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カテゴリー「ジャズ(2020年の記事)」の記事

2020年8月 6日 (木)

”Mostly Ballads”:こういうのがバーでかかっていたらしびれるよねぇ。

_20200804"Mostly Ballads" Steve Kuhn(New World)

Steve Kuhnはいろいろなスタイルで演奏をできる人なので,リスナーとしてはどの辺りが好みかというのを決めてもいいし,いろいろなスタイルをそれぞれ楽しむって感じでもいいと思う。私の場合は後者だが,これなんか主題の通り,バーとかで小音量でプレイバックされていたら,店主の趣味を褒めたくなること必定というような「ほぼ」バラッド集である。あくまでもタイトル通り「ほぼ」なので,小粋なミディアム・テンポの曲もある。それがまたいい塩梅なのだ。

やっているのは有名曲ばかりなので,それをKuhnのソロ,もしくは半数の曲で加わるHarvie Swartzとのデュオでどのように料理するかというのが楽しみとなるが,実に美しく仕上げつつ,若干の毒も仕込んであるというところである。曲で私が知らなかったのは"Yesterday's Gardenias"という曲だが,元々Glen Millerがやったらしく,その後,Stan GetzやSerge Chaloffとかも取り上げているらしい。へぇ~って感じである。

本作においては,1曲最長5分43秒,2分台の曲も12曲中5曲もあるということで,比較的あっさりとした演奏ではあるものの,密度は濃いと感じさせるものなのだ。こんなのは所謂カクテル・ピアノではないかという指摘もあるだろう。しかし,凡百のピアニストが"Danny Boy"のような曲を弾いてもこうはならないはずだ。ちゃんとSteve Kuhnの美学が反映されているのだ。

繰り返しになるが,こういう音楽が店でプレイバックされていたら,確実に嬉しくなる。新型コロナウイルス禍により,飲み屋にも行っていない私だが,居酒屋,そば屋,中華料理屋,ありとあらゆるところで有線からモダン・ジャズがBGMとして流れている頃に対する違和感をずっと感じていたことは前にも書いたと思う。だが,本当の趣味のよさってのはこういうアルバムをプレイバックしてこそ表れると考えるべきだろう。

いずれにしても,以前取り上げたSteve Kuhnのほぼ映画音楽集,"Jazz 'n (E)motion"(記事はこちら)同様,夜にしかフィットしないとも言えるが,こういう音楽を聞いているとついつい酒が進んでしまう私である。星★★★★☆。

Recorded on January 3, 1984

Personnel: Steve Kuhn(p), Harvie Swartz(b)

2020年8月 5日 (水)

温故知新は続く:今日は"Jazz at Massey Hall"のDefinitive Editionだ。

_20200803 "Complete Jazz at Massey Hall" Charlie Parker (Jazz Factory)

多くのジャズ・ファンにとってMassey Hallという場所は,行ったことはないとしても,名前は聞いたことがあるという場所ではないだろうか。Venueという意味では,ヴァンガードとか,カフェ・ボヘミアとか,ファイヴ・スポットというクラブ名称の方が響きとしてはいいのは間違いないが,なぜこのMassey Hall,しかもカナダはトロントという場所にあるこのコンサート・ホールがこれほど多くのジャズ・ファンに知られているかと言えば,この音源が録音されたからにほかなるまい。

ジャズに関する古い音源,特にバップを語る場合,本作とかCharlie ChristianのMinton's Playhouseでの音源が出てくるのが当然と思われていた。ただ,Charlie Christian盤なんてのは,現代人にとっては音がひど過ぎて,その価値を理解できるのかと言えば,実は疑問を感じている。なぜならば,40年近く前にその音源を聞いた私でさえ,音のひどさに辟易としてしまった方が勝ちなのだ。歴史的,音楽的な価値はあるかもしれないが,それを受け入れられるほど,約40年前ですら,現代人(私だけ?)は寛容ではなかった思うのだ。あるいはわかっていなかっただけかもしれんが...。

しかし,温故知新と言うのであれば,Charlie Parker入りのこのライブ盤は避けて通れないよなぁってことで,今日はこれである。"Jazz at Massey Hall"は言わずと知れたバップの巨人が集結したライブ盤であるが,Charles Mingusが訳のわからないオーバーダビングを施したことによって,雰囲気が変わってしまうという不思議な印象を残したことはその筋では知られた話である。

本作はそのオーバーダビングを排し,演奏当日の曲の並びを極力再現するという高い志で作られた「決定盤」と言ってよいと思うが,こういう音源を作る会社が長続きはしていなさそうなのは実に残念である。このアルバム,ライナーもしっかり作られていて,リリースしたスペインの会社のCharlie Parker愛が感じられるのだ。今でも入手は難しくないが,あくまでも売っているのは「在庫処分品」ということだろう。

ライナーによれば,この決定盤とは言っても,音源が残っていない演奏がまだあるそうである。しかし,ここで聞けるものがほぼその日の全貌ってことになるが,The Quintetによる演奏には新発見はない。しかし,Mingusのオーバーダビングを排しただけでなく,Parker,Gillespie抜きのBud Powellトリオ,それにMax Roachのドラム・ソロまで入っているのだから,芸が細かいのである。ラテン系は雑なイメージがある(爆)が,何ともしっかりした仕事ぶりってところだろう。

この演奏が行われたのは1953年なので,Charlie ParkerにとってもBud Powellにとっても全盛期は過ぎていると言ってよい時期だが,それでもここまでくると名人芸の領域である。音は決していいとは言えないが,聞くには問題ないレベルだし,ライブの熱気が伝わるという点では,実に貴重なアルバムだと言える。

_20200803-2 私はこのアルバムをLP時代から保有していたが,現在保有しているCDは今日ご紹介の「決定盤」と,国内盤で出たそちらもオーバーダビングなし版である。しかし,この2枚,曲の並びが違うのだ。私としては情熱具合からして,「決定盤」の方の並びが正しいと思うが,真相は?である。しかし,そんなことは無視しても,この演奏は強烈。バップの巨人の最後の輝きと言ってはいかんが,ここでの強烈なアドリブを聞いて燃えない人間がいるのか?と言いたくなってしまう。

Charlie Parkerを聞くなら,SavoyやDialを聞くのが正しいとは思うが,音がねぇって思った時に,本作はまだまともに聞けるレベルだと思っていたのが私の若い頃。今となってはこういう演奏が聞けることに感謝したくなるのが,老境に達しつつある私。もちろんこれもしょっちゅう聞こうとは思わないが,歴史的な観点からすればやっぱり星★★★★★だよなぁ。

甚だ余談ではあるが,初めてトロントに行った時,Massey Hallの前を通って,おぉ,これがあのMassey Hallかと思ったのも懐かしい。

Recorded Live at Massey Hall, Toronto on May 15, 1953

Personnel: Charlie Parker(as), Dizzy Gillespie(tp), Bud Powell(p), Charles Mingus(b), Max Roach(ds)

2020年8月 4日 (火)

今日の温故知新は”Bag's Groove”。

_20200802-2 "Bag's Groove" Miles Davis(Prestige)

モダン・ジャズのクラシックと呼ぶべきアルバムも,実生活の中ではプレイバックの回数が減っているのは疑いようのない事実である。だが,たまに取り出して聞くと,実に魅力的に響いてしまう。現代のジャズには現代のジャズの魅力があるとしても,こうしたクラシック・アルバムを聞くと,ジャズという音楽の長い歴史の積み上げの上に,現代のジャズが成り立っているのだという当たり前のことを改めて感じざるを得ない。

とか何とかいいながら,私がこのアルバムを聞くのは何年ぶり?みたいな感じなので,決して偉そうなことは言えないのだが,久々に聞いてみて,やはりこの辺りのアルバムの魅力は絶対的だったなぁと思ってしまう。冒頭の"Bag's Groove"からして,晩年のMilesとは音もフレージングも全然違うし,テイク1のソロの構成力なんて信じがたい。バンドとしての演奏のレベルの高さも半端ではないが,この曲における実に訥弁なThelonious Monkのソロを聞いて,あぁそうだったなぁなんて思った私である。MonkはどうやってもMonkなのだ。そういうことに改めて気づかされる。これこそ温故知新である。

そして3曲目以降はピアノがMonkからHorace Silverに代わり,更にSonny Rollinsの加わった曲になるが,スタンダード"But Not for Me"を除けば,”Airegin","Oleo",そして"Doxy"というRollins有名オリジナルを収めているところに,Rollinsにとっても重要なアルバムな訳だ。そうは言っても,Rollinsのソロもまだまだ若いねぇって感じ(はっきり言ってまだまだ青臭い感じがする)があるのが実に新鮮なのだ。John Coltraneもそうだが,ミュージシャンが急速,あるいは急激な進化を遂げる瞬間というか,そういうタイミングがあるってのをここでのRollinsを聞いていると強く感じるのだ。

振り返れば,私もジャズを聴くようになって40年以上になるが,若い頃ははっきり言ってカッコつけて聞いていただけだったなぁと今更ながら思う。しかし,ジャズ喫茶での修行やら,その後の幾星霜を経て現在という時間になっても,あぁそうだったのかって感じることができるジャズという音楽の永続的な魅力を痛切に思い知らされるのは,こういうクラシック・アルバムのおかげと言いたくなってしまった。アルバムとしては冒頭の”Bag's Groove(Take 1)"が緊張感という観点でも突出していて,アルバム全体として聞くと,評価は若干微妙な部分もあるというのが正直なところだが,それでもやっぱりこれは星★★★★★しかないだろうな。

Rollinsと言えば,「サキコロ」も何年も聞いてないねぇ...。そのうち,当ブログにも登場するかもなぁ(笑)。でも書きようがないか(爆)。

sRecorded on June 29 and December 24, 1954

Personnel: Miles Davis(tp), Sonny Rollins(ts), Milt Jackson(vib), Thelonious Monk(p), Horace Silver(p), Percy Heath(b), Kenny Clarke(ds)

2020年8月 3日 (月)

これも久々に聞いたら,またもスリリングな響きに痺れてしまった"Extensions"。

_20200802"Extensions" Dave Holland Quartet(ECM)

このアルバムを聞くのも久しぶりだったのだが,これほどスリリングでカッコいい音楽だったのか...と絶句してしまった私である。はっきり言ってしまおう。このアルバムの鍵を握るのはKevin Eubanksである。後にPrismのメンバーとして改めてDave Hollandと共演するKevin Eubanksの鋭いギターが,このアルバムのスリルを倍加させたと言っても過言ではない。Prismも素晴らしいアルバムだった(記事はこちら)が,このアルバムも同列に並べたい。

そもそもSteve ColemanやMarvin "Smitty” Smithというメンバーからも鋭い演奏になるのは想定できる。しかし,ここでのKevin Eubanksが加えたギターの音は,実に刺激的であり,PrismにKevin Eubanksを呼んだのも,Dave Hollandがこのアルバムでの共演を忘れられなかったのではないからではないかとさえ思ってしまった。

全6曲をHolland,Coleman,Eubanksがオリジナルを2曲ずつ提供して構成しているが,これはどこから聞いても刺激的で実に素晴らしいアルバム。こういうのはもっと頻度を上げて聞かねばならん!と改めて思った次第。反省も込めて星★★★★★。次は"Triplicate"でも聞くか(笑)。

Recorded in September 1989

Personnel: Dave Holland(b), Steve Coleman(as), Kevin Eubanks(g), Marvin "Smitty” Smith(ds)

2020年8月 2日 (日)

久しぶりに聞いたらタイトル・トラックのスリリングな響きに引き込まれてしまったEnrico Rava盤。

_20200730 ”The Pilgrim and the Stars" Enrico Rava (ECM)

ECMレーベルもリリースされるアルバムの数が多過ぎて,さすがに最近はストリーミング頼みになり,買うアルバムも随分減ったと思う。そうは言いながら,過去にリリースされたアルバムは結構な枚数を保有しているのだが,家人の言葉を借りれば,「いつ聞くの?死ぬまでに一回も聞かなんじゃない?」ということになってしまう可能性なきにしもあらずである。保有しているアルバムは記憶しているつもりだが,しょっちゅう聞くって感じのアルバムはそう多くはないのも事実だ。

Enrico RavaのECMのアルバムも結構な枚数になっているし,私もほぼ保有していると思うが,プレイバックの回数が多いかと言えば,必ずしもそうでもない。実のところ,RavaのアルバムではVenusレーベルの"Renaissance"をプレイバックする回数の方が多いのではないかとさえ思ってしまう。だが,こうして久しぶりに聞いてみると,タイトル・トラックのECMらしい出だしから始まって,熱を帯びてくる展開に痺れてしまった。今回久しぶりに聞いてみて,編成も同じということもあり,Paolo FresuのDevil Quartetの源流はこの辺にあったのではないかなんて思ってしまった。

まぁ,ここに揃ったメンツを考えれば,間違いないよねと思うのが普通なのだが,やっぱりこれはよい。私がラッパのワンホーン好きというのも影響しているところは多分にあるが,この硬派な(と言っても「どフリー」ではない)サウンドには痺れる。ECMの比較的初期のアルバムであり,既にリリースから45年を経過しているのに,全く古さを感じさせないって凄いことである。ちゃんと昔のアルバムも聞かないといかんという反省と自戒も込めて星★★★★★としてしまおう。Ravaのラッパの音は素晴らしいし,マジでカッコいいですわぁ~。

Recorded in June 1975

Personnel: Enrico Rava(tp), John Abercrombie(g), Palle Daelsson(b), Jon Christensen(ds)

2020年8月 1日 (土)

ようやくデリバリーされたJoshua Redman Quartetのリユニオン・アルバムなのだが...。

Roundagain "RoundAgain" Redman Mehldau McBride Blade(Nonesuch)

本国でリリースされていながら,ちっともデリバリーされなかった本作がようやく到着である。コロナ禍の影響がないとは言わないが,それにしても時間が掛かり過ぎで,イライラさせられた。最近のAmazonは新譜がまともにデリバリーされたことがないのはどういう了見かと文句も言いたくなる。

それはさておき,このメンツが集結するのは94年に"MoodSwing"をリリースして以来なので,四半世紀以上ぶりということになるが,当時の若手が,今や現代のジャズ界を支える面々となってのリユニオンである。期待するなって方が無理である。そういう意味では,今年一番の話題作,注目作と言ってもいいぐらいの作品だろう。よって,私としてもCDがデリバリーされる前からストリーミングで期待しながら聞いていたことは言うまでもない。

既にストリーミングで聞いていた時から音の具合はわかっていたのだが,やはり媒体で聞いてみないとわからない部分もあるだろうということで,記事にすることは控えてきた私である。ようやくアルバムを我が家のオーディオで,家人がいないことをいいことに「相応の音量」で聞き直した訳だが,期待値が大き過ぎたかなとついつい思ってしまったというのが正直なところである。

聞いた感じで言えば,ストリーミングで聞いていた時よりは,音の粒立ちが違うこともあって印象はやや好転したのだが,聞き進むにつれて,ストリーミングで聞いていた時にも思っていた感覚が甦ってきたのである。はっきり言ってしまえば高揚感がないのだ。このメンツであれば,オーディエンスをワクワクさせるような演奏を展開できると思うが,最大の難点は曲があまり面白くないことではないか。アドリブ・パートはいいとして,どうも没入できない。贔屓の引き倒しと言われそうだが,私がいいと思えたのは結局Brad Mehldauの2曲なのだ。

演奏のレベルの高さはケチのつけようがないところなのだが,特にJoshua Redmanのオリジナルがイマイチだなぁという感覚に囚われ続けてしまう私である。更に言わせてもらえば,リズム・セクションに比べて,Joshua Redmanの吹奏も音色も魅力的に響かないのである。94年にはリーダーであったJoshua Redmanが今や一番つまらないと思わせるというのが象徴的な気もするが,私にとってはもう少しやれたのではなかったのかと思ってしまうのだ。今や,各々がリーダーとして活躍しているから,Joshua Redman Quartetではなく,4人の連名表記となっているのも仕方ないと思わせるというところか。こういう表記を見ると,私なんかはAnderson Bruford Wakeman Howeを思い出してしまうねぇ(笑)。

はっきり言ってしまえば,このメンツならこれぐらいできて当たり前。オーディエンスは我がままだから,更なる高みを求めるのだが,彼らに期待する高みに達していないのが残念なのだ。これではJames Farmの方がずっとよかったと思えてしまったのが残念である。今回に関しては,いくら私がBrad Mehldauの追っかけだからと言って,何でもかんでももろ手を挙げて最高と言うつもりはないってことだ。Brad Mehldauの演奏については特に文句はないとしても星★★★☆が精一杯。はぁ~。

Recorded on September 10-12, 2019

Personnel: Joshua Redman(ts, ss), Brad Mehldau(p), Christian McBride(b), Brian Blade(ds)

 

2020年7月30日 (木)

”Morning Rise”:この暑苦しさがたまりまへん(笑)

_20200729-2”Morning Rise" Alan Skidmore / Gerd Dudek / Aderhard Roidinger / Lala Kovachev(EGO)

今年は長梅雨で,本格的夏の到来はこれからってところだが,夏場になると私には暑苦しい音楽を聞きたくなる性癖があるようである。夏場に辛いカレーを食してひぃひぃ言ってしまうのと同じ感覚と言ってもよいが,まぁ物好きというか,アホというか...(苦笑)。このアルバムも取り出したのは久しぶりであるが,この暑苦しさがたまらないのだ。

このアルバムは”The EGO Recordings of Leszek Zadlo Alan Skidmore"という濃い~ボックス・セットの中の1枚であるが,このボックス・セットの中身は全部こんな感じみたいな暑苦しさを感じさせてくれるのだ。まさに夏にこそこのボックスである(爆)。

そもそもこのアルバム,ただでさえ熱いAlan Skidmoreに,ドイツからGlobe Unityでも活躍したGerd Dudekが加わるのだから,更に暑苦しいに決まっているのだが,聞いてみれば全くその予想は裏切られることはない。

まぁサウンドはそんな感じなのだが,このアルバム,全4曲なのだが,各々のミュージシャンが曲を提供しており,対等な立場のバンドであるということになるが,曲の感じも必ずしもゴリゴリ一直線でもなく,結構バラエティに富んでおり,なかなか面白い。こういうのは大音量で聞くに限るのだが,在宅勤務で家人の不在を大いに活用させてもらった私であった(笑)。

当然のことながら,そんなしょっちゅうプレイバックしたいタイプの音楽ではないが,久しぶりにこういう音を浴びたって感じである。星★★★★。こんな音源ばかり作っていては,カタログ22枚でレーベルがクローズしても仕方ないって気がするが,これはこれで欧州ジャズの遺産としてこれからも楽しみたいと思わせるアルバムであった。

Recorded in September 1977

Personnel: Ala Skidmore(ts, ss), Gerd Dudek(ts, ss), Aderhard Roidinger(b), Lala Kovachev(ds)

2020年7月29日 (水)

John ScofieldのSteve Swallow集:これがECMから出ることが実に意外。

_20200726-3 "Swallow Tales" John Scofield(ECM)

昨日,Steve SwallowとJohn Taylorのデュオを取り上げたからという訳ではないが,このアルバムの記事をアップしていなかったってことで,遅くなったが本作を取り上げよう。

正直言って,ジョンスコとECMってイメージ的にはあまり結びつかない。私の記憶ではJack DeJohnetteとやったTrio Beyondと,Marc JohnsonのBass Desiresぐらいって感じだが,どっちもECMっぽくないと言えばその通りだと思う。しかし,Bass Desiresのカッコよさは永久に不滅だと思うし,結局は「結びつかない」と言ったって,私のイメージだけの問題である。

それでもって,本作のメンツはジョンスコにSteve Swallow,そしてビルスチュなので,Verveの"EnRoute"と同じである。この3人はこの編成に加えて,別の組み合わせでもことあるごとに共演しているから,勝手知ったるトリオってことになるが,今回のキモはSteve Swallow曲集ってことになる。だが,このアルバム,録音されたのがニューヨーク大学のSteinhardt School of Culture, Education and Human Developmentにあるスタジオでの録音,かつエンジニアリングもECMとは縁のないであろうTyler McDiarmidということで,これは明らかに(そしておそらくはSteve Swallowによる)持ち込み音源ってことだろう。そういうことなので,ECMからでなくても出て不思議はないアルバムであり,ECM的な感覚は実は薄い。なので,これはECMレーベルのアルバムとして聞くことにはあまり意味はないように思う。

なので,このアルバムを評価するためには,企画としてのSteve Swallow集をどう捉えるかというところになる。Steve Swallowが優れたメロディ・メイカーであることは,John Taylorとのデュオ作のところでも書いた通りだが,ここでは素材としてSwallowの曲を使いつつ,ジョンスコが気持ちよさそうにソロを展開しているのが聞きものって気がする。ジョンスコも来年は古希を迎えるってことを考えると,ガンガン引き倒すって感じではなくなっているが,むしろ枯れた味わいを感じさせるというところか。もちろん,ジョンスコのことであるから,「枯れた」と言っても,デニチェンとやっているのとかと比べると随分おとなしくなったということだが,フレージングのアウト具合は不変である。

そして,付き合いの長いSteve Swallowの曲を,きっちりプレイしているところにジョンスコのSteve Swallowに対するリスペクトなり,友情なりが感じられる。正直言って,刺激には乏しいと思えなくもないが,優れたミュージシャン同士によるレベルの高い対話であり,かつ丁寧な演奏っぷりが実にいいと思う。そうした取り組み姿勢も評価し,ちょいと甘いと思いつつも星★★★★☆としよう。

それにしても,大学の中にレコーディング・スタジオを持っていることがまさにNYUらしい。

Recorded in March 2019

Personnel: John Scofield(g), Steve Swallow(b), Bill Stewart(ds)

2020年7月28日 (火)

昨日に続いてのJohn Taylor:今日はSteve Swallowとのデュオ・アルバム。

_20200726-2 "Parlance" Steve Swallow and John Taylor (Instant Present)

昨日,John Taylorの”Decipher"を取り上げたところで,今日はこのSteve Swallowとのデュオ・アルバムである。"Decipher"がアグレッシブな感覚に溢れたものだとすれば,本作はJohn Taylorの静謐で抒情的なタッチが出たものとなっている。

そもそもこのアルバム,どういう経緯で購入したのかは全く記憶にない。年は取りたくないが,ショップで買ったであろうことはわかっているのだが,それがどこだったのかも記憶がないのだ。しかし,Steve SwallowとJohn Taylorのデュオということで,メンツ買いをしたのは間違いないところである。本作が1995年リリースだったことを考えると,私の銀行出向時代なので,だとすると,秋葉原にあったディスクマップ辺りでの新譜購入だった可能性もあるが,それも自信がない。まぁ,経緯はさておき,このアルバム,相当マイナーなものと言ってよいので,巷で話題になったという話はあまり聞いたことがない。

Steve SwallowとJohn Taylorのデュオとなれば,大体音は想像がつくし,本作の演奏もこちらの想定通りという感じである。若干アブストラクトな感覚も残しながら,非常に淡々と演奏が進んでいく。こういう地味さがこのアルバムの特性ゆえ,あまり話題にならないのも仕方がないのかもしれない。そして,ここでの演奏は小音量でのプレイバックに適したものであって,決してハイ・ヴォリュームで聞くべきものとは思わない。ゴリゴリのジャズが好みの向きには全然フィットしない音楽だと言ってよいのだ。そもそもそういうリスナーがこうしたアルバムに関心を示すとも思えないが...。

ここでは全9曲中Steve Swallowのオリジナルが5曲(タイトル・トラック1曲はJohn Taylorとの共作だが,これはかなりブルージーなので,即興的なものかもしれない)を占めるが,お馴染みの"Hullo Bolinas"のような曲に加えて,"Carnation"という曲が実に可憐なメロディであり,実にいいメロディ・ラインを紡ぐ人だと思わざるをえない。それをJohn Taylorが楚々としたタッチでプレイすれば,それでOKという気がする。アルバム・タイトルとなっている"Parlance"という言葉は,「話しっぷり」って感じの訳が適当だろうが,古くは「議論」という意味も持つ。しかし,ここでは議論というよりも,静かな対話としか思えない演奏であり,まさに追ういう感覚で捉えればよい音楽である。

このアルバム,世間でもあまり見たことがないし,滅多にプレイバックされないが,今にして思えば買っておいて損はなかった。だが,やっぱり地味だなぁ(苦笑)。星★★★★。

Recorded in March 1995

Personnel: Steve Swallow(b), John Taylor

2020年7月27日 (月)

スリリングに押すJohn Taylorもまたよし。

_20200726 "Decipher" John Taylor Trio(MPS)

早いもので,John Taylorが亡くなってもう5年になる。彼の命日はJohn Coltraneと同じ7/17だったのねぇと今更のように思ってしまう。私にとって,John Taylorと言えば,Peter Erskineとの欧州トリオが思い出深いが,本作に比べると後のJohn Taylorは抒情的な響きを醸し出すピアノとなったと感じる。しかし,彼の2枚目のリーダー作である本作においては,かなり硬派のサウンドを聞かせている。

後の抒情的な響きも魅力的ではあるが,キャリアの比較的初期に当たるこうした時期の演奏においては,よりアグレッシブなピアノ・スタイルで,スリリングなピアノ・トリオ演奏に仕立てているのが実に素晴らしい。やはりこういう演奏を聞いても十分に実力を感じさせるところが,このアルバムの価値を高めていると思える。こんなアルバムが長らく廃盤状態だったというのが信じがたいが,海外で再発はされているものの,国内盤は暫く絶版状態のはずだ。しかし,聞けばわかるが,当時の英国ジャズのレベルの高さを認識させる,実によくできたピアノ・トリオ・アルバムだと思う。星★★★★☆。

いずれにしても,久しぶりに彼の音源をいろいろ聞いてみるかと思わせるに十分であった。

Recorded in 1972 and 1973

Personnel: John Taylor(p),Chris Lawrence(b), Tony Levin(ds)

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