"House on Hill" Brad Mehldau (Nonesuch)
今年でブログを始めて18年目になるが,年月の経過とともに記事も積み上がり,これが6,000件目のエントリーである。我ながらよく続いてきたと思うが,もはやボケ防止の手段となりつつあるような気もしているものの,まだまだ続けられる限りは続けたいと思っている。毎日アップしたとしても,1,000件書くのには2年9か月程度かかるから,10,000件までは11年程度要することになるが,そうなるとその頃には私も後期高齢者間近だ。そこまで根気(及び体力,寿命?)が続くかどうかってところだが,取り敢えず10,000エントリーを目指していこうと思う。
そんな節目のエントリーを何にしようかと考えた時,相応に好きなミュージシャンを取り上げてきた。2,000件目以降のキリ番はそれぞれJoni Mitchell, Neil Young, Miles Davis,Fred Herschであった。5,000件目のエントリー時にも書いているが,Brad Mehldauを取り上げなかったのは不思議と言えば不思議ながら,Brad Mehldau関係では既にアップしている記事数も多いので,何を取り上げればいいかを決めるのがなかなか難しいと思っていた。しかし,今回はこのブログ開始前にリリースされていて,当ブログにも登場したことがなかった"House on Hill"をチョイスすることにした。
実を言えば,このアルバムは私があまり評価していない"Anything Goes"と同じタイミングでのセッションでの演奏が中心になっている。"Anything Goes"と異なり,こちらはBrad Mehldauのオリジナルで固められていることが大きな違いであり,そしてリリース時には既にトリオを退団していたJorge Rossyとの演奏となっているのが特徴である。そしてここでの演奏には私が"Anything Goes"に感じた違和感はなく,この長年のトリオらしい演奏となっていて,楽しめるものになっているのが不思議であった。
私は"Anything Goes"にはこのトリオの「煮詰まり感」のようなものを感じていたのだが,こちらではおそらくオリジナルを演奏していることによって,フレッシュな感覚が残せたというところではないかと思える。また2曲だけながら蔵出しではない「新録」が含まれていることもそういう印象を与えるのではないか。また,ここでの3者の演奏をビビッドに捉えた録音もよく,このトリオの実力を余すところなく収めたと言ってもよいだろう。この辺りはエンジニアを務めたJames Farberの貢献度も大きい。
Brad Mehldauの場合,カヴァー曲のセレクションに興味深いところがあり,そちらへの関心も高くなるわけだが,アルバム単位で全部オリジナルというのは本作以外では"Elegiac Cycle","Places","Ode"の3枚だけのはずなので,ある意味珍しいセッティングと言ってもよいのだが,ここでの演奏ぶりは相応に魅力的に響く。"Anything Goes"と本作におけるカヴァーvsオリジナルという関係性は,後の"Where Do You Start"(こちらは1曲だけ"Jam"というオリジナルがあるが...)と"Ode"に引き継がれることになる。後者においては"Where Do You Start"をより高く評価した私であったが,前者においては本作の方を高く評価したくなるという逆の反応になったのは我ながら面白いと思った。星★★★★☆。
尚,本作の国内盤には"Wait"というボーナス・トラックがど真ん中の5曲目に入っているのは珍しいが,Brad Mehdauコンプリートを目指す私は国内盤,輸入盤の双方を保有していることは言うまでもない(笑)。
Recorded on October 8-9, 2002 and March 12, 2005
Personnel: Brad Mehldau(p), Larry Grenadier(b), Jorge Rossy(ds)
本作へのリンクはこちら。
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