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カテゴリー「Brad Mehldau」の記事

2025年1月18日 (土)

Brad Mehldauのブート聞きはこれが最後:ロンドンのBarbicanにおけるMehliana。

_20250109_0002 "London 2013" Brad Mehldau and Mark Guiliana(Bootleg)

立て続けに聞いたBrad Mehldauのブートレッグの最後がMehlianaのロンドンでのライブ。この音源はもともとBBCのラジオで放送されたものなので,完全サウンドボードだから当然音はよい。しかもこれがブート購入のオマケでついてきたのだからラッキーと言っておこう。

アルバム"Taming the Dragon"が出たのが2014年で,彼らがこのライブをやったのが2013年ということなので,ある程度時間を掛けて,ライブでの共演を重ねながら音楽を熟成させ,アルバムを完成させたと考えることもできるように思える。

そうは言っても,このライブの音源を聞いていれば,アルバムでやろうとしていたことはほぼ出来上がっているって感じである。もちろん,"Taming the Dragon"が出た時には驚かされたものだが,これもBrad Mehldauだよなぁと思ったのもう10年以上前というところに時の流れの速さを感じる。その後もジャンルを越境する活動をするBrad Mehldauの"Jacob's Ladder"で更に明らかになるプログレへのシンパシーは,この辺りからはっきりしていたと思う音源であった。

Recorded Live at the Barbican on November 21, 2013

Personnel: Brad Mehldau(key),Mark Guiliana(ds, perc, loop)

2025年1月16日 (木)

更に続くBrad Mehldauのブート聞き:今度はMehliana+ジョンスコ!

_20250109_0001 "Detroit Jazz 2016" Scofield Mehldau Guiliana(Bootleg)

先日取り上げたChick Coreaとのデュオも2016年の演奏だったが,同じ2016年でも全く異なるタイプのBrad Mehldauである。これは2016年に欧米で短期間行われたBrad MehldauとMark GuilianaのMehlianaコンビに,ジョンスコことJohn Scofieldが加わるというスペシャル・ユニットによるライブのブートである。これもオーディエンス録音なのだが,オーディエンス録音としては相当出来がよい録音と言え,若干うるさい客の声が邪魔なほかは,ほぼストレスなしに聞くことができるのが素晴らしい。隠し録りかくあるべし(笑)。

Scofield-mehldau-guiliana このユニットの活動期間は限定的で,同年5~6月にNYCのBlue Noteに出演後,7月は欧州ツアー,そして活動を締めくくったのがこの9月のデトロイトにおけるジャズ・フェス出演であった。この音源はその最終日の実況録音であるが,面白いのがジョンスコがギターだけでなく,一部(基本はBrad Mehldauのソロのバック)でベースも弾いていることである。あくまでもベースは味付けみたいなものなので,ギターのような変態度は出てこない。ライブにおいてはジョンスコは写真のように,ベースはスタンドに設置して弾いていたようだ。

レパートリーはMehliana風あり,ジャム・バンド風あり,プログレ風あり,牧歌的な響きあり,ポップな曲調ありとこの人たちの多様な音楽性を反映したもので,これは相当楽しめる。途中でピアノの調子が悪くなってようで,曲間に調律みたいなのをやっているのはご愛嬌だが,このブートレッグは実に出来がよいもので,大きな声では言えないが,彼らのファンなら必聴の音源と言える。2枚組でたっぷり聞けるのも嬉しいねぇ。

Recorded Live at the Detroit Free Jazz Festivall on September 5, 2016

Personnel: John Scofield(g, b), Brad Mehldau(p, el-p, synth), Mark Guiliana(ds, perc)

2025年1月14日 (火)

またもBrad Mehldauのブートの話。今度はChick Coreaとのデュオ@Blue Note

_20250108_0002 "Definitive Blue Note" Chick Corea / Brad Mehldau(Bootleg)

ブートレッグに手を出し始めるとキリがないので,ブートを買う場合も極力サウンドボード音源を選ぶようにはしているが,どうしても注目すべき音源にはオーディエンス録音でもついつい手が出てしまう。本盤もそんな一枚だが,これはニューヨークのBlue NoteにおけるChick CoreaとBrad Mehldauのデュオ盤。

これは2016年の8週間に渡るChick Coreaの生誕75周年記念ライブ・シリーズの一コマ。私はこの年の12月にNYCに出張していて,その時はChick CoreaとJohn McLaughlinのデュオを観たのだが,タイミングさえ合えば,このライブも観たかったものだが果たせる訳もなく...。だからこの時の演奏には興味津々であり,先日のフランスでの最新ライブのブートと一緒に購入したもの。オーディエンス録音だけに音はそれなりだし,聴衆のノイズも発生するが,まぁ聞けるレベルではある。

この二人にとっては手慣れたレパートリーと言ってもよい曲が並んでいるが,冒頭の"You And the Night And the Music"になだれ込むインプロヴィゼーション・パートは結構アブストラクトな感覚で始まり少々面食らうが,その後はかなりまともなプレイぶりになっていく。そうは言っても2曲目の"Tenderly"でも途中から様子が変わってくる部分があって,この曲にこのアプローチは...って感じもする。

全編を通じて,Brad Mehldauは少々遠慮気味と言うか,Chick Coreaを立てている感覚があって,この二人ならでは,あるいは丁々発止というところまでは行っていないように思えるのは少々残念だ。しかし,特別な機会の「一期一会」と言ってよい珍しい組み合わせだけに,聞く価値はあるが,まぁこんなもんだろうなってレベル。その場にいれば間違いなく別の感慨もあるだろう。前述のJohn McLaughlinとのデュオに関して,私はこのブログに「今回の演奏はChick Coreaの生誕75周年記念のライブ・シリーズの一環としてのお祭り企画であるから,固いことは言うまい。」と書いているが,それはこの演奏にも当てはまるな。

Recorded Live at the Blue Note NYC on November 18, 2016

Personnel: Chick Corea(p), Brad Mehldau(p)

2025年1月12日 (日)

新譜が届かない中でBrad Mehldauの珍しいトリオによるブート音源。

_20250108_0001 "Nancy 2024" Brad Mehldau Trio(Bootleg)

新年になってまだ新譜も聞いていないところにBrad Mehldauのブート音源が届いたので,早速聞いている。フランスのナンシーという街でのトリオによるライブなのだが,このブートはYouTubeでも公開されている映像がソースだろうが,音はサウンドボードだから,クォリティには問題ない。

この音源が注目されるのは,そのメンツによる。Samara Joyとも共演したFelix Moseholmがベース,そして旧友Jorge Rossyとの久々の共演ということもあり,これまでに共演経験はないのではないかと思ったら,YouTubeには2020年のライブの模様もアップされているので,へぇ~となってしまった。Brad Mehldauの追っかけをしている割には私も無知なもんだと思ってしまった(苦笑)。

2020年のライブではJorge RossyがMCをしているので,元々はJorge Rossyの声掛けでの共演だったのかもしれないが,そのトリオが再集結したのがこのライブである。この音源を聞いていると,Brad Mehldauらしい美的で痺れるような感覚というより,特にBrad Mehldauのオリジナルでは,よりコンベンショナルな,かつリラックスした感じで弾いているように思える。むしろ,"Young And Foolish"のようなスタンダードに通常のBrad Mehldauらしさを感じた私である,

本年5月にはChristian McBride,Marcus Gilmoreというトリオでの来日を控えているBrad Mehldauがレギュラー・トリオと異なるフォーマットで演奏をするのがなぜなのかはわからないが,異なるメンツとのプレイによってリフレッシュして,レギュラー・トリオでのレベルを上げようという意思の表れかもしれない。

本番のライブではこのブートに収められた音源のほかに"Almost Like Being In Love"と"Annabelle"も演奏したようだが,YouTubeの画像からも洩れているので,これが今のところこのライブにおける入手可能な全音源ってことだろう。いずれにしても,Brad Mehldauの活動をフォローする以上,これは避けて通れない音源であった。YouTubeで公開されている映像を貼り付けておこう。

Recorded Live at Nancy Jazz Pulsations on October 16, 2024

Personnel: Brad Mehldau(p), Felix Moseholm(b), Jorge Rossy(ds)

2024年12月15日 (日)

現物はまだ届いていないが,M.T.B.の30年ぶりの新譜。

Solid-jackson "Solid Jackson" M.T.B. (Criss Cross)

昨今のネット・ショップにおける輸入盤の流通状態は必ずしも良好とは言えず,発注のタイミングを間違えるとデリバリーが非常に遅くなることがある。本作も某ショップで発注していたのだが,いつまで経っても入荷しないので,別のショップに切り替えたものの,今度は入荷待ちになって,年内にデリバリーされるかは怪しい状態になっている。なので,通常は現物が届いてからレビューするのだが,今回はストリーミングで本作を聞いた。

M.T.B.と称するユニットはBrad Mehldau,Mark Turner,Peter Bernsteinの頭文字を取ったものだが,第1作も同じCriss Crossからリリースしていて,それが1994年のことであるから,30年ぶりのレコーディングということになる。Brad MehldauはことあるごとにPeter Bernsteinとの共演は続けてきたし,Mark Turnerのアルバムにも"Yam Yam"と"In This World"に参加しているから,相応に縁の深い人たちのユニットと言ってもよい。前作が出た94年の段階ではBrad Mehldauのメジャーでの初リーダー作である"Introducing Brad Mehldau"もリリースされていない時期であるから,まだまだ駆け出しと言ってもよかった時代だ。それが30年を経て,Brad Mehldauはジャズ・ピアノ界を代表するミュージシャンの一人となったが,若い頃からの付き合いは大事にしているってところだろう。

前作も久しく聞いていないが,前作からの変更はドラマーがLeon ParkerからビルスチュことBill Stewartに代わっているが,やっている音楽そのものはコンベンショナルなジャズである。メンバーのオリジナルに,ジャズマン・オリジナルを交えるという構成は前作同様だ。面白いのは前作でも"Limbo"を取り上げたWayne Shorterの"Angola"をやっていることだが,この曲,お蔵入りしていた"The Soothsayer"からのチョイスというのが渋い。ついでに言えば,それに続いて演奏されるHank Mobleyの"Soft Impression"も発掘音源"Straight No Filter"からだし,もう1曲もHarold Landの"Ode to Angela"っていう選曲にはどれだけこの人たち勉強熱心なのか?とさえ思いたくなってしまう。

Brad Mehldauは客演モードになると,個性の発露を少々抑える感覚があるが,この共同リーダー作と言ってよい本作でもそんな印象だ。三者がバランスよく演奏をしている感じなので,Brad Mehldauのソロは相応にレベルは高いが,いかにもBrad Mehldauだと思わせるのは本人のオリジナル"Maury's Grey Wig"だろう。

まぁこれだけの真っ当なメンツを揃えたアルバムなので全く破綻はないが,痺れるってほどではないのは惜しい気もする。だが,旧友が集まって作り上げた同窓会的なアルバムだと思えば腹も立たないってところか。星★★★★。

Recorded on November 25 & 26, 2023

Personnel: Brad Mehldau(p), Mark Turner(ts), Peter Bernstein(g), Larry Grenadier(b), Bill Stewart(ds)

本作へのリンクはこちら

2024年11月25日 (月)

Brad Mehldauの来日に期待する。

Mehldau-mcbride-gilmore さまざまなメディアで告知されているが,Brad MehldauがChristian McBride,Marcus Gilmoreとの共演でのライブで来春来日する。日本では東京3回,大阪1回のライブが行われるが,いつもと違うトリオでのケミストリーには大いに期待したいところ。米国,香港を経由しての日本が最終公演の地となるので,コンビネーションも深化していることだろう。

Brad MehldauとChristian McBrideはJoshua Redman Quartetほかで共演は結構しているが,Marcus Gilmoreとの共演はJoe Martinの"Not by Chance"ぐらいしか記憶にないので,そこが注目のポイントだろう。

既にチケットは発売されているが,私が5/9の紀尾井ホールのライブをいち早く予約したことは言うまでもない。東京は紀尾井ホールのほかに,初台のオペラシティ,そしてサントリー・ホールのライブが予定されているが,ジャズを聞くホールのヴェニューとしてはキャパ800席の紀尾井ホールぐらいが丁度いいと思う。2023年のここでのBrad Mehldauのソロもよかったし,本人もこのホールが気に入ったのではないかと思う。もともとクラシック用のホールなので,PAは比較的抑制したかたちになるだろうが,この3人がどういうプログラムをどういうかたちで演奏するかを首を長くして待ちたいと思う。

2024年10月12日 (土)

折に触れ共演を続けるPeter BernsteinとBrad Mehldauの新作。

_20241009_0002 "Better Angels" Peter Berstein(Smoke Sessions)

Peter BernsteinとBrad Mehldauは若手の時代から共演を続けていて,最初期の音源はCriss Crossレーベルの92年の"Somethin's Burnin'"に始まって,近年においても同じSmoke Sessionsレーベルからは"Signs Live!"をリリースしている。今年の冬には"M.T.B."の30年ぶり(!)のリユニオン作のリリースを控えているから,相当の仲良しと言ってもよいのかもしれない。

そんな二人の共演作がリリースされたので早速聞いている。Peter Bernsteinのオリジナルに加え,ジャズマン・オリジナルやスタンダードを演奏しているが,私が注目したのがDuke Jordanの"No Problem(危険な関係のブルース)"である。この曲はどう考えてもBrad Mehldauのイメージとは異なるものだと思うが,それをBrad Mehldauがどのように演奏するかというところに関心が高まってしまった。と言っても"No Problem"は全8曲中の7曲目だから,聞きたい気持ちを抑えて最初から聞いていったのは言うまでもない。

基本的には全編に渡って,Brad MehldauはPeter Bernsteinを立てて,助演に徹している感じだ。それは決して悪いことではなく,長年の友情の証みたいなものだろう。基本的にはオーセンティックなジャズ・ギター・アルバムとして聞けばよい作品で,驚きのようなものはない。それでもって"No Problem"だが,結構あっさりした演奏だ。粘っこさや黒さのようなものは感じられないが,まぁこういうアプローチもありだとは思う。だが,Duke Jordanが"Flight to Denmark"で聞かせたような落ち着きさえ感じさせる演奏を聞いてからでは,少々普通に過ぎるような気がする。極論すれば,このメンツでこの曲をやる意義はあまり感じないというのが正直なところだ。やっぱりこの曲はBrad Mehldau向きではなかろう。

とは言いつつ,この曲だけに注目するのも問題があるので,アルバム全体では標準的というところに落ち着くってところか。2曲で聞かせるPeter Bernsteinのソロ・ギターがいいアクセントに感じられる。まぁ大甘で星★★★★としておこう。それにしてもAl Fosterも傘寿を過ぎているがまだまだ元気なものだ。

Recorded on April 1, 2024

Personnel: Peter Bernstein(g), Brad Mehldau(p), Vicente Archer(b), Al Foster(ds)

2024年7月24日 (水)

注目の最新ブート音源:ほぼ"Eagle’s Point"のメンツによるフランスでのライブ。

_20240723_0001 "Montpellier 2024" Chris Potter Quartet(Bootleg)

いつも書いていることだが,ストリーミングにより必ずしもCDを媒体で購入することが減る中,相対的に増えてしまっているのがブートレッグの購入である。ブートは抜け出せない底なし沼のようなものだから,極力控えなければと思いつつ,どうしても無視できない音源というものもある。このブートなんてその最たる事例。クリポタことChris Potterが今年リリースした"Eagle's Point"はそのメンツからしても今年最注目に値するアルバムだったと言ってもよいが,それに近いメンツでのライブ音源が到着である。収録されたのは今年の7月9日ということで,私のところには2週間も経たないうちにブートが届いてしまうとは,まじで恐ろしい時代だ。ブートもスピード勝負である。

このブートレッグにはDVDもオマケで付いてくるので,もともとはTV放送用の映像がソースと思われ,当然サウンドボード音源だから,聞く分には何の不満もない。そして肝心のメンツだが,"Eagle’s Point"からはドラムスがBrian BladeからJohnathan Blakeに代わっているが,ピアノはBrad Mehldau,ベースはJohn Patitucciのままだ。誰だって聞きたくなるわってブートである。

冒頭の"Dream of Home"から半端ではない演奏が展開されるが,少々Johnathan Blakeの叩き過ぎ感が気になるものの,バンドとしてのドライブ感は上々。ただねぇ,曲間のクリポタのMCにフランス語の通訳が重なるってのがかなり野暮な感じがする。クリポタの英語は聞き易いから,こんな通訳いらないだろう!って言いたくなる。この通訳が2曲目の"Cloud Message"のイントロにちょっと被るからますます腹が立つ訳だが,それは演奏者の責任ではないから,まぁこれは最新音源を聞けることで相殺することにしよう。その後はおそらく編集でクリポタのMCと通訳音声をほぼカットしているから,その野暮さ加減が余計に目立つのだが(苦笑)。その2曲目の"Cloud Message"でもJohnathan Blakeはやはり叩き過ぎで,もう少しニュアンス効かせて欲しいと思ってしまう。Johnathan Blakeは優秀なドラマーではあるが,こういうのを聞いてしまうと,Brian Bladeとはまだ格の違いがあると思ってしまう。

まぁ,それでもこれだけのメンツが揃っているので,演奏は十分に楽しめるし,是非レコーディング・メンバーでのライブも観てみたいと思わせるに十分な出来。4人中3人が揃っただけでもフランスの聴衆に嫉妬してしまうが,4人揃ったら一体どうなるのやら...。いずれにしてもクリポタのライブはマジで常にレベルが高いのは本当に立派。

Recorded Live in Montpellier, France on July 9, 2024

Personnel: Chris Potter(ts), Brad Mehldau(p), John Patitucci(b), Johnathan Blake(ds)

2024年7月16日 (火)

リユニオン・ライブが近づくKurt Rosenwinkel The Next Step Bandの96年ライブの発掘。私の最注目ポイントはBrad Mehldauの1曲ゲスト参加(笑)。

_20240714_0001 "Live at Smalls 1996" Kurt Rosenwinkel the Next Step Band(Heartcore)

間もなく来日公演を行う予定のKurt RosenwinkelのリユニオンしたNext Step Bandだが,それに合わせるかたちで1996年,NYCはSmallsにおけるライブ音源がリリースされた。私は来日時のライブに参戦予定なので,その予習も兼ねての購入となったが,実は本作の購入にはもう一つの大きな動機があった。それは1曲だけではあるが,"Zhivago"におけるBrad Mehldauの客演である。Brad Mehldauの正式音源コンプリートを目指す私としては,これだけで買わない訳に行かないということもあった。

その"Zhivago"に関しては後述するとして,ここでKurt Rosenwinkelと共演しているMark Turnerであるが,以前このブログで取り上げた"The Remedy"(記事はこちら)でもいい共演ぶりを示していたが,そちらが2006年のレコーディングだったから,随分と前から共演していたってことを今頃認識する。しかしよくよく考えてみれば,Criss CrossにおけるMark Turnerのアルバム"Yam Yam"にもBrad MehldauともどもKurt Rosenwinkelは参加していて,それが94年のレコーディングだから,このバンドについても,その辺りの縁を踏まえたものだろう。

改めてこの音源を聞いてみると,こうしたメンツがあのSmallsというヴェニューで演奏を展開していたということ自体に驚きを感じざるをえない。現在でもSmallsは実にいいクラブだし,いいミュージシャンも出演しているが,必ずしもメジャーな人ばかりではない。この頃のKurt Rosenwinkelもリーダー作はリリースしていたとしても,まだ名門Village Vanguardに出るほどではなかったということかもしれない。何分1996年と言えば,Kurt Rosenwinkelもまだ20代半ばであり,更なるメジャー化に向けて邁進している時期だったのだからまぁそれもうなずける話である。

正直言って私はKurt Rosenwinkelとは必ずしも相性がいい訳ではなく,彼のアルバムをこのブログでも取り上げても,必ずしも絶賛していないし,むしろ辛口に書くことが多いぐらいだ。ここでの演奏はスリリングなところもあって聞きどころも多いが,Kurt Rosenwinkelの書くオリジナルが必ずしも魅力的に響かない部分があるのは事実だ。それでもKurt RosenwinkelのフレージングやMark Turnerの吹奏は見事なもので,ライブの雰囲気もヴィヴィッドに伝えていて,Smallsという場のアンビエンスはよく示していると思う。もうすぐ行われる来日ライブを聞けば,感慨は更に変わるかもしれないが,現状ではアルバムとしては星★★★★ってところだろう。

そんな中で,Brad Mehldauが参加した"Zhivago"は,私の最大の関心が向いている部分もあって,一番の聞きものに思えてしまう。ここでBrad Mehldauは結構激しいソロを聞かせていて,当時のギグではこういうところもあったのねぇなんて思ってしまう。このアルバムのタイトル・トラックでKurt Rosenwinkelはピアノを弾いているのだが,ピアニストとしての資質の違いが明らかになっただけのようにも思えてしまうのがBrad Mehldauの罪作り(笑)なところと言っておこう。まぁ,Kurt Rosenwinkelもわかっていて"Zhivago"を収録したんだろうからそれでもいいのだが...。ついでに言っておけば,後にBrad Mehldau Trioに加入するJeff Ballardとはこの頃知り合ったってことかもしれないが,そう言えばKurt Rosenwinkelの同じくSmallsでレコーディングされた初リーダー作,"East Coast Love Affair"にはBrad Mehldau Trioの前任ドラマー,Jorge Rossyが参加していて,この辺りのメンツはいろいろ絡み合っていたのだなぁと思ってしまうのであった。

Recorded Liva at Smalls in 1996

Personnel: Kurt Rosenwinkel(g, p, vo), Mark Turner(ts), Ben Street(b), Jeff Ballard(ds), Brad Mehldau(p)

本作へのリンクはこちら

2024年6月24日 (月)

6,000件目のエントリーはBrad Mehldauにしよう。

_20240622_0002 "House on Hill" Brad Mehldau (Nonesuch)

今年でブログを始めて18年目になるが,年月の経過とともに記事も積み上がり,これが6,000件目のエントリーである。我ながらよく続いてきたと思うが,もはやボケ防止の手段となりつつあるような気もしているものの,まだまだ続けられる限りは続けたいと思っている。毎日アップしたとしても,1,000件書くのには2年9か月程度かかるから,10,000件までは11年程度要することになるが,そうなるとその頃には私も後期高齢者間近だ。そこまで根気(及び体力,寿命?)が続くかどうかってところだが,取り敢えず10,000エントリーを目指していこうと思う。

そんな節目のエントリーを何にしようかと考えた時,相応に好きなミュージシャンを取り上げてきた。2,000件目以降のキリ番はそれぞれJoni Mitchell, Neil Young, Miles Davis,Fred Herschであった。5,000件目のエントリー時にも書いているが,Brad Mehldauを取り上げなかったのは不思議と言えば不思議ながら,Brad Mehldau関係では既にアップしている記事数も多いので,何を取り上げればいいかを決めるのがなかなか難しいと思っていた。しかし,今回はこのブログ開始前にリリースされていて,当ブログにも登場したことがなかった"House on Hill"をチョイスすることにした。

実を言えば,このアルバムは私があまり評価していない"Anything Goes"と同じタイミングでのセッションでの演奏が中心になっている。"Anything Goes"と異なり,こちらはBrad Mehldauのオリジナルで固められていることが大きな違いであり,そしてリリース時には既にトリオを退団していたJorge Rossyとの演奏となっているのが特徴である。そしてここでの演奏には私が"Anything Goes"に感じた違和感はなく,この長年のトリオらしい演奏となっていて,楽しめるものになっているのが不思議であった。

私は"Anything Goes"にはこのトリオの「煮詰まり感」のようなものを感じていたのだが,こちらではおそらくオリジナルを演奏していることによって,フレッシュな感覚が残せたというところではないかと思える。また2曲だけながら蔵出しではない「新録」が含まれていることもそういう印象を与えるのではないか。また,ここでの3者の演奏をビビッドに捉えた録音もよく,このトリオの実力を余すところなく収めたと言ってもよいだろう。この辺りはエンジニアを務めたJames Farberの貢献度も大きい。

Brad Mehldauの場合,カヴァー曲のセレクションに興味深いところがあり,そちらへの関心も高くなるわけだが,アルバム単位で全部オリジナルというのは本作以外では"Elegiac Cycle","Places","Ode"の3枚だけのはずなので,ある意味珍しいセッティングと言ってもよいのだが,ここでの演奏ぶりは相応に魅力的に響く。"Anything Goes"と本作におけるカヴァーvsオリジナルという関係性は,後の"Where Do You Start"(こちらは1曲だけ"Jam"というオリジナルがあるが...)と"Ode"に引き継がれることになる。後者においては"Where Do You Start"をより高く評価した私であったが,前者においては本作の方を高く評価したくなるという逆の反応になったのは我ながら面白いと思った。星★★★★☆。

尚,本作の国内盤には"Wait"というボーナス・トラックがど真ん中の5曲目に入っているのは珍しいが,Brad Mehdauコンプリートを目指す私は国内盤,輸入盤の双方を保有していることは言うまでもない(笑)。

Recorded on October 8-9, 2002 and March 12, 2005

Personnel: Brad Mehldau(p), Larry Grenadier(b), Jorge Rossy(ds)

本作へのリンクはこちら

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