Klaus Mäkelä+パリ管@サントリー・ホールを振り返る。

既にお知らせの通り,若き俊英,Klaus Mäkeläが振るパリ管を聞きに,サントリー・ホールに行ってきた。サンサーンス「オルガン付き」に,ベルリオーズ「幻想」という濃い~プログラムであるから期待も膨らむ。振り返ってみれば,海外のオケを聞くのは2022年のボストン響以来なので,およそ2年半ぶりのことになる。チケット代も高騰しているから,国内オケはさておき,海外オケの演奏会にはそうは行けないというのも事実だし,ほかのジャンルのライブにも通っているので,まぁ仕方ないのである。
今回は2階のステージ横の席からということで,Mäkeläの表情がよく見える席であったが,上の写真は前日のミューザ川崎での模様ながら,まさにこのような表情で,特に「オルガン付き」では譜めくりをしながらも楽しそうに振る姿が印象的であった。この表情を見るだけでも演奏の成功は保証されたようなものであった。
「オルガン付き」にしても「幻想」にしてもフランス音楽の中でも,最も派手めの選曲ということになると思うが,聴衆の期待を裏切らない強烈な躍動感を感じさせる演奏で,私は心中「お~,いぇい」と思っていたのであった(笑)。ことに私がひとかたならぬ思い入れのある「幻想」については,先日ストリーミングで聞いたアルバムでの演奏をはるかに越えるダイナミズムには,まじでワクワクしてしまった。
そもそも第一部の「オルガン付き」から尋常ならざる盛り上がりっぷりで,こんなにやっちゃって第二部は大丈夫なのかとさえ思ってしまったが,上述の通り,全編楽しそうに振るMäkeläを見ていると,「若いっていいねぇ」なんて年寄臭いことを思っていた私であった。オルガニストは,パイプ・オルガンのところに鎮座するのかと思ったら,ステージ上にオルガンらしきものがあり,そこで弾いていたのだが,聞いているとそれが後方のパイプ・オルガンと連動していて,へぇ~と思ってしまった。どのように連動させているのかは全く謎だったが,これもテクノロジーの進化か。
そして「幻想」である。私が感心したのは,私があまり面白いと思っていない3楽章でさえ聞かせる演奏だったことで,全編を通じてオーケストラを鳴らせるMäkeläの技術は大したものだと思っていた。弦も管もパーカッションも鳴らしまくりであったが,オケのメンバーを見ていて,前半はほぼ出番のない金管部隊が手持ち無沙汰のようにしていたのがおかしかったが,4楽章以降にそれまでのうっ憤を晴らすようにさえ思える吹きっぷりで応えていた。それにしても,パリ管の木管の上手いのには正直驚いてしまった。特にリード・ファゴットの演奏ぶりは横から見ているだけでも楽しかった。5楽章の「鐘」はステージの袖で叩いているのが私の席からはよく見えたのも面白かった。そして指揮台上で前後左右への動きも活発なMäkeläの指揮ぶりは,若い指揮者というのはこういうものかと思わせつつ,この人は年齢を超越した技を持っていると思えた。
そして昨今の演奏会には珍しく,アンコールは2曲。ラヴェル「クープランの墓:リゴドン」とビゼー「カルメン前奏曲」で締めたが,とにかく本チャンの2曲の印象があまりにも強烈だった。そして聴衆の熱狂ぶりも尋常ならざるものがあり,これだけ聴衆を興奮させる指揮者もなかなかいないという思いを強くした。チケット完売の理由もよくわかる。財布には痛かったが,行ってよかったと思えるまさに血沸き肉躍る激演。パリ管のメンバーが終演後ハグしあっているところにも,彼ら自身の満足感も感じられた後味もよい演奏であった。
Live at サントリー・ホール on June 19, 2025
Personnel: Klaus Mäkelä(cond),パリ管弦楽団
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