバムとしては非常に聞き易い音楽だと言ってよい。Milesのトランぺッターとしての技量を疑問視する声もあるが,そんなことは言うだけ野暮ってのを強く感じてしまった私である。所謂典型的モダン・ジャズから離れたフォーマットでも,一流のアルバムに仕立ててしまうMiles Davisは実に優れたラッパ吹きだったということは明らかなのだ。こんな歌心に満ちたアルバムを聞かされては星★★★★★しかない。

改めて本盤を聴いて,つくづく私はMiles DavisとGil Evansとの共演盤ってプレイバックする頻度が低いと感じているが,ちゃんと聞き直さないといかんなぁってところである。次は"Porgy And Bess"だな(笑)。

尚,全くの余談ながら,私から言わせれば,ここでの音楽にフィットしているジャケは,Milesが何と言おうが上のジャケである(きっぱり)。Wynton Kellyはリハーサルだけの参加で,このモノラル音源には入っていない可能性もあるが,ご参考。

Recorded on May 6, 10, 23 & 27, 1957

Personnel: Miles Davis(fl-h), Gil Evans(arr, cond), Ernie Royal(tp), Bernie Glow(tp), Louis Mucci(tp), Taft Jordan(tp), Johnny Carisi(tp), Frank Rehak(tb), Jimmy Cleveland(tb), Joe Bonnet(tb), Tom Mitchell(b-tb), Willie Ruff(fr-h), Tony Miranda(fr-h), Jimmy Buffington(fr-h), Bill Barber(tuba), Romeo Penque(fl, cl, b-cl, oboe), Sid Cooper(fl, cl), Eddie Caine(fl, cl), Lee Konitz(as), Danny Bank(b-cl), Wynton Kelly(p), Paul Chambers(b), Arthur Taylor(ds) 

2022年5月 4日 (水)

Chick Coreaのピアノ・ソロによるスタンダード集を久々に聴いた。

_20220430-2 "Solo Piano: Standards" Chick Corea(Stretch)

Chick Coreaが昨年亡くなったのはショッキングな出来事であった。以前にも書いたことがあるが,私は特に大学生の頃,Chick Coreaに入れ込んでいた時期があり,その後も全部買いはしないものの,比較的熱心に聞いてきたミュージシャンだったと思う。しかし,振り返ってみれば,Chick Coreaという人は結構多作な人で,ピアノ・ソロのアルバムもECMの"Piano Improvisation Vol.1"を皮切りに何枚も出ている。このアルバム"Piano Solo"にはPart 1としてオリジナルを演奏したものがあり,こちらはPart 2としてスタンダード(ジャズマン・オリジナルを含む)を演奏したもの。これを聴くのも実に久しぶりなことであったが,正直言ってこのアルバムは何回もプレイバックした記憶はない。

そもそもこの音源がライブであったことすら失念していたのだから,真っ当に聞いていないではないかと言われれば,返す言葉はない。しかも全13曲中,半数以上は日本におけるレコーディングだったのねぇなんて今頃気づいた私である(5曲が大阪,2曲が横浜)。しかし,"Standards"と言いながらThelonius Monkが5曲,更にBud Powellが2曲では,それをスタンダード集と呼ぶか?ってところには異論もあるのではないかと思うが,まぁChick CoreaにとってのStandardsということにすれば,それはそれでよいと思う。

しかしである。このアルバムを改めて聴いて思うのは,Chick Coreaならこれぐらいできて当たり前だよなぁという感覚である。フレージングはChick Coreaそのものだし,演奏の出来自体は保証できるレベルであることには間違いはない。ライブの場で聞いていれば,みんな感動してしまうだろうというものである。だが,これをCDという媒体で聴くと,驚きがないんだよなぁなんてついつい贅沢なことを考えてしまうのである。そうした感覚が評価の分かれ目っていうところになると思える。Chick Coreaぐらいのミュージシャンになると,並みのクォリティではリスナーが納得しないということも出てきてしまうのだ。こちらの要求も高くなるが,それに応えるのがビッグネーム,Chick Coreaに求められることなのだ。

ということで,このアルバムも水準はクリアしているが,敢えてアルバムとしてリリースする意義はあったのかというところが微妙なのだ。演奏の質を踏まえれば星★★★★ってところが妥当だとは思うが,半星引いても問題ないというところ。これを聞く前に聞くべきChick Coreaのアルバムはあるってことで,ファン向けの作品と言ってよいと思う。

Recorded Live at Various Venues in November, 1999

Personnel: Chick Corea(p)

2022年4月29日 (金)

Milesボックスから今日はカーネギー・ホールのライブ:2枚組になってるって今頃気づく私(爆)。 #MilesDavis

_20220426 "At Carnegie Hall" Miles Davis(Columbia)

Miles DavisのColumbiaレーベルにおけるコンプリート・ボックスを入手して,結構な時間が経過しているが,枚数が多いので,聞くアルバムと聞かないものはかなりわかれてしまう。正直言って本作なんかはこれまで一度も聞いていなかったかもしれない。だって,2枚組になっているのに今頃気づいているのだから,おそらく聞いていない。

中山康樹の「マイルスを聴け!」によれば,このボックスに入っているヴァージョンはコンプリート版として,ライブ当日のセットの通り収録されたもののようだ。何を今更へぇ~とか言ってんだかって気になってしまうが,まぁいいや(笑)。このコンプリート版の目玉は「アランフェス」のライブ演奏の収録ってことになるのだろうが,改めて全編を通して聞いてみると,なかなか面白いアルバムだ。

冒頭の"So What"からして,「あの」イントロがGil Evans率いるオーケストラによって奏でられ,おぉっ!となってしまう(笑)。このアルバムはオーケストラとの共演曲とクインテットの演奏が混在しているが,当時のGil Evansのアレンジを生で再現するのはやっぱり難しいのかなぁと感じるところもあるアルバムである。特に注目の「アランフェス」は,リリカルな演奏だが,まぁこれぐらいはいけるだろうって程度の演奏と言ってよいかもしれない。決して悪い出来だとは思わないが,この曲に限らず,Gil Evansのオーケストラのライブ・レコーディングは難しいと思えるのだ。後にエレクトリック化して,リフはLew Soloffに任せるような演奏なら問題なくても,ここでのオーケストラの編成はライブ音源としてきっちり捉えるのは容易ではなかったはずだ。

なので,そういうことを気にしないで聞けるクインテットの演奏の方が間違いなく楽しめるというのが惜しいと言えば惜しいところ。Milesのことであるから,駄盤ではないが,やっぱり今後もプレイバック頻度は上がらないだろうなぁ。でも聞きようによっては楽しめるので念のため。星★★★★。

Recorded Live at Carnegie Hall on May 19, 1961

Personnel: Miles Davis(tp), Hank Mobley(ts), Wynton Kelly(p), Paul Chambers(b), Jimmy Cobb(ds) with Gil Evans Orchestra<Gil Evans(arr, cond), Ernie Royal(tp), Bernie Glow(tp), Johnny Coles(tp), Louis Mucci(tp), Jimmy Knepper(tb), Dick Hixon(tb), Frank Rehak(tb), Julius Watkins(fr-h), Paul Ingraham(fr-h), Bob Swisshelm(fr-h), Bill Braber(tuba), Romeo Panque(cl, fl), Jerome Richardson(cl, fl), Eddie Caine(cl, fl), Bob Tricarico(cl, fl), Danny Bank(cl, fl), Janet Putnam(harp), Elvin Jones(perc), Bob Rosengarden(perc)>

2022年4月27日 (水)

Tord Gustavsenの新譜:内省的な響きが思索へ誘う。 #TordGustavsen

_20220425 "Opening" Tord Gustavsen(ECM)

待望のTord Gustavsenの新作の登場である。前作"The Other Side"が2018年だったので,4年近くの時間が経過している。私はこれまでTord Gustavsenの音楽を基本的に高く評価してきた。辛めの評価をしたのは"Restored Returned"ぐらいで,その内省的で美しい響きにはまいってしまうというのが常なのだ。そんなTord Gustavsenの新作も,私の想像そのままの響きが届けられたと言ってもよい。

これまでのアルバムからはベーシストが交代しているが,Steinar Raknesが一部で響かせるアルコの響きやエレクトロニクスの活用が,見事にTord Gustavsenの音楽と相乗効果を生み出すという感じである。いつもながらのことではあるが,これだけ内省的な響きを出されれば,聞いている方は思索ための時間を取ることが可能になりそうだとさえ思ってしまう。世の中が騒々しい中で,こうした時間を与えてくれるこういう音楽は貴重だ。10曲目の"Ritual"のみ,ほかと違ったアブストラクトな感覚を持つものとなっているが,これはこれでありだと思えるものの,やっぱり浮いている。

前作をレビューした時にも書いたのだが,私はTord Gustavsenの音楽を聞いていると,宗教的なところを感じてしまうが,ほぼ全編を通じて,静謐な中に静かな祈りでも捧げたくなるような音楽なのだ。こういう音楽をライブで聞いたらどうなってしまうんだろうと思ってしまうが,部屋で聞いていたら,久しぶりに膝を抱えたくなってしまった(笑)。ちょっと甘いと思いつつ,星★★★★☆。

Personnel: Tord Gustavsen(p, electronics), Steinar Raknes(b, electronics), Jarle Vespestad(ds)

2022年4月26日 (火)

Matt Slocumの新作:水彩画のようなタッチと言うべきか。穏やかな気分にさせてくれる。 #MattSlocum

_20220424"With Love and Sadness" Matt Slocum(Sunnyside)

Matt Slocumの前作,"Sanctuary"はなかなかよく出来たピアノ・トリオによるアルバムであった(記事はこちら)。前作のピアノは最近新作をリリースしたGerald Claytonだったが,本作ではTaylor Eigstiに代わり,Walter Smith IIIがテナーで加わるという布陣である。ベースは引き続きLarry Grenadierであるから,これはなかなか期待できるメンツである。

そして,本作でも前作同様,趣味のよい音楽を聞かせてくれるが,これは決して「熱い」ジャズではない。私が受けた感覚は主題のように,水彩画とでも言いたくなるような淡さを感じさせるタッチと言えばいいだろうか。一言で言えば穏やかな音楽なのである。だが,その背後にあるテーマは結構深いものであり,差別を含めたネガティブな社会的な問題からの解放や変化という観点で,収められた7曲の組曲の中でマイナー・キーからメジャー・キーへ転換していくというものだ。それでも,最後の"America Revisited"はPat Methenyの"This Is Not America"にインスパイアされたものとある。"This Is Not America"がハリケーン・カトリーナによる被害に対する音楽的回答であったというMatt Slocumの理解に対して,その後のアメリカは進化したかどうかについては疑問を提示しているから,楽観的な視点で書かれてはいないということになるが...。だが,そうした背景を理解しなくても,純粋に音楽だけでも楽しめるものだと思える。ただ,Matt Slocumの心象を含み置けば,音楽に対する感覚も異なって来るとは思う。

更にMatt Slocumが本作でこだわったのはアナログによる制作であったとライナーにはある。そうした意味では本来はアナログLPでA面からB面への流れで聞いて欲しいというところなのだろう。

いずれにしても,Matt Slocum自体の日本における知名度はまだまだってところだろうが,本作にしろ,前作にしろ,更に注目されてよいアルバムであり,Matt Slocumは作曲能力も含めてなかなかの才人と思う。そうした意味も含めて,星★★★★☆としよう。

Recorded on June 30, 2021

Personnel: Matt Slocum(ds), Walter Smith III(ts), Taylor Eigsti(p, el-p), Larry Grenadier(b)

2022年4月24日 (日)

超爽快!坂田明と森山威男のデュオが発掘された。

_20220419 「ミトコンドリア」坂田明&森山威男(Trost)

私がフリー・ジャズに求めるものは「ぐうぁ~」(笑)という音の塊によって生み出される爽快感と言ってもよい。私にとってフリー・ジャズは深刻ぶって聞く音楽ではない。小難しいことを考えるのでなく,身体を揺らすように煽って欲しいのだ。山下洋輔トリオの演奏なんてのはその筆頭みたいなところがあるが,その山下トリオをかつて支えた坂田明と森山威男の86年のデュオ・ライブ音源が突如発掘されて,なぜかオーストリアのTrostレーベルからリリースされた。しかもミキシングをやっているのはJim O'Rourkeってなんでやねん?

それはさておき,この二人がデュオをやれば,大体どういう音になるかは想像できるのだが,結果は予想通り。笑ってしまうのは,こういう音楽を教会でやってしまうってことだが,これが強烈である。坂田明らしいフレージングを煽る森山威男のドラムスによるパルスに興奮しない奴はもぐりだと言いたくなる。冒頭の坂田明のクラリネット・ソロからして期待が高まるが,全編を通して,こういうのをやってくれ!というこちらの期待に応える音を出し続ける二人である。

しかも,ディスク1の最後では懐かしの"Ghosts"をやっているし,「モントルー・アフターグロウ」同様,「赤とんぼ」を引用する坂田明であり,ディスク2冒頭では「キアズマ」もやってしまうというサービスぶりである。「ダンス」の途中では「チュニジアの夜」は引用するわ,坂田の裏で森山は叩きまくるわで,まさにこれこそ爽快感満点のフリー・ジャズである。

よくぞこんな音源を発掘してくれたと言いたくなるアルバム。星★★★★★としてしまおう。たまりまへん。

Recorded Live at 柏教会 on May 24, 1986

Personnel: 坂田明(as, cl), 森山威男(ds)

2022年4月22日 (金)

”It’s a Blue World”:ムーディという言葉はこのアルバムのためにある! #MelTormé

_20220416-2 "It's a Blue World" Mel Tormé (Bethlehem)

ただでさえジャズ・ヴォーカルをあまり聞かない私であるが,男性ヴォーカリストとなると更に輪を掛けるって感じである。Al Jarreauなんかは純粋ジャズ・ヴォーカルとは言いづらい中,誰のアルバムを持っているかなぁなんて考えると,思いつくのはこのMel TorméとJohnny Hartman,Frank Sinatra,Jimmy Rushing,それにMark Murphyぐらいではないか。

それはさておき,このアルバム,実にムーディである。ムーディ以外の表現が見つからないと言ってもよいバラッド・アルバムであり,それを歌うのがMel Torméのヴェルヴェット・ヴォイスと来ては,もはやとろけそうな気分になる。還暦過ぎたオヤジがどういうシチュエーションで聞くのよ?って言われてしまいそうだが,気まぐれである(笑)。しかし,気まぐれで聞いても,これだけ素晴らしい歌唱を聞かされてはまいってしまう。

Mel Torméは私が保有するほかのアルバムではスウィンギーな歌唱も聞かせるが,ここではバラッドに絞っての歌唱となっているのが本盤の最大の特長であり,美点。これはバラッド・シンガーとしてのMel Torméの実力を示した作品であり,ジャケットの素晴らしさも含めて評価すべきアルバム。このアルバムが作り出すムードに痺れてしまい,ついつい評価も甘くなり,星★★★★★。

ただねぇ,一点文句を言っておけば,私の保有する国内盤(多分中古で入手)はリリースされた時期が随分前(90年頃?)ということもあって,クレジットに関しては全然配慮していないというか,情報があまりにも欠落している。確かにライナーの解説はそれなりに施してあるものの,アレンジャーが誰かもはっきりとはわからないというのはさすがによくないと思える。昨今は裏ジャケのコピーが付くのは当たり前になってきたが,この国内盤のリリース当時はそういうこともなかったということだ。こういうところはまだまだCDそのもののリリースに関しても発展途上だったと考えてもいいかもしれない。まぁ,30年以上前では仕方ないか。

Personnel: Mel Tormé(vo)

2022年4月19日 (火)

ようやく到着:Brad Mehldauの新作。やっぱりこれは問題作だよなぁ。 #BradMehldau

Jacobs-ladder-cover_20220418182601 "Jacob’s Ladder" Brad Mehldau(Nonesuch)

NonesuchにプレオーダーしていたBrad Mehldauの新作がようやくデリバリーされた。発送通知から1か月以上ってのは,いくら何でも掛かり過ぎとは思うが,まぁ仕方ない。ついてきたオマケは裏ジャケ写真にBrad Mehldauのサインが入ったものだが,これは「う~む」って感じだなぁ(苦笑)。

音源としては既にダウンロード音源では聞いていたのだが,これはやはり問題作と言ってよいだろうし,基本的なテーマとしては「プログレ」があるのに加え,そこに宗教が絡むというところが難しい。その「プログレ」も,ロック的な音よりも,高度な技術の積み上げと「コンセプチュアル」という方法論的なところが重視されていているって感じか。ひな形として選ばれているのはRush,Gentle Giant,そしてYesであるが,おぉ,これぞプログレって感じさせるのは2曲目"Herr Und Knecht"ぐらいのもので,全体的なサウンドとしては,プログレと言うにはロック的要素が希薄なのである。

そういう意味で,プログレを好んで聞くリスナーにとっても,Brad Mehldauのジャズ・ピアノを期待するリスナーの双方にとって???となってしまうのではないか。だが,Brad Mehldauというミュージシャンの出自を考えれば,これまでのレパートリーに含まれていたロック曲の多さは明らかであったし,Beatles,Neil Young,RadioheadからSoundgardenまで何でもありだったのだ。これまでのアルバムではプログレシッブ・ロック・バンドのカヴァーは"10 Years Solo Live"でPink Floydの"Hey You"をやったぐらい(確かBBCのプログラムでもやっていたな)しかないはずなので,一気にプログレ・カヴァーが爆発したって感じだと言ってもよい。そうした出自も理解した上で私はBrad Mehldauの追っかけをしているので,この路線には全く問題は感じない。

だが,そこで出てくる音が,上述の通りロック的にならないところは意図的なものとしても,私のような年代のリスナーは"Herr Und Knecht"みたいなのをもっとやってくれた方が嬉しいと思うのだ。そうは言っても,Brad Mehldauはロック・ミュージシャンではないし,全編そういう音楽を作る気もなかろう。これはBrad Mehldauによる「プログレのアダプテーション」であって,プログレそのものだと思ってはならないというところだろう。コンセプトはしっかりしているし,Chris Thileがヴォーカルを担当する"Tom Sawyer"もいい出来だと思う。私はこうしたBrad Mehldauのチャレンジを前向きに捉えるので,多少の贔屓目があることは否定しないが,私個人としてはアルバムとしての評価は決して悪いものではない。最高評価にはできないとしても,最後に出てくる"Starship Trooper"が昔のYesのファンとしてはあまりに嬉しく,オマケも込めて星★★★★☆。

でも評価は絶対分かれるし,好き嫌いも分かれるに違いない。やっぱり問題作だ(笑)。7月に来日する時のプログラムは,ソロ,"After Bach"路線,それとコンチェルトだもんなぁ。変幻自在にもほどがある(爆)。

Recorded between April 2020 and January 2021

Personnel: Brad Mehldau(p, el-p, key, synth, org, ds, perc, vo, etc.), Marc Giuliana(ds), Paul Power(b-ds), John Davis(prog, sampling), Joel Frahm(ss, ts), Joris Roelofs(b-cl), Lavinia Meijer(harp), Motomi Igarashi-de Jong(linore), Pedro Martins(vo, g), Chris Thile(vo, mandolin), Becca Stevens(vo), Luca van den Bossche(vo), Tinkerbell(vo), Tobias Bader(vo), Safia McKinney-Askeur(vo), Timothy Hill(vo), Damien Mehldau(vo), Fleurine(vo), Cécile McLorin Salvant(vo)

2022年4月15日 (金)

Eliane Eliasのベスト盤:コンピレーションとしてはどうなのかねぇ...。 #ElianeElias

_20220413 "Perspectiva: The Best of Eliane Elias" Eliani Elias(Somethin’ Else)

Eliane Eliasに何を求めるかってのは結構難しい。このブログで彼女のリーダー・アルバムとして"Dreamer"を取り上げたことがある(記事はこちら)が,それもボサ・ノヴァ・アルバムだったように,ブラジル出身だけにそういう音を求めるリスナーも多いように思う。しかし,現在の旦那であるMarc JohnsonとのアルバムやSteps Aheadでの仕事を聞けば,決してブラジル音楽(それも歌もの)に留まる人ではない。

このコンピレーションはおそらくは日本編集によるものだろうから,国内制作のアルバムからの選曲ということになっていると思う。そもそも国内制作ゆえのつくりってのが根底にあるから,一般的なEliane Eliasのイメージに基づくものとなっているのはそういうもんだろう。

しかし,そうだとしても,プロデューサーあるいはコンパイラーが明示されていないのは,ベスト盤としてはどうなのよ?って思ってしまう。こういうベスト盤は選曲のみならず,曲順ってところにもセンスが表れると思うのだが,責任者を記載しないのは,無責任の誹りは免れない。ついでに言っておけば,曲ごとのパーソネルを記載するのも筋で,それをしないところにSomethin’ Elseあるいは東芝EMIのいい加減さを感じてしまうのだ。

これはここに収められた音楽の質とは関係ない話かもしれないが,売れればいいのか?って感じさせると言いたくもなる制作姿勢が気に入らない。演奏には特に文句はないし,相応に楽しめるが,こういう作りをしてしまうレコード会社は,ミュージシャンに対するリスペクトが足りないと言わざるをえない。そういうことをEliane Elias本人はわかっていたのだろうか...?あるいはこのCDの購買層には関係ない話だったというのだろうか?

我ながら理屈っぽいとも思いつつ,やっぱり納得がいかない。

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