初めて聞いたGerry MulliganとChet Bakerの"Carnegie Hall Concert"。
"Carnegie Hall Concert" Gerry Mulligan & Chet Baker (CTI)
長年ジャズを聞いていても,聞いたことがないアルバムなんていくらでもある訳で,それを補っていたのがジャズ喫茶だったが,それでも触れるチャンスに恵まれない演奏はそれこそ星の数こそあると言ってもよい。しかし,ストリーミングでそんな音源にも簡単に触れることができるようになったことは実にありがたいことだ。
それでもって,このアルバムも昔から認識はしていても,全く聞いたことがないものだったが,正月休みの暇にまかせて初めて聞いてみた。このアルバム,元々は2枚のLPに分売されていたと記憶するが,現在は1枚もののCDで現物も簡単に手に入る。若き日のジョンスコことJohn Scofieldが参加しているのがメンツ的に面白いが,まだまだ若手だったこともあるし,Carnegie Hallという大舞台だけに,さすがに楚々としたプレイをしているのが微笑ましいが,結構なソロの場も与えられている。
ジョンスコの参加はさておき,このアルバムはPacific Jazzにアルバムを残したGerry MulliganとChet Bakerが,久々に共演したというのが企画の目玉だが,それを支えるのがいかにもCTI的なコンテンポラリーなバックで,この主役二人がこのセッティングでどういう演奏をするのかというのが注目のポイントになると言ってよい。もともとGerry MulliganとChet Bakerのクァルテットはピアノレスというところがリリース当時は実に変わっていたということになるだろうから,違いが大きいのは当然だ。
そして演奏を聞いてみると,さすがベテランの二人だけに,聴衆を満足させる術は身につけているって感じで,結構楽しめてしまった。スタンダードを除けばGerry Mulliganのオリジナルで固められているから,リーダーはあくまでもGerry Mulliganと考えてよいが,そこはConcert Jazz Bandも率いて,アレンジメント能力は間違いないGerry Mulliganである。このセッティングでも全然問題ないものにしてしまっているし,曲が楽しめるところが素晴らしい。言っちゃ悪いがChet Bakerがリーダーならこうはなっていなかっただろう。
しかし,Chet Bakerはソロイストとしてちゃんと仕事をしているし,Gerry Mulliganもわかっていて,Chet Bakerには"There Will Never Be Another You"で歌わせて,ちゃんと華を持たせている。このアルバムにオリジナルGerry Mulligan Quartetのような響きを期待すると梯子をはずされるが,"Bernie’s Tune"の特に冒頭にはそうした感じも残している。
いずれにしても,これは予想以上に楽しめたアルバムであった。アルバムを保有するほどではないとしても,聞いてよかったってところ。星★★★★。
Recorded Live at Carnegie Hall on November 24, 1974
Personnel: Gerry Mulligan(bs), Chet Baker(tp, vo), Bob James(p, el-p), John Scofield(g), Dave Samuels(vib), Ron Carter(b), Harvey Mason(ds), Ed Byrne(tb)
本作へのリンクはこちら。
« 年末年始に見た映画(1):名画なれどもテーマが重い「処女の泉」。 | トップページ | 年末年始に見た映画(2):仲代達矢が出演したマカロニ・ウエスタン「野獣暁に死す」。 »
「ジャズ(2025年の記事)」カテゴリの記事
- プレイバック頻度の上がらないHerbie Hancockのアルバム:"Future 2 Future"。(2025.01.19)
- Brad Mehldauのブート聞きはこれが最後:ロンドンのBarbicanにおけるMehliana。(2025.01.18)
- 更に続くBrad Mehldauのブート聞き:今度はMehliana+ジョンスコ!(2025.01.16)
- またもBrad Mehldauのブートの話。今度はChick Coreaとのデュオ@Blue Note(2025.01.14)
- 新譜が届かない中でBrad Mehldauの珍しいトリオによるブート音源。(2025.01.12)
« 年末年始に見た映画(1):名画なれどもテーマが重い「処女の泉」。 | トップページ | 年末年始に見た映画(2):仲代達矢が出演したマカロニ・ウエスタン「野獣暁に死す」。 »
コメント