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2026年3月31日 (火)

先日のライブを振り返りつつ,Steve Smith & Vital Informationの”New Perspective”を聞く。

New-perspective "New Perspective" Steve Smith & Vital Information(Drum Legacy)

先日のBlue Note東京でのライブは,グルーブを感じさせる演奏で非常に楽しめた。ライブの予習のためストリーミングで聞いていた本作を,アナログ・レコードで入手したことはその時の記事にも書いたが,そのアルバムを改めて部屋で再生している。

基本的にライブで感じられたのと同様の感覚をこのアルバムでも得られるが,改めてクレジットを見ると,多くの曲におけるアレンジメントにおいて,キーボードのManuel Valeraが果たした役割が大きかったということを認識する。"New Perspective"というタイトルはJourneyの曲を含め,Steve Smithが過去に演奏したレパートリーを新たなアレンジメントで演奏するというコンセプトによるものであるから,Manuel Valeraの貢献なくしては成り立たないアルバムだったと言える。

Journeyについては"Don’t Stop Believin'","Open Arms",そして"Who’s Crying Now"の3曲であるが,どれもが原曲のイメージを希薄化させているのが面白い。そのほかには今回のライブでも演奏したMichael Breckerの"Sumo"もやっている。この曲はSteps Aheadの東京(今はなき五反田ゆうぽうと)でのライブでやっていたのも懐かしい。私はそのライブ盤も保有しているが,Mike SternやDarryl Jonesもいるという強烈なメンツであったが,これもオリジナルからは随分と印象が違う。そこにVital Informationのレパートリーをリアレンジした曲も加わって,まさに"New Perspective"である。最後をおそらくManuel Valeraの新曲"Three of a Kind"で締めるという構成も面白い。

例えばJourneyの曲の再演に期待すると,ある意味梯子を外されるような感じと言っても過言ではないが,これはこれとして,そう来るか~って感じで楽しめばよいのだ。何よりも古希を過ぎても衰えを一切感じさせないSteve Smithのドラミングと,それを支えるManuel ValeraとJanek Gwizdalaのタイトな演奏は,ライブの場でのグルーブを彷彿とさせるに十分だ。星★★★★。

Recorded on June 29, 2023, and on April 10-11, 2024

Personnel: Steve Smith(ds, konnakol), Manuel Valera(p, key, synth), Janek Gwizdala(b)

現物情報が見当たらないので,本作のストリーミングへのリンクはこちら。ついでにFBに上がっていたBlue Note東京でのSteve Smithの写真も貼り付けておこう。

Steve-smith-at-bnt

2026年3月30日 (月)

録りだめしたビデオから,懐かしの「マラソンマン」。

Marathon-man_20260321082101 「マラソンマン("Marahon Man")」('76,米,Paramount)

監督:John Schlesinger

出演:Dustin Hoffman, Lawrence Olivier, Roy Scheider, William Devane, Marthe Keller

私の人生を振り返れば,レコードを買い始めたのは中学に入った頃ではあったが,本当に音楽一辺倒に近いかたちになったのは高校に入ってからぐらいで,それまでは映画を観る方が主な趣味だったと言ってもよい。この映画は丁度私が中学3年の頃の1976年の映画である。もはや半世紀か!と思ってしまったが,この映画,記憶が正しければ,試写会に当たって見に行ったはずだ。それでもって,映画が面白かったので,本作のシナリオも兼ねたWilliam Goldmanが書いた原作小説も読んだのも懐かしい。その後2本立てでもう一回見に行ったような気もする。

ポスターに"A thriller"とある通りの,冒頭から謎に満ちながら,スリリングな展開が続く映画で,結構テンションが高い映画である。この映画で最も私の印象に残っていたのはLawrence Olivier演じるSzell博士がDustin Hoffman演じるBabeの歯の神経をいたぶる拷問シーン。あれを見て歯医者に行きたくなくなる人は多数いたのではないかと思えるインパクトであった。

まぁDustin Hoffmanが適役だったかどうかはあるが,William Goldmanのシナリオ・ライターとしての才能はこの頃まではまだまだいけていたと思わせる展開で,ついつい映画に引き込まれた記憶はあったし,今回改めて再見してもその感覚は変わらなかった。

監督のJohn SchlesingerとDustin Hoffmanと言えば「真夜中のカーボーイ」のコンビだが,映画としては全然趣が違っているのも面白かった。星★★★★。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら。

2026年3月29日 (日)

András Schiff@住友生命いずみホール。素晴らしい演奏を堪能し,感動した!

Schiff-at

András Schiffは私がCDで保有する枚数が最も多いピアニストだ。それはECMのベートーヴェンのソナタのボックスや,Deccaのバッハのボックスがあるからということもあるが,それ以外にも結構保有している。そのAndrás Schiffの生演奏は聞いたことがなく,一度は...と思っていたので,今回は訳あって大阪でのリサイタルに赴いたのであった。当日の演奏曲目は事前には発表されておらず,1曲毎にAndrás Schiffが日本語で曲目を述べるというスタイル。そして演奏された曲目が次の通りである(KajimotoのWebサイトより拝借)。

J.S.バッハ:カプリッチョ「最愛の兄の旅立ちに寄せて」BWV992
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17(16)番 変ロ長調 K.570
ハイドン:アンダンテと変奏曲 へ短調 Hob.XVII: 6
ベートーヴェン:6つのバガテル op.126
        ***
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調 op.27-1
シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番 ト長調 D894 「幻想」
【アンコール】
ブラームス:インテルメッツォ 変ホ長調 op.117-1
シューベルト:即興曲 変イ長調 D935-2
シューマン:アラベスク op.18
メンデルスゾーン:無言歌集第6巻 op.67から 「紡ぎ歌」
J.S.バッハ:イタリア協奏曲 へ長調 BWV971から 第2、3楽章
ショパン:ノクターン 嬰へ長調 op.15-2

最初のバッハこそ曲のせいが大きいと思うが,少々面白みに欠けた感覚はあったものの,それ以外の演奏の素晴らしさには完全に脱帽であった。特にベートーヴェンの2曲がよかったのに加え,ハイドンの「アンダンテと変奏曲」は初めて聞いたと思うが,これがまた素晴らしい演奏であった。静と動を完全にコントロールし,名器ベーゼンドルファーで奏でられるAndrás Schiffの音楽を聞いて,感動しない人間はいないと思った。どのような曲でも弾きこなすのはまさに匠の技としか言いようがない。本番の最後をシューベルトというのは集中力が続くのかと思ったが,全く問題にしない,まさに万能のピアニストという思いであった。

そしてアンコールは何と7回(イタリア協奏曲は楽章を2回に分けて演奏),リサイタルがはねたのは開演時間から3時間を超えた21:30過ぎという長丁場であった。会場には辻井伸行の姿もある中,最後は万雷のカーテン・コールとスタンディング・オヴェーションに応えたAndrás Schiff。その集中力と体力には感嘆の声を漏らさずにはおれなかった私である。

甚だ余談だが,終了後,私はタクシーで某所へ移動したのだが,乗せてもらったタクシーの運転手の方の話によれば,たまたま前日も終演後に同じように聴衆を乗せたらしい。前日も同じような時間までやっていて,東京から来ていた聴衆は最終の新幹線に乗りそこなったという話を聞いて,私は最初から宿泊にしておいてよかったと思ったのであった。

いずれにしても,わざわざ大阪に出向いてでも聞く価値は十分あったと思える一夜であった。

Live at 住友生命いずみホール on March 27, 2026

Personnel: András Schiff(p)

2026年3月28日 (土)

改めてU.K.の1stアルバムを聞く。

_20260325_0001 "U.K." (EG)

邦題「憂国の四士」とはよく付けたものだが,一種プログレの鑑みたいなアルバムだ。このバンドが結成される前に,John WettonとBill BrufordはRick Wakemanとバンド結成をすべく,リハーサルをしていたらしいが頓挫。私は結果的に頓挫してよかったと思える。Rick Wakemanだったら,これほどハイブラウな響きは期待できなかったはずだ。

かく言う私をプログレの世界に導いたのはRick Wakemanの"The Six Wives of Henry VIII"だったので,あまりRick Wakemanのことは悪く言いたくはないが,Rick Wakemanはギミックが過ぎて,こういうハイ・テンションなロックの響きを期待できなかっただろうと思うのだ。その布陣の演奏も興味深いことは興味深いが,こうはなりそうにはない。そのRick Wakemanに代わって入ったのがAllan HoldsworthとEddie Jobsonというのは今にして思えば鉄壁の布陣であった。

しかし,Allan Holdsworthが方向性の違いから解雇され,Bill Brufordがバンドを去って,このフォーメーションは極めて短命に終わってしまったのは残念なことではあるが,このメンツでのアルバムが残っていただけでもよしとすべきだろうし,ここで聞かれるテンションの高い演奏は,プログレにおける「スリル」面を体現しているというのが実感だ。"Time to Kill"なんて今聞いてもぞくぞくする。

このアルバムがリリースされてもはや半世紀近い時間が経過しているが,私はこの演奏には古さを感じることはない。プログレ界にはこれより優れたアルバムもあるので,星★★★★☆とするが,Eddie Jobsonが繰り返し再演にこだわりたくなるのも理解できる。

Personnel: Eddie Jobson(vln, key, electronics), John Wetton(b, vo), Allan Holdsworth(g), Bill Bruford(ds, perc)

本作へのリンクはこちら。

2026年3月27日 (金)

先日のライブを振り返るべく,Lisa Loebのメジャー・デビュー・アルバムを聞く。

_20260324_0001"Tails" Lisa Loeb & Nine Stories(Geffen)

先日のBlue Note東京でのライブは本当にいいパフォーマンスだと思えたLisa Loeb。その時の記事にも書いたが,私が保有しているアルバムは彼女のメジャー・デビュー作となったこの"Tails"のみだ。当時からこのアルバムには非常にいい印象を持っていたが,その後のアルバムは追い掛けるところまではいっていなかった。しかし,ライブの印象がすこぶるよかったので,改めてこのアルバムを聞いてみた。ライブ前にもベスト盤をストリーミングで聞いたり,本作も予習のために聞いていたが,いい機会なのでブログにもアップすることにした。

本作を聞くと,メジャー・デビュー作から佳曲が多いことに改めて気づく。ライブでもやった"Do You Sleep"も含めていい曲が多いねぇと思う。本人もライブで言っていたが,"Do You Sleep"は既に80年代には書いていたそうだし,ソングライターとしての高い資質が明らかなメジャー・デビュー作であったと思える。そしてここではバックバンドとしてのNine Storiesを従えてはいるが,ライブでもよくわかった彼女自身のギターの腕もおそらくこのアルバムには十分反映されているはずだ。

ライブでの再演が多かったことからしても,やはりLisa Loebにとっても重要かつ自信作だったんだろうと思えるアルバム。ロック・タッチと弾き語り的な曲を交えた構成にも優れたいいアルバムだったと,リリースから30年以上経過した今になって思う私であった。星★★★★☆。

Personnel: Lisa Loeb(vo, g), Tim Bright(g), Jonathan Feinberg(ds, perc, g), Joe Quigley(b) with Juan Patiño(vo, p), Dan Seiden(g), Jesse Harris(g), Ben Loeb(arr), Dan Coleman(arr), Eric Gaensslen(cello), Jennifer Frautschi(vln), Joseph Lin(vln)

本作へのリンクはこちら。

2026年3月26日 (木)

またもブートの話。今日はJeff Lorber Fusion。

_20260323_0002 "Reseda 1981" Jeff Lorber Fusion(Bootleg)

CDの購入枚数が減少する中,アナログ・レコードに加えて数が増えるのがブートレッグだ。昨日もBrad Mehldauのビッグバンド共演作をアップしたばかりだが,今度はそれと一緒にゲットしたJeff Lorber Fusion(JLF)のブートレッグである。

JLFというバンドはつくづく所謂フュージョンを典型的な形で体現するバンドだと思える。前回の来日時はスケジュールが合わず見逃したのは痛かったが,来れば見たくなるバンドである。しかし,私が本当に彼らのよさに気づいたのは随分後になってから(少なくとも今世紀に入ってから)のことなのは認めなければならない。

この音源はそんなJLFがアルバム"Galaxian"をリリースした1981年当時のものだ。サウンドボード・レコーディングだとしても,どうしても音の細さは仕方がない。だって,45年も前の演奏であり,非公式レコーディングなのだ。文句は言ってはいかん(笑)。

まぁそうは言っても十分雰囲気はつかめる音源だし,当時から充実したライブ演奏をしていたことがよくわかるブートレッグだと言える。ディスクに収められたMCによれば,ギターとヴォーカルのMarlon McClainは「新メンバー」だと言っているが,アルバム"Galaxian"で一旦解散するJLFなので,この編成での活動は短かったと考えてよい。このMarlon McClainというギターはアルバム"Galaxian"にも参加しているが,ここでもなかなかのソロを展開し,しかも歌まで聞かせて非常に興味深いプレイヤーであった。しかもサックスは軟弱化する前のKenny Gだ(笑)。ここではまだまだタイトなサックスとフルートを聞かせる。この路線を継続していたなら支持したかもなぁ。

演奏はいかにもJLF的なもので決して裏切られることはない。やっぱり好きだぜ,JLF。因みにこの音源がレコーディングされたWolf and Rissmiller’s Country Clubはゴルフ場ではない。もともとカントリー・ミュージックを中心にやっていたらしいキャパ1,000人ぐらいのヴェニューなのでこの名前らしい。へぇ~。

Recorded Live at Wolf and Rissmiller’s Country Club, Reseda, California on May 21, 1981

Personnel: Jeff Lorber(key), Kenny Gorelick(ts, ss, fl), Marlon McClain(g, vo), Danny Wilson(b), Dennis Bradford(ds)

2026年3月25日 (水)

Brad Mehldauとビッグバンドの共演を収めたブートレッグを入手。

_20260323_0001 "Frankfurt 2026" Brad Mehldau & HR Big Band(Bootleg)

ブートショップからのメールでこの音源を知った。去る3月6日に収録されたばかりのホヤホヤの音源である。しかもBrad Mehldauがビッグバンドと共演するとあってはこれは聞きたいということで,早速入手である。HR Big Bandとはこのブログにも何度か登場したことがあるFrankfurt Radio Big Bandである。John BeasleyとのChick Corea集然り,クリポタことChris Potterを迎えた"Rituals"然りで,このバンドには意欲的な演奏が多いので,今回も期待可能と思った。

今回の演奏がどういう経緯で行われたのかはわからないが,今回はDarcy James ArgueがBrad Mehldauのオリジナルをアレンジして演奏するもので,公演はフランクフルトとハンブルクのたったの2回だけで,日本で聞くチャンスはほぼゼロだろう。また,高校時代を除いてBrad Mehdauがビッグバンドと共演したという記憶はないし,少なくとも公式音源は残っていないはずだ。せいぜいAnthony Wilsonとのノネットでの演奏ぐらいで,ビッグバンドとは言えるものではない。だからこそ聞きたいという欲求が増す訳だ。

決してブートレッグを礼賛する訳ではないが,このブートは音もまともで,おそらくは放送音源がソースだろうが,こういう演奏が素早いタイミングで聞けるのは実にありがたい。

選曲はかなり渋いと言ってもよく,Brad Mehldauのアルバムから満遍なく選ばれているが,選曲にBrad Mehldau本人が関わったかどうかはわからない。まぁ,Brad Mehldauのオリジナルがビッグバンドにフィットするかは少々疑問がなかった訳ではないが,これはかなりうまくできたアレンジだと思えた。豪快と言うよりは理知的だが,"Aquaman"なんかは十分にダイナミックなビッグバンド演奏にも合っている。Brad Mehldauのソロに加え,バンド・メンバーにもソロの機会を与えて,メンバーも優れたソロを聞かせて期待に応えている。このバンド,元々レベルが高いと感じさせる。

この演奏が公式化されることはないと思われるが,これはBrad Mehldauファンに限らず,聞いておいて損はしないブートレッグである。例のピアノ・コンチェルトよりは100倍楽しめると言っておこう(きっぱり)。しかし,Brad MehldauはMCをドイツ語でやってしまうのが凄いねぇ。

Recorded Live at HR-Sendeesaal, Frankufurt on March 6, 2026

Personnel: Brad Mehldau(p), Darcy James Argue(arr), HR Big Band(Frankfurt Radio Big Band)

2026年3月24日 (火)

Lisa Loeb@Blue Note東京参戦記。

Lisa-loeb

Blue Note東京の会員をやっていると,7回ライブを観ると,1回招待券がもらえるという特典があることはこのブログにも書いた。ただ,この招待券,期限が短いのと,使える公演の上限金額が決まっているので,チョイスは限定的になるのだが,今回,それを使って観に行ったのがLisa Loebのソロ・ライブである。

Lisa-loeb-at-bnt Lisa Loebと言えば,映画「リアリティ・バイツ」にメジャー・デビュー前の"Stay (I Missed You)"が使われて一気に知名度を上げ,その後Geffenからアルバムをリリースしたのがもう30年以上前である。私はそのアルバム"Tails"も買ったものの,その後彼女を追い掛けてきた訳ではない。しかし,魅力的なシンガーであることは間違いないが,日本のマーケットでニーズがまだあるのかなぁなんて思いつつの参戦となった。

それでもミュージック・マガジンの最新号にはインタビュー記事も掲載されているし,根強い人気があるのかなぁとも思っていた。会場となったBlue Note東京はほぼフルハウスだったが,何となくいつもの聴衆と感じが違うと思えたのはそうした根強いファンが結構多かっただろうし,いつもはこのヴェニューに来そうにない女性客が多かったのも事実だろう。

そして始まったライブだが,完全弾き語りというシンプルなセッティングなので,ステージも地味と言えば地味。だからステージ上に花を添えるのも当然かという感じではあったが,演奏が始まってしまえば,Lisa Loebの歌が上手いのはもちろんなのだが,ギターが実に上手い。ゲージは細い弦を使っていたと思うが,ギター・プレイに全く破綻がない。そして歌も実に見事という完全プロな演奏を堪能したのであった。曲はメジャー・デビュー・アルバム"Tails"と"A Simple Trick to Happiness"からが中心という感じだったが,大いに満足ができるライブだったと思う。

途中でゲストとして平原綾香が出てきたのには驚いたが,"Stay"と"Truthfully"をデュエットというのは,東京最終日のお得感ってところか。ちゃんとLAでリハーサルしていたらしいが,聴衆としては間違いなく得した気分である。私は実は秦基博が出てくることを期待していたのだが,まぁそれはよしとしよう。いずれにしても,平原綾香のショッキング・ピンクのドレスも印象的だった。

Lisa Loebはおしゃべり好きなので通訳を付けるのよというのが微笑ましかったが,Lisa Loebの英語は実に聞き取りやすいものであったから,通訳なしでもOKのレベル。しかし,出てきた丸山京子の通訳ぶりは極めて適切だったなぁと別の意味で感心していた。わかっている人の通訳は心地よいのだ。

いずれにしても,たまにはこういうライブもいいねぇとつくづく思わされるとともに,Lisa Loebというミュージシャンのレベルの高さを改めて感じた一夜であった。改めてデビュー・アルバム以外もちゃんと聞き直すかといういい動機付けにはなったことは間違いない。ただねぇ,折角リクエストに応えるならば,聴衆側ももう少しマイナーな曲をリクエストしてもよかったようにも思う。だったら私が"All the Young Dudes"って叫べばよかったんだが...。老い先短いんだから,こういう時に控えめな高齢者ではいかんな(爆)。

トップの写真はBlue Note東京のWebサイトから拝借(初日の模様)。

Live at Blue Note東京 on March 23, 2026 2ndセット

Personnel: Lisa Loab(vo, g), 平原綾香(vo)

2026年3月23日 (月)

Anita O'Dayはやはりいいのだ。

An-evening-with-anita-oday "An Evening with Anita O'Day" (Norgran→Verve)

ジャズ・ヴォーカルをあまり聞かない私が一番惹かれるヴォーカリストは誰かと思うと,実はAnita O’Dayではないか。もちろん彼女とて全部がいいと思っている訳ではないのだが,Verve時代のアルバムにはこういうのがいいよねぇと思わせる作品がある。本作なんかはそうした作品として捉えることが出来て,声もいいし,ジャズ的なフレイヴァーも好きなのだ。

本作は50年代中期の3つのセッションを集めたものだが,前半8曲は10インチで出ていたもので,最後の4曲がその翌年の55年のセッションからのもので,Anita O’Dayらしさがよく出たアルバムと言ってよいだろう。

ここに収めれらている歌唱はどれも魅力的だが,”From This Moment on"なんてTal Farlowのギターもあってぞくぞくするような出来だと思う。ほんの少しではあるが,55年の4曲の出来が54年の8曲より落ちる感じはあるのは惜しいが,星★★★★☆には相当すると思う。やっぱり好きなのだ。

Recorded on April 15, June 28, 1954 and on July 11, 1955

Personnel: Anita O’Day(vo), Arnold Ross(p), Bud Lavin(p), Jimmie Rowles(p), Barney Kessel(g), Tal Farlow(g), Monty Budwig(b), Leroy Vinnegar(b), Jackie Mills(ds), John Pole(ds), Larry Bunker (ds)

本作へのリンクはこちら。尚,本作を含む4作を収めた激安コンピレーションへのリンクはこちら。

2026年3月22日 (日)

今年最初の劇場での映画鑑賞となったのは「ブゴニア」。相変わらずブラックだ...。

Bugonia 「ブゴニア("Bugonia")」('25, 米/英/アイルランド/韓)

監督:Yorgos Lanthimos

出演:Emma Stone, Jesse Plemons, Aiden Delbis, Stavros Halkias, Alicia Silverstone

なかなかタイミングが合わず,ちっとも映画を劇場で見られていなかったのだが,ようやく3月も下旬になって今年初めての劇場通いとなったのがこの映画。クセのある映画を連発するYorgos Lanthimosのことだから,一筋縄で行くはずはないと思っていたが,これまた何ともブラックな映画であった。

もともとは韓国映画のリメイクというのも面白いが,相変わらずのJesse Plemonsのキレっぷりが凄い。段々この手の役専門になってしまうんではないかと余計な心配をしてしまうが,少々ファナティックな役を演じさせるとこの人はマジではまると思ってしまう。Emma Stoneは今回もよくやるわって感じで,この人の役者魂にはいつもながら感心させられてしまう。

しかし映画のタイトルにも意味が込められたこのストーリーは上述の通りブラックの極みであるが,「哀れなるものたち」や「憐みの3章」を見ていればまぁこういう感じになるのもうなずける。だが,逆に言えばこのブラックさは日本人の観客にはどうかなぁと思わせる部分もあるのも事実。私は全然気にならないとしても,エグい描写も多いしねぇ。一方,Yorgos Lanthimosの映画らしく,ラスト・シーンに向けてのセットは凝ったもので予算が使われているねぇと思わせるものであった。

そして珍しや久しぶりにビスタ・サイズの映画を見たように思える。正確なところはわからないが,ヨーロピアン・ビスタだったのではないかと思える。昨今の横長のスクリーンに慣れた目からすれば,逆に新鮮であった。また,エンディング近くに流れる「花はどこへ行った」を謳っていたのがMarlene Dietrichと知ってまた驚きである。この歌詞がストーリーと連動して,非常に深い感銘を残す。

映画としては十分楽しめるものではあるが,エンディング・ロールの読みにくさは困ったものであった。星★★★★。

いずれにしても,次の劇場通いは間を置かずにしたいものだ。余談だが,隣の女性客のApple Watchが上映中3回ぐらい光ったが,あれって結構まぶしいんだよなぁ。手で隠すとかそういう気配りのできる人間になって欲しいもんだ。あの無頓着さには辟易としていた高齢者の私である。

2026年3月21日 (土)

Steve Smith & Vital Information@Blue Note東京参戦記。

Steve-smith-japan_20260321065301

元Journeyのというのがもはや不要と思われるほど,完全にジャズ/フュージョン系の音楽にシフトしたSteve Smithである。私が前回Steve Smithのライブを観たのはもう13年前の2013年にまで遡る。前回はCotton Clubで見たが,その時の記事を見ると集客は相当悪かったようだ。しかし,今回のBlue Note東京での2ndセットはフルハウスということで,まずは集客がよくてよかったねぇと思った。

Steve-smith-bnt_20260321065301 前回観た時はギター入りのクァルテットで,キーボードには元SantanaのTom Costerがいたが,今回はキューバ出身のManuel ValeraにベースのJanek Gwizdalaを加えたトリオという最小編成。Manuel Valeraは初聞きのはずだが,Janek Gwizdalaは2009年のロンドン出張時にWayne Krantz入りのバンドで見たのが初で,その後,Peter Erskineのバンドでのライブも観ている(だがそれももう10年も前だ...)。

そんな編成でどのような演奏が展開されるのかを期待しつつ現地に向かった私だが,そもそもこのメンツで昨年"New Perspective"というアルバムをリリースしていたのを知り,慌ててそれを聞いて予習しての参戦となった。

演奏は最新作"New Perspective"とその前作"Time Flies"からの曲を中心にしつつ,YouTubeで公開されているSoundgardenの"Black Hole Sun"等を交えたもの。そして演奏はアルバムにもならったかたちでのSteve Smithのタイトなドラミングが支配的と言ってもよいもので,聞いてるこっちは勝手に身体が揺れるというグルーブ感に満ちたものであった。よくよく調べてみればこの編成になって結構時間が経過しており,コンビネーションもこなれた感じで,アイ・コンタクトを取りながら演奏を行うところにも,そうした感覚をおぼえていた。

いずれにしても非常にライブの心地よさを感じさせるもので,ついつい財布の紐も緩み,サイン会ねらいで"New Perspective"のアナログ盤も購入してしまったのであった。あぁ,無駄遣いと思いつつ,それぐらいいい気分だったと言えよう。

今回のステージでも演奏したYouTubeにアップされているJourneyの"Don’t Stop Believin'"の映像を貼り付けておこう。原曲のイメージは希薄で,イントロはStevie Wonderみたいだが(笑)。

Live at Blue Note東京 on March 19, 2026 2ndセット

Personnel: Steve Smith(ds, konnakol), Manuel Valera(key), Janek Gwizdala(b)

 

2026年3月20日 (金)

またも無駄遣い:Argerichのバッハをアナログで再入手。

Argerich-bach "Johann Sebastian Bach: Toccata, Partita, English Suite" Martha Argerich(Deutsche Grammophon)

主題の通りである。私は元々このアルバムをドイツ盤のアナログLPで保有していて,CDに買い替えた際に売ってしまっていたのだが,やはりドイツ盤のLPで聞きたいという欲求が年々増してきた。だが,オークション・サイトでも結構高値が付いていて,ほとんど諦めモードとなっていたのだが,某オークション・サイトに安値で出ていたのでビッドして入手したもの。しかし,このレコード,写真ではファクトリー・シールはついているものの,盤質についての記述がなかったので,半ばギャンブルのようなかたちでのビッドであった。まぁこれぐらいの値段ならギャンブル失敗でもいいやという価格で落札できたのだが,そのレコードが到着した。値段が吊り上げられたらどうしようとと実はひやひやものであったのだが...(笑)。

まぁ不安的中というか,到着したレコードはジャケの下部の糊付けがはがれ,レコードそのものも相当汚れが激しい。これは失敗だったかと思いながら,再生するとやはり結構ノイズが出る。そこで洗浄してみるかということでやってみたところ,マジで凄い汚れである。どうやったら盤面がこんなに汚れるのかと思えるぐらいの汚れっぷりだったのだが,洗浄後はその汚れはほぼ解消できた。ジャケは補修し,多少の傷みは少々あるものの,まぁ気にしなければOKというレベルだし,再生したところ,洗浄前のプチプチ・チリチリ・ノイズは気にならないぐらいにはなったのはよかった。

CDを保有しているんだからそっちを聞いていればいいだろうという指摘があって当然だが,このArgerichのポートレートはLPサイズの方が素敵に決まっているし,アナログで演奏を聞きたいという欲求に負けたのであった。演奏については何も言うことなし。文句なしの星★★★★★であることは言うまでもない。

Recorded in February 1979

Personnel: Martha Argerich(p)

本作(CD)へのリンクはこちら。

2026年3月19日 (木)

懐かしの82年の”The Young Lions”ライブ盤を入手。

Young-lions "The Young Lions: A Concert of New Music Played by Seventeen Exceptional Young Musicians - the Kool Jazz Festival June 30, 1982" Various Artists (Elektra/Musician)

長~いタイトルのアルバムである。昔,私はこのアルバムを保有していたようにも思うのだが,どうも記憶違いだったようにも思える。保有していたとしてもほとんど聞かずに売り払ってしまった可能性もあるが,改めてよくよくメンツを見ると聞きたいという思いが強くなってしまった。特に私にとってはHamiet Bluiettの名前をここに見つけたことが大きかった。しかし,本作はCD化されていないし,ストリーミングでも公開されていないので,アナログLPを某オークション・サイトでゲットしたもの。送料別だが,2枚組でディスクだけなら¥380だったので,痛くもかゆくもない(笑)。

この当時Young Lionsと呼ばれた面々の中には既に世を去った人もいるところに時の流れを感じるが,メンツの中ではWynton MarsalisやChico Freeman,あるいはBobby McFerrin辺りは既に名を知られた存在だったとしても,India Navigationに吹き込みをしているような所謂ロフト系の人たちにとって,カーネギー・ホールの舞台に立つことの意義は大きかったはずだ。ソロイストは入れ替わり立ち替わりという感じだが,そうした背景もあって,非常に力の入った演奏になっていて,結構意義深いイベントだったのだなと思わせる。

思い起こせば,私が在米中に開催されたKool Jazz Festivalの後継としての1991年のJVC Jazz Festivalにおいても,Jon FaddisやBobby Watsonを番頭格とした"Be-Bop: 40 & Under"という若手を中心とするプログラムがあって,大規模ジャズ・フェスにおいてもこうした新しいミュージシャン育成の試みは続いていたということが思い出される。それはそれで大いに楽しめた記憶があるものの,演奏としてはもう少しコンベンショナルなものだったので,この82年のコンサートは1991年のプログラムよりはるかに意欲的なものだったと感じられる。

こうしたコンサートのライブ盤が残っているだけでも,歴史を振り返るという観点では重要だと思えたアルバム。仕切ったMichael Gibbsの働きもよっく,ドキュメントとしての位置づけも評価して星★★★★☆

Recorded Live at Carnegie Hall on June 30, 1982

Personnel: Wynton Marsalis(tp), Bobby McFerrin(vo), Paquito D'Rivera(as), John Purcell(as, oboe, eng-horn, fl), Chico Freeman(ts, b-cl), Hamiet Bluiett(bs), Craig Harris(tb), James Newton(fl), Jay Hoggard(vib, balafon), Kevin Eubanks(g), John Blake(vln), Abdul Wadud(cello), Anthony Davis(p), Avery Sharpe(b), Fred Hopkins(b), Ronnie Burrage(ds), Daniel Ponce(perc)

2026年3月18日 (水)

Björn MeyerのECM第2作。これはやっぱりECMでしかできないな。

Bjorn-meyer "Convergence" Björn Meyer(ECM)

早いもので,Björn MeyerがECMでの第1作である"Provenance"をリリースしてから,もう10年近くの時間が経過している。もうそんなに経ったのかと時の流れに驚いてしまうのだが,Björn Meyerとしては「満を持して」というところかもしれない。

そもそも6弦エレクトリック・ベースでアルバムを一枚作ってしまえるのがECMたる所以とも言えるが,こうした音楽がどのような環境にフィットするかはなかなか難しい。ある意味アンビエントな響きを持ちながら,アルペジオによりメロディ・ラインを紡ぐ瞬間もあるとは言え,やはりこのアルバムを購入しようという人はある程度限定されるのは仕方ないと思える。

しかし,穏やかに音楽は流れていき,刺激的な部分は少ないにしてもなかなか面白い。6弦ベースでミニマル的な演奏を行ったり,アルペジオなどの奏法を展開するのは握力的にも相当大変なのではないかとも思ってしまうが,そこは多少シークェンサーの力も借りてってところだろう。更に多重録音を加えている部分もあるようだ。

前作でも同じようなことを書いているが,こういう音楽は小音量でプレイバックするのが適切のようにも思える。鑑賞にも堪えるが,どちらかと言えばやはりこれは環境音楽だと思う。まぁこれを面白いと思えるか思えないかがECMに対する絵踏みだろうな。甘いの承知で星★★★★。

Recorded in April 2024

Personnel: Björn Meyer(b)

本作へのリンクはこちら。

2026年3月17日 (火)

Gary Burtonの”Times Like These”:なぜかストリーミングで公開されていないので,今更ながら現物を購入。

_20260316_0001

"Times Like These" Gary Burton (GRP)

昨今はCDを購入しなくてもストリーミングで大概の音楽は聞けてしまうので,よほど所有欲求を高めてくれるようなアルバムでないと買わないというスタイルが定着してしまった私である。しかし,聞きたいと思っても,既に廃盤かつストリーミングで公開されていなかったらどうするのかと言えば,中古で現物ゲットを狙うしかない訳だ。これもそういう経緯で入手したアルバム。

本作はGary BurtonのGRPとの契約第1作で,安定のメンツが集められているので,何でこれがストリーミング公開されていないかは謎だが,何らかの契約的縛りがあるのかもしれない。Michael Breckerはゲストで2曲参加するだけだが,まぁそれぐらいがいいって感じだ。むしろ,本作では相性としてはどうなのかというジョンスコことJohn ScofieldとGary Burtonの共演ぶりが気になるところ。本作が初共演だったはずだが,その後,6人のギタリストと共演した"Six-Pack"やらConcordレーベルに残した"Departure"ってのもあったから,Gary Burtonとしては特に拒否感はなかったってことか。まぁ,そうは言ってもやっぱり相性としてはKurt RosenwinkelやJulian Lageのようなギターの方が合っているという感じだ。

そう感じるのはピアノが不在という編成の中で,ジョンスコの個性が強過ぎて,あたかもジョンスコのアルバムのように聞こえてしまう瞬間があるからだが,演奏の質そのものはGary Burtonだけに確保されているので楽しめるアルバムであることには間違いない。最後に収められたジョンスコ・オリジナルである"Do Tell"でジョンスコがギターを一番楚々とした感じで弾いているのは何とも面白いが。

Gary Burtonのアルバムにはずれはないが,本作で面白いのはその選曲でリーダーのオリジナルが1曲,小曽根真の曲が2曲,ジョンスコ2曲,Chick Coreaが1曲,Vince Mendozaが1曲,そしてJay Leonhartが1曲という構成。スタンダートや有名ジャズマン・オリジナルは一切なしなので,必然的に響きはコンテンポラリー感が強い。こういうアルバムはもう少し簡単に聞けるようにしておいた方がいいと思える佳作。星★★★★。

Personnel: Gary Burton(vib), John Scofield(g), Marc Johnson(b), Peter Erskine(ds), Michael Brecker(ts)

本作へのリンクはこちら。

2026年3月16日 (月)

暇つぶしに見た「西部悪人伝」:Lee Van Cleefをカッコよく見せればいいって感じ。

Sabata 「西部悪人伝 ("Sabata")」(’69,伊)

監督:Frank Kramer(Gianfranco Parolini)

出演:Lee Van Cleef, William Berger, Pedro Sanchez(Ignazio Spalla), Nick Jordan(Aldo Canti), Franco Ressell, Linda Veras

ストリーミングで見られる映画もいろいろで,これは典型的マカロニ・ウェスタンだが,主人公であるLee Van Cleef演じるSabataの造形には「用心棒」,「椿三十郎」で三船敏郎が演じた三十郎の影響が感じられる。しかし,この映画ではLee Van Cleef演じるSabataが危機に陥ることはないし,最初から最後までLee Van Cleefをカッコよく見せればいいという感覚が強い。

とにかくSabataが強過ぎるので,このストーリーには必要ないだろうというようなキャラクターも交えつつ,出てくる輩がLee Van Cleefにやっつけられ続けるという筋書きはもはや漫画的だ。こういうのは肩肘張らず,気楽に見るのが一番という感じの映画。まぁそれでも星★★☆がいいところだが,目くじらを立てるのも大人げないな(笑) 。

それにしても監督にしても,出演者にしても変名だらけなのには笑える。上記のクレジットではカッコ内が実名。まぁ,Pedoro Sanchezの場合は実名より変名の方が知られているようだが。飛んだり跳ねたりのアクロバティックなアクションを見せるIndio役のNick Jordan(Aldo Canti)は本業はスタントマンらしく,なるほどって感じだが,ほとんど演技にもなっていないところは笑えてしまった。

尚,このSabataを主人公とする映画は第1作である本作含めて3本あるようで,第2作が「大西部無頼列伝」,第3作が「西部決闘史」らしい。第2作ではSabataをYul Brinnerが演じ,第3作でLee Van Cleefが復帰するという不思議な展開を示すが,「荒野の七人」シリーズのChris Adams役(Yul Brinner×2→George Kennedy→Lee Van Cleef)みたいなもんだな。

本作のDVDへのリンクはこちら。

2026年3月15日 (日)

紆余曲折を経てようやく現物が到着した”Trio of Bloom”。やっぱりこれは最高だ。

_20260313_0001 "Trio of Bloom" Craig Taborn / Nels Cline / Marcus Gilmore(Pylocrastic)

私が昨年のベスト作の一枚に選んだ本作であるが,どこのショップに真っ当な価格でオーダーしても,ちっとも入ってこないということで,しびれを切らした私はBandcamp経由で現物を入手したのであった。思えば昨年本作を記事にしたのが11月だった訳だが,それから現物をゲットするまで随分長い時間が掛かってしまった。本作はストリーミングでも聞けるのだが,これはどうしても入手したいと思わせるものだっただけに本当にようやくという感じだ。

11月に記事にした時にも私は「様々な音楽的な要素のミクスチャーである。ファンク風味,ロック風味,サウンドスケープ風味と何でもあり」と書いた訳だが,そうした印象は現物で聞いても変わらないし,一部フリーなアプローチすら聞けることに気づく。しかし,冒頭のMarcus Gilmoreのドラムスを聞いた瞬間から,私が昨年下した評価は間違っていなかったと改めて思うようなスリルを感じさせる。

昨年の段階では詳しいクレジットがわかっていなかった(調べていなかったと言うべきか...)のだが,冒頭の"Night Whistlers"はRonald Shanon Jacksonの曲だったのねぇとか,メンバーのオリジナルに加えてTerje Rypdalの"Bend It"なんて曲も入っていたのねぇ。しかもよくよく見ればWayne Shorterの"Diana"もやっているのだが,そんなことには全然意識が行っていなかった私である。"Bend It"については昨年「執拗なベース・ラインは70年代Miles Davisを想起させる」なんて書いているが,それがTerje Rypdalの曲だと知って,今更ながらへぇ~となってしまったのであった。

しかし,そうした半端な聞き方をしていてもこれはいいと感覚的に思えたことは,還暦をとうに過ぎた私ではあるが,年寄りにしては我ながらいいセンスだと思ってしまった(爆)。改めて現物で聞き直して,やはりこれはクリエイティビティに溢れ,私の嗜好にもフィットしたナイスなアルバムであった。マジで聞けば聞くほど最高だと思いたくなる。送料込みで結構な金額になってしまったのは痛かったが,それでもこれは保有に値するアルバムなのだ(きっぱり)。

ご関心のある方は現物入手は結構面倒くさいので,まずはストリーミングでお聴き頂ければと思う。後悔させませんぜ(笑)。

Recorded on November 24-26, 2024

Personnel: Craig Taborn(key), Nels Cline(g, lap-steel, b), Marcus Gilmore(ds, perc)

本作へのリンクはこちら。ストリーミングへのリンクはこちら。

2026年3月14日 (土)

今年初のイタリア文化会館行脚(笑)。

20260312 イタリア文化会館は定期的に無料コンサートを開催してくれるので,時間が合えば応募して行くようにしていることはこのブログにも何度も書いている。そのコンサート・シリーズNo.28となる「取り戻された声」と題するイベントに出掛けてきた。会場はいつもながら私も含めて高齢者多数だが,私より上の層も相当多いのだ。あんまり音楽に興味のなさそうな聴衆がいるのもこの会場の特徴(笑)。

今回はCatello Coppola,Giuliano Di Maioという二人のフルート奏者に,ピアノのAniello Iaccarinoの3人によるコンサートであるが,CoppolaとIaccarinoはκαιρός(カイロス)という現代音楽系デュオで活動しているようだ。もう一人のDi MaioはCoppolaに師事しているということなので,弟子として帯同って感じか。

スタートはシューベルトの『「しぼめる花」による序奏と変奏 Op.160』だったのだが,フルートの音はでかくて,技量もあるのだが,ノン・ビブラート気味でやや表現が平板に感じられ,演奏としてはどうなのよと感じていた。私が気づいていなかっただけなのだが,実は2曲目までは弟子のGiuliano Di Maioがソリストだったことがわかり,なるほどと思ったのであった。Catello Coppolaは3曲目の細川俊夫の「リート」からの登場だったのだが,全然表現力が違うのだ。そもそも現代音楽好きの私としては,全プログラムの中でもこの「リート」が一番よかったと思っているクチだ。

私としてはもう少しハードな(笑)現代音楽的プログラムも入れて欲しかったところだが,選曲はプロコフィエフ等19世紀後半から20世紀半ばにかけてのプログラムが中心で,聞き易さ重視って感じだった。しかし,冒頭の2曲に比べれば,3曲目以降のプログラムはずっと楽しめるものだったと言ってよいだろう。休憩を挟んだ第2部ではフルート2本+ピアノでの演奏になったが,2本のアンサンブルになるとGiuliano Di Maioの生硬さはあまり感じなくなって,やっぱり最初は緊張していたのかとも思わせた。まぁ,まだまだ青いってところだ。

そしてアンコールは3曲。イタリア文化会館のサイトによれば,Ian Clarkeの"Maya"とNino Rotaの「5つの小品」から「パヴァーナ」と「おもちゃの兵隊」。最後はNino Rotaで締めるのがいかにもイタリア文化会館でのイベントってところだが,ここでのイベントは日頃耳にすることが出来ないプログラムを聞ける貴重な機会を与えてくれるものだと思っている。今年の次なるイベントを期待して待つことにしよう。

Live at イタリア文化会館 on March 12, 2026

Personnel: Catello Coppola(fl), Giuliano Di Maio(fl), Aniello Iaccarino(p)

2026年3月13日 (金)

Walter Smith IIIのピアノレス・トリオ盤をストリーミングで聞いた。

Twio-vol2 "Twio Vol.2" Walter Smith III (Blue Note)

Walter Smith IIIについてはこのブログにもリーダー作やら,参加作やら,他者のバンドでのライブやらで何度も記事にしているが,私に与える印象は決して悪くはないものの,決定的な訴求力には少々欠けるというのが正直なところ。しかし,今や堂々たるBlue Noteレーベル所属であるから,実力は認められているということだろう。

そんなWalter Smith IIIがピアノレス・トリオでリリースした第2作だが,Joshua RedmanやChristian McBrideをゲストで迎えた前作は聞いていない中でのストリーミング再生となった。今回はKendrick Scottは全面参加であるが,ベースはJoe SandersとゲストのRon Carterが分け合い,2曲だけだが,テナー・バトルの相手はBranford Marsalisが務めるという構成。筋金入りのRon Carter嫌いの私としては,全編Joe Sanders,あるいはゲストを入れるとしても前作に続いてChristian McBrideでいいじゃんと思いつつ聞いた。

演奏しているのはスタンダードにジャズマン・オリジナルを加えたコンベンショナルな曲目と言ってよいものだが,"Lawns"やら"Fall"やら"Isfahan"やらと魅力的なチョイスと言ってよい。Walter Smith IIIのソフトなトーンによるフレージングも聞きどころが多いと思わせ,トリオ編成でも全く問題を感じさせないのは立派。Brandfordとのバトルにおいても音色の違いを含め,個性の違いを出していて,一歩も引かないってところで,さすがバークリーで教鞭を執るだけのことはある。

そうした中で,半数の曲でベースを弾くRon Carterの音は,比較的抑制されたエンジニアリングにより,苦手な私でもそれほど苦にならないのはよかったが,やはりフレージングは好きになれないというのが正直なところであった。

それでもアルバム全体で言えば,決して悪くない出来だと思えるアルバム。星★★★★。

Personnel: Walter Smith III(ts), Joe Sanders(b), Kendrick Scott(ds) with Branford Marsalis(ts), Ron Carter(b)

2026年3月12日 (木)

Robert Plantの”Saving Grace”:渋さの極致。昨年聞いていればベスト作確実だった...。

_20260310_0001"Saving Grace" Robert Plant(Nonesuch)

このブログでもAlison Kraussとの2枚のアルバムは大絶賛だったにもかかわらず,このアルバムは今年になるまで聞けていなかった。しかし,主題の通り,昨年聞いていれば,昨年のベスト作の一枚に選出していたこと確実なアルバムであった。そう感じさせるほど,滋味溢れるアルバムであり,素晴らしい作品である。こんな作品を聞き逃していたのも私の審美眼の衰えか...。あるいはAlison Kraussとの共演作を突然変異と捉えていただけか(爆)。

一部アイリッシュの曲もあるものの,これはもはやアメリカーナの極致と言ってよいカヴァー・アルバムであるが,不勉強な私にとってはほとんど未知の曲ばかりである。面白いのはベース奏者の不在だが,Tony Kelseyのバリトン・ギターで代用しているということだろうか?しかし,そんなことが全く気にならないレベルで音楽が展開されていて,渋さだけでなく,ヘヴィさすら感じさせる演奏のレベルの高さ,そして提示される深みのある世界には心底参ってしまった。ストリーミングで聞いてこれは...と思っていたアルバムが,某サイトで結構な安値で売られていたので,即買いを決めた私であった。現物がデリバリーされたので改めて聞いているが,まじでこれはいいですわぁ。

もはやLed Zeppelinのという言い方も不要とすら感じさせるRobert Plantの傑作。星★★★★★。

Personnel: Robert Plant(vo, hca), Oli Jefferson(ds, perc, vo), Matt Worley(g, banjo, cuatro, vo), Tony KKesley(g, vo), Suzi Dian(vo, accor) with Barney Morse-Brown(cello)

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2026年3月11日 (水)

またもAlice Sara Ottが放つ超美的ピアノ音楽。

Johannson-piano-works "Jóhann Jóhannsson: Piano Works" Alice Sara Ott (Deutsche Grammophon)

John Fieldのノクターン集で,ピアノ音楽好きの心を鷲掴みにしたと言ってよいAlice Sara Ottの新作をストリーミングで聞いた。彼女が今回取り上げたのがアイスランド出身の作曲家,Jóhann Jóhannssonである。この人は映画音楽の作曲家として知られていて,Denis Villeneuve監督の諸作の音楽を担当しているほか,「博士と彼女のセオリー」等の作品も残している。

ここで演奏されるのはそうした映画音楽を含むピアノ曲集だが,一番長い曲でも5分に満たない30曲が収められたまさに短編集の趣。この音楽はクラシックにカテゴライズすることは難しいとして,私のブログのカテゴリーではどうすればいいのかもわからず,今回は便宜的にニューエイジ/映画とするが,どちらにしてもそんなカテゴリーは無用と思える美的な響きに満ちたアルバムだ。

この音楽を聞いていると雨だれの音に癒される感じすら感じてしまう。それはショパンの雨だれでもいいし,リアルな雨だれの音でもいい。そんな感じの音楽であった。私としては「ノクターン」の方が魅力的ではあったが,これはこれで仕事が捗るタイプの音楽(笑)。星★★★★☆。

Personnel: Alice Sara Ott(p)

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2026年3月10日 (火)

Chico Freemanの初リーダー作を久しぶりに聞く。

_20260307_0001 "Morning Prayer" Chico Freeman (WhyNot)

一時期のChico Freemanは次代を担うのではないかとさえ感じさせるアルバムを連発していた。70年代後半がその時期に当たるが,私が保有するChico Freemanのアルバムもその時期に集中している。そうは言っても基本的に私は後追いで聞いた訳だが,往時のジャズ喫茶ではよく掛かっていて,その当時からなかなか魅力的だと感じていたように思う。

そんなChico Freemanの初リーダー作が本作であるが,それが悠雅彦プロデュースの下,日本のWhynotレーベルで制作されたことは,当時の日本のレーベルの先見性を示すものと思う。しかもどう見ても売れそうになさそうなハイブラウなアルバムを制作し続けたというのも悠雅彦らしい。しかもここに参加しているロフト/フリー・ジャズ界の大御所と言ってもよいようなメンツを見れば,Chico Freemanというプレイヤーがいかほど期待を集めていたことを明確に示していると思える。そして,ここで聞かれる特にテナーのフレージングを聞けば,20代後半であったこの時点でその資質は明らかだったと思える。

なかなかディープなプレイヤーが揃っているだけに,かなりハードな演奏と言ってもよいが,特にアナログで言えばA面に収められた3曲は,ボリュームを上げて聞いているとついつい興奮してしまうって感じである。このアルバムの難点は盛り上がってきたところでフェードアウトしてしまう曲があることと,Ben Montgomeryなるドラマーのややドタドタした演奏ではあるが,クロスオーバー/フュージョン全盛の時代にこういう演奏をしていたということにこそ意義がある。

まぁ冒頭無音のような状態が続くタイトル・トラックがChico Freemanの本質を捉えているかと言えば,ちょっと違うようにも思えるが,それでも初リーダー作としては十分なクォリティのアルバムだったと言ってよいだろう。星★★★★。

余談ながら,かつてYoung Lionsの一人とも呼ばれたChico Freemanももはや76歳。よくよく見れば私と生まれ年は違うが誕生日が一緒であった。自分が歳を取るのも当然だ(爆)。

Recorded on September 8, 1976

Personnel: Chico Freeman(ts, ss, fl, pan-pipe, pec), Henry Threadgill(ss, bs, fl, perc), Muhal Richard Abrams(p), Cecil McBee(b, cello), Steve McCall(perc), Ben Montgomery(ds, perc), Douglas Ewart(b-fl, bamboo-fl, perc)

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2026年3月 9日 (月)

「暗殺者の家」:やっぱりこれも初見だった...。

The-man-who-knew-too-much-1934 「暗殺者の家("The Man Who Knew Too Much")」(’34,英)

監督:Alfred Hitchcock

出演:Leslie Banks, Edna Best, Peter Lorre, Frank Vosper, Hugh Wakefield, Nova Pilbeam

後にHitchcock自身が「知りすぎていた男」としてリメイクした元の作品がこの「暗殺者の家」である。この映画も見た気になっていたが,ストリーミングで見て,この映画も初見であったことに気づいた。結局私はイギリス時代のHitchcockの作品はほとんど見ていなかったということになる。しかし,前にも書いた通り,「映画術」を読んで見た気になっていただけであった。

それはさておき,「知りすぎていた男」とは細かい点に違いはあるが,かなりストーリーは近い部分がある。特にクライマックスのオーケストラ登場のシーンはカメラ・ワーク含めて,この2作には共通項があって,使われている音楽も2作とも同じ"Storm Clouds Cantata"で,思わずへぇ~となってしまった私であった。

The-man-who-knew-too-much-1934_alternate さすがに1934年の映画ということもあり,画像の粗さは仕方ないとしても,ストーリーとしてはリメイク同様相当に楽しめる。映画としては「知りすぎていた男」の方がよく出来たものではあるのだが,「暗殺者の家」にはPeter Lorreという悪役がいて,場をかっさらっている感が強い。"M"の演技も凄かったが,The性格俳優あるいはThe怪優としての本領発揮である。とにかく,この何を考えているのかわからない感を見ているだけでもこの映画は楽しめるとさえ言いたくなる。そのせいもあって,この映画のポスターの別バージョンではPeter Lorreこそ主役のようなビジュアルになっている。

冒頭のサンモリッツのシーンから,ラストの布石を打つシナリオもよく出来た映画だと思う。75分という尺でも大いに楽しんだ私である。「三十九夜」には及ばないかもしれないが,これは十分に星★★★★☆に値する。

本作のDVDへのリンクはこちら。ストリーミングへのリンクはこちら。

2026年3月 8日 (日)

クリポタの新譜への期待が高まる。

Alive-with-ghosts-today クリポタことChris Potterは現代最強のテナー・プレイヤーの一人と断言できると思うが,アルバムについても様々なフォーマットでクォリティの高いものを出してくる人である。エレクトリックあり,アコースティックありの中で,リスナーの求める音楽をデリバリーしてくれるから,新譜が出るとなれば期待するのが当たり前だ。

そして次なる新譜はEdition Recordsから"Alive with Ghosts Today"と題するアルバムで5/8リリース予定。Bill Frisellとの共演が注目だろうが,ドラムスにNate Smithが復帰していることにも期待したい。

このアルバム,2曲追加されたアナログ2枚組のデラックス・エディション(250組限定!)もあるので,私がそちらを発注したことは言うまでもない(きっぱり)。

とにかく早く聞きたいと思う今日この頃である。

2026年3月 7日 (土)

Pino Palladino & Blake Mills@Blue Note東京参戦記

Pino-and-blake-at-bnt-stage

ベースのPino PalladinoがBlake Millsと組んだアルバムは世の中でも高く評価されたが,その二人が来日するというのはなかなかないだろうということで,Blue Note東京に行ってきた。実のねらいはドラムスのChris Daveというのも私らしいが,予約しようにもネットがつながりにくいという久しぶりの状態の中での参戦は,完全フルハウスであった。

Pino-and-blake-at-bnt_20260307211501 Pino PalladinoとBlake Mills名義の2枚のアルバムで予習して,一体どういうライブになるのかという思いも抱えながらの参戦となった。正直言って彼らのアルバムはハードにドライブするという感じではないので,ライブ向きの音楽とは思えないのだが,こういうのを聞いてみるのも修行である(笑)。まぁ2枚目の"That Wasn't a Dream"にはビートのきいた曲もない訳ではないから,そういう感じでやるのかなぁなんて想像しながらの参戦となったが,そこでChris Daveがどのようなドラミングを聞かせるのか。彼らの1stアルバム"Notes with Attachements"にはそれこそ"Chris Dave"なんて曲もあるしねぇ。

そしてこのライブ,面白かったのはメンバー4人が全員着座のままの演奏で,ライブらしい動きはゼロ,しかもMCもゼロというのが実に珍しかった。まぁ音楽だけ聞いてろや!ってところなのかもしれないが,聴衆に媚びたところがないのは逆に面白いという感じでもあった。まぁちょっと極端かなと思ったのも事実だが...。

演奏自体はアルバムに即した感じもあったものの,ライブではアルバム以上にダイナミズムを感じさせる演奏だったのはよかった。それでもミニマル的とも言うべき演奏もあったのだが,ミニマルな曲調であろうと,ヴィヴィッドな曲調であろうと,スティック,マレット,ブラシを使い分けながら繰り出されるChris Daveの小技の数々に魅了されていたと言うべきだろう。

Chris-dave-drums-set そして言っておきたいのは,ステージ右側に鎮座していたこのバンドのリーダー2人だけならば,極めて地味な演奏になるところを,左側の2人であるChris DaveとSam Gendelによって色彩感を増していたところに,バンドとしてのバランス感をおぼえていたのであった。私としてはChris Daveはもちろんとして,Sam GendelのEWIとソプラノがなければ,このライブは全然面白くなかったのではないかとさえ思っていたのである。

そういう意味では,プロデューサーとしてのBlake Millsはわかった上でこういう演奏にしたんだろうと思いながら見ていた私であった。いずれにしても,聴衆は想像以上に老若男女(特におっさんが多かったのは意外だった)が集い,演奏も昨今のBlue Noteには珍しく久々に90分越えという大盤振る舞い的なライブで,終演後の聴衆の引けの遅さも印象的なライブであった。正直言って,これよりずっと高揚感を得られるライブはいくらでもあるとは思うが,これはこれで面白かった。そしてこれからライブに行かれる方には2ndの方をお勧めしたいが,既に公演は完全フルハウスのようだから,2ndを予約している人の方がラッキーだと思った方がいいだろう。

上の写真はBlue Note東京のサイトから拝借。

Live at Blue Note東京 on March 6, 2026, 2ndセット

Personnel: Pino Palladino(b, g), Blake Mills(g), Sam Gendel(ss, EWI), Chris Dave(ds)

2026年3月 6日 (金)

今更ながらこれには驚いた:Dizzy Gillespieの"Closer to the Source"。

Closer-to-the-source "Closer to the Source" Dizzy Gillespie(Electric Bird)

ストリーミングで"Marcus Miller: Session Musician"というプレイリストを聞いていたら,いきなりメロウなラッパが聞こえてきて,何じゃこれは?と思って確認したらこのアルバムであった。そう言えば,こういうのもあったなぁと思い出すが,本作はこれまで聞いたことはなかったと思う。あるいは聞いたとしてもジャズ喫茶で聞き流したぐらいか。しかし,何に驚いたかと言えば,ビバップの代表みたいなDizzy Gillespieが完全にフュージョンに同化していたということだ。

結局,上手い人は何でもできるんだなぁという感心の仕方しかできないが,批評家筋からはボロクソに言われたアルバムでも,イージー・リスニングだと思えば腹も立たんというところだ。もちろんジャズ・ファンからすれば,こんな音楽を誰もDizzy Gillespieに求めていないという言い方もできるだろう。しかし,Dizzy Gillespieの芸域の広さを感じざるをえないここでの吹きっぷりには私は驚いたという方が大きかった。

もちろん,ありきたりのフュージョンだという言い方もできる訳だが,さすがに大御所のアルバムだけあって,バックのミュージシャンも粒揃いなので,梯子を外されることはない。むしろ,ここまでやってくれれば潔いってところだろう。別にそう思えば私としては腹も立たないってことで,星★★★。まぁ,毒にも薬にもならないが(笑)。

Personnel: Dizzy Gillespie(tp), Sonny Fortune(as), Branford Marsalis(ts), Stevie Wonder(hca, synth), Barry Eastwood(key), Kenny Kirkland(key), Hiram Bullock(g), Marcus Miller(b, synth), Tom Barney(b), Buddy Williams(ds), Tony Cintron, Jr.(ds), Angel Rogers(vo)

本作へのリンクはこちら。

2026年3月 5日 (木)

Jeremy Peltの新作をストリーミングで聞く。タイトルに込めた意図ほどは激しくはないがいい出来だ。

Jeremy-pelt-our-community-will-not-be-er "Our Community Will Not Be Erased" Jeremy Pelt(HighNote)

毎年この季節になるとアルバムをリリースしているって感じのJeremy Peltであるが,今年も新作が届いたので早速聞いている。詳しいデータがないが,基本Jeremy Peltのワンホーン・クァルテットに,色彩付けとしてエレクトロニクス(シンセサイザー?)が加わるという感じのセッティングである。

アルバム・タイトルだけ見ていると,政治的なマニフェスト的なところも感じさせるのだが,出てくる音楽は主題の通り,それほど激しいものではなく,ある意味淡々と展開されるのだが,Jeremy Peltのラッパが非常に魅力的に響くアルバムとなった。少々ドラムスのLenny Whiteが叩き過ぎって気がしないでもないが,マニフェストを代弁しているとすれば,Lenny Whiteの方になってしまうのではないかと思わせるような叩きっぷりである。

私も以前ほどJeremy Peltの音楽をフォローしている訳ではないが,アルバムを出せば確実に一定以上のレベルを越えてくるので,信頼のおけるミュージシャンであることは間違いないが,今回のアルバムはトランぺッターとしてのJeremy Peltの魅力がよく表れているのではないかと思える作品で,このアルバムは近年のJeremy Peltのアルバムでも最も魅力的に響くと感じた。バラッド表現にせよ,バウンスする4ビート・ナンバーにせよ非常にいい感じのアルバムに仕上がった。ちょいと甘いと思いつつ,こういうのっていいねぇってことで星★★★★☆。

Personnel: Jeremy Pelt(tp), Orrin Evans(p), Buster Williams(b), Lenny White(ds), Lasse Corson(synth)

本作へのリンクはこちら。

おすすめはストリーミング・サイトにしてある。

2026年3月 4日 (水)

長年音楽を聞いてはいても,聞いたことのないアルバムなんていくらでもあるってことで,今日はPaul Simon。

There-goes-rhymin-simon "There Goes Rhymin' Simon" Paul Simon (Columbia)

主題の通りだ。私も還暦を過ぎて幾星霜,自分の小遣いでレコードを買い始めて50年以上になる。なので聞いてきた音楽はそこそこの量だと思うが,こんなアルバムも聞いたことなかったなんてのもいくらでもある。本作もそんな感じのものだが,このアルバムには笑える逸話がある。私が1983年に初めて海外に行った(実は飛行機に乗ったのもその時が初であった)のだが,最大の目的地はNYC訪問であった。

NYCには今だったら絶対泊まらないような安宿(爆)に5泊ぐらいしたと思うが,ジャズ・クラブやら美術館やらレコード・ショップ巡りやら観光地巡りやらをしていたのも懐かしい。但し,今にして思えば全然NYCの本質になんて触れたうちには入らず,私がNYCの真の本質に触れるのは,1990年に渡米して2年弱を現地で過ごすまで待たなければならない。

その1983年の初NYC訪問時,実はこのアルバムを現地のレコード・ショップで購入したのだが,ホテルに帰って開封して見たら,中に入っていたのが何とEarth Wind & Fireのレコードではないか。さすがアメリカ的品質管理!と思っていたが,ショップに交換に行ったら在庫なしであえなく返金となったのであった。それ以来私はこのアルバムには全然縁がなかったのであった(笑)。

その時から40年以上の時を経て,このアルバムをストリーミングで初めて通しで聞いた。元々世評の高いアルバムであるが,私の場合,Paul Simonと言えば,"Still Crazy after All These Years"に一点集中のため,全然聞けていなかったのであった。まぁS&Gで言えば,私は完全にArt Garfunkel派であり,ソングライターとしてのPaul Simonはちゃんと評価しつつも,ソロ作はベスト盤を除けば"Still Crazy"しか保有していないのだ。まぁこういう偏りは誰にでもあるとしても,こういうアルバムを今まで一度も聞いたことがなかったというのも我ながらいけていないと思ってしまう。

改めて聞いてみると,シングル・ヒットした"Kodachrome"なんて子供の頃,深夜放送でよく聞いたなぁなんて思ってしまうが,いろいろなスタイルの音楽が含まれていて,やはりよく出来たアルバムだったと今更ながら感じている。そしてやはりPaul Simonのギターは素晴らしいと思えたし,この人にはエレピによるバッキングが似合うところにNYC的なフレイヴァーを感じるのであった。自分としてはどうしても"Still Crazy"の方を好んでしまう部分もあるが,これも優れたアルバムであり,これまた私にとっては温故知新となったのであった。星★★★★☆。

参加メンバー多数なので,Personnelは省略。

本作へのリンクはこちら。

2026年3月 3日 (火)

ストリーミングでChris Cheekらによるライブ2部作を聞く。

Chris-cheek-et-al-at-jamboree

Chris Cheekに関しては,私はBrad Mehldauとの共演盤や,Seamus Blakeとの双頭作等を保有してはいるのだが,サックス・プレイヤーとしては今一つ個性が明確ではない部分があるように思っている。しかし,ストリーミング・サイトでなかなか魅力的なメンツによるアルバムが表示されたので聞いてみるかと思った私である。Chris CheekのほかがEthan Iverson,Ben Street,そしてJorge Rossyというのは私の関心を引くに十分であった。この4人がバルセロナのジャズ・クラブ,Jamboreeでのライブの模様を"Guilty","Lazy Afternoon"という2枚のアルバムとしてFresh Sound New Talentからリリースしていたことは今回聞くまで全く認識していなかった。

"Lazy Afternoon"はバラッド集という位置づけと考えてよいが,"Guilty"の方はバラッド集ではないものの,熱く燃え上がるって感じではないところは意外な感じもする。また,"Guilty"の"Autumn Leaves"に顕著だが,曲によってはオリジナルのメロディ・ラインが出てこないところには一筋縄では行かないと思わせる部分もある。まぁメンツはEthan Iversonだけがまだ20代で,そのほかが30代という年齢を考えれば,もう少し派手派手しくやってもよいと思えるが,この辺りはChris Cheekのソフトなテナーのトーンに合わせたってところか。

まぁ今まで聞いたこともなかったアルバムだったが,曲によっては編成を変えながら,発展途上だったと言ってもよい彼らが聞かせる演奏からは,その実力の高さは十分にうかがえる。アルバムとしての評価は星★★★☆~星★★★★ぐらいにしておこう。

Recorded Live at 'Jamboree Jazz Club' in Barcelona, March 24-24, 2000

Personnel: Chris Cheek(ts), Ethan Iverson(p), Ben Street(b), Jorge Rossy(ds)

これら2作へのリンクはこちらとこちら。

2026年3月 2日 (月)

"Sittin’ in":相当前に買ったまま放置されていたアルバム。

_20260213_0002 "Sittin’ in" Kenny Loggins with Jim Messina(Columbia→Mobile Fidelity)

主題の通り,これは随分前に購入していたものの,全然聞かないで放置していたアルバム。そもそも購入の動機がMobile Fidelityからのリリースだから,いざとなればそこそこの値段で売れるという邪な理由によるものだったはずだ。そもそも私はLoggins & Messinaのアルバムは今まで聞いたこともない。Kenny Logginsは"Footloose"とかがバカ売れした頃に聞いたとしても,アルバムを購入するまでは行っていない。Loggins & Messinaで記憶にあるのはラジオから流れてきた"My Music"ぐらいのものだ。なので,今回,このアルバムをプレイバックしたのが私にとっての彼らの初聞きみたいなものだ(爆)。

このアルバムはもともとKenny Logginsのソロ・アルバムとしての企画だったらしいが,そこにJim Messinaがプロデューサーとして関与して,曲を提供するだけでなく,演奏に加わることで,Kenny Loggins with Jim Messinaとなったようだから,実質的にはこれがLoggins & Messinaとしての1stらしいってことも今頃になって知る。そもそもこのアルバムで最も知られているのは"House at Pooh Corner(プー横丁の家)"だろうが,それだって聞いた記憶もなかったから,私にはほとんど縁のない人たちだったと思ってしまう。むしろ「プー横丁」と言えば京都のレコード・ショップを思い出してしまう私である(笑)。

しかし,改めてこのアルバムを聞いてみると,私の好む,より渋い音とは異なるが,ポップさも兼ね備えたなかなかの佳曲揃いで,これは売れただろうし,自分としてももっと早く聞いておけばよかったなぁなんて思ってしまう。キャリアとしてはJim Messinaの方が目立っていたはずだが,その後のポピュラリティという観点ではKenny Logginsが上回って行ったのは面白いが,いずれにしてもこの二人,歌手としても,ソングライターとしてもなかなか優れていたのは間違いない。

リリースから半世紀以上を経てのアルバム初体験であったが,いい温故知新になった。反省も込めて星★★★★☆。

Personnel: Kenny Loggins(vo, g, hca), Jim Messina(vo, g), Michale Omartian(key, steel-ds), Larry Sims(b, vo), Merel Bregante(ds, vo), Milt Holland(perc), John Clarke(sax, oboe, steel-ds), Lester A. Garth(sax, recorder, vln, steel-ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年3月 1日 (日)

あぁ,無駄遣いと思いつつ入手したJohn Coltraneのヘルシンキ・ライブ。

John-coltrane-in-finland "Live in Finland 1961・1962" John Coltrane(The Lost Recordings)

既にいろいろなところで公開されている1961年と62年のフィンランドにおけるJohn Coltraneのライブ音源だが,ストリーミングで聞けるものは音がいけていないという難点があった。そうした中,ブートまがいの音源としてCDでも入手可能なこの時の演奏の模様がLost Recordingsによってリストアされて,アナログ盤でリリースされたのだが,クリア・ヴァイナルのSapphire Edition(500部限定)と,ブラック・ヴァイナルの通常盤(4,000部限定)があり,私はとち狂ってバカ高い(マジで高かった...)前者を入手したのであった。因みにCDは3月にリリース予定になっている。

そのSapphire Editionであるが,品質問題が発生して,当初の発売日から一旦リリースが延期になったものがようやく先日デリバリーされた。ただでさえ高いものに関税まで掛けられて,こっちとしてはたまったものではない(苦笑)。まぁそれでもプレイバックしてみると,オリジナルのアナログ・テープから復元を謳うだけあって,ストリーミングされているものからの音質の改善は明らかだったからまぁ許す。

しかし,この値付けはどうなのよってぐらいのもので,これを無駄遣いと言わず何と言うというところだ。我ながらアホだと思うが,まぁいいや。演奏自体はこのメンツであるから,何の問題もなし。"Impressions"でのDolphyとそれに触発されたかのようなColtraneのキレっぷりが強烈。

Recorded Live on November 21, 1961 and November 20, 1962

Personnel: <1961>John Coltrane(ts, ss), Eric Dolphy(as, fl), McCoy Tyner(p), Reggie Workman(b), Elvin Jones(ds), <1962>John Coltrane(ts, ss), McCoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Elvin Jones(ds)

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