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2025年10月31日 (金)

ジャズ界注目のヴァイブ奏者,Patricia Brennanの新作を聞く。

Patricia-brennan "Of the Near and Far" Partricia Brennan(Pyroclastic)

今年の7月に「Patricia Brennanって誰だ?ってことで聞いたアルバム。」という記事をアップしたが,今年のDownBeat国際批評家投票でも高く評価された前作"Breaking Stretch"が実に刺激的だったので,リリースされたばかりの新作をストリーミングで聞いた。今回は前作と異なりホーンは不在なのだが,その代わりに弦楽クァルテットが加わっている。そしてその結果として出てきた音はまたも刺激的なものであった。

Bandcampのサイトに本人の説明があり,本作の7曲のうち5曲は星座の名称に由来しているが,星座の形状を五度圏(Circle of Fifth)に当てはめることでピッチ,コード,キーが設定されることで曲が生み出されているようだ。ということで,ある意味作曲の技法的には現代音楽的なアプローチ,あるいは図形譜的と言ってもよいかもしれないが,そうは言ってもきっちり書かれている部分もあるようなので,出てくる音楽には難解さはそれほど強くは感じられない。

ただ,決してコンベンショナルなジャズとは言えず,実験的な要素は強いし,作曲に当たってのインスピレーションはブラームス,ドビュッシー,ドヴォルザーク,ストラヴィンスキー,コープランドから,ケージ,シュトックハウゼン,ランスキー,更にはレディオヘッドやサウンドガーデンの名前が挙がっているから,複雑な音になりそうなことは推して知るべしだ。最後に収められた"When You Stare into the Abyss"に顕著だが,アンビエント的,あるいはサウンドスケープ的な部分もあって,実に面白い。

ということで,ともすれば頭でっかちだという指摘も受けそうな部分はあるものの,これだけ刺激的な音を出してくれれば,現代音楽に何の抵抗もない私にとっては歓迎すべきものであった。やはりこのPatricia Brennanというプレイヤーは侮れないし,注目に値する人だ。星★★★★☆。

Recorded on December 8 & 9, 2024

Personnel: Patricia Brennan(vib with electronics, marimba), Sylvie Courvoisier(p), Miles Okazaki(g), Kim Cass(b), John Hollenbeck(ds, perc), Arktureye(electronics), Modney(vln), Pala Garcia(vln), Kyle Armbrust(vla), Michael Nicolas(cello), Eli Greenhoe(cond)

媒体でもリリースされているようだが,本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年10月30日 (木)

Arooj Aftab@Billboard Live東京参戦記。

Arooj-aftab-at-billboard-live-2

私が昨年,一昨年とアルバムをその年のベスト作の一枚に選んだArooj Aftabの来日とあっては行かねばならんということで,先日のSonny Landrethに続いてBillboard Liveに行ってきた。Arooj Aftabについては,そのアルバムのクォリティは間違いないものの,日本におけるポピュラリティという観点では少々心配して会場に向かった。今回も私は当然のようにカジュアル・シートでの参戦であったが,音楽を聞くだけならカジュアルで十分なのだ。Blue NoteやらCotton Clubでは良席ねらいでそそくさと予約を入れる私だが,Billboard Liveではカジュアル・シートは一般予約開始時に対応しても,よほどのことがない限り,ほぼ真ん中の席は取れてしまうところもよい。今回もカジュアル・シートは客入りは少ないが,テーブル付きの席はSonny Landrethの時よりは入っているってところか。

このバンド,バックのベースは全編アコースティック・ベースであったり,メンバーに相応のソロ・スペースを与えるところはジャズ的な感覚も持ちつつ,ロック,ワールド・ミュージックを見事に融合した感じなのが面白かった。まさにこれが本当のフュージョンだ。バンドはトリオながら非常にタイトなバッキングぶりで応えていたが,何よりも魅力なのはArooj Aftab自身の声そのものだ。一方,ステージ上でほとんどサングラスをはずさなかったり,ステージ上の最小限とでも言うべき動きや一部自虐的とも思えるMCを見聞きしていると,相当シャイな人なのではないかと感じさせる部分もあって,エンタテインメント性とは一線を画する感じと言えばいいだろうか。換言すればギミック不要で音楽だけで勝負するという感覚だろう。

いずれにしても,極めてユニークな音楽と言ってもよいものであり,ある意味これまで聞いたことがないタイプとも言えて,非常に面白いと思えたライブであった。尚,上の写真はBillboard LiveのFBページから拝借。

Live at Billboard Live東京 on October 28, 2025, 2ndセット

Personnel: Arooj Aftab(vo), Gyan Riley(g), Zwelakhe Duma Bell le Pere(b), Engin Gunaydin(ds)

Arooj-aftab-at-billboard-live-3

2025年10月29日 (水)

追悼,Jack DeJohnette。

Jack-dejohnette

Jack DeJohnetteの訃報は突然であった。考えてみればJack DeJohnetteも83歳という年齢だったのだが,いつまでもシャープなドラミングを聞かせるイメージがあったので,年齢を感じさせない人であっただけに,この訃報は残念だ。ドラマーとしてだけでなく,ピアニストとしても優秀,リーダーとしても優秀というミュージシャンシップに溢れた人をジャズ界はまた失った。

New-direction-in-europe 追悼のために聞いていたのが,"New Directions in Europe"。冒頭のドラムス・ソロからJack DeJohnetteらしさが出たアルバムであった。Lester Bowieというひと癖もふた癖もあるミュージシャンさえ見事に使いこなすところは立派。また,Miles Davisとの通称「ロスト・クインテット」での演奏も忘れがたい。ブログにアップする記事とは別に,暫くはJack DeJohnetteが残した音源を聞き直すことにしたいと思う。

R.I.P.

2025年10月28日 (火)

Chick Corea生前最後のライブ・パフォーマンスが全曲公開された。

Forever-yours "Forever Yours: The Final Performance" Chick Corea(Candid)

9月末にご紹介したアルバムがストリーミングで全編公開されたので早速聞いてみた。国内では媒体も本国より早くリリースされるらしいのはCD天国,日本らしい。

それはさておき,本作はChick Coreaが亡くなる4か月前の演奏を収めたものだが,演奏そのものに死期を感じさせるところはない。しかしである。ここでのChick CoreaのMCは明らかに私が知るChick Coreaの喋りとは異なる。このライブがコロナ禍真っ只中で世界的にコンサートが制限される中での開催だったらしいので,もしかするとマスクをしながらのMCだったのかとさえ思わせるほど,声に覇気がなく,のどが枯れたように聞こえるのだ。それはこの演奏を生前最後の演奏と知るゆえか...。

もしChick Coreaが存命であれば,この音源のリリースを許可したかどうかは微妙だが, 演奏そのものも絶好調とは言えない感じがするので,これはあくまでもChick Coreaのレガシーとして聞くべきものであって,評価を越えた存在だと考えることにしたい。しかし,Chick Coreaが弾く"Overjoyed"はやはり趣があるし,終盤に"Children's Song"から6曲演奏するが,#19ってこんなに現代音楽的だったかなぁなんて感じながら聞いていた。改めてあまり聞かない"Children's Song"アルバムそのものを聞いてみようという気にさせるところがChick Coreaだと言っておきたい。

Recorded Live at Ruth Eckerd Hall on October 23 & 24, 2020

Personnel: Chick Corea(p)

本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年10月27日 (月)

またも見ました白黒映画:「彼奴は顔役だ!」って凄いタイトルだねぇ。

Roaring-twenties 「彼奴(きゃつ)は顔役だ!("The Roaring Twenties")」(’39,米,Warner Brothers)

監督:Raoul Walsh

出演:James Cagney, Pricilla Lane, Hamphrey Bogart, Gradys George, Jeffrey Lynn, Frank McHugh

1939年に本国では公開されたこの映画,日本での公開は1955年までずれ込んだ往年のギャング映画である。それにしても凄い邦題だが,「彼奴」なんてのはもはや死語と言っていいだろうなぁ。舞台は第一次大戦の終戦から1920年代の禁酒法時代,そして大恐慌といった時代を描くがゆえの原題の"The Roaring Twenties"である。この20年代の時代の流れとともに,James Cagney演じるEddie Bartlettの運命も翻弄され,大きな浮沈を経験することになるというところだ。

私はこれまでJames Cagneyの映画を見た記憶はほとんどないのだが,決して美男という感じでは全くないから,ギャング映画を中心とするキャスティングだったのにもうなずける話だ。片や相手役のPricilla Laneは普通のアメリカのおねぇちゃんって感じで,劇中で歌も披露するものの,印象が強くないのが難点。Hamphrey Bogartは助演扱いだが,後のカッコよさの片鱗を示す。

この映画,典型的なギャング映画という感じだが,サスペンスを盛り上げるというのでもないので,私の好みからは少々外れるというのが実感だが,それでも古い映画の割に,ストリーミングでも画質は十分見られるレベルだったのは嬉しい。いずれにしても,禁酒法という訳のわからない法律がいかにばかげたものであるかを感じるとともに,結局それがギャングの金づるになっていたことを明確に示すところも時代を感じさせる。同時代感ゼロなので,評価すること自体が難しい部分もあるが,これはこれで十分見られる映画だし,劇中で流れる音楽もなかなか魅力的。星★★★★。この手の映画における古典という位置づけでよいと思う。

本作のDVDへのリンクはこちら。ストリーミングへのリンクはこちら

2025年10月26日 (日)

ひえ~,12弦ギターでもPat Martino節炸裂。

Pat-martino-desperado "Desperado" Pat Martino(Prestige)

このアルバムを初めてストリーミングで聞いた。全然意識していなかったアルバムなのだが,ここでPat Martinoが弾いているのが12弦ギターなのだが,12弦だろうが何だろうが,出てくるのがPat Martino節,そしてPat Maritnoの音ってのが凄い。おそらく太いゲージを使っていると思われるが,それでこのフレージングってどういう握力をしているのよ?と思わざるを得ない。

メンツは後の"Consciousness"と同じなので,この頃のレギュラー・コンボってところだろうが,演奏では冒頭のオリジナル曲"Blackjack"が若干フリーっぽさを感じさせたり,ブルーズ・フレイヴァー溢れる"Dearborn Wark",そしてタイトル・トラックでは後の"Joyous Lake"につながりそうなコンテンポラリーな感覚が出ていて面白いと思った。"Portrait of Diana"を除けば,鬼のようにスピーディなPat Martino節が聞ける曲が並んでいて,やっぱりこれには興奮させられると思うのが人情だ。でもやっぱり"Oleo"が一番魅力的かなぁなんて思ってしまうのも事実だが,それでも70年代のPat Martinoのアルバム同様,興奮必至。星★★★★☆。この演奏が12弦でっせ。マジで凄いわ。

尚,クレジットにはEric Klossが"Blackjack"にソプラノ・サックスで参加とあるのだが,私の耳には全然ソプラノが聞こえてこない。やっぱり難聴か?(爆)

Recorded on March 9, 1970

Personnel: Pat Martino(g), Eddie Green(el-p), Tyrone Brown(b), Sherman Ferguson(ds), Eric Kloss(ss)

本作へのリンクはこちら

2025年10月25日 (土)

超ハイ・テンション:「ハウス・オブ・ダイナマイト」に痺れた。

A-house-of-dynamite 「ハウス・オブ・ダイナマイト("A House of Dynamite")」('25,米,Netflix)

監督:Kathryn Bigelow

出演:Idris Elba, Rebecca Ferguson, Gabriel Basso, Jared Harris, Tracy Letts, Moses Ingram, Jason Clarke

いやいや,凄い映画を見ちゃったなぁって感じだ。Kathryn Bigelowと言えば,「ハート・ロッカー」,「ゼロ・ダーク・サーティ」の2作のテンションが記憶に残るが,同じような緊張感に満ちた映画であった。もはやこの人のキャラだと思わざるをえないが,こういう映画は多分メジャーでは作れないだろうし,Netflixで作られるところに時代の流れを感じるのは私だけではないだろう。その本作は現在劇場でも公開されているが,Netflixで見たのであった。

ストーリーが3部構成みたいなかたちで時間軸をずらして展開されるのは,Christopher Nolanの「ダンケルク」に近いものを感じていたが,まさに群像劇のようなかたちでストーリーが描かれ,そして最後は...で終わらせるシナリオは上手いなぁと思ってしまった。このエンディングについては詳しくは書かないとしても,見る人によって解釈が分かれるところだと思うのだが,そこは見た人が各々が判断すればいい話だ。私はこういうのはありだということで,完全肯定派だ。

この映画で提示されるレベルのテンションは「アメリカン・スナイパー」以来かもなぁなんて思いながら見ていたが,約2時間,一瞬たりとも緩まないので,見ていて疲れるのは事実だ。しかし,これぐらいのリアリティを以て描かれれば何の文句もない。明日,同じ事象が発生しても不思議ではない一触即発の世界を描いたのが素晴らしいと思うが,軍関係者が「好戦的」に描かれるところにはむかつくって人もいるかもしれない。しかし,大体の場合,そういう風に描かれるのが軍関係者の宿命なのだ。

いずれにしても,いろいろな登場人物が苦悩しまくる感じで,見ていて辛くなる部分もあるが,これは私が今年見た映画の中でも高く評価したくなる一本であった。星★★★★☆。まぁ,このテンションは本来映画館で見るべきだったなぁと思うのも事実。やっぱり映画は映画館がいいと思う。

2025年10月24日 (金)

これも知らなかった!Dave Liebmanのスタンダード・バラッド集。Ben Monderが効いている!

Trust-and-honesty "Trust and Honesty" Dave Liebman (Newvelle)

ストリーミングを利用していると,特定のアルバムを聞いた後,似たような音楽のランダム再生が行われることで,全く知らなかった音楽に出会う機会が結構あると思っている。このアルバムがどんな音楽から連携してきたかは覚えていないが,これがDave Liebmanとしては珍しい編成にして,こういう音楽もやるのかと思わせるものであった。

このアルバムは基本的によく知られたスタンダード・ナンバーをバラッド・テイストで演奏しているのだが,通常ははるかにハイブラウな音楽をやると思わせるDave Liebmanにしては珍しいなぁと感じさせるのだが,実はこれが味わい深いアルバムなのだ。冒頭の"Designs"こそLiebmanのオリジナルらしいが,それ以外は誰もが知る曲なのだ。もちろん,Dave Liebmanだけに時折,鋭いフレージングも交えてくるが,それも控えめというところが実感だ。それをよしとするか否かが評価の分かれ目というところだろうが,私には十分ありだと思えた。

このアルバムのサウンド上,重要なのはBen Monderらしい浮遊感のあるギターだと思うが,そこに加わるJohn Hébertのベースも控えめながらいい音で捉えらえていて,好印象なのだ。そして基本はトリオ演奏の中,"Blue in Green"のみLiebmanのソプラノ・ソロで演じられる。このアルバムのストリーミング版には,その代わりにと言ってよいのかどうかわからないが,Ben Monderのソロによる"Time Remembered"とJohn Hébertのソロによる"Blind Pig"が追加されているところに,三者対等感を打ち出そうとするかのようなDave Liebmanの気配りを感じるのは私だけだろうか。

そして,最後はJobimの"Zingaro"で締めるが,ここでのみLiebmanはイントロで木製フルートを吹き,Ben Monderは12弦ギターで対応して,異なった雰囲気を作っているが,Ben Monderの12弦はもう1曲ぐらいあってもよかったように思える。それでもこのアルバムは傾聴に値するバラッド・アルバムだと思えることは間違いない。星★★★★。尚,本作はアナログ盤でもリリースされていて,レーベルのサイトから購入できるようだ(Trust and Honesty by Dave Liebman – Newvelle Records)。送料を考えると相当の出費覚悟の方は是非。

Recorded on February 12, 2022

Personnel: Dave Liebman(ss, wooden-fl), Ben Monder(g), John Hébert(b)

本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年10月23日 (木)

Boz Scaggsの新譜,"Detour"は渋いジャズ・ヴォーカル作。

Detour "Detour" Boz Scaggs (Concord)

傘寿を過ぎたBoz Scaggsは今なおライブで元気な声を聞かせており,昨年2月の日本公演でもまだまだ現役感たっぷりだったのは凄いが,7年ぶりのアルバムは渋いジャズ・ヴォーカル作で来た。これまでも同系列の"Speak Low"や"But Beautiful"をリリースしているから,この路線は驚かないが,基本的にピアノ・トリオをバックにしたこのアルバムはスローな曲を中心とした実に渋くも味わい深いアルバムとなった。

このアルバムを紹介した記事によれば,Boz Scaggsにとってはこれまでも歌ってきた曲という訳ではなく,"Angel Eyes"は初めて歌ったのだそうだ。それにしてはこのフィット感は何?と言いたくなるぐらいのフィット感なのだ。"Angel Eyes"やBill Evansでお馴染みの"Detour Ahead",あるいは"The Meaning of the Blues"のような曲を聞いていると,インティメイトなジャズ・クラブでこれらの曲を歌うBoz Scaggsの姿を目撃したいという衝動に駆られる。また,Duane Allmanとのセルフ・タイトル作にも入っていた"I'll Be Long Gone"の再演でのヴォーカルの違いを感じるのも一興だろう。尚,国内盤にはボートラで"Body and Soul"も入るらしいが,ストリーミングでは公開されていない。

Boz Scaggsの年齢を考えれば,この路線も十分にあると思うが,ライブではバリバリのヴォーカルとギターを聞かせていたから,今後はライブでこうした曲のセットを組み込むというかたちなのかもしれないとしても,こうした編成で一度来日してくれてもいいかなぁなんて思えるアルバムであった。それが日本で受けるかどうかは別だが,私はそれもありだと思えるほどの味わいなのだ。きっとうまい酒が飲めると思える歌いっぷり。星★★★★。参加メンバーの詳細はわからないが,ネット情報を信じれば下記の通り。

Personnel: Boz Scaggs(vo), Seth Asarnow(p, arr), Hans Trowsea(b), Jason Lewis(ds), Jim Cox(p, synth), Jeremy Cohen(vln, vla), Michael Miller(g), Ashra Weston(g)

本作へのリンクはこちら

2025年10月22日 (水)

Sonny Landreth@Billboard Live東京参戦記

Sonny-landreth-at-blt

私はSonny Landrethというギタリストを昔から買っている。特に人のバックでこの人が聞かせるギターは実に魅力的だ。逆に言えば,リーダー作はイマイチ感があることも否定はしないが,音楽界における究極のバイプレイヤーと言ってもよいかもしれない。

Sonny-landreth-at-blt-on-stage そんなSonny Landrethがソロで来日するとあっては,どうしてもその技が見てみたいということで,Billboard Live東京に駆けつけた私である。会場に到着すると,どう見ても聴衆が少ない。アリーナはそこそこいるようだが,2階以上の客席は空席が目立つ。いつもなら音楽好きが集まるカジュアル・シートも今回ばかりは3割も埋まっていないって感じなのだ。しかし,Sonny Landrethはそんなことも一切関係ないプレイぶりで,これって実にもったいないと思わせるような演奏を聞かせた約80分であった。

まず何が凄いかって,Sonny Landrethがスライドで繰り出す技の数々である。思わず「技のデパートじゃん...」と独り言ちてしまった私であったが,こうやって弾いているのかぁなんて,最上階のカジュアル・シートからビデオをズームしながら見ていた私である(今回は開演前に撮影OKのアナウンスがあった)。そして,ギター1本(使用したのはストラト2本だが...)の弾き語りにもかかわらず,これほどロックを感じさせてくれるとは...と思っていた私である。今年74歳になったとは思えないプレイぶり,歌いっぷりには驚かされるとともに,所作も若々しいのだ。

_20251021_0001 サイン会があるのはわかっていたのだが,値段がバカ高いと思いつつ,Sonny Landrethのサインをゲットするとともに,話す機会なんてもうあるかどうかわからないから,無駄遣いと思いつつ,今のところ最新のスタジオ盤である"Blacktop Run"をゲットしてきたのであった。財布の紐も緩むぐらいの満足感の高いライブであったことの証だ。Sonny Landrethが素晴らしいギタリストであることはこれまでも理解していたつもりだが,生で観てその思いがますます強くなってしまった。同じスライドということで,ついついDerek Trucksと比較していた私だが,フレージングはさておき,スライドの技の多彩さはSonny Landrethに軍配が上がるかなぁなんて漠然と思っていた。

演奏の模様の映像の一部を貼り付けておくが,ご覧になれば私の思いもご理解頂けると思う。是非画面を拡大して見て頂きたい。尚,一番上の写真はBillboard LiveのFBから拝借したもの。

Live at Billboard Live東京 on October 20, 2025

Personnel: Sonny Landreth(vo, g)

2025年10月21日 (火)

Rachael Yamagataの新作の現物が到着。

Starlit-alchemy_20251018172501 "Starlit Alchemy" Rachael Yamagata(Julian)

私の長年の「推し」であるRachael Yamagataの新作がリリースされるという記事は8月にアップしていたが,本国から飛ばした現物がようやく到着である。私はこの人の声や,曲の質の高さに強い魅力を感じているのだが,新作としてのフル・アルバムは"Tightrope Walker"以来9年ぶりというのはあまりにも長いインターバルだったと思わざるをえない。正直言って,一時期はクラウド・ファンディングでアルバムをリリースしたりしていたRachael Yamagataだが,彼女がやっている音楽は現代においてはそう多くは売れないとしても,優れたシンガー・ソングライターであることは改めて強く主張しておきたい。

内省的あるいはマイナー・キーにおける曲調において発揮される彼女の魅力は本作においても全く変わらないと思えるし,やはりいい曲を書くと感じる。ただ,一点違和感があるとすれば,"Carnival"に聞かれる仰々しいアレンジメントだろうか。映画音楽の主題歌みたいなノリだと思えてしまって,どうもこの曲は私には居心地が悪かった。そのほかの曲におけるストリングスの使い方に問題を感じないだけに,この曲の異色さが際立ってしまったように思えるのは残念。しかし,それ以外はRacheal Yamagataらしい曲,歌が並んでいると言ってよいので,ファンは必携。聞いたことがない人にも是非聞いて頂きたい。星★★★★☆。

私は「推し」だけに彼女の活動を支えるべく,LPとCDのバンドルを購入したが,基本はCDだけでもよいと思う。

Personnel: Rachael Yamagata(vo, p, thumb-p, ds, perc), Michael Chaves(key, g, b), John Alagia(key, synth, b, vo), Jeff Lipstein(key, synth, ds), Brandon Morrison(b),  Zac Rae(b), Pete Hanlon(b), Jesse Siebenberg(ds, b), Jay Bellrose(ds), Josh Dion(ds), Zach Djanikian(ds), Jeff Hill(ds), John Reilly(ds), Kristi Lee(vo), Chris Sovich(vo), Jordan Allen(vo), Jasper Pearson(vo), Donna Stride(vo), Oli Kraus(strings), Zevi Sun(vln), Lana Auerback(vln), Eelena Kawazu(vln), Nayong Kim(vln), Sydney Link(vla), Michael Halbrook(vla), Amelia Smerz(cello), Sam Boudy(cello)

本作へのリンクはこちら。ストリーミングへのリンクはこちら

2025年10月20日 (月)

見たかった「ブラックバッグ」をようやく劇場で見た。

Black-bag「ブラックバッグ("Black Bag")」(’25,米,Universal)

監督:Steven Soderburgh

出演:Michale Fassbender, Cate Blanchet, Tom Burke, Regé-Jean Page, Marisa Abela, Naomie Harris, Pearce Brosnan

私が高く評価するSteven Soderburghの新作であり,本国の批評家筋からも期待値の高かった映画なので,できるだけ早く劇場で見たかったのだが,なかなかスケジュールが合わずに見損なっていたこの映画をようやく見られた。休日の8:45からという時間にしては結構客入りがよく,へぇ~と思っていたが,Soderburghの演出でこの役者陣であれば,期待する人も多いことの裏返しということにしよう。

それにしてもSoderburghの前作「プレゼンス 存在」とは全く違ったテイストの映画であったが,諜報機関のスパイのだまし合い,心理戦みたいなところがあるので,謎に満ちたストーリーあるいは展開を追うのはなかなか大変だと感じる部分はあるものの,主役のMichale FassbenderとCate Blanchet,そしてそれを支える共演者とのアンサンブルもよく,私は大いに楽しんだ。そしてこの映画が出色だと思ったのが1時間34分という尺でこのストーリーを描いたことだと思う。昨今,やたらに長い時間の映画が増えているが,集中力を維持しながら,こういう複雑なストーリーを見るにはこれぐらいの尺が適切だということをSteven Soderburghはわかって作っていると思える。

私はこの映画の受けあるいは評価が今一つ日本で悪いのは,このプロットの複雑性ゆえだと思うが,だまし合いの話なので,それはそれで仕方あるまい。私は大いに楽しませてもらったので星★★★★☆。

2025年10月19日 (日)

またも見ました白黒映画:今回は「潜行者」。Lauren Bacallが綺麗だねぇ。

Dark-passage

「潜行者("Dark Passage")」(’47,米,Warner Brothers)

監督:Delmar Daves

出演:Hamphrey Bogart, Lauren Bacall, Bruce Bennett, Agnes Moorehead, Tom D'Andrea

暇さえあれば,古き佳き時代の白黒映画を見る生活から抜けられない私だが,今回見たのがHamphrey BogartとLauren Bacallの夫婦共演作である「潜行者」であった。この映画,なかなか面白い作りをしていて,ボギーことHamphrey Bogartが自身の顔を見せるのは後半になってからで,前半はボギー演じるVincent Parryの視点で描かれるので,ボギーは声だけで役割を果たす。まぁこれは脱獄囚であるVincent Parryが映画の途中で整形を施すからなのだが,いつになったらボギーは出てくるのかと感じてしまう。その分,Lauren Bacallの出番が多く,そして彼女が実に綺麗に撮られている。

詳しく書くとネタバレになるので筋書きは控えるが,お話には少々無理があるものの,これは上記の演出も含めて結構見られる映画だと思った。私がストーリー同様に楽しんだのが,舞台となる往時のサンフランシスコの風景で,変わったところもあれば,変わらないところもあって,へぇ~と思ってしまう。ユニオン・スクエアあたりはもちろん建物自体は変わっているものの,雰囲気的にはあまり変わってないようにも思えた。劇中でボギーが坂の多いサンフランシスコを8km歩いて,へとへとになる描写には思わず「わかる~」と笑みが洩れた私であった。歩いて移動する街ではないからねぇ。

主役の二人はいいに決まっているが,この映画で一番印象に残るのは,実はAgnes Mooreheadではないかと思える。後に「奥さまは魔女」でサマンサの母親を演じることになる彼女が,全く印象の異なる「マジで嫌な女(笑)」を演じる演技っぷりで,さすがオスカーに4度ノミネートされるだけのことはあると思ってしまった。また,脇役で出てくる役者陣もなかなかよい上に,音楽も印象的で,こういう映画は好きだなぁとつくづく思ってしまった。星★★★★。

 この映画のストリーミングへのリンクはこちら

2025年10月18日 (土)

完全にノーマークだったが,Paula Santoroのアルバムが2023年にリリースされていたようだ。

Paula-santoro "Sumaúm" Paula Santoro (Pomar)

2012年にリリースした"Mar Do Meu Mundo"があまりに素晴らしく,私のPaula Santoroという人への注目度は一気に上がったのだが,その後Duo Tauficとの"Tudo Sera Como Antes"をこのブログにアップしたのが2019年2月のことであった。その後,彼女の動静をチェックしていた訳ではなかったのだが,気まぐれでストリーミングで検索したら,カラフルで素敵なジャケが目に入った。よくよく調べてみると,2023年にリリースされていたようだが,見る限りは媒体でのリリースはなく,ストリーミングのみのようだ。

そして,早速このアルバムを聞いてみたのだが,冒頭の"Yê Melê"からして気持ちよさの極致だ。これぞMPBってところである。このアルバム,Web上で掘り起こした(笑)クレジットを眺めてみると,Toninho Horta,João Bosco,João Donatoなど結構豪華なゲスト陣を迎えており,全編を通じて心地よいブラジル音楽が楽しめる。驚いたのが2021年6月に亡くなったRaul de Souzaのソロが聞けることだが,存命中にレコーディングしていたということなのだろうが,いずれにしても長期に渡って取り組んだアルバムということなのかもしれない。

正直言って,全部がいいかと言われると"Mar Do Meu Mundo"ほどではないとも思えるが,それでも十分に楽しめるアルバムではある。私にとってPaula Santoroの声そのものに加え,適切なバッキング,特にRhodesの音が魅力的で心地よいのがたまらないのだ。星★★★★☆。とにもかくにも存在に気づいただけでもよかったと思えるアルバム。YouTubeにアルバムの最後に収められた"Coisa mais maior de grande"が公開されているので貼り付けておこう。

Personnel: Paula Santoro(vo, tambourine, clap), João Bosco(vo), João Donato(vo, p), Rafael Vernet(p, key, org, synth), Arthur Verocai(g, vo), Toninho Horta(g), Guto Wirtti(b), Luiz Alves(b), Frederico Heliodoro(b), Ivan Conti "Mamão"(ds), Rafael Barata(ds), Marcelo Costa(ds, perc), Armando Marçal(perc), Marco Lobo(perc), Maurício Tizumba(perc, vo), Felipe Continentino(box), Paulo Guimarães(fl), Ricardo Pontes(fl), José Arimatea(fl-h), Raul de Souza(tb), Cláudia Assunção(vo), Ernani Maletta(vo), Francesca Della Mônica(vo), Gui Hargreaves(vo), Marcinho Sant’Anna(vo), Clóvis Pereira(vln), André Cunha(vln), Ubiratã Rodrigues(vln), William Isaac(vln), Samuel Passos(vla), David Chew(cello), Emilia Valova(cello)

本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年10月17日 (金)

先日購入のDionne WarwickボックスからDisc 2を聞く。

Dionne Warwickの12枚組ボックス,"Make It Easy on Yourself: The Scepter Recordings 1962-1971"から今日はDisc 2だ。このディスクには"Walk on by"を含む"Make Way for Dionne Warwick"と,"Unchained Melody"も入った"The Sensitive Sound of Dionne Warwick"の2枚のアルバムが収録されている。これらもまたまたBurt BacharachとHal Davidのプロデュースであるから,間違いないのだ(笑)。

Make-way-for-dionne-warwick

"Make Way for Dionne Warwick"には"Walk on by"だけでなく,"A House Is Not a Home"や"Reach Out for Me"も入っていれば,更には"(They Long to Be) Close to You"の最初期のヴァージョンが収録されているところの注目度が高い。全編を通して安定のBurt Bacharachサウンドと言ってよいもので,いかにもな音を聞いているだけで幸福感が満ちてくる。このアルバム辺りからが実質的なDionne Warwickの黄金期の始まりと言ってもよいかもしれない。9曲目と10曲目だけはBacharach / Davidチームのプロデュースではないが,9曲目の"Get Rid of Him"は元々Schirellsの歌のヴォーカルをDionne Warwickに置き換えたかららしい。10曲目は詳しいことはわからないが,Gerry Goffin / Carole Kingの曲だしねぇ。

The-sensitive-sound-of-dionne-warwick もう一枚の"The Sensitive Sound of Dionne Warwick"にはDionne Warwick自身の目ぼしいヒット曲は含まれていないのだが,Righteous Brothersがヒットさせる"Unchained Melody"を彼ら以前に取り上げているところがポイントと言ってよいだろう。結構派手なアレンジとなっていると感じるが,この曲に関してはやはりRighteous Brothersの印象が強いのは仕方ないところか。そのほかにシングル・カットされているのは"Who Can I Turn to"と"You Can Have Him"の2曲だが,まぁこの2曲も中ヒット程度で,そのほかのシングル関係はB面曲が4曲なので,やはり少々地味な印象を与えるのは仕方ないところだろう。ついでに言っておけば"You Can Have Him"のアレンジは,少々Dionne Warwickに不釣り合いな感じがする。一方で,後にKeith Jarrettも演奏するPeggy Lee / Victor Youngの"Where Can I Go without You”って選曲はナイスだが。

まぁ,そうは言っても,聞き流すもよし,傾聴するもよしというのがDionne Warwickなので,どのような局面においてもプレイバックされていても何の問題もないと感じさせるのであった。やっぱりいいですなぁ。

2025年10月16日 (木)

最近入手した渡辺香津美の「桜花爛漫」を聞く。

_20251013_0003「桜花爛漫」渡辺香津美 (domo)

先日「MOBO倶楽部」と同時に入手した渡辺香津美のライブ盤である。私はこのアルバムをかつて保有していたように記憶していたのだが,今回改めて聞いてみると,本当にそうだったのか怪しいと思うようになってしまった。このアルバムもスキップして,私が"MOBO"の次に買ったのは"Spice of Life"だったのではないかとさえ思えてきたのであった。結局私がこれを買った気になっていたのは,ジャズ喫茶でこれを聞いたことがあったからではないのか...というところだ。まぁそれでも,長きに渡って入手が難しい状態が解消されたのもめでたいということでの購入となった。

それはさておき,本作はMOBOバンドにゲストを迎えた,今はなき新宿厚生年金会館でのライブ音源であるが,バンドそのものの演奏は「MOBO倶楽部」と大きな変化はないとしても,ゲストによる賑々しさとライブならではのダイナミズムがあって,これはこれで楽しい。そして「危険がいっぱい」等はまさにKing Crimson的,そして"Σ"では"Purple Haze"を引用してしまうところも極めてロック的である。

全編に渡って,まさにイケイケな音楽が続くところは,いかにもその後バブル期に突入しようとする当時の日本を象徴するような音楽だと言ってもよいかもしれない。と言っても,このアルバムがレコーディングされたのはバブルの契機となったプラザ合意の前なのだが,リリースは円高が急速に進行し,日本企業が海外の不動産を買いまくり始める86年だからそう感じるのかもしれないが...。

いずれにしても,この派手さはライブ盤ゆえというところもあるだろうが,もう少しメリハリをつけてもよかったように思える。まぁ,それでも十分楽しめるので星★★★★。いやはや派手だ。

Recorded Live at 新宿厚生年金会館 on April 10, 1985

Personnel: 渡辺香津美(g), 橋本一子(key, vo), Gregg Lee(b), 渡辺建(b), 村上秀一(ds), 仙波清彦(perc, ds), 沢村満(as, sn), 坂田明(as), 梅津和時(as), 片山広明(ts), 向井滋春(tb), 青山純(ds), れいち(ds), 横沢龍太郎(ds)

2025年10月15日 (水)

Charles Lloydの新作はまさに枯淡の境地。

_20251013_0002 "Figure in Blue" Charles Lloyd (Blue Note)

昨年にも"The Sky Will Be There Tomorrow"という素晴らしいアルバムをリリースしたCharles Lloydだが,既に87歳を過ぎたこの人の創造力には毎度のことながら驚かされること必定の新作。今回は付き合いの深いJason Moranに,ギターのMarvin Sewellを加えたトリオという編成で,これまた枯淡の境地と言ってもよい,渋くも優れた音楽を聞かせてくれる。

今回の注目はMarvin Sewellだろうが,この人は私の中ではCassandra WilsonやLizz Wright,更にはBrian Bladeとの共演が印象に残っていて,Charles Lloydから感じるアメリカーナな感覚の体現をサポートするには適した人材だと言ってよいように思う。Charles Lloydのパートナーとしては,Marvelsで共演するBill FrisellとGreg Lieszにも比肩しうるプレイヤーだと言いたい。"Chulahoma"や"Blues for Langston"のイントロにおけるブルージーなギターはMarvin Sewellの本領発揮ってところだ。

全編を通じて,落ち着いた響きの音楽が続く中で,ややアブストラクトなトーンも交えるというのはCharles Lloydの昨今のパターンではあるが,全14曲中10曲がCharles Lloydのオリジナルというのは凄いことではないか。そうした中で,タイトル・トラックは"Figure in Blue, memories of Duke"と題されるとともに,Disc 2ではDuke Ellingtonの"Heaven"と"Black Butterfly"が取り上げられていることからしても,このアルバムがDuke Ellingtonを強く意識していたのは間違いないところだろう。また,"The Ghost of Lady Day"なる曲や,"Humn to the Mother, for Zakir"という曲もあって,Billie Holiday, Zakir Huseinにオマージュしているところがあるのも前作同様と言ってよい。そして最後をあまりジャズには向かないと思わせる"Somewhere"をCharles Lloydならではの演奏で締めるというのも素晴らしい。ここで提示されたかたち以外での"Somewhere"という曲のジャズ化は難しかろうと誤解を恐れずに言い切ってしまおう。

"Ruminations"には「至上の愛」的なフレージングも飛び出してくるものの,やはり編成ゆえの落ち着き感は強いので,こうした編成で2枚組というのは聞く方にとっても相当にチャレンジングなのは確かだ。しかし聞いているうちに,時間の経過など関係なくなってくるようなこの音楽に身を委ねていれば幸せというところだ。星★★★★☆。

前作では自らも「老い」を意識したようなコメントをライナーに残していたCharles Lloydが,今回は"All my relations, we go forward."という力強い言葉を残していることからも,Charles Lloydはまだまだやるという宣言と受け取った。

Personnel: Charles Lloyd(ts, a-fl, tarogato), Jason Moran(p, shaker), Marvin Sewell(g)

2025年10月14日 (火)

「MOBO倶楽部」を(多分)初めて聞いた。

_20251013_0001 「MOBO倶楽部」渡辺香津美(domo)

先日入手したこのアルバムを早速聞いてみた。記憶を辿ってみても,このアルバムをこれまで購入したことはないし,おそらく音として聞くのも初めてではないか。もちろん,ジャズ喫茶などで耳にしていたかもしれないが,少なくとも私の記憶からは飛んでいる。

そうした中で,このアルバムを聞いてみると,へぇ~,こういう音楽だったのかという感じだ。"MOBO"を傑作だと思っていたのに,それに続く本作に私の関心が向かなかったのはなぜなのかは不明だが,"MOBO"の濃い~メンツに比べると,本作にそれほどの誘因力はなかったというのところではないか。それでも今にしてみれば,本作とて十分濃いメンツなのだが。

冒頭の「風連」からして,かなり分厚い音がするのはギター・シンセサイザーやエミュレーターの使用によるところも大きいのではないかと思えるが,この当時はJohn McLaughlinやPat Methenyもシンクラヴィアを使っていた頃だから,そういうサウンドからの影響は大きかったかもしれない。曲としてもミニマリズムを感じさせる部分もあったり,後の"Spice of Life"の源流のような曲調もあったりと,なかなか意欲的な曲が揃っているという感じのハード・フュージョン・アルバムであった。

ここでの編成の中心を成すバンドが2ベース,ドラムス,パーカッションという分厚いリズム構成となっているのは"MOBO"の踏襲と言ってもよいが,そこに橋本一子を加えてカラフルなサウンドを目指したというところか。更に「サッちゃん」では坂田明をゲストに迎えて,得意(?)のヴォーカルも聞かせているが,これが必要だったかどうかは微妙なところではある。まぁそうは言っても,当時の渡辺香津美の取り組みを振り返るにはよいと思えたし,このハードさは結構クセになるかもなぁなんて思っていた私である。星★★★★。

Recorded in July - September, 1984

Personnel: 渡辺香津美(g, g-synth, synth, vo, perc), 橋本一子(p, key, vo), Gregg Lee(b), 渡辺建(b), 村上秀一(ds), 仙波清彦(perc), 沢村満(as,vo), 坂田明(as, vo)

2025年10月13日 (月)

久々の007:「サンダーボール作戦」の記事をアップしていなかったので,再見。

Thunderball 「007/サンダーボール作戦("Thunderball")」(’65,英/米/仏/バハマ, United Artists)

監督:Terence Young

出演:Sean Connery, Claudine Auget, Adolfo Celi, Luciana Paluzzi, Bernard Lee, Desmond Llewelyn, Lois Maxwell, Rick Van Nutter

007の映画はこのブログでほぼ取り上げてきたと思っていたら,本作が抜けていたのに気づき,Amazon Primeでストリーミングが復活したので,改めて見直してみた。

007シリーズも4本目となり,そろそろ新機軸が必要と考えたのか,この映画は水中シーンが見どころと考えられていたと思われる。まぁそれはそれでいいんだが,水中ゆえにスピーディさが欠ける結果となり,それがよかったのかどうなのかは微妙ってところだ。それに加えて,ストーリーの展開が遅いのも結構辛い。この辺りは監督としてのTerence Youngの限界も感じるし,Sean Conneryもそれまでのようなキレがないようにも思える。まぁお馴染みの如く,いろいろな新兵器は出てくるものの,今となっては古臭さを感じるのは60年も前の映画なんだから当たり前だ。

一方,この映画ではClaudine Augetが正ボンド・ガールとなっているが,正直言って敵方を演じるLuciana Paluzziの方がいいと思うのは私だけではないだろう。もともとLuciana Paluzziは正ボンド・ガールのオーディションを受けたらしいが,落とすには惜しいと考えて,この役を与えたプロデューサーは偉いと思ってしまうぐらい魅力的。そうは言ってもそれだけではねぇって感じで,イマイチ感が強いのであった。星★★★。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2025年10月12日 (日)

長らく市場から消えていた渡辺香津美盤を入手。

_20251011_0001

渡辺香津美は現在脳幹出血による療養中で,復帰の目途は立っていない(と言うより残念ながらほぼ不可能と言った方がよいかもしれない)。そんな渡辺香津美のMOBO関係(と言うよりdomoレーベル)のアルバムは長らく市場から消えており,ストリーミングでも公開されていないのはちょっともったいない気がする。私にとっては,渡辺香津美の最高傑作は"To Chi Ka"か"MOBO"だと思っていて,Better Daysからdomoレーベルに至る時代は,間違いなくギタリストとして最も勢いがあった頃だったと思っている。

そこへタワー・レコード限定で「MOBO倶楽部」と「桜花爛漫」が再発されると知り,療養中の渡辺香津美を少しでも印税でサポートする意味も込めてその2枚を入手した。これからゆっくり聞こうと思うが,確か「桜花爛漫」の方は以前アナログで保有していた記憶があるのだが,「MOBO倶楽部」は初めての購入だと思う。「MOBO倶楽部」のジャケに写るスタインバーガーも懐かしいが,渡辺香津美の快復も祈りつつ,改めて往時の渡辺香津美を聞いて楽しむことにしよう。

2025年10月11日 (土)

懐かしのLive under the Skyにおける音源:GJT+渡辺貞夫

Carnaval"Carnaval" Ron Carter / Hank Jones / 渡辺貞夫 / Tony Williams (OJC)

ジャケだけ見ればなんじゃこりゃ?と思うようなアルバムだが,これは元々1978年に開催されたLive under the Skyにおける「ギャラクシー・ナイト」の模様を収めた"Galaxy All Stars Live in Japan"(下写真)というアルバムで一部公開されていた。その音源のうち,オリジナルGreat Jazz Trioとナベサダの共演の部分だけをまとめたもので,冒頭2曲はオリジナルのLPには含まれていなかったが,おそらく当初は日本だけでのCD化の際のボートラとして公開されたもの。

Galaxy-all-starsいきなり"Chelsea Bridge"からスタートってのは渋過ぎやしないかと思うが,ライブの場では急速調で演じられる"I'm Old Fashoned"からスタートしたのが実態のようだ。まぁ5曲中3曲はナベサダの"I’m Old Fashioned"と同じなので,同作のライブでの再演と言ってもよい。とは言ってもここでのGalaxy所属はHank Jonesであって,ナベサダはGalaxyレーベル所属ではなかったので,ゲスト扱いと言ってものだが,ほぼ主役と言ってもよい吹きっぷりである。Hank Jonesは主役というより名バイ・プレイヤーという趣だ。

まぁここでのプログラムは彼らぐらいのレベルであれば,一丁上がりで演奏可能な曲ばかりだと思うが,演奏には多少の瑕疵はあってもレベルは相応に高いと思わせる。ただ,このアルバムをストリーミングで聞く限り,ドラムス・ソロはさておき,バッキング時のTony Williamsのドラムスが抑制されて収録されていて,その代わりに私の嫌いなRon Carterの増幅音たっぷりのベースの音がでかくて目立ち過ぎなのが気色悪い。もはや私のRon Carter嫌いは生理的なレベルなのだ(爆)。ドラムスが目立ち過ぎるのもいかがなものかとは思うが,ここはもう少しTony Williamsのドラムスをクリアに聞きたかったところだ。懐かしさも含めて半星オマケの星★★★★ってのがせいぜいだろう。

元々の"Galaxy All Stars"としてのアルバムにはRed Garlandのトリオ及びナベサダとの共演も収められているが,そちらはアナログでしか聞けないようだし,ストリーミングでも公開されていないが,まぁ当時のRed Garlandは決して評価が高かった訳でもないので,それも仕方ないところだろう。

Recorded Live at 田園コロシアム on July 30, 1978

Personnel: Hank Jones(p), Ron Carter(b), Tony Williams(ds), 渡辺貞夫(as)

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2025年10月10日 (金)

David Kikoskiのライブ音源をストリーミングで聞く。

David-kikoski-weekend-at-smalls "Weekend at Smalls" David Kikoski(Celler Live)

David Kikoskiはコンベンショナルなジャズ・ピアニストに分類していいと思うが,リーダー作にしてもバッキングにしても,この人が参加したアルバムに駄作はないと思える人だ。コンベンショナルと言いつつ,この人は現代的なハードバップという感じの演奏で,大体の場合はスリリングな演奏を聞かせてくれると思う。

本作はSmallsでのライブ音源であるが,ピアノ・トリオにRandy Breckerをゲストに迎えたワンホーン・クァルテットというのが魅力的だ。しかも彼らを支えるのはJoe MartinにBilly Hartであるから,まぁおかしなことにはならないだろうと思わせるが,驚いてしまうのがBilly Hartはこの演奏時83歳,Randy Breckerだって78歳後期高齢者だったのだが,全く年齢を感じさせない演奏ぶりに驚かされる。

曲はDavid Kikoski(4曲)とRandy Brecker(2曲)のオリジナルに,Monkの"Straight No Chaser"が加わるというプログラムだが,全編を通じてこれぞNYCのジャズ・クラブでの演奏って感じのもので,ついつい私は郷愁を誘われる。私が最後にSmallsを訪れたのももう8年も前のことになってしまったが,私はTrumpが大統領でいる限り米国には行きたくないと思っているので,次に行けるのはいつになることやら...という感じだ。しかし,純粋に音楽を楽しめるSmallsという箱のよさをこのアルバムでも感じることができるナイスなドキュメントである。

それにしてもRandy Breckerのフュージョンだろうが,ハードバップだろうが何でもござれ感が凄いねぇ。DR Big Bandと共演したバラッド集も素晴らしかったことをついつい思い出してしまった私である。"Straight No Chaser"の「ゆるさ」等,若干の瑕疵がない訳ではないが,これだけ聞かせてくれれば十分満足ってところだろう。星★★★★。

ところで,このアルバムはSmalls Live Living Masters Seriesとジャケに書いてあるが,以前はSmalls Liveという自主制作のような形を取っていたSmallsのライブ音源を今回リリースしているのはカナダのCellar Liveだから,今後はそういうかたちでリリースしていくということなのかもしれないな。尚,Bandcamp等のクレジットにはRandy Breckerはトランペットと書いているのだが,吹いているのはフリューゲルホーンだと思う。

Recorded Live at Smalls Jazz Club on September 9, 2024

David Kikoski(p), Randy Brecker(tp), Joe Martin(b), Billy Hart(ds)

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2025年10月 9日 (木)

Brian Blade & the Fellowship Band@Cotton Club参戦記

Brian-blade 私はBrian Blade & the Fellowship Bandの公式アルバムは全て保有している。アメリカーナな響きも醸し出す彼らのサウンドは私の趣味に完璧に合致しているのだが,そんな彼らのライブを観る機会にはこれまで恵まれていなかったので,念願かなってというところである。Brian BladeやJon Cowherdのライブは見たことはあっても,やはりFellowshipを観るというのが重要なのだ。このバンドはギターとベースを除けば基本同じメンツでやっているはずだが,今回はギターなしの編成である。それでも全セットがソールド・アウトという人気ぶりで,やはりこのバンドに対する期待値が高いということが如実に感じられたもので,私もいそいそと現地に向かったのであった。

Brian-blade-at-cotton-club

そして始まったライブは決してコンベンショナルなジャズではない。言ってみればアメリカーナな部分にゴスペルを加えたという感じなのだが,私が強く感じたのが教会音楽的なところで,おそらくは彼らの演奏の根底には教会の存在があるはずだと確信させられる演奏であったと言ってよい。特にJon Cowherdが1曲で演奏したオルガンは,まさに小学校にでも置かれていたようなものだったのだが,アメリカの街中の教会で演奏されているような音楽の感覚を思わせるものであって,私の感覚は決して間違ってはいないはずだ。だから彼らの演奏はテーマを吹いてアドリブを回すという演奏ではないのだ。そしてその演奏中のBrian Bladeの幸せそうな笑顔を見れば,音楽を演奏する喜びが感じられるものであって,見ている方もそれだけでうれしくなるような演奏だと言ってもよいものだった。

逆に言えば,丁々発止とか,聞いていて燃えるというような演奏ではない。しかし,Brian Bladeが叩き出すビートは熱狂を呼ぶものとは違うものの,これほどドラムスが上手い人がこの世の中にいるのかと感じさせるほどの技の数々であった。スティックだろうが,ブラシだろうが,マレットだろうが,ドラムスってのはこう叩くんだぜっていう感じで,私は「技のデパート」だなんて独り言ちていたのであった。

昨今,少なくとも私が行ったライブにおいては必ずしも客入りがいいとは言えないコットンクラブだが,彼らが出演する4日間が全てソールド・アウトというのも今回の演奏を聞けば納得できるはずだ。アメリカという国は歴史は浅かろうが,こうした演奏を聞かされては深みのある音楽はありえるし,この感覚には我々はかなわないやと感じさせる演奏であった。今回はギターなしのクインテットだったが,ギターが入っていればよりカラフルになっただろうと思ったのは事実としても,ギターなしでも十分に素晴らしい演奏を聞かせたのであった。まさに見事なものだ。感動した!

Live at Cotton Club on October 8, 2025, 2ndセット

Personnel: Brian Blade(ds), Melvin Butler(ts,ss), Myron Walden(as,b-cl), Jon Cowherd(p, org), Roland Guerin(b)

2025年10月 8日 (水)

もはや世界レベルの濃密な音空間:Banksia Trioのライブ盤が素晴らしい。

_20251006_0001 "Live" Banksia Trio (TSGW)

副題にある"Live in Tokyo and Kanazawa Live Recordings from Three Concerts 2022-2023"が出自を明確に物語るBanksia Trioの第4作にして初のライブ盤である。私はこれまで彼らのライブを2回観ているが,この人たちのレベルの高さは折り紙付きだ。スタジオ録音の3作も高く評価した私だが,その実力はライブの場においても見事に発揮されることを目撃していたから,今回のライブ盤も期待値MAXで聞いた訳だが,その期待が裏切られることはなかった。

彼らの音楽を聞いていると,静謐にして美的な部分もありながら,どちらかと言えばフリー寄りのアプローチによる緊張感に満ちた演奏が多い。そして,ここまでのテンション,レベルの高さを体現できるトリオはなかなかないと思わせ,もはや世界に通用するトリオだと言いたい。冒頭の菊地雅章の"Drizzring Rain"からこのトリオのインタープレイは高密度に展開され,三者の絡みは絶妙と言ってよいだ。

本作で展開される演奏はジャズにリラクゼーションを求めるリスナーには向かないタイプの音楽かもしれない。だが,より多くの人の耳に触れるべきものだと感じる。ここでスリリングさを醸し出すのは石若駿の鋭いドラミングで,そこに乗る林正樹のピアノのフレージングは見事なものだし,リズム・キーパーとしての役割を超越したリーダー須川崇志の自由度の高いベースがまたよいのである。三者三様の実力を示した演奏なのだ。

そしてアルバムの最後は,23年5月に亡くなった坂本龍一を追悼したと思われる"Gui"だが,いかにも坂本龍一らしいメロディ・ラインがこのトリオにフィットして,素晴らしいクロージングとなった。現在の日本が世界に誇るトリオとして,星★★★★★としてしまおう。甚だ私見ながら,彼らならECMの総帥,Manfred Eicherの審美眼にもかなうはずだ。

Recorded Live at Blue Note東京 on November 15, 2023, at 目黒パーシモンホール 小ホール on March 21, 2022 and at 金沢21世紀美術館 シアター21 on November 13, 2023

Personnel: 須川崇志(b),林正樹(p),石若駿(ds)

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2025年10月 7日 (火)

紆余曲折を経て"Joni’s Jazz"をようやく入手。

Jonis-jazz "Joni’s Jazz" Joni Mitchell (Rhino)

私はJoni Mitchellのファンだと公言しているので,このコンピレーションのリリースがアナウンスされた際にもいち早く輸入盤を発注をしていた。しかし,発注先では発売日になっても,入手未定になっており,いつまで経ってもデリバリーされる様子がない。そうこうしているうちに国内盤がリリースされ,価格差はほとんどないので,国内盤発注に切り替えて,ようやく私の手許に届いた。しかし,国内盤が届いたとたん,輸入盤も在庫ありになるってのはどういうことなのか?国内のレコード会社への忖度か?だとすれば,顧客不在も甚だしいが。

それはさておきである。Joni Mitchellはジャズ・ミュージシャンとのつながりが深いことからしても,こうしたコンピレーションが編まれることも想像はできた。かつてのL.A. Expressに始まり,Joe Sample,Larry Carlton等を迎えたアルバムに加え,後年のWayne Shorter,Jaco Pastorius,そしてCharles Mingusとのコラボ,"Shadows And Lights"でのオールスター・バンド,ビッグバンドとの共演等,枚挙に暇がない。そうした中で,Joni Mitchellにとっても同じだと思うが,このアルバムがWayne Shorterに捧げられていることからしても,共演者としてのWayne Shorterの位置づけは誰よりも重要だったはずだ。

正直言って多くは公式,非公式含めて既発音源だし,ストリーミングでもほとんど聞けることから,今更これを購入する理由があるのか?と言われても仕方がないことは承知している。だが,ファンたるもの,Joni Mitchellの意図を汲みつつ,この音源を聞くことには意義があるのだ。そして改めて,ここでの並びで曲を聞き直すと,聞き尽くした曲でも新鮮に感じるのは,バレエ用に編纂されたコンピレーション"Love Has Many Faces"と同様なのだ。

本作にはこれってジャズ?って思わせるセレクションもあるのだが,Joni Mitchellにとってのジャズの概念というのは実に幅広いのだと感じさせるとともに,逆にジャズという音楽の多様性も感じさせてくれるコンピレーションであった。Joni Mitchellという有能なミュージシャンはジャズ界のキラ星さえも吸い込む「いい意味」でのブラックホールだと思ってしまった。星★★★★★以外にはなかろう。素晴らしい。

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2025年10月 6日 (月)

Sliders@イタリア文化会館参戦記。

Sliders 毎度お馴染みのイタリア文化会館におけるイベントである。無料ではあるが,非常にユニークなプログラムが聞けるこのイベントにはできるだけ行きたいと思っている私だが,今回はトロンボーン3本のユニット,Slidersによる演奏であった,

私はトロンボーンという楽器はアーティキュレーションが非常に難しいだろうと思っているのだが,音色はどちらかと言えば地味で,ジャズ界でもトロンボーンの大スターというのはなかなか出てこないという気がする。ぱっと思い浮かぶのはJ.J. Johnsonぐらいだろう。Curtis Fullerはどうした?Vic Dickensonもいるぞ!という声もあるだろうが,それでもやはり決して花形楽器とは言えないからこそ,技を有することが重要になってくると思う。

このSlidersはFilippo Vignato,Federico Pierantoni,Lorenzo Manfrediniの3人のトロンボーン奏者から構成されるが,アルバムも出しているというのには少々驚いた。今回のライブも,イタリア文化会館によれば,メンバーのオリジナルを中心とする次のようなプログラムであったようだ。冒頭のメロディ・ラインを聞いていて,これ何だったかなぁと現地では思っていたが,そうそうCarla Bleyであったのだ。

  1. Ida Lupino(Carla Bley)
  2. Tammorra(Manfredini) 
  3. Earth Echo(Vignato)
  4. Un’estate al mare(Pierantoni)
  5. Brass Calzature(Pierantoni)
  6. Beyond What the World Contains(Vignato)
  7. Ionen(Pierantoni)
  8. Palhaço(Egberto Gismonti)
  9. After the Rain(John Coltrane)
  10. <Encore>I Got It Bad(Duke Ellington)

正直言って,やはりトロンボーン3本のアンサンブル+アドリブというのは少々ライブで聞くにはきついと思わせる部分(換言すれば睡魔に襲われる瞬間)もあって,聴衆の受けも今一つという気がしたが,ここでの客層は本当に音楽が聴きたいのかと思わせるような高齢者も多いから仕方がない部分もあろう。そもそも私の隣にいたご高齢の女性は拍手も一切していなかったしねぇ。しかし,各々が音色の違いも出しながら,緻密に編曲された演奏は私には面白いと感じさせる部分もあったし,こういうのはブラバンでトロンボーンをやっている子たちに聞かせてあげればいいかもなぁなんて思っていたのであった。

いずれにしてもこういう演奏は聞いたことがないものだったので,そのユニークさは認めるべきであり,これからもどんどんイベントをやって欲しいと思うのはきっと私だけではあるまい。

Live at イタリア文化会館 on October 3, 2025

Personnel: Filippo Vignato(tb),Federico Pierantoni(tb),Lorenzo ManOctober 3, 

2025年10月 5日 (日)

「ファンファーレ ! ふたつの音」:音楽に溢れた気楽に見られるフランス映画。

En-fanfare 「ファンファーレ ! ふたつの音 ("En Fanfare")」(’24,仏)

監督:Emmanuel Courcol

出演:Benjamin Lavernhe, Pierre Lottin, Sarah Suco, Jacques Bonnaffé, Clémence Massart-Weit

本当は別の映画を見たかったのだが,時間が合わなかったのでチョイスしたのがこの映画であった。まぁ人情ドラマと言ってもよい作品で,シナリオには相当無理があるものの,拾いものと言ってもよい作品。この映画のいいところは全編に音楽が満ちていることだろう。Benjamin Lavernhe演じるThibotはクラシック界の作曲家,指揮者である一方,Pierre Lottin演じるJimmyは炭鉱楽団でトロンボーンを吹くという設定なので,さまざまなスタイルの音楽が全編を通じて流れているので,音楽好きならそれだけでも好感度は高いはずだ。

主演のBenjamin Lavernheの指揮っぷりはなかなか堂に入ったもので,この辺りの役者としてのセンスは素晴らしいと思えた。

ただ,上述の通り,さすがにこのシナリオは都合がよ過ぎるなぁと感じるのも事実なのだが,この後味のよさゆえに文句は言うまい。この映画に山田洋次は「笑ったり、泣いたり、最後は歌を口ずさんだり。向こうではヒットしたそうだが、この映画を愛したフランスの観客たちの楽しそうな表情が目に浮かぶ。」というコメントを寄せているが,まさにそういう感じである。最後の「ボレロ」で私もついつい涙腺がゆるむのであった。悪くはないが,真っ当に評価するなら星★★★☆ぐらいが妥当だと思う。

2025年10月 4日 (土)

"Rendezvous":まだまだ現役のナベサダがアメリカで一番売れたのはこれか?

Rendezvous "Rendezvous" 渡辺貞夫 (Elektra)

今も現役で頑張る渡辺貞夫は昨今「ランデブー」と題するツアーもやっていて,そこでこのアルバムが再演されているかどうかはわかっていないのだが,ビルボードのジャズ・チャートで2位になったってことで,おそらくアメリカで最も売れたナベサダのアルバムと言えるのではないか。

スタッフはほとんどGrover Washington, Jr.の"Winelight"同様で,Ralph McDonaldプロデュースの下,一流のミュージシャンがバックを支えていて,Roberta Flackをヴォーカル・ゲストに迎えて,これはまぁ売れるよなって感じの作りになっている。

正直言ってしまうと,この頃になると私はナベサダの音楽には関心が薄れつつあった。それは前作の"Fill up the Night"がつまらんと思ってしまったところもあったからなのだが,私も徐々にジャズ歴が長くなって,いろいろなタイプのジャズを楽しむようになっていたことも大きい。私がジャズを聞き始めた頃はFlying Diskレーベルの"My Dear Life"等の頃で,まぁフュージョンから入ったというのが実態だったが,この頃になると予備校時代のジャズ喫茶通い(笑)で聞く音楽の幅が広がっていたから,自分の好きなジャズのタイプが明確になっていたのであった。

改めてこのアルバムを聞いてみると,基本的には全編を通してゆったりとした演奏と言ってよく,心地よいことは心地よいのだが,私のようなリスナーにはどうもメリハリが足りないように思えてしまう。私としてはナベサダのパートナーとしてはDave Grusinの方がよかったという感覚がどうしても拭えないのだが,それは同時代感が強いからで,このアルバムはその同時代感から少々ずれていたことによると考えてもよいかもしれない。だからと言って,このアルバムは好みではないものの,演奏のクォリティはこれだけのメンツが揃っていれば保たれているのは当然なので念のため。それでも星★★★☆ってところだな。

Recorded February & March 1984 in New York

Personnel: 渡辺貞夫(as), Steve Gadd(ds), Marcus Miller(el-b, synth), Richard Tee(el-p), Ralph MacDonald(perc), Eric Gale(g), Ralph MacDonald(perc), Barry Eastmond(synth), Roberta Flack (vo), William Eaton(arr)

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2025年10月 3日 (金)

「旋風に舞う」ってタイトルがいいねぇ。いかにもCrusadersらしいサウンド。

Free-as-wind"Free as Wind" The Crusaders (ABC)

いい邦題だと思う。こういうのをセンスの良さを感じさせてくれるタイトルと言う。そして出てくるサウンドはいかにもCrusadersである。タイトル・トラックからして心地よいファンク具合が楽しい。次作の"Images"がややポップな方向に流れたって気もするし,"Street Life"でヴォーカルを導入して更にヒットを遂げる彼らではあるが,この辺りのサウンドが魅力的に響くと感じるリスナーも多いのではないか。泥臭くはならず,あまり暑苦しくならないサウンドになっていて,聞き易いことこの上ないのだ。前作を最後にWayne Hendersonが抜けたことの影響をあまり感じさせなかったと思えるアルバム。

Larry Cartonが自身の名前を冠したアルバムでも演奏した"Nite Crawler"のCrusadersヴァージョンが聞けるのもいいと思う。まぁ,どっちがいいかと言えば,Larry Carlton盤の方だが,これはこれでいいのだ。そしてJoe Sampleは自身のアルバムではよりメロディアスな感じが強まるが,私はここで聞けるRhodesの音は,Wilton Felderのサックスと相まって,これこそJoe Sampleらしいと感じさせてくれるのだ。オーケストレーションも適度で,これはやっぱり好きだなぁ。そして,Robert "Pops" Popwellの跳ねるベースも貢献度大。ということでついつい点も甘くなり星★★★★☆。

Personnel: Joe Sample(key), Wilton Felder(ts), Stix Hooper(ds, perc), Larry Carlton(g), Robert "Pops" Popwell(b), Arthur Adams(g), Dean Parks(g), Roland Bautista(g), Paulinho Da Costa(perc), Ralph McDonald(perc)

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2025年10月 2日 (木)

Jim McNeelyの訃報に接して,過去のアルバムを聞く。

Jim-mcneely

Jim McNeelyが亡くなったそうだ。私がJim McNeelyの名前を認識したのは80年代前半のStan Getzとの共演においてであったが,90年代後半以降はビッグバンドのアレンジャー,コンポーザー,コンダクターとしての活動がメインになっていたようだ。近年ではクリポタことChris Potterをソロイストに迎え,ストラヴィンスキーの「春の祭典」をモチーフとした"Rituals"が素晴らしい出来だったが,いずれにしてもチャレンジングな仕事をする人だなぁと思っていた。

Quest-for-freedom そんなJim McNeelyの訃報に接して,今まで聞いたことがなかったので,Dave LiebmanとRichie Beirachを迎えた"Quest for Freedom"を聞いてみた。LiebmanとBeirachを迎えて,ただでさえハイブラウなQuestがらみの曲をビッグバンドでやるというのでは,この作品もまさにアレンジャーとしては極めてチャンレンジングな仕事のはずだ。予想通りここでもハイブラウな作品に仕上がっているが,これがまた実にスリリングな出来であった。冒頭の"Pendulum"からしてひぇ~っとなってしまった私である。

日本ではそれほど認知度が高かったとは思えないJim McNeelyではあったが,このような作品を残していたことは十分なレガシーとして評価するに値すると思う。モダン・ビッグバンドのアレンジャーの鑑のような人であったと今更ながら思う。

惜しい人を亡くした。

R.I.P.

2025年10月 1日 (水)

Cheap Trick@グランキューブ大阪参戦記。

Cheap-trick-at-gco

先日のStingに続いて,訳あって(謎)またも関西でのライブ参戦である。今回はCheap Trickであるが,Farewell Tourと称してのライブ。まぁメンバーのうち3人は古希を過ぎているので,ライブはそろそろきつくなっているかもしれない。その割にこの秋には新作もリリースするらしいし,Robin Zanderはきつそうなところはあったし,キーも下がってはいたものの,結構声は出ていたので,本当にこれが最後?なんて思いながら見ていた私であった。

あの「武道館」ライブで演じた19曲のうち,今回は15曲演奏したらしいが,私はシングル・アルバム収録の曲が基本なので,そんなにやっていたのかぁなんて思っていたが,その割にアリーナ前方のファンはおとなしいものだったのは,聴衆もそれなりに歳のせいか?(笑)

Cheap Trickというバンドは聞いていて,ロックではありながら,適度なポップさを持つバンドだったなぁなんて思っていたが,私は特に思い入れがある訳ではないものの,一種の懐メロとして楽しんでいたのであった。

早速ソニーのサイトにセットリストが掲載されているので,貼り付けておくが,この人たちはやはり"Dream Police"辺りまでがピークだったんだなぁというのが実感。いずれにしても,多分これで最後ってことはないんじゃないのと思わせるようなライブであった。

  1. HELLO THERE/ハロー・ゼア(『蒼ざめたハイウェイ』1977) *★
  2. COME ON, COME ON/カモン・カモン(『蒼ざめたハイウェイ』1977)*★
  3. LOOKOUT/ルックアウト(『チープ・トリックat武道館』1978)*★
  4. BIG EYES/ビッグ・アイズ(『蒼ざめたハイウェイ』1977)*★
  5. NEED YOUR LOVE/ニード・ユア・ラヴ(『ドリーム・ポリス』1979)*★
  6. CLOCK STRIKES TEN/今夜は帰さない(『蒼ざめたハイウェイ』1977)*★
  7. AIN'T THAT A SHAME/エイント・ザット・ア・シェイム(『チープ・トリックat武道館』1978)*★
  8. ELO KIDDIES/エロ・キディーズ(『チープ・トリック』1977)  *
  9. HIGH ROLLER/ハイ・ローラー(『天国の罠』1978)*
  10. THE BALLAD OF TV VIOLENCE (I'm Not the Only Boy)/ザ・バラッド・オブ・TV・ヴァイオレンス(『チープ・トリック』1977)   
  11. CALIFORNIA MAN/カリフォルニア・マン(『天国の罠』1978)*
  12. TWELVE GATES/TWELVE GATES(新曲)        
  13. I KNOW WHAT I WANT/アイ・ノウ・ホワット・アイ・ウォント(『ドリーム・ポリス』1979)
  14. ON TOP OF THE WORLD/オン・トップ・オブ・ザ・ワールド(『天国の罠』1978)           
  15. OH CAROLINE/オー・キャロライン(『蒼ざめたハイウェイ』1977)*
  16. THE FLAME/永遠の愛の炎(『永遠の愛の炎』1988)  
  17. I WANT YOU TO WANT ME/甘い罠(『蒼ざめたハイウェイ』1977)*★
  18. SURRENDER/サレンダー(『天国の罠』1978)*★

(ENCORE) 

   19. AUF WIEDERSEHEN/サヨナラ・グッバイ(『天国の罠』1978)*

   20. DREAM POLICE/ドリーム・ポリス(『ドリーム・ポリス』1979)         

   21. GOODNIGHT/グッドナイト(『チープ・トリックat武道館』1978)*★

( )内は収録アルバム  ★オリジナル『at武道館』収録曲  *1978年初来日公演で演奏された曲

Live at グランキューブ大阪 on September 29, 2025

Personnel: Rick Nielsen(g), Robin Zander(g, vo), Tom Petersson(b, vo), Daxx Nielsen(ds)

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