John Coltrane Centennialの年における最大の話題作かもしれないBranford MarsalisとDianne Reevesによるトリビュート・アルバム。
"Dedicated to You" Branford Marsalis Quartet & Dianne Reeves(Blue Note)
昨今,フィジカルの媒体を購入する機会がすこぶる減少した私だが,買うとしても大概はストリーミングで試聴してからというのが通常のパターンだ。しかし,事前にこれは必ず買うと決める場合もあって,このアルバムなどはその最たる事例だ。
今年はMiles DavisとJohn Coltraneの生誕100年が重なって,両者に対する様々なトリビュートが行われているが,アルバム単位で最も注目に値すると思われたのが本作である。私はジャズ・ヴォーカルをあまり聞かないとしても,Branford MarsalisがDianne Reevesと組んで,"John Coltrane & Johnny Hartman"のレパートリーを再演するとなれば気にならない訳がない。
Branford Marsalisが現在のJoey CalderazzoとEric Revisを含むクァルテットを編成して四半世紀以上の年月が経過したが,ドラムスがJeff ’Tain’ WattsからJustin Falknerに代わっただけで,ほぼ不変のメンツを維持しているから,もはや鉄壁のコンビネーションであることに疑いはない。彼らがどのようにColtraneの世界に挑むかということになるが,まぁ既に「至上の愛」に取り組んだこともあるから,その成果を踏まえれば悪かろうはずはないが,バラッド表現ではどうかというところが注目点になろう。
そしてこれが実に渋い。特にDianne Reevesを迎えた6曲は"John Coltrane & Johnny Hartman"へのリスペクトに満ちたものであり,これらが枯れた味わいを示す一方,Dianne Reevesが抜けるクァルテット演奏とのメリハリがついていて,このバランスがナイスだと思う。因みに私が購入したのはCDだが,最後の3曲はボーナス・トラックとなっているのはなぜなのかは謎だ。アナログLPは2枚組でこの3曲も含まれているから何を以てボートラ?ってのはさておき,そのうち2曲は"Ballads"から"Say It"と"Nancy",そして最後はピアノレスで"Big Nick"だ。たまりませんなぁ。
Dianne Reevesが歌う曲では上述の通り,Branford Marsalisも枯れた味わいを示すが,"Central Park West"をJoey Calderazzoとのデュオでやってしまうというのも渋過ぎである。彼ももう66歳なのだから,年齢相応の演奏ということもできるが,テナーの音はJohn Coltraneとは全然違うとは言え,違った魅力が生み出したという感じだ。
"Nancy"なんかはムーディに流れ過ぎだとか,このアルバムに対しては純粋John Coltraneファンでなくともいろいろ言いたいこともあるだろう。先達としてのJohn Coltraneが偉大過ぎて,面々にはプレッシャーの掛かる部分もあったのではないかと推察するが,ハードルはクリアしたという感じで,この意気やよしという点も含めて星★★★★☆。小難しいことは考えずに楽しめばいいと思う。いずれにしても聞きものはDianne Reevesが入った6曲の方だな。
Recorded on August 25-29, 2025
Personnel: Branford Marsalis(ts, ss), Dianne Reeves(vo), Joey Calderazzo(p), Eric Revis(b), Justin Falkner(ds)
本作へのリンクはこちら。
« 「黄金」をストリーミングで見た。これぞ傑作。ひげ面のHumphrey Bogartもいいが,Walter Hustonが圧倒的。 | トップページ | 「おすすめ作」に関するお知らせ。 »
「新譜」カテゴリの記事
- Dave Hollandの未発表ライブ音源が早くもデリバリーされた。つくづく凄い人だ。(2026.10.11)
- Meshell Ndegeocelloの新作が最高だ。もはや完全にプロデューサーの世界。(2026.10.08)
- JD Allenの濃い~新作はリズム隊のドローン的な響きにテナーが乗ると言えばいいか。(2026.10.09)
- 先日のライブを受けて購入したToninho Hortaの新譜はアメリカン・スタンダード集だが...。(2026.10.06)
- アルバムを聞いて,彼らのライブへの期待値が異常に高まるMessthetics & James Brandon Lewis。(2026.10.05)
「ジャズ(2026年の記事)」カテゴリの記事
- 椎名豊 Inspired Swing Special Quartet Featuring Max Ionata@赤坂B-flat参戦記。(2026.10.15)
- Art Farmerの東京ライブを人生初聞き(笑)。これがCTIから出る不思議。(2026.10.13)
- 今だ現役,ナベサダの旧譜を聞く。(2026.10.12)
- Dave Hollandの未発表ライブ音源が早くもデリバリーされた。つくづく凄い人だ。(2026.10.11)
コメント
« 「黄金」をストリーミングで見た。これぞ傑作。ひげ面のHumphrey Bogartもいいが,Walter Hustonが圧倒的。 | トップページ | 「おすすめ作」に関するお知らせ。 »













































































Spotifyが、自分用に選んでくれた曲の
中に、このアルバムの曲が、入っていて
なかなか良いなと思いましたが、
村上春樹の文庫で、この人の以前あった
日本人のジャズファンに対する暴言事件を
読んでから、どうしても好きになれません。
(村上はこれを糾弾してる文ではありません)
そもそも、マルサリス家って、どうして
皆、上から目線なんでしょうかね?
理解不能ですわ。
投稿: ぼんち | 2026年9月21日 (月) 09時33分
ぼんちさん,おはようございます。
>Spotifyが、自分用に選んでくれた曲の
>中に、このアルバムの曲が、入っていて
>なかなか良いなと思いましたが、
>村上春樹の文庫で、この人の以前あった
>日本人のジャズファンに対する暴言事件を
>読んでから、どうしても好きになれません。
暴言について調べてみましたが,真意はさておき,当たっている部分もあると思いました。本人が英語でどういう発言をしたかが興味深いですね。まぁ少々言い過ぎたってところはあるんでしょうが...。まぁ本作に限れば,音楽で評価すればいいアルバムだと思います。
>そもそも、マルサリス家って、どうして
>皆、上から目線なんでしょうかね?
私はWyntonの方がずっと形式にこだわり,原理主義的だと思います。いいアルバムはあっても,全面的に好きになれません。一方,Branfordのアルバムは大体筋が通っているので,ずっとジャズ・ファンには受けがいいと思います。私は圧倒的にBranfordの音楽の方を支持しています。
投稿: 中年音楽狂 | 2026年9月21日 (月) 09時50分
閣下、リンクをありがとうございました。
音数を抑え、余韻や静けさを大切にしていて、
聴くたびに胸の奥深くに音が沈んでいく作品でした。
コルトレーンへの敬意と、ブランフォード・マルサリス、ダイアン・リーヴスそれぞれの円熟した芸術性が静かに結実したジャズ・バラッド・アルバムだとおもいます。来日しないかな。。
私の投稿のリンクも置いていきますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2026/09/post-fcfd83.html
投稿: Suzuck | 2026年9月28日 (月) 07時44分
Suzuckさん,おはようございます。リンクありがとうございます。
>音数を抑え、余韻や静けさを大切にしていて、
>聴くたびに胸の奥深くに音が沈んでいく作品でした。
そうですね。特にDianne Reevesの歌いっぷりが印象的でした。
>コルトレーンへの敬意と、ブランフォード・マルサリス、ダイアン・リーヴスそれぞれの円熟した芸術性が静かに結実したジャズ・バラッド・アルバムだとおもいます。来日しないかな。。
確かに来日して欲しいですね。チャージはバカ高くなりそうですが(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2026年9月29日 (火) 07時27分
こんにちは。
私のブログにリンクありがとうございました。実は私、最近はAIで自分のブログ形式で出力して、アルバムコメントの部分だけ少し直す、という、かなり手抜きなブログ運営になってしまったのですが、そろそろ引退も近いのかもしれません。
でも、このアルバムの良さはさすがブランフォードとダイアン・リーヴスだと思いました。再構築もしてあるのに、原曲のイメージを残している曲が多く、それも聴いていて安心感があります。名盤に挑戦して自分の限界を図っているようにも思え、それを超えていいアルバムに仕上がっていると思います。
当方のブログアドレスは下記の通りです。
https://kudo-jazz.blog.jp/archives/15038476.html
投稿: 910 | 2026年9月30日 (水) 11時37分
910さん,おはようございます。リンクありがとうございます。
>実は私、最近はAIで自分のブログ形式で出力して、アルバムコメントの部分だけ少し直す、という、かなり手抜きなブログ運営になってしまったのですが、そろそろ引退も近いのかもしれません。
お仲間のブロガーの皆さんが数多くフェードアウトしていく中,ほかのSNSの台頭もあってブログももはや絶滅危惧種なのかもしれません。と言いつつ,私は日々更新が完全にボケ防止モードになっています。人それぞれの事情もありですが,910さんは先駆者のおひとりだけに「引退」はインパクトが大きいと思います...。
>でも、このアルバムの良さはさすがブランフォードとダイアン・リーヴスだと思いました。再構築もしてあるのに、原曲のイメージを残している曲が多く、それも聴いていて安心感があります。名盤に挑戦して自分の限界を図っているようにも思え、それを超えていいアルバムに仕上がっていると思います。
おっしゃる通りですね。なぞるだけではなく,自分の味を出していたと思います。特にDianne Reevesの6曲は強力でした。
投稿: 中年音楽狂 | 2026年10月 1日 (木) 07時25分