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カテゴリー「ライブ」の記事

2025年2月 2日 (日)

人生初の声楽リサイタルを聞きに,お馴染みイタリア文化会館に出向く。

Carolina-lippo私はクラシック音楽もそこそこ聞くものの,オペラはさておき,声楽は極めて少ない例外を除いてスルーというのが実態である。そんな私であるから,声楽家によるリサイタルなんて全く縁のない話であったが,今回,毎度おなじみイタリア文化会館における無料コンサートで,Carolina Lippoなるソプラノ歌手のリサイタルが行われるということで,ネットで申し込みの上,九段下まで行ってきた。

当日は武道館でMC Tysonなるラッパーのライブがあったらしく,私とは全く異なる風体の若者たちがうようよしていたのだが,彼らを横目に私は市ヶ谷方面に向かって,九段の坂を上って行ったのであった。

当日のイタリア文化会館はいつもの無料コンサート同様,(私自身を含めた)高齢者が多数派という客層であったが,いつも思うが,大概同じ人間が来ているのではないかと感じてしまうのだ。そんな中,私にとって人生初の声楽のリサイタルであったが,このCarolina Lippoという人については詳しくは知らない。声楽とピアノを学び,舞台にデビューし,現在は教鞭も執っているようだ。知っている曲はアンコールで歌ったロッシーニの"La Danza"だけというところに私の声楽音痴ぶりが表れているようにも思うが,イタリア人,スペイン人作曲家のレパートリーはあまり知られていないものではなかったかと思えた。そんな中,Carolina Lippoは表情豊かに歌いこなしていたが,聞きながらこういうのもたまにはいいねぇなんて感じていた。

まぁこういう機会を与えてくれるイタリア文化会館には感謝だが,次はどんな企画なのか楽しみに待ちたい。久しぶりにジャズ系のミュージシャンも呼んで欲しいと思っているのはきっと私だけではあるまい。無料なんだからどうこう言えた立場ではないが...(笑)。

プログラムは本人の休憩10分(聴衆は着席で待機)とアンコール含めて約80分だったが,帰り道に武道館帰りの連中とは遭遇しない時間に終了というのはよかった。

イタリア文化会館のFBページに当日の写真が掲載されていたので,貼り付けておこう。

Live at イタリア文化会館 on January 30, 2025

Personnel: Carolina Lippo(vo),小埜寺美樹(p)

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2025年1月25日 (土)

今年最初のライブはCatpack@Blue Note東京。

Catpack-at-blue-note 今年最初のライブとなったのがCatpackであった。このバンド,Moonchlidにも参加するAmber Navranの新プロジェクトである。私はMoonchildのメロウ・グルーブがかなり好きなのだが,ライブに参戦する機会を逃していたこともあって,今回の来日情報を入手して,即参戦を決意したのであった。

アルバムは出したと言っても,ミニ・アルバムのEPみたいなものであり,メンツ的にも客入りはどうなんだろうと正直なところ思っていたが,行ってみれば,ほとんどフルハウスではないか。こんな人気があったのかと思いつつ,Amber Navranがライブの途中で「日本大好き~」と日本語で叫びたくなるのも納得できるノリのよさを聴衆も示していた。

このバンドはAmber Navranの新プロジェクトと言うよりも,メンバーの三者が対等な関係性のもとに演奏をしていたように感じるライブであったが,コントロール役を担っていたのは間違いなく数々のキーボードを操ったJacob Mannだったはずである。

そこにAmber NavranとPhil Beaudreauのヴォーカルと楽器が加わるのだが,Amber Navranのウイスパー・ヴォイスはここでも期待通りながら,私が感心したのがPhil Beaudreauの歌のうまさであった。しかもこの人,声が魅力的だし,トランペットの技量も大したものであった。ギターの音はあまりよく聞こえなかったのだが,それがPAのせいなのか,私の難聴のせいなのかはわからない。しかしラッパの音はミュートでもオープンであっても魅力的な音を出していた。Amber Navranは歌う以外はフルートに徹していたと思うが,シンセ・ベースにはちょこっと触った程度のように見えた。この人のフルートも技量は十分というところで,多才な人たちだと思った次第だ。

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Moonchildに比べると,メロウ度は低く,よりビートが効いていたのは,サポート・メンバーであるEfajemue Etoroma, Jr.のタイトなドラミングゆえというところもあるかもしれないが,Jacob Mannのキーボード・ワークがより強いグルーブ感を打ち出していたからだと思えた。プログラムはミニ・アルバムの内容を拡大したかたちというところで,アンコール含めて約75分の演奏は十分に楽しめた。

Catpack-and-i-mosaic 演奏後にはサイン会をやっていたものだから,ついつい気分の良さも加わって,ミニ・アルバムも購入し,サインをゲットしたが,彼らの写真撮影にも気楽に応じるところにはこの人たちのファンを大切にする姿勢が感じられて,非常に好感が持てるものであった。メンバー3人ともちらっと話したのだが,Amber Navranによれば,Moonchildの新作に取り掛かっているらしいから,そちらも楽しみにしておこう。ということで,当日の戦利品と彼らとの写真(いつも通りモザイク付き)もアップしておこう。見て頂けばわかるが,笑顔が素敵な面々であった。

Live at Blue Note東京 on January 23, 2025 2ndセット

Personnel: Amber Navran(vo, fl, synth b), Jacob Mann(key), Phil Beaudreau(tp, g, vo), Efajemue Etoroma, Jr.(ds)

2024年12月17日 (火)

2024年の回顧:ライブ編

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年の瀬も押し詰まってきたし,年内はもうライブに行く予定もないので,今年の回顧はライブから。私が今年行ったライブが全部で31本で,これは私の中ではこれまでの最高記録だと思う。月2本を超えるペースで通っていたのだから,結構行ってるねぇ。ジャズを中心にロック,クラシックと満遍なくライブに通ったという気がするが,どのライブもそれぞれに楽しめた記憶が残っていて,これは決定的な失敗だったというのがなかったのは実に嬉しい。

そんな中で今年のライブで最も感動したのはMarcin Wasilewski Trioであった。これで1stと2ndで曲を変えてくれていたら尚よかったが,私はCotton Clubで身じろぎもせずに彼らの演奏を聞き,そして感動していた。

正直言って2月にMeshell Ndegeocelloのライブを観た時には,もはや今年最高のライブはこれだろうと思っていたのを覆したMarcin Wasilewskiではあったが,だからと言ってMeshell Ndegeocelloのライブの素晴らしさも改めて強調しておかなければならない。実に素晴らしいメンツを揃えて,Meshell Ndegeocelloの創造力は尽きることがないと思わせた。

更にジャズ界の長老,Charles Lloydも年齢を感じさせない素晴らしい演奏を聞かせ,相変わらずの不老不死モードであったのが凄い。

クラシック界では何と言ってもBlomstedt/N響のシューベルトだった。特に「グレイト」が素晴らしかった。97歳のBlomstedtは一体いつまで振るのか?思ってしまいつつ,あれだけの素晴らしい演奏を引き出す力は,こちらも不老不死だ(笑)。

そのほかで印象に残るのがNik Bärtsch’s Ronin。音楽だけでなく,照明とも一体化したライブの雰囲気そのものが実に魅力的であった。そのほかにもMarisa Monteを観られたのも嬉しかったし,Daniil Trifonovの現代音楽づくしも面白かった。

ということで,来年はどれぐらいのライブに行けるかはわからないが,今年以上に楽しませてくれるライブを期待しつつ,本年を代表するライブとしてMarcin Wasilewskiのライブの模様を改めてアップしておく。

2024年11月27日 (水)

またまたイタリア文化会館での無料コンサートに行ってきた。

Alognagullotta

先日,Salvatore Sciarrinoの作品を取り上げた無料コンサートに行ったばかりだが,極めて短いインターヴァルでまたもイタリア文化会館に行ってきた。今回はイタリア人ヴァイオリニスト,Davide Alognaとピアニスト,Giuseppe Gullottaによるデュオであった。前回がThe現代音楽って感じだったのに対し,今回は純粋クラシック・メインにピアソラが加わるって感じのプログラム。

二部構成の第一部はペルゴレージ,ファーノの小品にブラームスのヴァイオリン・ソナタ第3番,第二部がロッシーニ,サン=サーンス,そしてピアソラというなかなかユニークなプログラムと言ってよいものだった。そこにアンコールが3曲,最後は「チャルダッシュ」で締めて盛り上げた。

正直言って第一部はヴァイオリンの音が硬い感じがしたし,ピアノは少々弾き過ぎという感じがあってニュアンスに乏しいと感じさせたが,第二部はピアノの弾き過ぎ感はあまり変化はなかったものの,印象はだいぶ良くなったと思えた。サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」は初めて聞いたが,なかなか面白い曲だと思えたのに加え,更にピアソラの「アディオス・ノニーノ」がよかった。

アンコールの1曲目はEnnio Morriconeと言っていたはずだが,曲名は不明。2曲目も曲名はわからないが,哀愁帯びたワルツであった。さすがイタリア人,こういう曲はうまいねぇ。イタリア語を解さないこっちとしては,イタリア語でMCをされても全くわからないが,さすがイタリア文化会館のイベントだけに,イタリア語を解する聴衆も結構いたようだ。最後のモンティ作「チャルダッシュ」は一時期フィギュア・スケートの音楽としてやたらに使われていたと記憶するが,生で聞いたのは初めてだった。まぁ,ヴァイオリンの技巧を聞かせるためのような曲だけに盛り上がるよねぇ。

演奏についてはいくらでもケチのつけようはあると思うが,まぁ無料でそこそこ楽しめたのだからよしとしよう。面白かったのはクラシック畑の人に珍しく,譜面にタブレットを使っていたことか。ヴァイオリンの譜めくりはフット・スイッチでクリック(?)操作していたようだが,ピアノのめくりは手指での操作のようで,しくじったらどうするんだろうと余計なことを考えながら見ていた私であった。まぁ,その辺はプロだから心配なしなのかもしれないが...。

年内にここでの無料コンサートはあと2回予定されているので,予約が取れればまた行きたいと思う。来年はそろそろジャズ系ミュージシャンを呼んで欲しいなぁ。

Live at イタリア文化会館 on November 25,2024

Personnel: Davide Alogna(vln), Giuseppe Gullotta(p)

2024年11月21日 (木)

Lee Ritenour and Dave Grusin with Brasilian Friends Featuring Ivan Lins@Blue Note東京参戦記

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ここのところ毎年のように来日しているLee RitenourとDave Grusinのコンビだが,今回は新作"Brasil"のリリースを受けて,Ivan Linsほかブラジル勢を加えた面々でライブを行うということで,Blue Note東京に行ってきた。Lee Ritenourは72歳,Dave Grusinは90歳,Ivan Linsも79歳という高齢者バンドであるが,演奏自体は矍鑠たるものであり,年齢を全く感じさせないのは誠に立派。さすがにDave Grusinは見た目そのものは随分老けたって感じがしたが,繰り出されるピアノやキーボードのプレイには全く衰えは感じられず,以前のままだというのも凄いことだ。ソロで聞かせた映画「ランダム・ハーツ」のテーマにおけるピアノのプレイも,この映画はヒットはしなかったが,曲そのものは印象深いというMCにも全然ぼけたところなしであった(1stでは映画「トッツィー」から"It Might Be You"をやったらしいが,そっちも聞いてみたかった)。Ivan Linsは若干危なっかしいところがなかった訳ではないが,年齢を考えれば声の出方も大したもので,「惚れてまうやろ~」と内心思っていた私であった(笑)。

Riteour-grusin-lins-at-bnt-door 私が現地に到着したのは19:15ぐらいだったと思うが,丁度1stセットが終わって,聴衆が出てくるタイミングであった。随分早いとも思えたが,Blue Noteが今月から採用したスマート決済(当日の飲食は事前登録のクレジット・カードで決済するため,レジに並ぶ必要なし)ゆえというところもあったようだ。しかし,ほぼオンタイムで始まった2ndセットはアンコールの"Rio Funk"まで含めて演奏は約90分に及び,私を含めた聴衆も大満足だったはずだ。"Stone Flower"終了後,ヴォーカルのTatiana Parraは一旦ステージから降りたので,Blue Noteのプログラムでは"Rio Funk"は予定外だったのかもしれないが,聞いているこちらにとっては大歓迎であった。

ご老体3名に加えて,ベースのMunir Hossn,更にはアルバム"Brasil"にも参加していたブラジルからのメンバーの技量も実に高く,それが演奏への満足度を高めた要因でもあった。私はベースのBruno Migottoの指さばきに感心することしきりであったが,ブラジル音楽界のレベルの高さは実証されたと思う。このバンドにおける不安の要因はWesley Ritenourのドラムスであったが,やっぱり叩き過ぎという感じは否めないものの,以前に比べればましになったというのが実感であった。

いずれにしても,総じて満足度は高く,生で聞くブラジル音楽のノリの心地よさも含めて,ライブの楽しさを満喫したのであった。私は何でもかんでもスタンディング・オヴェイションという人間ではないが,超満員の聴衆からのスタンディング・オヴェイションにもうなずける演奏だった。上の写真はBlue Note東京のサイトから拝借したものだが,衣装からすると当日の1stの模様と思われる。

Live at Blue Note東京 on November 19, 2024, 2ndセット

Personnel: Lee Ritenour(g), Dave Grusin(p, key), Ivan Lins(vo, key), Tatiana Parra(vo), Bruno Migotto(b), Munir Hossn(b, vo), Edu Ribeiro(ds), Wesley Ritenour(ds), Marcelo Costa(per)

2024年11月17日 (日)

イタリア文化会館でSalvatore Sciarrino室内楽演奏会を聴いた。

Salvatore-sciarrino お馴染みのイタリア文化会館無料コンサートに行ってきた。今回はSalvatore Sciarrinoという作曲家の曲を演奏ということだが,私はこの人について全く知らないままの参戦となった。

結論から言えば完全な現代音楽であった。私は現代音楽への耐性を備えているので,全然問題なしどころか,かなり楽しんでしまったというのが正直なところ。ただ,イタリア文化会館の無料コンサートはいつも高齢者の集まりみたいになっていて,この手の音楽はきつそうだと思いながら聞いていた。前半から完全熟睡モードの聴衆もちらほら(笑)。

しかし,休憩時間にロビーに出てみると,今回は結構若い聴衆が多く,音大の学生に優先枠でも開放したのかと思いつつ眺めていた。第一部は,ピアノ,クラリネット,ヴィオラ,フルート,ヴァイオリン,チェロが各々ソロ曲を披露したが,全て一筋縄で行かない曲ばかりで,演る方も聞く方も大変って感じであった。演る方は技術と集中力が求められるような曲ばかりと言ってもよく,聞く方も弱音に耳を澄ましながら,突然のフォルテシモに慄くという展開に気が抜けないのだ。冒頭に演奏した「夜の("De la Nuit")」なんて,譜めくりの回数が尋常ではないと思えた難曲であったし,その後の曲もテンションが下がることは一切ないのだ。フルートは2曲やったが,通常フルートに抱く音色とは全く異なるものであり,どちらかと言えば尺八に近い管j知恵,フルート奏者が過呼吸になるんじゃないかなんて余計な心配をしていた私である。

休憩後の第二部は杉山洋一の指揮のもと,ヴィオラ抜きのアンサンブルで1曲,そして奏者6人にソプラノが加わった歌曲(いずれも日本初演だそうだ)をやったのだが,アンサンブルだろうが,歌曲だろうが,完全現代音楽という感じに一切変化はなく,つくづく強烈なプログラムだと思ってしまった。何よりも,日本にこれだけ現代音楽を真っ当に演奏する人たちがいるということに感慨すら覚えた私であった。私は歌曲にはほとんど関心を示さない人間だが,今回ソプラノで参加した薬師寺典子はなかなか魅力的な声だなぁなんて思っていた。それは私が日本のプレイヤーに関して無知なだけではあるが,よくもまぁ今回のような難曲をこなせるものだと感心してしまった。何はともあれ,現代音楽に浸るってのもなかなか楽しいもんだ。

こんな演奏を無料で聞かせてもらって何ともありがたや~と思いつつ,家路についた私であった。

Live at イタリア文化会館 on November 15, 2024

Personnel: 杉山洋一(cond), 黒田亜樹(p),般若佳子(vla),田中香織(cl, b-cl),村上景子(fl),Aldo Campagnari(vln),北嶋愛季(cello),薬師寺典子(soprano)

2024年10月27日 (日)

Blomstedt/N響でシューベルトを聞く。

Blomstedt

Herbert Blomstedt,97歳にしていまだ現役。しかし,昨年のN響公演は来日そのものがキャンセルされたものの,今年もN響とやると発表され,次はあるのか?と思うと,さすがに今回はチケットを買ってしまった私である。こういうのはCharles Lloydのライブとかと同じ感覚なのだ。しかし,そんなことを考えていたら,来年のN響定期にはBlomstedtの名前が...。マジか!?。それはさておき,今回のCプロのシューベルトの「未完成/グレイト」というプログラムは相当魅力的であった。「未完成」は生で聞いた記憶はないし,「グレイト」の生は88年にロンドンでTennstedt/LPOで聞いて以来だ。

Blomstedtはこのプログラムを3年前にライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とレコーディングしているが,97歳のBlomstedtが2曲で90分を生で指揮できるのかという不安もありつつも,やっぱりこれを逃す訳にはいかない。そもそも来日できるのかという不安はBプロ,Aプロを既に振っていたので解消していたが,さて一体どうなるのかという心持ちでNHKホールに向かった私である。

第一部は「未完成」だったが,正直言ってそれほど感銘を受けるってほどではなく,淡々と演じられた感覚が強かった。だが,休憩後の「グレイト」で印象は一変した。「未完成」は前菜に過ぎず,メイン・ディッシュは間違いなく「グレイト」であった。BlomstedtもはN響「グレイト」に向けて力を温存していたとしか思えない素晴らしい演奏であった。

これが97歳の指揮者か?と言うべき演奏であり,終演後の怒涛の「ブラボー」を聞いても,聴衆も同じように感じていたはずだ。私は真にGreatな「グレイト」を聴いたと思ったというのが実感だ。Blomstedtは下半身の衰えは顕著でもその指揮っぷりは活力に満ちたものであり,実に素晴らしかった。私は血湧き肉躍る感覚さえおぼえていたが,こんなのはKleiberでベト4/7を聴いて以来だと言ってもよかった。

正直言ってここまでの演奏を聴けるとは思えなかったが,まさに望外の喜びを感じる演奏であった。Herbert Blomstedt恐るべし。感動した!

Live at NHKホール on October 25, 2024

2024年10月19日 (土)

Immanuel Wilkins@Blue Note東京参戦記

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Blue Noteの会員になっていると,7回ライブに行くと,2か月間有効のライブ招待券をもらえるという特典がある。前回この特典を使ったのは昨年12月の挟間美帆だったから,随分短いインターヴァルで招待券をゲットしたことになるが,それだけ頻繁にBlue Noteに通っているってことだ。但し,この特典,利用可能なライブはチャージの上限が決まっているので,行きたいライブがあるかないかはその時の運みたいなところがある(結局は誰であれもったいないので行くのだが...)。それでもって,今回チョイスしたのがImmanuel Wilkinsである。

Immanuel-wilkins-at-bnt_20241111170401 この人,まだまだ日本ではそれほど知名度は高いとは言えないと思うが,本国ではDownBeat誌の国際批評家投票において,アルトサックス部門第1位に推されていて,その実力は高く評価されている。そうしたこともあり,これまでアルバムも購入したことはないが,後学のためということもあっての参戦となった。

結論から言えばリーダーの実力は素晴らしい。音色,フレージングともに一流だと思わせる。循環呼吸も交えながら繰り出すソロは実にレベルが高い。DownBeatの国際批評家投票1位という結果にも頷けるレベルだ。バンドとしても活きがいいねぇと「最初」は思わせた。だが,その後がいかん。

リーダーのアルトサックスには文句はない。しかし,このバンドのバランスを崩したのがドラムスのKweku Sumbryである。とにかく叩き過ぎでうるさいことこの上ない。ブラシを握れば,それなりのプレイもできることはわかるのだが,スティックだとなんでそこまで叩く必要があるのかと思わざるをえないのだ。そんな演奏なので,私はリーダーの演奏は楽しみながらも,演奏中にどんどん冷めていく自分を自覚していた。ドラマーがそんな調子に加え,ピアノは本来のレギュラーである Micah Thomasではなく,Paul Cornishがトラで入っていたのだが,iPadの譜面を必死で追う感じがあって,アンサンブル的にはイマイチ感があったのも痛い。ソロはそこそこのレベルだったとは思うが,やはりバンドへのフィット感が不足し,レギュラーでないことが露骨にわかってしまうのは惜しかった。

それに比べればベースのRick Rosatoはいい音を出していたし,バッキングも大したものだと思えたのに,ソロを取ったのはアンコールでの1曲だけだったというのはもったいないと思ってしまった。結局,アルトとベースはよいが,ピアノとドラムスがダメというのが明らかであり,私にとっては満足と不満が混在するライブとなったと言わざるを得ない。リーダーとしてはバンドをコントロールするのも大事な仕事なんだから,抑制という要素もちゃんと考えるべきだった。演奏を聞いていて,Dave Wecklだったらどう叩いたかなんて想像していた私である。

終演後のサイン会は大いに盛り上がっていたが,ドラマーに喧嘩を売りそうな気分だったこともあり,おとなしく家路についた私であった(爆)。上の写真はBlue Note東京のWebサイトから拝借。

Live at Blue Note東京 on October 17, 2024, 2ndセット

Personnel: Immanuel Wilkins(as), Paul Cornish(p), Rick Rosato(b), Kweku Sumbry(ds)

2024年10月10日 (木)

Marcin Wasilewski Trio@Cotton Club参戦記。

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Marcin Wasilewskiのトリオは私にとっては現代のジャズ・シーンにおいて,Brad Mehldauのトリオと双璧と言ってもよいと思っている。だから,前回2019年に来日した時も,Cotton Clubで1st,2nd通しで聴いているが,その演奏も実に優れたものであり,興奮気味に記事を書いている(その時の記事はこちら)。そして,今回トリオ結成30周年記念ツアーをワールドワイドで行う中,ついに再来日を果たした彼らを観るべく,Cotton Clubに足を運んだ。今回も同じく1st,2nd通しでの参戦である。財布には痛いが,その価値がある人たちなのだ(きっぱり)。

それでもって参戦した心持ちを正直に書こう。1stセット開演前に到着して,その集客の悪さに驚いてしまった。これほどレベルの高いトリオが来日しながら,3割,せいぜい4割ぐらいしか客席が埋まっていないのには愕然とした。Blue Note東京では結構席が埋まっていることが普通になっていて,集客が厳しいのではないかと思えたJohn Beasleyでさえ,月曜日の2ndでも7~8割埋まっていたことを考えると,これって一体どういうことなのだ?と思わざるをえない。私としてはこのトリオを聞かずして,現代のジャズ・ピアノは語れないとさえ思っているだけに,まずそれが残念と言わざるをえない。2ndはさすがに聴衆の数は少し増えたものの,フルハウスにはほど遠い状態というのは日本のジャズ・ファンにとってはもったいないことだと思っていた。

しかし,そんな集客の悪さをものともせず,トリオの演奏は繊細さとダイナミズムを併せ持つ素晴らしいものであった。1stと2ndで座席の位置は少々違っていたのだが,いずれにしても2セットとも最前列かぶりつきで見ていた私である。1stはMarcin Wasilewskiの鍵盤のタッチ,2ndはペダル使いに注目しながら聞いていた。私が感心してしまったのがMarcin Wasilewskiの弱音のタッチである。さすがピアノの国,ポーランド出身と思ってしまえるその繊細なタッチには見ていて惚れ惚れしてしまった。2ndは視点を変えて1stではよくわからなかったペダル使いを見ていたのだが,これも微妙にペダルを使う感覚は,実に素晴らしいものだったと思う。

そしてほぼ生音での演奏に接することで,このトリオの生み出す音を魅力を骨の髄まで感じることができたと言うべきだ。ベースのSalwomir Kurkiewiczも,ドラムスのMichal Miskiewiczも,このトリオの音楽性を引き出すのに最適なバンド・メイトだと思えるし,だからこそ30年も同じメンツで活動が続くのだろう。そんな彼らの演奏を聞いて,私は演奏後も心地よい余韻に浸ったことは言うまでもないが,1st演奏終了後は聴衆の引けが早いこと,早いこと。人のことはどうでもいいと思いつつ,あんな演奏を聞いておきながら,余韻に浸る余裕もないとは何とも無粋だと思っていた私である。

5年前もそうだったが,1stと2ndで曲が同じというのはやや残念ではあったものの,曲が同じでも与える感動は変わらないというのが素晴らしかった。やった曲にはまだ題名がついていないとか言っていたものもあったので,新曲だったかもしれないが,次のアルバムに入ってくることを期待したくなるような演奏であった。

いずれにしても,演奏後,私の頭に浮かんだのが「世界最高峰」というフレーズだった。ジャズ・ピアノ・トリオの世界では,私にとっては現在の世界最高峰はBrad Mehldauトリオだと思っているが,このMarcin Wasilewskiのトリオも世界最高峰として並び立つ存在と思えたのは冒頭に書いた「双璧」同様だ。どっちがエベレストで,どっちがK2でもよい。私にとってはもはや同列と考えたいトリオであった。昨今はBrad Mehldauはホールの公演が中心であることからすれば,ライブの満足度はMarcin Wasilewskiの方が上だと言ってもよいことは,2019年のライブの時の記事にも書いたが,今回も極めて満足度の高いライブであった。いやはや最高だ!

尚,上の写真はFBに本人がアップしていたものを拝借して少々トリミングを施したもの。下は当日の2nd終了後のサイン会での戦利品。もう一枚Thomas Stankoの"September Night"も持って行っていたのだが,本人との話に夢中になって,Marcin Wasilewskiのサインをもらい忘れてしまったので,3人のサインが揃った2枚だけアップしておく。

Live at Cotton Club東京 on October 8,2024

Personnel: Marcin Wasilewski(p),Salwomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz(ds)

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2024年9月26日 (木)

高橋アキ@豊洲シビックセンターホールを聞く。

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現代音楽のスペシャリストと言ってもよい高橋アキである。彼女の現代音楽のアルバムについては結構な数を保有するに至った私であるが,その一方でシューベルトにも取り組んでいることは認識していても,私にとってシューベルトのピアノ曲と言えば,Radu Lupuと決まってしまっているので,いくら高橋アキの音楽に接する機会が多くても,そこまではフォローしていなかった。しかし,今回は現代音楽3曲+シューベルトのD.960というプログラムだったので,私にとっては高橋アキの初生演奏ということで,会場の豊洲シビックセンターホールに行ってきた。

このホール,上の写真を見て頂ければわかるが,ガラス張りで,遠くにはレインボー・ブリッジも見えるというなかなか小じゃれたヴェニューであり,キャパは300人という高橋アキを聞くには適切なサイズと言ってもよいホールであった。聴衆は7割程度の入りってところだったように思う。高橋アキは毎年のようにここでリサイタルを開いており,常に現代音楽にシューベルトの曲を加えるというプログラムで臨んでいるようだが,今回は大曲,ピアノ・ソナタ第21番をメインに据えるというものであった。

舞台に登場した高橋アキは今年で傘寿を迎えた訳だが,その佇まいはずっと若々しく見え,凛とした風情さえ感じさせるのがまず凄い。私もこうした後期高齢者となりたいと思ってしまったのがまず第一印象。前半は現代音楽3曲で,冒頭は去る7月にこの世を去った湯浅譲二の「内触覚的宇宙」からスタート。このアブストラクトな響きがたまらん!ということで,こういう音が好物の私は最初から痺れてしまった。続く佐藤聰明とPeter Garlandの2曲は献呈曲,世界初演となったが,どちらもアブストラクト度は控えめで調性の範囲内での曲に思えた。私にとっては会場にも来ていた佐藤聰明の"Pieta"におけるサステインの効いた響きが印象的であった。それに比べるとPeter Garlandの"Autumn"はやや印象が薄い。高橋アキが弾いた"Birthday Party"を聞いた時にも思ったが,どうも私はこのPeter Garlandの曲と相性がよくないようだ(それに関する記事はこちら)。

第一部は3曲で35分程度で休憩に入り,第二部がシューベルトである。上述の通り,私にとってはRadu Lupuによる刷り込みが強い。しかし,Lupuが2012年にオペラシティでD.960を弾いた時にも若干の違和感を覚えていたと書いているから,それも大したことではないかもしれない。今回の高橋アキの演奏に関しては独特の間合いのようなものを感じさせるもので,特に第1楽章の演奏時間がやや長めで,好き嫌いが分かれそうだと思っていた。その辺りは個人の主観に任せるが,これはこれでありだとしても,私が高橋アキに惹かれるのは,やはり現代音楽の方だなと思っていたのは事実であった。アンコールは小曲を2曲。曲名はよく聞き取れなかったが,カメラータ東京のサイトに情報がアップされたらこのページも更新したい。

演奏終了後にサイン会もあって,後ろ髪を引かれる思いだったが,何分現地で売られていたほとんどの現代音楽のCDを保有している私としては,購入するものがなかったので,それは来年のリサイタルに取っておこう。

Live at 豊洲シビックセンターホール on Septeber 24, 2024

Personnel: 高橋アキ(p)

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