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2025年8月31日 (日)

久々のイタリア文化会館におけるジャズ・ライブ参戦記。

Sound-vibe

毎度お馴染みイタリア文化会館の無料ライブである。ここのところ,クラシック系のコンサートが続いて,ジャズ系のライブをここで聞くのは実に久しぶりのことで,振り返ると前回はRosalio Giulianiらによる2023年4月まで遡る。今回は「イタリアン・バイブス サウンド・オブ・ユース・イン東京」というシリーズの一つで,若手ミュージシャンにライブの機会を与えるという趣旨のものだろう。ということで,今回はテナーのCanio CosciaとラッパのCosimo Boniの双頭クインテットであった。

今回のメンバーは全然知らない人たちばかりだが,イタリア・ジャズのレベルの高さはわかっていることだが,編成からすればイタリアン・ハードバップ路線かなぁなんて思いながら現地に向かった。

イタリア文化会館のイベントは,これまでは入場は抽選ながら自由席だったので,座席は暇な高齢者がいいポジションを占めるというのが通例だったが,今回,抽選+座席指定という方式になったので,焦って行く必要がなくなったのはよかったし,公平感は確実に増した。いつもはフルハウスのイベントだが,今回は若干空席があったのは珍しい。

今回はおそらくは小学校低学年の子供連れの親子が私の前に座っていて,子供がジャズの演奏に退屈するのは当たり前で,演奏中も落ち着きがないこと甚だしく,こっちが音楽を聞く環境を妨げられたのはちょっと残念だった。私は子供には寛容なつもりだが,母親が全く後ろに座っている私あるいはほかの聴衆に無頓着なのには半ば呆れていたが。まぁ,席が選べないのだからこれも仕方ないと言えば仕方ないので,いいこともあれば,悪いこともあるってことだ。

それはさておき演奏だが,全てのミュージシャンのBioを入手できていないものの,テナーのCanio Cosciaはまだ20代なかばのようだから,バンドのメンバーも似たようなものだろう。そうした若さもありながら演奏能力はかなり高いが,リーダーの一人であるCanio Cosciaは音はいいが,フレージングはイマイチ感が強かった。それに比べるとラッパのCosimo Boniの方が朗々としたフレージングで魅力的かなぁなんて思っていたのだが,よくよく考えてみれば,イタリア・ジャズ界には有能なトランペット・プレイヤーが多いなぁなんて思っていた。Cosimo Boniはバークリーで学んだらしいが,Fabrizio Bosso的かなぁなんて漠然と思っていた。

しかし,私がこのバンドを聞いていて,実のところ一番感心していたのがドラムスのTommaso Stanghelliniであった。この人,派手さはないのだが,テクニック,ドライブ感ともに大したものだと感じていて,彼もまだ20代らしいが,侮れないプレイヤーだと思っていた。

当日のプログラムはイタリア文化会館のWebサイトによれば次の通り。彼らのオリジナルに,イタリア系ミュージシャンの曲や,ジャズマン・オリジナルを交えてプレイしたってことになるが,全部チェックはできていない。しかし,Chick Coreaとジョーヘンは間違いなくやったはず。彼らはまだまだ伸びしろのある若手ってところだろうが,こういう人たちの演奏を聞いておくのも大事だと思っていた私であった。いずれにしても,こういうイベントを企画してくれること自体は大変ありがたいことだ。

New Lands(Enrico Pieranunzi)
Night Bird(Enrico Pieranunzi)
Theme for Jessica Tatum(Enrico Rava)
Melampo(Antonio Zambrini)
Chick’s Tune(Chick Corea)
Bird’s Eye View(Joe Lovano)
La Mesha(Joe Henderson)
Step Forward(Canio Coscia)
Mr. Square(Cosimo Boni)
Dream Giver(Cosimo Boni)

Live at イタリア文化会館 on August 25, 2025

Personnel: Canio Coscia(ts), Cosimo Boni(tp), Filippo Galbiati(p), Giulio Scianatico(b), Tommaso Stanghellini(ds)

2025年8月30日 (土)

European Jazz Quintet:この暑苦しさが快感になるのだ(笑)。

_20250828_0001 "European Jazz Quintet" (EGO)

タイトルだけ見れば,日本制作の急造グループかとさえ思わせるグループ名だが,決してそんなことはない。これは”The EGO Recordings of Leszek Zadlo Alan Skidmore"という濃い~ボックスの一枚である。そもそもサックス3本+ベース&ドラムスという編成でやわな音楽になるはずはないが,しかもEGOレーベルである。

このボックスのほかの3枚は既に記事にしてきたが,残っていたのが本作。サックス3本というのがAlan Skidmore(英国),Gerd Dudek(独),Leszek Zadlo(ポーランド)という多国籍軍である。Leszek Zadloは正しくはLeszek Żądłoと綴るらしいが,ここは面倒なのでLeszek Zadloで統一する。

この人たちの音楽,あるいはEGOボックスの音源を聞くと,「熱い」,「激しい」,「暑苦しい」等の常套句しか出てこないのは私の表現力の乏しさとしか言いようがないが,それ以外の表現が見当たらないのだから仕方ない(と開き直る)。3人のサックスの中ではGerd Dudekのフリー度が一番高いだろうが,この3人となれば,ほぼ同等と言うか,いかようにでも対応してしまうって感じがする吹奏ぶりをここでは聞かせる。

アルバムA面に相当する1曲目がテナー,B面に相当する2曲目がソプラノで演じられるが,ソプラノの方がフリー度が高いという感じではあるが,いずれにしても暑苦しいことは暑苦しい。私としては野太さを感じさせるテナーの方が好みかもしれないが,こういう感じの音は聞いているだけで興奮することは間違いなく,アドレナリンが出る感じなのだ。ソロの順番を聞き分けるほどの耳は持ち合わせていないが,どの奏者も実力は十分なので,大いに楽しんでしまった。

ジャズは美的で静謐なものもいいと思うし,こういう全然違うタイプもいいのである。こういう間口の広さはジャズの魅力でもあるなと改めて感じた次第。星★★★★☆。

Recorded in November 1978

Personnel: Alan Skidmore(ts, ss),Gerd Dudek(ts, ss),Leszek Zadlo(ts, ss), Ali Haurand(b), Pierre Ciybois(ds)

2025年8月29日 (金)

久々に取り出したDavid Murrayのボックスから今日は"Body And Soul"。

_20250827_0002"Body And Soul" David Murray Quartet(Black Saint)

たまにしか聞かないのだが,たまに聞くとはまるのがDavid MurrayのBlack Saint/Soul Noteの7枚組ボックス・セットだ(でもまだ全部聞いた記憶はない:爆)。David Murrayは多作の人なので,とても全部は追い掛ける気力もないし,そのつもりもないが(笑),このボックスに収められたアルバム群は,特にMurrayの充実期のアルバムだったと思える。

そうした中で,本日はこのアルバムだが,スタンダードはタイトル・トラックだけで,あとは参加メンバーのオリジナルなので,決してアルバム・タイトルに騙されてはいけない。3曲目に演奏されるタイトル・トラックだけヴォーカルのTaana Runningが加わっているのだが,不思議なことに歌詞が通常と異なっているのがユニーク。なんでこういうことになったかの詳細は不明ながら,David Murrayの吹奏ぶりと優れたバラッド表現は,激しさが通常前に出がちなDavid Murrayのイメージを覆す。それに続くMurrayのオリジナル”Doni’s Song"でもバラッド表現は素晴らしく,激しいだけの人ではないということを見事に実証している。

しかし,この2曲をはさんで演じられる演奏は,基本的にアップテンポで,相当激しく演じられるので,その落差を楽しむのも一興である。だが,6曲目の"Odin"はミディアム・ファストで演じられるが,ソロの前半まではコンベンショナルな印象すら与えるものである。そこでも激しく吹くところは激しく吹くMurrayであるが,完全にフリー化する訳ではなく,あくまでもジャズの伝統に沿いつつも,ややアウト気味なフレージングを繰り出すというところで,それがDavid Murrayの基本的な立ち位置だと思う。そのアウトなフレージングがリスナーを燃えさせるのだ。

ここでピアノを弾いているSonelius Smithという人は初聞きだと思うが,Rahsaan Roland Kirkとも共演していたということで,なるほどなぁという感じで聞いていた。打鍵が非常に強いのが特徴って感じの人である。「惑星空間」でお馴染みのRashied Aliもともすればフリー寄りの人と思われがちだが,ここでの演奏を聞けばコンベンショナルな演奏だってこなした上での,フリーなプレイだったということがわかる。結局,伝統に則るというのは大事なことなのだと思わせるが,それでもラストにMurrayとのデュオで演じられる"Cuttin’s Corners"は完全に「惑星空間」へのオマージュだが。やはりRashied Aliと言えばあれってことだなぁ(笑)。

全編に渡って,ぎりぎりコンベンショナルな域に留まりつつ,素晴らしい演奏を聞かせるDavid Murrayの実力発揮盤。星★★★★☆。

Recorded on February 11 & 12, 1993

Personnel: David Mu Murray(ts), Sonelius Smith(p), Wilbur Morris(b), Rashied Ali(ds), Taana Running(vo)

本作へのリンクはこちら

2025年8月28日 (木)

多様なゲストを迎えたDerek Trucks Bandの3rdアルバム。

_20250827_0001 "Joyful Noise" The Derek Trucks Band(Columbia)

間もなくTedeschi Trucks Band(TTB)としての新作リリースを控えるDerek Trucksであるが,Derek Trucks Band(DTB)時代の音源を久しぶりに聞いた。私はTTBのアルバムは全て保有しているし,ライブにも通っているから,贔屓にしていることは贔屓にしているのだが,私としてはSusan Tedeschi姐さんの声に少々飽きてきたということもあるし,企画アルバムが続いていることもあり,実のところDTBの方がよかったかもなぁなんて感じることがあるのも事実だ。

このアルバムはDTBとしての3rdアルバムになるが,Kofi Burbridgeが参加した初作になる。Kofi Burbridgeはその後,TTBの創設メンバーともなるが,惜しくも2019年に世を去ってしまった。TTBは現在も毎年彼を偲んで"Kofi Burbridge Day of Service"として追悼ボランティア・イベントを呼びかけ,各地で開催されている。即ちKofi Burbridgeは現在のTTBの基盤を作った一人と言ってもよい重要人物である。

そんなDTBが本作ではいろいろなジャンルのゲストを迎えているのが面白い。Susan TedeschiやSolomon Burkeはわかるとして,Rahat Fateh Ali KhanやRubén Bladesまで参加しているのには驚いてしまう。逆に言うとやや取っ散らかった印象があるというのも事実。ただ,冒頭から聞こえてくるDerek Trucksのスライド・ギターの音を聞けば,それだけでもOKとなってしまうのが,ファンの弱みってところではあるし,Solomon Burkeが入った2曲はいかにもの歌いっぷりで,ディープ・ソウルとの融合ぶりも楽しいのだが。

しかし,演奏として一番私が燃えてしまったのが9曲目の"Lookout 31"。少々異色にさえ響くが,フリー・ジャズ的な響きすら感じさせる瞬間もある,キメの効いたギターとオルガンのユニゾン・プレイにはぞくぞくするし,この人たちは何でもできると思ってしまう。そして最後を締めるのが何と"Frisell"と題した曲。タイトルからすると,Bill Frisellにインスパイアされているようにも感じられるが,Derek Trucksとビルフリでは容易には結びつかないところだ。ギターのトーンもビルフリとは違うよなぁというところで,なんでこのタイトル?って疑問は残るものの,なかなかムーディな演奏だ。

いずれにしても,いろいろな音楽性を取り入れていることが明確なアルバムだと思うが,捉えどころのなさも感じるところが難点。ギターの腕は確かだし,Kofi Burbridgeの貢献度の大きさは顕著だが。ちょいと甘めの星★★★☆ってところ。

Personnel: Derek Trucks(g), Todd Smallie(b, vo), Yonrico Scott(ds, perc, vo), Kofi Burbridge(key, fl, vo) with Count M'Butu(perc), Javier Colon(perc, vo), Solomon Burke(vo), Rahat Fateh Ali Khan(vo), Rubén Blades(vo, clap, perc), Susan Tedeschi(vo)

本作へのリンクはこちら

2025年8月27日 (水)

またも白黒映画だが,これは何度も見た「真昼の決闘」を再見。

High-noon 「真昼の決闘("High Noon")」(’52,米)

監督:Fred Zinnemann

出演:Gary Cooper, Thomas Mitchell, Grace Kelly, Lloyd Bridges, Katy Jurado, Lon Chaney, Jr.

私がこのところ見ている白黒映画は,未見,もしくは見たとしてもはるか記憶の彼方みたいな作品を選んで見ているのだが,今回は例外処理(笑)ってことで,この名作を再見である。私は本作のDVDも保有しているはずだし,敢えてストリーミングで見なくてもよいようなものだが,DVDを探すのも面倒なので,Amazon Primeで見たものだ。

ストーリーの進行と実際の時間を合わせるというのは,先日取り上げた「罠」と同じなのだが,Gary Cooper演じる保安官に恨みを持つFrankie Millerを乗せた列車が,正午近くに到着するまでの時間をよりサスペンスフルに描くというかたちで,設定としての必然性はこちらの出来が上回っていることは言うまでもない。

それにしても保安官には感謝しつつ,誰も助太刀に入ろうとしない町の住民たちの姿と,孤独感に苛まれながらも男の意地あるいは正義感(だけ)で遺書までしたためながら対決に向かうGary Cooperの姿を対比して描くことで,人間の性を示したというところか。西部劇なんて活劇でいいのだというような人には,おそらく受けなかったであろう作品だが,ドラマとしてはすこぶるよく出来ている。焦燥感さえ示すGary Cooperが本作でオスカーの主演男優賞を受賞したのも頷ける演技である。

まぁこういうストーリーは当時の西部劇としては異色だったはずだが,リアリティを与えるシナリオだったなぁと思える。まぁ1対4の対決にしては...ってのは野暮ってことにしても,やはり名作だ。加えてGrace Kellyはこの頃からクールな別嬪だったなぁと改めて思わされた。まぁ,この時50歳を過ぎたGary Cooperの嫁役のGrace Kellyが22~23歳ぐらいだったってのはどうなのよってのは映画の出来に免じて目をつぶろう(笑)。ついでにLee Van Cleefが悪役の一人で出ているが,本作がデビュー作だったらしい。今見ると,若い頃の宍戸錠を細くしたみたいだなぁなんて思ってしまった。星★★★★★。

本作のDVDへのリンクはこちら

2025年8月26日 (火)

ブートで聞く懐かしのライブ音源:Herbie HancockのRockit Band。

_20250821_0001 "Rockit Japan" Herbie Hancock(Bootleg)

これはブートレッグ購入のオマケで付いてきたギフト盤のCD-R。Herbie HancockがRockit Bandを率いて,1984年のLive under the Skyに出演した時の音源だ。84年と言えば,私はGil Evans Orchestraの演奏を聞きに行った年だが,狂ったジャコパスのせいで,不愉快な思いをさせられた記憶しかない。そんなことなら,こっちを見に行けばよかったと思っても後の祭りである。

Herbie Hancockは時代に即した音を提供することに長けている人であり,アルバム"Future Shock"が出た時もヒップホップとジャズの融合を進めるのに成功したと言ってよいと思う。そんなHerbie Hancockがその筋の音楽をライブで再現したのがこの時の演奏ということになる。YouTubeを探ってみると,この時の演奏は映像化もされているようだから,このブートのソースも映像版もしくはNHKで放送したFM音源のどちらかだろう。

まぁ野外ライブらしいお祭り感に満ちた演奏と言うべきもので,ノリノリで楽しめばいいという感じだが,映像版を見ると時代を感じるなぁって感じのHerbie Hancockの姿が確認できる。むしろここは映像なしで音だけで楽しんだ方が私にはベターだと思えた(笑)。"Stars in Your Eyes"なんかは完全にブラコン路線と言ってもよいものだが,それはそれでBernerd Fowlerの歌を聞いていればOKだ。

収録時間の関係で完全版とは言えないものの,おそらくここに収録されていない演奏ではFoday Musa Susoあたりがフィーチャーされた演奏だろうし,この路線とは異なるものだから,それはそれでよしとすべきだろう。まぁ所詮無料ギフトでもらったものなのだから,文句を言う筋合いでもないしねぇ。

Recorded Live at よみうりランド オープンシアターEAST on July 30, 1984

Herbie Hancock(key, synth), Jeff Bova(key), D.S.T(turntables), Wayne Blathwaite(b), J.T. Lewis(ds), Anton Fier(ds), Bernard Fowler(key, vo), Foday Musa Suso(talking ds)

2025年8月25日 (月)

J.J. Caleの"Shades":残り少なくなったJ.J.のアナログ盤の一枚。

Shades "Shades" J.J. Cale(Shelter)

一時期,私はJ.J. Caleのアルバムを全て保有するほどはまっていた時期があるものの,アナログとして最後に買ったのは"#8"で,それ以降のアルバムではCDでの購入となっているが,買ったのはライブ盤と3枚組ベスト盤,未発表音源盤,Eric Claptonとの共演盤ぐらい(と言いつつ,結構買っているな:笑)となった。今やアナログは"#8"と本作が手許に残るだけになってしまったが,それでも決して嫌いになった訳ではなく,J.J. Caleの醸し出す枯れた味わいはいまだに魅力的ではある。

しかし,このアルバムも保存状態が悪かったとは思わないのだが,なぜかジャケもライナーにも結構カビが生えてしまったことに,このアルバムのプレイバック頻度が表れているように思う。極力保存状態には気をつけていても,ちゃんとメンテ(≒プレイバック)をしないと,残念ながらカビる時はカビてしまうということだ。

それはさておきだが,このアルバムに限らず,J.J. Caleのやっている音楽には大きな変化があるはずもなく,どう聞いてもJ.J. Caleのサウンドになっている。それを踏まえれば,例えば"Naturally"等ではなく,なぜこのアルバムを残したのかも,正直理由がはっきりしなくなってしまった。まぁそれでも,J.J. Cale節みたいなものを楽しめばいいと思うのだが,このアルバムの特徴は参加メンバーの多さで,いつものJ.J. Caleとは言え,新機軸を探ったと思わせる節がない訳でもない。Leon Russell,James Burton,Carol Kaye等もそれぞれが1曲だけだが入っているし,ドラマーも多数ということで,いろいろなセッションを組み合わせたバラエティ感はあると言ってもよいだろう。だからこそ,それでも変わらないというのがJ.J. CaleのJ.J. Caleたる所以か。

ということで,突出した曲はないようにも思うが,それなりには楽しめるアルバムではある。星★★★★。それにしても,廉価盤とは言え,J.J. Caleのアルバム群がいまだに国内盤にカタログが残っているってことはそれなりにニーズがあるってことだな。

Personnel: J.J. Cale(vo, g, p), Tommy Tedesco(g), Reggie Young(g), Johnny Christopher(g), James Burton(g), Bill Boatman(g), Gordon Shryock(g), Christine Lakeland(org, p, synth, g, perc, vo), David Briggs(p, el-p), Bobby Emmons(org, p), Glen D. Hardin(p), Larry Bell(el-p), Billy Payne(p), Leon Russell(el-p), Carol Kaye(b), Tommy Cogbill(b), Michael Rhodes(b, g), Emory Gordy(b), Nick Rather(b), Russ Kunkel(ds), Kenneth Byttrey(ds), Hayward Bishop(ds), Jim Keltner(ds), Jimmy Karstein(ds), Hal Blane(ds), Gary Allen(ds), Karl Himmel(ds), Dennis Solee(sax)

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2025年8月24日 (日)

オスカーで国際長編映画賞に輝くのもうなずける「アイム・スティル・ヒア」。

Im-still-here 「アイム・スティル・ヒア("Ainda Estou Aqui")」(’24,ブラジル/仏,Sony)

監督:Walter Sallas

出演:Fernanda Torres, Selton Mello, Valentina Herszage, Bárbara Luz, Guilherme Silveira

ポスターだけ見ていると,幸せなファミリー映画のようにさえ映るが,これは昨年見た「夜の外側」同様,国によりもたらされた「闇」が描かれており,陽気なラテンしか想起していなかったブラジルにおいて,こんなことが起きていたのかと思わされる実話に基づくストーリーであった。前段は極めて牧歌的な感覚で話が進む中で,突然Selton Mello演じる父親であるRubens Paivaが連行されるあたりから,急にテンションが高まる。

このストーリーは1971年,1996年,そして2014年という3つの時間軸で描かれる中で,71年のシークェンスが最も長く,そして最もテンションが高い。そしてそこに描かれる軍事政権の横暴はまさに人権無視であったことを改めて告発する映画となっていて,事実の恐ろしさを追体験させるという点で,ブラジル人にとっても受け入れづらい部分もあったのではないかと思わせた。

役者陣は全てが好演と言ってよい演技だし,エンディングで実際の写真を見せて,映画で描かれたシーンを改めて振り返らせるというのもいい演出だったと思う。2014年のシークェンスで,年老いた主人公を演じたのはFernanda Torresの母親,Fernanda Montenegroというのもキャスティングの妙であった。

こうした映画にオスカーを与えるところに,映画人のリベラルな姿勢が表れていると思うが,そんなことは抜きにしても,十二分にオスカーに値する優れた作品であったと言いたい。見ていて辛くなる部分もある重い映画ではあるが,これは見てよかったと思える傑作。星★★★★★。

2025年8月23日 (土)

ポップにして大仰って感じのBostonの2ndアルバム。

_20250819_0001"Don’t Look Back" Boston (Epic)

一生を風靡したと言ってもよいBostonである。デビュー・アルバムの"More Than a Feeling"はつくづくいい曲だったと思うが,デビュー・アルバムのヒットを受けての2ndアルバムへの期待値は無茶苦茶高かったと記憶する。まぁほぼ前作踏襲のサウンドであれば売れるよねぇと思いたくなるアルバムだし,私の高校の同級生も結構買っていたように思う。

私はその頃は自分の音楽的な趣味が結構はっきりしてきた頃だし,ジャズも聞き始めた時期だったので,タイトル・トラックはFM等で聞いてはいても,このアルバムも購入して,全編を聞いたのはずっと後年になってからのことであった。

基本的にはTom Scholzのワンマン・バンドにヴォーカルのBrad Delpがいれば,Bostonは成立してしまうってところだが,何かと言えばMIT出身と学歴に関して語られたTom Scholzの多能ぶりには改めて驚くってところではある。ただ,エンジニアリング・オタクぶりからか,レコーディングに時間が掛かり過ぎて,レーベルと裁判沙汰になったのは不幸なことでもあった。その後リリースされた3rdアルバム"Third Stage"は私はリアルタイムで聞いていたはずだが,やはり時間が掛かり過ぎた感は否めなかったように思う。そして私にとっては97年に出たベスト盤を最後にBostonは打ち止めとなっているが,これまでもおそらくはこれからもベスト盤がBostonに関しては一番の愛聴盤(あるいはそれで十分)だろうと思っている。

このアルバムもそこそこの曲は揃っていると思うが,アルバム単位で聞くと,この人たちはシングル盤をヒットさせるバンドだったかもなぁって思ってしまうのも事実。ということで,懐メロ気分で聞いた私であった。ちょいと甘めの星★★★★としておこう。

Personnel: Tom Scholz(g, b, org, p, perc), Brad Delp(vo, g, perc), Sib Hashian(ds, perc), Barry Goodreau(g, perc), Fran Sheehan(b, perc) & Others

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2025年8月22日 (金)

久しぶりのブラックホークの99枚:今日はBryn Haworth。

_20250818_0001 "Sunny Side of the Street" Bryn Haworth(Island)

時折私が取り上げているのがブラックホークの99枚である。何度も書いたと思うが,この99枚のセレクションは全部ではないとしても,かなりの確率で私の音楽的な嗜好に合致したものであり,あるいは私の音楽的な嗜好に影響を与えてきた。なので,結構な枚数を保有するに至っている訳だが,このブログに取り上げていないアルバムも多々あるってことで,今日はBryn Howorthが74年にリリースしたこのアルバムである。アルバムの帯にはUKホワイト・ソウルなんて書いてあるが,その後はキリスト教に根差したロックを歌う歌手として活動しているようだ。古希をとっくに過ぎた今でも現役で活動しているようだし,アルバムも多数リリースしているから,相応のポジションはキープしてきたようだ。

私はブラックホークの99枚では渋いSSW系の音を好んでいるのだが,このアルバムの前半はホワイト・ソウルと言うよりもスワンプ系のサウンドと呼んだ方がよいかもしれないが,後半になるともう少しキャッチーな音やファンク・チューンも聞かれて,どのあたりが本音なのかよくわからない部分もあるのだが,特に"Heaven Knows"なんかはウエスト・コースト的な音と言ってもよい。さまざまな音楽性を吸収したアルバムと言えるが,この人の魅力はその歌声にあると思える。加えてギターのクレジットはJim Mullenが1曲だけあるだけなので,そのほかは本人が弾いていると考えれば,ギターの腕も確かなのもいいねぇ。

トラッド系のミュージシャンも参加しているが,トラッドとも,純粋なSSW系とも異なるサウンドで,これはなかなかに魅力的なアルバムであった。英国産ながら,米国の香り漂うと言うべきだろう。やはりブラックホークの審美眼に誤りはなかったと思わせる。星★★★★☆。

Personnel: Bryn Haworth(vo, g), Jim Mullen(g), Chris Stainton(p, org), Tony O'Malley(p), Pete Wingfield(key), Alan Spenner(b), Dave Pegg(b), Pat Donaldson(b), Bruce Rowland(ds, perc, marimba), Dave Mattacks(ds), Terry Stannard(ds), Dave Swarbrick(fiddle), Alan Munde(banjo), Mel Collins(horn), Madeline Bell(vo), Lee Vanderbilt(vo), Joanne Williams(vo), Frank Collins(vo), Dyan Birch(vo), Paddy McHugh(vo), Gianin Loringet(tap), Diga & Planet(clap)

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2025年8月21日 (木)

聞いていて心地よいMichel Legrandのライブ盤。

At-shellys-mannehole "At Shelly's Manne-Hole" Michel Legrand(Verve)

Michel Legrandは作曲家として数々の優れた映画音楽を残している。ちょっと思い出すだけでも,「シェルブールの雨傘」,「華麗なる賭け」,「おもいでの夏」辺りが頭に浮かぶ。その一方でジャズ・アルバムも残していることは誰もが知るところだ。代表的なのはMiles Davis等を迎えた"Legrand Jazz"だろうが,このブログでは後にGryphonレーベルに残した"Jazz Le Grand"をブログ開設の年に記事にしている(記事はこちら)。そのアルバムも今や行方不明であるが,上述の2枚はアレンジャーとしての側面が強調されていたように思える。しかし,このライブ盤はあくまでもピアニストとしてのMichel Legrandの魅力を捉えたものとして,性格が異なる。

このアルバムでは,Michel Legrandの有名オリジナルは「シェルブールの雨傘」からの"Watch What Happens"だけで,ここでのオリジナルはトリオ3者の共作ということになっているから,ジャム・セッションの延長みたいな自然発生的なものというのが面白い。そこに加わるのがMichel Legrandと同質の音楽性を持つと言ってもよいJohnny Mandelの"A Time for Love"と有名スタンダードが2曲という構成。

冒頭の"The Grand Brown Man"から軽快そのものと言ってよい演奏であり,これを聞いてまずは嬉しくなる。全編を通して軽快かつ心地よい演奏が続き,これがなかなか楽しいアルバムで,Michel Legrandがピアニストとしても大した腕前だったということも改めて認識できるアルバムと言っていいだろう。まぁ"My Funny Valentine"で聞かせる鼻歌(+スキャット)みたいなのが必要だったかはさておき,久しぶりに聞いてみて,この洒脱さを楽しんだ私であった。ブルーズをやっても,全く黒さを感じさせないのもMichel Legrandらしい(笑)。星★★★★。

Recorded Live at Shelly’s Manne-Hole on September 5, 1968

Personnel: Michel Legrand(p, vo), Ray Brown(b), Shelly Manne(ds)

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2025年8月20日 (水)

夏休みの終わりに見た,またも白黒映画:「そして誰もいなくなった」。

And-then-there-were-none 「そして誰もいなくなった("And Then There Were None")」('45,米,Fox)

監督:René Clair

出演:Barry Fitzgerald, Walter Huston, Louis Hayward, June Duprez, Roland Young, Richard Haydn

夏休みの最終日に見たのがこの映画であった。原作はAgatha Christieの誰しもが知る名作で,本作は「そして誰もいなくなった訳ではない(笑)」戯曲に準じたシナリオに基づいたストーリー。監督はアメリカに亡命中のフランスの名匠,René Clairである。日本で公開されたのは本国での公開から30年以上経過した1976年のことであった。私はその時見に行くことはなかったが,まだ映画にはまっている頃だったので,公開されたことは記憶にあった。

ストーリーは知っている人は誰もが知るものだが,ネタバレになる内容を書かないのがマナーなので,ここではストーリーについては詳しくは書かない。私は毎度お馴染みAmazon Primeでこの映画を見たのだが,特に冒頭部の画質は相当悪く,全編を見られるか心配になってくるのだが,その後ある程度は持ち直すので,最後まで見続けたことは言うまでもない。

それにしても出ている役者は地味と言えば地味だが,これぐらいの方がリアリティがあっていいと思えるキャスティングである。Barry Fitzgeraldは「裸の町」でも渋いことこの上なかったし,Walter Hustonは監督として名を成すJohn Hustonの父であるから,即ちAnjelica Hustonの祖父に当たる名優。執事役を務めるRichard Haydnは「サウンド・オブ・ミュージック」でマックスおじさんを演じたRichard Haydnその人だが,ここではイギリス訛りを利かせたせりふ回しを聞かせているが,後の姿とは見た目からして相当異なっていて,Richard Haydnと気づかなかった私であった。

シナリオ自体が戯曲に基づくものなので,舞台劇に近い感覚を与える映画だが,古臭さは当然あるとしても,十分に鑑賞に耐える映画となっているのがRené Clairの技ってところか。星★★★★。

本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年8月19日 (火)

John McLaughlinの新譜はモントルーでの2022年ライブ。

John-mclaughlin-montreux-2022 "Montreux Jazz Festival 2022" John McLaughlin & the 4th Dimension(e-a-r music)

John McLaughlinのアルバムはShaktiとのものもリリースされているが,私は未聴。別に嫌いって訳ではないのだが,積極的に聞こうとしていない。しかし,今回の新作は4th Dimensionとのエレクトリックなライブなので,ついつい買ってしまうのがいつものパターンとなっている私である。本作はライブ音源をCD2枚に収め,Blu-rayも同梱した3枚組でのリリース。私は映像はあまり見ないクチなので,まずは音からである。

コロナ禍の中で"Liberation Time"をリリースしていたJohn McLaughlinであるが,そのアルバムについても私は「高齢者はかくありたいと思わせる」なんて記事に書いているが,本作は2022年の演奏であるから,John McLaughlinは既に傘寿を迎えていたのである。しかし,音を聞いている限り,とても80過ぎの爺さんの演奏とは思えないところはやっぱり凄い。

そんな中で,このアルバムは私が苦手とするRanjit Barotが抜け,"Liberation Time"にも参加していたNicolas Viccaroにドラムスが代わっていることが注目。更に新機軸と言うべきは,キューバ出身のJany McPhersonのヴォーカル,ピアノをゲストとして迎えていることだ。しかし,クレジットを見ると,ゲスト扱いと言うよりバンドの一員扱いとなっていて,このライブにおいて彼女がどの程度演奏に参加したかをBlu-rayの映像で確認したところ,最初から全面参加であったのは少々驚きであった。

新加入のNicolas Viccaroのドラムスは派手さはないが,きっちりこのバンドを支えているという点では,私にはうるさいだけのRanjit Barotよりはるかに好感度が高い。おそらくだが,CD2の4曲目,"Echoes from Then"ではGary Husbandとのツイン・ドラムスでやっているはずだが,この辺はやっぱり燃えさせてくれるのはGary Husbandゆえか?

一方のJani McPhersonに関しては正直なところ若干微妙。ヴォーカルが加わるのは否定しないが,4th Dimensionという超タイトなバンドにこの人の声が必要だったか?と感じてしまうのだ。しかもヴォーカルが最初に出てくるのがPharoah Sandersの"The Creator Has a Master Plan"ってのもどうなのよ?って思ってしまう。しかし,John McLaughlinは2023年のツアーにもこの人を迎えて演奏したようだから,John McLaughlin自身は気に入っていたのかなぁなんて思ってしまうが,私にとってはいてもいなくてもよいってところ。だが,アンコールで聞かせるギターとヴォーカルのユニゾンとかはエグいと思わせるし,どれを聞いても同じに聞こえるという日頃の演奏からは脱却したってところかもしれないが(笑)。

さすがに顔は老けたとは言え,John McLaughlinが傘寿を過ぎても現役でバリバリ弾きまくっているところには感心してしまうのだが,演奏としては星★★★★ってところ。それにしてもよく指が動くねぇ...。

Personnel: John McLaughlin(g, vo), Gary Husband(key, ds), Etienne M'Bappe(b, vo), Nicolas Viccaro(ds, vo), Jani McPherson(vo, p)

本作へのリンクはこちら

2025年8月18日 (月)

夏枯れ...。

夏休みの期間中,出歩く機会が多く,あまりゆっくりと時間を過ごしたという感覚がない。そうした生活を送っていると,音楽をのんびり聴く機会もなく,これなら通常の方が音楽を聞けているなんて思ってしまう。それでも,記事はアップを続けてきたつもりだが,ほとんどは事前に書いていたストック記事であった。音楽シーズンでもないので,目新しい新譜が出てくる訳でもなく,出たとしても情報を入手できていないことも多くなったように思う。

これは「夏枯れ」という季節性のものとも言える一方,ストリーミングの普及により,媒体を購入する機会が激減していることも影響していて,以前のように,「買ってすぐに聞きたい!」という衝動がなくなってきたことは否定できない。そういう意味ではストリーミングの「いつでも聞ける感(笑)」は罪作りだとも思える。反面,昨今のLP復権は,ストリーミングでは決して得ることができない,レコードやジャケットの手触り感を求める人が増えたことによるもののように感じられるのだ。

これまでは,私は新しい音楽にも極力目を向けようとしてきたところはあったが,結局のところ,趣味に合わない新しい音楽に敢えて目を向けるよりも,自分が好きな音楽を聞いている方がずっと楽だというのが実態で,自分の音楽の聞き方も随分変わったと考えた夏休み最終日であった。これも加齢によるものとも思えるが...(苦笑)。

2025年8月17日 (日)

実力者トリオによるほぼスタンダード集。

_20250812_0001 "My Funny Valentine" 本田竹曠/井野信義/森山威男(CBS Sony)

本当ならば断捨離をしなければならないのだが,まずはその前段として部屋の片付けをしながら,ラックから取り出したのがこのアルバム。正直言って部屋はちっとも片付いておらず,そろそろCDを売りに出さないと無理だなぁと思いつつ,このアルバムは一軍半(笑)の棚に収まっていたもの。日本ジャズ界の実力者が3人揃って,ほぼスタンダードをやるのだから,おかしなことにはならないだろうが,このメンツにしては随分真っ当なアプローチで臨んだものだと思いたくなるアルバム。後にジャケを変えて再発されているが,これは私がかなり前に中古盤屋で対を成す"In a Sentimentall Mood"共々ゲットしたもののはずだ。

ライナーを見てみると,録音は1985年だから,もう40年前である。それは私が会社に就職をした年でもあるが,思えばそれから長い年月が流れたものだ。だが,ここで演じられるような音楽に関して言えば,その魅力は現在でも不変と言ってもよく,それがジャズという音楽のいいところだと思える。ロックに関して言えば昨今は80年代の音楽を再評価する動きもあるようだが,それでも時代感というのは確実に存在すると思える。テクノロジーの進化もあれば,音楽的な変化もある中で,こうしたアコースティック・ジャズは年月を経過した現在においても,同様の演奏が行われていることもある。もちろん,現代的な要素を取り入れた演奏も多々あるが,この手の演奏形式は普遍的な魅力を持っていると考えてもよい。

ただ,上述の通り,このアルバムにおけるアプローチは「真っ当」に過ぎるきらいがあり,この3人ならではと言えるかは疑問を感じる部分はある。もちろん,こういう演奏もできることはよくわかるとしても,これが当時のリスナーがこの3人に求める音であったとは思えないのだが,どうだろうか。私は,アルバムとしては性格が少々異なるが,本田竹曠なら"Boogie-Boga-Boo"のようなイケイケ感が多少あってもよかったのではないかと思っている。これだけのメンツゆえ,決して悪い演奏ではないが,ラストの"Round about Midnight"での井野信義のベースの大フィーチャー等の新機軸はあれど,それでも無難過ぎる感じもあって,星★★★☆ってことにしておこう。

Recorded on April 3 & 4, 1985

Personnel: 本田竹曠(p), 井野信義(b), 森山威男(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年8月16日 (土)

中古で入手したHamiet Bluiettの"Endangered Species"。

Endangered-species "Endangered Species" Hamiet Bluiett(India Navigation)

その名も「絶滅危惧種」かぁ(笑)。自虐ネタと言ってもよいタイトルだが,Hamiet Bluiettがここで演奏していたようなジャズは当時の絶滅危惧種だったかもしれないなぁなんてことを思ってしまう。

これは先日中古でゲットしたもので,Hamiet BluiettのIndia Navigationレーベルにおける第1作と思われる。私はネットや店頭でHamiet Bluiettのリーダー・アルバムやIndia Naviagationレーベルのアルバムを見つければ,条件さえ整えば,極力購入するようにしているのだが,両方に相当するこのアルバムはCD化もされておらず,なかなか状態のいい盤も出てこないこともあって,これまで入手できていなかったものだ。先日,中古で値段はそこそこ,状態は結構いいものが出たのですかさずゲットである。

なんで私はHamiet Bluiettが好きなのかと改めて考えてみると,この人のブルーズに根差した若干フリー寄りの演奏と,バリトン・サックスの野太い響きに魅かれるのだろうと思ってしまうが,本作でもHamiet Bluiettらしい演奏ぶりに嬉しくなる。本作がライブ・レコーディングというのは今回購入して知った訳だが,録音されたのはLadies’ Fortなるロフトだそうだ。所謂ロフト・ジャズにカテゴライズしていいってことになるが,このLadies' Fortがどういうヴェニューだったのかは今や知る由もなしだが, 興味深いところではある。ネットで調べてみると,所在地はBond StreetだったらしいからNoHo/イースト・ヴィレッジあたりに位置していたってことだな。まぁ,場所もいかにもってところだ(笑)。

本作の編成はフロントがHamiet BluiettとOlu Daraというブルーズにルーツを持つ2人ということで,そもそも期待値が高まるが,そこに加わるのがJumma Santosのバラフォン。バラフォンというのは西アフリカで使われる木琴だそうだが,メロディ楽器と言うよりもここでは パーカッション的な使われ方と言ってもよいだろう。そこにリズムが加わるという編成で,いかにもな演奏が展開されるのだが,このアルバムの音が相当生々しい。その中でPhilip Wilsonのドラムスの録音は少々クリアさに欠けるという感はあるものの,私のしょぼいオーディオ・セットで聞いてもなのだから,ロフトでの実況録音にしては相当の好録音と言ってよいのではないか。特にJunie Boothのベース音がいいねぇ。

もはや半世紀近く前のアルバムでありながら,こういう生々しい音を聞きながら,往時のNYCのロフトに思いを馳せるというのも実に嬉しい体験であった。まずは本作を入手できたことを喜びたいということもあり,ついつい評価も甘くなり,星★★★★☆。

Recorded Live at the Ladies' Fort on June 19, 1976

Personnel: Hamiet Bluiett(bs, fl), Olu Dara(tp), Jumma Santos(balafon), Junie Booth(b), Philp Wilson(ds)

2025年8月15日 (金)

またも見ました白黒映画:今回はRichard Widmarkのデビュー作,「死の接吻」。

Kiss-of-death 「死の接吻("Kiss of Death")」('47,米,Fox)

監督:Henry Hathaway

出演:Victor Mature, Brian Donlevy, Coleen Gray, Richard Widmark, Taylor Holmes, Karl Malden

先日,マカロニ・ウェスタン「殺しが静かにやって来る」に浮気をして,う~む...となってしまった反省を込めて,またも往年の白黒映画に復帰である。今回の作品はRichard Widmarkのデビュー作として知られる「死の接吻」だったのだが,Ben Hechtがシナリオに関わっていることからしても,そもそもおかしなことにはならないと思わせる。そしてロケーションを中心として描かれる当時のNYCの風景には惹かれるものがあるが,冒頭の宝石強盗のシーンはクライスラー・ビルで撮られたとのことだ。

なかなか複雑な話と言ってしまえばその通りだが,主演のVictor Matureと言えば,「荒野の決闘」でのDoc Hollidayが印象に残る中で,本作では随分と違う感じで演じているのが面白かった。助演のBrian Donlevyも渋い。Coleen Grayという女優は初めて見たように思う(あるいは見たことがあっても覚えていない)が,緊張感が続く映画においてフィルム・ノワールに付きものの悪女的要素はゼロで,アメリカ的爽やかささえ感じさせる役割ではあるものの,決して印象に残るって訳ではない。しかし,この映画は何と言っても悪役Tommy Udoを演じるRichard Widmarkこそが一番の見ものと言ってもよい作品で,後の「悪役」としての存在感を決定づけたのは本作における演技だったことは間違いない。とにかく極悪非道を絵に描いたような役柄で,とにかく悪いのだ(笑)。

エンディングが結局どうなったのかは若干曖昧な部分を残しているようにも思えるが,ストーリーをはるかに越えるのがRichard Widmarkの存在感。この映画でのRichard Widmarkの笑い方を見れば,真似したくなること必定。ということで,Richard Widmarkという役者の存在感を決定づけた映画としてだけでも記憶すべき映画。星★★★★。

本作のDVDへのリンクはこちら。ストリーミングへのリンクはこちら

2025年8月14日 (木)

ストリーミングで70年代ロックを聞いていると,プレイバック頻度の高いLynyrd Skynyrd。

Second-helping"Second Helping" Lynyrd Skynyrd(MCA)

主題の通りである。私はストリーミングで70年代ロックのランダム・プレイを聞くことが多いのだが,大体曲は決まっているって感じで,Lynyrd Skynyrdに関しては本作所収の"Sweet Home Alabama"一択である。Lynyrd Skynyrdと言えば私が保有しているのはライブ・アルバム,"One More from the Road"だけで,それも頻繁に聞いている訳ではない。私のアメリカン・ロック指向の強さからすれば,もう少しLynyrd Skynyrdのアルバムを聞いていてもよさそうなものだが,そこまでのカバレッジではなかったってことで,縁遠かったと言ってもよい。同じサザン・ロックなら,圧倒的にAllman Brothers Bandの方を聞いているが,Allman Brothersとって熱烈なファンとは言えない。アメリカン・ロックの中ではサザン・ロックに対する嗜好はそれほど強くなかったと言ってもよいのだ。

今回,Lynyrd Skynyrdの2ndアルバムである本作をストリーミングで通しで聞いたのだが,これが人生初だったと思う。デビュー・アルバムから3作目まではAl Kooperがプロデュースしていたことは知っていたが,おそらくLynyrd Skynyrdの音がAl Kooperの嗅覚を刺激したのだろうと思う。いかにもアメリカ的な音のロックである。よくよく歌詞を見ると,まぁそれはアホ臭いと言ってもよいぐらいのもので,深みもへったくれもないってところで,結局彼らの音楽はノリが全てだよなぁなんて思ってしまう。

まぁそうは言ってもアメリカン・ロックらしいダイナミズムを聞いていれば,身体が揺れるのは事実だし,歌も演奏も全く破綻はないのだから,売れて然るべきであったと思う。もはや本作も半世紀以上前のアルバムとなって,懐メロの域ではあるが,私としてはやはり自分がティーンエイジャーだった頃の音楽には素直に反応してしまうのである。アルバムの最後にはJ.J. Caleの"Call Me the Breeze"をやっているが,曲はいかにもJ.J. Caleなのだが,演奏は完全にLynyrd Skynyrdで,J.J. Caleの個性とは全く異なるのが面白かった。星★★★★。

Personnel: Ronnie Van Zant(vo), Gary Rossington(g), Allen Collins(g), Ed King(g, b, vo), Leon Wilkeson(b), Bob Burns(ds), Billy Powell(p) with Al Kooper(p, vo), Mike Porter(ds), Mary Clayton(vo), Clydie King(vo), Sherlie Matthews(vo), Bobby Keys(horn), Trevor Lawrence(horn), Steve Madaio(horn)

本作へのリンクはこちら

2025年8月13日 (水)

Rachael Yamagataの新作への期待が高まる。

Starlit-alchemy 私はRachael Yamagataがデビューしてからずっと彼女を強く推してきた。しかし,ここ暫くその活動も伝わって来なかったし,アジア圏でライブをやっても,いつも日本は素通りされていたのにはがっかりしていた。そんなRachael Yamagataの"Tightrope Walker"以来となる,何と9年ぶりのスタジオ作"Starlit Alchemy"がこの10月にリリースされるという情報が入り,その中から1曲"Bird"が先行公開されている。

2018年にはEP,"Porch Song"をリリースしているが,それからも既に7年が経過していることを考えれば,随分と長い沈黙であった。"Porche Song"も基本はダウンロード・オンリーだったのだが,それが韓国で1,000枚限定で媒体化されたのを入手したのが2022年,そのほかにも"Acoustic Happenstance"等もリリースしているし,韓国では既発曲を集めたコンピレーション"Heartache Moon"も出ているが,純粋なフル・アルバムは"Tightrope Walker"以来なのだ。まさに渇望していたと言っても過言ではない。

私はこの1曲を聞いただけで新作への期待値が大いに高まったことは言うまでもない。一刻も早いデリバリーを待ちたい。ということで,公開されている"Bird"のリンクを貼り付けておこう。

2025年8月12日 (火)

ストリーミングで見た「劇場版 ドクターX Final」。

X_20250808173101 「劇場版 ドクターX Final」(’24,東宝)

監督:田村直己

出演:米倉涼子,田中圭,染谷将太,内田有紀,岸部一徳,西田敏行,遠藤憲一,勝村政信,鈴木浩介,今田美桜

何だかんだ言って,「ドクターX」は全シーズン見ている私である。なので,劇場版が公開された時も行くだろうと思いつつ,タイミングが合わず行き損なってしまったのだが,ストリーミングが解禁されたので,早速見たのであった。

まぁ荒唐無稽なところのあるドラマではあったが,このストーリーはかなり無理があるなぁと思いながら,これで最後と思うとちょっと寂しい。そうは言っても,改めてドラマ・ヴァージョンを見ればいいのだが。

私はほとんどTVドラマを見ないクチで,例外はあるものの,リアルタイムで見るのは大河ドラマぐらいのものだ。それ以外の場合は,配信されたものを見てから後付けではまるって感じだ。「ドクターX」も例外ではなく,初期のシリーズをストリーミングで見てからリアルタイムでも見るようになったのは随分後になってからのことであった。

シリアスな要素とコミカルな要素を組み合わせたのもこのドラマの特徴だったと思うが,この映画のエンディングの過去の映像を見ていると,米倉涼子の変貌ぶりが結構凄いねぇなんて感じて,時の流れも感じた私であった。それに比べると内田有紀の印象が全然変わらないのも逆に凄いと思ってしまった。

まぁ本作はあくまでもTVシリーズの延長であって,映画として評価するのは野暮だと言っておこう。このシリーズのファンが楽しめばそれでいいのだ。ただ,中園ミホにしてはこのシナリオは...ってところがあるのも事実だと言っておこう。

2025年8月11日 (月)

YMOのライブ・アンソロジー:もはや"Faker Holic"は無用の長物か?

Ymo "YMO 1979 Trans Atlantic Tour Live Anthology" Yellow Magic Orchestra(Alfa/Sony)

この限定生産のボックスが春先にリリースされた際には即完売みたいになって,転売ヤーが無茶苦茶な値段で売りに出していた曰く付きのYMOのライブ・アンソロジーである。この度,めでたくアンコール・プレスされたものがデリバリーされた。アンコール・プレスが発表された段階で,さぞや臍を嚙む思いをした転売ヤーも多かっただろうが,ざまぁ見ろってところだ(笑)。しかし,このアンコール・プレス品ですら,受注生産だっただけに,既にプレミアムを付けた商品が出ているのは許しがたいが。

今回収録されている音源は"Faker Holic"や"Public Pressure"としてもリリースされているが,後者は渡辺香津美のギターが収録されないという決定的な瑕疵があった。だからこそ"Faker Holic"の価値は高かったし,中古盤市場でも高値で取引されていたというところだ。しかし,その音源がこうしたボックスとして出てしまうと,正直なところ,"Faker Holic"の存在意義は薄まったと言ってもよいように思う。しかし,考えようによっては,様々なヴェニューにおけるベスト・テイク集だと考えるとその価値は維持されるかもしれない。

但し,"Faker Holic"収録のテイクが本当にベストな選択かどうかは,今回のボックスに収録された演奏を聞いて判断する必要があるだろうが,そういうマニアックな聞き方を私がするかと言えば,多分しない(笑)。今や細野晴臣だけが生き残りとなったYMOの往時の活動を懐かしく聞けばいいという感じだ。まぁGreek Theaterでのライブを収めたディスク1は"Faker Holic"とは異なる音源で,Tubesの前座で出た時の演奏だそうで,既に公開されていたものだが,そのほかのディスクの音源は初出のものも含むので,Greek Theaterに加え,ロンドン,パリの音源は分売されるそうだ。最終的にはボックスに収録された演奏は全部分売されるってことになるかもしれないが,基本的にやっているレパートリーに変化はないので,これってやっぱりマニア向けかもしれないな。

"Faker Holic"同様,私は渡辺香津美の弾きっぷりを聞きたくてこのボックスも買ったようなものだが,それでも十分マニアック?

Personnel: 坂本龍一(key),細野晴臣(b),高橋幸宏(ds, vo),松武秀樹(prog),渡辺香津美(g),矢野顕子(key, vo)

2025年8月10日 (日)

異色のマカロニ・ウェスタン,「殺しが静かにやって来る」をAmazon Primeで見た。

Il-grande-silenzio「殺しが静かにやって来る("Il Grande Silenzio")」(’68,伊/仏)

監督:Sergio Corbucci

出演:Jean-Louie Trantignant,  Klaus Kinski, Frak Wolff, Vonetta McGee, Luigi Pistilli, Marisa Merlini

ここのところの往年の白黒映画三昧から一旦離れて,趣向を変えて今回はマカロニ・ウェスタンである。前回この手の映画を取り上げたのは「野獣暁に死す」であったが,あっちは仲代達矢が悪役ということで見たようなものだ。一方,こちらはJean-Louie Trantignant主演というのにへぇ~となって見てみたのだが,これが異色のマカロニ・ウェスタンであった。

そもそも冬のユタを舞台にしているということもあって,マカロニ・ウェスタンで全編雪模様の中で描かれるというのがまず異色。そして,役柄上ではあるが,Jean-Louie Trantignantのセリフが一切ないというのがまたまた異色。そしてネタバレとなるので詳しくは書かないが,ストーリー展開が異色中の異色。

描写はマカロニ・ウェスタンらしく結構エグいところもあるが,スプラッター・ムービーに比べれば可愛いもの。いずれにしてもこのストーリーは...って感じで相当後味は悪いと言ってもよいのだが,これが主演のJean-Louie Trantignantの発案によるものという話もあるから,まぁそれもありということにしよう。いずれにしても,Jean-Louie Trantignantともう一人の主演と言ってよいKlaus Kinskiが憎たらしいことこの上なく,悪役とはこういうもんだと言いたくなるような感じであった。

いずれにしても,公開当時,この映画を観終わった観客がどういう気持ちで劇場を後にしたかというのは非常に興味深いと感じていた私である。正直言ってストーリーの展開はもう少しスピーディにできるようにも思えて,これがSergio Corbucciの限界かとも思いつつ,まぁこの異色の映画を見られたのは勉強になったと言っておこう。それにしてもJean-Louie Trantignantもいろんな映画に出るもんだねぇ。

ってことで,異色度に半星オマケして大甘の星★★★☆。そうは言っても,この程度の映画を見るなら,やはり往年の白黒映画に戻るべきだと感じた私である。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2025年8月 9日 (土)

Terri Lyne Carrington@Blue Note東京参戦記。

Teri-lyne-at-bnt

Terri Lyne CarringtonがヴォーカルのChristie Dashiellと双頭名義で"We Insist 2025!"をリリースしたのを受けて,Blue Note東京に出演したのを見に行ってきた。私が現地に到着したのは開場時間である19:45前後であったと思うが,ロビーにいる客数が明らかに少ないと感じた。私は演奏開始までにバーで一杯引っ掛けるのがルーティーンとなっているが,今回も同様で,30分ほどバーで過ごして客席に移動したところ,やはり聴衆が少ない。半分も入っていないのではないか。これがTerri Lyne Carringtonの人気がこの程度ということなのか,あるいは"We Insist 2025!"という響きにビビった人が多かったのかは謎だ。

Terri-lyne-carrington-at-bnt_20250827115001 元祖"We Insist!"と言えば,Max Roachが公民権運動に呼応して製作したアルバムであるが,実を言えば,私は"We Insist!"をこれまで聞いた記憶がない。それはそのアルバム・タイトルの響きに躊躇してしまっていたことは否めないから,上述のような仮説も成り立つかもしれないと思っていた。そんなこともあって,私もこのライブに行く予定はしていなかったのだが,「夜の部活(笑)」メイトのお誘いで予約をしたのは予約開始から暫くしてからのことであった。そして前日に届いた座席情報を見てびっくりしたのだが,ステージ前アリーナど真ん中最前列のまさにかぶりつきだったのだ。ありえねぇ~!,なんでやねん?と思っていたが,客入りの悪さを見て,なるほど...と思っていた。

しかし,ライブに先立って予習のためにストリーミングで聞いた"We Insist 2025!"はさまざまな音楽の要素を交えつつ,若干フリーな響きも感じさせる部分はあるものの,小難しいと感じさせるものではなく,ソウル・フレイヴァーの強い曲もあって,全然「怖い」ものではなかった(笑)から,もう少し聴衆がいてもよかったのではないかと思うのだが...。

演奏開始を待っている間,ステージ前方には結構なスペースがあるのはなんでやねん?と思っていたのだが,演奏が始まってChristiana Hunteが踊るためのスペースだったのねぇということで納得である。しかし,私としてはかぶりつきで見ていると,この踊りで音楽への集中が妨げられると感じていたのも事実。もっと大きい会場ならさておき,Blue Note東京のようなヴェニューではもう少し控えめでもよかったように思ったが,そういうバンドなんだから仕方ないか...。

それはさておき,Terri Lyne Carringtonのドラムスはまさにシャープそのものであり,そのタイトな響きが素晴らしかった。双頭リーダーであるChristie Dashiellのヴォーカルは私の座席のせいなのか,ミキシング・レベルが低く,バンドの音にやや埋もれていたのは惜しいと思ったが,それでも歌の実力は十分感じられるものであった。むしろ私にとっては正面にいたギターのMatthew Stevensの活躍ぶりの方が強く感じられる席だったとも言えるかもしれない。この人は以前Espenraza Spaldingと来た時も見ているが,テレキャス一本で勝負するのは相変わらずだが,やっぱり実力あるわ~と思いながら聞いていた。ベースのRashaan Carterはエレキでもアコースティックでも堅実にバンドを支えていて好印象であったが,ラッパのMilena Casadoはもう少しフィーチャーしてもよかったようにも思うが,その分Matthew Stevensが目立ったってことだ。

演奏後半ではそれまでの飲み過ぎがたたって,少々睡魔に襲われていた私であったが,演奏は相応に楽しめたと言っておこう。それだけに聴衆の少なさはつくづくもったいないと思えたのであった。尚,上の写真はBlue Noteサイトから拝借。

Live at Blue Note東京 on August 7, 2025 2ndセット

Personnel: Terri Lyne Carrington(ds), Christie Dashiell(vo), Matthew Stevens(g), Rashaan Carter(b), Milena Casado(tp), Christiana Hunte(dance, spoken word)

2025年8月 8日 (金)

懐かしの"Sugar Loaf Express"。

_20250807_0001"Sugar Loaf Express" Lee Retenour(JVC)

本作がリリースされたのは1977年のことなので,もはや半世紀近い時間が経過しているとは何とも恐ろしい(笑)。私がジャズやクロスオーヴァー・フュージョンを聞き始めた頃のことであり,本作に先立つ”Gentle Thoughts"は実に印象深いアルバムであり,Dave Grusinは不在ながらほぼ同じ編成での第2作はEric Galeをゲストに迎えたことで話題になったことも懐かしい。但し,私はアナログでは本作は入手しておらず,CD化された折に購入したもので,"Gentle Thoughts"とは異なり,リアルタイムで聞いた訳ではない。私はそもそもDave Grusinへの評価が高かったせいもあり,Dave Grusinがいないからいいやぐらいで考えていたのである。だが,ここでやったレパートリーは後にLee Ritenour自身の"Captain’s Journey"やEarl Klugh,Dave Grusinのアルバムでも再演されることになり,そのオリジナルとして聞く価値はありだということで,CD化の際に購入したのであった。

本作はGentle Thoughtsとしての第2作と言われていたはずだが,改めてこのジャケットを見てみると,Gentle Thoughtsという文字はどこにもなく,"Sugar Loaf Express Featuring Lee Ritenour"としか書いていない。まぁ契約関係等の大人の事情もあるかもしれないし,Ernie Wattsがいないからなのかもしれないが,まぁそれはさておきである。

このアルバムはやはりLee RitenourとEric Galeのツイン・ギターが注目ポイントだろうが,こうして聞いてみると,この二人の個性の違いが際立つ。Lee Ritenourのギターがソリッドで都会的だとすれば,Eric Galeのギターはよりアーシーだというところか。ここで演奏されているような曲調にはEric Galeは不釣り合いな気もしてしまう部分もあって,やはりEric GaleはStuff的な音の方にフィット感が強いと思う。まぁ,それでもやっている曲はなかなか魅力的であり,後にTevin CampbellがQuincy Jonesの"Back on the Block"でカヴァーするBrothers Johnson(ブラジョン:笑)の"Tomorrow"もやっているのが面白い。

そもそもLee Riternourのアルバムは平均点が高く,失望させられることは稀であるが,本作も十分水準には達していると言ってよいと思う。星★★★★。この辺りの勢いで来日して,渡辺貞夫との共演盤"Autumn Blow"を吹き込んで,その後はFriedshipへと変わっていくのであった。それにしても懐かしいねぇ。

Recorded on August 31 and September 1, 1977

Personnel: Lee Ritenour(g), Eric Gale(g), Patrice Rushen(key), Anthony Jackson(b), Harvey Mason(ds), Steve Forman(perc)

本作へのリンクはこちら

2025年8月 7日 (木)

Dave Douglas Keystoneのカッコよさは不変だ!

Keystone-at-jazz-standard-april-13-2008- "Live At Jazz Standard, 4/13 - Early Set" Dave Douglas Keystone(Greenleaf)

私がDave Douglas Keystoneの"Moonshine"を年間ベスト作の一枚に選んだのは,このブログを始めた2007年のことであった。それから随分長い時間が流れたが,Dave Douglasは現在もバリバリの現役として,さまざまなフォーマットで活躍中である。しかし,私の中では彼が率いたバンドでこのKeystoneに勝るカッコよさを誇るものはないと言い切ってしまおう。

"Moonshine"を初めて聞いた時,「ハイブラウなエレクトリック・サウンド好きには結構たまらんものがある」なんて興奮気味に書いているが,改めてこの2008年のライブ音源を聞いても,その感覚は変わらない。

今回取り上げるアルバムは,ダウンロード・オンリーで,2008年4月に今はなきNYCのJazz Standardに出演した時の8セットをまとめて公開したものである。実はこの時のセットはあと2セット分が公開されているのだが,Greenleafレーベルの有償のサブスクライバー・オンリーなので,私はこの8セット分で我慢だ。そうは言っても,8セット分もあれば聞き応え十分だが,今回久しぶりに聞いたのがこの時の公演最終日と思われる2008年4月13日の1stセットの音源。

そもそもメンツも優秀であれば,音楽的なコンセプトも私の嗜好にフィットしているのだから,気に入らない訳がないという音だと言ってよいが,このバンドが2010年の"Spark of Being"を最後に活動を停止してしまったのはもったいなかったと思える演奏をここでも展開している。まぁDave Douglasにとっては,Keystoneは一つの通過点に過ぎなかったのだろうが,この人のバンド活動は極めて多彩かつ多作だが,私にとってはKeystoneがやはり一番だ。もちろん,"Stargazer"のような素晴らしいアルバムもあるが,この路線は実に魅力的かつ刺激的だったと思う。また時間を掛けて聞き直すことにしよう。因みにこのセットで一番いいのは最後に演奏される"Tough"。Keystoneかくあるべし。

尚,この音源はストリーミングはされていないようだが,Bandcamp等のサイトで購入は今でも可能(かつ当初より値下げしている)。

Recorded Live at Jazz Standard on April 13, 2008, Early Set

Personnel: Dave Douglas(tp), Marcus Strickland(reeds), Adam Benjamin(el-p), Brad Jones(b), Gene Lake(ds), DJ Olive(turntable, laptop)

2025年8月 6日 (水)

Carly Simonがスタンダード中心に歌った”Torch”。

_20250803_0002 "Torch" Carly Simon(Warner Brothers)

1981年にCarly Simonがリリースした所謂トーチ・ソング集ゆえの"Torch"である。プロデュースはMike Mainieriが務め,複数のアレンジャーが豪勢なオーケストレーションを提供していて,結構コストが掛かっていると思わせるゴージャスなアルバムである。

そもそもこういうアルバムをどうしてCarly Simonがリリースする気になったか謎としても,James Taylorとの離婚時期と重なったことは偶然ではあるまい。よって,ゴージャスではあっても,チャラチャラした感覚は全くない。

ただ,当時のリスナー,あるいはCarly Simonのファンがこういう音楽を彼女に求めていたかと言えば,おそらくそんなことはないと思われる。私の感覚では彼女の声はこういう音楽へのフィット感は今一つだと思えるのだ。後年Linda Rosntadtも"What’s New"に始まるスタンダード・アルバムを作るが,そちらが結構売れたのとはちょっと訳が違った。

アナログの時代で言えばA面が相当しっとりした感じであるのに対し,B面1曲目の"Hurt"のイントロにびっくりさせるし,歌いっぷりも違うのはどうにも私は居心地が悪い部分があるのだが,それはこの曲がシングル・カットされたからだということもあるとしても,ちょいと雰囲気が違い過ぎないか。そんなこともあって,もしこのアルバムをアナログで保有していたら,まず間違いなくA面中心のプレイバックになっていただろうな。それはDavid SanbornやPhil Woodsのソロゆえの部分もあろうが,間違いなくムードはA面の方がいいと思えた。ということで,決して悪いとは思わないが,星★★★☆ってところか。

それにしても,最後に収められたStephen Sondheim作の"Not a Day Goes by"がいかにもStephen Sondheimだなぁと思わせる曲調なのには,思わず笑みが洩れたあ私であった。これが作曲家の個性ってもんだな(笑)。

Personnel: Carly Simon(vo), Lee Ritenour(g), High McCracken(g), Jay Berliner(g), Warren Bernhardt(p, el-p, synth), Mike Mainieri(p, vib, marimba), Anthony Jackson(b), Rick Marotta(ds), Grady Tate(ds), Jerry Marotta(ds), David Sanborn(as), Phil Woods(as), Michael Brecker(ts), Randy Brecker(tp), David Nadien(vln), Don Sebesky(arr), Marty Paich(arr), Robert M. Freedman(arr), Jimmy Wisner(arr)

本作へのリンクはこちら

2025年8月 5日 (火)

「微熱・ボサノヴァ」とは言い得て妙なArto Lindsayのアルバム。

Arto-lindsay "O Corpo Stil(The Subtle Body)" (Güt)

このアルバムがリリースされたのは1995年のことなので,もう30年にもなるのかと振り返ってみて驚いてしまった私である。Arto Lindsayと言えばノイズ系の音楽の人だというのが一般的な認識であるが,その認識を覆したのが彼がMarisa Monteのアルバムをプロデュースしていたことであり,そして更には本作であった。そもそもArto Lindsayがブラジル育ちであったということは後に知ったことであったが,Marisa Monteのアルバムを聞いていれば,ブラジル音楽にも精通していることが十分にうかがえるのであった。

そして本作であるが,私が保有しているのは国内盤なのだが,その帯には主題の通り,「微熱・ボサノヴァ」と書かれていて,まさにそういう感じのサウンドだ。ジャズ界のミュージシャンや坂本龍一なども招きつつ,Arto Lindsay的なボサ・ノヴァが展開されているが,基本オリジナルの中で1曲だけJobimの"Este Seu Olhar(あなたの瞳)"をやっているが,これが正調ボサ・ノヴァであり,本質をちゃんとわかった上での演奏ということは明らかなのだ。

ここで聞かれるのは都会的なサウンドと言ってもよいし,プロデュース過剰の部分もないとは言えないので,本作に対してオーセンティックなブラジル音楽のファンは抵抗を覚えるところもあるかもしれない。しかし,予断を抜きにして聞けば,これまでブラジル音楽に親しみのなかったノイジーなArto Lindsayのファンをも,ブラジル音楽の世界に引き込むという契機にもなりえたのではないかと思えるのだ。私はこのアルバム以降もこの路線のArto Lindsayのアルバムはそこそこ保有していて,結局こういう音が好きなんだろうなぁと思ってしまう(Ambitious LoversのArto Lindsayも好きなのだが...)。

実を言えば,このアルバムも極めて久しぶりに聞いたのだが,こんなにいいアルバムだったかと改めて思った次第。星★★★★★としてしまおう。

Personnel:Arto Lindsay(vo, g, prog), Amadeo Pace(g), Vinicius Cantuária(g, perc), Bill Frisell(g), Lomero Lubambo(g), 坂本龍一(p, synth), Melvin Gibbs(b), Joey Baron(ds9, Naná Vasconcelos(perc), Cyro Baptista(perc), Brian Eno(sonics), 本田ゆか(sampler), テイトウワ(prog, p-strings)

本作へのリンクはこちら

2025年8月 4日 (月)

猛暑をPaul Winterでしのぐ(笑)。

_20250803_0001 "Rio" Paul Winter(Columbia)

昨今の猛暑には本当に辟易とするが,こういう時にはそれを忘れさせてくれるようなリラックスできる音楽が必要だ。ということで取り出したのがこのアルバム。Paul Winterについては昨年末に「師走にボサ・ノヴァでくつろぐ。」と題して,"The Sound of Ipanema"を記事にしていて,結局いつでもいいんじゃんと言われればその通りだが,ボサ・ノヴァはいつ何時でも生活に潤いを与えてくれるねぇなんて思ってしまう。

米国にボサ・ノヴァを紹介したのはStan Getzばかりではないと言いたくなるような作品であるが,"The Sound of Ipanema"がCarlos Lyraを全面フィーチャーだったのに対し,ここではブラジルのミュージシャンとの複数のグループによる演奏を収めている。ジャケットにあるようにLuiz Bonfa,Robert Menescal,Luiz Eçaがその共演相手となる訳だが,この中ではRobert Menescalが全12曲中7曲で演奏をしており,基本的にはRobert Menescalがメインの共演者として,このアルバムのトーンを決めているということになる。ライナーにも記載の通り,Menesalが書いた"Adriana"は5拍子で書かれていて,この辺は"Take Five"の影響ありだろうと思わせるのが微笑ましい。 Luiz Bonfaは2曲,Luiz Eçaは3曲であるが,私としてはLuiz Eçaとの"Daniele"が少々浮いている感覚があるとは思いつつ,全編を通じて気持ちよく聞けるアルバムである。

詳しいクレジットがないので,全体の演奏者は不明ながら,ジャケットを含めていい雰囲気のアルバムを作ったものだと言いたい。共演者によって若干のトーンの相違があることもあって,出来としては"The Sound of Ipanema"には一歩譲るとしても,これはこれでなかなかのアルバムだと思う。星★★★★。いずれにしてもしっかり聞いてもよし,聞き流すもよしの便利な作品。

Personnel: Paul Winter(as, fl), Luiz Bonfa(g), Robert Menescal(g),  Luiz Eça(p) and Others

CDは入手困難のようなので,本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年8月 3日 (日)

Amazon Primeで見た「暗黒の恐怖」。元祖感染ものってところ。

Panic-in-the-streets 「暗黒の恐怖 ("Panic in the Streets")」(’50,米,Fox)

監督:Elia Kazan

出演:Richard Widmark, Paul Douglas, Barbara Bel Geddes, Walter Jack Palance, Zero Mostel

私も好きだねぇと思いつつ,またも見ました白黒映画,ってことで,今回チョイスしたのがElia Kazanが監督した本作である。主題の通り,元祖感染ものと言っていいものなのだが,そもそも48時間以内に肺ペストに感染していた男を殺害した加害者を逮捕しなければ、肺ペストが全米に広がるという設定には少々無理があるのだが,映画としてはそれなりに見られる。

何よりも本作が映画デビュー作らしいJack Palanceが,いかにもって感じのワルな役どころを見ると,後の「シェーン」で演じたJack Wilsonの役が回ってくるのも頷けてしまうのであった。翻ってRichard Widmarkが衛生局の医師というキャスティングなのだが,ワルを演じれば天下一品みたいなところのあったRichard Widmarkを善玉にしてしまうほど,Jack Palanceの個性にフィットした役だったと言えるかもしれない。

まぁ劇中では原題のような「パニック」そのものは起こらず,これはどちらかと言えば捜査劇と呼んでいいものなのだが,Paul Douglas演じる警官と,Richard Widmarkが最初は対立しつつ,協力関係に変わっていくところもなかなかに趣がある。ただやはりシナリオはもう少し練りようがあったとも思える部分があり,当時はオスカーに"Best Writing, Motion Picture Story"部門(原案賞と言うらしい)があって,本作がオスカーを獲得しているというのは少々驚きだ。私としては元のストーリーに無理があったのではないかと思わざるを得ない部分があると感じていたのだが,それを補ったのが個性的な役者陣というところだろう。

まぁそうは言っても,当時としてはそこそこよく出来た娯楽作だったと言ってよいと思う。星★★★☆。同じElia Kazanの作品なら先日見た「影なき殺人」と同等の作品と思えるが,「影なき殺人」の方がシナリオゆえに少々好ましいってところかな。

本作のDVDへのリンクはこちら。ストリーミングへのリンクはこちら

2025年8月 2日 (土)

DownBeat国際批評家投票におけるPianist of the Year,Kris Davisのアルバムを聞く。

Kris-davis"Run the Gauntlet" The Kris Davis Trio (Pyroclastic)

Kris Davisという名前は目にしたことがあっても,音に関しては未聴であった。昨日のJames Brandon Lewisもそうだが,DownBeat誌の国際批評家投票を見ていると,どういう人なんだろうと思ってしまう名前がある。Kris DavisもこれまでもRising Star等ではその名前を見たようにも思うが,今年はベテランKenny BarronやSullivan Fortner等の新旧ピアニストを抑えて,ピアニスト部門で第一位に選ばれているのがこの人であり,かつ本作はAlbum of the Yearでは第三席である。これは相当なことだと思って早速ストリーミングで聞いてみた。

私がKris Davisの音楽を未聴だったのには相応の理由がある。彼女が共演しているミュージシャンを見れば,どちらかと言えばフリー寄りあるいは極めてハイブラウな人が多いので,大体どういう音楽をやっていそうだというのは想像がついたからだ。しかし,本作に関しては共演者がRobert Hurst,Jonathan Blakeなので,そうアバンギャルドな感じではなかろうという想像はつく。そして,ジャケにもあるように本作は女性ピアニスト6人に捧げられていることもあり,どういうことになっているかは実に興味深かった。

冒頭のタイトル・トラックからして,執拗に繰り返されるテーマとそこから展開されるフリー的なソロで,いきなりのぶちかましである。これは私が想像していた世界に近いと思わせるものであった。しかし,そこから2曲目の"Softly as You Wake"に転じると,プリペアド・ピアノによる全くムードの異なるサウンドに転じるから,これは一筋縄ではいかない。Kris Davisの書く曲はメロディ・ラインを意識したものとは思えないので,サウンド指向なんだろうなぁと思いつつ聞き進めていくと,変拍子あり,8ビートありだが,やはり全体的な響きは相当ハイブラウだ。

Robert Hurstもかなり自由なラインで反応し,Jonathan Blakeの煽りも強烈に行くところは行き,抑制すべきところは抑制するかたちで極めて適切ってところで,これはなかなか面白いアルバムである。しかし単にハイブラウなだけではない。"Beauty Beneath the Rubble"では思索的な響きも聞かせて,いろいろなスタイルを吸収しており,その辺りがDave Hollandから共演者に選ばれる理由という感じもする。

いずれにしても,DownBeatという触媒がなければ聞いていなかったアルバムだが,相当に個性的なので一般的に受けるかどうかは少々微妙だが,趣味に過ぎないとは言え,音楽を聞く者として新しいものへの関心も失ってはいかんと改めて思った私である。そうした意味も含めて星★★★★☆。

尚,本作を捧げられた6人のうち,5人は知っているが,Sylvie Courvoisierだけは初めて見た名前であったが,よくよく見れば,DownBeatの国際批評家投票のピアノ部門でFred Herschに次いで7位に位置しているではないか。この人のやっている音楽も聞いてみないといかんと思ってしまった。こういうかたちで新しいミュージシャンに触れる機会が増えるのもいいことだと考えよう。そもそも先日紹介したPatricia Brennanのアルバムも本作同様Pyloclasticレーベルからのもので,国際批評家投票のレーベル部門ではこれまたBlue Noteに次ぐ第2位だ。へぇ~となってしまうこと必定であり,勉強になってしまった。

Recorded on January 14, 2024

Personnel:Kris Davis(p, prepared-p), Robert Hurst(b), Jonathan Blake(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年8月 1日 (金)

DownBeat誌のArtist of the Year:James Brandon Lewisの最新作。ライブを聞いておくべきだった...。

Abstruction-is-deliverance"Abstruction Is Deliverance" James Brandon Lewis(Intakt)

先日,Patricia Brennanについての記事を書いた際に,「改めてDownBeatの投票結果を眺めて,これ誰?って名前に注目してみたいと思う。」なんて書いた私であるが,今回は国際批評家投票においてArtist of the Year及び#1テナーに選出されたJames Brandon Lewisである。

この人の名前は認識していたが,音はほとんど聞いたことがないはずだ。よって,このブログでもその名前が出てきたことはない。そんなことなので,今年の6月にCotton Clubに出演して時もスルーしてしまったが,このアルバムをストリーミングで聞いて,ライブも聞いておくべきだったなぁなんて思っても後の祭りである。

テナーの響きを一聴して,John Coltraneみたいだと思った私だが,決してColtraneフォロワーでは終わらないという感じだ。私は奇をてらうことなく,比較的オーセンティックな演奏を繰り広げるこのクァルテットの演奏のレベルの高さに驚いてしまったのであった。これならば評価されて然るべきだろうと思わせるに十分なのだ。私がこのクァルテットでリーダー以外で名前を知っているのはベースのBrad Jonesぐらいだが,彼がDave DouglasのKeystoneでやっていた音楽とは全然違うのが面白い。いずれにしても,このアルバムにおけるクァルテットによる一貫したトーンは,コンベンショナルなジャズを好むリスナーにも受け入れられるはずだと思わせるに十分な出来。

こうしたクァルテットが"Left Alone"のような曲を演奏するのは少々意外とも思えるが,これは冒頭がリーダーのソロから入り,テーマは4者が一体化したアレンジメント,そして展開部ではドラムスとのデュオ的(+控えめなアルコ・ベース)な演奏に転じ,改めてピアノが入るというなかなか凝った作りである。こういうのは評価はわかれそうだが,これはこれで面白いと思ったし,よく知られた曲だけに普通のアプローチで臨むような人たちではないということだな。こういう演奏にもちゃんと目を向けるべきだと認識させてくれるところに,DownBeatの価値はあると思ってしまった。刺激的とは言えないとしても,これはよくできたアルバムだ。星★★★★☆。

Recorded on April 25, 2024

Personnel: James Brandon Lewis(ts), Aruán Ortiz(p), Brad Jones(b), Chad Taylor(ds)

本作へのリンクはこちら

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