Joe LovanoとMarcin Wasilewski Trioの共演第2弾:結果やいかに。
"Homage" Joe Lovano with Marcin Wasilewski Trio(ECM)
Marcin Wasilewskiのトリオは常に私を感動させてくれる稀有なバンドであり,昨年のCotton Clubにおけるライブも素晴らしかった。この人たちのライブを聞くと,私はついつい興奮気味に記事を書いてしまうのだが,昨年もそうであった(その時の記事はこちら)。そして2024年のベスト・ライブは間違いなく彼らの演奏であったと思っている。そんな彼らとJoe Lovanoの共演盤がリリースされたので,早速聞いている。
Joe LovanoとMarcin Wasilewski Trioの共演は"Arctic Riff"に続く第2作となる。前作については評価しつつも,その一部で聞かれた彼らのコレクティブ・インプロビゼーションへの違和感から若干微妙な記事を書いている(記事はこちら)。それから約5年の時を経ての本作は,前作がWasilewski TrioがゲストにJoe Lovanoを迎えたかたちであったのに対し,ここでのリーダーはJoe Lovanoであるという違いがある。その結果はどうだったか?
全6曲中5曲がJoe Lovanoのオリジナルとなっており,冒頭の"Love in the Garden"のみポーランドのヴァイオリニスト,Zbigniew Seifertの作品。Zbigniew SeifertはTomasz Stańkoのバンドにいたこともあるとのことであるから,この曲はMarcin Wasilewskiが持ち込んだものだろう。この"Love in the Garden"からして,私はその静謐で美的な響きにまいってしまったと言ってよい。
全体的にはクールな響きが支配的ではありながら,タイトル・トラック,"Homage"ではフリーに近い展開も示している。私には"Arctic Riff"よりもこなれたテンションを感じさせる演奏となっており,ヒリヒリするような感覚を与えると言ってもよい。この辺りは2度目の共演ということもあるし,このレコーディング前には本作への助走的にVillage Vanguardに出演したらしいから,そこでのコンビネーションの向上もあっただろう。
この編成での演奏においては,いつものMarcin Wasilewski Trioのような美的な部分だけではなく,演奏における自由度が追及されているように感じる。まぁ最後をLovanoとMiskiewiczのパーカッション・デュオで締めるという構成は,アルバムの余韻としてはどうだったかというところはあるのだが,全体の演奏における充実度は極めて高いと思う。これはやはり高く評価すべきアルバムということで,少々甘いとは思いつつ,星★★★★★としてしまおう。
Recorded in November 2023
Personnel: Joe Lovano(ts, tarogato, gongs), Marcin Wasilewski(p), Slawomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz(ds)
本作へのリンクはこちら。
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