Reis Demuth Wiltgen with 馬場智章@Cotton Club参戦記

冷たい雨も降り,花冷えのする新年度初日に,ルクセンブルク出身のトリオがゲストに馬場智章を迎えたライブを見にCotton Clubに行ってきた。彼らの名前は認識していたのだが,アルバムも聞いたことがなかったのだが,チャージもそんなに高くないし,試しに行ってみるかぐらいの感じでの参戦であった。しかし客入りは少々寂しい。後方サイド席は誰もいない状態なのはちょっともったいない気がしたが,その分,ルクセンブルク大使館員も来場して盛り上げてはいたが...。
甚だ余談ではあるが,私は仕事でルクセンブルクを数回訪れたことがある。もはやそれも30年前のことになってしまったが,仕事自体は徹夜続きで大変だった一方,酸化防止剤が入っていないため,ほぼ輸出されることのないルクセンブルク・ワインの爽やかな美味しさは忘れられない。私は白ワインはほとんど飲まない人間だが,あのリースリングは今まで飲んだリースリングの中でも指折りのものだったと思える(遠い目...)。
そんなルクセンブルクからやってきたこのトリオだが,高校の同級生らしいので,長年の盟友ってことになるから,コンビネーションには問題はないところだ。演奏は美的な部分と,8ビートや変拍子を交えたコンテンポラリーな部分のある,いかにも現代の欧州のトリオという感じがした。今回のライブを聞いていて,作曲能力,演奏能力ともに十分高いと思わせる面々であった。三者が対等のようなトリオではあるが,演奏上はあくまでもピアノが中心であったが,Michel Reisはなかなかのフレージングを聞かせていた。私もストリーミングで予習して臨んだが,受ける印象に大きな違いはなく,期待通りの演奏だったと言ってもよいだろう。
しかし,難点もなきにしもあらずで,ドラムスのPaul Wiltgenが少々叩き過ぎという感じだったのは明らかだ。それは私がややドラムス側の席に座っていたことも影響はあるだろうが,このトリオの音楽性を考えれば,もう少し抑制されたドラミングでもよかったと思う。ベースの音がこもり気味で,うまいんだから少々イコライザーを使って音色をクリアにしてもいいように思えた。
そこに一部ゲストで加わるのが映画「BLUE GIANT」のサントラでも話題の馬場智章だが,私はそもそも映画も見ていなければ,音楽も聞いていないし,予習もしていなかったので,これが完全な初聞きであった。相応に上手いテナーだとは思ったのだが,私は演奏中,これがクリポタことChris Potterだったらどうだったかとずっと妄想していたことは告白しておかねばならない。馬場智章には悪いが,私が比較する対象のレベルが高過ぎることもあって,不満はないとしても,フレージングに関してはまだまだ発展途上だよなぁと感じていたのであった。まぁそれは伸びしろがあると思ってもらえばよい。
そうは言っても,それなりに満足のいく演奏だったと思うので,帰り際に彼らのCDを購入してサインもしてもらっているのだから,私も相変わらずのミーハーである。彼らの最新作は"Sly"というアルバムだが,売っていたのは2017年作の"Once in a Blue Moon"であった。私はストリーミングで聞いても後者の方がいいと思っていたので,それはそれでよかった。秋口にはVince Mendozaが指揮するオケとの共演盤も控えているらしいから,そっちも期待しよう。
Live at Cotton Club on April 1, 2025, 2ndセット
Personnel: Michel Reis(p), Marc Demuth(b), Paul Wiltgen(ds) with 馬場智章(ts)
尚,上の写真はCotton ClubのThreadsから拝借したもの。
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