いかにもECM的な音:Marilyn CrispellとAnders Jorminのデュオ作。
"Memento" Marilyn Crispell & Anders Jormin(ECM)
静謐にして内省的と言ってよいアルバム。ECMと言えば「沈黙の次に美しい音」という惹句が出てくるが,まさにそれを体現するかのようなアルバムである。
Marilyn Crispellは結構な数のアルバムをECMに残しており,私もそこそこの数は保有しているのだが,正直言ってプレイバック頻度は高くない。それは彼女のアルバムに関するこのブログの扱いにも表れていて,私がこれまで取り上げたアルバムは"Storyteller"の一枚だけ(その時の記事はこちら)だ。そこにも似たいようなことを書いていて,私の印象が変わっていないことが笑える。
本作はこちらもECMにリーダー・アルバムを残すAnders Jorminとのデュオ作だが,Anders JorminについてもBobo Stensonのアルバムは取り上げても,リーダー作は"Ad Lucem"しか保有していないし,記事化もしていない。そんな二人のアルバムなので,積極的には聞こうと思っていなかった。しかし,ブログのお知り合いであるSuzuckさんが「まさにECM的美学の一枚」,風呂井戸さんは「ECM的な世界の極み」とおっしゃっているので,これは聞かねばということになってストリーミングで聞いたのであった。
主題の通り,いかにもECM的なデュオ演奏であるが,全編を通じてこの筋の音楽が好みであれば一発で気に入るであろう演奏だ。私も例外ではないが,冒頭の"For the Children"の美的なサウンドからこれにははまる。そしてアルバムの中で私に最も訴求してきたのが,Marilyn Crispellが複数の共演盤を残している今は亡きGary Peacockに捧げ,アルバムの最後に収めた"Dragonfly"であった。この曲のリリカルなメロディ・ラインと美しさがこのアルバムの白眉と言ってもよいが,最後にこの曲を置くことで私の印象は更によくなったと言ってもよい。
ここにはアブストラクトな展開はほぼ皆無と言ってよく,ピアノとベースの静かな対話が続くが,Anders Jorminのベースもピチカートとアルコの双方でこの音楽を支えているが,リアルに響く音がストリーミングで聞いても優秀な録音と感じさせるのも素晴らしい。多少なりとも好みは分かれる音楽とは思うが,ECM好きには何の問題もなしである。星★★★★☆。
Recorded in July 2025
Personnel: Marilyn Crispell(p), Anders Jormin(b)
本作へのリンクはこちら。
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コメント
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閣下、リンクをありがとうございました。m(_ _)m
いかにもECM!って、一枚だったと思います。
ひとつひとつの音が生まれ、、空間に溶けていく過程そのものが重要視されている。
そして、余韻の中に聴き手の感情を求め、思索を促す感じですか。
多少はその筋なので、お気に入りです。 笑
私の投稿のリンクも置いていきますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2026/04/post-8579ca.html
投稿: Suzuck | 2026年4月14日 (火) 07時47分
Suzuckさん,おはようございます。リンクありがとうございます。
>いかにもECM!って、一枚だったと思います。
>ひとつひとつの音が生まれ、、空間に溶けていく過程そのものが重要視されている。
>そして、余韻の中に聴き手の感情を求め、思索を促す感じですか。
Suzuckさんの表現力が素晴らしいですね。私にはそういう比喩的表現ができない(笑)。"Dragonfly"最高!ぐらいしか言えないですわ(爆)。
>多少はその筋なので、お気に入りです。 笑
承知していますが,多少ですか?(笑)
投稿: 中年音楽狂 | 2026年4月14日 (火) 07時55分
中年音楽狂様、当方へのお話有り難うございます
今や、「ジャズという分野は何か」というと、音楽全てを生かし切る世界って感じですね。
かっての黒人音楽というと、逆にかなり狭まれてしまった感すらある。ある時はクラシック、ある時はロック、そしてラテン、トラッド、フォークなんでもござれという世界で、好みとなるとこれも多種多様・・・そんな時代に、なんと「ECM音楽」と言っただけで、既にジャズを超越して音楽の一つの分野として歴史的にも、音楽界でも市民権を得たようにも感じています。
そのECM世界にて、私はTord Gustavsenに最も思い入れがあるのですが・・・今回のMarilyn Crispellの世界は、まさに重要な位置にあることを感じています。内面的な世界に於ける精神性という分野の一翼を担っている音楽・・・これぞ「ジャズ」の現代の進んできた一つの重大な道だと・・・
とにかく、Keith Jarrettの流れ、はたまた一方Dominic Millerのギターなどと「ECM音楽」は、これからも発展していって欲しいです。
私の方のリンクもよろしく御願いします↓
https://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2026/03/post-73e1fb.html
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2026年4月16日 (木) 11時05分
photofloyd(風呂井戸)さん,おはようございます。リンクありがとうございます。
>かっての黒人音楽というと、逆にかなり狭まれてしまった感すらある。ある時はクラシック、ある時はロック、そしてラテン、トラッド、フォークなんでもござれという世界で、好みとなるとこれも多種多様・・・そんな時代に、なんと「ECM音楽」と言っただけで、既にジャズを超越して音楽の一つの分野として歴史的にも、音楽界でも市民権を得たようにも感じています。
レーベルとしての個性を確立しているというのは凄いですね。聞いている方も「ECMっぽい」とかいう反応を示してしまいますし。
> そのECM世界にて、私はTord Gustavsenに最も思い入れがあるのですが・・・今回のMarilyn Crispellの世界は、まさに重要な位置にあることを感じています。内面的な世界に於ける精神性という分野の一翼を担っている音楽・・・これぞ「ジャズ」の現代の進んできた一つの重大な道だと・・・
Tord Gustavsenはいいですよね。"Seeing"リリースから2年近くになるので,そろそろ新作も期待したいです。
> とにかく、Keith Jarrettの流れ、はたまた一方Dominic Millerのギターなどと「ECM音楽」は、これからも発展していって欲しいです。
Manfred Eicherが健在なうちは大丈夫でしょうが,後継者がいるのかどうかってところは気になりますね。
投稿: 中年音楽狂 | 2026年4月17日 (金) 07時22分