こういうのをいい映画だと言いたくなる「リアル・ペイン ~心の旅~」。
「リアル・ペイン ~心の旅~("A Real Pain")」(’24,米/ポーランド,Searchlight)
監督:Jesse Eisenberg
出演:Jesse Eisenberg, Kieran Culkin, Will Sharpe, Daniel Oreskes, Liza Sadovy, Jennifer Grey, Kurt Egyiawan
Jesse Eisenbergが監督と主演を兼ねた一種のロード・ムービーだが,その背景にはホロコーストの記憶が横たわるという映画。1時間30分という昨今としては短い上映時間ながら,シナリオともども非常によくできた映画となっている。
元々ポーランド移民のユダヤ人としてのJesse Eisenbergがこの物語を書かせたことは間違いないところだが,本人演じるDavidと,Kieran Culkin演じるBenjiという従兄弟のキャラクターの違いに加えて,ルワンダ虐殺の生存者を演じたKurt Egyiawanの存在を通じて,ユダヤ人社会に起きたホロコーストという悲劇が強く炙り出されるという感覚を覚えた。Kieran Culkinはその名からもわかる通り,あの「ホーム・アローン」のMacaulay Culkinの弟であるが,この映画でオスカーの助演男優賞にノミネートされている。助演と言っても,ほぼ主演と言ってもよい役回りであるが,オスカー受賞確実の演技と言われているのも納得できるものであった。
ある意味Kieran Culkin演じるBenjiは無垢な人であるがゆえに,人々との間にいらぬ軋轢を生むこともあれば,その純粋さゆえの親しみを生むこともあるというのに対し,Jesse Eisenberg演じるDavidは現実的な人物としての対比も効いているし,その周りの登場人物の造形も面白いのはよくできたシナリオゆえというところだろう。主題にも書いた通り,これは実にいい映画であった。監督,シナリオ・ライターとしてのJesse Eisenbergも大したものだ。星★★★★★。
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