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2026年9月30日 (水)

「タイムリミット25時」:さすがにこのストーリーには無理があるかなぁ。タイトルにも疑問が。

Deadline-at-dawn 「タイムリミット25時("Deadline at Dawn")」(’46,米,RKO)

監督:Harold Clurman

出演:Susan Hayward, Paul Lucas, Bill Williams, Joseph Calleia, Osa Massen

川本三郎の「サスペンス映画ここにあり」にも取り上げられているこの映画は,William Irishによる原作を脚色したもので,大体午後11時から午前6時の7時間が描かれている。原題の通り,タイムリミットは「夜明け」なので,映画のストーリーに照らせば午前6時である。だから邦題の「25時」というのは明らかにおかしいというところから指摘しておかねばなるまい。

それはさておきである。このストーリーはかなり無茶苦茶だ。殺人現場に入り込んで,冷蔵庫は開けるは,手紙は持ち出すわでは現場に指紋がどっさり残ってしまうではないかと思えるし,当てずっぽうで犯人捜しをしたとしても,それが当たるとは限らないという瑕疵はたっぷりである。

しかし,序盤の悪女Ednaを盲目の元旦那のSleepyが訪れるシーンから,サスペンスはある程度盛り上げを図るし,さまざまな登場人物が交錯して,誰が犯人なのかというミステリー仕立てはある程度楽しめる。最後には大どんでん返しが待っているが,なるほどそういうことかと思わせるところで納得である。

いずれにしても,この映画はいたいけなBill Williams演じる気弱な水兵,AlexにほだされるJuneを演じたSusan Haywardがいい感じだ。そしてなんていい人と映画の中でもSusan Haywardに言わしめるタクシー・ドライバー,Gusを演じるPaul Lucasが本当にいい人に思えてしまう。ただ,正直なところ,世の中こんな人いるかねぇなんて思ってしまうのも事実。

まぁ小難しいことを言わず,楽しんでいればいいというレベルの映画であった。星★★★。尚,冒頭のニュース・スタンドでBill Willamsと話している兄ちゃんはJack Palanceに見えて仕方がなかったのだが,IMDbではWilliam Challeeという人らしい。他人の空似だったのかなぁ...。

本作のストリーミングへのリンクはこちら。

2026年9月29日 (火)

Toninho Hortaを武蔵野市民文化会館で聞いた。

Toninho-horta-guitars

来日中のToninho Hortaはいくつかのライブを行うことになっているが,完全ソロは今回の三鷹と静岡だけのはずだ。王子や大阪でも一部ソロはあるだろうが,私としては完全ソロを聞きたいということで,武蔵野からのメールでチケット発売情報を知り,速攻で申し込んでの,真正面ではないが,ステージに向かってやや左の最前列であった。まぁほぼかぶりつきだ(笑)。上の写真は開演前に私の席から撮ったToninho Hortaのギター3本。

Toninho-horta-poster 今回,私にとっては初の生Toninho Hortaとなったが,彼も既に77歳ということで,次があるかはわからない。そこへ未聴ながらスタンダードを演奏した新譜も出しているので,どういう演奏をするのかという期待値も高まる。場所は三鷹なので,我が家から少々遠く,椎間板ヘルニアの術後が経過が芳しくなく,電車で座れないとしびれが出てこける不安を抱える私である。12月には再手術を決意している状態での移動には不安を抱えつつも,行かぬ訳にはいかないのである(きっぱり)。ということで,時間は多少掛かっても,足に影響の出ない移動ルートを取って,現地に向かった。

右のポスターにもあるが,今回の公演はほぼソールド・アウトという人気ぶりであるが,Toninho Hortaのこれまでのキャリアを踏まえれば当然という気がする。そうした人気ぶりもあって,Toninho Hortaは終始ご機嫌な様子であった。演奏は2部構成であったが,第2部では新作"Standards & Stories"から"My One And Only Love"と"S'Wonderful"を聞かせた。この美しいプレイぶりは絶品だったと言え,私はCDの発注をその場で決意したのであった。そのほかにも"Bicycle Ride”やら聴衆のリクエストに応じた"Liana"等サンバ,ボサノヴァ,MPBでも何でもござれのようなプレイぶりであった。 

Toninho Hortaの歌そのものは加齢もあって,もはやヘタウマの世界だと思うが,そのギターの技は見事なもので,私はその指先を見ていて圧倒されていたという感じだ。それはアコースティックでもエレクトリックでも同じ。まぁシャイな日本人の聴衆,しかも三鷹界隈の聴衆に歌わせるのには少々無理があったと感じるが,ビルボードライブ大阪の聴衆ならノリノリで対応するかもなぁと思っていた。いずれにしても大いに楽しめる約90分のライブであった。

残念だったのは終演後サイン会がありながら,物販は早々と終了してしまったようで,私は物販期待でCDを持参しなかったことだ。せっかくのチャンスを逃したのは痛かった。

しかし,Toninho Horta本人にとっても,聴衆にとっても幸せな瞬間を共有できたことには感謝したい。

Live at 武蔵野市民会館小ホール on September 27, 2026

Personnel: Toninho Horta(g,vo)

2026年9月28日 (月)

約70年前の日本が舞台の「東京暗黒街・竹の家」を見た。

House-of-bamboo「東京暗黒街・竹の家("House of Bamboo")」(’55,米,Fox)

監督:Samuel Fuller

出演:Robert Ryan, Robert Stack, 山口淑子, Cameron Mitchell, Brad Dexter, 早川雪洲, DeForest Kelley

噂には聞いていたが,このSamuel Fullerが撮った映画を初めて見た。「情無用の街」のリメイクということも今回知った。「情無用の街」での悪役のRichard Widmarkが本作ではRobert Ryan,善玉のMark StevensがRobert Stackという位置づけで,舞台を日本に置き換えている。

この映画,当時の日本の世相がかなり捉えられているのはいいのだが,どうせなら日本人の役者を使えばいいものを,ロケーションはさておき,スタジオでの撮影は本国で行われているから,日本語のセリフ回しがおかしいところの違和感はどうしても拭えない。それにどう見ても山口淑子の着物姿も明らかに変なので,彼女はそうした点についてはちゃんと発言すべきだったと思う。そして山口淑子の身長が相当低いせいか,顔が大きくて,6頭身ぐらいに見えて仕方がなかった(笑)。まぁどんちゃん騒ぎのシーンとかも変だろうとケチをつけだしたらきりがないのだが,結局は日本のイメージはフジヤマ,ゲイシャの時代だった訳だから仕方あるまい。映画のストーリーとはあまり関係もなく鎌倉の大仏とかが出てくるのも笑える。

そうした中で,この映画の実質的な主役は後にTVドラマ「アンタッチャブル」でお馴染みのRobert Stackだが,この映画のポスターはRobert Ryanのイメージっぽいのはどうなのやらって感じだし,その背後の山口淑子のイラストは銭湯から逃げだすシーンのイメージだが,どう見ても身体のバランスを盛っている(笑)。

だが,この映画はラストの銃撃戦(かつての浅草の松屋の屋上らしい)がクライマックスってことになるが,これも日本の警察があんなに拳銃をぶっ放していたら大変だろうと言いたくなるもの。ということで,これはどちらかと言えば「ここが変だよ」と突っ込みを入れながら見ていればいい映画と言える。「荒野の七人」に出るBrad Dexterや「スタートレック」でお馴染みのDeForest Kelleyが出ていたりというところはあるものの,珍品としか言いようがないので,星はつけないでおこう。

本作のDVD へのリンクはこちら。

2026年9月27日 (日)

佐渡裕/新日本フィルのブルックナーを聞く。

At_20260926041901

6月にこのコンビでマーラーの3番を聞いたが,今度はブルックナーだ。今回は交響曲5番である。先日の日フィルによるショスタコーヴィチの時にも書いたが,私がオーケストラを聞きに行くのは,大体派手派手しい曲が多くて,私の常套句を用いれば,「ぐわぁ~っとくる曲」専門(笑)で,今回も例外ではない。

私は熱心なブルックナーのリスナーではなかったのだが,Nelsonsの全集を買って以降,Thielemann,そしてJochumと全集が3組になってしまったのは完全な気まぐれと言ってもよいのだが,正直言って自分でもびっくりである。また,私の音楽的な嗜好を知る人から見ても,これは驚きだろうなぁなんて思っているが,まぁそれはよかろう。

サントリーホールの座席につくと,私が近年行ったコンサートの中では最も客入りが悪い感じであった。感覚的には7割程度の入りだったが,日本のオケの定期なんてこんなものなのかなぁと思う一方,大概の場合,私が行ったものはほぼフルハウスに近いものだったから,不思議に思ったのであった。私は今回がブルックナーの生は初だったのでよくわからないが,ブルックナーの人気がないとも思えず,なんでだろうと思いつつ聞いていた。まぁでも最近はブルックナーの演奏機会が多いから,敢えてという感じでもなくなっているのかもしれないが。

肝腎の演奏は,私が座っていた座席にもよるのかもしれないが,いつもより音が大きく感じられ,弦も管も鳴りがよく,この曲から感じられるダイナミズムを表現するには十分だったと思えるし,破綻は感じられなかった。前回のショスタコとの違いはパーカッションがティンパニーだけなので,当然ティンパニーの演奏は目立つ訳で,こなして当然とは思いつつ,カーテンコールでも一番の喝采を受けて当然と思える目立ちっぷりであった。独奏パートのあるクラリネット,フルートがそれに続くという感じだが,その他の管楽器部隊も大きな拍手を受けるのは,曲が曲だし,上述の通り実際によく鳴っていたので納得であった。弦も弱音も綺麗に響かせ,フォルテッシモにおける音量も全く問題なし。

ということで,人生初の生ブルックナーとしては悪くなかった演奏で,もう少し客入りがよくてもよかったと感じた次第。

Live at サントリーホール on September 25, 2026

Personnel: 佐渡裕(cond),新日本フィルハーモニー交響楽団

2026年9月26日 (土)

Bootsy CollinsとBucketheadがコラボするとなればこうなるよなと思いつつ,想像以上の騒がしさ。

Metal-health"Metal Health" Bootsy Collins & Buckethead(Bootzilla)

主題の通りだ。"Metal Health"と言えば,普通はQuiet Riotだが,これはBootsy CollinsとBucketheadのコラボレーション作。7月にリリースされていたらしいこのアルバムをストリーミングで聞いた。まぁこうなるとはわかっていても,こちらの想像を越える騒々しい音楽が1時間以上続くと,さすがに高齢者にはきついところもあるが,これが快感になると思えた時代が懐かしい...(遠い目)。

そうは言いながら,このファンクとメタルとロックが混じったような音楽は,ある意味爽快感のあるフリー・ジャズと同じように感じられると思う。自然に身体が動くというところだ。このアルバムはBootsy Collinsがギター以外の部分を担っているようだが,そこに多才なゲストを迎えている。ベースが本業のBootsy CollinsがVictor WootenやBilly Sheehan,更にはMetalicaのRobert Trujilloのような強力なベーシストをゲストに迎えているのが面白い。ゲストにはSamuel L. Jacksonが含まれており,"Afflictions"でラップを披露していて,もはや何でもありだ。しかし,このラップが結構まともなのだ。

それにしても,Bootsy Collins,今や74歳とは思えぬ元気さで,こういうのを聞くと高齢者かくあるべしなんて思ってしまう激しさである。もはや音楽的にどうこうと言うよりも,これはこのヘヴィなサウンドを単純に楽しめばいいという感じだ。それにしてもよくやるわ。星★★★★。

Personnel: Bootsy Collins(b, vo, synth, prog), Buckethead(g), Jeniffer Batten(g), Eric Gales(g), Manou Gallo(b), Victor Wooten(b), Billy Sheehan(b), Robert Trujillo(b), Tobotius(key, turntable, DJ), Ouiwey Collins(vo), Nate Alien8(vo), Barbie T(vo), Samuel L. Jackson(rap)

フィジカルが見当たらないので,本作へのストリーミングへのリンクはこちら。

2026年9月25日 (金)

今,ECMに求めうる理想の音と言ってもよい田中鮎美のトリオ作。

_20260924_0001 "Windflower" 田中鮎美(ECM)

昨今は以前ほどECMレーベルのアルバムを追うということも減ってきているが,気になるアルバムはチェックするようにはしている。このアルバムもそうした対象となったものであるが,これが実に素晴らしい作品であった。ECMから想起されるクールで静謐なサウンドそのものが体現されていて,長年のECMレーベルのファンとしては嬉しくなってしまったのであった。

もはやECMから日本人プレイヤーのアルバムが出ても驚くことはないとしても,田中鮎美は本人のアルバムや本作にも参加しているThomas Strønenなどが残っていて,いかにもECM的な響きを生み出してきていたとは思う。リーダー作の"Subaqueous Silence"ではミニマルな響きさえ感じさせたが,このアルバムにもミニマルな部分はない訳ではないが,よりピアノのサウンドがより明確に感じられるように思う。そしてこういうアルバムにはフィット感が強いThomas Morganのベースもよろしく,"Subaqueous Silence"でも感じられた冷え冷えとした感覚は,クールさの強いタイプのECMレーベルの作品の典型みたいなものだ。だからこそ,私はここでのサウンドには惹かれてしまうのだ。完全に私のツボにずっぽしはまってしまったというところだ。

ただ,そうは言ってもこういうサウンドだけに,万人向けの音源とは言えない部分があるのも事実。しかし,私にとってはここ暫くで聞いたECMのアルバムの中でも最も評価したくなるアルバム。星★★★★★。

Recorded in May, 2025

Personnel: 田中鮎美(p),Thomas Morgan(b),Thomas Strønen(ds) 

本作へのリンクはこちら。

 

 

2026年9月24日 (木)

ポップなFleetwood Macもいいのだが,Bob Welch~Chrisitine McVieの時代は今でも魅力的。

Mystery-to-me "Mystery to Me" Fleetwood Mac(Reprise)

主題の通りである。実のところ,私がFleetwood Macの音楽に惹かれるのは偏にChristine McVieゆえなのだ。だから"Fleeetwood Mac (邦題「ファンタスティック・マック)"以降のポップ度が増した彼らのアルバムもほとんど保有しているのはChristine McVieが聞きたかったからなのだ。しかもこのアルバムはChristine McVieに加えてBob Welchがいた頃なので更に強力。

アルバムの全12曲中をChristine McVieが4曲とBob Welchが共作含めて7曲を書き,1曲だけ"For Your Love"だけ,10CC結成時ぐらいのGraham Gouldmanが書いているという構成からしても悪いはずないだろうと言いたくなる。決してポップではないが,メロディ・センスに溢れた曲が並んでいて,聞いている方は嬉しくなるのだ。こんないいアルバムがあまり聞かれていないというのは不幸と言うしかないが,その原因を作ったのはこの訳の分からんジャケだろう。誰がこれを認可したんだと言いたくなるセンスのなさは困ったものだ。まぁそれでもゴールド・ディスクにはなるぐらいは売れた訳だが,後のBuckingham ~Nicks組加入後のアルバムの売れ方に比べれば地味なものなのだ。

私からすれば,ポップ化が著しくなったアルバム"Fleetwood Mac"以降もいいとしても,この時代のアルバムはもっと評価されて然るべきだと思うし,このアルバムでクビになったBob Westonのギターもよかったと思う(クビの原因はMick Fleetwoodのカミさんに手をだしたかららしいが...)。結局,私の場合,Christine McVieとBob WelchがいればOKみたいな感じだな。このコンビがいるアルバムとしては以前取り上げた"Bare Trees"が一番だろうが,このアルバムも捨てがたい。星★★★★。

Personnel: Bob Welch(vo, g, b), Bob Weston(g, vo), Christine McVie(vo, key), John McVie(b), Mick Fleetwood(ds, perc) 

本作へのリンクはこちら。

2026年9月23日 (水)

「続・荒野の七人」:最低最悪の続編と言っても過言ではない。

Return-of-the-seven 「続・荒野の七人("Return of the Seven")」(’66,米/西,United Artists)

監督:Burt Kennedy

出演:Yul Brynner, Robert Fuller, Julian Mateos, Warren Oates, Claude Akins, Fernado Rey, Elisa Montes, Jordan Christopher

「荒野の七人」の続編をストリーミングで見たのだが,これがひどい出来であった。前作からのキャストを引き継いだのはYul Brynner演じるChrisのみであるが,前作にも登場したVin,Chico,そしてPetraというキャラクターは引き継いでいるものの,役者陣が小粒化してしまっているのがまず痛い。また,前作のキャストとキャラクターとの連続性が保たれていないから,なんでそうなるのかというところを初見の人は理解しづらいというのも難点である。

だが,この映画の最大の欠点はつまらないストーリーにしてしまったシナリオ。そもそもどうして7人が集まるのかという動機がはっきりしないし,敵の大群に対抗する数少ない善玉が前半では全く怪我もしないというのもありえないだろう。Yul Brynnerも明らかにやる気がなさそうな演技っぷりで,「ビジネス」として出演したとしか思えない駄作。Claude AkinsとWarren Oatesの二人の方がよっぽどまとも。また,こんなところにFernando Reyを使うのがもったいないとしか言いようがない。この後,Chris役をGeorge Kennedy,Lee Van Creefに代えて更に続編が作られたというのも信じられない。全くの時間の無駄だったしか言いようがなく,星★で十分だ。

本作のDVDへのリンクはこちら。

2026年9月22日 (火)

「おすすめ作」に関するお知らせ。

当ブログではこれまで私が★★★★★及び★★★★☆と評価した新譜については,今年であれば「2026年のおすすめ作」として画面右側に掲示してきました。これはココログの「マイリスト」機能を使って表示してきたものですが,今年の7月以降,マイリストに作品を連携する機能がストップしており,7/2にアップしたSteve Swallowのアルバム以降,「おすすめ作」があっても追加できなくなっていました。

そこで,その代替手段として,「おすすめ作」の上に♦ Amazon マイストア 中年音楽狂のおすすめ盤というリンクを設け,そちらにおすすめ盤を登録しています。Webサイトトップからの画面遷移は下記のようになっていますので,ご関心のある方はご利用下さい。

現在ブログ上にアップ済みの「おすすめ作」は暫く残しますが,「マイリスト」機能が復活しない場合,来年以降は運用をAmazon マイストアに一本化することも考えなければならないと思っています。よろしくお願いします。

 

Photo_20260918151901

2026年9月21日 (月)

John Coltrane Centennialの年における最大の話題作かもしれないBranford MarsalisとDianne Reevesによるトリビュート・アルバム。

_20260919_0001 "Dedicated to You" Branford Marsalis Quartet & Dianne Reeves(Blue Note)

昨今,フィジカルの媒体を購入する機会がすこぶる減少した私だが,買うとしても大概はストリーミングで試聴してからというのが通常のパターンだ。しかし,事前にこれは必ず買うと決める場合もあって,このアルバムなどはその最たる事例だ。

今年はMiles DavisとJohn Coltraneの生誕100年が重なって,両者に対する様々なトリビュートが行われているが,アルバム単位で最も注目に値すると思われたのが本作である。私はジャズ・ヴォーカルをあまり聞かないとしても,Branford MarsalisがDianne Reevesと組んで,"John Coltrane & Johnny Hartman"のレパートリーを再演するとなれば気にならない訳がない。

Branford Marsalisが現在のJoey CalderazzoとEric Revisを含むクァルテットを編成して四半世紀以上の年月が経過したが,ドラムスがJeff ’Tain’ WattsからJustin Falknerに代わっただけで,ほぼ不変のメンツを維持しているから,もはや鉄壁のコンビネーションであることに疑いはない。彼らがどのようにColtraneの世界に挑むかということになるが,まぁ既に「至上の愛」に取り組んだこともあるから,その成果を踏まえれば悪かろうはずはないが,バラッド表現ではどうかというところが注目点になろう。

そしてこれが実に渋い。特にDianne Reevesを迎えた6曲は"John Coltrane & Johnny Hartman"へのリスペクトに満ちたものであり,これらが枯れた味わいを示す一方,Dianne Reevesが抜けるクァルテット演奏とのメリハリがついていて,このバランスがナイスだと思う。因みに私が購入したのはCDだが,最後の3曲はボーナス・トラックとなっているのはなぜなのかは謎だ。アナログLPは2枚組でこの3曲も含まれているから何を以てボートラ?ってのはさておき,そのうち2曲は"Ballads"から"Say It"と"Nancy",そして最後はピアノレスで"Big Nick"だ。たまりませんなぁ。

Dianne Reevesが歌う曲では上述の通り,Branford Marsalisも枯れた味わいを示すが,"Central Park West"をJoey Calderazzoとのデュオでやってしまうというのも渋過ぎである。彼ももう66歳なのだから,年齢相応の演奏ということもできるが,テナーの音はJohn Coltraneとは全然違うとは言え,違った魅力が生み出したという感じだ。

"Nancy"なんかはムーディに流れ過ぎだとか,このアルバムに対しては純粋John Coltraneファンでなくともいろいろ言いたいこともあるだろう。先達としてのJohn Coltraneが偉大過ぎて,面々にはプレッシャーの掛かる部分もあったのではないかと推察するが,ハードルはクリアしたという感じで,この意気やよしという点も含めて星★★★★☆。小難しいことは考えずに楽しめばいいと思う。いずれにしても聞きものはDianne Reevesが入った6曲の方だな。

Recorded on August 25-29, 2025

Personnel: Branford Marsalis(ts, ss), Dianne Reeves(vo), Joey Calderazzo(p), Eric Revis(b), Justin Falkner(ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年9月20日 (日)

「黄金」をストリーミングで見た。これぞ傑作。ひげ面のHumphrey Bogartもいいが,Walter Hustonが圧倒的。

Photo_20260816154101 「黄金("Treasures of Sierra Madre")」(’48,米,Warner Brothers)

監督:John Huston

出演:Humphrey Bogart, Walter Huston, Tim Holt, Bruce Benett

この映画を初めて見たが,これは傑作と呼ぶに相応しい作品であった。黄金の採掘により,その魔力により生まれる歪んだ欲望,疑心暗鬼に陥る嫌らしい人間性とその因果応報を見事に描ききったって感じである。

ひげ面のHumphrey Boartも珍しいが,こういう悪役っぽい役もちゃんとこなしてしまうのがBogieのBogieたる所以だ。とにかくここでのBogieのろくでなし度が素晴らしいが,ここでの演技や風貌を見ていると,三船敏郎に似たところを感じていた私である。この映画はBogieとWalter Huston,そしてTim Holtの三人で金の採掘を行うという設定において主役となる訳だが,Bogieよりも老獪なHowardを演じるWalter Hustonの演技が素晴らしく,本作でオスカーの助演男優賞を獲るのも当然という気がする。

この映画は監督,脚色のJohn Hustonに両部門でオスカーが授けられたのも頷けてしまう作品であった。更に小ネタになるが,John Hustonはこの映画の冒頭でBogie演じるDobbsに3回無心される「白いスーツの男」で映画にも登場しているのも面白い。更に宝くじを売る少年を演じているのは後に「冷血」やTVシリーズ「刑事バレッタ」に出るRobert Blakeであった。もはやこうなるとへぇ~の世界である。

いずれにしても誰がどう見てもこの映画は傑作であり,手放しで褒めたくなる映画であった。人生の後半になってしまったが,遅ればせながらでもこの映画が見られたことを素直に感謝したい。星★★★★★。

本作のDVDへのリンクはこちら。ストリーミングへのリンクはこちら。

2026年9月19日 (土)

Christian McBride & Ursa Major@Blue Note東京参戦記。

Christian-mcbride-at-bnt

Christian McBrideの新バンド,Ursa Majorを観るためにBlue Note東京に行ってきた。Christian McBrideはトリオ,ビッグバンド,Inside Straight,New Jawn等でバンド活動を行っているが,そこに新たに加わったのが今回のUrsa Majorである。近々アルバムのリリースも予定されているこのバンドは,Christian McBrideのお眼鏡にかなった若手,中堅のメンバーを集めたということだが,そこにNicole Gloverが入っているのがポイントが高いし,映像ではChritian McBrideがエレクトリック・ベースを弾いていて,これも久しぶりということもあって期待が高まる。本来のドラムスであるSavannah Harrisは健康上の理由で来日できないとのことであったが,大きな問題にはなるまい。

Ursa-major ということで始まった演奏であるが,ベースがリーダーだからというのもあろうが,やけにベースの音がでかいのが少々気になる。しかし,根っから聴衆を楽しませる術を知るChristian McBrideのこと,トラで入ったDennis Frehseもなかなかの実力者で,リズム二人でバンドをドライブして演奏を盛り上げたことは,聴衆の反応からも明らかであった。Christian McBrideのソロも強烈だったしねぇ。

しかし,今回の演奏を聞いていて私が100%満足したかと言えば,必ずしもそうとも言えない部分があったことは事実だ。

まず私がこのバンドで最も期待したNicole Gloverだが,フレージングは彼女らしさを感じさせるところもあるにはあったのだが,体調がよくないのか,あるいはPAのバランスが悪いのかイマイチ元気がないように思えた。もう少し彼女にはテナーをブイブイ言わせて欲しかったというのが実感。ギターのEly Perlmanはアーム付きストラトを使っていることからもおそらくロックを出自としていると思われ,ジャズをやろうとしてもついついフレーズがロック的になってしまう感じがしたのは微笑ましいのだが,本人のオリジナルで歌ったのはいただけない。そもそもド緊張なのか,そもそも歌が下手なのかはわからないが,あの程度の歌唱力ではライブの場で歌う(歌わせる)べきではなかろうというのが正直なところ。そしてピアノとキーボードのMike Kingはよく指が動くねぇと思わせるのだが,全くフレージングに驚きがない。技量はあるのはわかるのだが,音数でごまかしている感じがしてプレイヤーとしてはまだまだだ。

とバンド・メンバーには相当辛口な評価をした私だが,上述の通り,Christian McBrideのエンタテインメントとしての取り組みもあって,ライブ全体では悪い印象はない。アコースティック・ベースがよかったのはもちろんだが,フレットレスのエレクトリック・ベースを強烈に鳴らすChristian McBrideの技は楽しめた。だが,バンドとしてはまだまだ発展途上という感覚が強く,どうせならファンク系をもう少しやってもよかったかもと思ったのであった。私にとっては昨年のBody & Soulにおける演奏を知るだけに,Nicole Gloverの元気のなさが残念であった。近々発売されるアルバムを聞いて,このバンドについて改めて評価することを考えようと思う。

尚,トップの写真はBlue Note東京のWebサイトから初日の模様を拝借。

Live at Blue Note東京 on September 17, 2026 2ndセット

Personnel: Christian McBride(b), Nicole Golver(ts), Ely Perlman(g), Mike King(p, key), Dennis Frehse(ds)

2026年9月18日 (金)

Lucian Banって誰?ってことで聞いたアルバム。

Lucian-ban"Rush" Lucian Ban(Sunnyside)

主題の通りである。Sunnysideレーベルからの新譜紹介のメールが届いて知ったアルバムだが,リーダー以外のメンツはよく知った名前だ。リズム隊はかつてのFred Herschトリオの二人だしねぇ。ワンホーンはAbrahm Burtonで,この人の名前もいろいろなところでは見かけるのだが,どういう個性の人なのかまではわかっていない。とは言え,リーダーよりは名前が知れているだろう。

Lucian Banはルーマニア出身のピアニストということだが,ここでのクァルテットElevationは本作で3作目,しかもこの人はECMからもアルバムをリリースしているなんてことはちっとも知らなかった私である。

どんな音楽なのか興味津々で聞いたところ,冒頭の"Dark Blue"からその名の通り,ダークな感覚のスロー・テンポの曲が出てきて,意外な感じがしたが,この曲は亡くなったAbdullah Ibrahimに捧げられている。このほかにもトリビュートしている面々がAndew Hill,Larry Willis,そしてBilly Strayhornというところにこの人の音楽的な出自がうかがえる。

全体的に冒頭の"Dark Blue"のトーンを引き継いだ展開なのだが,3曲目の美しいバラッドの"Christina’s Hope"に続いて突然現れるフリーな感覚の強いタイトル・トラック"でびっくりさせられる。アップ・テンポの曲はこの"Rush"とJohn Hébertのベース・ソロから始まる"Syndrome"ぐらいなので,もう少しアップ・テンポの曲も聞いてみたいと思わせるバンドであった。

ただ,最後の"Golden Oriole"では祖国を思って,ルーマニアの歌手Gavril Tărmureを迎えているのは少々浮いていると感じる。私はアフリカ系のLionel Louekeにしても,アルメニアのTigran Hamasyanにしても,民族的な音楽とジャズのフュージョンがはっきり言って苦手なので,ここでもこう来たかって感じだが,気になるほどではないとしても,曲調は全体と変わらない中で,このヴォイスが本当に必要だったかというところは少々疑問。まぁそれでも佳作と呼んで差し支えないと思うので,星★★★★。

Recorded on August 24, 2024

Personnel: Lucian Ban(p), John Hébert(b), Eric McPherson(ds), Gavril Tărmure(vo)

本作へのリンクはこちら。

2026年9月17日 (木)

半年ぶりのイタリア文化会館。今回はクラリネット~ピアノのデュオ。いや~楽しかった。

イタリア文化会館の無料コンサートには常々世話になっているが,ここのところ日程が合わないことが多く,前回のフルート×2+ピアノのコンサートから半年ぶりの訪問となった。今回はクラリネットとピアノのデュオということで,なかなか聞けないリサイタル・モードである

Carbonare_kuroda_per_sito クラリネットのAlessandoro Carbonareはイタリア文化会館のWebサイトによれば,フランス国立管弦楽団,サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団で首席奏者を務め,ルツェルン祝祭管弦楽団とモーツァルト管弦楽団で第一奏者を務めるというからその筋では相当の実力者である。Claudio Abbadoとモーツァルトのクラリネット・コンチェルトも吹き込んでいるしなぁ。一方の黒田亜樹はタンゴやEL&P,更にはファイナル・ファンタジーまでやってしまうという幅広なレパートリーを持つミラノ在住のピアニスト。

イタリア文化会館でのコンサートは毎度毎度珍しいレパートリーも含んでおり,通常聞けないような音楽が聞けることも楽しみの一つだが,今回も例外ではない。今回のプログラムは下記(イタリア文化会館のWebサイトから拝借):

  • ルイージ・バッシ(1833-1871):《リゴレット》の主題による演奏会用幻想曲
  • フランシス・プーランク (1899-1963):クラリネットとピアノのためのソナタ FP 184
  • エンニオ・モリコーネ(1928-2020):ニュー・シネマ・パラダイス
  • ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (1770-1827):クラリネットとファゴットのための3つの二重奏曲 WoO 27 より 第3番 変ロ長調(ファゴット:Davide Carbonare)
  • ジョアキーノ・ロッシーニ (1792-1868):「老年の過ち」第6巻「如才のない子供たちのためのアルバム」より 「小さな機関車の愉快な旅」
  • イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971):クラリネット・ソロのための3つの小品 K033
  • ベーラ・コヴァーチ(1937-2021):ショーレム・アレイヘム、ロヴ・ファイドマン!

Alessandoro Carbonareは技も確かなら,ラテン系ならではの明るさも発揮し,それは楽しいコンサートとなった。写真,ビデオ撮影OKというのも凄いが,どちらかと言うと私は音楽に集中したいので,周りのスマホが気になって仕方なかったが(苦笑)。それはさておき,ストラヴィンスキーの最後のパートではサーキュラー・ブリージングを駆使しながら,客席を回ってしまうし,ロッシーニでは「演劇を勉強中」と言って,クラリネットではなく,ピアノ伴奏にセリフ回しを乗せるものであった。更には「たまたま(?)」名古屋の演奏会のために来日中の息子のDavide Calbonareのファゴットとのデュオも聞かせるなど,プログラムも極めて多彩。

何よりも私が感慨を覚えたのはクラリネットという楽器の響きの美しさであった。基本的にオケの中のクラリネットしか聞く機会がない中で,クラリネットとはこれほど美しい響きを生み出すのかというところに,今更ながら感心していた高齢者の私である。

加えて,ピアノだけでなく,通訳もこなした黒田亜樹の貢献度も高く,この人もミラノ在住らしいラテン系日本人的なノリが楽しさを増幅させた。

こういうのが無料で聞けてしまうのだから,イタリア文化会館には感謝するしかないと改めて思ったのであった。ついでに言っておけば,最近少ないジャズ系もよろしくってことで。

Live at イタリア文化会館 on September 15, 2026

Personnel: Alessandro Carbonare(cl, vo), 黒田亜樹(p), Davide Carbonare(fagot)

2026年9月16日 (水)

Patricia BrennanとSylvie Courvoisierのデュオならば普通のはずはない(笑)。

Talamanti "Talamanti" Patrica Brennan & Sylvie Courvoisier(Antila)

DownBeatで2026年のヴァイブ部門1位,"Of the Near And Far"でAlbum of the Year,そしてライジング・スターのグループ部門で1位の3冠となったPatricia Brennanが,ピアノ部門4位のSylvie Courvoisierと組んだデュオ・アルバムである。 ヴァイブとピアノのデュオと言えば,私たちの世代はGary BurtonとChick Coreaの美しくもジャズ的なセンスに富んだコンビが頭に浮かぶのは当然だ。しかし,同じ楽器の組合せでもミュージシャンが変われば,全く違う音楽が生まれるのはわかるとしても,この二人では間違いなく一筋縄ではいかない演奏になることは容易に想像できた。

私がこのブログで取り上げたPatricia Brennanのアルバム,"Beraking Stretch"と"Of the Near And Far"は現代音楽にも通じる刺激的なものであった。一方のSylvie Courvoisierについてはリーダー作は取り上げていないものの,"Of the Near And Far"には参加していたから,この二人には通じるものがあったということだろう。Patricia BrennanはSylvie Courvoisierの演奏について『私の心を即座にとらえたのは、彼女がピアノという楽器を単なる和声楽器としてではなく、ひとつの完結した「物理的世界」として捉えてアプローチしている姿』と語っており,ピアノと同属の和声楽器であるヴァイブを操るPatricia Brennanにとってはそうしたシンパシーが共演につながったと言えるだろう。

そして出てくる音楽は予想通りと言ってよいだろうが,基本的にアブストラクトなものだ。そこにたまに浮き上がるメロディ・ラインがあるが,それは一瞬にして埋没していく。これは相当ハードルが高いと言わざるをえず,Patricia Brennanのこれまでのアルバムよりもはるかにアブストラクト度は高く,相当難儀な作品であることは間違いない。もはや現代音楽とカテゴライズした方が印象は近いかもしれない。まぁSylvie CourvoisierはEvan Parkerとのアルバムもあるようだから,Patricia Brennanよりもフリー度が高いとすれば,こうなるかもなぁってところか。

ということで,聞いて頂けばわかるが,なかなか難しい音楽であり,爽快感のあるフリー・ジャズとも異なるため,相当覚悟のいる(笑)アルバムである。星★★★☆。

Recorded on May 26 & 27, 2024

Personnel: Patricia Brennan(vib, marimaba), Sylvie Courvoiser(p)

このアルバムのストリーミングへのリンクはこちら 。

2026年9月15日 (火)

「オデュッセイア」をIMAXで見に行った。まさに壮大そのもの。

The-odyssay「オデュッセイア("The Odyssay")」

監督:Christopher Nolan

出演:Matt Damon, Tom Holland, Anne Hathaway, Robert Pattinson, Charlise Theron, Zendaya, John Leguizamo, Travis Scott

Christopher Nolanのこれまでの仕事を最大評価する私だが,休日の朝一で家人を誘って見に行ったもの。ホメロスの古代叙事詩「オデュッセイア」を原作として製作されたこの映画は,Christopher Nolan得意の時間軸の移動を含めながらの壮大な映画であった。ホメロスの「オデュッセイア」自体については全く予備知識もないまま見ることになったが,マルウェア「トロイの木馬」の名前がここから来ていたことすら知らなかったのだから,知識への好奇心というものが私に欠けていたことを思い知らされる結果となった。

それはさておき,全編IMAXで撮られたことの意義を感じさせる映像の数々である。まさに見事なものであった。ドラマティックな演出,壮大なスケールをリアリティをもって再現した撮影,特撮技術,そして充実のオールスターの俳優陣であった。

そしてこの映画を見ていると,古代叙事詩「オデュッセイア」が後の映画にも影響を与えたことがわかる。顕著だと思ったのが,アイアイエ島の魔女キルケに肉を食らう兵士が豚に姿を変えられてしまうのは,「千と千尋の神隠し」の両親の姿そのものではないかと思ってしまったし,この映画には出てこないが,パイアケースの王女の名前はナウシカ―だ。そのほかにもTVゲームへの影響も大だったなんてことに今更気づいた高齢者の私であった。

いずれにしても,この映画のスケールの大きさは大変素晴らしく,Christopher Nolanという監督の仕事への信頼度がますます高まった一作。こういう映画を撮っていれば,役者の方がChristopher Nolanの映画に出たがるだろうと思わせるに十分な映画的な興奮に満ちた傑作。星★★★★★。

私は前から3列目でずっと見上げるような姿勢で見ていたのだが,IMAXのスクリーンのでかさを感じるには,この映画は前の方の席で見た方がいいと感じ,もう少し後ろの席を取るつもりが前の方しか空いていなかったのは逆に幸いだったと思った私である。

2026年9月14日 (月)

日フィルでショスタコーヴィチを聞く。しかも「レニングラード」だ!

Photo_20260913075001

私が昨今クラシックのコンサートに行く場合,大規模なオーケストラ音楽が多くなっている。今回はショスタコだが,それも7番「レニングラード」で,友人が行けなくなた代打としての参戦である。日フィルを聞くのは初めてだし,指揮するKahChun Wongも初めてだから丁度いいやってことでサントリーホールに向かった。

本来,今回の指揮はAlexander Lazarevが行う予定だったようだが,早くから来日不能がアナウンスされており,主席指揮者のKahChun Wongが代打で指揮を行うことになったとしても,準備はきっちりできていたと思われる。

まぁそもそもが大編成オケが魅力みたいなこの曲だから,相応に盛り上がることはわかっているのだが,第一楽章の冒頭の弦の響きがイマイチで,どうなることかと思ったが,それは徐々に解決して,こちらが期待するレベルに上がっていった。第一楽章中盤に小太鼓の連打を聞いているとついつい「やっちゃいな,やっちゃいな,やりたくなったらやっちゃいな」と心の中でつぶやく私であった(爆)。まぁこの曲におけるパーカッション部隊は体力もいるところであっただろうが,やはり一番受けていたのはパーカッションだったと思っていた。また,高音の続くフルートのフレーズを吹ききった主席の真鍋恵子もプレッシャーのかかるところを難なくこなして,やんやの喝采を浴びていた。

いずれにしても,オケの鳴らしどころ多数の曲なので,大いに盛り上がった訳だが,KahChun Wongの曲の解釈はさておき,この人は淡々と指揮をする感じがあって,ギミックではない程度によりパッションを感じさせる振りっぷりを見せると更に盛り上がるんじゃないかなぁと思っていた私である。

この曲を生で聞いたのも今回が初めてであったが,いい経験になった。

Live at サントリーホール on September 11, 2026

Personnel: KahChun Wong(cond), 日本フィルハーモニー交響楽団

2026年9月13日 (日)

「ブラボー砦の脱出」:これが矢が飛んでくるシーンかぁと思いながら見ていた。

Escape-from-fort-bravo 「ブラボー砦の脱出("Escape from Fort Bravo"」(’53,米,MGM)

監督:John Sturges

出演:William Holden, Eleanor Parker, John Forsythe, William Demarest, William Campbell

主題の通りである。この映画については逢坂剛と川本三郎の趣味趣味対談本「大いなる西部劇」に書いてあったことで知ったもので,そこには「矢が飛んでくる」シーンに関する記述があったはずだ。この映画をストリーミングで見ながら,あぁ,これがそうだったのかと思っていた次第だ。

John Sturgesは「OK牧場の決闘」や「荒野の七人」をはじめ,ウェスタンを何本も撮っているが,このジャンルでの初作がこれだったようだ。南北戦争時の北軍側がWilliam Holden,捕虜となっている南軍側がJohn Forsytheで,脱出を試みるのがJohn Forsytheでそれを追うのがWilliam Holdenってことになるのだが,その追跡行の中での先住民族メスカレロ族による襲撃と戦いのシーンが目玉なのだが,そこで出てくるのが先述の矢で襲われるシーンであった。この映画は3Dになる予定もあったようだが,まさにこのシーンのための3Dだと思わせる演出であったし,3Dなら恐怖を感じただろうというところだ。

しかしこの映画,そこに至るまでのストーリーがやや冗長で,尺はもっと短くてもいいように思える。William Holden演じるRoperとEleanor Parker演じるCarlaのロマンスみたいなシーンがもう少し手短ならと思ってしまう。最近私が見る映画にはよくEleanor Parkerが出てくることで,当時の人気ぶりとその別嬪度はわかるのだが,彼女が出てきてからのストーリーに無駄が多いのだ。また,脱出する南軍捕虜がなんでその4人?というところもあって,シナリオの弱さは感じるというのが正直なところだ。

まぁ最後の展開もちょっとありきたりな感じがしてしまうが,昔の映画だからねぇ,ってことでよしとしておこう。星★★★。

因みにこの映画はAnsco Colorという方式で撮られているが,このAnsco Colorというのはテクニカラーに代わるカラーシステムとして採用されていたものらしく,MGMがよく使っていたようだが,その後広まったって話は聞いてないなぁ。

ここまで書いておきながら,私がこの映画のDVDを購入していたことが判明。そんなことはすっかり失念していたのだが,場所の確保のために,DVDをケースから外して,ディスク格納用のファイルに収納してしまっていることが失敗要因。老後の楽しみとしてDVDやBlu-rayを買い集めていても,ちっとも見ていないという証拠。まさにアホですな。

本作のDVDへのリンクはこちら。

2026年9月12日 (土)

我ながらアホだと思いつつ,Joni Mitchellの”Hejira”のオリジナル盤をゲット。

Hejira_20260907112001 "Hejira" Joni Mitchell(Asylum)

私は根っからのJoni Mitchellファンである(きっぱり)。そんな私がJoni Mitchellのアルバムでどれが一番好きかと聞かれれば,私にとってはこの"Hejira"なのだ。映画「ラスト・ワルツ」においてThe Bandをバックに歌った"Coyote"がこのアルバムと出会うきっかけであったのだが,このアルバムを聞いてみると全ての曲が名曲と言いたくなる素晴らしい出来である。Joni Mitchellの最高傑作には"Blue"が挙げられることは承知しているが,私にとっては本作の方が好きなのだ。

私が最初に買ったのは国内盤LPであった。その後,米盤CDを買い,更に国内盤紙ジャケのCDを入手,そしてアナログのAsylumボックスに含まれる本作を入手してきた。もはや国内紙ジャケCDにより,米盤CDは用無しということで,売却したはずだが,それでもアナログ2種,CD1種の3種は手許に残っていた。だからそれで十分だと思ったのだが,某所に本作のオリジナル初版(それもマトリックス1だ!)が出ていて,値段は安くはないが,昨今のアナログ・ディスクの高騰を考えれば大したことはないということで,入手したのであった。

当時の米国盤というのには盤質に心配もあったのだが,商品情報を信じて入手したところ,これほど綺麗なディスクがあったのかと思えるほど,素晴らしい盤質であった。ジャケの傷みもほとんどないというのもほとんど奇跡という感じで悦に入った私である。このオリジナルのジャケットは"Joni Mitchell Hejira"の部分がエンボス加工されているのだが,その手触りも愛でたいというところだ。

音についてはどうこう言うほどでもないかなとは思いつつ,少々ミキシング・レベルは低めってところか。それでも今後,いろいろなヴァージョンを聞き比べる楽しみもできたってものだ。我ながらマニアックだとは思いつつ,思い入れのあるアルバムだけにそれもまたよしということにしよう。

2026年9月11日 (金)

ストリーミングで聞いていたら流れてきた全く知らなかったPepper Adamsのアルバムだが,このジャケは一体何なのよ(笑)。

Urban-dreams "Urban Dreams" Pepper Adams(Palo Alto Jazz)

ストリーミングのいいところには,全く知らない音源に出会う機会を与えてくれるところがあると思っている。先日,Pepper Adamsの"10 to 4 at the Five Spot"を聞いていたことから,Pepper Adamsの別のアルバムが紹介された中にこのアルバムがあった。ストリーミング・サイトでも似たようなデザインで紹介されていたが,右の写真がオリジナルのアナログLPのデザイン。まず思ったのが,何じゃ,このPepper Adamsらしからぬデザインは?ということがあって,まさかフュージョン・タッチか?なんて思ってしまった。しかし,レーベルはHerb Wongが率いていたPalo Alto Jazzだし,1曲目が"Dexter Rides Again"だったので,それはないなとは思いながら再生した。

流れてきたのはいかにもPepper Adamsらしいバピッシュなサウンドであり,やっぱりそうだよねぇと思ってしまう。しかも調べてみれば,これはPepper Adamsのワンホーンで,バックを固めるのはJimmy Rowles,George MrazにBilly Hartである。まぁこれは王道のジャズになるに決まっている(笑)。

私が聞いているのがPCでの再生環境(もちろん,小型ではあるがスピーカーはつないでいるが...)なので,音のしょぼさは仕方ないのだが,ミキシングのせいもあり,少々Billy Hartのドラムスがうるさい上に,Geroge Mrazのベースはやや過剰な増幅感がある一方,Jimmy Rowlesのピアノのレベルが少々低く感じる。だが,そんなことは関係なしに主役のAdamsの吹きまくりを聞いていればいいって感じで,これが冒頭の"Dexter Rides Again"から結構強烈。更に吹きっぷりが凄いのが"Three Little Words"。こういうのをバリトン・サックスの野太い音で演奏されるだけで,聞いている方は燃えてしまうことは必定。

さすが"The Knife"の愛称を持つだけのことはあると思わせる切れ味鋭いフレージングが満載である。そしてどんなテンポの曲を吹いても,いかにもPepper Adamsという音が詰まっており,これはなかなかいいですわぁ。星★★★★。世の中,まだまだ知らないものがいろいろあるんだねぇというのを実感。

Recoded on September 30, 1981

Personnel: Pepper Adams(bs), Jimmy Rowles(p), George Mraz(b), Billy Hart(ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年9月10日 (木)

Banksia Trio@Body & Soul参戦記。世界レベルの演奏に感動した。そしてBody & Soulの閉店を惜しむ。

Banksia-trio-at-bands-1

2026年9月いっぱいでの閉店が決まっている渋谷のBody & SoulにBanksia Trioが出演するという情報を,少々出遅れ気味であったが知り,もう予約で一杯かなと思いつつWebサイトを見てみたら,まだ受付中だったので迷わず予約を入れた私である。

Body-and-soul Body & Soulという店は演奏を聞く場所としての雰囲気はいいし,食事もなかなか美味しいという重宝な店なだけに,その閉店は実にもったいないという気がする。私が現在のロケーションの同店に行ったのはLars Janssonが2回,情家みえ,そしてNicole Gloverのたった4回だけだったが,常によい印象を与えてくれる店だった。それでもBody & Soulの最後の月に,新譜"Great Noon"をリリースして間もないBanksia Trioが聞けるというのは実に嬉しいものである。

Photo_20260909140301 某所への出張後,雨の降るインバウンドだらけの渋谷の喧騒を抜けて店に向かったが,今回は20時開店,21時演奏開始,1セットのみという変則的な営業であった。そしてそこで展開されたBanksia Trioの演奏の素晴らしいこと。フリー度が高い部分もあれば,美しいメロディ・ラインを打ち出すスタンダードを演奏したりと,この人たちのスタイルの多様性が実に素晴らしい。

Photo_20260909140701 私はピアノ・トリオの世界では個人的な嗜好からBrad MehldauとMarcin Wasilewskiが2トップだと思っているが,Brad Mehldauのレギュラーのトリオ活動が必ずしも活発と言えない中,Banksia Trioはこの2トップが演奏しないスタイルにも対応できるということで,やはりこの人たちは世界屈指のレベルだと思えたライブであった。林正樹のフレージング,石若駿の打ちだす変幻自在かつ強力なリズムとパルス,そしてリーダー須川崇志の統率力と素晴らしいテクニックが相俟って,このトリオの凄みを堪能した。

Photo_20260909140702 リーダー須川崇志が言っていたように,このトリオ結成のきっかけはBody & Soulの京子ママからの言葉だったそうだ。だからこそ,この店の閉店が近いタイミングで彼らが出演し,そして社歌(笑)"Body and Soul"も演奏するということにつながったのだと思う。

Body & SoulのWebサイトによれば,当日のセットリストは次の通り:

  • All Living Things
  • The Bounce
  • Great Noon
  • This Nearly Was Mine
  • Last Night When We Were Young
  • Blues for Dino
  • Nigella
  • Dance of Rhizobium
  • Elephant Knows
  • Body And Soul
  • (EC) The Last Rose of Summer

いずれにしても2時間近くの演奏はマジで痺れるものであり,そんなトリオにフィットするこのBody & Soulというヴェニューの閉店を心から惜しみたい。私はこの店の南青山の時代は行ったことがなく,現在の渋谷の店しか知らないのだが,ただでさえ渋谷が嫌いな私にとっては,渋谷に行くモチベーションはこれでぐっと低下すること必定である。改めてBody & Soulの閉店は本当に残念だという思いを強くした一夜であった。惜しい。本当に惜しい...。

尚,お店のファサード写真以外はBody & Soulのサイトから拝借。

Live at Body & Soul on September 8, 2026

Personnel: 須川崇志(b),林正樹(p),石若駿(ds)

2026年9月 9日 (水)

暇つぶしに(笑)「ゴジラvsビオランテ」を観た。やめときゃよかったかもなぁ...。

Vs「ゴジラvsビオランテ」(’89,東宝)

監督:大森一樹

出演:三田村邦彦,田中好子,小高恵美,高嶋政伸,峰岸徹,高橋幸治,金田龍之介,久我美子,沢口靖子

随分前になるが,夏休み中に暇つぶしにこんな映画も見ていたってことで,ゴジラ・シリーズの1本である。私は「シン・ゴジラ」や「ゴジラ-1.0」も見ているが,ゴジラ映画のファンって訳ではない。なのでこの映画も初見である。

正直言ってこの映画を見ていて,高橋幸治演じる白神博士はマッド・サイエンティストじゃないかとか,そもそもなんで急にビオランテがワープしたかのように現れるのかとか,役者陣のセリフ回しが素人臭いとか,その他諸々の点についてぶつぶつ言いながら見ていたようなものだ。一番笑ったのはエンディング・ロールの陳腐なバラか(笑)。ゴジラ・ファンの間ではこの映画の評価は高いらしいが,私にとってはそれほどのものかねぇ...というのが実感であった。

唯一この映画での発見は鈴木京香が出ていたことだろうな。自衛隊の特殊戦闘機スーパーX2のオペレーターというちょい役だったが,既に別嬪度抜群で目立っていたのが凄い。

ってことで,私にとっては,映画としては暇つぶしにしかならないということで,星★★。21世紀に入ってからの「シン・ゴジラ」や「ゴジラ-1.0」でのCG描写の進化との落差も感じたのであった。まぁ40年近く前だから仕方ないか。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら。

2026年9月 8日 (火)

来日直前!極めて内省的な響きのRachael Yamagataのストリングス入りEP。

Starlit-strings-sessions"The Starlit Strings Sessions: Live from the Living Room" Rachael Yamagata (Julian)

今月の後半に14年ぶりの来日を果たすRacheal Yamagataがストリングス入りのEPをリリースした。以前からRachael Yamagataは私の「推し」である。クラウド・ファンディングでアルバムを制作すれば,それにせっせと貢献してきたし,彼女のアルバムやEPはほぼ保有している。そんなディープなファンである私だが,どうしても今回の来日は日程が合わない。所謂Familiy Affairなので仕方ないとは言え,彼女のライブを見られないのは本当に残念だ。

Rachael Yamagataはドラマの主題歌か何かに使われたせいで,韓国では局地的に人気が高く,韓国や中国ではこれまでもライブを行ってきたのだが,不思議と日本だけはスルーしてきただけに,14年というインターヴァルが生じてしまっただけに,今回の私の残念度はそれこそ余りあるものなのだと言いたい。ベスト盤的アナログLP,"Heartache Moon"も韓国だけリリースだったものを,何とか入手していることからも私の入れ込みようはご理解頂けよう。

このEPはそんな私の渇望感を埋めるようなものと言えるが,EPだけに演奏時間は30分に満たないものだが,最新作"Starlit Alchemy"の曲を弦楽クァルテットを含めて行った演奏は,全面的に内省的な響きを持つものであり,いかにもRachael Yamagataらしい響きを持つ。"Starlit Alchemy"で完全に浮いていた"Carnival"をスキップした点でもポイントが高い。

まぁそうは言っても普通のリスナーにとっては,ここまで内省的な響きが続くと厳しいと感じる向きもあろうが,私の得意なフレーズを使えば,「部屋を暗くして膝を抱えて聞きたくなる」ようなものだ。そうは言ってももう少しメリハリがあってもよかろうというところはあるので,星★★★★☆とするが,私には本当に魅力的に響くのであった。演奏者にはギタリストも含まれているとの情報もあったが,ほとんど聞こえてこないから,このデータは結構怪しいと思って頂いた方がよいことはご了承願いたい。

最後になるが,彼女の来日公演の成功を祈ってやまない。

Personnel: Rachael Yamagata(vo, p), Alex Stradal(Cello, string arr), Kyle Pudenz(vln), Cassandra Hawkins-Sears(vln), Jessica Gehring(vla), Brandon Morrison(b), Dani Cichon(vo, g, perc), Nick Stone(vo, g, perc)

本作のストリーミングへのリンクはこちら。

2026年9月 7日 (月)

Alabama Shakes,11年ぶり(!)の新作がようやくデリバリーされた。

_20260905_0001 "I Must Be Dreaming" Alabama Shakes(Island)

2015年以来11年ぶりのAlabama Shakesのアルバムである。私は後付けで彼らの魅力に取りつかれた人間だが,彼らがバンドとして沈黙している間もBrittany Howardのアルバムに痺れまくっていたのであった。

この新作の冒頭の打ち込みのような音にはびっくりさせられるが,これはオリジナル・ドラマーであったSteve JohnsonがDV等の不祥事でクビになったせいもあるのかと思わされるが,全編に渡って意図的にローファイな音にしたのではないかと感じさせる音だ。しかし,当初ストリーミングで聞いていたのとCDで聞くのでは印象が結構違って,よりヘヴィさを感じさせるところに媒体の強さ(あるいは再生環境の違い)を改めて実感した。そして全体的な印象はロックと言うより,ソウル色が強い感触だ。まぁBrittany Howardの声はソウル・シンガーと言っても通用してしまうからねぇ。

私の感覚ではもう少しロック色が強くてもよいかと思えるし,"Boys & Girls"や”Sound & Color"に痺れた層がこうしたサウンドをよしとするかどうかは少々微妙な部分もあるとは思うが,ファンの渇望感は確実に埋めることができると思う。

それにしても各々の歌詞を見ていると,これは完全に現政権に対するアンチテーゼとしか思えないメッセージ性の強さを感じさせる。ガチガチの保守的な土壌と言ってもよいアラバマ州出身にしてこのリベラルなところが,ますます私自身リベラルな部分を刺激する。そういうところもあって,私は満点とは言わないが,星★★★★☆としてしまうのである。

Personnel: Brittany Howard(vo, g), Zac Cockrell(b, key, ds, vo), Heath Fogg(g, vo), Lewis Wright(ds, perc, vib), Lloyd Buchanan(key), Paul Horton(key), Noah Bond(ds, perc), Ben Tanner(key)

本作へのリンクはこちら。

2026年9月 6日 (日)

「時には懺悔を」:重いテーマの映画であった。

Photo_20260905091901「時には懺悔を」(’25,Sony)

監督:中島哲也

出演:西島秀俊,満島ひかり,黒木華,宮藤官九郎,佐藤二郎,柴咲コウ,片岡鶴太郎,役所広司

この映画の監督,中島哲也による性加害問題で公開が延期となっていたらしいこの映画を見に行った。障がいを抱える子供を持つ親の心情は複雑な部分もあるはずだが,そうしたところが背景となっているので,実に重苦しい映画であった。

出てくる役者陣の演技がまた結構暗い。西島秀俊なんかは韓国製のフィルム・ノワールに出てきそうな風貌,キャラである。そうしたところを飄々とした演技で多少なりとも救っているのは宮藤官九郎と片岡鶴太郎だ。更にそこに救済感を与えるのが障がいを抱える子供たちで,彼らが一番真っ当ではないかと思わせるのだ。加えて「死んだほうがマシな人間」呼ばわりされる米本を演じる佐藤二郎が示す「優しさ」はやや描き方が極端過ぎた部分は否めないが,「死んだほうがマシな人間」と逆説的であった。

結局懺悔すべきは勝手な大人たちであったというのが結論。実に切ない映画であった。星★★★☆。

2026年9月 5日 (土)

Sullivan Fortnerの新作:新感覚のピアノ・トリオ作って感じだ。

Sullivan-fortner "Leave That in There" Sullivan Fortner(Artwork)

先日来日してライブを行っていったSullivan Fortnerの新作。この人は既にグラミーも受賞しているから,ジャズ界で注目度が高い人と言ってよいだろうが,私はちゃんと聞いていなかったので,ストリーミングで本作をチェックしたもの。てっきりアコースティック路線なのかと思ったら,シンセサイザーやエレピも使って,コンベンショナルな路線に留まらない音楽性を聞かせる。予断を持ってはいかんという最たる事例。バックの二人はこのトリオのレギュラーらしいが,去年,Nicole Gloverと来日した二人で,大体こういう年代のミュージシャンのつながりみたいなものを感じさせる。

まさに主題の通り,新感覚のトリオ・ミュージックと言ってよいが,冒頭の"Sugarcane"からして一筋縄では行かないと思わせるアフリカ・タッチの曲調だ。このアルバムは全13曲で39分という収録時間からも想定できるように,比較的短めの音楽が並んでいて,最長の曲でも"Number 3"でも6分,最短は1分半に満たないというのはなかなか面白い構成になっている。収められた演奏には様々なコンセプトを集成したようなところがあって,最もコンベンショナルに響くの"Number 3"にはジャズ・ピアノとしての出自が表れているが,その他の曲はいろいろなタイプの曲が並んでいる。ただ,"Sorcerer’s Stick"のような曲では盛り上がってきたところで2分半にも満たないで終わりってのはもったいない気がするし,どの辺りがSullivan Fornerの本質なのかは計りかねる部分があるというのも事実。例えば"A Hymn for Linda"ではイントロで何じゃこれは?と思わせつつ,その後はシンセとエレピを使って,ややゴスペル的とも捉えられそうな演奏を聞かせるしねぇ。

まぁオリジナリティに溢れた音楽ということは間違いないが,これを好むか好まざるかは別問題で,私にはややとっ散らかった印象が強かったと言うのが実感。有能な人だとは思うが,音楽的な整理が必要に感じたこともあり,星★★★☆。

Personnel: Sullivan Fortner(p, el-p, synth), Tyrone Allen II(b), Kayvon Gordon(ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年9月 4日 (金)

追悼,Cassandra Wilson。

Cassandra-wilson-photo

Cassandra Wilsonが亡くなった。アルバムのリリースも2015年の"Coming Forth by Day"以来途絶えていたので,どうしているのかと思っていたところへの突然の訃報である。Cassandra Wilsonと言えばそのディープ・ヴォイスが魅力で,私はBlue Noteから出した"Blue Light 'til Dawn"後の彼女のリーダー作は全て保有しているはずだ。

だが,私がCassandra Wilsonを初めて意識したのはSteve Colemanの"Sine Die"だったはずで,それ以来の長きに渡って,魅了してくれたのであった。

私としては彼女のライブを聞く機会に恵まれなかったのは極めて残念だ。彼女のこれまでの業績を振り返るべく,アルバム群を改めて聞き直して,Cassandra Wilsonを偲ぶこととしたい。

R.I.P.

2026年9月 3日 (木)

Guy Clarkの”Old No.1”:これを聞くのも超久しぶりだ。

Guy-clark "Old No.1" Guy Clark (RCA)

主題の通りである。これのアナログ盤を聞くのは多分20年ぶりぐらい,あるいはそれ以上だ(笑)。私はブラックホークの99選に選ばれているSSW系のアルバムにはほとんどの場合,無条件に惹かれてしまうこともあり,若い頃にせっせとアルバムを買い集めていたのが大学生時代である。本作もその当時入手して大喜びしていた訳だが,久しく聞いていなかったのはなぜだろうと思いつつ,改めて聞いてみた。但し,歌詞が入った内袋は私の買ったレコードにはなかった。そういうのは中古ではよくあって,Herth Martinezの"Herth from Earth"もそうだった。

それはさておき,私がこのアルバムのプレイバック頻度が高まらないのは,カントリー・フレイヴァーが私の好むSSW系のアルバムに比べると強いことが影響したかなと感じたのであった。

本作はGuy Clarkのデビュー・アルバムとしてリリースされたものだが,基本的にこの人はカントリー畑の人だというのがチャート・アクションでも明白だ。しかし,"That Old Time Feeling"や"Desperados Waitning for the Train"のようにSSW系の音楽としてもいけている曲があることがブラックホークでも評価された理由だろうと思う。

まぁ一枚だけリリースして消えてしまうような売れないSSWに比べれば,Guy Clarkはそこそこの枚数のレコードをリリースしているし,本作だってメジャーのRCAからのリリースだ。後年にはグラミーも獲っているから,それなりのポジションは確立していたと言ってよいと思う。本作を改めて聞いてみて,いいレコードだと思うが,やはり私にとっては少々カントリー色が強過ぎたというのが実感。星★★★★。それでもCDも買っているんだから私も何だかなぁって感じだが...(苦笑)。

Personnel: Guy Clark(vo, g), Mike Leech(b), Jerry Kroon(ds), Jerry Carrigan(ds), Larrie London(ds), Chip Young(g), Pat Carter(g, vo), Steve Gibson(g), Dick Fuller(g), Jim Colvard(g), Reggie Young(g), Hal Rugg(dobro, pedal steel), Jack Hicks(dobro), David Briggs(p), Chuck Cochran(p), Shane Keister(p), Lea Jane Bernati(p, vo), Johnny Gimble(fiddle), Mickey Raphael(hca), Rodney Crowell(vo), Emmylou Harris(vo), Gary B. White(vo), Florence Warner(vo), Steve Earle(vo), Sammy Smith(vo)

本作へのリンクはこちら。

2026年9月 2日 (水)

Mary Halvorson@Blue Note東京参戦記。

 

Mary-halvorson-on-stage-at-bnt

Mary HalvorsonはDownBeatでの国際批評家投票でギタリスト部門のトップに何年も連続して選出されているが,日本での評価,知名度とは大きな違いがあると言ってもよいだろう。それは彼女がやっている音楽がハイブラウなもので,必ずしもとっつきやすいものではないことが大きく影響していると思う。だが,批評家筋の評価はトータルなミュージシャンとしてのものもあれば,そのクリエイティブな姿勢に対するものと言ってもよいように思う。

Mary-halvorson-at-bnt_20260918095901 そんなMary Halvorsonの自身のグループを率いた日本での初ライブが今回のBlue Note東京での演奏らしい。まぁ彼女の音楽がBlue Note東京というヴェニューにフィットしているかと言えば少々疑問に思いながらも現地に赴いた私である。しかし,着いてみればほぼフルハウスなのには少々驚いた。

今回のバンドはAmaryllis Sextetであるが,これまで参加していた,これまた批評家筋で無茶苦茶高く評価されているPatricia Brennanが抜けてしまったのは少々残念であるが,ラッパのRising Star部門でトップとなったAdam O'Farrillにも注目だ。Adam O'Farrillは上原ひろみのSonicwonderにも参加していて,全然違うスタイルのバンドでどうやるのかには興味津々だ。

ステージ上ではMary Halvorsonは座ってプレイ,私が撮影したステージ写真ではポジションはわからないが,ブラスの二人はステージ右手で演奏である。面白かったのはリーダー,Mary Halvorsonも譜面と首っ引きで演奏していたことだが,それだけ複雑な曲と言ってもよいものだろう。しかし,そんな曲でもTomas Fujiwaraのシャープなドラミングもあって,タイトではあるが,ユニークな演奏を披露したセクステットであった。そもそも最初にソロを取ったのがトロンボーンのJacob Garchikだったのだが,これまたレベルが高く,新加入のYvonne Rogers含めて,ライブ冒頭からメンバー全員が優れたミュージシャンであることを実証したものだった。

演奏ではメンバー全員にソロの機会が与えられたが,リーダー,Mary Halvorsonはエフェクターも駆使しながら,面白いサウンドスケープを作り出していたし,Adam O'Farrillのラッパも期待通り。演奏後のサイン会でAdam O'Farrill本人ともちらっと話したのだが,確かにSonicwonderとは大違いだよなぁなんて言っていた。

いずれにしても,アルバムから受ける印象とは異なり,想像以上にわかりやすくも,スリリングな演奏を聞かせてもらったと思ったのであった。DownBeatで批評家筋からの評価が高いのは,ライブを含めれば,これもさもありなんというところであった。これが現在の最先端のジャズの一つってことになるのだろうと感じた私であった。

尚,トップの写真はBlue Note東京のWebサイトから拝借。

Live at Blue Note東京 on August 31, 2026 2ndセット

Personnel: Mary Halvorson(g), Adam O'Farrill(tp), Jacob Garchik(tb), Yvonne Rogers(p,synth), Nick Dunston(b), Tomas Fujiwara(ds)

2026年9月 1日 (火)

山中みきの新作”Breathe”がよくて,ライブ参戦も決意(笑)。

Miki-yamanaka "Breathe" 山中みき (Cellar Live)

ストリーミングで音楽を聞いていて,おすすめのニューリリースとして紹介されたのがこのアルバムであった。山中みきの名前はNYCのSmalls等のライブ・シーンでもちょくちょく見ることができて,現地にて活発な活動をしていることがうかがえる。岡山大学理学部地球科学科卒というのはジャズ・ミュージシャンとしては異色だが,単身NYCに渡り,学びと修行を重ねて相応のポジションを築いてきたのは立派。ライブでは時にピアノ,時にオルガンをプレイしているようだが,今回のアルバムはピアノに徹したアルバム。そしてホーンはNicole Gloverなのだから,現地の今を象徴するようなバンドである。

一聴して,このアルバムがいいと思わせるのが,山中みきの書く曲のよさ。そこにNicole Gloverを交えた演奏が相俟って,実にコンテンポラリー感に満ちたクァルテットとしての演奏になっている。トリオ自体はそれなりの演奏を重ねてきただけのことはあると思わせるコンビネーションのよさもいいねぇ。現代的な演奏ゆえ当然変拍子を含むが,やり過ぎ感のような違和感を感じさせないところもナイスである。最後の"Delayed Flight"はメンバーの口笛やNicole Gloverの語りを交えた演奏で,これはちょっと...って気がしないでもないが,それを除けば,このアルバムは非常によい演奏を収めていると思える。

時としてスリリングな曲と演奏はライブも観てみたいと思わせるに十分であり,10月の帰国公演に参戦することを決意したのであった。帰国ライブはNicole Glover抜きではあるが,トリオでも十分期待できると思わせるアルバムであった。ライブへの期待も込めて星★★★★☆。

Recorded on November 24, 2025

Personnell: 山中みき(p), Nicole Glover(ts, ss, spoken words), Tyrone Allen II(b), Jimmy Macbride(ds)

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