Eric Dolphyの未発表音源集。これはハードルが高い。
"Other Aspects" Eric Dolphy(Blue Note)
これは1987年にリリースされたEric Dolphyの当時未発表だった音源集。Dolphyが亡くなる前に残していた音源をJames Newtonプロデュースによりリリースにこぎつけたという感じのアルバムだが,これが実にハードルが高い。
Eric Dolphyぐらいのミュージシャンになれば,残した音源はどれも貴重であることは間違いなかろうし,そのチャレンジ精神には驚かされる部分もあるが,これは決して耳に優しい音楽ではない(きっぱり)。
いきなり冒頭の"Jim Crow"から女声?と思えるヴォーカルが加わるアバンギャルドな展開であるが,この声は後にDavid Schwartzによるカウンターテナーであり,しかもバックを務めるのはBob Jamesのトリオだったことが判明する。ここに収められた演奏よりはるかに音の良い別テイク(?)は,後にリリースされる"Musical Prophet: The Expanded 1963 New York Studio Sessions"のボーナス・トラックとして"A Personal Statement"の名のもとに公開されることになる。それにしても冒頭からこれでは大体聞いている方は身構えるのが当たり前だと言いたくなる。後のBob Jamesを考えれば,若い頃はこうだったのねぇと思いたくなる。まぁよくよく考えれば,Bob JamesはESPからもアルバムを出していたぐらいだから,別に不思議はないのだが。
冒頭の1曲が最もアバンギャルドではあるが,全編に渡ってEric Dolphyの飽くなき挑戦が捉えられた音源である。そのほかの2曲はフルート・ソロ,1曲はアルトによるRon Carterとのデュオ,そして最後がフルートとタブラ,タンブーラによるトリオという構成からして普通ではないのだ。そういうこともあって,これはあくまでも相応にEric Dolphyを聞いた上で,更にDolphyの全貌を捉えるまで聞きたいというリスナーにこそ勧めるべきものだろう。よって一般的なリスナーにはお勧めはしないが,これもEric Dolphyの側面("Other Aspects")であると思って聞けばいいだけの話なので,ご関心のある方は聞いて損はない。だが,繰り返しになるが,本作は極めてハードルが高い音源なので念のため。
それにしても,このアルバムを初めて聞いた時は驚いたよなぁ...。
Recorded in 1960 and 1962
Personnel: Eric Dolphy(fl, as, b-cl), Bob James(p), Ron Brooks(b), Ron Carter(b), Robert Pozar(ds), Gina Lalli(tabla), Roger Mason(tamboura), David Schwartz(vo)
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