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カテゴリー「Brad Mehldau」の記事

2024年3月 8日 (金)

今年最大の注目作の一枚と言ってよいクリポタの新譜が英国より到着。

_20240307_0001"Eagle’s Point" Chris Potter (Edition)

主題の通り,本作は今年最大の注目作の一枚となることは必定と思われたアルバム。何と言ってもクリポタことChris Potterを支えるのがBrad Mehldau,John Patitucci,そしてBrian Bladeなのだ。レコーディング情報が伝わった時から,私はまだかまだかと待っていたというのが正直なところである。私は英国から飛ばしたものが到着したので,早速CDを聞いてみた。

こうしたオールスターのクァルテットはベースをChristian McBrideに代えたJoshua Redmanの例があったが,正直言って私はJoshua Redman盤には失望感さえ抱いていたが,クリポタならちゃんとやってくれるだろうと思っていたが,その期待は裏切られることはなかったと言い切ってしまおう。

冒頭の"Dream of Home"からキレキレのクリポタ・フレーズ全開である。そして,バックとの親和性も十分で,やっぱりクリポタ,仕事のレベルが高いと思わせる。現代No.1のサックス・プレイヤーはクリポタだと改めて感じてしまう。それに対して,ここでのBrad Mehldauはリーダーを結構立てた感じもするが,こうしたコンベンショナルなセッティングでもきっちり聞かせるソロを取り,バッキングも的確であることは言うまでもない。そして"Aria for Anna"前半のクリポタのソプラノとのデュオ・パートにおけるピアノの響きの美しいことよ。

ということで,私にとっては再編Joshua Redman Quartetよりもはるかに評価が高いアルバムとなった。ないものねだりとは思いつつ,全体的には比較的落ち着いた曲調が多いので,更にハードな展開があってもよかったような気もするが,ここは少々甘いの承知で星★★★★★としよう。まぁクリポタらしいフレーズは十分発揮されているので不満は全くない。何だかんだ言っても,全8曲56分余りを聞き終えるとウハウハしていた私である。

それにしてもこのアルバム,実にクリアに音が録れている。典型的なジャズ的サウンドと言うよりも,更にクリアな音場って感じだが,私のしょぼいオーディオでもわかるレベルの好録音だと思う。

尚,Brad Mehldauオタクの私は,本作の250セット限定の黄色とミント・グリーンのアナログ2枚組もゲットしたが,あぁ無駄遣いと思いつつ,オタクだからいいのだと開き直っておく(きっぱり)(爆)。でもいつ聞くんだ?(笑)

ついでに言っておくと,国内盤にはボーナス・トラックとしてクリポタの無伴奏"All the Things You Are"が入っているらしいが,私がゲットしたアナログにはボーナス収録となっているが,アナログには入っていないから,これからメールで届くはずのダウンロード音源に入っているってことだろうな。まぁ,別にストリーミングでもいいんだけど。

Personnel: Chris Potter(ts, ss, b-cl), Brad Mehldau(p), John Patitucci(b), Brian Blade(ds)

本作へのリンクはこちら

2024年3月 3日 (日)

Brad Mehldauの新曲を捉えたブートレッグ。

_20240301_0001 "Zellerbach Hall 2024" Brad Mehldau (Bootleg)

Brad Mehldauが各所から委嘱を受けて作曲した新作"14 Reveries"がロンドンで初演されたのが昨年の9月のことであった。正式録音はそのうち行われるだろうが,できるだけ早く新曲を聞きたくなるのがファン心理。だが,ブートレッグもある程度の音のクォリティが確保されていないとなかなか手が出ないところであるが,今回届いたこのブートレッグはオーディエンス録音ながら,かなりよく録れているのが視聴してわかっていたので,購入と相成った。録音されたのはつい先日の2月10日,UC Berkeley内にあるZellerbach Hallでの演奏の模様がもう聞けてしまうというブートの世界恐るべし。

上述の通り,オーディエンス録音にしてはかなりよく録れているのだが,一部がさがさノイズが入るのは少々惜しい。しかし,ほとんど気にならないレベルなので,これなら十分だと思える。それでもって新作"14 Reveries"であるが,この時のプログラム後半では,"Suite: April 2020"からの曲が10曲演奏されていることからも,新作が同作の姉妹編のような位置づけにあるのではないかと想像させる。姉妹編と呼んだが,Brad Mehldauとしては,当然新作には発展性も持たせたと思われる美しいピアノ曲が並んでいる。

詳細については正式録音が出てからということにしたいが,一聴してアドリブ・パートがどの程度あるのかはよくわからなかった。しかし,Brad Mehldauのサイトで"Reverie #1"の楽譜がダウンロードできるので見てみると,完全に書き譜のようで,更には"Fourteen Reveries runs 38-42 minutes in performance."とまで書いてある。ということで,本人に限らず,他のピアニストが演奏することも念頭に置いて書かれた作品ってところか。

そういう意味でBrad Mehldauの越境型活動の一環という気もするが,どうやってもBrad Mehldauの音楽だと思わせるのは立派なものだと思う。Disc 2に収められた新作以外の演奏も含めて,なかなかに聞き応えのあるブートレッグであった。

Live at Zellerbach Hall, UC Berkeley on February 10, 2024

Personnel: Brad Mehldau(p)

2023年12月21日 (木)

「リマリックのブラッド・メルドー」という書籍について。

Photo_20231219180901「リマリックのブラッド・メルドー:<ポスト・ジャズからの視点>I」牧野直也(アルテスパブリッシング)

先日,書店をうろついていて,この本が目に入ってしまった。帯には「ジャズ空間の拡張に挑み続けるピアニスト,ブラッド・メルドーの軌跡を軸に現代ジャズの状況を読み解く!」とあって,ほぉ~と声を発し(笑),中身もチェックせず購入した私である。この本,実は2017年の半ばに発売されたものであり,新刊でも何でもないことには後から気づいたのであった。

帯にある「軸に」というのが実は曲者で,この本,Brad Mehldauには相応のページ数は割いているが,Brad Mehldauに関する考察から逸脱して余談に走るページの多さがどうも納得がいかない。そもそもやたらに小難しい表現を用いる序論からしてこの本に必要なのかと思わせるが,著者は序論を読み飛ばして「第1章から読み始めてもらってもまったく問題ない」なんてするところもいかがなものかと思ってしまう。そもそも裏帯に書いてある次のような表現を見てもらえば,私の言いたいことはわかるはずだ。

『ブラッド・メルドーはよく耐えている。かつてセシル・テイラーやコルトレーンたちが理路を進もうとした果てに踏み越えていったジャズ本来の「語法」,その共通言語としてのフレーズという「構築物の枠組み」の中にとどまって,メルドーは原初的衝動へ踏み出すことなく耐えている。そして,半歩あるいは一歩,前へにじり出て,その枠組みを内側から拡張している。これは決して小さなことではない。』

何のこっちゃ?(爆) 同じことはもっとシンプルな表現で言えそうなものだが,意図的に小難しくしているとしか思えない。

それはさておき,著者のBrad Mehldauに対する意識の根底にはArt of Trio時代のトリオがまずあって,おそらくそれに加えて,Fresh Sound New Talentでのアルバム群へのシンパシーが感じられる。そして,ソロ・ピアノについてはライブ盤を「コンサート」として捉え,トリオ演奏以上には評価しないというスタンスが表れている。しかし,この本が発売された頃には既にリリースされていたあの超ド級"10 Years Solo Live"に言及しないのはあまりにも中途半端だろう。執筆のタイミングと違ったということはあるとしても,出版までには間に合ったはずで,明らかに聞くべき音を聞かず,取るべき対応を取っていないとしか言いようがないのだ。

音楽は個人の好みが反映するものだから,好き嫌いがあることは別に否定しない。その一方で"Largo"や"Taming the Dragon"を手放しで褒めるような感覚を与えるのは著者の単なる音楽的嗜好だろうと言いたくなるのだ。しかも後者に関してはMark Giulianaを論じたいのかと思えるような感じなのだ。

ということで,私としては余談の多さ,話の逸脱感,Brad Mehldau自身の音楽のカバレッジの半端から全然面白いと思えなかった。結局読んでいて「ふぅ~ん,そうかねぇ...」としかならなかったと言っておこう。どう考えても頭でっかちな本で,こういう本を読んでいると,四谷「いーぐる」の店主,後藤雅洋の,難しいこと一切なしで,ジャズの魅力を的確,適切に伝える能力は実に素晴らしいと思ってしまうのだ。本書の著者,牧野のような書き方をしていれば,ジャズに関心のない人々の心はジャズという音楽からますます離れていくだけだと思える。ということで,全部読んだものの,中身をチェックしてから買うべきだったと反省した私である。

2023年12月20日 (水)

今更ながらのNick Drake。素晴らしいアルバムであった。

_20231218_0001 "Five Leaves Left" Nick Drake (Island)

わずか3枚のアルバムを残してこの世を去ったNick Drakeのこれがデビュー・アルバム。リリースされた当時は全然売れなかったが,その後,評価がどんどん上がっていき,傑作としての評価が固まったのは1990年代に入ってからのようだ。しかし,本作が再評価されるずっと前から,ブラックホークの99枚のうちの1枚に選んでいた松平維秋の審美眼は素晴らしかったと思わざるをえない。

このアルバムが持つ内省的でメランコリックな響きはリスナーの心の琴線を揺さぶるものと言ってもよいが,こうした響きがおそらくはBrad Mehldauにも影響した結果,彼のレパートリーにこれまでのところ(多分)4曲,Nick Drakeの曲が選ばれることにつながったと思える。そのうち3曲("Time Has Told Me","River Man",そして"Day Is Done")は本作に収められていることを踏まえれば,Brad Mehldauの追っかけたる私にとってもこのアルバムは極めて重要だということになる。

プロデュースを名匠,Joe Boyd,更にゲストにRichard ThompsonやDanny Thompsonを迎えていることからしても,当時のIslandレーベルの期待値の高さが表れていると思うが,残念ながらセールスにはつながらなかった。それは60年代末という時代のなせる業だったのかもしれない。しかし,この音楽が持つ魅力は時代を越えて不変だと思わせるに十分であり,素晴らしいメロディ・センスに,必要最小限の編成における的確なアレンジメントが加わって,今の耳にも魅力的に響く。ストリングスとの共演なんてまさに痺れる出来で,やっぱりこれは傑作だと改めて思わせる。星★★★★★。

Personnel: Nick Drake(vo, g, p), Richard Thompson(g), Danny Thompson(b), Tristan Fry(ds), Rocky Dzidzornu(perc), Clare Lowther(cello), Lyn Dobson(fl), Harry Robinson(arr), Robert Kirby(arr)

本作へのリンクはこちら

2023年12月14日 (木)

2023年の回顧:ライブ編

今年はもうライブに行く予定がないので,ちょっと早いが今年の回顧をライブから始めたいと思う。今年は結局ジャズ,ロック,クラシック等でトータル23本のライブに参戦した。コロナウイルスの5類への移行により,海外ミュージシャンの来日も以前のようになってきて,私のライブ通いも増えてきたということだ。2022年は9本しか行っていないから,大幅増というか,従来のペースに戻ったというだけだが...。

そうした中で,今年最高のライブは何だったかと言えば,2月のBrad Mehldauの紀尾井ホールのピアノ・ソロだった。その後,ピアノ協奏曲も聞きに東京オペラシティにも行ったが,あれを失敗作だと思っている私ゆえ,このソロのポイントは無茶苦茶高いのだ。私がBrad Mehldauの追っかけということもあるが,現代最強のピアノの一人だということを見事に実証したライブであった。

ジャズ系で記憶に残るのはクリポタ入りのSF Jazz Collective。1st,2ndでレパートリーを完全に変えるプログラムには燃えに燃えさせてもらった。そしてつい先日観た挟間美帆のm_unitも想定以上によかった。そのほかではLars Jansson,Domi & JD Beckも記憶に残る。

クラシックは4本。そのうち3本がオーケストラでそれなりに楽しんだが,一番よかったのはCharles Dutoitが新日本フィルを振った「幻想交響曲」。私が「幻想」を偏愛していることもあるが,この演奏は生でオケを聞く至福を改めて感じさせてくれたと言ってよい。仕事の関係でFabio LuisiがN響を振る「幻想」を聞けなかったのは惜しかったが,Dutoitの演奏の満足度が高かったからそれでよしとしよう。

ロックはTedeschi Trucks Bandしか行っていないが,つまらないテナー・サックス・ソロに辟易とした以外はいいライブだったと思う。"Beck’s Bolero"で燃えなきゃ嘘だよな(笑)。

そのほかにもいろいろなライブに行ったが,特に不満を感じることもなく,生の音楽を楽しんだ私である。因みに番外編として,21年ぶりに来日したJewelのBlue Note東京でのライブ時の写真に私がばっちり写り込んでいるので,「しゃれ」でアップしておこう。私のことを知っている人には簡単に見つかっちゃうだろうなぁ(笑)。

Jewel-at-blue-note-tokyo

2023年12月10日 (日)

コレクターはつらいよ(29):"Signs LIVE!"に未発表曲が入ってアナログでリリース。

Signs-live "Signs LIVE!" Peter Bernstein (Smoke Sessions)

およそ半年ぶりにこのシリーズである。今回取り上げる"Signs LIVE!"は既に2枚組CDとしてリリースされている(記事 はこちら)のだが,それの5枚組(!)アナログ・ボックス版が出るという情報をゲットした。5枚組?と思ったのだが,5枚組とあれば,未発表音源があるのではないかと思ったら,案の定あった,あった(笑)。Bandcampのサイトに2曲の未発表音源を含むという記載があるではないか。500セット限定ということもあり,速攻発注した私であった。

それが何かは明らかにはなっていなかったが,デリバリーされた5枚組の最後の面の2曲,"My Ideal"と"Dragonfly"がその未発表音源である。後者はCDにも入っていたが,こちらは別テイク。Brad Mehldauのコンプリートを目指す以上,たった2曲のためだけでも,高かろうが,なんだろうが入手せざるを得ないというのはマジでつらい。特に今回は値段がアルバムが$125,送料が$60ということで,財布には実に厳しいものだったが,これも仕方がないと諦めた私である。

因みにCD版のクレジットではレコーディングは2015年1月4日となっていたが,このアナログ・ヴァージョンでは1月3日,4日の両日となっているので,"Dragonfly"の別テイクは少なくとも1月3日の録音ということになる。それを考えれば,3日がレコーディングに向けてのリハーサル的な意味もあって,4日がレコーディング本番だったと考えるのが妥当だが,演奏のクォリティに差はない。

改めてアナログでこの時の演奏を楽しむことにしよう。

Recorded Live at Jazz at Lincoln Center on January 3 and 4, 2015

Personnel: Peter Bernstein(g), Brad Mehldau(p), Christian McBride(b), Gregory Hutchinson(ds)

2023年11月11日 (土)

クリポタの最注目の新譜は来年3月リリース。待ち遠しい!

Chris-potter-eagles-point

レコーディングしたことはわかっていたのだが,この強烈なクァルテットによる新作"Eagle’s Point"のリリースが来年3月に決定した。クリポタことChis Potterを支えるのがBrad Mehldau,John Patitucci,Brian Bladeとあっては聞く前からくぅ~っとなってしまう。首を長くして来年3月を待つことにしよう。

2023年6月12日 (月)

Brad MehldauとIan Bostridgeの"The Folly of Desire":至極真っ当な歌曲集である。

Folly-of-desire_20230610090301 "The Folly of Desire" Brad Mehldau / Ian Bostridge (Pentatone)

このアルバムがデリバリーされて,何度か聞いているものの,記事化することを躊躇していた。なぜなら,このアルバムはクラシックのリートの手法に則った真っ当な歌曲集だったからだ。正直言って,私はクラシックの歌曲に関しては,Peter SchreierとKonrad Ragossnigのギターによる「美しき水車小屋の娘」しか保有していないというのが実態なのだ。一方,Brad MehldauとRenée Fleming, Anne Sofie von Otterの共演盤は保有していても,滅多に聞かないというのも事実なので,こういうアルバムの評価は正直難しいのだ。

このアルバムにおいては11曲で構成された”The Folly of Desire"がメインで,それに続く5曲はコンサートであればアンコール的な位置づけになると思われる。その5曲中4曲はジャズ・スタンダードと呼んでよいものであり,もう1曲はIan Bostridgeが得意とするであろうシューベルトの「夜と夢」である。なので,このアルバムを評価する際にはタイトル・トラックからというのが筋だ。

ここでのテキストはシェークスピア,ブレイク,イェーツ,ゲーテ等から構成され,それにBrad Mehldauが曲をつけ,ピアノ伴奏をするものだが,ピアノの響きは実に美しいと思う。Ian Bostridgeのテナーは,いかにもテナーらしい歌唱でそれに応えているが,以前,このアルバムに関する記事にも書いた通り,真面目に作られているがゆえに,こっちもついつい身構えてしまうというのが正直なところだ。更に"A song cycle inquiring the limits of sexual freedom in a post-#MeToo political age"というテーマからして小難しく(笑),こっちもどういうことなのかとついつい考えてしまうのだ。だから,後半のアンコール・ピース的な曲の方が,メロディ・ラインにも馴染みがあって,気楽に聞けてしまうのは仕方ないところだろう。ただ,シューベルトとジャズ曲のBostridgeの歌い方の違いには戸惑う部分もある。

私はBrad Mehldauのこういうチャレンジは応援したいとも思うものの,必ずしも成功しているとは思っていない。そうした中では,本作はまだいいと思えるが,それでも越境はそこそこにしておいて,また私たちを痺れさせるようなジャズ・アルバムの制作を期待したくなってしまう。ということで,星★★★★ぐらいにしておこう。

Recorded in July, 2022

Personnel: Ian Bostridge(vo), Brad Mehldau(p)

本作へのリンクはこちら

2023年6月 7日 (水)

コレクターはつらいよ(28):ラジオ番組出演時の記録。

_20230605"Morning Becomes Eclectic" Various Artists (Mammoth)

本来ならIan Bostridgeとの共演盤についてさっさと書くべきだが,横道に逸れて久しぶりのこのシリーズである。実はこのアルバムについては既にちらっと記事に書いたことがある(記事はこちら)。その時の記事はBrad Mehldauのプロモ盤に関する記事だったが,そこでこのアルバムに触れている。これは米国西海岸のFMステーション,KCRWの人気番組"Morning Becomes Eclectic"に出演時の音源が収められたものなのだが,Brad Mehldauの音源は"Exit Music"のみである。この1曲のために本作を購入するのだから,「コレクターはつらいよ」なのだが,辛いことばかりとは言えない。

このアルバムが出たのは今から四半世紀前に遡るが,この番組は今も続いている大長寿番組であり,音楽界においては相当有名な番組であろうことは,このコンピレーションのみならず,何枚か出ているこのシリーズに参加しているミュージシャンを見ればわかる。ここには入っていないが,別のアルバムにはJoni Mitchell,James Taylor,更にはPatti Smithの音源も入っている。本作も一見脈絡のない組合せではあるが,実力を備えたミュージシャンが収録されていることから,番組の審美眼がわかるというものだ。

Brad MehldauはLarry Grenadier,Jorge Rossy時代のトリオでの出演で,ここでも痺れるような演奏を聞かせてくれるが,それ以外にも私を刺激する音源が入っている。例えばJohn Martyn。John and Beverley Martynの夫婦デュオによる"Stormbringer!"というアルバムを本ブログでも取り上げた(記事はこちら)ことがあるが,ここでの歌唱の渋いこと,渋いこと。これが本当によい。そのほかには現在はPaul McCartneyのライブ・バンドでギターを弾くRusty Andersonが参加していたEdnaswapなんて,今まで聞いたこともなかったが,実に魅力的なバンドだったって今更のように気づいているのだから,私もいい加減な聞き方をしているのがバレバレだ。そのほかにBeth Ortonとか,PJ Harveyとかもいいねぇ。

しかし,改めて聞いてみて,そういう気づきを与えてくれるのだから,それはそれでよかったと思っている。コレクターはつらいが,それでも未知の音楽との出会いを与えてくれるチャンスがこういうコンピレーションにはあるってことで。

本作へのリンクはこちら

2023年6月 5日 (月)

Brad Mehldauの更なる越境。でもまだ評価するほど聞けていない。

Folly-of-desire Brad Meldauがジャズの世界を越境して,クラシックにアプローチするというのは今に始まった話ではない。これまでもRenée Fleming, Anne Sofie von Otter等のクラシック界の歌手陣との共演に加え,オルフェウス室内管弦楽団との共演や,ピアノ協奏曲の作曲もあって,ジャズの枠に留まらない活動は広く知られてきたことである。

私はBrad Mehldauのコンプリートを目指す(あくまでも公式音源であって,原則としてブートレッグは含まないが...)人間であることはこのブログにも書いてきた。上述のアルバムももちろん保有しているが,決してプレイバックの頻度は高くはない。私が痺れているのはあくまでもジャズ・ピアニストとしてのBrad Mehldauなのだから,それはそれで当然なのだ。正直言ってピアノ協奏曲は成功したとは思えないし,オルフェウスとの共演盤も微妙な感覚を覚えた。私はどうせ越境するならクラシックよりロックじゃねぇのか?と思っているのが正直なところなのだが,それでも新たな音源が出れば聞かざるをえないし,買わざるをえないのだ。

それでもって,今回のお題はテノール歌手,Ian Bostridgeとの共演盤である。この二人の共演はこれまでコンサートという形態で行われてきたものだが,それが正式にレコーディングされたものである。私としては,まだ十分に聞けていないので,内容については改めて書くが,表題曲は11曲から構成される組曲で,作曲はBrad Mehldauだが,詞はシェークスピアとか,イェーツとか,ゲーテとかいちいち敷居が高い(爆)。

これを面白いと感じられるかどうかは私自身まだわからないので,もう少し聞き込んでから改めて記事にすることとしたい。でもこれって真面目に作っていることはわかるが,この生真面目さは多少重荷と感じる向きもあるのではないかと思う,というのが正直なところ。

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