久々にショップを訪れて見つけた新譜:Carl Allenの"Tippin'"
"Tippin'" Carl Allen(Cellar Records)
先日,ちょっとした時間があって立ち寄ったショップで見かけて,即購入を決定したアルバム。何てたってリーダーCarl Allenを支えるのはクリポタことChris PotterにChrisitian McBrideである。これはどう考えても気になるメンツだ。本来のリリース時期は来年初頭のようだが,あるところにはあるのである(笑)。
まぁクリポタのピアノレス・トリオでの演奏はJohn Patitucci,Brian Bladeとの"Live in Italy"もあったし,そちらのトリオでの新作は来年にリリースを控えているから,そっちも楽しみな訳だが,こちらのメンツも相当期待できると思っての購入であった。Carl Allenのライナーによれば,Renee RosnessのアルバムでCarl AllenとChristian McBrideがバックを務めた際のサックス・プレイヤーがクリポタで,その時にSonny RollinsのVanguardライブの如きピアノレス・トリオでの演奏を思いついたとのことである。
"Parker's Mood"で始まるこのアルバムはオリジナルに交えて,スタンダードやジャズマン・オリジナルを演奏していて,こうしたセッティングでのクリポタの吹きっぷりがどうなるのかというところに期待してしまったのだが,どんなシチュエーションでもちゃんと個性を打ち出すクリポタの実力は十分に感じられて,相当に楽しめるアルバムだと言ってよい。テナー,ソプラノ,バスクラを持ち替えて,コンベンショナルなセッティングでの吹奏を聞かせるクリポタは実に魅力的だし,このフレージングはたまらん...。
そして何よりも気になるのがJohn Coltraneゆかりの"The Inchworm"と"They Say It’s Wonderful"をクリポタがどう吹くかというところであったが,"The Inchworm"はさすがにColtraneに比べると軽いかなぁと感じさせるのはソプラノ・サックスのミキシングのせいもあるかもしれない。"They Say It’s Wonderful"の方はテナーでじっくりかつストレートにという感じだが,ColtraneはJohnny Hartmanとのアルバムでの演奏だったから,ちょいと比較が難しい。クリポタもColtraneヴァージョンがあるだけにやりにくい部分もあったのではないかとも思えるが,こちらの印象の方がいいのはテナーだからって気もする。
ただこのアルバム,後半にはちょっとどうなのかと思わせるようなプロデュースぶりが気になる部分があることも事実だ。8曲目のKenny Barron作の"Song for Abdullah"には,ピアニストJohn Leeを招いての演奏となっているが,美しい演奏ではあるものの,敢えてこの曲を入れる必要が本当にあったのかと感じさせる。またこのメンツでPat Methenyの"James"って選曲はほかの曲とテイストが違い過ぎて,どうなのよと思わざるをえない。確かにUnity Bandのライブでもやっていたとは言え,ここでのフィット感は???だ。また,最後のミュージカル"Bye Bye Birdie"からの"Put on a Happy Face"もこの重量級トリオには軽過ぎる選曲ではないか。前半と後半の選曲によるムードの落差があると感じるのだ。
そうした点も考慮して星★★★★ってところ。私としてはもう少し激しくやる部分があってもいいように思うが,クリポタのフレージングは傾聴に値すると思う。それがファンの弱みってところだな。
Recorded on January 13, 2024
Personnel: Carl Allen(ds), Chris Potter(ts, ss, b-cl), Christian McBride(b)
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コメント
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閣下、投稿のリンクをありがとうございました。m(_ _)m
注文に出遅れて、こんな時期になりましたが。。
これは、私的には買わないわけにはいきませんので。
いや、ストレートな感情表現も素敵でした❣️
随分とおそくなりましたが、私のリンク先も置いていきますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2025/03/post-ae875e.html
投稿: Suzuck | 2025年3月30日 (日) 15時45分
Suzuckさん,おはようございます。リンクありがとうございます。
>注文に出遅れて、こんな時期になりましたが。。
私はたまたまショップで見かけて買いましたが,それなかりせば見逃していたかもしれませんね。
>いや、ストレートな感情表現も素敵でした❣️
はい。どのようなフォーマットでも上手にこなしますよねぇ。やっぱり現代#1サックスです。
投稿: 中年音楽狂 | 2025年3月31日 (月) 06時49分