素晴らしくも静謐な雰囲気のNorma Winstoneの新作。
"Outpost of Dreams" Norma Winstone / Kit Downes (ECM)
とうに傘寿を過ぎたNorma Winstoneの新作。リリースされたのは少々前になるが,買い合わせの関係で今頃の入手となった。ECMでの前作,"Descansado: Songs for Films"はその名の通りの映画音楽集であったが,今回は自身もECMにリーダー作を持つKit Downesとのデュオ作。全10曲中,1曲のトラッドを除いて,全てNorma Winstoneが詞を書いている。
Ralph Towner好きの私としては"Beneath an Evening Sky"についつい注目してしまうが,これがまたよいのだ。そのほかにもJohn TaylorやらCarla Bleyやらの曲も選んでいるが,曲の良さもあるが,Norma Winstoneの声に衰えが感じられないところが凄い。もちろん,ヴォーカリストとしてのピークとは言えないだろうから,やや危なっかしいと思わせる部分がない訳ではない。しかし,Kit Downesの適切かつ楚々とした美しいバッキングもあり,瑕疵と感じさせないレベルであるし,何よりも傘寿を過ぎていることを考えればこの歌いっぷりは見事と言うしかない。
こうした活動を見ていると,クリエイティブな活動をしている人には「老い」というものがないのかとさえ思わされる。Charles Lloyd然りであるが,精神的に矍鑠としているのは頭や指を使っているからだと思ってしまう。私もせいぜい見習わねば。因みにKit DownesはかつてECMでもプロデュースを務めたSun ChungのRed Hookレーベルで,Bill Frisell,Andrew Cyrilleと"Breaking the Shell"というかなりアバンギャルド度の高いアルバムを出しているが,そのAndrew Cyrilleだって84歳だしなぁ。ミュージシャンには年齢差とかは関係ないらしいが,ここでのKit Downesとは全然違うのも面白い。共演者によって演奏スタイルを完全に分けているのも見事なものだ。星★★★★☆。
Recorded in April, 2023
Personnel: Norma Winstone(vo), Kit Downes(p)
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コメント
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閣下、リンクをありがとうございました。m(_ _)m
終始、静かで神秘的な雰囲気。
淡々と粛々と進みながら、心の中に深く染み込む感じがたまりませんでしたね。
そうそう、選曲もよかったですよね!
私も投稿のリンクを置いていきますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2024/07/post-53bdff.html
投稿: Suzuck | 2024年10月 8日 (火) 07時56分
Suzuckさん,おはようございます。リンクありがとうございます。また,昨日はどうも(謎,笑)。
>終始、静かで神秘的な雰囲気。
>淡々と粛々と進みながら、心の中に深く染み込む感じがたまりませんでしたね。
>そうそう、選曲もよかったですよね!
この二人が来日するなんて露知らずでしたが,スケジュール的に厳しい...。それでも生でも観てみたいと思わせるに十分なアルバムでした。ライブでも同じような感じでやるんでしょうね。Kit Downesのピアノも聞いてみたいですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2024年10月 9日 (水) 08時03分