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2025年5月24日 (土)

Laura Marlingの"Patterns in Repeat"のDeluxe Edition現る。

Laura-marling-patterns-in-repeat-deluxe "Patterns in Repeat (Deluxe)" Laura Marling(Chrysalis) 

昨年リリースされたLaura Marlingの"Patterns in Repeat"は相変わらずの素晴らしいアルバムで,私は昨年のベスト作の一枚に選んでいる(アルバムに関する記事はこちら)。その"Patterns in Repeat"のDeluxe Editionにストリーミングで公開されていた。今のところ,媒体でのリリースはないようだが,これがまた注目すべきものだった。

ストリーミング・サイトでも2枚組扱いとなっていて,Disc 1は昨年リリースされたものと同じだが,今回付加されたのがDisc 2の同作をライブで再現した音源である。基本的にはオリジナルを踏襲した作りとなっていて,非常にインティメイトな感覚に溢れた音となっている。基本はLaura Marlingの弾き語りで,一部ストリングスとコーラスが入る。元々映像化も考えられていたもののようで,YouTube上にこの時の模様がアップされているので,全体像を把握するには映像を観る方がいいかもしれない。

私としてはこの演奏についてもほぼ満足しているのだが,一点だけ難点があると思っている。それは女性コーラス隊の質だ。どうもこのコーラス隊の歌いっぷりが私には気に入らない部分がある。音の乱れのようなものが感じられて,Marlingの歌唱をサポートすべきものが,むしろ邪魔にさえ感じさせるのだ。これは私の一聴した感覚なので,改めて映像でもチェックしようとは思うが,映像でもわかるのだが,ステージも親密度を上げた折角のライブだけに,このコーラスのやや貧弱とも思える歌いっぷりはもったいなかったという気がする。

まぁそれでもLaura Marlingのファンの私としては,こういう音源や映像が出てくるだけでよしとしようと思う。ついでにこのライブの映像も貼り付けておこう。

Recorded Live at the Albert Hall, Manchester on March 6, 2025

Personnel: Laura Marling(vo, g) with Strings and Chorus

2025年5月23日 (金)

Vernell Brown Jr.の2枚目のリーダー作:何度聞いてもダメなものはダメ。

_20250521_0001 "Stay Tuned" Vernell Brown Jr.(A&M)

今から15年近く前のことになるが,Vernell Brown Jr.の初リーダー作"A Total Eclipse"をこのブログで取り上げたことがある。そこに私は「この人のセカンド・アルバムは期待して買ったが,全然面白くない出来だったという記憶しかない。」なんて書いているが,幾星霜を経て,その2ndアルバムを改めて聞いてみた。

この2ndも1stに続いて,メジャーのA&Mからのリリースだったので,1stもそれなりに売れたということなのかもしれないが,1stは相応のゲストを迎えた作りであったのに対し,本作は当時のレギュラー・バンドによるレコーディングであるのが大きな違いである。だが,この当時,20歳そこそこのVernell Brown Jr.にとっては,まだレギュラー・バンドでのレコーディングは時期尚早と言わざるを得ないと感じさせるのが最大の難点であり,私が全然面白くないと感じた理由だと思う。

こうしたレーベルの対応を可能にするだけ,当時の期待値の高さを感じさせるとしても,曲も1stほど魅力的に感じないし,演奏はファンク風味もあって破綻はないが,何度も聞きたいと思わせるような演奏となっていないのだ。おそらくこのアルバムはセールスにも失敗したと見えて,この人のキャリアに再度スポットライトが当たるのは今世紀に入って,Kenny Garrettのバンドに加入してからのことになったのも仕方なかったと思える。

1stのレコーディング時はまだティーンエイジャーだったVernell Brown Jr.への期待が,彼を押しつぶしてしまったとも思えるが,Kenny Garrettに見初められて,シーンに復帰したのはよかったものの,2022年に50歳で亡くなっていたとはつくづく不幸な人であった。

だからと言って,このアルバムを褒める気にもならないが,唯一,昨今はSimon PhillipsのProtocolで活躍するErnest Tibbsの名前を見つけて,へぇ~と思ってしまった私であった。星★★。このCDが売り払われずに,我が家のラックに残っていたこと自体が奇跡的と思えると言っては言い過ぎか(爆)。

Personnel: Vernell Brown Jr. (p, key), Land Richards(ds), Ernest Tibbs(b), Darryl Richards(ts, ss), Gregory Cook(g), Lenny Castro(perc), Tyrone Bowen(vo), Linn Fiddmont Linsey(vo), Brigitte Bryant(vo), Raymond L. Brown(tp, fl-h), Reginald Young(tb), Gary A. Bias(sax)

本作へのリンクはこちら

2025年5月22日 (木)

久しぶりに聞いたChuck LoebのJazz Cityレーベルでのアルバム。

_20170827 "My Shining Hour" Chuck Loeb(Jazz City)

このアルバムについては,Chuck Loebが亡くなった2017年に追悼記事として紹介したことがある。もう8年も前のことになるが,おそらくこのアルバムをプレイバックするのはそれ以来のことだと思う。在宅勤務の定着により,音楽を聞く時間が増えたことは間違いないところなのだが,それでもこれだけの間が空いてしまうというのは,保有枚数が増え過ぎた結果と言ってもよい。こうした事態は死ぬまで解消しないんだろうが,もう少しちゃんと手持ちのソフトを聞かねばならんとついつい思ってしまった。

それはさておき増尾好秋が主宰したJazz Cityレーベルには結構いいアルバムが多かったと思うし,注目すべきミュージシャンにレコーディングの機会を与えたことでも意義深いレーベルであった。Marc Copland(当時はMarc Cohen名義)然り,Fred Hersch然りである。本作はChuck Loebにとって初リーダー作となった訳だが,この頃から十分に実力を示したアルバムと言ってよい。小曽根真,John Patitucci,そしてDave Wecklという強力なメンツをバックに従えたのも功を奏し,初リーダー作としてはよく出来ていると今更ながら思える。

Chuck Loebのオリジナルに加え,よく知られたスタンダード,そしてDonald Fagenの"Maxine"や,Milton Nascimentoの"Tarde",更にはMichael Jacksonの"I Just Can’t Stop Loving You"を交えたプログラムは,Chuck Loebの多才さを示すのに適したプログラムであったと思える。基本的にはオリジナルにおいてはフュージョン色が濃厚なプレイぶりと言ってよいと思うが,スタンダードにおいてもこのギターはフィットしていると思わせる。今にして思えば,星★★★★には値する佳作であり,後のFourplayでの活躍を予感させるものであった。亡くなったのは61歳の時で,まだまだ活躍が期待できる年齢だっただけに,早逝が惜しまれる人と言わざるをえない。

尚,クレジットにはPat Rebillotなる人がピアノで参加とあるが,どこで弾いているのかは記載が見当たらず不明。

Recorded in December 1988

Personnel: Chuck Loeb(g), 小曽根真(p, synth),Pat Rebillot(p), John Patitucci(b), Dave Weckl(ds), Carmen Cuesta(vo)

本作へのリンクはこちら

2025年5月21日 (水)

Ann Burtonの"New York State of Mind"を久しぶりに聞いた。

_20250517_0002 "New York State of Mind" Ann Burton(CBS→Apollon)

ジャズ・ヴォーカルをあまり聞かない私でもたまに聞きたくなることがある。Ann Burtonのクセのない歌いっぷりは私のようなジャズ・ヴォーカルに思い入れのないリスナーには丁度いい感じなのだ(笑)。

本作はHelen Merrillがプロデュースしたアルバムで,有名無名のスタンダード(これもおかしな表現だが...)に加え,タイトル・トラックをはじめとするポップ・チューンを交えた構成は,Ann Burtonに適していると言ってよいと思う。冒頭のタイトル・トラックからして,聞き易さに満ちていて安心して聞けるのがいいのだ。以前"Burton for Certain"を当ブログで取り上げた時にも,Ann Burtonは「大向こうを唸らせるような歌手ではない」と書いたが,その思いはここでも不変。それでも,このくつろぎ感はこの人の歌の魅力だと思う。

私がMelisa Manchesterの"Come in from the Rain"やPaul Simonの"Something So Right"のような曲に反応してしまうのは,"Burton for Certain"でも同様であったが,そのほかの曲においても,まさにAnn Burtonらしい歌唱が楽しめると思う。傑作と言うつもりはないが,手許には置いておきたいアルバム。星★★★☆。

Ann-burton

尚,私が保有する国内盤のジャケットはよく訳のわからないデザインであるが,オリジナルのAnn Burtonのどアップ・ジャケットではさすがに...と考えるのも理解できるな。だが,再発盤ではオリジナルに戻しているようなので,Ann Burtonの名誉のために,そちらのジャケ写真もアップしておこう(笑)。

Recorded in 1979

Personnel: Ann Burton(vo), Mike Renzi(p, el-p), Buster Williams(b), Grady Tate(ds)

2025年5月20日 (火)

Wayne Krantzの比較的初期音源を聞く。Enjaっぽいハイブラウな音である。

_20250517_0001 "Extended Animation" Michael Formanek(Enja)

先日突然弾き語りアルバムをリリースして私を驚かせたWayne Krantzだが,その活動の比較的初期の音源への参加を知り,廉価盤だし,ポイントも余っていたのでCDをゲットした。それにしてもこのアルバムは全く知らなかったが,よくこんなものまで国内盤としてリリースしたものだと思ってしまう。

Michael FormanekとWayne Krantzとの共演と言えば,これに先立って"Wide Open Spaces"がある(同作に関する記事はこちら)が,その時のメンツ,編成とほぼ同じで,サックスだけが前作のGreg Osbyに代わってTim Berneが参加ということで,ただでさえ尖った音が更に尖りそうなのは想像できる。まぁEnjaだしねぇ...。

本作がレコーディングされたのは91年なので,Wayne Krantzは既に初リーダー作"Signals"をEnjaからリリース済みの頃であるが,ここではリーダー作とは異なる音楽性を聞かせている。逆に言えば,こういう音楽にも対応できるということを感じさせるのが面白い。フリーではないが,かなり自由度が高い音楽の中で,Wayne Krantzがどういうギターを聞かせるかに私の場合関心が集中してしまうのだ。そして,明らかにここではリーダー作で聞かせるギターとは異なるサウンドで,ハイブラウな演奏への馴染み具合に対応能力の高さが感じられ,"Wide Open Spaces"の時よりも更に進化しているように感じさせる。

しかし,そうした関心事を除けば,このアルバムをしょっちゅうプレイバックしようという気にはなかなかなりそうにないというのも事実。Tim Berneはアルトとバリトンの二刀流だが,バリトンをもっと多用しても面白かったかもしれない。前作でも感じたことだが,Mark Feldmanのヴァイオリンって必要だったかと言えば,少々疑問を感じるのは,私の関心がWayne Krantzに向き過ぎのためか。まぁこれはこれでそこそこ楽しめるという感じのアルバム。"Wide Open Spaces"同様星★★★☆ってところにしておこう。

それにしても,ここでライナーを書いている工藤由美は,Wayne Krantzに関して「ソロ活動では,前衛的で尖ったプレイで定評がある。」なんて書いているが,Krantzのどこが前衛的だと言うのか?こういう記述は全く納得がいかん。本作でのギターとリーダー作には明らかな違いがあることを踏まえているとは思えない。

Recorded on November 21-23, 1991

Personnel: Michael Formanek(b), Tim Berne(as, bs), Wayne Krantz(g), Mark Feldman(vln), Jeff Hirshfield(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年5月19日 (月)

Amazon Primeで見た「裸の町」:この当時のオール・ロケーションというのが凄いねぇ。

Naked-city 「裸の町("The Naked City")」('48,米,Universal International)

監督:Jules Dassin

出演:Barry Fitzgerald, Howard Duff, Don Taylor, Dorothy Hart, Ted de Corsia, House Jameson

この映画は多分初見だろう。マンハッタンの空撮から始まり,プロデューサーであるMark Hellingerのナレーションが被さるというユニークなスタートだが,そこでも述べられているように,スタジオやセットに頼らず,オール・ロケーションで撮られたというのは,当時としては画期的だったはずだ。そして描かれるのは地道な捜査のプロセスで,リアリティが重視されていて,元祖セミ・ドキュメンタリー・タッチと言われるのも頷ける。

1948年当時のNYCの情景を映し出していて,今や大きく変貌を遂げた現在のNYCとは比較にならないが,都市とは言え,まだまだ牧歌的なところも残っていたというのがよくわかる。終盤の犯人を追跡するシーンを見ていると,カーチェイスはないが,「フレンチ・コネクション」の源流としての趣さえ感じていた私であった。

出演する役者陣も,美男美女ばかりという訳でもなく,主役のBarry Fitzgeraldなんて渋いことこの上なく,こんな刑事もいるんだろうなぁと思わせる。ある意味第10分署殺人課の刑事たちの群像劇という捉え方もできる。

オール・ロケーションということで,様々な困難もあったであろう撮影に関して,オスカーの撮影賞,編集賞が与えられたことも納得の映画であった。何よりも凄いのはエキストラなしで撮られているってことだろう。先日当ブログでも取り上げた黒澤明の「野良犬」もこの映画の影響を受けているらしいというのも納得の佳品。もちろん,古い映画だけに時代を感じさせる部分もあるが,これはこれで現在でも鑑賞に耐える作品。星★★★★。それでもIMDbを見ると,総じてNYのメディアからの評価が低いのが笑える。

ところで,原題"The Naked City"と聞くと,ついついJohn ZornのNaked Cityを想起してしまうが,John Zornがこの映画を意識したかどうかは謎である。

本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年5月18日 (日)

復帰後のArt Pepperのアルバムではリラックスした感覚のアルバム。

_20250514_0002 "Among Friends" Art Pepper(Trio→Storyville)

以前にも書いたことがあるが,Art Pepperの音楽については,麻薬で捕まって引退状態になる前と復帰後でどっちがいいという論争が続いていた。まぁ明らかに変わったというのは事実だったとしても,復帰後には復帰後なりの味わいがあったと思っているので,私はどちらのArt Pepperも好きである。

そんな復帰後のArt Pepperの音源で最もリラックスした感覚が強いのが本作ではないかと思える。何せ日本制作のアルバムであるから,プロデューサーの意向もそれなりに反映している部分があって,比較的捕まる前のArt Pepper的に吹いている部分は感じられる。それは選曲のせいもあるだろうし,"Among Friends"というタイトルにもある通り,ジャズ界からほぼ退いていたと思われるRuss Freemanを引っ張り出してきたことが大きかったのではないか。

Art PepperとRuss Feemanと言えば,私がArt Pepperの最高傑作と思っている"Modern Art"はじめ,Tampaのアルバム,更には"Surf Ride"と,Art Pepperの重要作で共演している仲だ。それがArt Pepperの高揚感を生み,当時の「いつもの感じ」とは違う演奏を生んだと言ってもよいかもしれない。

私としては本作が決して悪いアルバムだとは思わないが,それでもこれが50年代のRuss Freemanとの共演盤を上回るとか,復帰後のVillage Vanguardでのライブ盤を上回るとは思っていない。一番よくないのがBob Magnussenの増幅過剰のベース。これがどうにも私には気持ち悪い。Russ Freemanのピアノもミキシングのせいもあるかもしれないが,ややエッジが立ち過ぎの部分があるし,例えば"What’s New"のような曲において,ソロが少々仰々しく感じさせるのも事実だ。Art Pepperのアルトに限って言えば,特に文句もないのだが,総合的に見ると手放しで傑作とは言えないのだ。ボートラで入っている"Blue Bossa(Take 2)"では完全にしくじっているしねぇ(苦笑)。

私が保有しているのはStoryvilleからの再発CDだが,ジャケもペラ紙一枚だし,装丁としてもあまり力が入っていないのはまぁ許せるとしても,全体的には悪くはないアルバムとは言え,それ以上のものではない。Art Pepperの凄みを感じたければ,前期にしろ,後期にしろ,別のアルバムを聞くべきだと思う。甘めの星★★★★という評価が妥当だろう。

Recorded on September 2, 1978

Personnel: Art Pepper(as), Russ Freeman(p), Bob Magnussen(b), Frank Butler(ds)

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2025年5月17日 (土)

Wayne Krantzに何があったのか...。新作は驚きの弾き語りアルバム。

Player-songwriter "Player-Songwriter" Wayne Krantz(自主制作盤?)

ストリーミング・サイトを見ていたら突然ニュー・リリースとして表示されたWayne Krantzの新作。Wayne Krantzのひとかたならぬファンとしては,媒体での入手必須ということで,Bandcampで早速発注したのだが,現物はこれから届くとしても,ダウンロードした音源を聞いてびっくりしてしまった。これが一部を除いて全編がWayne Krantzのギター弾き語りなのだ。確かにBandcampのサイトにも"WK plays electric guitar, sings, taps his foot. There's a loop on one song. No bassists, drummers, keyboardists or saxophonists were harmed during the making of this record."と書いてあるのを後から確認したが,一体これはどうしたことか。

歌に関しては本人も"minimal vocal ability"なんて自虐的に書いている通り,所謂「ヘタウマ」の域を出ないと思うが,Wayne Krantzにとってはテーマとしては「作詞」の方が重かったようだ。Wayne Krantzが敢えてこのアルバムをリリースしたのは,"Howie 61"における作詞の部分に納得がいっていなかったところが大きいようだが,それにしてもである。ここでの音楽がWayne Krantzの本来の音楽性にフィットしているかと言えば少々疑問はあるが,長年のファンと立場としては,いいか悪いかは別にして,これも一つのWayne Krantzの側面として捉えることとしたい。

私は彼のファンであるがゆえに,媒体も発注したものの,これは相当コアなファン向きとしか言えないので,まずはストリーミングでお試しになることを推奨しよう。私としても星をつけにくいアルバムであることこの上ない(笑)。

Personnel: Wayne Krantz(g, vo)

2025年5月16日 (金)

Dave Masonのライブ盤を久しぶりに聞く。

_20250514_0001 "Certified Live" Dave Mason(Clumbia)

Dave Masonと言えばTrafficと考えるべきなんだろうが,私はDave Mason在籍中のTrafficを真っ当に聞いた記憶がない。なので,私にとってはGeorge Harrisonの"All Things Must Pass"への参加や,本作を含むソロ・アルバムの方で記憶に残っている人だ。来年で傘寿を迎えるDave Masonはいまだ現役で活動中ということで,まだまだ元気なものだが,ソロ・キャリアの中では本作を出した70年代中盤が人気としてはピークだったと言ってもよいかもしれない。

このアルバムもファンク風味あり,アコースティック・セットあり,ブルージーな演奏ありといろいろな音楽性が詰め込まれている感じだが,面白いと思ったのが,このアルバムの前年にリリースされたEaglesの"Take It to the Limit"を早くもこの段階でカヴァーしていることだろう。ブルージーな"Goin’ Down Slow"でのトーキング・モジュレーターの仕様などは時代を感じさせるところではあるが,ほぼ同時代人の私にとってはこういう響きは全然違和感がないのだ(笑)。

このライブ・アルバムを聞いていると,パッケージ化されたコンサートとしては,満遍なくバンドの魅力が伝わるようなセットになっていると感じるところが大きかった。私にとってはMike Finniganがバックで参加しているのが懐かしいが,彼のアルバムもそのうち取り上げないといかんなぁと思ってしまった。もともとがLP2枚組のアルバムだっただけに,若干の冗長性は感じるところもあるが,これはこれで十分楽しめるアルバムであった。星★★★★。

Personnel: Dave Mason(vo, g), Jim Krueger(g, vo), Mike Finnigan(key, vo), Gerald Johnson(b), Rick Jaeger(ds)

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2025年5月15日 (木)

David Sanbornの"Close-up"を久しぶりに聞いた。

_20250505_0001 "Close-up" David Sanborn(Reprise)

David SanbornとMarcus Millerのコンビの蜜月時代は結構長く続いたが,私の中では彼らのコラボ作の中だけでなく,全キャリアにおいても,David Sanbornの最高傑作は"Straight to the Heart"をおいてほかにないということはこれまでもこのブログに書いてきた。いずれにしても,Marcus Millerという強力なパートナーを得てからのDavid Sanbornのアルバムは相応に聞きどころはあったと思っている。これもそんな一枚。

冒頭の"Slam"は後のライブでも人気となっていくノリノリの曲で,本作についてはついついこの曲の印象に引っ張られてしまうところがあるのだが,それはそれでいいとして,実はこのアルバムはむしろDavis Sanbornの歌心を感じさせるミディアム~スローの曲の方が私には魅力的に響く。それはアップビートの曲におけるプログラミングの多用のようなところを感じさせるところが大きいようにも思える。別に打ち込みが悪いという訳ではない(だって,同じ打ち込みでも"Backstreet"は結構好きだ)のだが,全体的なサウンドとして,軽い印象を与えてしまうところがあるように思えてならない。せっかくMarcus Millerのベースがいる訳だから,もう少しサウンド的に分厚くてもいいように思えるのだ。最後の"Camel Island"におけるMarcus Millerのスラップのような響きがもっと必要だと思ってしまうぐらい,一部の曲に軽さを感じるがゆえに,私はミディアム~スローの曲の方に魅力を感じてしまう。

そういう意味で"Leslie Ann"なんていいよねぇって思ってしまうのが私の本音だが,"You Are Everything"まで行くと,「いかにも」感ゆえのはまり具合に,ちょっと行き過ぎでは?と思わせるところもあって(だからと言って悪い訳でもなく),何ともアンビバレントな感覚を覚える。それでもまぁDavid Sanbornがフュージョンの世界で人気のピークにあった頃の演奏と考えれば,これはこれで相応に楽しめる一枚だった。でもプレイバック頻度が大して上がらないところに私の好みが表れているということで,甘めの星★★★★。

Personnel: David Sanborn(as, vo), Marcus Miller(b, p, key, g, prog, vo), Hiram Bullock(g), Nile Rogers(g), Jeff Mironov(g), G.E.Smith(g), Paul Jackson, Jr.(g), Rickey Petersen(el-p, key), Andy Newmark(ds), Steve Jordan(ds, g), Vinnie Colaiuta(ds), William Ju Ju House(ds), Fred Maher(el-ds technician), Paulinho da Costa(perc), Don Alias(perc), Terry Bardani(vo), Cliff Braithwater(vo), Adam Dron(vo), Bibi Greene(vo), Waymon Tisdale(vo), Michael Ruff(vo)

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2025年5月14日 (水)

初聞きだった"Pink Floyd at Pompeii – MCMLXXII":Pink Floydでこれが一番好きかもしれないと感じるほどの興奮作。

Pink-floyd-at-pompei "Pink Floyd at Pompeii – MCMLXXII" Pink Floyd (Sony)

これを新譜と言っていいかは微妙なところだが,大幅リストア版らしいからよしとしよう。

私のプログレッシブ・ロック遍歴はまずYesがあって,そこからKing Crimsonへ流れたというものだ。もちろん,そこにPink FloydやGeneisも割り込んでくる訳だが,前者2バンドに比べると,そこそこは聞いていると言っても,後者に対する熱心さには欠けるというのが本音だ。だからこれまでPink Floydによるこのポンペイでの映像を見たこともなければ,音も今回初めて聞いたというのが実態であった。

そして,今まで聞いたPink Floydの音源の中で最も興奮されられたのがこのアルバムだったというのが正直なところだ。バンドとしてのキレもよければ,演奏のレベルも高い。私はかつて彼らのベスト盤"Echoes"の記事には「Pink FloydはAORである」なんて挑発的なことを書いている(結局は褒めているが...。その記事はこちら)が,これは私の中でのPink Floydのイメージを変えるに十分な音源だったと言っても過言ではない。

これほど素晴らしい音源だと知る由もなかったとは,無知とは何と恐ろしいことか...。ということで,完全に私は本作の前にひれ伏したのであった。星★★★★★以外はありえない。私が購入したのはBlu-ray同梱版だが,映像を見るのも楽しみだ。いや~,マジでまいった。

2025年5月13日 (火)

Amazon Primeで見た「現金に手を出すな」。Jean Gabin渋し!

Photo_20250502125201 「現金に手を出すな("Touchez pas au Grisbi")」(’54,仏/伊)

監督:Jacque Becker

出演:Jean Gabin, René Dary, Paul Frankeur, Lino Ventura, Jeanne Moreau, Marilyn Buferd, Dora Doll, Delia Scala

Amazon Primeのよいところは往年の白黒映画が結構見られることだ。今回見たのはJean Gabinのこの映画。タイトルの「現金」を「げんなま」と読む本作は50年代半ばのギャング映画,あるいはフレンチ・フィルム・ノワールである。この映画の内容や英語タイトルである"Don’t Touch the Loot"(Loot:略奪品)を踏まえれば,「金塊に手を出すな」って方が正確なのだが,まぁ硬いことは言うまい。

この映画は一言で言えば,フランス式仁侠映画だ。仁義に欠ける敵役をLino Venturaが演じるが,キャスト表示の末席にいるにしては,結構目立っていて,その後の活躍を想像させるに十分。その一方,女優陣ではJeanne Moreauも出ているのだが,この役は...って感じで,彼女らしい色香を感じさせないのはちょっと残念。むしろ,出番は少ないがMarilyn BuferdやDelia Scalaの方がここでは別嬪度が高い。Marilyn Buferdは1946年のミス・アメリカだから別嬪で当たり前だが。

それはさておきである。この映画はあくまでもJean Gabinである。その筋の顔役的な役割を演じて,渋いことこの上ない。スーツを着こなしながら,機関銃をぶっ放す姿には惚れ惚れする。そうしたシーンは映画後半にしか出てこないが,全編でのスーツ姿にMarilyn BuferdやDelia Scalaが惚れるという筋書きにも頷けてしまう。決して美男だとは思わないが,たばこの吸い方,ラスクにパテ(?)を塗って食べる姿等の一挙手一投足にしてもカッコよ過ぎなのである。

そんなJean Gabinを見ていれば,あっという間に時間が経過するが,これはシナリオ,演出含めて,派手なギミックに頼らず撮られた映画であり,確かによくできた作品であった。星★★★★☆。

本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年5月12日 (月)

Denny Zeitlin:別のアルバムを聞いてもピンと来ず,取り出したのが本作。

_20250430_0001 "Live at the Trident" Denny Zeitlin(Columbia)

実はDenny Zeitlinの別のアルバムを取り出して聞いていたのだが,何度聞いてもピンと来ない。そちらについてもそのうち記事にしようとは思うが,今回はそこまで至らずということで,気分を変えてプレイバックしたのが本作。本作じゃなく,ECMにおけるCharlie Hadenとのデュオって手もあったなぁと思いつつ,こちらを続けて聞いていたのであった。まぁ,Charlie Hadenはこちらにも参加しているので,本作でも全然問題ないのだが(笑)。

Denny Zeitlinと言えば,精神科の医師であり,大学でも教鞭を執りながらアルバムも出すというインテリのジャズ・ピアニストの代表みたいな人だが,何かと言えばBill Evans的のように言われるのはどうかなとも思う。このアルバムを聞いていると,抒情的な響きはあるものの,Bill Evansとは異なるタッチだと思えるのだ。そうは言っても,7曲目のオリジナル"Quiet Now"のイントロで聞かせるソロ・ピアノにはややEvans的なところも感じさせるのは事実だが,「いかにも」なBill Evansフォロワーではないと思う。

Denny Zeitlinは1966年と74年の2回,Down Beat誌の国際批評家投票でピアノ部門の1位になったということだが,そこまで評価される人かなという疑問はあるものの,66年ならばこのアルバムがリリースされた直後のようなかたちだから,おそらくは本作含めて評価されていたということになる。

このアルバムを聞くのも久しぶりだったが,この人の個性からすれば,冒頭に"St. Thomas"のような曲を持ってきたのはあまりいいチョイスだと思えない。勢いを優先したって感じかもしれないが,"St. Thomas"がこの人のスタイルに合っていないのは明らかで,どうにもこの曲だけは違和感が払しょくできないでいる私である。だが,2曲目以降はこの人はこういうピアノだよねぇという感じになっていくので,まぁよかろう。リーダーのピアノに加えて,Charlie Hadenの腰の据わったベースが楽しめるのもこのアルバムの美点。星★★★★。

因みにこのアルバムが録音されたThe Tridentはカリフォルニア州ソーサリートというヨット・ハーバーが並ぶ風光明媚な場所にあるヴェニューだが,私はソーサリートはナパに行く際に通過するばかりで立ち寄ったことはない。しかしサンフランシスコからゴールデン・ゲート・ブリッジを渡って右側に見えてくる海沿いの街は,道すがらで見ていてもおしゃれな場所であることは間違いない。そしてこのThe Tridentは,カクテル,テキーラ・サンライズ発祥の地だそうだ。へぇ~。懐かしさもあって,ついでにソーサリートの写真もアップしておこう。SF(写真で言えば奥側)や金門橋とのだいたいの位置関係もわかってもらえるはずだ。

Recorded Live at the Trident on March 22-24, 1965

Personnel: Denny Zeitlin(p), Charlie Haden(b), Jerry Granelli(ds)

本作へのリンクはこちら

Sausalito

2025年5月11日 (日)

Mehldau McBride Gilmore Trio@紀尾井ホール参戦記。

On-may-9-2025

前日に続いて二日連続でのライブ参戦となったが,今回はBrad MehldauにChristian McBride,Marcus Gilmoreから成るトリオだ。場所はキャパ800の紀尾井ホールだが,偶然にも10年前の同じ5/9に,私はKeith Jarrettのソロをこの場所で見ていたのであった。去年はここでのDaniil Trifonovの現代音楽のリサイタルを聞いて以来,約1年ぶりの再訪となった。

Mehldau-mcbride-gilmore-trio この3人については,Brad MehldauとChristian McBrideは度々共演しているが,Brad MehldauとMarcus Gilmoreは,Joe Martinの"Not By Chance"ぐらいしか共演はないと思う。Christian McBrideとMarcus Gilmoreの共演歴までは追えていないが,それでも実力者のトリオであるから大いに期待も膨らむ訳だ。

この日のプログラムは前半がBrad Mehldauのオリジナルが5曲,後半とアンコールがスタンダードとジャズマン・オリジナルで5曲という構成で休憩なしの約2時間ぶっ通しで,たっぷりと彼らの演奏に触れることができた。私が見たこの構成は,米国でのスタンフォード大学での公演のブートレッグに近いが,公開されている5/8のセットリストとは全く異なる構成というのが彼ららしい。

私は前半の3曲を聞いていて,これは今まで聞いたBrad Mehldauの生演奏においても上位に位置するのではないかと思えたが,冒頭3曲におけるハード・ドライヴィングとさえ感じるピアノには,Brad Mehldauのジャズ・ピアニストとしての矜持,あるいは魂のようなものを感じたのであった。冒頭の"Artis"からして,ジャズ的スリルに満ちたぞくぞくするような感覚だったと言っておきたい。

そんな演奏に接して,明らかにLarry GrenadierとJeff Ballardとのレギュラー・トリオの演奏から受ける印象と違うというのを感じていた。レギュラー・トリオにおいては,Brad Mehldauらしい「Brad Mehldau節」とでも言うべきフレージングが明確かつ頻繁に出るところがあるが,今回のトリオにおいては,そうした演奏はやや抑制され,よりオーセンティックな「ジャズ・ピアニスト」としてのBrad Mehldauを感じることができたと言うべきかもしれない。

後半のスタンダードやジャズマン・オリジナルでもそういう感覚があって,リーダー作で聞かれるピアノよりも,他のミュージシャンのアルバムに客演している時のBrad Mehldauという感覚だったと言ってもよいかもしれない。そもそもアンコールでSam Riversの"Beartrice"やJimmy Heathの"C.T.A."を選ぶところからしてもそういう感じだ。もちろん,そうした中にもBrad Mehldauらしいフレージングは顔を出すが,その比率が低いのだ。

レギュラー・トリオとは少々異なる今回の演奏もBrad Mehldauのひとつの顔であって,ライブの場でこういう演奏に触れられたことは,Brad Mehldauオタクの私にとって実に意義深いものとなった。今まで私はBrad Mehldauのソロか(Pat Methenyとの共演時も含めて)レギュラー・トリオの演奏しか生で見たことがなかったが,今回の演奏はある意味新鮮であった。そうした演奏を導き出すのが,Christian McBrideのベースであり,Marcus Gilmoreのドラムスだったと考えればよいだろうが,Christian McBrideが及ぼした影響はかなり大きかったのではないかと思える。ソロ・スペースも豊富に与えられ,Wayne Shorter作の"Miyako"で聞かせたボウイングなんて,やっぱりうまいもんだと思わせるに十分。最初はPAの調子が悪く,ベースがよく聞こえないと思っていたが,中盤から改善し,ニュアンスも聞き取れるようになったのもよかったが,やはりこの人,器が違う。Marcus Gilmoreのドラミングもシャープでよかったのだが,ドラム・ソロはもう少し歌心を感じさせてくれるといいなぁと思っていたのも事実であり,聴衆を乗せる術も発展途上と感じた。まぁそれでもこのトリオでレコーディングしてもいいんじゃないかと思えるレベルは十分に確保していたと思う。

いずれにしても,私としては十分満足できる演奏であったし,やはり彼らは一流だと再確認したライブであった。これに続く日本公演のセットリストを見るのが楽しみになってきたし,願わくば全公演を聞きたかったという思いを強くしたのであった。後悔先に立たずだが(苦笑)。

Live at 紀尾井ホール on May 9, 2025

Personnel: Brad Mehldau(p), Christian McBride(b), Marcus Gilmore(ds)

2025年5月10日 (土)

Harvey Mason Trio@Blue Note東京参戦記。

Harvey-mason-trio-at-bnt

「夜の部活メイト」(笑)のお誘いで今回参戦したのがHarvey Masonのトリオ。記憶を辿っても,Harvey MasonのライブはFourplay以外では見たことはないはずだ。加えてピアノのGonzalo Rubalcabaにしても,ベースのFelix Pastoriusにしても生で見るのは初めてのはず。今回は”Trio 2: Changing Partners"のVinyl Release Partyと銘打ってのライブである。

Harvey-mason-at-bntHarvey Masonが複数のピアニストを迎えたアルバムに関しては,私はBrad Mehldauが参加した1枚目の"With All My Heart"は保有しているが,Gonzalo Rubalcaba参加の2枚目"Changing Partners"は未聴のままだったので,ストリーミングで聞いてからの参戦となった。再発された本作では,曲順変更に加え,オリジナルには入っていなかったLars Janssonとの共演や,Joey Calderazzoとの演奏が1曲追加されていて,それはそれで魅力的である。私から言わせれば,オリジナル・リリース時にLars Janssonを入れていれば,買っていたかもなぁなんて思ってしまったぐらい,ここでの演奏はLars Janssonらしいものなのだ。

その"Changing Partners"におけるGonzalo Rubalcabaとの演奏でアコースティック・ベースを弾いていたのはStanley Clarkeだったが,今回のFelix Pastoriusはエレクトリック・ベースだろうなぁという予想で,演奏のタイプにも違いが出るのではないかと思いつつ現地に向かった。

Bosendorfer_20250509091001案の定ステージ上には6弦のエレクトリック・ベースが置かれていて,それは予想通りだったのだが,驚いたのがピアノがベーゼンドルファーだったことだ。通常はスタインウェイが置かれていることが多いBlue Note東京だが,ベーゼンドルファーをBlue Noteで見たのは初めてだった。おそらくこれはGonzalo Rubalcabaの指定だろうが,正直言ってベーゼンドルファーを導入した効果があったかと言えば,それは疑問。Gonzalo Rubalcabaはフレージングはそれなりだとしても,ベーゼンドルファーを使うほどのピアニストか?と思っていた私である。

それはさておき,Harvey Mason,今年で78歳だが,元気なものである。ドラミングはサトルにもダイナミックにも叩けるという器用さも十分に表れて,冒頭の"All of You"から好調なものであった。全編を通じて的確なドラミングだったと思えたのはさすがである。ベースのFelix Pastoriusは正面はそれほどでもないが,横顔が父親のジャコパスそっくりだなぁと思いながら見ていたが,ハーモニクスの使い方等は父親譲りだなぁと思っていた。結構なソロ・スペースも与えられていて,なかなかの腕を披露していた。

そしてピアノのGonzalo Rubalcabaだが,以前はテクニシャンとしての色彩が強かったと感じられる人だが,随分落ち着いた感覚があった。繰り出すフレージングは悪くないので,そこには文句はない。ただ,ミュージシャンの格としてベーゼンドルファーには不釣り合いだし,ライブの場でもその音を満喫できたかと言えば否だと言っておきたい。ジャズ・ミュージシャンならどんなピアノでも弾きこなすぐらいの方が,それっぽい。まぁそれは私がドラムスのすぐ前に座っていたこともあるだろうが,それにしてもだ。ベーゼンドルファーなかりせば,この3人で¥11,000というチャージはなかっただろう。だから余計に腹が立つ。

そうした頑固オヤジみたいな感覚もあって,私としては演奏中はリーダーHarvey MasonとFelix Pastoriusに注意が向いていたライブであった。オーセンティックなピアノ・トリオと言うよりも,一部の曲(Herbie Hancockの"4AM"だったらしい)ではファンク色を交えたコンテンポラリー感もあって,相応に楽しめたからいいんだけど。尚,トップの写真はBlue Note東京のWebサイトから拝借。

Live at Blue Note東京 on May 8, 2025 2ndセット

Personnel: Harvey Mason(ds), Gonzalo Rubalcaba(p), Felix Pastorius(el-b)

2025年5月 9日 (金)

邦題「アニー・ロスは歌う」ってそのまんまだが,Gerry Mulliganをお忘れなく(笑)。

Annie-ross"Annie Ross Sings a Song with Mulligan!" Annie Ross(World Pacific)

私は結構Pacific Jazzの音源が好きで,数の減ったアナログ盤の中には,それなりのPacificレーベルのアルバムが残っている。これもそんな一枚。

Annie Rossと言えば,Lambert, Hendricks & Ross(LH&R)ってことになるが,彼女の名義で一枚と言えば,確実に本作が挙がるであろう作品。本作はLH&Rでの活動と並行してレコーディングされているが,やはりここは伴奏を務めるピアノレスのGerry Mulligan Quartetであることのポイントが高い。そもそもこのクァルテット(ラッパはChet BakerとArt Farmerが分担)をバックにアルバム一枚を作ってしまうこと自体が相当チャレンジ精神旺盛だと言いたくなってしまう。

正直言って,私はジャズ・ヴォーカルのよい聞き手ではないし,そもそもAnnie Rossの声も私への訴求力は決して高くないのだが,A面冒頭の「ウエストサイド物語」からの"I Feel Pretty"での軽快なスイング感を聞いてしまえば,つかみはOKって感じである。全10曲のうち,私が知っているのは"I Feel Pretty","I've Grown Accustomed to Your Face","All of You","It Don’t Mean a Thing"ぐらいで,必ずしも有名曲ばかりでないのは意図的なものかどうかはわからないが,逆にこういう感じの方がよかったのではないかとも思える。

そしてやはりこの編成というのがこのアルバムのユニークさであり,評価を高めるポイントだと言いたい。そういう意味で,Gerry Mulliganの貢献度は高いのだ。私としてはどちらかと言うとGerry Mulliganゆえに保有を続けているって感じだな。星★★★★。

Recorded in February and September 1958

Personnel: Annie Ross(vo), Gerry Mulligan(bs), Chet Baker(tp), Art Farmer(tp), Bill Crow(b), Henry Grimes(b), Dave Bailey(ds)

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2025年5月 8日 (木)

5年前にも見た「三つ数えろ」をまた見てしまった。

Mv5bmjdim2iyzmqtodjiyy00ndnkltllymitmmfj 「三つ数えろ("The Big Sleep")」(’46,米,Warner Brothers)

監督:Howard Hawks

出演:Humphrey Bogart,Lauren Bacall,John Ridgely,Martha Vickers,Dorothy Malone

GW中にこの映画をストリーミングで再見した。約5年前にもこのブログにアップしていた(記事はこちら)ことをすっかり失念していて,しかも映画を見ていても,既視感なしだったのはどういうこと?と思ってしまった。つくづく私もボケたと言わざるをえない。

それはさておき,この映画を見ていて主役の二人が素晴らしいのは言うまでもないのだが,実は今回印象に残ったのが,前半に書店員役でちょっとだけ顔を出すDorothy Maloneの綺麗さであった。出番は少ないのだが,強い印象を残した。

そして今回見ていて面白いと思ったのが,Philip Marloweを演じるHumphrey Bogartがやたらに耳たぶをいじることか。Raymond ChandlerによるMarloweの造形において,そういう癖が記載されていたのかは不明だが,意図的にやっていたことは間違いないだろう。

ということで,今回の印象づけられた点もあって,当面この映画を再度プレイバックすることはなかろうが,戦後すぐにこんな映画を作られているところに当時の米国の余裕があったことをまざまざと感じさせられる。そんなこと言ったら,「カサブランカ」は戦時中の42年の映画だ。こんな国と戦争する国の気が知れん(爆)。さて,次は何を見るかな(笑)。

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2025年5月 7日 (水)

どうやっても暑苦しいBilly Harper(爆)。

_20250501_0001 "Live on Tour in the Far East" Billy Harper(SteepleChase)

私が初めてBilly Harperの名前を知ったのはMax Roachの東京でのライブ盤でのことだったが,それから半世紀近くの時が流れた。その後,Billy Harper自身のリーダー作やら,後追いでGil Evans Orchestra参加作等を聞いてきた訳だが,70年代後半までがBilly Harperとしての活動のピークだったように思える。80年代は暫くレコーディングが途絶えたこともそういう印象を与える要因だろうが,90年代になって本作等を含めて,レコーディングには復帰したものの,勢いという点では往時には及ばないと感じさせるのも事実だ。

このアルバムは韓国は釜山におけるライブ・レコーディングで,この極東ツアー音源は2枚目が台湾,3枚目がマレーシアで収録されて,現在は3枚のCDになっているということは,それなりのセールスは確保できたってことなのかもしれない。

暫くのレコーディング上のインターバルがあっても,主題の通りやっている音楽の暑苦しさは変わらないところがBilly Harperだなぁと思ってしまうが,Strata EastやBlack Saint,あるいはDenonレーベルへの吹き込みと比べると,暑苦しさは控えめになったとも言える。もっとブイブイやってもいい(Harperはブイブイやっているが...)のだが,そうなっていないのはバックのせいもあるかもしれないし,ミキシングのせいもあるかもしれない。

その最たる事例が,2曲目のColtraneに捧げた"Countdown"だ。曲の中盤までNewman T. BakerのドラムスとのデュオでBilly Harperが激しくブロウするのだが,どう考えてもドラムスの煽りが足りないのだ。この曲に限らず,全体的にリズムのミキシング・レベルが低いと感じさせるのは,SteepleChaseというレーベルを考えれば仕方ないかもしれないが,それが軽さを増幅させるように感じる。

リーダーのテナー,Eddie Hendersonのラッパ,そしてFrancesca Tanksleyのピアノによるソロは相応のレベルを保っているので評価してもいいとは思うのだが,このミキシングではBilly Harperの音楽にフィットしているように思えないところが痛い。やはりこの人には"Capra Black"のような音が合っていると強く感じた私であった。星★★★。

Recorded Live in Pusan on April 27, 1991

Personnel: Billy Harper(ts),  Harper(ts), Eddie Henderson(tp), Francesca Tanksley(p), Louie Spears(b), Newman(ds)

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2025年5月 6日 (火)

iPhoneのトラブルに泣く( ノД`)...。

Iphone-restore_202505041822015/3にiPhoneに突然右のような画面が表示された。何が悪さをしたのかは不明(私はWindowsのApple Deviceアプリがかなり怪しいと思っているが...)なのだが,AppleのWebサイトの記載に従ってリカバリーを図ったが,リカバリー処理が途中で終了してしまうような状態で,全く埒があかない。Appleにサポートを依頼しようにも,Appleアカウントにアクセスするには2要素認証のPINが必要であり,それが飛んでくるのが全く動かないこの携帯なのでは,PINの認識もできる訳もなく,入力のしようもないのでいかんともしがたい。

仕方なくAppleストアに予約なしで行ったところ,GW中ということもあり,来店客もそれほどではなく,かなりスムーズに対応してもらえて,端末の初期化はできたのはよかったのだが,次に問題になるのはバックアップからの復元だ。

しかし,復元に際しても,結局2要素認証用のPINが必要になるのだが,信頼できる電話番号の登録が必要となり,結局復元の実行にはリクエストから約4.5日を要するという問題が発覚してしまった。復元用の電話番号を登録していなかった自分が悪いのだが,こうした事態は想定しておらず,今回ばかりはマジでまいった。

こんなことを書きつつ,まだ端末は復旧はしておらず,不便であることこの上ない。いかにスマホに依存した生活を送っているかということを痛感させられた。しかし,よくよく考えればスマホがない時代だったら,こんなにテクノロジーに依存していなくてもよかったはずだ。改めてスマホの功罪を考えさせられたGWである。

いずれにしてもiPhoneユーザーの皆さんはこうした事態に備え,復旧用のPINを受け取れる端末を登録しておいた方がベターだが,家族はさておき,それ以外だったら誰に頼めばいいのかは悩むところだよねぇ。それを考えれば,これが本当にいい仕組みなのかどうかは考える余地があると思う。いずれにしても,GW後半に本件により私は頭を抱えてしまったし,これは相当厄介なトラブルなので皆さんも気をつけましょう。転ばぬ先の杖って大事だ。

2025年5月 5日 (月)

オリジナル「新幹線大爆破」を改めて見た。

1975 「新幹線大爆破」(’75,東映)

監督:佐藤純弥

出演:高倉健,宇津井健,千葉真一,山本圭,織田あきら,渡辺文男,竜雷太,丹波哲郎,鈴木瑞穂,宇津宮雅代

本作は以前(と言ってももう10年近く前)にAmazon Prime Videoで見ていながら,そのうち記事にしようとしていてすっかり失念していた。しかし,先日リブート版を見て,オリジナルはどうだったかなぁということで,改めてNetflixで見たもの。

私はリブート版に関しては否定的な方だが,今回オリジナルを見て,時代もあって特撮はしょぼいものだし,当時の国鉄の協力も得られない中,映画としてはずっとオリジナルの方がよく出来ていたという思いを強くした。まぁこれだけの役者を揃えているだけでも,日本映画としては重量級と言ってよいから,キャスティングの点でもリブート版はかないっこないのだが...。

ストーリーはリブート同様の部分もあるものの,犯人側が相当描かれているところが決定的な違いであり,それを演じるのが高倉健や山本圭なのだから,そもそもの重厚感が違うのだ。そうは言ってもこの映画に2時間30分を超える尺が必要だったかと言えば,やや冗長な感じがしない訳でもないので,手放しでは褒められないものの,ストーリーとしては破綻なく描いたのは認めてもよいだろう。捜査上のミスを連発する警察の描き方には,いろいろ言いたくなる警察関係者もいただろうと思うが,その一方で一番の儲け役は運転指令を演じる宇津井健だろうな。

それにしても,映画を見ているとチョイ役でまぁいろいろな役者が出てくるもんだと思えるぐらいの物量である。志穂美悦子しかり,多岐川裕美しかり,岩城滉一しかり。

いずれにしても,リブート作がテクノロジーを駆使したのと対照的に,実にアナログな感じも出して,時代感を楽しむのも一興。星★★★☆。

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2025年5月 4日 (日)

安定のHampton Hawes。

All-night-session-1 "All Night Session! Vol. 1" Hampton Hawes(Contemporary)

Hampton Hawesは1977年に48歳という若さでこの世を去ってしまったが,活動最盛期と言ってよい50年代後半にクスリで収監されたのはジャズマンとしてのキャリアにとってはもったいなかったと思わざるをえない。それほど50年代にContemporaryレーベルに残したアルバムは誰しもが楽しめる,いい出来のアルバムだったからだ。

そんなHampton Hawesが1956年にLP3枚分のアルバムを一気にレコーディングしたので,このタイトルが付いた訳だが,私が保有しているのはその3枚分を2枚のCDに収めたもの。ここではまずはそのVol.1から書いてみたい。

上述の通り,私は50年代のContemporaryにおけるHampton Hawesのアルバムには失望させられたことがないが,テクニカルに突出しているとかという感じではないものの,ジャズ好きならこういう演奏を嫌いだという人はいないだろうと思わせるような演奏をする人だと思う。換言すれば,Hampton Hawesという人は,歴史に残る決定的な名盤とかを生み出したというよりも,誰が聞いても楽しめるアルバムを作る人だった。

そしてその感覚はこのアルバムにも当てはまる。ピアノ・トリオ編成が多いHampton Hawesのトリオに加わるのがJim Hallなのだから,これは鉄板だ。このスイング感,最高である。ジャズマン・オリジナルとスタンダードが3曲,Hawesのオリジナルが2曲というバランスも最適,いつもの如く楽しめるアルバムだ。冒頭の"Jordu"は本家Duke JordanともClifford Brownとも違う感じだが,出足からして好調で,つかみはOKなのだ。加えて2曲のオリジナルがリラクゼーションとブルージーな感覚もあって,これがまた魅力的なのだ。星★★★★☆。

こういうピアノを聞いてしまうと,Hampton Hawesが若い頃,日本に駐留をして,当時の本邦ジャズ・ミュージシャンと交流を重ねていたのは,日本のジャズ界においても非常に貴重なことだったと思わざるをえない。

Recorded on November 12, 1956

Personnel: Hampton Hawes(p), Jim Hall(g), Red Mitchell(b), Bruz Freeman(ds)

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2025年5月 3日 (土)

Joe LovanoとMarcin Wasilewski Trioの共演第2弾:結果やいかに。

_20250502_0001"Homage" Joe Lovano with Marcin Wasilewski Trio(ECM)

Marcin Wasilewskiのトリオは常に私を感動させてくれる稀有なバンドであり,昨年のCotton Clubにおけるライブも素晴らしかった。この人たちのライブを聞くと,私はついつい興奮気味に記事を書いてしまうのだが,昨年もそうであった(その時の記事はこちら)。そして2024年のベスト・ライブは間違いなく彼らの演奏であったと思っている。そんな彼らとJoe Lovanoの共演盤がリリースされたので,早速聞いている。

Joe LovanoとMarcin Wasilewski Trioの共演は"Arctic Riff"に続く第2作となる。前作については評価しつつも,その一部で聞かれた彼らのコレクティブ・インプロビゼーションへの違和感から若干微妙な記事を書いている(記事はこちら)。それから約5年の時を経ての本作は,前作がWasilewski TrioがゲストにJoe Lovanoを迎えたかたちであったのに対し,ここでのリーダーはJoe Lovanoであるという違いがある。その結果はどうだったか?

全6曲中5曲がJoe Lovanoのオリジナルとなっており,冒頭の"Love in the Garden"のみポーランドのヴァイオリニスト,Zbigniew Seifertの作品。Zbigniew SeifertはTomasz Stańkoのバンドにいたこともあるとのことであるから,この曲はMarcin Wasilewskiが持ち込んだものだろう。この"Love in the Garden"からして,私はその静謐で美的な響きにまいってしまったと言ってよい。

全体的にはクールな響きが支配的ではありながら,タイトル・トラック,"Homage"ではフリーに近い展開も示している。私には"Arctic Riff"よりもこなれたテンションを感じさせる演奏となっており,ヒリヒリするような感覚を与えると言ってもよい。この辺りは2度目の共演ということもあるし,このレコーディング前には本作への助走的にVillage Vanguardに出演したらしいから,そこでのコンビネーションの向上もあっただろう。

この編成での演奏においては,いつものMarcin Wasilewski Trioのような美的な部分だけではなく,演奏における自由度が追及されているように感じる。まぁ最後をLovanoとMiskiewiczのパーカッション・デュオで締めるという構成は,アルバムの余韻としてはどうだったかというところはあるのだが,全体の演奏における充実度は極めて高いと思う。これはやはり高く評価すべきアルバムということで,少々甘いとは思いつつ,星★★★★★としてしまおう。

Recorded in November 2023

Personnel: Joe Lovano(ts, tarogato, gongs), Marcin Wasilewski(p), Slawomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz(ds)

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2025年5月 2日 (金)

「陪審員2番」をようやくBlu-rayで観た。

Juror-2 「陪審員2番("Juror #2")」(’24,米,Warner Brothers)

監督:Clint Eastwood

出演:Nicholas Hoult, Zoey Deutch, Toni Collette, J.K. Simmons, Kiefer Sutherland, Amy Aquino, Chris Messina

日本では劇場公開が見送られるという憂き目に遭ったEastwoodが監督した最新作。一部ストリーミングでは見られたが,そのためだけに契約することはせず,ひたすら媒体としての発売を待ち続けて,ようやくGW休み中にこの映画を見ることができた。結論からすれば,やはり劇場で見たかったと思わせる佳品。

正直言って,地味な映画と言えばその通りであるが,法廷シーンを含めて,サスペンスフルに話が展開され,最後まで心地よい緊張感が持続する映画であった。評決結果がどのように導かれたのかという点にはシナリオ上の穴があるのは事実だが,非常に面白く見られる作品。ヒットは難しいとしても,こういう作品の公開を見送る配給会社の気が知れないし,日本の映画ファンにとっては不幸なことだったと声を大にして言いたい。

この映画を見ていると,当然往年の名画「十二人の怒れる男」を想起する訳だが,本作の更にひねりが効かせたストーリーと,Clint Eastwoodの演出にはまたも感心させられてしまった。大概のEastwood作品には常々賞賛を惜しまない私だが,90歳を過ぎてこの創造力はまさに見事としか言いようがない。

いずれにしても,「バイアス」というのは恐ろしいものだと痛感させられ,冤罪が起こるのもこれでは仕方がないと思わされる。本当の公正さ,本当の正義とは何なのかを考えさせられるという点でも実に印象深い作品であった。私はこの映画がより多くの人の目に触れることを願ってやまない。星★★★★☆

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2025年5月 1日 (木)

Rob Wassermanの"Duets":優れた企画アルバムを久しぶりに聞いた。

_20250428_0003"Duets" Rob Wasserman(MCA)

このアルバムを聞くのは実に久しぶりだ。一時期,よく聞いていたのだが,近年はあまり聞く機会がなかったこのアルバムだが,なかなか面白いデュエット・パートナーを集めた企画アルバムだ。

Rob Wassermanは主にロック,フォーク畑のミュージシャンの共演が多いのを反映して,ここでのパートナーもそちら系の人が中心になっている。私がこのアルバムを購入しようと思ったのは,Rickie Lee Jonesとの共演を聞いてみたいと思ったからだったと思うが,今だったらLou Reedの方に惹かれていたかもなぁなんて感じるところに,私の音楽的な嗜好の変化が表れている。そして実際に今の耳で聞いて,一番刺激的なのもLou Reedと共演した"One for My Baby (And One More for the Road)"であったと思えるのだ。

それはさておきである。冒頭のAaron Nevilleをパートナーとした"Stardust"からして,これはいいのではないかと思わせる立ち上がりで,多彩な共演者との(多重録音付き)デュエットはどれも面白く聞けてしまう。まぁマントラことManhattan TransferのCheryl Bentyneとやった"Angel Eyes"はちょっとクセが強いとも感じられて,Rickie Lee Jones的にも響くが,ここで2曲で共演しているクセ強のRickie Lee Jonesを更に上回る感じなのだ(笑)。この辺は好き嫌いが分かれても仕方がないだろう。

本作でLou Reedに加えて私がいいと思ったのがJennifer Warnesが歌ったLeonard Cohenの"Ballad of the Runaway Horse"であった。さすが,Cohenとの共演多数のJennifer Warnesだと思わせる素晴らしい歌唱だと思えた。このいかにもなLeonard Cohenの曲を完全にものにしているという歌唱だと言いたい。

ということで,全体的には相当楽しめる企画アルバムであり,よくできた作品であった。星★★★★。そしてBobby McFerrinとのデュオ,"Brothers"はMcFerrinにBest Jazz Vocal Performanceのグラミーをもたらすこととなった。更にRob Wassermanはこれの続編として"Trio"をリリースすることとなる。そっちも久しぶりに聞いてみるか。

Personnel: Rob Wasserman(b) with Aaron Neville(vo), Rickie Lee Jones(vo, g), Bobby McFerrin(vo), Lou Reed(vo, g), Jennifer Warnes(vo), Dan Hicks(vo), Cheryl Bentyne(vo), Stephan Grappelli(vln)

本作へのリンクはこちら

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