ピアノに滲み出す知性:Vijay Iyerのソロ・アルバム。
ジャズ界を見渡しても,最も高学歴かつ理知的な人の一人と言ってよいVijay Iyerのソロ・アルバムである。スタンダードとオリジナルを組み合わせたプログラムと言ってよい構成だが,そこにMichael Jacksonの"Human Nature"や共演歴のあるSteve Colemanの"Games"が加わるところが一筋縄ではいかない。
"Human Nature"にしても,その他のスタンダードにしても,オリジナルの部分を一旦解体して,再構築するという感覚を覚えるが,Duke Ellingtonの"Black and Tan Fantasy"については比較的コンベンショナルに弾いているところは,Duke Ellingtonへのリスペクトって気もする。一方,オリジナルはフリー的なアプローチも感じられ,美的なフレージングとの混在にこの人の懐の広さが表れている。逆に言えば,どの部分がVijya Iyerの本音なのかというのがわからなくなってしまうが,それでも優れたピアニストであることは本作でも十分に実証されている。星★★★★。
今やECMの所属となったVijay Iyerであるが,本作を聞いていても,Manfred Eicherが目をつけるのも当然という感じのピアノの響きである。その一方,"Love in Exile"のようなアルバムも作ってしまうところは凄いねぇと思わざるをえない。まぁ,コテコテのジャズを好む向きからすれば,絶対気に食わないんだろうなぁなんて思ってしまうが,私はこの人は強力に支持したい。
Recorded on May 16 and 17, 2010
Personnel: Vijay Iyer(p)
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