2025年4月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
フォト
無料ブログはココログ

« John Patitucciによるパワー・トリオ:悪かろうはずなし。 | トップページ | 「渡辺貞夫 リサイタル」:このアルバムからほぼ半世紀。ナベサダがいまだ現役ってのが凄いねぇ。 »

2025年3月15日 (土)

温故知新:Charles Mingusのクセが強~いアルバム(笑)。

_20250313_0001 "Charles Mingus Presents Charles Mingus" (Candid)

どうしてもCharles Mingusという人に対してはクセが強いという感覚がある。このアルバムなんてその代表と言ってもよいかもしれないが,それはここに収められた「フォーバス知事の寓話("Original Faubus Fables")」や"What Love"による部分が大きいように思える。

「フォーバス知事の寓話」は本来の曲名は"Fables of Faubus"だが,このアルバムにおけるクレジットが"Original Faubus Fables"となっているのには理由がある。元々は"Mingus Ah Um"に収められたこの曲は,政治的なプロテスト色の濃い歌詞をリリース元のColumbiaが嫌がって,インストにしたという経緯があるようで,Mingusとしては「ちゃんと歌詞付きでやったるわい!」ということで,"Original"を謳ったものだ。

改めてこのフォーバス知事について調べてみると,アーカンソー州リトルロック高校での事件の発端となったことがMingusの怒りを買ったものだ。この事件は白人と黒人が同じ学校に通う融合教育化が進められるようになった中で,当時の州知事Orval Faubusが州兵を動員して,黒人学生の登校を妨害しようとしたもので,当時の大統領,Dwight Eisenhowerもそれを静観したため,Mingusの怒りはEisenhowerに向いているというオマケつきである。まぁ当時であれば,南部のアーカンソーならばありそうな話であるが...。

政治的なプロテストが入ることで,純粋な音楽的な部分から離れた要素も出てきて,それがクセの強さにもなるという訳だ。ここでのMingusは結構怒っているが,怒りの対象となったOrval Faubusはその後も知事に再選されているから,アーカンソーの住民からは支持されたことを示すところに,アメリカの往時の人種差別の根深さを感じるし,それは今も残存していると考えてよい。Mingusが存命ならば,今のアメリカの状況をどう思うか聞いてみたい気もする。

そして,このアルバムの個性を更に際立てせるのが"What Love"におけるアバンギャルド一歩手前の演奏だろう。油井正一はこれをDolphyとMingusの対話と位置付けていたと記憶するが,ある意味Eric Dolphyらしい演奏ではあるものの,決して耳に優しい音楽ではない。この曲とてクセの強さを感じるところだ。

また,このアルバムはスタジオ録音であるにもかかわらず,MingusのMCが入って,疑似的にライブの感覚を生み出そうとしているところも相当ユニークだ。そうしたところもあれば,ピアノレスのクァルテット編成で自由度を高めたところも,何とも面白いアルバムだったと今更ながら思っている私である。いずれにしても,Charles Mingusの真骨頂が発揮されたアルバムであると同時に,Eric Dolphyとの相性も最高だったな。星★★★★★。

Recorded on October 20, 1960

Personnel: Charles Mingus(b), Eric Dolphy(as, b-cl), Ted Curson(tp), Danny Richmond(ds)

本作へのリンクはこちら

« John Patitucciによるパワー・トリオ:悪かろうはずなし。 | トップページ | 「渡辺貞夫 リサイタル」:このアルバムからほぼ半世紀。ナベサダがいまだ現役ってのが凄いねぇ。 »

ジャズ(2025年の記事)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« John Patitucciによるパワー・トリオ:悪かろうはずなし。 | トップページ | 「渡辺貞夫 リサイタル」:このアルバムからほぼ半世紀。ナベサダがいまだ現役ってのが凄いねぇ。 »