Melissa Aldanaによる美しくも渋いキューバ音楽に根差したバラッド・アルバム。
"Filin" Melissa Aldana(Blue Note)
昨今のジャズ・シーンにおいては女性ミュージシャンの活躍が目覚ましい。そんな中でMelissa Aldanaというチリ出身のテナー・サックス奏者については名前は認識していても,聞いたの初めてって感じであった。しかしブログを振り返ってみればTerri Lyne CarringtonやDennis Chambersのアルバムのクレジットにその名はあるものの,彼女のプレイぶりへの言及はない。それらのアルバムはMelissa AldanaがThelonious Monk Competitionで優勝してすぐぐらいのアルバムで,注目のプレイヤーとしての参加だったのかもしれない。
そんなMelissa Aldanaの新作が出たのでストリーミングで聞いてみた。タイトルの"Filin"とは1940年代後半〜1960年代にキューバで流行したジャズや歌謡音楽を融合させたボーカル音楽のようだが,魅力的なメロディ・ラインが感じられるのは昨今昭和歌謡への注目が改めて高まることと近しい部分があるかもしれない。そうした曲をバラッド・アルバムに仕立てるというのがこのアルバムのコンセプトだが,これが思った以上にいいアルバムに仕上がっている。これは自らプロデュースに当たった現Blue Noteの総帥,Don Wasの趣味のよさも表れているように思う。
全編に渡って甘さに流れないバラッドに仕立てるところは,まだまだ年齢的には中堅と言ってよいMelissa Aldanaの実力だろうが,今後の更なる成熟を期待させる演奏だ。さすがにDownBeat誌の批評家/読者投票でそれぞれテナー部門の6位に選出されるだけのことはある。それを支えたGonzalo Rubalcabaも趣味のようバッキングに徹しているところが成功要因だし,Melissa AldanaにFilinを演奏する示唆を与えたことは評価してよいように思う。また,2曲に客演するCécile McLorin Salvantの歌いっぷりもよく,ヴォーカル入りが2曲というのも適切に感じるものであった。
こういう音楽を聞いていると,心に潤いを与えてくれると思いたくなる点も評価して星★★★★☆。
Personnel: Melissa Aldana(ts), Gonzalo Rubalcaba(p), Peter Washington(b), Kush Abadey(ds), Cécile McLorin Salvant(vo)
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中年音楽狂さんにも評価が良くて・・・なんとなく喜んでいます
私の方へのリンク有り難うございました。
私は、TSものは実はあまり聴かないのですが、ゴンザロ・ルバルカバのピアノに惹かれて聴いたところでした。こうしたソフトなTSなら大歓迎です。もともと管楽器は人間的な機能から吹いて演ずるという事自身が自己に集中しやすい楽器と思いますが、小編成でもあまりにも自己世界に入ってどうも納得しないことが多い為、若干敬遠しがちなんですが、このアルバムでのTSなら十分納得して聴くことが出来ました。もともとの彼女のスタイルとは別物に聴けたのですが、こうした世界を持っていると言うことで、今後注目したいと思ってます。
私の方へもリンクさせていただきます。↓
https://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2026/03/post-f41c2e.html
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2026年3月 6日 (金) 09時23分
photofloyd(風呂井戸)さん,こんばんは。リンクありがとうございます。
>中年音楽狂さんにも評価が良くて・・・なんとなく喜んでいます
まぁこういうのはちゃんと評価したくなりました。こういう企画でアルバムを作ったDon Wasはやはり見る目が違うってところでしょうね。
>私は、TSものは実はあまり聴かないのですが、ゴンザロ・ルバルカバのピアノに惹かれて聴いたところでした。
そういう人も結構いると思います。私も多少はそういう感じですね。
>このアルバムでのTSなら十分納得して聴くことが出来ました。もともとの彼女のスタイルとは別物に聴けたのですが、こうした世界を持っていると言うことで、今後注目したいと思ってます。
はい。聞き逃さなくてよかったアルバムだと思います。いずれにしても大したサックス・プレイヤーだと思います。
投稿: 中年音楽狂 | 2026年3月 7日 (土) 00時05分