現物はまだ届いていないが,M.T.B.の30年ぶりの新譜。
"Solid Jackson" M.T.B. (Criss Cross)
昨今のネット・ショップにおける輸入盤の流通状態は必ずしも良好とは言えず,発注のタイミングを間違えるとデリバリーが非常に遅くなることがある。本作も某ショップで発注していたのだが,いつまで経っても入荷しないので,別のショップに切り替えたものの,今度は入荷待ちになって,年内にデリバリーされるかは怪しい状態になっている。なので,通常は現物が届いてからレビューするのだが,今回はストリーミングで本作を聞いた。
M.T.B.と称するユニットはBrad Mehldau,Mark Turner,Peter Bernsteinの頭文字を取ったものだが,第1作も同じCriss Crossからリリースしていて,それが1994年のことであるから,30年ぶりのレコーディングということになる。Brad MehldauはことあるごとにPeter Bernsteinとの共演は続けてきたし,Mark Turnerのアルバムにも"Yam Yam"と"In This World"に参加しているから,相応に縁の深い人たちのユニットと言ってもよい。前作が出た94年の段階ではBrad Mehldauのメジャーでの初リーダー作である"Introducing Brad Mehldau"もリリースされていない時期であるから,まだまだ駆け出しと言ってもよかった時代だ。それが30年を経て,Brad Mehldauはジャズ・ピアノ界を代表するミュージシャンの一人となったが,若い頃からの付き合いは大事にしているってところだろう。
前作も久しく聞いていないが,前作からの変更はドラマーがLeon ParkerからビルスチュことBill Stewartに代わっているが,やっている音楽そのものはコンベンショナルなジャズである。メンバーのオリジナルに,ジャズマン・オリジナルを交えるという構成は前作同様だ。面白いのは前作でも"Limbo"を取り上げたWayne Shorterの"Angola"をやっていることだが,この曲,お蔵入りしていた"The Soothsayer"からのチョイスというのが渋い。ついでに言えば,それに続いて演奏されるHank Mobleyの"Soft Impression"も発掘音源"Straight No Filter"からだし,もう1曲もHarold Landの"Ode to Angela"っていう選曲にはどれだけこの人たち勉強熱心なのか?とさえ思いたくなってしまう。
Brad Mehldauは客演モードになると,個性の発露を少々抑える感覚があるが,この共同リーダー作と言ってよい本作でもそんな印象だ。三者がバランスよく演奏をしている感じなので,Brad Mehldauのソロは相応にレベルは高いが,いかにもBrad Mehldauだと思わせるのは本人のオリジナル"Maury's Grey Wig"だろう。
まぁこれだけの真っ当なメンツを揃えたアルバムなので全く破綻はないが,痺れるってほどではないのは惜しい気もする。だが,旧友が集まって作り上げた同窓会的なアルバムだと思えば腹も立たないってところか。星★★★★。
Recorded on November 25 & 26, 2023
Personnel: Brad Mehldau(p), Mark Turner(ts), Peter Bernstein(g), Larry Grenadier(b), Bill Stewart(ds)
本作へのリンクはこちら。
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