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カテゴリー「アンビエント」の記事

2023年12月 5日 (火)

"Refract":実にユニークなフリーとアンビエントのハイブリッド。

_20231204_0001 "Refract" BlankFor.ms (Red Hook)

ブログのお知り合いが取り上げられていて気になったアルバム。そもそもリーダー,BlankFor.msなんて名前はこれまで聞いたこともなかった訳だが,BlankFor.ms(またの名をTyler Gilmore)がJason MoranとMarcus Gilmoreという俊英と共演ということでは注目度は上がる要素だ。ただ,それだけでは私のレーダー・スクリーンに乗ってこなかっただろうが,そうした人の音楽に触れてみようと思ったのも偏にブログのお知り合いゆえということになる。

そして,ECMレーベルでも優れた仕事を連発したSun Chungが立ち上げたRed Hookレーベルからリリースされたこの作品は,実にユニークで面白いものであった。言うなればフリーとアンビエントのハイブリッドあるいはフュージョンという表現が適切と思えるが,フリー度は抑制的なので,無茶苦茶アバンギャルドという訳でもない。BlankFor.msが操るエレクトロニクスやループにJason MoranのピアノとMarcus Gilmoreのドラムスが絡むという展開であるが,実に心地よく時間が流れていく。アンビエントと呼ぶには音楽的な刺激が強い部分もあって,そうしたパートは環境音楽として使えるかというと微妙だが,それでも静と動をうまく組み合わせた音楽は実にレベルが高い。

特にJason Moranのピアノが音楽の「核」としてその静と動を象徴的に示していると言ってもよいが,こうした三者の組み合わせの妙は,往時のECMレーベルにおいて様々なミュージシャンの組み合わせのアルバムが作られていた時代を思い出させるものであった。

今年リリースされたアンビエント的なアルバムとして,Arooj Aftab / Vijay Iyer / Shahzad Ismailyによる"Love in Exile" があった。あれも実に素晴らしい作品であったが,本作はそれに勝るとも劣らないアルバムとして評価したい。星★★★★★。そして,あっちはVijay Iyer,こっちはJason Moranという優れたジャズ界のピアニストが参加しているところは必ずしも偶然ではないと思う。

Recorded on May 26 & 27, 2022

Personnel: BlankFor.ms(electronics, tape loops, processing), Jason Moran(p), Marcus Gilmore(ds)

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2023年10月 3日 (火)

改めて聞いても実に面白いReichの"Drumming"。

_20231002_0001 "Drumming" Steve Reich & Musicians (Deutsche Grammophon)

このディスクに収められたPart 1~4から成る"Drumming"は演奏時間が80分を超える大作だが,パーカッション・アンサンブルだけのPart 1の演奏は,普通の人にとってはなかなかハードルが高い音楽だと思う。一方,私のようなSteve Reich好きにとっては,この微妙にリズムがずれていくミニマルな感覚が心地よくさえ思えてしまうのだ。それでもPart 2 に転じてマリンバでの演奏になると,いかにもReich的なサウンドと言うべき響きに更に心地よさが増す。

この2枚組には"Drumming"に加えて"Six Pianos"と"Music for Mallet Instruments, Voices and Organ"も併録されており,全編を聞き通すには2時間以上を要するので,なかなかプレイバック頻度は高まらないのも事実だ。しかし,久々に聞いてみて,ミニマル音楽の「聴き流し」の快感を覚えた私であった。仕事の邪魔には一切ならないところはアンビエントと言ってもよい。いずれにしても,やっぱり私はReichの音楽が好きなのねぇと再確認。

因みに"Drumming"は,Nonesuchレーベルからもリリースされているが,そちらでは演奏時間が57分弱と大幅に短くなっているのはどういう訳かはわからない(CD1枚に収録するため説もあり)。まぁそっちも"Phases"というボックス・セットに入っているので,そのうち聞いてみることにしよう。

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2023年5月25日 (木)

"Love in Exile":このアンビエントな雰囲気にはまる。

_20230520-2 "Love in Exile" Arooj Aftab / Vijay Iyer / Shahzad Ismaily (Verve)

Vijay Iyerの名前につられて入手したアルバムである。Arooj Aftabという人は初めてだが,Shahzad IsmailyはMarc RibotのCeramic Dogでライブも聞いていたってことに気づく。Arooj AftabとShahzad Ismailyはパキスタン・ルーツ,Vijay Iyerはインド・ルーツなので,そっち系の音が出てくるのかと思って,まずはストリーミングで聞いたのだが,意に反してあるいは想定外という感じで,これが聞いていて心地よいアンビエント・ミュージックのような音楽だった。冒頭の音を聞いただけでも,これは買いだと確信したのであった。

Arooj Aftabはグラミーも獲っていて,それがVerveレーベルとの契約につながったようだが,ほかの二人もプレゼンスを確立したミュージシャンであり,かなり優秀なその3人が集まれば,これはおかしなことにはなるはずがない。Arooj Aftabがウルドゥ語で歌っても,言語を理解しない人間にとってはサウンドの要素としか捉えられないが,それをVijay IyerのピアノやRhodesとShahzad Ismailyのベースがミニマルとは言わないが,決して出しゃばることのない音数で支える演奏は,私にとって大袈裟に言えば心の平安をもたらすような音楽なのだ。そして,Vijay Iyerのピアノの音が実に美しく録られていて,私はうっとりしてしまったのであった。Vijay Iyerのピアノも美しい"Shadow Forces"の映像がアップされていたので貼り付けておく。

この音楽をどのカテゴリーに入れるかは難しいところだが,一聴して得た感覚を大事にしてアンビエントとしておく。まぁ,映像からしてもアンビエントだもんね(笑)。6曲で71分超というのは長いと言えば長いが,こういう音楽だから全くの許容範囲だ

決して万人向けの音楽とは言えないかもしれないが,私にとっては,麻薬的な響きを持つ音楽。こういう音楽への注目度を高めるためにも星★★★★★としてしまおう。マジでいいですわぁ。ツアーもやっているようだが,一体どういうことになってしまうのか興味津々である。

Personnel: Arooj Aftab(vo), Vijay Iyer(p, el-p, electronics), Shahzad Ismaily(b, synth)

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2023年3月29日 (水)

Arvo Pärtの「鏡の中の鏡」:この上なく美しい響き。夢見心地とはこれのことか。

_20230326 "Arvo Pärt: Speigel im Spiegel" Benjamin Hudson / Sebastian Klinger / Jürgen Kruse(Brilliant Classics)

ECMの総帥,Manfred EicherがECM New Seriesを立ち上げたのはエストニアの作曲家,Arvo Pärtの音楽を世に広めるためだったという話もあるが,そのArvo Pärtの邦題「鏡の中の鏡」を聞いていると,まさにEicherの指向と合致しているよなぁって気がしてくる。

一般の現代音楽に感じられる難解さなんてものは皆無であり,ミニマリズムの中から浮き上がる美的な感覚は,もはやアンビエント・ミュージックと呼びたくなる。この「鏡の中の鏡」はその後もさまざまな楽器編成で連作として発表されているが,ここに収められたものが初出の編成(ヴァイオリン+ピアノ,ヴィオラ+ピアノ,チェロ+ピアノ)ということになるようだ。それに"Für Alina"ほかの3曲を加えた全6曲には心地よい響きだけが収められていると言ってよく,まさに夢見心地になるような音楽なのだ。

音楽に刺激を求めるリスナーにとっては全く無縁の音楽と言えるだろうが,私にとっては精神衛生上実に好ましい音である。心がささくれ立った時に確実に役立つと思える美的音源。素晴らしい。星★★★★★。

Personnel: Benjamin Hudson(vln, vla), Sebastian Klinger(cello), Jürgen Kruse(p)

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2022年12月22日 (木)

この静謐さがたまらない:Ketil BjørnstadとDavid Darlingのデュオ第2作

_20221217-4 "Epigraphs" Ketil Bjørnstad / David Darling(ECM)

David Darlingが亡くなったのは2021年初頭のことであった。David Darlingの音楽はニューエイジとも取れる響きを持っているが,そのDavid DarlingがKetil Bjørnstadと組んだデュオ作"The River"については私は「実に静謐にして美しい。ささくれ立った心さえ落ち着かせるであろう音楽である。」なんて書いている(記事はこちら)。"The River"でもKetil BjørnstadはByrd,Gibbonsにインスパイアされていると言っていたが,このアルバムでは二人のオリジナルに加え,そのByrd,Gibbonsの曲や,これまたルネッサンス期の作曲家,DufayやGregor Aichingerの曲もやっている。

それでもって,この音楽を聞いていても,私が抱く感想は「実に静謐にして美しい。ささくれ立った心さえ落ち着かせるであろう音楽である。」でしかないのだから,私のボキャブラリーも実に限定的なものだと言いたくなる。しかし,そう思わざるをえない響きなのだ。

正直,ここまで行くと,これはもはやジャズではないでしょうと言いたくもなるが,ジャンルを超越するのがECMレーベルのECMたる所以であり,そもそも総帥Manfred Eicherにはジャンルなんて関係ないだろうと思いたくなるような,美的音源。こういうのがバーとかで流れていると,環境として気持ちよくなって酒量が増えること必定という意味では,これは良質なアンビエント・ミュージックだと言いたい。好きなんだよなぁ,こういうの。星★★★★☆。

Recorded in September, 1998

Personnel: Ketil Bjørnstad(p), David Darling(cello)

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2022年6月27日 (月)

The Orbの"Metallic Spheres":David Gilmourがテクノにどうマージするかだが,なかなか面白い。

_20220625 "Metallic Spheres" The Orb Featuring David Gilmour(Columbia)

テクノやハウスってのはほとんど聞かない私であるし,The Orbなんてユニットについても全く聞いたこともなかったのだが,このアルバムを購入したのは,ひとえにDavid Gilmourのせいである(笑)。

これは多分ショップで買ったと思うが,テクノとDavid Gilmourがどう融合するのかというところに関心は集中したはずである。だが,テクノとかハウスってのは私にとっては鑑賞音楽と言うより,むしろアンビエント,バックグラウンドで流しておけばよいって感じの感覚で捉えている音楽である。このアルバムもそういう聞き方をしていればいいと思うが,David Gilmourのギターはやっぱり気になるところではあるものの,確かにDavid Gilmourっぽいなぁと思うところはありつつも,集中して聴くって感じではなかったし,今回久々に聞いてみても,その感覚は変わらなかった。そういう意味ではDavid Gilmourに期待し過ぎないで,聞き流せばいいのだというのが結論。

そうした中で,私が一瞬そうした感覚から脱却する瞬間がこのアルバムにはある。それはGraham Nashの"Chicago"のフレーズが飛び出す瞬間である。なんでこんなところにあの曲がという感覚になるが,”Hymns to the Sun"と"Chicago Dub"と題されたそのパートで,馴染みのフレージングが出てくると,おいおい,なんでやねんとなるのが常なのだ。そもそも私が"Chicago"を聴いたのは,私のアメリカ音楽好きに決定的な影響を与えたCSN&Yの"4Way Street"が最初のことであり,私にとっては極めて重要な音楽体験の一部として,反応してしまうのが当たり前なのだ。

そういう意外性もあって,実はこのアルバムは結構好きなのだが,結局はアンビエントみたいなものなので,決してしょっちゅうプレイバックするものではない。だが結局,"Chicago"のフレーズ登場の瞬間を待っているってのが実態なのかもなぁと思っている。星★★★☆。

The OrbにはRobert Frippとの共演作もあるらしいから,今度ストリーミングで聞いてみることにしよう。

Personnel: David Gilmour(g, vo), Alex Paterson(key, turntable, manipulator), Youth(b, key, prog), Tim Bran(key, prog), Marcia Mello(g), Dominique Le Vac(vo)

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2021年10月15日 (金)

Ketil BjørnstadとDavid Darlingによる超美的なデュオ。たまりまへん。

_20211013-2"The River" Ketil Bjørnstad and David Darling(ECM)

今年の1月にDavid Darlingが亡くなった際に書いた追悼記事で,私は彼の音楽が「心の平安をもたらすのに役立つ」と書いた。David DarlingがKetil Bjørnstadとのデュオで作り上げたこのアルバムも例外ではない。実に静謐にして美しい。ささくれ立った心さえ落ち着かせるであろう音楽である。本作は全曲Ketil Bjørnstadの作曲によるものなので,主体はKetil Bjørnstadであることは間違いないのだが,David Darlingの貢献は極めて大きいとまず言っておく。

ライナーにKetil Bjørnstadが一部の曲は,後期ルネッサンスの音楽を研究,演奏しながら,Byrd,Gibbonsという英国ルネッサンス期の作曲家にインスパイアされたと書いているのが面白い。確かにそういう感じはない訳ではないとも思えるが,そういうことはあまり気にしなくても,この美しい音楽に没入すればいいと思える。あるいは没入しなくても,そこに流れているだけで環境と一体化するアンビエント・ミュージック的なところも感じることもできる。

この音楽は集中して聞くこともできれば,仕事をしていようが,読書をしていようが,勉強をしていようが,ながら聞きをしていても全く邪魔にならないという音楽である。これをジャズと呼ぶかと言うと微妙なところはあるが,ECM的な美学が表出したアルバムとして,これを聞いたのも実は久しぶりだったのだが,大いに楽しんだ私であった。星★★★★☆。

ByrdとかGibbonsという名前が出てきてしまっては,Glenn Gouldが弾いたByrd/Gibbons集を聞かずにはいられないな(笑)。

Recorded in June, 1996

Personnel: Ketil Bjørnstad(p), David Darling(cello)

2020年8月26日 (水)

たまに聞きたくなるTangerine Dream。

Encore "Encore" Tangerine Dream(Virgin)

Tangerine Dreamのようなバンドは,昔だったら毛嫌いしていたに違いない私である(爆)。なんせ若い頃はKraftwerkだってどこがいいのかわからんとか言っていたのだから,人間変われば変わるものである(苦笑)。Kraftwerkはずっとポップな感じがあるが,それに比べると,Tangerine Dreamはもっとミニマルでアンビエントな感覚が強い訳で,Kraftwerkよりも更にハードルは高かったはずである。しかし,いつの頃か,ミニマルにもアンビエントにも抵抗がなくなり,むしろ心地よいと感じるようになると,Tangerine Dreamもいいねぇと思い始めたのであった。そうは言いながら,"Zeit"なんて更に厳しいのから入ってしまうと,抵抗感は結構あるかもなぁとも思える。

だが,このアメリカでのツアー中にレコーディングされたライブ音源には,あまり難しいところはなく,Edgar Froeseのギターの入る曲などは,ロック・テイストも感じさせるので,非常に耳に馴染みやすい。そうは言っても,最後の"Desert Dream"なんて,睡眠導入効果抜群のような気もするが...(笑)。いずれにしても,こういう音楽を聞いていると,部屋の温度が若干下がったように感じるのは私だけ?もちろん,万人に勧められる音楽ではないとしても,アンビエント・ミュージックとして流しっぱなしにしても何の問題ないというアルバム。星★★★★。そういうこともあって,こういう音楽がたまに聞きたくなるのだ。

面白いのは聴衆の盛り上がり具合で,Tangerine Dreamの音楽で,ここまで盛り上がれるってのは結構凄いなぁなんて,別の意味で感心してしまった。

Recorded Live between March 29 and April 26, 1977

Personnel: Edgar Froese(key, p, g), Christoph Franke(key, synth, perc), Peter Baumann(key, synth)

2020年3月29日 (日)

超アンビエント!Fripp & Enoの"Evening Star"。

_20200326-2 "Evening Star" Fripp and Eno (Island→Opal/DGM)

このアルバムがリリースされた当時,King CrimsonのRobert Frippと元Roxy MusicのEnoが一緒に音楽をやったらどうなるのかと思うのが人情ってものだろう。当時でなくても,この音楽を聞いたことがないリスナーはそう思うはずである。だが,出てくる音楽は二つのバンドの音楽とは全く異なる完全なアンビエント・ミュージックである。

後のEnoの活動を考えれば,こうした音楽をやること自体には,今にしてみれば違和感はない。しかし,Robert FrippのKing Crimsonでの音楽を考えると,もはや対極とでも言うべきこの音楽は,King Crimsonファンにとっても,一般のリスナーにとってもかなりハードルが高いだろう。いつもであれば,よりメカニカルな響きを持つRobert Frippのギターがエフェクト的なサウンドとなっているのだから,これは普通驚くよねぇ。それでも聞いていれば,これはやっぱりFrippの「音」だと思ってしまうところが,Robert Frippたる所以なのだが(笑)。

ここでの音楽をどう評価するかというのは実に難しく,私としても実は星のつけようがないというのが実感である。なぜならば,これはアンビエント・ミュージックであって,環境と同化してこそのアンビエントだ。よって,音楽を意識しないことこそが重要なのではないかと思えるのだ。そうは言っても,後半の"An Index of Metals"には不穏な響きも感じ取れるので,完全環境同化って感じでもないので,その辺はちょっと微妙。

尚,冒頭のno"Wind on Water"の一部にはライブ音源が使われているが,眼前で彼らの演奏を見た聴衆はどのような反応を示したのか実に興味深い。私だったら何も知らずに観に行っていたら,松田優作ではないが,「なんじゃこりゃ~!」と叫んでいたかもしれない(爆)。

ということで,このアルバムについては悪い意味でなく,採点不能というのが正直なところである。しかし,このジャケは素敵だよねぇ。

Personnel: Robert Fripp(g), Eno(loops, synth)

2019年8月16日 (金)

猛暑の中でのアンビエント・ミュージック

_20190812_20190816181101 "Discreet Music" Brian Eno (Obscure→Virgin)

猛暑が続くと出掛ける気にもならないって時に,自分の部屋で何を聞くか。家人の手前,あまりヴォリュームを上げられないリスニング環境においては,ヘッドフォンで音楽を聞いていることもある私だが,スピーカーから音を出して音を聞きたい時もあるということで,そんな時にはこれなら絶対文句を言われないということで,久しぶりに本作を聞いた。

これぞアンビエント・ミュージックと呼ぶべきタイトル・トラックは,ミニマル・ミュージック以上に環境に同化してしまうということで,まさに音が鳴っていることを意識させないとでも言うべきものである。そうした意味で,これは音楽なのかという議論を生む可能性もあるが,ちゃんと音列は構成されているから音楽は音楽である。だが,これを今回やったように小音量で流していると,音が流れているのか流れていないのかさえどうでもよくなる感じというのを久しぶりに体験した。

それに比べれば,後半の”Three Versions of the Canon in D Major by Johan Pachelbel"はあの「パッヘルベルのカノン」を解体,再構築したものであり,まだ音楽的な要素を感じさせるものではあるが,こちらも小音量で流していると,気持ちよくなってきてしまうというある意味ヒーリング・ミュージックのようなものである。

だが,アンビエントという形態に限って言えば,本質的にはタイトル・トラックこそがEnoの狙う世界であろうが,アルバムとしてのプロダクションとしてはこの組み合わせが必要だと感じたということかもしれない。おそらく,LPの時代で言えば,タイトル・トラックが収められたA面ばかり聞いていたリスナーが多かったのではないかと思えるが,後半のVariationも決して悪くない。

猛暑の中,エアコンの効いた部屋で,これを小音量でプレイバックしている自分は一体何者?とも思いたくなってしまうが,それはそれで心地よい体験であった。環境と同化しているという観点で,音楽として評価をする必要は感じないが,実に存在意義のあるアルバムだと思う。

それにしても,ジャケの写真の暗さは半端ではなく,イメージをスキャンしても何のこっちゃみたいな状態だ(笑)。

Personnel:Brian Eno(synth, key), Gavin Bryars(arr, cond), The Cockpit Ensemble(performer)