「名もなき者/A Complete Unknown」:Timothée Chalametの頑張りは凄いのだが,映画としては少々疑問も。
「名もなき者/A Complete Unknown」(’24,米,Searchlight)
監督:James Mangold
出演:Timothée Chalamet, Edward Norton, Elle Fanning, Monica Barbaro, Boyd Holbrook
Bob DylanがNYCにやってきてから,Newport Folk Festivalで電化サウンドを披露するまでの期間を描いた映画である。今年のOscarでは黙殺された映画だが,Timothée Chalametほか,実在のミュージシャンたちを演じた役者陣の頑張りは評価しなければならない。しかし,映画的に言うとよく出来ているとは言え,傑作とまでは言えないという気がした。それはなぜか。
正直言ってこの映画の背景については音楽ファンにとってはよく知られたものだ。実在の人物も多数出てくるが,Al Kooper参加のくだりなど,そういうことだったのか!という点もある。だが,映画としてのストーリーとしてよりも,音楽が勝ってしまったという部分が否めないと思えるのだ。それがBob Dylanというミュージシャンの存在感とその曲の強力さゆえだろう。上述の通り,実在のミュージシャンを演じた役者陣は歌や楽器の技量を高めるのも大変だっただろうと思いたくなるし,音楽は無茶苦茶楽しめると思う。それに比べるとストーリーが平板に感じられてしまうのはもったいなかった。
それゆえのOscar無冠というのもやむを得ないと思う一方,やはりこれはBob Dylanへの思い入れの有無によって評価は変わるだろう。私としては嫌いじゃないがベストでもないというのが正直なところだが,音楽面を評価して甘めの星★★★★。
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コメント
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歌の持つ力を感じて涙が出てきました。
投稿: MRCP | 2025年3月10日 (月) 00時40分
MRCPさん,おはようございます。
>歌の持つ力を感じて涙が出てきました。
はい。歌に関しては文句はありません。ついつい出張の道すがら,Bob Dylanを聞きまくっていました。映画としては...というのは記事に書いた通りですが...。
投稿: 中年音楽狂 | 2025年3月12日 (水) 07時26分
本当の史実と違う部分はありましたが、小生は大感動の映画でした!1960年代初期時代のカントリー・フォーク界の大物レジェンドが続々登場、この時代の洋楽シーンってなかなか頭の整理ができていなかったけどそれぞれの関係性がよく勉強できました・・。カントリー・フォーク音楽分野への米国人への熱い思い入れは凄い・・。ボブ・ディランがロック音楽への志向・エレキギターを手にした時の反発やブーイングは物凄かったです!それにしてもボブ・ディランとジョーン・バエズを演じた2人の俳優は全て自分の声で歌い演奏をしていたけれど、本当に本人ソックリで素晴らしい演技でした!今回アカデミー賞に選出されなかったのは残念でしたが、ティモシーシャラメは主演男優賞には輝いてほしかったですね~。
投稿: ローリングウエスト | 2025年3月14日 (金) 21時27分
ローリングウエストさん,こんにちは。
>本当の史実と違う部分はありましたが、小生は大感動の映画でした!1960年代初期時代のカントリー・フォーク界の大物レジェンドが続々登場、この時代の洋楽シーンってなかなか頭の整理ができていなかったけどそれぞれの関係性がよく勉強できました・・。
そうですね。史実との違いはあっても,音楽的や背景の描きっぷりは音楽ファンとしては納得のいくものだったと思いますし,ストーリーとしてはよくまとめていたと思います。
>それにしてもボブ・ディランとジョーン・バエズを演じた2人の俳優は全て自分の声で歌い演奏をしていたけれど、本当に本人ソックリで素晴らしい演技でした!
はい。Pete Seegerを演じたEdward Norton含めて,間違いなく努力は認めなければなりません。以前「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」を見た時も思いましたが,役者陣には頭が下がります。純粋フォークからロックへの変貌というのは歴史的な必然だったんだろうと思いながら見ていました。
投稿: 中年音楽狂 | 2025年3月15日 (土) 11時07分