2026年1月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
フォト
無料ブログはココログ

お知らせ

  • 当ブログはAmazonのアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています。

« 2025年6月 | トップページ | 2025年8月 »

2025年7月31日 (木)

これまた久しぶりに聞いたGary Thomasの"While the Gate Is Open"。

_20250728_0001 "While the Gate Is Open" Gary Thomas (JMT)

本作が今はなきスイングジャーナル誌のジャズディスク大賞において,1990年の年間最優秀作である金賞に選ばれたのも今は昔だ。そんなGary Thomasは,21世紀に入ってその動静がほとんど聞こえなくなっており,90年代の活躍が嘘のようにシーンに登場することがなくなったのはなぜだったのか。現在もInstagramのアカウントはあるものの,Webサイトも見当たらない状態では,ほぼ引退状態なのだろうか?私と同い年なので,まだまだ現役で活動できそうなものなのだが...。

それはさておき,本作はジャズマン・オリジナルやスタンダードで固められたハイブラウな印象の強いGary Thomasにとっては異色と言ってもよいプログラムであり,リリース元であるJMTレーベルにとってもあまりないタイプのアルバムだと思うが,よくよくジャケを見ると著作権表示には日本のポリドールとあるから,企画を持ち込んだのは日本側かもしれない。しかし,複数のメンツ構成にも恵まれ,なかなか痺れる演奏を聞かせる。

冒頭,いきなりSonny Rollinsの"Strode Road"からというのが,相当チャレンジングであるが,Sonny Rollinsと全くタイプが異なると言ってよいGary Thomasだけに,受ける印象は大きく違う。よりスピーディかつコンテンポラリーな感覚が強くなるのは時代のなせる業ってところか。こういう演奏が日本で受けたのは,バブル末期の時代の高揚感と同期しているように感じるのは,Ralph Petersonの"V"が88年の年間最優秀作に推されたのと同質のイケイケ感をおぼえるからだ。その"V"も日本企画だったしなぁ。

ただ,このアルバム,選曲としてはイケイケ感だけではなく,2曲目に"Star Eyes"のような曲を持ってきたり,"Chelsea Bridge"をやったり,あるいは"Invitation"をフルートで演奏したりと,バランスは考えられている。但し,Gary Thomasのフレージングはどんな曲をやっても一筋縄ではいかないし,しっとり感は皆無で,逆にイケイケ感は相当あるが(笑)。まぁ,それを増幅させるのはデニチェンことDennis Chambersの手数の多いドラムスゆえか。

いずれにしても,こういう音源が日本で受けたのはやはりバブルの影響だと思ってしまうが,その後の所謂「失われた30年」を思えば,こうした時期を思い出すのも年寄りの特権だな(笑)。もう少し評価してもいいと思いつつ,一部の曲でフェードアウトする必要があったのか疑問なところもあって,星★★★★。

Recorded in May, 1990

Personnel: Gary Thomas(ts, fl), Kevin Eubanks(g), Renee Rosnes(p, synth), Dave Holland(b), Anthony Cox(b), Dennis Chambers(ds) 

本作へのリンクはこちら

2025年7月30日 (水)

これも久しぶりだ。Branford Marsalisが複数のメンバー構成で聞かせる"Royal Garden Blues"。

_20250727_0002"Royal Garden Blues" Branford Marsakis(Columbia)

これはBranford Marsalisの2枚目のリーダー作のはずだが,Branford Marsalisのアルバムに感じられる若いのに優秀という感覚はここでも感じられる。詳しいクレジットの記載はないが,本作がレコーディングされたのは1986年と思われるので,Branford Marsalisはまだ20代半ばである。しかし,そうした年齢を感じさせないコクのある演奏を聞かせるのはさすがと思わせる。しかし,本作に先立ってStingと「ブルータートルの夢」を吹き込んでいるのだから,そうした意味では変幻自在である。

このアルバムが面白いのは,リズム・セクションが複数で構成されているということだろう。ピアノは4人,ベースは3人,ドラムスは4人いて,バックの組合せが変わる中,Branford Marsalisはワンホーンで吹くというアルバムである。面白いと思うのはLarry Willisが3曲でピアノを弾いていることか。Larry WillisとBranford Marsalisの関係性がなかなか思い浮かばないので,これは面白い組み合わせだと思える。

しかし,本作においてはあくまでも主役はBranford Marsalisということで,気持ちよさげに吹いているが,ミキシングのせいか全体的に少々音は軽く聞こえるものの,Branfordのフレージングは相当に魅力的だ。タイトル・トラックや"Strike up the Band"のような古い曲をやっているが,前者は演奏にやや冗長さを感じさせる部分もあり,少々微妙な感じもして,何でこの曲?と思ってしまうが,後者についてはテーマは最後に出てくるだけで,古臭さを感じさせる演奏ではないのはよいと思う。

まぁ本作は複数のリズム・セクションに乗って,Branfordが大いに吹きましたって感じだろうが,やや捉えどころが難しいと感じるのも事実。それでも当時20代半ばにしてこの実力は本当に大したものだということで,ちょいと甘めの星★★★★としよう。

Personnel: Branford Marsalis(ts,(ts, ss), Elis Marsalis(p), Kenny Kirkland(p), Herbie Hancock(p), Larry Willis(p), Ron Carter(b), Charnett Moffett(b),  Ira Coleman(b), Ralph Peterson(ds), Jeff "Tain" Watts(ds), Al Foster(ds), Marvin "Smitty" Smith(ds)

本作へのリンクはこちら。 

2025年7月29日 (火)

聞くのはいつ以来かも全く記憶にないベートーヴェンの弦四。

_20250726_0001 "Beethoven: String Quartets Op.18 Nos. 1 & 2" Alban Berg Quartet (EMI)

このブログに所謂室内楽が登場することは極めて稀で,過去を振り返っても同じくAlban Berg Quartetによるバルトークの弦四を取り上げただけだと思う。まぁ保有するCDも少ないので当たり前と言えば当たり前なのだが,今日は気まぐれでベートーヴェンの弦四である。

今や全集がCD7枚組で¥2,000かそこいらの値段で買えてしまうというところに隔世の感があるが,ジャケ写真をご覧頂けばお分かり頂けるとおり,私が保有しているのは分売されたものなので,CDの数も10枚だ。多分これらを買ったのは私がNYCに在住している頃だったと思うが,その時の購入価格との違いは今にして思えば無茶苦茶大きい。

私のクラシック音楽における嗜好がピアノ音楽やオーケストラ音楽の方が強いため,これらのアルバムもそれ以来大した回数をプレイバックしている訳ではないが,それでも世評は当時から確実に確立されている演奏だったと思う。改めて聞いて,こういうのを放置してはいかんと反省するとともに,たまには弦四もいいねぇと思ってしまった。もちろん元々の曲,演奏のよさがあってのことだが,実に素晴らしい。こうなったら全部聞き直さねば(笑)。

Recorded in 1980 and 1981

Personnel: Alban Berg Quartet <Günter Pichler(vln), Gerhard Schulz(vln), Hatto Beyerle(vla), Valentin Erben(cello)>

2025年7月28日 (月)

久しぶりのストリーミングで観た白黒映画:Robert Wise監督の作風の多様さに驚く「罠」。

Setup 「罠 (The Set-up")」('49,米,RKO)

監督:Robert Wise

出演:Robert Ryan, Audrey Totter, George Tobias, Alan Baxter, Wallace Ford

ここのところ少々ご無沙汰していた白黒映画である。と言っても,「影なき殺人」の記事をアップしてから1か月ぐらいしか経っていないので,大したことはないのだが(笑)。

それでもって,この映画の監督はRobert Wiseということで,「サウンド・オブ・ミュージック」を撮ったRobert Wiseその人なのだが,この人は「ウエストサイド物語」もあれば,「地球が静止する日」やら「アンドロメダ...」,更には「拳銃の報酬」やらと,まぁいろんな映画を撮っているものだ。そうした中の72分という昨今はお目に掛からない中編と言っていい映画だが,映画のストーリーの進行と実際の時間の進行を合わせているというのが製作された49年当時としてはユニークな試みだったはずだ。

ストーリーとしてはボクシングの試合で,裏で八百長を仕掛けられていながら,それを知らずに相手をKOしてしまうStoker ThompsonをRobert Ryanが演じるが,ボクシング・シーンが多いので,演じる方も演出する方も大変だっただろうなぁなんて思いながら見ていた。Ryanの妻を演じるAudrey Totterは別嬪なのかどうなのかよくわからんという感じだが,盛りを過ぎた落ち目のボクサーの妻という役どころに,超美人を当てるのも何だかなぁというところなので,まぁそこそこリアリティがあっていいキャスティングって感じか(爆)。

とにもかくにも,改めてRobert Wiseの作風の多様さに驚かされた一本。星★★★★。

この映画のストリーミングへのリンクはこちら

2025年7月27日 (日)

Ozzy Osbourneを偲んで"Paranoid"を聞く。

Paranoid "Paranoid" Black Sabbath(Vertigo)

Ozzy Osbourneの訃報を受けて,これまでろくに聞いていないBlack Sabbathを聞いてみようということで,ストリーミングでチョイスしたのが彼らの2ndアルバム,"Paranoid"である。

タイトル・トラックや"Iron Man"は70年代ロックのプレイリストでよくプレイバックされるので認識していたが,それ以外は初聞きみたいなものだ。Black SabbathというバンドはOzzy Osbourneという稀有なヴォーカリストの存在も大きいが,このバンドはTony Iommiの超ヘヴィなギターによって,更に記憶に残るバンドとなったのではないか。ヘヴィ・メタル界において彼らがリスペクトされるのは,そのヘヴィなサウンドが源流にあるからだと考えてもよいように思う。このサウンドの重々しさは極めて特徴的だったということを今更知る私であった。

余談だが,ロード・ウォリアーズが"Iron Man"を入場曲に使っていたなんてことも改めて知った。Ozzy Osbourneの訃報を受けて彼らの音楽に改めて触れる機会となったが,今まで彼らの音楽に触れてこなかったのはもったいなかったと感じた私である。

あらためてOzzy Osbourneのご冥福を祈りたい。

Personnel: Ozzy Osbourne(vo),Tonhy Iommi(g, fl), Geezer Butler(b), Bill Ward(ds, perc), Tom Allom(p)

本作へのリンクはこちら

2025年7月26日 (土)

追悼,Chuck Mangione。

Chuck-mangione

ここのところ音楽界では訃報が相次いでいるが,今度はChuck Mangioneである。私は彼のアルバムはベスト盤しか保有していないが,多くの人と同様(?)に"Feels So Good"で彼の名前を知ったのであった。"Feels So Good"のシングル盤が米国で突然の大ヒットを飛ばしたのが1978年であったが,フリューゲル・ホーンの優しい響きが印象的であった。そもそも"Feels So Good"に先立つ"Bellavia"でグラミーは獲っていたようだから,米国ではそこそこ知られていた存在だったのだろうが,それまでは日本ではほとんど認知されていなかったのではないか。

一気にこれで日本でも名前の知れたChuck Mangioneは,その後も”Feels So Good"ほどの大ヒットはないとしても,印象的な曲を結構残した。ポピュラリティのピークはレイクプラシッド冬季五輪のテーマとして"Give It All You Got"を提供した辺りまでではなかったかと思うが,その数年間の活躍ぶりは今でも印象に残っている。"Children of Sanchez"も日本でCMに使われていたはずだしねぇ。

そもそもArt Blakey & the Jazz Messengersにも在籍していて,当時のアルバム"Buttercorn Lady"でピアノを弾いていたのはKeith Jarrettだなんてことも語られるようになってはいたが,ゴリゴリのジャズのイメージはChuck Mangioneにはなく,私にとってはあくまでも上に挙げたような曲こそがChuck Mangioneその人のイメージであった。

84歳で睡眠中にこの世を去ったということであるから,その死も残した音楽同様に「安らか」なものであったと信じたい。

R.I.P.

2025年7月25日 (金)

James Mason@Blue Note東京参戦記。

James-mason_20250724080301James Masonと言えば,私にとっては「邪魔者は殺せ」等の名優を思い出すことになるのだが,今回のJames Masonは"Rhythm of Life"なるアルバムで知られるミュージシャンだそうである。この"Rhythm of Life"はレア・グルーブの世界では結構有名らしいが,私は聞いたこともなかった。今回「夜の部活」メイトからのお誘いに乗ってライブに参戦するにあたって,ストリーミングで聞いてから現地に向かった。会場は年齢層やや高めの人々でフルハウス状態なのにはびっくりした私である。

そして肝腎のライブの演奏は,アルバムにも収録されている"Hey Hey Hey"からスタートしたのだが,そもそもここでのPhilip Wooのキーボード・ソロがいけていなくて,出だしから私はずっこけてしまった。そしてドラムスが全然グルーブ感を生み出していない。レア・グルーブと言いつつ,このグルーブ感の欠如は致命的。事前にストリーミングで聞いたアルバムのグルーブ感は「なるほどね」という感じだっただけにこれは痛い。

ゲストとして加わっVanessa HaynesとTom O'GradyはIncognitoのメンバーらしいが,彼らのサポートを受けても私には彼らの演奏は全然面白いと思えなかったし,最後はスタンディングで乗りまくるアリーナの聴衆をサイドの座席から冷めた目線で見ていたのであった。Tom O'Gradyの名誉のために言っておけば,彼のソロはPhilip Wooよりははるかにましだったが。

しかしながら,そもそもこの演奏にキーボード3人が必要だったとも思わないし,私は残念ながら行けなかったが,先日同じBlue Note東京でのJeff Lorber Fusionは4人編成でもはるかにグルーブしていたという「夜の部活」メイトの言に間違いはなかろう。急造バンドの哀しさってところもあろうが,通常Blue Note東京に出演するような一流のミュージシャンたちとは明らかに格が違った。それがリーダーたるJames Masonの限界だ。

ライブの場なんだからもっと楽しめばいいじゃんと言われればその通りかもしれないが,つまらない演奏を聞かされてまで「満足した」とは言いたくない(きっぱり)。まぁたまにはこういうこともあるわねってことにしておくが,正直な感想として書いておく

Live at Blue Note東京 on July 23, 2ndセット

Personnel: James Mason(g), Gerald Painia(ds), Arno Ray Lucas(per), Zak Croxall(b), Philip Woo(key),
安部潤(key), 今井晴萌(ts), Chloe Kibble(vo), Vanessa Haynes(vo), Tom O'Grady(key)

2025年7月24日 (木)

Ozzy Osbourne死す!

Ozzyosbourne

7/5に最後のパフォーマンスとして,キラ星の如きメタル・バンドを集めただけでなく,Black Sabbathとしての演奏も繰り広げたOzzy Osbourneが亡くなった。そもそもパーキンソン病を患っていたOzzy Osborneであったが,イベントとしての"Back To The Beginning"を置き土産に,これほど早く亡くなるとは思わなかった。

急逝という観点ではDavid Bowieに近い感覚をおぼえるが,自分の死期を悟った上でのイベント開催だったのだと感じられるのは,まさにロッカーとしての生き様だったと言っても過言ではないだろう。

私はBalck Sabbathにしても,Ozzy Osbourneにしてもファンでも何でもなかったのだが,ネット上に渦巻く哀悼の言葉を眺めていれば,ロック界に与えた衝撃と,その影響力の大きさは間違いないところだ。

R.I.P.

いずれにしても,昨日の渋谷陽一に続いて,二日連続での訃報は何とも寂しい限りだ。

2025年7月23日 (水)

追悼,渋谷陽一。

Photo_20250722232401

渋谷陽一が亡くなったそうだ。ロックに関して,真っ当な路線を教えてくれたのが渋谷陽一がDJを務めた「ヤングジョッキー」だったと思う。「こんばんは,渋谷陽一です」から始まるその番組で,新譜の紹介やら,注目の音楽の紹介やらで,まだまだレコードを買う財力に乏しい私は,新しい音楽に触れるという観点で本当に世話になった。Jeff Beckの"There and Back"もYesの"Tormato"も最初に耳にしたのは「ヤングジョッキー」だったはずだ。

また,渋谷陽一が主宰した雑誌「ロッキンオン」もある意味王道を追い続けたという意味では,我々の世代は大いにシンパシーを感じたはずだ。いずれにしても,ロックの文脈において,多くの影響を与えてくれる真っ当な評論家であったと思う。

今でも私の中での渋谷陽一のイメージは上の写真のままである。それが渋谷陽一という人だったと思えるし,今でも「こんばんは,渋谷陽一です」の声を思い出すのだ。現代の感覚からすれば74歳というのはまだまだいける年齢だった。誠に残念であり,つくづく惜しい人を亡くしたものだと思う。

R.I.P.

2025年7月22日 (火)

訳あって「国宝」をもう一度見た。

Photo_20250721182401映画を好んで見る訳ではない家人からの誘いで「国宝」をもう一度見ることになった。家人が見たいと思うほどのブーム到来なのかなと思いつつ,今回は付き合った訳だが,劇場は休日午前中にもかかわらず,ほぼフルハウスなのには驚いた。私としては,前回は原作を読まずに臨んだのに対し,今回は原作との違いを感じつつ見ていたところに大きな違いがあって,それはそれで意義があったと思う。

改めて見ると,前回同様,映画のシナリオとしてはやや唐突感のある展開もあることには間違いないと感じつつ,やはりこの映画はよく出来ていたと思える。原作での活躍が目立つ徳治の出番を少なくしたのも,エピソード過剰となるという判断があったと思えるし,吉沢亮演じる花井東一郎の「どさ回り」のシークェンスは原作とは完全に異なるものだったなぁと感じたりしながら見ていた私である。

原作のエピソードを削ぎ落しても,3時間という上映時間を必要とした映画ではあるが,そうした中で瀧内公美をうまく使ったのは正解だったと思えた。瀧内公美は2回目も泣かせてくれたと言っておこう。

ネットを見ていると敢えて声高にこの映画にケチをつける論評も見受けられるが,エンタテインメントとして考えれば,相当よく出来ている映画であることをないがしろにするのは大人げないと思う私である。シナリオに穴があるのは事実だろう。しかし,役者陣の頑張りを無視するべきではないし,歌舞伎という伝統芸能に今一度人々の目を向けさせたことにも意義があったと思う。

二回見ても飽きるということはなかったのは実に立派。

2025年7月21日 (月)

高橋悠治がサティを再録していたことを今更知る。

Photo_20250719173301 「エリック・サティ:新・ピアノ作品集」高橋悠治(日本コロムビア)

高橋悠治がサティのアルバムを出したのが1970年代のことで,ある意味,サティの定番と言ってもよい地位を確立しているから,私もその3枚は保有している。いやいやサティと言えばAldo Ciccoliniだろう,あるいは高橋アキはどうした?という声もある中で,私はサティにそれほどの思い入れがないので,まぁ高橋悠治のサティで十分だと思っている。

そんな私なので,高橋悠治が2017年にサティを再録音していたというのは全く認識していなかった。録音時には傘寿に近づく年齢となっていた高橋悠治だが,今回は「ジムノペディ」,「グノシエンヌ」,「サラバンド」,「ノクチュルヌ」,そしてボートラ扱いの「ジュ・トゥ・ヴ」というプログラムである。「サラバンド」は先の3枚のアルバムには収録されていないものの,ある意味鉄板のプログラムを演奏したのは意外と言えば意外ながら,前者4つのプログラム間に「1886年の3つの歌」の高橋悠治によるピアノ編曲版を挟むというところに意外性を打ち出しており,そしてその3曲に全くの違和感がないこと自体が素晴らしいと思った。

これも私はストリーミングで聞いたのだが,これならフィジカル媒体を買ってもいいとも思えるような出来だと思った。そうは言っても購入したところで,プレイバック頻度が上がる訳ではないから,ここは我慢だろうな(苦笑)。いずれにしても,この時の高橋悠治は全く枯れていないと思わせるに十分な演奏集であった。自分の無知を恥じて星★★★★★としよう。

このレコーディングの背景については,水牛のWebサイトに掲載された服部玲治の記事を読むと面白い(記事のアーカイブはこちら)。ご関心のある方はどうぞ。

Recorded at 五反田文化センター 音楽ホール on June 20 & 21,2017

Personnel:高橋悠治(p)

本作へのリンクはこちら

2025年7月20日 (日)

またもブートの話。Alphonso Johnson在籍時のWeather Reportの音源。

_20250716_0001 "Definitive Memphis 1974" Weather Report(Bootleg)

このブログも長年やっていると,昔はできるだけブートレッグは取り上げたくないなんて書いていた自分は何だったのかと思ってしまう。そのくせブートレッグの記事も結構書いているが,音源の貴重度とか自分の関心度によって,どうしても聞いてみたい音源があるのだから,これは仕方ない。まぁそれもブートレッガーの狙いな訳だから,術中にはまっているのだ(苦笑)。

それでもって今回は1974年のWeather Reportである。この頃はベースがオリジナル・メンバーのMiroslav VitousからAlphonso Johnsonに交代した時期となるが,実は私はこのAlphonso Johnson在籍期の演奏が結構好きなので,ついついこのブートも買ってしまった。この音源はタイトルにある如く,74年10月のテネシー州メンフィスにおける音源。

まぁこのブート,昨今多いパターンの"Definitive"とは言っているものの,サウンドボード音源とは言え,音は薄っぺらで揺らぎも感じられるもので相当しょぼい。まぁブートなのでどうこう言えたものではないとしても,もう少し手の施しようもありそうだと思える程度のものではある。音楽に関しては,Vitous在籍中のWeather Reportに比べれば,Alphonso Johnson加入後の音楽はハイブラウ度は下がりつつ,より聞き易いサウンドにシフトしていたと思っているが,この演奏でもビートの明確さも打ち出していて,この頃はこうだったのねぇと思わせる演奏ぶりである。この頃のWeather Reportはドラマーが固定しない時期で,ここで叩いているのはDarryl Brownという人(当ブログではStanley Clarkeのアルバムで名前が出てきたことがある)で,WRに在籍したのは74年7月から12月の半年だけだったらしい。そのため公式なレコーディングは残っていないが,ここではビートを普通に刻んでいるって感じか。

一番の聞きものと言ってもよさそうな長尺の4曲目は"Doctor Honoris Causa / Directions"のメドレーとなっているが,"In a Silent Way"も挿入されているが,"Directions"はエンディングにちょこっと出てくる感じなので念のため。5曲目の"Boogie Woogie Waltz"もこれまた長尺で演じられ,相当スリリングで,この2曲がこのブートのハイライトだなぁ。

こういう音源はあくまでも時代の「記録」として聞くべきものであって,よほどのファンでもない限り,過剰にありがたがる必要はないと思うが,それでもAlphonso Johnsonが持ち込んだであろう,よりポップなビートの感覚は面白いものだったと思うし,私にはフィット感が強いと思える音源であった。

Recorded Live at Lafayette’s Music Room, Memphis, Tennessee on October 30, 1974

Personnel: Joe Zawinul(key), Wayne Shorter(ts, ss), Alphonso Johnson(b), Darryl Brown(ds), Dom Um Romao(perc)

2025年7月19日 (土)

懐かしの"We’re an American Band"。本当にはやっていたなぁ。

American-band"We're an American Band" Grand Funk (Capitol)

このアルバムがリリースされたのが1973年。私はまだ小学生だ。ラジオの深夜放送を聞き始めたのが72年ぐらいだったと記憶しているので,洋楽に目覚めて(と言っても,CarpentersとかBeatlesからだが)まだ間もない頃だ。それでもなぜかT-RexとかCreamとかカッコいいなぁなんて思っていたガキだったが,小学6年生の私にとってもこのタイトル・トラックは何とも魅力的に聞こえた。さすが全米No.1になるだけのことはある。

私にとってのGrand Funk Railroadと言えば,この曲とあとは"Locomotion"ぐらいしか紐づいていないと言ってもよいので,アルバム単位で聞いたことがあるのはベスト盤だけというのが実態だ。今回気まぐれで本作を通しで聞いてみたのだが,タイトル・トラックの魅力は変わらないとしても,Todd Rundgrenのプロデュースもよく,なかなかよくできたハード・ロック・アルバムだと思う。

Grand Funkと言えば3人編成で轟音を奏でるって印象が強いが,ここではCraig Frostのキーボードが正式に加わったことによって,色彩感は増したと言ってよいだろう。こうした変化を当時のファンがどのようにとらえたかはわからないが,シングルもヒットしたし,アルバムも売れたのだから,彼らのポピュラリティのアップには確実に貢献したはずだ。まぁ歴史に残るとかそういうアルバムではないが,たまにはこういうのもいいのだ。星★★★★。

それにしてもレコーディングから1か月でリリースしてしまうってのも凄いなぁ。

Recorded on June 12-15, 1973

Personnel: Mark Farner(vo, g, el-p, perc), Craig Frost(key, org, synth), Mel Schacher(b), Don Brewer(vo, ds, perc)

本作へのリンクはこちら

2025年7月18日 (金)

これまたストリーミングで聞いたMichel Petruccianiの放送音源からの正式リリース版。

Cph1988 "Jazz Club Montmartle: CPH 1988" Michel Petrucciani Trio(Storyville)

これもストリーミングを利用していて,画面上に表示されたアルバム。元々は放送音源のようだが,従来はブートレッグとしてリリースされていたものを,Storyvilleが正式リリースするというかたちになったものと思われる。まさに公式リリースに値する快演集だ。

まずメンツがよい。ベースにGary Peacock,ドラムスにRoy Haynesというベテランを据えたピアノ・トリオには当然期待が高まる。本作はタイトル通り1988年の録音だが,この時はスペシャルなメンツによる短期でのライブ活動だったようだ。同年8月のマウント・フジ・ジャズ・フェスティバルにも同じメンツで来日したようだ。甚だ余談ではあるが,私もマウント・フジには一度だけ行ったことがあるはずなのだが,多分88年か89年だと思うが,いつ行って何を聞いたかも全然記憶にないし,データを見ても記憶が蘇ってこない。加齢による記憶力の減退もあろうが,結局バブルに浮かれていただけだったのか...って気がしないでもない(爆)。

それはさておき,ここで聞かれる演奏は実に快調であり,急速調のハード・スウィングであろうが,バラッドであろうが聞きどころが多い。Michel Petruccianiのピアノはもちろんだが,Gary Peacockのベースも結構なソロ・スペースがあって,これがまたよいのだ。Roy Haynesのドラムスは相変わらずで,多少うるさく聞こえる局面もあるものの,トリオをプッシュし続けていて,これも楽しい。

いずれにしても,非常に上質な演奏であり,こんなものを公式未発表にしておく手はないと考えるべきものだと確信する。私はMichel Petruccianiの大ファンって訳ではないが,こういうピアノを聞かされると,もっと聞いておくべきだったと思ってしまう。そんな演奏は星★★★★☆に十分値する。

Recorded Live at Club Montmartle on July 3, 1988

Personnel: Michel Petrucciani(p), Gary Peacock(b), Roy Haynes(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年7月17日 (木)

今年もこの日がやってきた,と毎年のように書いているが...。

_20250714_0001 "Soultrane" John Coltrane (Prestige)

7月17日はJohn Coltraneの命日であり,そして私がまた年齢を重ねる日である。毎年のようにこの日にはJohn Coltraneのアルバムを取り上げているが,今年はこれだ。

ついついColtraneのアルバムとなると,Impulseレーベルのアルバムを取り上げてしまいがちになる私だが,既にMiles DavisやThelonious Monkの下での修行を通じて,一皮むけた頃のJohn Coltraneの傑作としてこのアルバムも避けて通れないところである。Coltraneと言えば"Sheets of Sounds"と言われるプレイ・スタイルは本作のライナーでIra Gitlerが名付けたものだということでも,取り上げる価値はあるというものだ。

全編を通じて快調そのもののJohn Coltraneが楽しめるが,それを支えるのがPrestigeのリズム・セクションと言えばこの人たちみたいなRed Garland,Paul Chambers,Art Taylorなのだから,安定感抜群なのもこの作品への貢献度大と言ってよいだろう。まぁこのアルバムを聞いて嫌いだという人はそうはいるまいと思うが,その中でも"I Want to Talk About You"がいいねぇ。もちろんサックスの限界を追うColtraneもよければ,歌心を炸裂させるColtraneもまたよしなのだ。

こういう演奏を聞いていると,Prestige時代のColtraneも改めて聞かなきゃなと思うこの日であった。

Recorded on February 7, 1958

Personnel: John Coltrane(ts), Red Garland(p), Paul Chambers(b), Art Taylor(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年7月16日 (水)

Pat MartinoのJoyous Lakeによる放送音源。超カッコいい!

Pat-martino-1977 "San Francisco 1977" Pat Martino(Bootleg)

この音源,さまざまなかたちでブートレッグとしてリリースされていたものだが,こういう音源もストリーミングで聞けてしまうのだからいい時代である。

この音源は放送音源をブート化したものなので,サウンドボード録音だから,音には全く問題ない。そして嬉しいのがPat Martinoが最もフュージョンに傾斜したと言ってよいJoyous Lakeによるライブ音源だということだ。時は1977年,今はなきKeystone Kornerにおいての演奏である。私はアルバム"Joyous Lake"について,当ブログにおいて「英国にBrand Xあれば,米国にJoyous Lakeありって感じ。超カッコいい。」なんて書いているが,そうした感覚はこの音源でも全く変わらない。

更にアルバムと異なって,ここでの演奏は85分近くのものとなっており,演奏時間は長いし,"Fall"やら"Along Came Betty"のような曲もやってしまうところに大きな違いがあり,このメンツでどういう演奏をするのかというところに興味が湧くのだ。さすがにこうした有名曲には相応のリスペクトを示した演奏という感じで,Joyous Lakeらしいって感じではないが,それにしてもこの音源は強烈だ。この時代が生んだ熱さというところもあろうが,主流派ジャズがクロスオーバー/フュージョンに押された時代でも,コンセプトはそちらに寄せながらも,Pat Martinoの技には何の変わりもないというのが実に潔くも素晴らしい。

まさにこれは聞けて良かったと思える音源。こういうのなら大歓迎だ。

Recorded Live at Keystone Korner on March 2, 1977

Personnel: Pat Martino(g), Delmar Brown(p, el-p, synth), Mark Leonard(b), Kenwood Dennard(ds)

2025年7月15日 (火)

Patricia Brennanって誰だ?ってことで聞いたアルバム。

Breaking-stretch "Breaking Stretch" Patricia Brennan (Pyroclastic)

DownBeat誌の最新号には恒例の国際批評家投票が掲載されているのだが,年間最優秀レコードに選出されているのがPatricia Brennanの"Breaking Stretch"というアルバムであった。よくよく見てみると,このPatricia Brennanはヴァイブ部門のトップにも推されている。この人,既に昨年もヴァイブ部門のRising Starには選ばれているから,相応の注目株だったのだろうが,昨今ヴァイブと言えばJoel Rossしか念頭になかった私である。

そんなこんなでPatrica Brennanって誰よっ?って感じで気になったのだが,よくよく見返してみればMary Halvorsonの"Amaryllis & Belladonna"で既に聞いていた。しかし,そこではそれほど強烈な印象はなかったので,早速この"Breaking Stretch"をストリーミングで聞いてみた。

一言で言えば,本作においては非常にスリリングな演奏を聞かせており,この時代「女流」がどうこう言うのは野暮であるが,実にハイブラウな響きを聞かせていて,これは確かに評価したくなるというのも頷けるし,ある意味DownBeatの批評家連中が好きそうな演奏だ。そもそもメンツも相当いいところを揃えていて,人脈も確立しているところはその実力ゆえってところだろう。

この人のレギュラー・クァルテットはホーン抜きのようなのだが,本作ではそこに3管が加わるという編成もスリルを増幅させるに十分。ラッパのAdam O’Farrillは上原ひろみのSonicwonderにも参加する人だが,この人もMary Halvorsonとも共演してしまう間口の広さもあって,ここでの演奏は上原ひろみとの演奏とはだいぶ毛色が違う。そしてテナー2本がJon IrabagonとMark Shimであるから,当然硬派の演奏となることは推して知るべしだったが,それにしてもこの響きは刺激的であった。

なかなか新しい人には目配りが出来ていないのが実態だし,参加作も記憶から飛んでいるようでは,結局好きな音楽しか聞かなくなっているのだなぁということを反省した私である。改めてDownBeatの投票結果を眺めて,これ誰?って名前に注目してみたいと思う。

Personnel: Patricia Brennan(vib), Adam O’Farrill(tp), Jon Irabagon(ts), Mark Shim(ts), Kim Cass(b), Marcus Gilmore(ds), Mauricio Herrera(perc)

媒体でもリリースされているが少々お高いので,本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年7月14日 (月)

殺伐とした救急医療の現場が見ていて苦しくなる「アスファルト・シティ」。

Asphalt-city 「アスファルト・シティ」('23,米/英)

監督:Jean-Stéphane Sauvaire

出演:Sean Penn, Tye Sheridan, Raquel Nave, Katherine Waterstone, Michael Pitt, Mike Tyson

NYCはブルックリンを舞台に,救急医療隊(EMS:Emergency Medical Services) の活動を描く映画なのだが,描かれる救命される側が無茶苦茶な連中ばかりで,さすがにこれは行き過ぎではないかと思わせるプロットが続く。

Sean Penn演じるRutの家族の姿も描かれるが,いずれにしてもこのような状況ばかりならば,精神が病んでいくよなぁと思わざるをえないシーンの連続なのだ。救急隊員の殉職者より自殺者が多いというラストのテロップも頷ける話であり,見ていて救いがないと思わされるシークェンスの連続なので,相当疲れる映画である。

唯一救いのあるシーンはエンディング近くに現れるが,時既に遅しというところで,見ている方はそこまでで疲れ果てているという感じであった。そういう意味ではリアリティという点ではやや無理があって,いくらNYCと言えども,ここまで殺伐とした場所が今もって残っているかと言えば疑問だと思ってしまうところもあった。まぁ,昨今のブルックリンはこじゃれた街に変貌を遂げているとしても,私も行ったことがあるのはDyker Beachまでだから,この映画に出てくるようなエリアまでは知らないから,偉そうなことは言えないが。いずれにしても,出てくるシーンのロケ地のそこかしこに,「フレンチ・コネクション」との共通性を見出せるが,これは意図的なものだったのかなぁなんて思っていた。

面白かったのがMike Tysonが救急隊の上司として出演していることで,それっぽく演じていたのは意外であった。

まぁ映画のテーマとしてはありだと思うが,これが日本でヒットする可能性は極めて低いだろうな。Sean Pennは相変わらずだが。

2025年7月13日 (日)

ストリーミングでBrad Mehldauの音楽を聞いていて,表示された「謎の音源」。

Spangalang-session "The Spangalang Sessions 1991" Joey 'G-Clef' Cavaseno (Soul Kid Jazz)

主題の通りである。スマホの不調により,デバイスにダウンロードしてあった音源が消えてしまい,再度デバイスに書き込むついでにストリーミングでBrad Mehldauの音源を聞いていたら,参加アルバムとして表示されたのが本作であった。なんだこれ?と思ってジャケを見れば,Featuring Brad Mehldauと書いてあるではないか。

2023年にリリースされていたらしいこの音源は,1991年のセッション・アルバムのようなのだが,1991年と言えばChristopher Hollydayの"The Natural Moment"で公式レコーディング・デビューを果たした年なので,Brad Mehldauとしては最初期の音源ということになる。こんなものがあったことを知らなかった私ではあるが,それが媒体でもリリースされていると知っては,早速 コンプリートを目指す私としては発注せざるを得ない。ということで現物は米国から飛ばしている最中だが,デリバリーされる前にストリーミングで音源をチェックした。

デビューしたての青臭い時期の演奏ではあるが,この頃からPeter Bernsteinとは付き合いがあったのだということがわかって,その後の盟友関係にも納得してしまう。結局長い付き合いの朋友なのだ。

まぁこの演奏を聞いて面白いと思うかと言えば,リーダーJoey 'G-Clef' Cavasenoのアルトを含めて微妙ではあるのだが,発展途上のBrad Mehldauの演奏だと思うと実に興味深い。

まだまだ明確な個性の確立には至っておらず,どこかの大学ジャズ研でもできそうな,ごく普通のジャズ・ピアノって感じなのが微笑ましい。

本作においては,Peter Bernsteinは曲によってWilliam Ashなるプレイヤーとギターを分け合っていて,全曲でプレイしている訳ではないが,William Ashよりははるかにましなギターを聞かせていると思える。それでもフレージングはまだまだ大したことがないという感じか。まぁBrad MehldauもPeter Bernsteinもこの当時20代前半なのだから,仕方ないことではあるとしても,その後の彼らの急成長はJimmy Cobbの下でのCobb’s Mobでの修行が効いたのかもなぁと思ってしまう。

いずれにしても30年以上埋もれていたのもある意味納得できてしまう本作は,よほどの物好きにしか薦められないというところだが,コレクターの私としては存在を認識できただけでよしとしよう。まぁこれも「コレクターはつらいよ」シリーズとしてもよかったかもなぁ(笑)。

Reccorded in 1991

Personnel: Joey 'G-Clef' Cavaseno(as), Brad Mehldau(p), Peter Bernstein(g), William Ash(g), John Webber(b), Andy Watson(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年7月11日 (金)

珍しくも...。

家族旅行やら,昨今では珍しくなった仕事での出張続きやらで,家のPCに向かう時間が限定的なため,移動時間を除いて,音楽を聞いている時間があまりないし,ブログのストック記事も尽きてしまった。ということで週末にまた気分を変えて記事を書くこととして,今日は開店休業。

2025年7月10日 (木)

ライブ中のスマホ撮影に関する興味深い記事。

音楽系の情報サイトamassを見ていたら,面白い情報が出ていた(記事はこちら)。それによれば,「英国の最新調査によると、4人に1人以上(28%)がコンサート中にスマートフォンで撮影したライヴ映像を見返したことがなく,また41%がスマホ撮影に夢中になってコンサートの重要な部分を見逃したことがあり、38%がイベント中に他人が撮影しているのを迷惑だと感じている」とのことだ。

私は以前,Tedeschi Trucks Bandのライブの記事において,「ライブの最中,のべつまくなしに写真を撮りまくり,その都度,そいつの肘が私に当たっているのも全く気にしないし,撮影していない時の携帯のスクリーンも光りっぱなしでは,音楽に集中したいほかの聴衆(つまり私)にとって迷惑でしかない。お前はライブに音楽を聴きに来たのではなく,写真を撮りに来たのか?という感じであった。」と書いたことがある。まさに迷惑なのだ。

amassの記事にあるコメントはまさにその通りだと思ったので,貼り付けておく。

「コンサートの瞬間をスマートフォンで撮影したくなる気持ちはわかりますが,(中略) コンサートに行く人たちの間で,そうすることに対する懸念が高まっていることが明らかになりました。二度と見返されることのない映像のためにスマートフォンのストレージを大量に無駄にしているだけでなく,多くのファンは自分たちが楽しみにしていた体験そのものを逃しています。(中略) お気に入りの曲を1、2 曲撮影するのは問題ありません。しかし、あなたの思い出とスマートフォンのストレージのためにも、その夜はスマートフォンではなく、自分の目と耳で残りの時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。」

さて,皆さんはどう思うだろうか?

2025年7月 9日 (水)

Heartの"Little Queen":懐かしいねぇ。

Little-queen"Little Queen" Heart(Portrait)

このアルバムがリリースされたのは1977年の5月のことであったが,このアルバムからの"Baracuda"のイントロのリフは印象的だったなぁと今更ながら思う。私はHeartのアルバムは一枚も買ったことがないが,この曲だけは当時のFMでの放送を聞いて印象的だったということだけはよく覚えている。

Heartというバンドがブレイクしたのはこのアルバムだったと思うが,私はHeartのアルバムを買ったこともないので,私の中では"Baracuda"=Heartみたいになってしまっているが,このアルバムをこの歳になって初めてストリーミングで全編聞いて,一部でフォーク/トラッド的な響きを聞かせるのはHeartがLed Zeppelinフォロワーだったのだなぁと今更ながら思っていた私である。彼らがKennedy Centerで"Stairway to Heaven"を演奏したのも必然だった。今更ながら感動的なトリビュート演奏の映像を貼り付けておこう。このアレンジはRobert Plantでなくたって,まじで泣ける。

いずれにしても,このアルバムもなかなかの佳曲揃いであったことを今更ながら知る私であった。やっぱり70年代の音楽が私にフィットするのだと痛感させられるアルバム。星★★★★。今でもカタログに残っているし,Heartと言えばこれって感じなのかもしれないなぁ。

Personnel: Ann Wilson(vo, fl), Nancy Wilson(g, vo, mandolin, p), Roger Fisher(g, mandolin), Howard Leese(g, p, synth, vo), Steve Fossen(b), Michael DeRosier(ds, perc)

本作へのリンクはこちら

2025年7月 8日 (火)

越境型Brad Mehldauのブートレッグ登場。正直言って期待値は高くない(笑)のだが聞かずにはおれん。

_20250707_0001 "Brad Mehldau and Rundfunk Sinfonieorchester Berlin 2025" (Bootleg)

ジャズの枠に留まらない活動をするBrad Mehldauであるが,正直言って彼が書いたピアノ・コンチェルトはブートレッグで聞いても,ライブで聞いても失敗作だったと思っている。何でもかんでもうまく行く訳ではないということではあるが,そんなBrad Mehldauがまたもクラシックとの融合を図るライブを,今年6月にベルリンで行った際の放送音源がブートレッグとしてリリースされたので早速聞いている。

今回のコンサートはベルリン放送交響楽団と"Mehldau Meets Bach"と題するものである。Disc 2の前半は私の評価が低いピアノ・コンチェルトなので,ここはそれ以外のプログラムに注目したい。Disc 1はバッハの「平均律(ストラビンスキー編曲)」,「音楽の捧げもの(ウェーベルン編曲)」,「フーガの技法(指揮のClark Rundell編曲)」からベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」の「サンクトゥス」へと続くプログラム。Brad Mehldauのピアノのタッチも美しく,ここでのオケとピアノの融合具合は決して悪くないと思う。自作のピアノ・コンチェルトをやるより,私にとってはこういう感じのアダプテーションの方が馴染みがいい感じがしてしまうと言っては言い過ぎか。

Disc 2でピアノ・コンチェルトに続いて演奏しているのが,ブートのクレジットでは"Glodberg Variations"となっているのだが,これは記譜されたバッハの音楽ではなく,ゴルトベルクにインスパイアされた即興(変奏曲)というところであろう。それに続くのが"Things Behind the Sun"と"Waltz for J.B."で,この3曲はアンコール・ピースって感じだと思う。この辺りの演奏は本来のBrad Mehldauの真骨頂ゆえ,はずれはないところだ。

そして当日メインで演奏されたであろうピアノ・コンチェルトであるが,プログラム上は"Dedicated to Herbie Hancock"となっている。これまでこの曲に関して,Herbie Hancockの名前が出てきたことはなかったはずだが,なぜここに来て突然Herbie Hancockに捧げられたのかは全くの謎である。曲はこれまで演奏されてきたものと同じであり,Herbie Hancockを連想させるものでもないだけに,これはどうも解せないと思うのは私だけではないだろう。まぁ演奏としては以前よりはこなれてきた印象はあるが,曲そのものが盛り上がりに欠ける部分は否定できないので,評価が爆上がりするということはないな。

まぁこういう演奏も聞いておく必要があるというのが,私のBrad Mehldauという人への評価であり,ファン心理であるから,これはこれで不満はないと言っておこう。

Recorded Live at the Haus des Rundfunks, Berlin on June 14, 2025

Personnel: Brad Mehldau(p),Clark Rundell(cond),Rundfunk Sinfonieorchester Berlin

2025年7月 7日 (月)

"The Yes Album":いい曲が揃っているねぇ。

_20250703_0003 "The Yes Album" Yes(Atlantic)

Yesの黄金期はRick Wakemanが参加後の「こわれもの」からというのが定説ではあるが,演奏能力という点ではそれが事実だとしても,バンドとしての実力が向上したのは,Steve Howeが参加したこのアルバムからと考えてよいはずだ。なぜなら,ここでのレパートリーは後のライブでも繰り返し演奏されることになるからだが,今にして思えばYesの代表曲と言ってもよい曲群であった。より具体的に言えば,"Yours Is No Disgrace","Starship Trooper","I've Seen All Good People",そして"Perpetual Change"と並べば,みんな"Yessongs"にも入っているのがその証である。逆にライブで演奏される機会のない"A Venture"が浮いてさえ聞こえるのだ。

かつてYesに入れあげていた私ではあるものの,実は1st,2ndはまともに聞いたことがなく,Yesは本作からでいいと勝手に判断していたが,それで何も問題はなかった(笑)。まぁTony KayeのキーボードにはRick Wakemanほどの華がないというのは事実でも,バンド・サウンドにフィットしていなかった訳ではないと本作を改めて聞いて感じるのであった。現代においてこのアルバムを聞くと,ミキシングやギターの音色など,どうしても時代を感じてしまうところもあるが,それでも今聞いても魅力的な曲ばかりだと思ってしまう。やはりYesの黄金期はここからだったと改めて感じる。実はやや撮っ散らかった印象のある「こわれもの」よりこっちの方が好きかもしれない私である。星★★★★☆。

Personnel: Jon Anderson(vo, perc), Chris Squire(b, vo), Steve Howe(g, vachalia, vo), Tony Kaye(p, org, synth), Bill Bruford(ds, perc) with Colin Godring(recorder)

本作へのリンクはこちら

2025年7月 6日 (日)

保守化した山下洋輔もまた楽し。

_20250703_0002 "Sakura" 山下洋輔(Verve)

山下洋輔の音楽の楽しさはフリーの爽快さにあることはこれまでも当ブログに書いてきた。しかし,その後,フリーなフレージングは差し挟むものの,以前に比べれば保守的な演奏もするようになったのが,所謂ニューヨーク・トリオを結成した辺りからではなかったか。日本のわらべ歌や民謡を題材にするというのは既に「砂山」でやっていたが,本作はそれをCecil McBee,Pheeroan akLaffを迎えたトリオで改めて取り組むという感じのアルバムであった。ここにも「砂山」でやっていた3曲とも再演している。

このアルバムのリリース後,私のNYC在住中に彼らのライブを今はなきSweet Basilで観たのだが,このアルバムでの演奏よりは山下洋輔のフリー度は高かったように記憶するが,いかんせん35年近く前のことだから,記憶には自信はない。しかし,現地の聴衆にも受けていたことは間違いない。

演奏は多少保守化したとしても,このトリオは結構活動期間も長かったはずなので,相性が良かったんだろうと思えるが,それは本作を久しぶりに聞いても感じられるところであった。主題の通り,保守化しても山下洋輔の音楽は楽しかったと思う。星★★★★。

余談だが,随分前のことにはなるのだが,私の亡くなった父が山下洋輔のCDを購入していたのには驚いた。そして父が買っていたのは例外なくこのトリオであったので,フリー・ジャズに耐性があったとは思えない父でも彼らの音楽はOKだった訳だ。本作は私が自分で買ったものだが,そのほかのこのトリオの数枚のアルバムは父の遺品なのである。

Recorded on May 1-3, 1990

Personnel: 山下洋輔(p),Cecil McBee(b),Pheeroan(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年7月 5日 (土)

Walter Wanderleyからの今日はMarcos Valleだ(笑)。

_20250703_0001 "Samba '68" Marcos Valle(Verve)

昨日取り上げたWalter Wanderleyのアルバムにも参加していたMarcos Valleであるが,あちらでは曲は取り上げていても,ミュージシャンとしての露出は控えめだったこともあり,今日はMarcos Valle自身のリーダー作である。

本作は米国マーケットを意識したものなので,ブラジル音楽,特にボサノヴァがStan Getz以降ヒットしたことも踏まえての作りのため,「サンバ」と謳っていても,サンバと言うよりボサノヴァ色の方が濃厚に出ている。こういうのをブラジル人が聞くとどうなのかねぇと思いつつ,意識しているマーケットが違うのだから,まぁそれはよしとしよう。Milton Nascimentoの"Travessia"と"Courage"に明らかな違いがあったようなものだが,Milton Nascimentoの場合は私は完全に"Trvessia"なのだ(きっぱり)。なので,私は聞いたことはないが,Marcos Valleのよりブラジル色の濃い音楽にも興味は湧いてくるのだ。でもこの人の音楽にはそれほど土着性を求めてもいけないのかもしれないが。

いずれにしても本作はEumir Deodatoのアレンジメントに乗って,どちらかと言えばソフトな路線の音楽が多く,11曲中サンバ的なのは"Crickets Sing for Anamaria","Pepino Beach","It's Time to Sing"とWalter Wanderleyのアルバムにも入っていた"Batucada"ぐらいのものだ。その4曲とて決して熱量は高くない。だからと言ってそれが悪いというのではない。ここはMarcos Valleの書く佳曲を素直に楽しめばいいのだ。まずはMarcos Valleというシンガー・ソングライターを米国という巨大マーケットで売り出すためにはこういう構成はあって然るべきであったようにも思える。星★★★★☆。

Personnel: Marcos Valle(vo, g, p), Anamaria Valle(vo), Eumir Deodato(arr)

本作へのリンクはこちら

2025年7月 4日 (金)

Walter Wanderley:このイージーリスニング的な感覚がいいねぇ。

_20250702_0001"Batucada" Walter Wanderley(Verve)

このアルバムを聞くのも久しぶりだ。このアルバムはブラジル音楽の棚に入れているのだが,ブラジルものは聞くソフトに偏りがあるため,本作のプレイバック頻度は決して高くなく,ジャケを見てまたも気まぐれで聞いてみたもの。

Walter Wanderleyはブラジル出身のオルガン奏者だが,このオルガンを中心としたここでの演奏は,ボサノヴァと言ってもよいのだが,相当響きは(いい意味で)軽く,主題の通りイージーリスニング的に感じられる。その辺はプロデューサーがCreed Taylorだけに,完全なイージーリスニングにはなっていないという感覚だが,ここでの音楽は往年のワイドショーのようなTV番組のBGMとしても使われていた記憶がある。8曲目の"So What’s New"あたりがその典型だが,いろいろなシーンに「使えそうな」音楽だと言ってもよいだろう。

久々に聞いたので全然覚えていなかったのだが,4曲目はFrançoise Hardyでお馴染みの「さよならを教えて」だが,この演奏はFrançoise Hardyがレコードを発売する前にレコーディングされていて,なんでやねん?と思っていたら,この曲はもともと"It Hurts to Say Goodbye"(本作でもそのタイトルである)というArnold GolandとJack Goldが書いた曲だったらしい。それにSerge Gainsbourgが歌詞をつけて,Françoise Hardyが歌ったのが「さよならを教えて」だったのであった。私は子供の頃に「さよならを教えて」を聞いていたので,そっちがオリジナルと思っていたら,全然違っていたのねぇ。

それはさておき,本作の売りの一つはMarcos Valleがギターで参加していることだと思うが,一部アレンジにも関わっているとは言っても,本作での主役はあくまでもWalter Wanderleyのオルガンなので,過剰な期待をするべきではない。それでもこれからの猛暑の季節にも合いそうな音楽が流れてきて,気楽に聞けて心地よいことこの上ない。ビアガーデンに遭いそうだなぁなんてことを思いながら,こういうのもたまにはいいねぇと思った次第。星★★★★。

Recorded on May 16-18 and on June 25, 1967

Personnel: Walter Wanderley(el-org, p), Marcos Valle(g), Sebastian Netto(b), Jose Marina(b), Paulinho(ds), Dom Romao(ds), Lu Lu Ferreira(perc), Talya Ferro(vo), Claudio Miranda(vo)

本作へのリンクはこちら

2025年7月 3日 (木)

何でもできちゃうナベサダ・クァルテットって感じだ。

_20250630_0001"Live at the Junk" 渡辺貞夫(CBSソニー)

先日取り上げたJoe Hendersonの"Henderson's Habiliment"が収録された銀座の「ジャンク」での,ナベサダこと渡辺貞夫のクァルテットによる1969年の実況録音盤である。60年代末と言えば,私はまだ小学生だからナベサダと同時代とはまだ言えない頃だが,今にして思えば,こういう感じだったのねぇと感じるレパートリーである。

主題にも書いた通り,ここでの演奏はバップあり,ロック・ビートあり,ポップス(Burt Bacharachの"This Guy’s in Love with You")のアダプテーションあり,スタンダードあり,ブラジルありと,何でもありという感覚が強い訳だが,やっている曲は多様でも,当時のジャズの熱さとでも言うべき感覚を覚えさせる演奏だと言ってよいと思う。リーダー,ナベサダの出番が多いのは当然だが,増尾好秋のソロもふんだんに捉えられていて,これがなかなか楽しい。

こうしたバラエティに富んだ選曲だと,捉えどころがないという言われ方もされかねないし,ナベサダのオリジナル,"If I Said the Sky Was Fallin'"のロック・ビートには時代も感じてしまうが,演奏の質は極めて高く,私の中ではナベサダのアルバムとしては結構評価したくなるアルバムだと思っている。収録時間の関係で最後の"Felicidade"がフェードアウトするのは惜しいが,その前の"Granny's Samba"で大いに盛り上がることを考えれば,まぁそれもまたよしってことにしておこう。星★★★★☆。

Recorded Live at the Junk on December 26 & 27,1969

Personnel: 渡辺貞夫(as,sn), 増尾好秋(g), 鈴木良雄(b), 渡辺文男(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年7月 2日 (水)

あっという間に読了した「国宝」原作。

__20250630150601 「国宝」吉田修一(朝日出版社)

映画「国宝」の出来が素晴らしかったので,原作はどうだったかということで,多分買ったまま読んでいなかったと思ったこの原作だが,探索しても見つからない。ってことは買っていなかったのか,あるいはまだどこかに埋もれているのかもわからなかったので,文庫版を購入することにして,読み始めたらあっという間に読み終えてしまった。原作も大変よく出来ていたと今更ながら思わされる。

よくよくこの原作と映画を比較すると,映画版にはかなりの脚色が入っていることがわかる。映画の方がやはり劇的な要素を加味していて,特に吉沢亮演じる三代目が一旦ドサ回りをするシークェンスは原作にはない。映画を観た時に書いた「転落と復活」という筋書きは映画のために準備されたものであって,原作では一旦新派に転じるという設定だし,娘との関係性も全く異なる。確かに登場する女性たちの小説での存在感は映画よりは強いものではあるし,原作ではより重要な役割を果たす徳治,辻村,弁天等のキャラクターも描かれていない部分もある。

だからと言って映画のシナリオが出来が悪いかと言えばそんなことはなく,原作の持つエッセンスや挿話は上手く使いながら,端折るところは端折って歌舞伎へのフォーカス度を強めて,よくあのシナリオに仕立てたものだと思える。シナリオを書いた奥寺佐渡子にとってはストーリーの取捨選択は大変だったろうが,映画は別物として見ても楽しめるし,この原作も映画とは別物として読んでも楽しめてしまうところが素晴らしい。

映画が星★★★★★なら,この原作も星★★★★★だと言いたくなるし,原作を読んだら,もう一回映画を見に行きたくなってしまうこと必定。映画もヒットしているようだが,それも頷ける話である。

 

2025年7月 1日 (火)

Eric Dolphyの未発表音源集。これはハードルが高い。

_20250629_0001 "Other Aspects" Eric Dolphy(Blue Note)

これは1987年にリリースされたEric Dolphyの当時未発表だった音源集。Dolphyが亡くなる前に残していた音源をJames Newtonプロデュースによりリリースにこぎつけたという感じのアルバムだが,これが実にハードルが高い。

Eric Dolphyぐらいのミュージシャンになれば,残した音源はどれも貴重であることは間違いなかろうし,そのチャレンジ精神には驚かされる部分もあるが,これは決して耳に優しい音楽ではない(きっぱり)。

いきなり冒頭の"Jim Crow"から女声?と思えるヴォーカルが加わるアバンギャルドな展開であるが,この声は後にDavid Schwartzによるカウンターテナーであり,しかもバックを務めるのはBob Jamesのトリオだったことが判明する。ここに収められた演奏よりはるかに音の良い別テイク(?)は,後にリリースされる"Musical Prophet: The Expanded 1963 New York Studio Sessions"のボーナス・トラックとして"A Personal Statement"の名のもとに公開されることになる。それにしても冒頭からこれでは大体聞いている方は身構えるのが当たり前だと言いたくなる。後のBob Jamesを考えれば,若い頃はこうだったのねぇと思いたくなる。まぁよくよく考えれば,Bob JamesはESPからもアルバムを出していたぐらいだから,別に不思議はないのだが。

冒頭の1曲が最もアバンギャルドではあるが,全編に渡ってEric Dolphyの飽くなき挑戦が捉えられた音源である。そのほかの2曲はフルート・ソロ,1曲はアルトによるRon Carterとのデュオ,そして最後がフルートとタブラ,タンブーラによるトリオという構成からして普通ではないのだ。そういうこともあって,これはあくまでも相応にEric Dolphyを聞いた上で,更にDolphyの全貌を捉えるまで聞きたいというリスナーにこそ勧めるべきものだろう。よって一般的なリスナーにはお勧めはしないが,これもEric Dolphyの側面("Other Aspects")であると思って聞けばいいだけの話なので,ご関心のある方は聞いて損はない。だが,繰り返しになるが,本作は極めてハードルが高い音源なので念のため。

それにしても,このアルバムを初めて聞いた時は驚いたよなぁ...。

Recorded in 1960 and 1962

Personnel: Eric Dolphy(fl, as, b-cl), Bob James(p), Ron Brooks(b), Ron Carter(b), Robert Pozar(ds), Gina Lalli(tabla), Roger Mason(tamboura), David Schwartz(vo)

本作へのリンクはこちら

« 2025年6月 | トップページ | 2025年8月 »

2026年のおすすめ作

2026年のおすすめ作(ストリーミング)