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2026年6月30日 (火)

突然現れたPat Methenyのダウンロード・オンリーのシングル。これは静かな怒りだろう。

Pat-metheny-america-the-beautiful "America the Beautiful / The People United Will Never Be Defeated" Pat Metheny (Green Hill)

まさに突如現れたと言うべきPat Methenyのデジタル・シングルである。米国の愛国歌としての"America the Beautiful"とジェフスキが書いた「不屈の民」のメドレーを,Pat Methenyが静かにアコースティック・ギターで奏でるところの意図は明確だろう。

本来の「美しき国」であったはずの建国250年を迎える米国はもはやその姿を変容させ,分断が顕著になる中,これに対する抗議として人々の団結を促すというメッセ―ジと受け取るのが真っ当だ。こんなはずではなかろうというPat Methenyの怒りが静かに発露されたものと思う。

ミュージシャンによるメッセージの発信に否定的な人間も多いが,自分の考えを表現する自由は誰にでもあるはずだ。そうした思いを我々は尊重すべきであって,批判すべきではない。

Personnel: Pat Metheny(g)

本作へのリンクはこちら。

2026年6月29日 (月)

遅きに失した感はあるが,改めて日本~スウェーデン戦を振り返る。

Photo_20260629070801

負けなくてよかった,というのが実感である。終了間際のスウェーデンの猛攻にはひやひやさせられたが,何とかしのいで1-1のドローでF組2位となったのはよかった。先制した前田のゴールはつなぎからして完璧なもので,今回の予選リーグで守備への貢献ばかりが語られる堂安がようやくオフェンスで光るスルー・パスを出したこともよかった。私からすれば,堂安のオランダ戦でのディフェンスへの貢献は評価したものの,チュニジア戦には物足りなさも感じていたから,それはそれでよかった。だがやはり堂安にはオフェンスで相手を切り裂くようなプレーを期待したいのだ。

この試合,ロング・ボールへのフィードへの対応力には相変わらずの課題があると思わせた日本代表だが,GK鈴木彩艶の活躍もあって何とか引き分けで済んだが,ディフェンス陣も集中して守ったのは評価したい。しかし,前田のゴールから数分後に失点したのは,鈴木彩艶がディフェンスのポジションと被って,ボールの出所を見極められずゴールを決められたようなものだったのは残念だった。

これで次戦の相手はブラジルとなった訳だが,F組3位になってフランスと当たるよりはまだブラジルの方がましって気がする。それぐらい今のフランスは隙がないが,ブラジルはオフェンスは強力でも,ディフェンスはオフェンスほどの怖さはないと思えば,一発カウンターのチャンスも出てくるだろうが,まずはその前に絶好調男,Vinícius Júniorを止められるかどうかだろう。しかし,Vinícius Júniorばかりに気を取られると,ほかのオフェンス陣に切り込まれるリスクも出てくるから,日本代表のディフェンス陣は大変な集中を強いられることは間違いない。ここはガチガチに守ってでも点を取られないサッカーが必要と思う。

次戦は午前2時という深夜(早朝?)のキックオフになるが,早寝して応援することにしよう。頑張れ,日本代表!!

2026年6月28日 (日)

Christian Sandsと北欧勢の共演盤。

Christian-sands "Between Then and Now" Christian Sands North Meets West Trio (Storyville)

Chrisitian Sandsと言えばChristian McBrideのトリオでの演奏が印象に残っている。彼らのライブを見てからもう10年も経っているのかと思うと,時の流れの速さを感じざるをえないが,それはさておきである。ストリーミングで音楽を聞いていて,新譜として表示されたのがこのアルバムであった。Christian Sandsの音楽性と北欧のミュージシャンが合うのかという意外性もあって聞いてみたもの。

トリオを形成するThomas Fonnesbækは昨年,Lars Janssonとのトリオでもライブを見ているが,その時も素晴らしい鳴りのベースを聞かせていた。Rasmus Kihlbergは初聞きかと思えば,このブログでは記事にしていないが,原田知世のアルバムにおそらくTore Johansson人脈で参加していたのであった。いずれにしても異色のメンツと言ってもよいのだが,Christian SandsとThomas FonnesbækはAlex Rielとのトリオでライブ盤を2015年にリリースしていたので,本作は再会ってことになる。知らぬこととは言え「へぇ~」ってところだ。

冒頭からいきなりThomas Fonnesbækのベース・ソロで幕を開けるのには驚いたが,このベース音の何とも野太いことよ。ピアノの音が北欧レコーディングにしては繊細さよりも力強い響きを優先しているのは珍しいと感じながら聞き進めると,例えば「カーニバルの朝」等はちょっとアレンジに凝り過ぎたかなぁと思わせる部分がある。私としてはもう少し真っ当なアプローチでもよかったと思えてしまう。更にBobby Timmonsの曲が2曲入っているが,最後の"Cop Out"はまだよしとしても,"So Tired"の演奏はBobby Timmonsらしい曲の「黒さ」の魅力を削いでいて,あまり感心できなかった。その一方,Christian Sandsのソロで演じられる"Where the Light Settles"にはKeith Jarrettのような雰囲気すら感じさせるのは面白かった。

いずれにしても,Christian Sandsというピアニストが多様なスタイルを吸収していることはわかるし,相応の演奏ではあるが,私がどはまりしたとは言えない感じであった。ちょっと惜しいと思えるアルバム。星★★★。

Personnel: Christian Sands(p), Thomas Fonnesbæk(b), Rasmus Kihlberg(ds)

本作へのリンクはこちら 。

2026年6月27日 (土)

FIFA World Cup:日本~スウェーデン戦の振り返りは改めて。

諸般の事情により細かい記事が書けないので,本件についてはまた改めてとするが,ノックアウト・ステージ進出はいいとして,ブラジルが相手なのはきついなぁ。絶好調のVinicius Juniorを止められるかが大きな課題になるだろう。ディフェンシブな戦いは不可避だが,ヒューストンの奇跡を起こせ!日本代表‼︎

2026年6月26日 (金)

恥ずかしながら初めて聞いた”Lust for Life”。

Lust-for-life "Lust for Life" Iggy Pop (RCA)

聞いたことのないアルバムなんていくらでもあるのは当然だ。とは言え,Iggy Popについては何枚かこのブログで取り上げたものの,私が初めてIggy Popを聞いたのは傑作"Brick by Brick"だったので,そこから遡及してアルバムを聞いてもよかったのだが,それ以前のアルバムは全く聞けていないというのが実態だ。しかし,このアルバムはDavid Bowieとのコラボレーション作として評価も高いので,改めて聞いてみるかってことで,ストリーミングで聞いたもの。

このアルバム・ジャケットのポートレートはIggy Popらしくないなぁと思いつつ聞き始めたが,冒頭のタイトル・トラックからして,何ともDavid Bowie色が濃厚なロック・ナンバーであった。全9曲中6曲の曲作りにDavid Bowieが関与しているのだから,まぁそれも当たり前かって気もする。それにしてもカッコいいアルバムで,今まで聞いてこなかったことを後悔した私である。

既に世評は確立していて,私が今更どうこう言うようなアルバムではないが,この歳にしてまだまだ未知の領域はあることは間違いない。人生勉強だ(笑)。

Personnel: Iggy Pop(vo), David Bowie(key, p, org, vo), Carlos Alomer(g, vo), Ricky Gardiner(g, vo, ds), Warren Peace(key, vo), Tony Fox Sales(b, vo, g), Hunt Sales(ds, vo, b)

本作へのリンクはこちら。

2026年6月25日 (木)

「タイム・アフター・タイム」:吉田修一の作風の多様さに改めて感心する。

Photo_20260623071101「タイム・アフター・タイム」吉田修一(幻冬舎)

映画「国宝」のヒットで,原作も大いに売れた吉田修一の新作である。日経に連載されていたのは知っていたが,新聞の連載小説を読み続けるのはなかなか難しいこともあり,単行本が出るまで待っていた私である。

そして読みだすとこれが止まらなくなってしまい,あっという間に読了してしまった。甘酸っぱくもほろ苦い青春時代と現在の生活の時間軸が交錯するこのストーリーには,自分の人生における過去と現在を投影してしまう読者も多いのではないかと思える作品であった。

そもそも吉田修一は様々な作風を併せ持つ作家であり,どこがこの人の本質なのかつかみどころがないと言えばその通りだ。例えば本作は「横道世之介」シリーズと通じる部分もあるとは言え,ずっとほろ苦い。一方,「悪人」や「さよなら渓谷」のような作品の持つ一種の暗さとは異なる。そして歌舞伎界を描いた「国宝」とも全く違う。もはやカメレオン作家とでも言いたくなるのだが,本作においてもそのストーリーテリングにやられてしまったのであった。

わたしがこの本にはまってしまったのは全く同じではないとしても,自分の「過去と現在」とついつい比べてしまうところがあったからかもしれない。甚だ青臭い言い方ではあるが,人生においては様々な恋愛模様や仕事上の挫折,更には心の再生みたいなことは存在するよな,なんて思ってしまったのである。ついつい自分に当てはめながら,あんなこと,こんなことを思い出しつつ読み進めてしまったというのが実感だ。

吉田修一は本作について「負と思うことも肯定できる、それが書けた作品です」と語っているが,まさにそういう感じの作品であり,読後の余韻に浸りたいと思えた小説であった。やや唐突な展開もあるが,こういうストーリーが好きな私はやっぱり年齢を重ねても青臭いと思いつつ,星★★★★☆としたい。

本作へのリンクはこちら。

2026年6月24日 (水)

Matt Slocumの新作はギターのEmmanuel Michaelが面白い。

Matt-slocum "A Revolving Alliance" Matt Slocum(Sunnyside)

Matt Slocumについてはこれまでも"Sanctuary"と"With Love And Sadness"をこのブログで取り上げて,結構高く評価してきた。しかし,なぜか前作"Lion Dance"は未聴のままだったが,今回新作が出たので早速聞いてみた。

Matt Slocumはこれまで聞いたアルバムを通じて,俊英と呼んでいい人だと思っているが,SunnysideからのアルバムにはLarry Grenadierが付き合っていることからも,業界でも相応の評価を得ていると考えていいように思う。本作はそんなMatt Slocumが本人のオリジナルで勝負したアルバムだが,フォーマットとしては典型的なギターを加えたトリオで,そこがこれまでと異なるところである。

今回,Matt Slocumが招いたのがEmmanuel Michaelというギタリストだが,この人,ウガンダと南スーダンをルーツに持ち,サウスダコタで生まれ育ったとある。よくよく見てみれば,先日行われたBlue Note東京でのMarcus Gilmoreのライブにバンドの一員として参加している。本作でのギターを聞くと,ライブも観に行けばよかったと思わせるが,後の祭りだ。

このアルバムで聞かれるEmmanuel Michaelのギターは浮遊感に富んだもので,Terje RypdalあるいはBill Frisellを想起させる部分もあるが,かなりユニークなギターだと思える面白いサウンドを作り出して,このトリオに貢献している。

トリオでやっている演奏が私の嗜好に合致している部分もあるが,これは注目しなければならないアルバムだと思わせるので,星★★★★☆としよう。これでこのブログでのMatt Slocumのアルバムは三作とも同じ評価だが,私のはまり具合をおわかり頂けよう。こうなったら随分後付けになるが,Emannuel Michaelが参加したMarcus GilmoreのVillage Vanguardでのライブ盤も聞かねば。

Recorded on March 21, 2025

Personnel: Matt Slocum(ds), Emmanuel Michael(g), Larry Grenadier(b)

現物も出ているようだが,本作へのストリーミングへのリンクはこちら。

2026年6月23日 (火)

現物はこれからだが,ストリーミングで聞いたMick GoodrickとFred Herschのデュオ。この発掘は素晴らしい。

Mick-goodrick-fred-hersch "Feebles, Fables And Ferns" Mick Goodrick / Fred Hersch(ECM)

このアルバムの告知がされた時から期待していたので,現物も発注しているが,デリバリーがまだなので,まずはストリーミングで聞いた。Mick Goodrickは2022年に亡くなっているので,生前の録音であるとしても,まさかこの音源の録音が1988年にまで遡るとは思わなかった。40年近くを経て,素晴らしい音源の発掘である。

当時のFred Herschと言えば,"Sarabande"をリリースした後ぐらいになるだろうが,このデュオ音源を聞くと,今のリリシズムに満ちたスタイルは出来上がっていたと感じさせる。このアルバムもMick Goodrickとのリリカルなデュオが聞けて,実に嬉しくなる。

中盤の"Five Excursions"こそやや即興性の強い演奏も聞かれるが,基本的にはこの二人による実に美しい演奏が継続する。冒頭のタイトル・トラックからリスナーの心を捉えて離さないと思わせるが,それに加えてFred Herschのオリジナル"Heartsong"やら,Steve Swallowの"Falling Grace"やら,更にはMal Waldronの"Soul Eyes"なんてやられてはこっちとしてはまいるしかないのだ。

このアルバムを完全無欠とは言わない。例えば唯一のスタンダードである"Out of Nowhere"は即興パートを経て,最後にテーマが出てくるが,この辺はもう少し普通にプレイしてもよかったようにも思える部分はある。だが,この音源は発掘され,リリースされたことにこそ意義があると考えるべきだ。星★★★★☆。

Recorded in August 1988

Personnel: Mick Goodrick(g), Fred Hersch(p)

本作へのリンクはこちら。

2026年6月22日 (月)

FIFA World Cup,日本対チュニジア戦を振り返る。

先日のオランダとのドローで勝ち点1を取った日本代表にとって,この2試合目は重要な位置づけだ。前回,初戦でドイツに勝利したものの,第2戦のコスタリカに敗れ,第3戦のスペインとの闘いは条件が厳しくなったことを思い出す。結果的にはスペインを破るという快挙でグループ・ステージ1位突破を果たしたとは言え,コスタリカ戦の苦杯の記憶は消えない。日本代表もそれはわかった上での今回の対戦となったはずだ。

Photo_20260621154201しかし,終わってみれば4-0の完勝であった。ほとんどホーム・ゲームのような雰囲気のメキシコ,モンタレイでの試合において,開始早々前半4分というこれ以上ないタイミングで,左サイドからの中村のクロスに鎌田が合わせて先制したのは大きかった。これで完全にチュニジアの出鼻を砕いたって感じだろうが,日本代表としてもゲーム展開上,心理的に楽になったはずだ。更に前半31分に上田が相手の股を抜いてのナイス・ゴールの追加点も大きかった。あのゴールはまさにビューティフルであった。以前の日本代表ならあそこでパスを出すというメンタリティだったろうが,自分で決めに行くところに上田がFWとしてのメンタルの強さを手に入れていることの証だと思えた。さすがオランダ・リーグ得点王である。

Photo_20260621154301

その後,前半の終盤からやや停滞気味に試合が進み,私としてはそうした局面で2-1になってチュニジアが勢いづくのが嫌だったが,後半24分の中央を切り裂いての伊東のナイス・ゴールで3-0にできた段階で勝利は確信したが,更に上田の2点目が入って,得失点差でもオランダに並んだのもよかった。

だが,完勝とは言えども,パスの精度はイマイチな部分があったと思えるし,サイドを崩したのは鎌田の1点目だけで,ディフェンシブに来るチュニジアに対し,サイド・アタックがあまり機能していなかったのは少々気になるところだ。中村は冒頭の得点シーンに絡んだだけだったと言ってもよいし,右は伊東はさておき,堂安があまりにもボールを保持できなかった。堂安は守備への意識も高かったのかもしれないが,オフェンス面での貢献度が低かったのは少々懸念される。むしろ交代で菅原が入ってからの右サイドの攻撃の方が活性化していたのは間違いないところだ。この辺を次戦の対スウェーデンでどう改善するかが決勝トーナメント進出及びその後を考える上での課題になるだろう。

現状日本はグループではオランダに次ぐ2位につけているが,予選リーグ敗退となったチュニジアのモチベーションが上がらない中,オランダが大勝するであろうことを前提とすると,日本がスウェーデン戦に勝つとしても1位突破には相当の得点が必要になりそうなので結構難しいが,まずは勝利して2位通過でもいいのですっきりと決勝トーナメント進出を決めたいところだ。

いずれにしても,次戦も全力応援であることに何ら変わりはない。頑張れ,日本代表!

2026年6月21日 (日)

Toots Thielemansが豪華ミュージシャンを従えたほぼ有名ジャズマン・オリジナル集。

_20260619_0001 "East Coast West Coast" Toots Thielemans(Private Music)

ネットを徘徊していてこんなアルバムがあったのかってことで知ったアルバム。しかし不思議なことにこのアルバムがストリーミングで聞くことができないようなので,中古盤でゲットしたもの。本体¥50,送料込みで¥400ならはずしてもいいやってことでの購入となった。

タイトルの通り,このアルバムはToots Thielemansが東海岸と西海岸のスタジオで各々異なるミュージシャンと共演した作品なのだが,私がこのアルバムに興味を持ったのは東海岸側のレコーディングにLyle Maysが参加していることであった。なかなかこういうセッティングでのLyle Maysってのは珍しいもんねぇ。Lyle Maysが参加しているのは4曲のみだが,楚々としたピアノを弾いているが,ほぼ伴奏者に徹しているって感じだ。

それはさておき,下のPersonnelを見て頂けばわかるが,主題の通り豪華なメンツが揃っている。このメンツがよく知られたジャズマン・オリジナルをやるのだから,まぁ期待できる訳だ。例外は"Spring Can Really Hang You Up the Most"ぐらいで,あとは冒頭から"Naima",締めが"Blue in Green",更には"Take Five"や"Waltz for Debbie"までやってしまうというプログラムだ。

だが,正直に言ってしまえば,何とも一丁上がり的で緩~い感じがするのだ。このメンツならこれぐらいは当たり前ってところな感じで,むしろこれだけ役者が揃っているのだから,もう少しやりようもあったのではないかと思ってしまう。これならば,同じレーベルから出た"The Brasil Project"の方がずっとよかったなぁって気がする。

まぁ各々のソロは聞かせるところもあるし,安かったからいいんだけど。星★★★。これぞ船頭多くして船山に上るって感じだ。

Personnel: Toots Thielemans(hca), <East>Lyle Mays(p), Bruth Barth(p), Joshua Redman(ts), Terence Blanchard(tp), John Scofield(g), Mike Mainieri(vib), Christian McBride(b), Troy Davis(ds), <West>Alan Broadbent(p), Herbie Hancock(p), Michael Lang(p), Ernie Watts(ts), Robben Ford(g), Jerry Goodman(vln), Charlie Haden(b), Dave Carpenter(b), Peter Erskine(ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年6月20日 (土)

懐かしのMichael Breckerの”Now You See It...(Now You Don't)”。

_20260618_0001 "Now You See It...(Now You Don't)" Michael Brecker (GRP)

このアルバムは懐かしい。本作がリリースされたのは1990年だが,私は当時渡米したのが90年8月だった。その頃,このアルバムのプロモーションのライブがNYCのTown Hallで開催されたのだが,私はその場にいたのである。

AIで調べてみると,そのライブが開催されたのは90年10月12日だったようだが,Andy Summersとのダブルビル公演で,第一部がBreckerのバンドであった。その時のメンツを見ると,何とギターを弾いていたのがWayne Krantzだったとは...。その後の私のKrantzへのはまり具合を考えると,まだまだ当時はKrantzも後のような魅力を発揮していた訳ではなかったかもしれない。しかし,その頃には"Signals"をリリースしていたから,そろそろ注目度が高まっていたはずだから,私が聞く耳を持っていなかったってことになる。ついでに言っておけば,そのライブでピアノを弾いていたのはJoey Calderazzoだったのだ。尚,この時の演奏はブートレッグでも聞ける。これも前に書いたが,第二部のAndy Summersのバンドの演奏になると,多くの客が席を立ったというのが今となっては信じられない。カッコよかったんだけどねぇ...。

それはさておきである。本作を聞くのも久しぶりだ。私の中ではMichael Breckerのアルバムとしては決してプレイバック頻度が高いとは言えない本作なのだが,久しぶりに聞いて,こんなにカッコよかったか?なんて思っているのだから,宝の持ち腐れである。Michael BreckerはテナーとEWIを駆使して,何ともナイスなフレージングを連発している。テンポが急速なものはないし,むしろゆったりしていると言ってもいいのだが,繰り出されるフレージングがカッコよ過ぎるのだ。"Peep"みたいな曲を聞いたら,昇天確実だったはずだが,そうした魅力に今頃気づく私は一体なんぼのもんじゃ?と自虐的になってしまう。それぐらいこのアルバムを聞いていなかったってことを大いに反省したのであった。

そしてエレクトリック主体でありながら,ほぼ固定メンツでこういうアルバムに仕立てたのは,プロデューサーとしてのドングロことDon Grolnickの手腕とも言えるが,今にして思えばよく出来たアルバムであった。正直言って全面的に支持できない曲がない訳ではないし,ラストの"The Meaning of the Blues"がいい演奏だとしても,ほかの曲からはちょいと浮いているのも事実なのだが,反省も込めて半星オマケして星★★★★☆としよう。

Personnel: Michael Brecker(ts, EWI, key, prog), Joey Calderazzo(p), Jim Beard(synth, key), Jon Herrington(g), Victor Bailey(b), Jay Anderson(b), Adam Nussbaum(ds), Omar Hakim(ds), Don Alias(perc), Milton Cardona(perc), Steve Berrios(perc), Judd Miller(prog), Jason Miles(prog), Jimmy Bralower(prog) 

本作へのリンクはこちら。ついでにTown HallでのライブからEWIが炸裂する"Original Rays"の音源を貼り付けておこう。

2026年6月19日 (金)

気持ちよく聞けるEliane Eliasのライブ盤。

Eliane-elias-ao-vivo "Ao Vivo" Eliane Elias(Candid)

主題の通りである。本作がレコーディングされたのは2023年10月らしいから,リリースまでは少々時間が経過しているが,Eliane EliasによるSFJazz Centerでのライブ盤。タイトルからして"Ao Vivo"とすることからもわかるように,ブラジル音楽にフォーカスした演奏である。もともとブラジル出身なのだから,ブラジル音楽はお手のものであるEliane Eliasであるが,これが心地よい演奏である。それは本作に収められた聴衆の反応からも明らかだ。

まぁ典型的なブラジル音楽集と言ってもよいが,ブラジルの土着的な感覚は乏しくても,誰にでも受ける演奏であり,歌唱だと思う。

私がEliane Eliasを名前を初めて意識したのは1983年のSteps Aheadのアルバムに参加した時だから,既にその時から40年以上経過し,その後,歌ものを聞かせるようになったEliane Eliasの声質も年齢とともに少々枯れてきた感じがする。だが,ここでの演奏にはこれぐらいの声がフィットするのではないかというところだ。旦那のMarc Johnsonを含む伴奏陣も出しゃばることなく,まさにこの時のスターたるEliane Eliasを立てる助演ぶりだ。

決して突出したアルバムだとは思わないが,こういうアルバムは嫌いな人はまずいないだろうという万人受け確実なアルバム。そういうのも大事だよねぇ。星★★★★。

Recorded Live at SFJazz Center Miner Auditorium in October, 2023

Personnel: Eliane Elias(p,vo), Leandro Pellegrino(g), Marc Johnson(b), Rafael Barata(ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年6月18日 (木)

Boz Scaggs生誕82年!”Silk Degrees”前夜のソウル色濃厚な”Slow Dancer”。

Slow-dancer-original "Slow Dancer" Boz Scaggs (Columbia)

先日,82歳の誕生日(6/8)目前に来日公演を終えたBoz Scaggsである。今回は私は参戦を見送ったが,老いてますます盛んというか,まだまだ元気なBoz Scaggsである。そんなBoz Scaggsがブレイクを遂げたのは"Silk Degrees"であることに疑いはないが,それに先立つこのアルバムはAORと言うよりもソウル色が濃厚で,ブルー・アイド・ソウルと呼んだ方がしっくりくる感じがする。

本作もビルボードのトップ100には入っているものの,このアルバムのオリジナル・ジャケットはビーチを海パン一丁で歩くBoz Scaggs(笑)の姿を写したものなので,こじゃれた感じの"Silk Degrees"とは購買意欲からして違って当たり前だよなぁってところだ。レーベルもそう思ったらしく,"Silk Degrees"ヒット後はジャケを下のように変えてリリースし直している。むしろ知られているのは再リリース版のジャケかもしれない。

Slow-dancer 上述の通り,むしろソウル色が強いので,"Silk Degrees"でファンになった人が,このアルバムを聞いたらどう思うかは興味深いところだが,それでもタイトル・トラックは"Silk Degrees"につながる部分のある佳曲だと思う。しかし,全体を通して聞けば,Boz Scaggsの音楽性の根源にソウルがあるということが明らかだし,それは後の多少おしゃれ度は増してはいるものの,"Down Two Then Left"等のアルバムでも感じさせる部分はあって,AORオンリーの人ではないのだ(きっぱり)。

Boz Scaggsの音楽的な幅広さを感じるにはよいと思うし,それなりには楽しめる。星★★★★。

Personnel: Boz Scaggs(vo, g), David Cohen(g), David T. Walker(g), Dennis Coffey(g), Greg Poree(g), Jay Graydon(g), Wah Wah Watson(g), Red Rhodes(g),Clarence McDonald(key), Jerry Peters(key), Joe Sample(key), Mike Melvoin(key), Russell Turner(key), James Jamerson(b), Jim Hughart(b), Ed Greene(ds), James Gadson(ds), Gene Estes(perc), John Arnold(perc)
Joe Clayton(conga), King E(vo)rrison(conga), Ernie Watts(reeds), Fred Jackson(reeds), John Kelson(reeds), George Bohanon(tb), Lon Norman(tb), Chuck Findley(tp, fl-h), Jack H. Laubach(tp, fl-h), Paul Hubinon(tp, fl-h), Warren Roché(tp, fl-h), Carolyn Willis(vo), Julia Tillman Waters(vo), Lorna Willard(vo), Myrna Matthews(vo), Pat Henderson(vo)

本作へのリンクはこちら。

2026年6月17日 (水)

相変わらずブラームスのよい聞き手ではない私だが,父の遺品から1番を聞く。

_20260611_0001 "Brahms: Symphony No.1" Carlo Maria Giulini / Los Angeles Philharmonic Orchestra(Deutsche Grammophon)

主題の通りである。私がブラームスのよい聞き手ではないことは以前にも書いて,Thielemannがドレスデンを振った全集でようやくその魅力に気がついたって感じであった。それでもその後も積極的にブラームスは聞いてはおらず,何となく気まぐれで取り出したのが本盤であった。これは父の遺品だが,父はGiuliniとロス・フィルでブラームスの交響曲を揃えていたが,父がこの世を去ってほぼ四半世紀の間に,これをプレイバックしたのは一度か二度しかないはずだ。だから本当の気まぐれなのだ。

Carlo Maria Giuliniには後年ウィーン・フィルと残した全集もあるようだが,私は未聴なので比較はできない。だが,ロス・フィルと言うと,私が大して聞いていないだけなので偏見の部分もあるが,この録音当時はイマイチ評価が固まらない部分もあったように思える中で,この演奏はGiuliniの指揮もよく,なかなかよい演奏ではないかと思えた。終楽章の弦の響きなんかもいいし,重厚な演奏で楽しめてしまったのであった。結局私自身が食わず嫌いみたいなところがあったことは否めないので,大いに反省したのであった。改めて父の遺品でブラームスを聞き直すことにしたい。

Recorded in November 1981

Personnel: Carlo Maria Giulini(cond), Los Angeles Philharmonic Orchestra

本作へのリンクはこちら。

2026年6月16日 (火)

FIFA World Cup,日本対オランダ戦を振り返る。

Photo_20260615101901 初戦の強豪,オランダと引き分けた日本代表,よくぞ追いついたというのが実感だ。

試合冒頭からのピンチをGK鈴木のナイス・セーブでしのいだ日本代表だが,後半も開始早々のピンチがあって,オランダ代表は日本のエンジンがかかる前に速攻を仕掛けるという感じだった。とにもかくにも前後半ともに,序盤はオランダ代表のスピードに対処できない感覚があったのは事実で,やっぱりオランダは強いわと試合を見ながら思っていた。

後半のVan Dijkの先制ヘッドにしろ,Summervilleの左足ミドルにしろ,ほぼフリーで打たせた感じがあったのはディフェンスの寄せが少々甘かったかなとも思えたが,先制された後,中村の右足シュートが前田をかすめてまずは追いつき,勝ち越された後には,交代で入った小川のヘッドが,鎌田にかすって入って同点という劇的な展開は見ていて面白い試合であった。そもそも身長差のあるオランダからヘッドで点を取るというところが実に素晴らしいではないか。日本の2点目は小川のヘッドによるものと思えたが,鎌田とはこういう位置関係だったのというのがよくわかる写真がFIFAのサイトにアップされているので,それも貼り付けておこう。更に鎌田の頭にこう当たったのねって写真も追加。

そして破壊力のある左のGapkoを徹底マークした堂安の貢献は得点者同様評価すべきだろう。

ニューヨーク・タイムズはこの試合を称して,今大会におけるこれまでのベスト・マッチと評価したが,それもうなずける好試合であった。以前の日本代表には欠けていた強靭な精神力を今の日本代表は身につけたと思わせてくれたのであった。次戦のチュニジア戦では勝ち点3を期待しよう。

Photo_20260615103601
2_20260616071901

2026年6月15日 (月)

追悼,David Hockney。

David-hockney

David Hockneyが亡くなった。モダン・アートの中では抽象度が低く,ヴィヴィッドな色使いが私の嗜好にフィットした人であった。私の部屋に飾ってあるポスターは下に貼り付けた"Terrace without Shodows"だが,亡き父に預けていたものを,改めて私は自室に飾っている。父も存命中はこのポスターを飾っていたから,おそらく父にとってもこのポスターの色彩が気に入るものだったのだろうと思っている。血は争えないってところだ。

いずれにしても私にとってDavid Hockneyはいつか機会があれば,デッサンでもエッチングでも何でもいいので,本物を入手したいと思える人であることにこれからも変わりはない。

R.I.P.

Terrace-without-shadowsjpg

2026年6月14日 (日)

佐渡裕/新日本フィルのマーラー3番をサントリーホールで聞く。

__20260611155801クラシックのコンサートには頻繁に通っている訳ではないが,たまに行きたくなるのも事実だ。そんな私だが,先日のJaap van Zweden/フランス放送フィルから短いインターヴァルでの参戦となった。今回のプログラムはかつては世界最長の交響曲としてギネス・ブックに載っていたらしいマーラーの交響曲3番である。第1楽章だけで30分を越え,全曲で100分近いこの曲を生で聞くのは初めてだが,集中力が続くのかと思いつつ,サントリーホールに向かったのであった。

私の座席はステージ向かって右側の最前列だったので,ステージは俯瞰できないのだが,オケの人数の多さはわかるって感じであった。演奏そのものの前に,最前列ってのは首が疲れていかんなぁなんて思いながら聞き始めたのだが,やっぱり第1楽章から長い。前半から名演って感じではないのだが,そこそこのダイナミズムは感じられたので大きな不満はない。印象が一変したのは藤村実穂子と合唱が入ってきた4楽章以降だろうか。

私はジャズ・ヴォーカルをあまり聞かないのと同じように,クラシックも若干のオペラの例外を除いて,声楽にはほとんど興味を示さない人間だ。だが,今回,藤村実穂子の歌唱を聞いていて,この人の声はなかなかいいねぇなんて思っていた。彼女の声が入って,演奏が締まったって感じか。合唱の面々もいい仕事ぶりだったと思う。もちろんそれを引き出したのは佐渡裕ではあるが,この演奏に限ってはオケはもとより「声」がよく効いていたと思った。

いずれにしてもこれだけ長大な曲なので,やる方も聞く方も大変だが,まぁ演奏前に飲んだ赤ワインも効いて,心地よい疲労感の中で家路についたのであった。

全く余談だが,私の横に座っていたのは高校生っぽい男子だったが,こういうのがクラオタになるんだろうなぁなんて思っていた。既にブラボー野郎化していたのを少々皮肉を込めた横目で見ていた私であった(笑)。

下の写真はネットから拝借。

Live at サントリーホール on June 12, 2026

Personnel: 佐渡裕(cond),新日本フィルハーモニー交響楽団,藤村実穂子(ms),晋友会合唱団,東京少年少女合唱隊

At

2026年6月13日 (土)

映画公開目前の「黒牢城」の原作を読了。

Photo_20260611075901 「黒牢城」米澤穂信(角川文庫)

一時期店頭で非常に見つけにくくなっていたこの本である。本作の映画化を受けてメディア戦略を打つなら,もう少しやりようもあったのではないかと思えるが,何であんなに品薄だったのかが解せない。

それはさておきである。黒澤清監督のもと,映画化され,間もなく公開となる本作は直木賞ほか,さまざまな賞を総なめにした作品であった。私は時代劇好きということもあり,映画も見に行くつもりで,予習も兼ねてこの本を読んだ。

現在大河ドラマで放送中の「豊臣兄弟!」にも描かれる荒木村重の謀反,籠城と黒田官兵衛との関係性を軸に戦国時代を背景にした本格ミステリーというのがまずユニーク。文体としては少々読みづらい部分もあるもの,舞台設定やストーリーテリングも含めて,本作が提示した取り組みが評価されたものと思う。

最後の最後まで謎に満ちている中,その謎の回収はきっちり行われていると思うが,この小説を読んでいて,これを映画化する場合,脚色が難しそうだというところであった。これは映画を見てから判断したいが,演出以上に脚色が映画の成否に影響しそうに思えた。

いずれにしても,映画の公開を楽しみに待つことにしよう。

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2026年6月12日 (金)

1980年のPharoah Sandersの発掘ライブ。

Pharoah-at-fabrik "Live At Fabrik Hamburg 1980" Pharoah Sanders (Jazzline)

このアルバム,取り上げていたつもりになっていたが,記事にしていなかったものを今更ながら改めてである。と言っても,これも購入した訳ではなく,ストリーミングで聞いているので,偉そうなことは言えないが(笑)。

本作は1980年6月のライブ音源であるが,この頃のPharoah Sandersと言えば81年の"Live..."の激演が記憶に残っているし,それについては私も記事にしている(古い記事になるがこちら)。ツボにはまった時のPharoah Sandersは本当に凄いよなぁと思わせるライブ盤であった。そしてこの数年前に発掘されたアルバムはその"Live..."と3曲被るだけでなく,演奏者もベースを除いて同じとだから,同じような演奏が聞けるだろうと期待するのは当然なのだ。

そして期待は裏切られることなく,まぁ"Live..."同様の吹きまくりである。聴衆の反応を聞いても,この時のPharoah Sandersの演奏の興奮度は高い。"It's Easy to Remember"でスローダウンするところも"Live..."同様ということで,まぁ"Live..."の姉妹編と思っておけばいいだろう。そういう意味では"Live..."を保有しているのであれば,敢えて購入しなくてもよいと言える訳で,そういう時にストリーミングはありがたいのだ。

だが,このアルバムでは"Karma"版とは違ってあっさりしたものであるとしても,"The Creator Has a Master Plan"もやっているんで,やっぱりファンは必聴なのだ。Pharoah Sandersのテナーの音が,もう少しオンマイク気味にヴィヴィッドに捉えれられていたらもっと興奮しただろうなぁと思うのも事実だが...。まぁそれはないものねだりってことで。星★★★★。

Recorded Live at Fabrik on June 6, 1980

Personnel: Pharoah Sanders(ts), John Hicks(p), Curtis Lundy(b), Idris Muhammad(ds)

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2026年6月11日 (木)

何かと名前を聞くJeff Parkerのアルバムをストリーミングで聞く。

Jeff-parker "Happy Today" Jeff Parker ETA IVtet (International Anthem)

最近,その名を聞くことが多いJeff Parkerである。この人のリーダー作はこれまで聞いたことがないと思うが,振り返ればBrian Blade FellowshipやMeshell Ndegeocelloのアルバムでそのギターには接している。Brian BladeにしてもMeshell Ndegeocelloにしても私の嗜好にはまっている人だから,この人の演奏もそこそこはまるはずだろうってところだ。

本作はLAにおけるライブ・レコーディングであるが,収録曲は2曲だけで各々が20分越えの長尺演奏。1曲目の"Like Swimwear"からしてミニマルな響きすら感じさせるところに,うまい具合にエレクトロニクスを絡めて,こういう感じなのかと思わせる。延々と続くリズム・フィギュアは,聞く人によっては変化に乏しいと思えるかもしれない。その一方で結構聴衆が盛り上がっているのだが,そういうタイプの音楽かなぁ...と思いながら聞き進める。

そして2曲目の"Happy Today"の冒頭は更にミニマル感が強くなる。静謐な中から執拗に繰り返されるベース・ラインと,そこに絡むのがアルト・サックス。Jeff Parkerは冒頭からエレクトロニクスを暫くいじっている感じで,ギターがなかなか出てこない。ギターが出てきても,ミニマルな音場においてはギターを弾きまくるという感じにはならない。ようやくリズムが明確になるのが中盤辺りということで,やはりこの音楽は普通のジャズだと思ってはいけないということだ。

構成力には優れていると思えて,私のような雑食系リスナーにとっては全然問題にならないのだが,やはりこれは好みが分かれるのではないかと思わせる演奏である。特にコンベンショナルなジャズを好む向きには難しいだろうなぁ。しかし,こうした音楽を即興で作り上げるコンビネーションはなかなか立派。ちょっと甘めの星★★★★ってところ。

Recorded Live at Lodge Room, Highland Park, LA on August 20, 2025

Personnel: Jeff Parker(g, electronics), Josh Johnson(as, electronics), Anna Butterss(b), Jay Bellerose(ds, perc)

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2026年6月10日 (水)

追悼,James Blood Ulmer。

James-blood-ulmer

James Blood Ulmerが亡くなったそうだ。そう言えば,Calvin Westonだか誰かが入院中のUlmerを見舞いに行ったようなことをSNSにアップしていたようにも思うが,去る6月3日にこの世を去ったとのことだ。

James Blood Ulmerと言えば,私にとっては"Are You Glad to Be in America?"が初聞きだったが,とにもかくにも「黒さ」に満ちたファンク・フレイヴァー溢れる音楽は当時から刺激的だった。その勢いに乗って,メジャーのColumbiaから3枚アルバムをリリースした頃がUlmerの絶頂期だったと言ってもよいだろうが,その後はブルージーな感覚を強めて活動を続けていた。私はリーダー作は全然買っていなかったが,James Carterのアルバムにゲストで参加しているのを聞いて,おぉっ,Ulmerだ!なんて反応していて,ついつい名前を見るだけでも懐かしさを感じさせる人であった。

気づいてみればJames Blood Ulmerも86歳だったそうだ。いい意味でいつまでも暑苦しい音楽を奏で続けた人だったと思う。リッピングしてあるColumbiaの3作でも聞いて生前のUlmerを偲ぶことにしよう。

R.I.P.

2026年6月 9日 (火)

スウェーデン~日本混成軍のハード・フュージョン,SLAKをストリーミングで聞いた。

Slak "SLAK" (Universal)

Björn Arköを初めて聞いたのは2022年6月に赤坂Virtuosoでの"Mike Stern Night"であった。その時からBjörn ArköはMichael Breckerばりのサックスを聞かせていた。その後,Cotton ClubでSwedish All StarsでのOve Ingemarssonのトラとしてのややコンベンショナルな演奏も聞いていて,何でも吹けるねぇと感心していたであった。

そのBjörn Arköが本筋と言ってよいハード・フュージョンのバンドの一員としてアルバムをリリースしたので,ストリーミングで聞いてみた。バンド名のSLAKはメンバーのラスト・ネームの頭文字の組合せだが,スウェーデンと日本の混成軍というのが珍しい。そしてドラムスは何かと話題の川口千里である。この人,亡き日本の手数王,菅沼孝三の弟子としてその手数を引き継いでいるだけでなく,実にパワフルだ。

メンバーはテクニシャン揃いなので,演奏能力には全く問題なく,想像通りの典型的なハード・フュージョンとしての音が出てくる。バンドのデビュー作としてはよく出来たものと言ってよく,生で聞いたら燃えるんだろうなぁという感じのバンドである。バンド・デビューへのご祝儀込みで星★★★★。せっかくバンドを組成したのだから,息の長い活動を期待したいところ。

Personnel: 白井アキト(key), Henrik Linder(b), Björn Arkö(ts, EWI), 川口千里(ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年6月 8日 (月)

Simon Phillipsの新譜がリリースされた。相変わらずだ。

_20260608_0001 "Protocol 6" Simon Phillips (Phantom)

7月に来日が予定されているSimon Phillipsのバンド,Protocolの新作がリリースされた。Protocol名義としては6枚目で,前作"V"からは4年ぶりとのことだが,そんなに時間が経ってしまったのかと思える。

イントロこそOtmar Ruizのミニマルっぽいピアノから始まって,「おぉっ,新機軸か?」なんて感じるのだが,すぐ「いつもの感じ」になる(笑)。冒頭から変拍子炸裂で,相変わらずこのバンドらしいタイトな演奏が楽しめる。しかし,これまでのProtocolのアルバムに比べるとやや興奮度が低いように感じるのは私だけか?

やっていることは変わらないと思うのだが,これが曲のせいなのか,演奏のせいなのか,はたまたミキシングのせいなのかはわからない。ミキシング自体はSimon Phillips自身が行っているから,リーダーの意図には沿ったもののはずだから,私の感覚的なものだけなのかもしれない。

そうは言っても14分越えの"Event Horizon"なんかには興奮させられる部分も多々あるが,この曲はプログレ・バンドが演じる組曲的な色彩も感じさせる部分があるのは面白いと思った。ライブの場ではまたまた興奮させてくれるだろうとは思いつつ,今までのProtocolのアルバムに比べると一段評価が落ちるってところで,星★★★★。それでもこの評価になってしまうのはファンの弱みだな(笑)。

それにしてもProtocolのアルバムが国内盤でリリースされ続けているってことは,それなりにポピュラーな存在なんだろうな。7月のライブを楽しみに待ちたい。

Personnel: Simon Phillips(ds), Ernest Tibbs(b), Otmaro Ruiz(key, p), Alex Sill(g), Phillip Whack(ts, ss)

しかし本作へのリンクはこちら。

2026年6月 7日 (日)

間もなく開幕,FIFA World Cup。

4年に一度の祝祭の季節がやってくる。日本代表応援モードに入るべく,レプリカ・ユニフォームもゲットして準備万端の私だ(笑)。突破力のある三苫薫の怪我は痛いが,日本代表には三苫の不在をカバーするタレントが出てくると信じたい。まずは初戦のオランダ戦に勝利を飾るべく,頑張れ!日本代表。そしていつものことだが,私は日本代表と並んでイングランド代表を応援するのだ。

その一方で,World Cupが開幕すると音楽関係の記事は減ることは予めご了承願いたい。

2026年6月 6日 (土)

ブラジルを歌うElla FitzgeraldとSarah Vaughan。比べてみると...。

Ella-abraca-jobim 先日,ストリーミングでElla FitzgeraldがAntônio Carlos Jobimを歌った"Ella Abraça Jobim"を聞いたのだが,豪華なメンツを揃えつつも,ややフュージョンっぽい軽い響きに違和感を覚えていた。感覚的に言えば,Norman Grantzによるオーバー・プロデュース感が強かったのである。オリジナルではLP2枚組の大作だが,軽さもあれば,Ella Fitzgeraldの声がJobimの曲に合っているかと言えば,そうでもないのではないかと思わせる部分もあった。

Copacabana そして続けてストリーミングで聞いたのがSarah Vaughanの"Copacabana"だったのだが,こちらは全く違和感なしというところで,アルバムとしては圧倒的にSarah Vaughanの勝ちって感じであった。Sarah Vaughanは"I Love Brazil"に始まって,"Copacabana"を経て"Brazilian Romance"まで3枚のブラジル物を残しているから,ブラジル音楽への取り組みもElla Fitzgeraldよりも積極的だったこともあって,フィット感が違うのだ。

二人ともジャズ・ヴォーカル界を代表する名歌手であるが,そこには合うものと合わないものが存在したということを強く感じさせられたのであった。Sarah Vaughanについては"I Love Brazil"のオリジナルとなった"O Som Brasileiro de Sarah Vaughan"というブラジル盤があるので,今回ついでに"I Love Brazil"もストリーミングで聞いてみた。"I Love Brazil"は曲数が追加され,曲順も変わっていて,元来のブラジルに親しんだ私にとっては少々違和感があったことは言っておきたい。私ならブラジル盤を推すな(きっぱり)。だいぶ前に書いた"O Som Brasileiro de Sarah Vaughan"に関する記事はこちら。

2026年6月 5日 (金)

追悼,Peabo Bryson。

Peabo-bryson_20260604181801

Peabo Brysonが亡くなった。脳卒中だったそうだが,昨年7月にはBlue Note東京で公演をしていたはずだから,この急逝には驚いた。

私は決してPeabo Brysonの熱心な聞き手だった訳ではない。しかし,Roberta Flackとの"Tonight I Celebrate My Love"から始まって,Celine Dionとの"Beauty and the Beast",そしてRegina Belleとの"Whole New World"とまさにデュエット名人であった。

私が唯一保有する彼のアルバムはRoberta Flackとの"Live and More"だけだが,改めてほかのアルバムもストリーミングで聞いて追悼することとしたい。

R.I.P.

2026年6月 4日 (木)

Funky Times@Blue Note東京参戦記。

Funky-times

Funky Timesって誰よ?ってのが私の感覚であるが,夜の部活メイトからのお誘いによりライブに行ってきた。2020年にドイツで結成された「ミニマル・ファンク」バンドだそうだ。上の告知用の画像からしても,私の日頃のジャンルからの乖離が大きそうだ(笑)。私にとってのミニマル・ファンクと言えばNik BärtschのRoninってことになるが,このバンドは相当毛色は違いそうだが,どんな感じなのかの予習もほとんどなしでの参戦となった。

そして始まってみれば,これのどこがミニマルやねん?とつっこみたくなるエンタテインメント系ファンク・バンドではないか。音楽としての「深み」とは全く無縁の,とにかく軽くて明るいファンク・バンドであった。このエンタテインメント性ゆえ,Candy Dulferが評価するのもうなずける。ステージ衣装は全員ピンクだしなぁ。本人たちも実に楽しそうに演奏するのが微笑ましかった。

いずれにしても,演奏技術には破綻はないし,聴衆をのせる術も心得ているので,その場でライブを楽しむという感覚は確実に与えられる人たちであった。私は音楽を聞いていて,「キメのないCasiopeaみたい」(笑)だと思っていたが,まぁ聴衆にも受けていたし,聴衆に歌わせ,踊らせるこういうライブもたまにはいいよねぇと感じていたのであった。

但し脊柱管狭窄症に苦しむ私としては立って踊るってのは正直きついし,Blue Noteというヴェニューの座席間隔からしてもきついところはあったが,痛みに耐えながらも(爆),結構笑いながら見ていた私であった。因みに一番笑えたのがHannes Priesのはじけたステージング。まじでお笑い系の所作と言ってもよかった。尚,演奏上最も感心したのはJulius Imhäuserのカッティングだったと言っておこう。

Blue Note東京のWebサイトにLiveの模様の写真がアップされていたので貼り付けておく。

Live at Blue Note東京 on June 2, 2026 2ndセット

Personnel: Julia Lange(g, vo), Julius Imhäuser(g, vo), Leo Imhäuser(ds, vo), Sebastian Nöcker(b), Hannes Pries(key)

Funky-times-at-bnt

2026年6月 3日 (水)

さすがにNeil Youngも声が出なくなった気が...。

As-time-explodes "As Time Explodes - The Live Album" Neil Young and the Chrome Hearts (Reprise) 

傘寿を過ぎても創造意欲の衰えない「兄貴」ことNeil Youngである。しかし,こちらがその創造意欲に応えられないというか,どんどん出てくる新譜のフォローもできていないというのが実態の中で,久しぶりに新作としてのライブ盤をストリーミングで聞いた。

"Ohio"やら"Cortez the Killer"やら"After the Gold Rush"やら"Like a Hurricane"やらと懐かしい曲も交えながら演じられる演奏自体には破綻はないし,フォークとグランジを行き来するような演奏パターンも相変わらずのNeil Youngだと思える。しかし,冒頭の"Daddy Went Walkin'"をはじめとして,さすがに全般に声が出ていない感じだ。特にスローな曲では粗が目立つが,年齢が年齢だけにそれも仕方ないという気はするし,そのことを割り引けばNeil YoungのNeil Youngたる部分は捉えられているので,ファンにとってはOKとしてもよいだろう。

時代への批評性を維持しながら歌うNeil Youngの姿は不変だが,改めてこのアルバムでNeil Youngを聞きたいかと言えば,私の場合はもうストリーミングで十分って感じだ。Neil Youngの現在形として捉えたいが,加齢をものともしない兄貴の精神には敬意を払いつつ,やはり厳しいところもあって,星★★★★が精一杯。

Personnel: Neil Young(vo, g, org, p,hca), Spooner Oldham(org, p), Micah Nelson(g, synth, vo), Corey McCormick(b, vo), Anthony LoGerfo(ds, vo)

本作へのリンクはこちら。

 

2026年6月 2日 (火)

Joe LovanoとJulian Lageの双頭作と呼びたい"Parmount Quartet"。

_20260601_0001 "Paramount Quartet" Joe Lovano(ECM)

「最高四重奏団」とは大きく出たものだ(笑)。しかし,あながちはずれてはいないと思わせるのは大したものだ。主題の通り,このアルバムのキモはJoe LovanoとJulian Lageの共演にほかならない。まさに二人の双頭アルバムと言ってもよさそうな寄り添い具合だ。

冒頭のCharlie Hadenの名曲"First Song"からつかみはOKである。この演奏を聞けば,アルバム全体への期待が一気に高まるものであった。少々フリー的なアプローチを交えながら,演奏は淡々とした感じで進むが,クァルテットによるアンサンブルは滋味溢れるものと言ってよい。"Fanfare for Unity"でリズミカルなアプローチも聞かせるが,ビートそのものは抑制されたもの。

そしてここでドラムスを叩いているのがLiving ColourのWill Calhounというのも面白い。Living Colourのロックの世界からは完全に別ものになっていて,楚々と演奏を支えているのだ。だからこそ,Joe LovanoとJulian Lageの演奏っぷりが際立つという助演ぶりが麗しい。ベースのAsante Santi Debrianoはパナマ出身らしいが,Joe Lovanoと同年代のベースで,このブログはStanley Cowellのアルバムで登場したに過ぎない。しかしここでもベースの音色が素晴らしく,アコースティック・ベースの音はこう録って欲しいと思えるのも素晴らしい。

Joe Lovanoのオリジナルに加えて,"First Song"と並んでカヴァーしているのがWayne Shorterの"Lady Day"というのも渋い。こういう演奏を聞くとオリジナルが収められていた"Soothsayer"が聞きたくなるという効果も絶大だ(笑)。

いずれにしても,ここでのJoe Lovanoのフレージングが実に魅力的で,Julian Lageとの共演も相まって,実に聞き応えのアルバムとなった。星★★★★☆。

Recorded in February 2025

Personnel: Joe Lovano(ts, ss, tarogato), Julian Lage(g), Asante Santi Debriano(b), Will Calhoun(ds)

本作へのリンクはこちら。

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