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カテゴリー「ジャズ(2021年の記事)」の記事

2021年9月25日 (土)

私は上原ひろみのファンではないが,こういうのはなかなか面白いと思う。

_20210919 "Silver Lining Suite" 上原ひろみ(Telarc)

私は上原ひろみのファンではない(きっぱり)。むしろ彼女の音楽は評価しつつ結構辛口な感じだったと思うってのが正直なところだ。だから,私は彼女のアルバムが出れば買うということはないので,本作も久しぶりにアルバムを購入したという感じが強い。

Anthony Jackson~Simon Phillipsとのトリオはそれなりに面白いと思っていたが,いつも感じるのが彼女のピアノのやり過ぎ感。うまいのはわかったけど,そこまでやらなくてもいいじゃんっていう感覚である。そうした演奏が相応の高揚感をもたらすことは事実だが,常に満腹になってしまうと,飽きるのも早いっていうのが私の彼女に対する正直なところである。

では,この新作,なんで買う気になったのか?と皆さん思われるかもしれないが,先日「報道ステーション」にこのクインテットで出演していたのを見ていて,これって結構面白いかもなぁって思ったからってのが正直なところである。ということで,ボーナス・ディスクもついたお得感のある2枚組をゲットした私であった。

ジャズ・ミュージシャンがストリングスと共演するというのはCharlie Parkerの時代から続いてきていることだが,弦楽四重奏との共演と言えば,私の年代はChick Corea~Gary Burtonとの共演盤を思い出すってのが普通ではないか。そのほかだって,上原ひろみのようなコンテンポラリー感覚が強い人と言えば,またもChick Coreaの"Mad Hatter"の時期が想起される。それはいいか悪いか,あるいは好きか嫌いかは別にして,どうしてもチャレンジしたくなってしまうというミュージシャンの「性」みたいなところがあるのかなって思ってしまう。ましてやChick Coreaとの共演盤も残している上原ひろみだから,更にそういうところはあるのではないかと勝手に想像してしまう。

それでもって,今回のストリングスのアレンジメントを聞いていると,まぁよく頑張ったねっていう感じだろうか。破綻していないのは立派だとは思いつつ,あまり面白いと思えるものではない。ちょっとした違いを感じるとすれば,チェリストにピチカートでリズムを刻ませる展開だろうか。それ以外はよく出来ましたとは思うが,「普通だなぁ」って感じは否めない。ストリングスがユニゾンで演奏するシーンが多いからかもなぁという気もするが,まだまだ成長の余地はあるって気がする。

ピアノはいつもながらの上原ひろみで,目眩くフレージングで圧倒するってところだが,もはやこれは個性として捉えるべき領域と思う。そこに弦楽クァルテットが加わって,いつもと違う感じも付加していてなかなか面白いと思えた。

このご時世を踏まえて“Silver Lining Suite”と名づける気持ちもわかるってところもあり,星★★★★。それでもファンの方からすれば,まだ辛口って言われそうだが(笑)。

そもそもSilver Liningってのは”Every cloud has a silver lining."から来ているが,端的に言えば,「希望の光」みたいな意味である。上原ひろみはコロナ禍でライブ活動が制限される中,Blue Note東京で"Save Live Music"という趣旨でライブを行っていたが,ボーナス・ディスクはそのBlue Note東京でのピアノ・ソロの模様を収めたもの。65分超の音源なので,お買い得感はあるし,その「志」は認めなければならないと思う。こちらは"Ballads"と題されていて,そういう演奏が収められていて,いつものような手数やスピード感は抑制されていて,好みはわかれるかもしれないが,私には結構味わい深いものがあった。ということで,こちらとの合わせ技で星★★★★☆としよう。購入されるなら私はボーナス・ディスク付きの2枚組を推奨したい。

Recorded between April 28 and 30, 2021

Personnel: 上原ひろみ(p),西江辰郎(vln),ビルマン聡平(vln),中恵菜(vla),向井航(cello)

Bonus Disc Recorded Live at Blue Note東京 on September 10 & 11,2020

Personnel: 上原ひろみ(p)

2021年9月24日 (金)

Pat MethenyのSide Eyeが遂にリリース。

_20210923"Side Eye NYC V.1.IV" Pat Metheny(Modern Recordings)

Pat Methenyが新プロジェクトとしてSide Eyeを立ち上げ,その初ライブとして日本で公演を行ったのが2019年1月のことであった。私もそのライブに参戦し,このブログでも記事にしている(記事はこちら)。その時はPAの不調に辟易とさせられたが,それでも新しい取り組みは面白いと思ったし,何よりもその時はドラマーがNate Smithということもあり,そこへの注目度も高かった。  

そんなSide Eyeとしてのアルバムがようやくリリースされることとなったが,このV.1.IVの意味するところはジャケの中身を見るまでは謎であった。結局のところ,このSide EyeはPat MethenyとキーボードのJames Franciesを核として,ドラマーをいろいろ入れ替えるというのが基本的な考え方ということらしい。ジャケを見るとV.1.Iから現在はV.1.Vまで5人のドラマーが使われている。順にEric Harland,Anvar Marshall, Nate Smith, Marcus Gilmore, Joe Dysonとなっている。それで今回はV.1.IVということでMarcus Gilmoreとの共演である。

そして,ライナーを見ると,2019年9月のSony Hallにおける実況録音とある。ということで思い当たったのが,以前NHKのBSで放送された彼らのライブであったが,このアルバムを聴いた後,確認のためにビデオをプレイバックしてみた。すると,やはりこのアルバム,放送された時の音源(放送での収録はは9/13)も含まれている。そしてその番組でPat Methenyがインタビューに答えているのだが,ちょっと世代の離れたミュージシャンとの共演ということを念頭に置いているとのことであった。Marcus Gilmoreには最初断られると思っていたなんて言っていたが,それはまぁないだろう(笑)。

このアルバムはライブ音源であるが,3人のミュージシャンによる音楽としては,かなり音が分厚い部分があるが,放送を見直してみると,小型のオーケストリオンを使っていた。私はアンチ・オーケストリオンであり,あんな大人のオモチャがなくても,ちゃんとした音楽はできるはずと思っているので,う~むとなってしまうのだが,まぁそれでも曲によって,使ったり,使わなかったりということで,演奏に変化をつけたということになるのだろう。余談だが,インタビューで2025年ぐらいにはオーケストリオンV.2.0を作りたいなんて言っていたが,そんなことに金と時間を掛けるより,ちゃんとバンドで音楽をやって欲しいと思っていた私である。

曲としては旧作と新作が混ざっているが,どれも相応に聞きどころはあると思うが,Pat Methenyのデビュー・アルバム,"Bright Size Life"から2曲をやっているのが目を引く。BSのインタビューでも,古い曲だからと言ってやらないということはなく,キャリアの一環として捉えているというようなことを言っていたが,そのほかにも"80/81"にも入っていた”Turnaround”や,Michael Breckerのために書いた"Timeline"なんかもやっている。そうした中で旧作で一番面白くないのが"Better Days Ahead"かもしれない。それは多分,私がこの曲にPat Metheny Group的な音を求めてしまう部分もあるからかなぁなんて思っていた。一方,新作のコンテンポラリー感は更に強まっていて,その辺に時の流れも感じるが,アルバム全体としてはやはり魅力的に響く。

実力者が集まることで,優れた演奏が可能ということが実証されているが,James Franciesの貢献度はかなり大きいように思える。私はJames Franciesのリーダー作は未聴であるが,ストリーミングで聴いてみようと思わせるところはあったと思う。そして,Marcus Gilmoreは実に器用なもので,何でも叩けるというところを示している。Antonio Sanchezのような派手さはないが,実に堅実さとうまさを兼ね備えたドラマーだと思った。

ということで,やっぱりこれは相応に評価しないといかんと思えるアルバム。星★★★★☆。尚,私が購入したのは輸入盤であるが,国内盤には最後にこれまた"80/81"からの"The Bat"が加えられているが,これはストリーミングで聴ける。アンコール的な感じ(実際はアンコールではないと思うが...)でこれも悪くなかった。

Recorded Live at Sony Hall on September 12&13,2019

Personnel: Pat Metheny(g, guitar-b, orchestronic), James Francies(org, p, synth), Marcus Gilmore(ds)

2021年9月21日 (火)

父の遺品のThelonious Monkのアルバムを聴く。

_20210918"The Unique" Thelonious Monk(Riverside)

主題の通り,これは父の遺品のCDだ。前にも書いたが,私の亡くなった父はモーツァルトを偏愛しつつ,昔,ヴァイオリンを弾いていたこともあって,ヴァイオリンのCDも結構残してくれた。そんな父がジャズに目覚めたのは晩年のことであるが,結構Monkは好きで聴いていたようである。そして私が保有しているMonkのアルバムと被っていないのが非常に不思議であったが,それにより私の聞く範囲は拡大したのだから,それは父に感謝しなければならない。

それはさておき,本日はこのアルバムである。やっているのがいつものようなMonkオリジナルではなく,有名曲ばかりというのがこのアルバムのポイントだが,どんなに有名な曲をやっても,出てくる音はMonkそのもの。だからこそ,アルバム・タイトルも"The Unique"ということになろうが,まさにユニーク,まさにOne and Onlyとしか言いようがない。

この後に出てくる"Brilliant Corners(ブリコー:笑)"のような驚きはないとしても,個性の発露という観点では,「ブリコー」に劣るということは全くない。むしろ,よく知られている曲で,Monkの個性をリスナーに理解させるという意味は大いにあったと言ってよいと思う。私にとってThelonious Monkの音楽の魅力を理解するのは,高校時代のジャズの聞き始めの頃は正直難しい部分もあったのだが,本作辺りを入り口にして,Monkの音楽に接すれば,私としてももう少し違った聞き方が出来ていたかもなぁなんて思ってしまった。

いずれにしても,タイトルに偽りなしである。星★★★★☆。

Recorded on March 17 and April 3, 1956

Personnel: Thelonious Monk(p), Oscar Pettiford(b), Art Blakey(ds)

2021年9月19日 (日)

一部で話題沸騰(笑),Nicole Gloverのアルバム。

_20210917 "Strange Lands" Nicole Glover(Savant)

テナー・サックスに一家言をお持ちと言えば,惜しくも閉店した新橋のテナーの聖地,「Bar D2」のマスターだった河上さんだが,その河上さんが最近ことあるごとに(笑)推しを入れているのが,このNicole Gloverである。NYCのSmallsには結構出ているようではあるが,いかんせんレコーディングはまだまだ少ないので,私は河上さんのお話から想像するに留まっていた。そうは言っても,George Colliganのアルバムで吹いているのとかは聞いていて,なるほど,さもありなんと思っていたが,そこへ彼女のアルバムが登場である。

Nicole Gloverの音楽を表すとすれば,アルバムのライナーの冒頭の文章が最適である。そこには"Her name is Nicole Glover; she is thirty years old; and she burns.” 年齢はさておき,重要なのは"She burns."ってことだろう。この目くるめくようなハードでリスナーを燃えさせるブローイングこそが,彼女の魅力と言ってよい。そして,本作は4曲にGeorge Cablesをピアノに迎えつつ,そのほかの曲はピアノレスのトリオである。サックス・プレイヤーとしての自信がなければ,そのフォーマットは取らないというところだろうが,冒頭のタイトル・トラックからして,吹きまくりである。河上さんが推すのもよくわかる演奏と言ってよい。

スタンダード3曲以外は,本人もしくはバンド・メンバー(及びその関係者?)のオリジナルである。このアルバムを聞いて思うのは,Nicole Gloverはスタンダードだってちゃんと吹けるとは思うのだが,私にはこうしたスタンダードよりも,よりハードな吹きっぷりの方が似合っていると思えてしまう。George Cablesとデュオで演じた”A Flower Is Lovesome Thing"だってちゃんとやってはいるし,ラストの"I Concentrate on You",あるいは中盤の"Dindi"だって破綻はない。ではあるのだが,これらの曲にはまだ彼女に成長,あるいは成熟の余地があると思わせるもので,やはり私にはよりハード・ブローイングな曲の方に魅力を感じてしまう。若気の至りだってよいのだ。

このアルバムを聞いていて,Lee Morganって最初から出来上がっていたのねぇと思ってしまったが,Nicole GloverをLee Morganと比べてはさすがに可哀想か...。

そうは言っても,Nicole Gloverがライブの場でブイブイ吹く姿を見れば,間違いなく悶絶させられるだろうと思うが,こうしたスタジオ・アルバムではまだまだ発展途上って感じが残るのは事実である。やはりこの人,まずはSmalls辺りでライブを観るところから始めていれば,更にはまっていたかなと思う。それでも彼女が注目に値するRising Starであることは間違いないと思えるアルバム。星★★★★。

尚,本作のプロデュースをしているのがJeremy Peltってことも,リリースしているレーベルがJerry Bergonziと同じSavantであるってことも,「その筋」のリスナーのシンパシーは間違いなく誘うな(笑)。

Recorded on December 15, 2020

Personnel: Nicole Glover(ts), George Cables(p), Daniel Duke(b), Nic Cacioppo(ds)

2021年9月15日 (水)

感涙。これまた凄い音楽映画:「サマー・オブ・ソウル」

Summer-of-soul 「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)<Summer of Soul (...Or, When The Revolution Could Not Be Televised) >」(’21,米,Searchlight)

監督:Ahmir "Questlove" Thompson

出演:Sly Stone, Mahalia Jackson, The Staple Singers, Nina Simone, Gradys Knight, Stevie Wonder,The 5th Dimension

先日,「プロミシング・ヤング・ウーマン」と梯子して観たのがこの映画であった。これが凄い。

今年はライブに行っていないせいもあって,音楽映画を結構観ていて,「アメイジング・グレイス」,「アメリカン・ユートピア」もよかった。どれも当たりという中で,この映画も実に素晴らしいものってのは,音楽への渇望感を埋めるという意味で実に貴重な作品であった。

1969年,ほぼウッドストックと同じようなタイミングで開催されていたHarlem Cultural Festivalは,ソウルに留まらず,ブルーズ,ゴスペル,ジャズもカバーしていたという素晴らしいイベントであった訳だが,その記録映像が残っていたということだけでも素晴らしい。そしてここに収められた演奏の数々を見て,興奮しなければ嘘だろうと言いたくなってしまうようなものばかりだ。

冒頭からしてStevie Wonderの素晴らしいドラミングに度肝を抜かれるが,そこから出てくるキラ星のごときミュージシャンを見て,私はひたすら感動していた。その中でも特に,Mahalia JacksonがMavis Staplesと歌う"Take My Hand, Precious Lord"のシーンでは感動のあまり落涙した。これを見て感動しない人とは私は友人になれないと思うほどの素晴らしさであるが,それだけではない。

興奮度という意味ではSly Stoneに勝るものはないし,メッセージ性という意味での感動という点ではNina Simoneも素晴らしい。それだけに留まらず,ここに登場するどのミュージシャンもとにかく凄いのだ。ジャズ界からはMax RoachやAbbey Lincolnまで出てくるしねぇ。

この映画が公開されたことを,BLM運動と結びつけて考えることもできようが,難しいことを考えなくても,黒人たちの作り出す音楽の素晴らしさを堪能すればよいと思って私はこの映画を観ていた。とにかくこの作品を世に出したQuestloveに感謝したくなった私である。この映像には星★★★★★しかない。この映画も全音楽ファン必見だと言っておこう。最高だ。

2021年9月14日 (火)

待望!Marcin Wasilewski Trioの新作。やっぱり痺れるわ。

_20210913 "En Attendant" Marcin Wasilewski Trio(ECM)

今年の音楽シーズンの幕開けを飾ると言ってもよい待望の新作の登場である。このブログにも何度か書いているが,今,私が最も信頼するピアニストはBrad Mehldau,Fred Hersch,そしてこのMarcin Wasilewskiである。そのMarcin Wasilewskiのトリオによる新譜とあってはデリバリー,即記事アップである。

前作"Arctic Riff"はJoe Lovanoを迎えたある種の企画盤であったが,あれはあれでいいとして,私としては彼らの魅力はやはりピアノ・トリオでこそ発揮されると思っていた。特に私が引っ掛かったのは前作におけるコレクティブ・インプロヴィゼーションの部分であった。では本作ではどうなっていたか?

結論から言えば,私としては前作よりはるかに評価したい。トリオの3人による即興のようなアブストラクトな展開ももあるにはあるのだが,それを上回る美感がこのアルバムを支配している。録音時期は"Arctic Riff"同様,2019年8月なので,どっちが先だったのか?ってのは実に興味深いところではあるし,前作でも演奏していた"Glimmer of Hope"と"Vashkar"をここでも演奏しているのが,この2枚のアルバムの関係性を示しているような気もする。私にとってはこっちが本番,"Arctic Riff"が番外編のように思えてしまうが,彼らにとっては逆だったかもしれない。

いずれにしても,いつもながらの美学を感じさせる演奏なのだが,Doorsの"Riders on the Storm"のような意外な選曲もありながら,Doorsのメロディが実は非常に優れていたものであることをあぶり出しているような演奏だし,もっと驚いたのは「ゴルトベルク変奏曲」の第25変奏をアダプテーションしたことである。しかし,彼らの手にかかれば,バッハもこうなるかぁみたいな感じで,これがまたまたびっくりである。しかし,そこには彼らの音楽的資質と相俟った深遠なる世界が現れるというところで,実に味わい深い演奏である。

今回このアルバムを聞いても,彼らはやはり現代最高峰のピアノ・トリオの一つだという思いを強くしてしまったが,私にとってはもはやこれは惚れた弱みなのかもしれない。どうしても星★★★★★としてしまうのがその証(笑)。

Recorded in August 2019

Personnel: Marcin Wasilewski(p), Slawomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz(ds)

2021年9月13日 (月)

実に素晴らしいLacy~RuddによるMonk集。

_20210909 "School Days" Steve Lacy - Roswell Rudd Quartet(Hatlogy)

実に久々に聞くアルバムだ。でもこのアルバムはちゃんと「一軍」のラックに収まっている。聞く頻度は高くないとしても私としてはちゃんと評価しているアルバムである。

このアルバムが出たのは2002年のことだが,実際には1963年頃にライブ録音された音源である。なんでそんな時期になってと思う節もあろうが,これは出さねばならんとHatologyレーベルが思ったとしても頷けるものだとしか言いようがない。

一般的に言えば,Steve LacyとRoswell Ruddと聞けば,敷居が高そうにも感じる部分はあるかもしれないが,これは彼らがThelonius Monkの曲に取り組んだ,極めて真っ当なジャズ・アルバムであって,何も怖がることはない。まぁ彼ららしくというか,Monk曲集をピアノレスでやるってところが一筋縄ではいかないところではあるのだが,彼らとしてはピアノを入れないことによって自由度を高めたかったのだろうと想像される。

ことあるごとにSteve LacyはMonkの音楽に取り組んできたが,なかなか手が出なかった私が遅まきながらSteve Lacyの本質を理解したのがこのアルバムだったと言っても過言ではない。Roswell Ruddとのコンビは後年Verveにアルバムを残しているので,そっちも久しぶりに聞いてみようと思わせる効果もあった。見事なものである。星★★★★★。

Recorded Live at Phase Two Coffee House circa March 1963

Personnel: Steve Lacy(ss), Roswell Rudd(tb), Henry Grimes(b), Dennis Charles(ds)

2021年9月10日 (金)

Gil Evansが英国人バンドと共演したモントルーでのライブ。

_20210908 "Take Me to the Sun" Gil Evans with RMS (Last Chance Music)

Gil Evansが英国人と共演したと言えば"British Orchestra"がある訳だが,そのアルバムは通常のGil Evans Orchestraとは異なるグルーブを生み出していて,結構好きなアルバムであることは前にも書いた(記事はこちら)。そのアルバムが録音されたのは1983年だったが,同じ年のモントルーにGil Evansが今度はRay Russell, Mo Foster,Simon Phillipsから成るRMS+αで出演した時の実況盤がこれである。

本作には+αとして,RMSのロンドンでのライブ盤と同じホーン・セクション4名が加わっているから,どちらかと言えばRMSのライブにGil Evansが客演して,Gil Evansのレパートリーをやったって感じである。それでもって,このGil Evansにしては小編成による演奏ゆえに,いつものGil Evans的な感覚とは違うのは仕方がないところだろう。それでもアレンジメントはいつものGil Evansの通りなのだが。

まさしく,これはGil Evansの楽歴においても番外編的なアルバムだと思えるものと言ってよい。このアルバムに入っているサインはSimon Phillipsのものだが,ライブ後のサイン会でこのアルバムを差し出した時に,本人が相当驚いていたのも懐かしい。逆に言えば,そこそこレアなアルバムなのだが,出来はと言えば,そっちもそこそこって感じである。Gil Evansにとってはいつものレパートリーだけに全然驚きはないし,演奏も悪くはないとしても,平均的な出来だろう。

収録されている4曲のうち,3曲はモントルーのライブだが,最後の"Goodbye Pork Pie Hat"だけは1988年のNYC録音で,リリースされたのは1990年。出来としては,私は"British Orchestra"の方がはるかに上だったと思える。それでも,Simon Phillipsにもサインももらっちゃったので売る気は全くない(きっぱり)。そこそこレアと言っても,入手が困難というほどのものではないので,ご関心のある方はどうぞってところだが,私としては星★★★ぐらいでいいかなって感じである。

Recorded Live at Montreux Jazz Festival in 1983 and in NYC in 1988

Personnel: Gil Evans(el-p), Ray Russell(g), Mo Foster(b), Simon Phillips(ds), Mark Isham(tp, synth), Henry Lowther(tp), Ronnie Asprey(as), Malcolm Griffiths(tb)

2021年9月 9日 (木)

5,000件目のエントリーは何にしようかということで,Fred Hersch。

_20210905-2 "In Amsterdam: Live at the Bimhuis" Fred Hersch(Palmetto)

ブログも長年やっていれば,記事の数が積み重なるもので,2007年に始めたこのブログのエントリーもこの記事が5,000件目となった。こういう機会には,自分の思い入れのあるミュージシャンを取り上げたくなるのが人情というもので,2,000本目はJoni Mitchell,3,000本目はNeil Young,そして4,000本目はMiles Davisだったはずだ。1,000本目は何だったか記憶にない(苦笑)が,不思議とBrad Mehldauではなかったのだなぁと改めて気づく。まぁ,Brad Mehldauに関してはアップしている記事も相当数なので,まぁそれはそれでってことだが,では5,000本目はどうしようということで選んだのがこのアルバムである。

私がFred Herschの追っかけとなったきっかけはカザルス・ホールでのソロ・ライブであった。それが2007年9月のことであったが,それまでもFred Herschのアルバムは何枚かは保有していた。しかし,本当にFred Herschの魅力を私が理解したのは,まさにカザルスにおいてであったと言っても過言ではない。それ以来,Fred Herschのアルバムを後追いで購入してきたが,カザルスでの演奏から間を置かずに購入したものの1枚だったはずである。ライブで聞いた"A Lark"をもう一度体験したくてというのがその動機だったはずだ。そしてこのアルバムに限らず,Fred Herschの音楽を追体験すればするほど,私は彼の音楽にはまっていったのであった。来日するたびにライブの場に足を運び,そしてこのアルバムも含めて,相当数のアルバムには彼のサインが入っている。もはやミーハーの世界である(爆)。

だが,本作に限らず,Fred Herschのソロ・ピアノは常にレベルが高いだけでなく,リスナーを魅惑する美的な感覚に満ちている。そして,選曲もいつもながらオリジナルとスタンダードをうまくブレンドさせて,実にバランスもよい。冒頭の"A Lark"から最後の"Valentine"まで,Fred Herschのファンならずともぞくぞくするような美しさである。

今や,Fred Herschはほかのごく一部のミュージシャン同様,「別格」の扱いを私のCDラックで受けている(それでもVenus盤はそこからは除外されていることは付け加えておく)が,本当にそれぐらい惚れ込んでしまった私である。そしてそれはこれからも変わることはないだろう。一時は病気で再起不能とも言われたFred Herschだが,今や元気に活動を続けていて,これからも私たちに心の潤いを与える音楽を提供して欲しいと思う。星★★★★★。

Recorded Live at Bimhuis on May 31st,2003

Personnel: Fred Hersch(p)

2021年9月 7日 (火)

これはユニークだ。Kristjan RandaluとDave Liebmanによる「展覧会の絵」のジャズ・アダプテーション。

Randalu_liebman "Mussorgsky Pictures Revisited" Kristjan Randalu with Dave Liebman(BMC)

ムソルグスキーの「展覧会の絵」はロックの世界ではEL&Pがやっているのが定番となっているが,ジャズ界では私は聞いたことがなかった。よくよく調べてみれば,イスラエルのYaron Gottfriedという人が,"Pictures at an Exhibition for Jazz Trio and Orchestra"というアルバムも残しているようだが,全くのレーダー圏外。しかし,今回,別のストリーミング音源を探していてぶち当たってしまったのがこのアルバムであった。何せDave LiebmanとECMにもリーダー作のあるエストニア出身のKristjan Randaluのデュオ作である。

「展覧会の絵」はもともとピアノ曲であるが,それをラヴェルがオーケストレーションして,ぐわぁ~っ(笑)という感覚をリスナーに与えるのが常だし,EL&Pヴァージョンもその辺は同じである。それをピアノとソプラノ・サックスでやるとどうなるのかってところだが,これは主題の通り,ユニークな試みと言ってよい。原曲のメロディ・ラインはかなりの頻度で出てくるが,そこにDave Liebmanが自由なラインと原曲メロディを組み合わせながらソプラノを重ねるって感じである。

私としてはへぇ~って感覚で聞いていたのだが,これを面白いと思うかは微妙だ。私にとっては,この曲に求めるのは興奮か高揚感なので,ピアノとソプラノのデュオではやはり興奮度が足りない。もちろん,Liebmanのソプラノには切れ味も感じるし,ストリーミングで聞いても,Randaluのピアノは美しく捉えられている。しかし,敢えてこれを好んで聞くかというと必ずしもそうならないだろうというのが正直なところである。ユニークな試みであることは間違いないが,ユニークなものが必ずしも面白い,あるいは成功するとは限らない。少なくとも私にとってはそういう感じだ。ということで,星★★★ってところが精一杯だな。

Recorded on 19-20 April, 2019

Personnel: Kristjan Randalu(p), Dave Liebman(ss)

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