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カテゴリー「Brad Mehldau」の記事

2025年12月29日 (月)

2025年の回顧:音楽編(その2::ジャズ)

2025-best_2

今年の回顧も最終回。今回はジャズのアルバム。現物がまだ届いていないものもあるが,ストリーミングも含めて今年を振り返ってみると,最高評価の星★★★★★を付けたものは何枚かあるが,その中でこれは絶対はずせないと思ったのがFred Herschの"The Surrounding Green"であった。聞いた瞬間から本年屈指のアルバムと書いているし,その感覚に変わりはない。

同じピアノ・トリオという編成でも全く違うタイプの音楽を生み出したのがBanksia Trioの"Live"であった。これまでの3作も優れた出来だったが,本作で示されたテンションや演奏能力はもはや世界レベルと確信した私である。

哀愁と抒情という観点ではMathias Eickの"Lullaby"とDino Saluzziの"El Viejo Caminante"がたまらなかった。結局私はこういう音が好きなのだなということを改めて痛感したが,特にDino Saluzziはあやうく聞き逃すところだったのを避けられたという点でも印象が強く残った。

そして毎度のことながらのBrad Mehldau絡みでは,リーダー作の"Ride into the Sun"もよかったのだが,ここではAl Fosterとの"Live at Smoke"を挙げたい。Christian McBride~Marcus Gilmoreとのトリオでも聞かせたオーセンティックな演奏への渇望感がそうさせたと言ってもよいが,だからと言って"Ride into the Sun"の評価が下がる訳ではない。あれはあれでいいアルバムなのだ。

少し変わったところではCraig Taborn~Nels Cline~Marcus Gilmoreの変則トリオによる "Trio of Bloom"を挙げたい。とにかくこの何でもありのようなサウンドには興奮させられた。ジャズもいろいろだねぇと思わせるに十分な刺激的なアルバムであった。

最後に挙げた2作はまだ現物がデリバリーされていないが,ストリーミングでもその魅力は十分伝わるとは言え,さっさとデリバリーされないかと待ちわびる私である。そのほかにもジョンスコ~Dave HollandやらJoe Lovano~Marcin Wasilewski Trioやらも挙げて然るべきであるが,印象の強さを優先した結果のチョイスとなった。

ここには挙げていないが,James Brandon Lewis,Patricia Brennan,そしてKris Davis等,これまでちゃんと聞けていなかった人たちの音楽に触れられたのもよかったと思える2025年であった。

2025年12月23日 (火)

2025年の回顧:ライブ編

Photo_20251220153501

年の瀬も押し迫ってきたので,今年の回顧を始めようと思う。最初は年内の予定が終了したライブからである。今年行ったライブだが,計31本。大体月あたり2.5本ってことになる。昨年も31本だったから全く同じペースであった。

今年はがっくり来るようなライブはほとんどなく,基本的には満足のいく演奏を聞かせてもらったと思うが,その中でも印象に残っているのが,Brad Mehldau~Christian McBride~Marcus Gilmore@紀尾井ホール,Brian Blade & the Fellowship Band@Cotton Club,SFJazz Collective@Blue Note東京,そしてKlaus Mäkelä+パリ管@サントリーホール。一方,参考までにではあるが,一番つまらなかったのがJames Mason@Blue Note東京であることは間違いない(きっぱり)。

Mehldau~McBride~Gilmoreは実力者によるトリオによるオーセンティックなジャズ演奏の醍醐味を感じさせたし,Brian Bladeはゴスペルに根差した音楽性をリアル体験できたことの喜びが大きかった。SFJazz CollectiveはクリポタことChris Potterのリーダーシップもよい上に,メンバーのソロのレベルも上々だった。そしてKlaus Mäkelä+パリ管が聞かせた躍動感は実に素晴らしく,本当にワクワクしてしまったのであった。いろいろな意味で最も楽しんだのはKlaus Mäkelä+パリ管だったかもしれない。ということで,代表するライブとして彼らのコンサートの模様の写真を貼り付けておこう。

そのほかにもCamila Mezaもよかったし,Lars Janssonもよかった。Arooj Aftabは面白かったし,Stingも楽しかった。そして急遽お誘い頂いて参戦した上原ひろみのエンタテインメント性溢れる演奏も忘れられない。ということで,今年も充実したライブ通いだったと思う。来年の一発目はLee RiternourのGentle Thoughtsリユニオンだが,Anthony Jackson追悼も込めた素晴らしい演奏を期待したい。

2025年12月13日 (土)

現物はまだデリバリーされていないが,Al Fosterの"Live at Smoke"をストリーミングで聞く。

Live-at-smoke"Live at Smoke" Al Foster(Smoke Sessions)

既に当ブログでも紹介した年末の最注目盤(記事はこちら)である。音源として12/5にリリース済みだが,現物が届いていない本作をストリーミングで聞いている。何せメンツが豪華である。フロントにはクリポタことChris Potter,リズム・セクションはリーダー,Al FosterにBrad Mehldau,Joe Martinの顔ぶれである。期待するなという方が無理な話だ。そしてその期待は裏切られることはない。

この演奏はAl Fosterの82歳の誕生日を記念した今年1月のセッションの模様であるが,その4か月後の今年5月に亡くなるとは思えない演奏ぶりである。

冒頭のクリポタのオリジナル"Amsterdam Blues"からワクワクするような演奏である。それに続くのがBrad Mehldauオリジナルの"Unrequited"とあってはマジで痺れる。更にJoe Martin,Al Fosterのオリジナルに加え,Wayne Shorterの"E.S.P.",Sonny Rollinsの"Pent-up House",John Coltraneの"Satellite",更にはスタンダードと聞きどころ満載なのだ。このメンツであればやはり間違いないのであった。現場にいた聴衆にジェラシーを感じた私である。

Al Fosterは生前,このアルバムの最終ミックスを聞いて涙したそうだが,自分の死期を悟った上でのことだったのだろうか。しかしこの世を去っても素晴らしい置き土産を残していったと言いたくなるアルバムである。リリースされたこと自体の喜びも含めて星★★★★★としよう。

Recorded Live at Smoke on January 18 & 19, 2025

Personnel: Al Foster(ds), Chris Potter(ts, ss), Brad Mehldau(p), Joe Martin(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年11月24日 (月)

年の瀬にリリースされるAl Fosterの遺作(?)は最注目盤。

Al-foster-live-at-smoke "Live at Smoke" Al Foster(Smoke Sessions)

Smoke Sessions Recordsからのメールが届いて,おぉっ!となってしまったアルバムの告知だ。惜しくも今年の5月に亡くなったAl Fosterが死の約4か月前にオールスター・クァルテットでSmokeに出演した時の実況盤である。確かこの時の演奏はFBで一部映像が公開されていたと記憶するが,生で聞けたらなぁと思っていたところへ,Al Foster追悼の意味も込めてのリリースだろう。メンツがクリポタことChris Potter,Brad MehldauにJoe Martinとあっては即発注である。現在,Bandcampで"Unrequited","E.S.P.","Everything Happens to Me"の3曲が試聴可能だが,もうそれだけ聞いても12月5日のリリースが待ち遠しい。楽しみにリリースを待とう。

2025年9月21日 (日)

またもブートの話。5月のライブを思い出しながら聞くBrad Mehldau~Christian McBride~Marcus Gilmore。

_20250919_0001 "The Gilmore 2025" Brad Mehldau / Christian McBride / Marcus Gilmore(Bootleg)

この3者による5月の日本公演は実によかった。いつにも増してオーセンティックなBrad Mehldauを聞いたという感覚だったから,彼らの音源は実に興味深いものがあるのは当然だ。そもそもここに収められた演奏は,演奏の模様がYouTubeにもアップされていて,いつでも見られるし,いつでも聞けるのだが,私としては映像なしでもいいやってところなので,若干のディスカウントもあったので,ついついまたこのブートを仕入れてしまった(笑)。

実力者の集まりなので,演奏の質に問題はないというところだが,5月に聞いた時よりはリラックスした感じが強いかもしれない。ただ,冒頭が"Anything Goes"かぁ...てっところはある。私の中でアルバム"Anything Goes"はあまり相性がよくないのだが,やっぱりこの曲は...って感じがあったのも事実。まぁブートレッグだけにどうこう文句を言ってはいけないのだが,それよりもこのブートの難点はドラムスの音だろうなぁ。サウンドボードだから基本的には大きな問題はないのだが,どうもシンバルやハイハットの音の聞こえがよくないのは私のオーディオ・セットがしょぼいからだけの理由ではないと思える。タムを叩く音はしっかり捉えられているのに比べると,バランスが悪いのだ。映像で見てもやはり同じ感覚で,どうもドラムスの違和感が拭えなかった。

演奏としてはDisc 2の方がこなれた感じがあって,より楽しめるとは思うが,私の中では紀尾井ホールでの演奏の印象が強く残っているだけに,生で聞いたのに比べると...ってところだ。そうは言っても,彼らの演奏をどのようなかたちでも聞けるだけでよしとしておこう。

Recorded Live at the Gilmore Piano Festival on April 13, 2025

Personnel: Brad Mehldau(p), Christian McBride(b), Marcus Gilmore(ds)

ネットにアップされているライブ映像も貼り付けておく。普通の人はこちらで十分だろう。

2025年9月 1日 (月)

待望!Brad Mehldauの新譜が届く。映画音楽のようにも響く穏やかなアルバム。

_20250829_0001 "Ride into the Sun" Brad Mehldau(Nonesuch)

待望のBrad Mehldauの新作が届いた。既にお知らせの通り,今回のテーマはElliott Smithである。Brad Mehldauはライナーで"Elliott Smith’s music is healing music"と書いているが,その通り,ここではオーケストラを交えた穏やかな演奏が中心となっているのが特徴だろう。

最近のBrad Mehldauは,オーセンティックなジャズ路線はライブやほかのミュージシャンのアルバムが中心になっていて,自身のアルバムは越境型のアルバムが多くなっている。トリオ作を出したのは2018年の"Seymour Reads The Constitution!"が最後となっているが,暫くはこういうかたちで活動を続けるつもりなのかもしれない。

それはさておき,本作を聞いていて,オーケストレーションもあるということで,サウンド的には"Highway Rider"路線と言ってよいだろうし,本作でBrad Mehldauと共同プロデュースを務め,オケを指揮したDan Colemanは,"Highway Rider"でもオケの指揮をしていたので,おそらくアレンジメントにも手を貸しているはずだから,近しい雰囲気になるのもうなずける話だ。

しかし,本作と"Highway Rider"の大きな違いはヴォーカル・チューンが含まれていることだろう。まぁElliott Smithの音楽を中心に据えるということであれば,シンガー・ソングライターとしてのElliott Smithにスポットライトを当てるためには,インストだけでは成り立たないという考えもあったものと思われる。お馴染みのPunch BrothersのChris Thileに加えて,更に歌の面で貢献しているのがGrizzly BearのDaniel Rossenで,この人の声が結構繊細な感じで,雰囲気を醸し出している。

アルバムにおいてはインスト曲とヴォーカル曲が混在しているし,インスト曲もオーケストラ入り,ピアノ・ソロ,バンド形式と分かれているので,Brad Mehdauが目指したのは一種の組曲としての取り組みのようなかたちかもしれない。1曲単位で捉えることもできるが,むしろ一枚のアルバムとして聞く必要があるのではないかと感じていた。ヴォーカル曲はフォーク的であったり,ややロック・タッチを感じさせるものが含まれるのに対し,インスト曲はクラシカルな響きが強く,こうした音楽の混在に戸惑うリスナーも相応に存在するはずだ。オーセンティックなBrad Mehldauを聞きたければ,トリオで演じられる"Between the Bars"辺りが最適だろうが,私のようなBrad Mehldauの追っかけにとっては,こういうのも十分にありだと感じていた。

本作はElliott Smithの曲を素材としつつ,Brad Mehldauの幅広い表現力を発露したアルバムとして捉えればよいと思うが,穏やかな曲が多く,映画音楽的に響く部分も感じられ,言ってみれば「Elliott Smithの人生を描いた映画のサントラ盤」のようだと考えていた。Elliott Smithの曲,Brad Mehldauのオリジナルに加えてBig Starの"Thirteen"とNick Drakeの"Sunday"が加えられているが,前者は美しいメロディ・ラインを活かしたピアノ・ソロを聞かせる一方,後者はフルートをフィーチャーした演奏で,これがまた何とも映画音楽的なのだ。

こういうアルバムなので,Brad Mehldauに何を求めるかで評価は大きく異なるはずだ。強烈なチャレンジ精神は感じないが,Elliott Smithへのリスペクトに根差したBrad Mehldauの新たな表現形式と考えたい。星★★★★☆。まぁ私としても,そろそろオーセンティックな路線でのリーダー作も期待したいところだが,これはこれで十分ありなのだ。

尚,多くの曲でベースを弾いているJohn Davisは本作のエンジニアリングも担当した二刀流。もう一人のFelix Moseholmは旧友Jorge Rossyも加わったトリオで時折Brad Mehldauと共演しているプレイヤー。

Recorded on January 24-28, 2025

Personnel: Brad Mehldau(p), Daniel Rossen(g, vo), Chris Thile(mandolin, vo), John Davis(b), Felix Moseholm(b), Matt Chamberlain(ds, perc), Dan Coleman(cond), Alex Sopp(fl), Jessica Han(fl), Agnes Marchione(cl), Adrian Morejon(basson), Eric Reed(horn), Ellen DePasquale(vln), Austin Wulliman(vln), Christina Courtin(vln), Laura Frautschi(vln), Joanna Maurer(vln), Derek Ratzenboeck(vln), Dov Shreidlin(vla), Mario Goto(vla), Nadia Sirota(vla), Sophie Shao(cello), Michael Haas(cello), Caitlin Sullivan(cello), David Grossman(b)

本作へのリンクはこちら

2025年7月13日 (日)

ストリーミングでBrad Mehldauの音楽を聞いていて,表示された「謎の音源」。

Spangalang-session "The Spangalang Sessions 1991" Joey 'G-Clef' Cavaseno (Soul Kid Jazz)

主題の通りである。スマホの不調により,デバイスにダウンロードしてあった音源が消えてしまい,再度デバイスに書き込むついでにストリーミングでBrad Mehldauの音源を聞いていたら,参加アルバムとして表示されたのが本作であった。なんだこれ?と思ってジャケを見れば,Featuring Brad Mehldauと書いてあるではないか。

2023年にリリースされていたらしいこの音源は,1991年のセッション・アルバムのようなのだが,1991年と言えばChristopher Hollydayの"The Natural Moment"で公式レコーディング・デビューを果たした年なので,Brad Mehldauとしては最初期の音源ということになる。こんなものがあったことを知らなかった私ではあるが,それが媒体でもリリースされていると知っては,早速 コンプリートを目指す私としては発注せざるを得ない。ということで現物は米国から飛ばしている最中だが,デリバリーされる前にストリーミングで音源をチェックした。

デビューしたての青臭い時期の演奏ではあるが,この頃からPeter Bernsteinとは付き合いがあったのだということがわかって,その後の盟友関係にも納得してしまう。結局長い付き合いの朋友なのだ。

まぁこの演奏を聞いて面白いと思うかと言えば,リーダーJoey 'G-Clef' Cavasenoのアルトを含めて微妙ではあるのだが,発展途上のBrad Mehldauの演奏だと思うと実に興味深い。

まだまだ明確な個性の確立には至っておらず,どこかの大学ジャズ研でもできそうな,ごく普通のジャズ・ピアノって感じなのが微笑ましい。

本作においては,Peter Bernsteinは曲によってWilliam Ashなるプレイヤーとギターを分け合っていて,全曲でプレイしている訳ではないが,William Ashよりははるかにましなギターを聞かせていると思える。それでもフレージングはまだまだ大したことがないという感じか。まぁBrad MehldauもPeter Bernsteinもこの当時20代前半なのだから,仕方ないことではあるとしても,その後の彼らの急成長はJimmy Cobbの下でのCobb’s Mobでの修行が効いたのかもなぁと思ってしまう。

いずれにしても30年以上埋もれていたのもある意味納得できてしまう本作は,よほどの物好きにしか薦められないというところだが,コレクターの私としては存在を認識できただけでよしとしよう。まぁこれも「コレクターはつらいよ」シリーズとしてもよかったかもなぁ(笑)。

Reccorded in 1991

Personnel: Joey 'G-Clef' Cavaseno(as), Brad Mehldau(p), Peter Bernstein(g), William Ash(g), John Webber(b), Andy Watson(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年7月 8日 (火)

越境型Brad Mehldauのブートレッグ登場。正直言って期待値は高くない(笑)のだが聞かずにはおれん。

_20250707_0001 "Brad Mehldau and Rundfunk Sinfonieorchester Berlin 2025" (Bootleg)

ジャズの枠に留まらない活動をするBrad Mehldauであるが,正直言って彼が書いたピアノ・コンチェルトはブートレッグで聞いても,ライブで聞いても失敗作だったと思っている。何でもかんでもうまく行く訳ではないということではあるが,そんなBrad Mehldauがまたもクラシックとの融合を図るライブを,今年6月にベルリンで行った際の放送音源がブートレッグとしてリリースされたので早速聞いている。

今回のコンサートはベルリン放送交響楽団と"Mehldau Meets Bach"と題するものである。Disc 2の前半は私の評価が低いピアノ・コンチェルトなので,ここはそれ以外のプログラムに注目したい。Disc 1はバッハの「平均律(ストラビンスキー編曲)」,「音楽の捧げもの(ウェーベルン編曲)」,「フーガの技法(指揮のClark Rundell編曲)」からベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」の「サンクトゥス」へと続くプログラム。Brad Mehldauのピアノのタッチも美しく,ここでのオケとピアノの融合具合は決して悪くないと思う。自作のピアノ・コンチェルトをやるより,私にとってはこういう感じのアダプテーションの方が馴染みがいい感じがしてしまうと言っては言い過ぎか。

Disc 2でピアノ・コンチェルトに続いて演奏しているのが,ブートのクレジットでは"Glodberg Variations"となっているのだが,これは記譜されたバッハの音楽ではなく,ゴルトベルクにインスパイアされた即興(変奏曲)というところであろう。それに続くのが"Things Behind the Sun"と"Waltz for J.B."で,この3曲はアンコール・ピースって感じだと思う。この辺りの演奏は本来のBrad Mehldauの真骨頂ゆえ,はずれはないところだ。

そして当日メインで演奏されたであろうピアノ・コンチェルトであるが,プログラム上は"Dedicated to Herbie Hancock"となっている。これまでこの曲に関して,Herbie Hancockの名前が出てきたことはなかったはずだが,なぜここに来て突然Herbie Hancockに捧げられたのかは全くの謎である。曲はこれまで演奏されてきたものと同じであり,Herbie Hancockを連想させるものでもないだけに,これはどうも解せないと思うのは私だけではないだろう。まぁ演奏としては以前よりはこなれてきた印象はあるが,曲そのものが盛り上がりに欠ける部分は否定できないので,評価が爆上がりするということはないな。

まぁこういう演奏も聞いておく必要があるというのが,私のBrad Mehldauという人への評価であり,ファン心理であるから,これはこれで不満はないと言っておこう。

Recorded Live at the Haus des Rundfunks, Berlin on June 14, 2025

Personnel: Brad Mehldau(p),Clark Rundell(cond),Rundfunk Sinfonieorchester Berlin

2025年6月 2日 (月)

Brad Mehldauの新作はElliot Smithの曲を中心とするアルバムで8月リリース予定!

Ride-into-the-sun先日,Christian McBride,Marcus Gilmoreと来日して,ジャズ・フレイヴァー溢れる演奏を聞かせたBrad Mehldauであるが,Nonesuchレーベルからのメールで告知された通り,Brad Mehldauの新作"Ride into the Sun"が8月29日にリリース予定となっている(詳しくはこちら)。

今回はElliot Smithの曲を中心にBrad MehldauのオリジナルとNick Drakeの曲が収められているらしい。既にNonesuchのWebサイトで2曲の映像が公開されていて,もはや期待が無茶苦茶高まっている私である。今回一部で歌やストリングスも入るのがこの映像からわかるが,これはまじで楽しみだ。Nonesuchのサイトからも飛べるが,期待を込めてここにも映像も貼り付けておこう。

2025年5月11日 (日)

Mehldau McBride Gilmore Trio@紀尾井ホール参戦記。

On-may-9-2025

前日に続いて二日連続でのライブ参戦となったが,今回はBrad MehldauにChristian McBride,Marcus Gilmoreから成るトリオだ。場所はキャパ800の紀尾井ホールだが,偶然にも11年前の同じ5/9に,私はKeith Jarrettのソロをこの場所で見ていたのであった。去年はここでのDaniil Trifonovの現代音楽のリサイタルを聞いて以来,約1年ぶりの再訪となった。

Mehldau-mcbride-gilmore-trio この3人については,Brad MehldauとChristian McBrideは度々共演しているが,Brad MehldauとMarcus Gilmoreは,Joe Martinの"Not By Chance"ぐらいしか共演はないと思う。Christian McBrideとMarcus Gilmoreの共演歴までは追えていないが,それでも実力者のトリオであるから大いに期待も膨らむ訳だ。

この日のプログラムは前半がBrad Mehldauのオリジナルが5曲,後半とアンコールがスタンダードとジャズマン・オリジナルで5曲という構成で休憩なしの約2時間ぶっ通しで,たっぷりと彼らの演奏に触れることができた。私が見たこの構成は,米国でのスタンフォード大学での公演のブートレッグに近いが,公開されている5/8のセットリストとは全く異なる構成というのが彼ららしい。

私は前半の3曲を聞いていて,これは今まで聞いたBrad Mehldauの生演奏においても上位に位置するのではないかと思えたが,冒頭3曲におけるハード・ドライヴィングとさえ感じるピアノには,Brad Mehldauのジャズ・ピアニストとしての矜持,あるいは魂のようなものを感じたのであった。冒頭の"Artis"からして,ジャズ的スリルに満ちたぞくぞくするような感覚だったと言っておきたい。

そんな演奏に接して,明らかにLarry GrenadierとJeff Ballardとのレギュラー・トリオの演奏から受ける印象と違うというのを感じていた。レギュラー・トリオにおいては,Brad Mehldauらしい「Brad Mehldau節」とでも言うべきフレージングが明確かつ頻繁に出るところがあるが,今回のトリオにおいては,そうした演奏はやや抑制され,よりオーセンティックな「ジャズ・ピアニスト」としてのBrad Mehldauを感じることができたと言うべきかもしれない。

後半のスタンダードやジャズマン・オリジナルでもそういう感覚があって,リーダー作で聞かれるピアノよりも,他のミュージシャンのアルバムに客演している時のBrad Mehldauという感覚だったと言ってもよいかもしれない。そもそもアンコールでSam Riversの"Beartrice"やJimmy Heathの"C.T.A."を選ぶところからしてもそういう感じだ。もちろん,そうした中にもBrad Mehldauらしいフレージングは顔を出すが,その比率が低いのだ。

レギュラー・トリオとは少々異なる今回の演奏もBrad Mehldauのひとつの顔であって,ライブの場でこういう演奏に触れられたことは,Brad Mehldauオタクの私にとって実に意義深いものとなった。今まで私はBrad Mehldauのソロか(Pat Methenyとの共演時も含めて)レギュラー・トリオの演奏しか生で見たことがなかったが,今回の演奏はある意味新鮮であった。そうした演奏を導き出すのが,Christian McBrideのベースであり,Marcus Gilmoreのドラムスだったと考えればよいだろうが,Christian McBrideが及ぼした影響はかなり大きかったのではないかと思える。ソロ・スペースも豊富に与えられ,Wayne Shorter作の"Miyako"で聞かせたボウイングなんて,やっぱりうまいもんだと思わせるに十分。最初はPAの調子が悪く,ベースがよく聞こえないと思っていたが,中盤から改善し,ニュアンスも聞き取れるようになったのもよかったが,やはりこの人,器が違う。Marcus Gilmoreのドラミングもシャープでよかったのだが,ドラム・ソロはもう少し歌心を感じさせてくれるといいなぁと思っていたのも事実であり,聴衆を乗せる術も発展途上と感じた。まぁそれでもこのトリオでレコーディングしてもいいんじゃないかと思えるレベルは十分に確保していたと思う。

いずれにしても,私としては十分満足できる演奏であったし,やはり彼らは一流だと再確認したライブであった。これに続く日本公演のセットリストを見るのが楽しみになってきたし,願わくば全公演を聞きたかったという思いを強くしたのであった。後悔先に立たずだが(苦笑)。

Live at 紀尾井ホール on May 9, 2025

Personnel: Brad Mehldau(p), Christian McBride(b), Marcus Gilmore(ds)

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