オスカーで国際長編映画賞に輝くのもうなずける「アイム・スティル・ヒア」。
「アイム・スティル・ヒア("Ainda Estou Aqui")」(’24,ブラジル/仏,Sony)
監督:Walter Sallas
出演:Fernanda Torres, Selton Mello, Valentina Herszage, Bárbara Luz, Guilherme Silveira
ポスターだけ見ていると,幸せなファミリー映画のようにさえ映るが,これは昨年見た「夜の外側」同様,国によりもたらされた「闇」が描かれており,陽気なラテンしか想起していなかったブラジルにおいて,こんなことが起きていたのかと思わされる実話に基づくストーリーであった。前段は極めて牧歌的な感覚で話が進む中で,突然Selton Mello演じる父親であるRubens Paivaが連行されるあたりから,急にテンションが高まる。
このストーリーは1971年,1996年,そして2014年という3つの時間軸で描かれる中で,71年のシークェンスが最も長く,そして最もテンションが高い。そしてそこに描かれる軍事政権の横暴はまさに人権無視であったことを改めて告発する映画となっていて,事実の恐ろしさを追体験させるという点で,ブラジル人にとっても受け入れづらい部分もあったのではないかと思わせた。
役者陣は全てが好演と言ってよい演技だし,エンディングで実際の写真を見せて,映画で描かれたシーンを改めて振り返らせるというのもいい演出だったと思う。2014年のシークェンスで,年老いた主人公を演じたのはFernanda Torresの母親,Fernanda Montenegroというのもキャスティングの妙であった。
こうした映画にオスカーを与えるところに,映画人のリベラルな姿勢が表れていると思うが,そんなことは抜きにしても,十二分にオスカーに値する優れた作品であったと言いたい。見ていて辛くなる部分もある重い映画ではあるが,これは見てよかったと思える傑作。星★★★★★。
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