DownBeat国際批評家投票におけるPianist of the Year,Kris Davisのアルバムを聞く。
"Run the Gauntlet" The Kris Davis Trio (Pyroclastic)
Kris Davisという名前は目にしたことがあっても,音に関しては未聴であった。昨日のJames Brandon Lewisもそうだが,DownBeat誌の国際批評家投票を見ていると,どういう人なんだろうと思ってしまう名前がある。Kris DavisもこれまでもRising Star等ではその名前を見たようにも思うが,今年はベテランKenny BarronやSullivan Fortner等の新旧ピアニストを抑えて,ピアニスト部門で第一位に選ばれているのがこの人であり,かつ本作はAlbum of the Yearでは第三席である。これは相当なことだと思って早速ストリーミングで聞いてみた。
私がKris Davisの音楽を未聴だったのには相応の理由がある。彼女が共演しているミュージシャンを見れば,どちらかと言えばフリー寄りあるいは極めてハイブラウな人が多いので,大体どういう音楽をやっていそうだというのは想像がついたからだ。しかし,本作に関しては共演者がRobert Hurst,Jonathan Blakeなので,そうアバンギャルドな感じではなかろうという想像はつく。そして,ジャケにもあるように本作は女性ピアニスト6人に捧げられていることもあり,どういうことになっているかは実に興味深かった。
冒頭のタイトル・トラックからして,執拗に繰り返されるテーマとそこから展開されるフリー的なソロで,いきなりのぶちかましである。これは私が想像していた世界に近いと思わせるものであった。しかし,そこから2曲目の"Softly as You Wake"に転じると,プリペアド・ピアノによる全くムードの異なるサウンドに転じるから,これは一筋縄ではいかない。Kris Davisの書く曲はメロディ・ラインを意識したものとは思えないので,サウンド指向なんだろうなぁと思いつつ聞き進めていくと,変拍子あり,8ビートありだが,やはり全体的な響きは相当ハイブラウだ。
Robert Hurstもかなり自由なラインで反応し,Jonathan Blakeの煽りも強烈に行くところは行き,抑制すべきところは抑制するかたちで極めて適切ってところで,これはなかなか面白いアルバムである。しかし単にハイブラウなだけではない。"Beauty Beneath the Rubble"では思索的な響きも聞かせて,いろいろなスタイルを吸収しており,その辺りがDave Hollandから共演者に選ばれる理由という感じもする。
いずれにしても,DownBeatという触媒がなければ聞いていなかったアルバムだが,相当に個性的なので一般的に受けるかどうかは少々微妙だが,趣味に過ぎないとは言え,音楽を聞く者として新しいものへの関心も失ってはいかんと改めて思った私である。そうした意味も含めて星★★★★☆。
尚,本作を捧げられた6人のうち,5人は知っているが,Sylvie Courvoisierだけは初めて見た名前であったが,よくよく見れば,DownBeatの国際批評家投票のピアノ部門でFred Herschに次いで7位に位置しているではないか。この人のやっている音楽も聞いてみないといかんと思ってしまった。こういうかたちで新しいミュージシャンに触れる機会が増えるのもいいことだと考えよう。そもそも先日紹介したPatricia Brennanのアルバムも本作同様Pyloclasticレーベルからのもので,国際批評家投票のレーベル部門ではこれまたBlue Noteに次ぐ第2位だ。へぇ~となってしまうこと必定であり,勉強になってしまった。
Recorded on January 14, 2024
Personnel:Kris Davis(p, prepared-p), Robert Hurst(b), Jonathan Blake(ds)
本作へのリンクはこちら。
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