笠井紀美子の"TOKYO SPECIAL":昨今ならシティ・ポップって言われるのか...。
"TOKYO SPECIAL" 笠井紀美子(CBS Sony)
私が保有している笠井紀美子の2枚のうちの1枚。もう1枚はHerbie Hancockと作った"Butterfly"だが,この違いの大きさに戸惑うと言ってもよいかもしれない。
このアルバムを廉価盤で確か中古で購入したのは,冒頭の「バイブレーション」が印象に残っていたから。何かのCMに使われていたと記憶していたが,今回よくよく見たら山下達郎が書いた曲だったのねぇ。基本的にはこのアルバムの書き下ろし曲は少なくて,多くがカヴァー曲だってのも知らなかった。そこに安井かずみが詞を乗せた訳だが,元々が英語詞で書かれていた曲に日本語詞を乗せているところもあって,どうも違和感がある曲があるのも事実。特に矢野顕子が元々リンダ・キャリエールに書いた"Laid Back Mad or Mellow”に日本語詞を当てた「待ってて」が特に居心地が悪い。
それはさておき,基本的に当時のコルゲン・バンドをバックに歌う笠井紀美子の歌は,ポップでありながらジャズ的なセンスが微妙に残っていると言っても,ポップさの方が勝っていて,これが笠井紀美子にフィットしていたかと言うとそこは疑問だ。そうした中でフュージョン・ライクなノリを示すタイトル・トラックが一番の聞きものって気がする。ヒノテルのソロもカッコいいこの曲を書いた森士郎って,中村照夫のライジング・サンにいたなんてことも今更知る私であった。
本作をリリースしたのが本人の意思だったかどうかはわからないが,私は圧倒的に"Butterfly"の方を支持してしまうタイプだ。それはこのアルバムと"Butterfly"のプレイバック回数の違いを考えなくても明らか。むしろ鈴木宏昌のアレンジによるバッキングの方に耳が行ってしまうのであった。笠井紀美子が何でも歌えてしまうことは評価しつつも星★★★が精一杯。
面白かったのは「バイブレーション」のサビの歌いっぷりが矢野顕子みたいだったことだ。キャリア的には笠井紀美子の方が先輩だろうから,矢野顕子が影響されているのかとも感じたが,矢野顕子のことだから多分そんなことはあるまい。
Personnel: 笠井紀美子(vo), 鈴木宏昌(key), 松木恒秀(g),岡沢章(b),市原康(ds),山口真文(ts,ss),穴井忠臣(perc),日野皓正(tp),鈴木勲(b),村岡建(ts,ss),羽鳥幸次(tp, fl-h),数原晋(tp),新井英治(tb),福井恵子(harp),大野忠昭グループ(strings),伊集加代子(vo),尾形道子(vo),和田夏代子(vo)
本作へのリンクはこちら。
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