Terence Blanchard and E-Collective@Blue Note東京参戦記。

会社のイベントを控えているという,あまり精神的な余裕のないタイミングでこのライブに行ってきた。Terence Blanchardについてはこのブログで取り上げた彼のアルバムは2枚だけであり,私の中でのプライオリティの高いミュージシャンとは言えない。しかし,なぜ今回のライブを観る気になったかと言えば,ストリング・クァルテット付きの編成で,Wayne Shorterトリビュートを行ったアルバム"Absence"の再現になるという企画ゆえである。弦入りの演奏は挟間美帆の時も相当楽しめたこともあるし,Charles AlturaやTaylor Eigstiという実力のあるミュージシャンの参加にも期待値が高かった。
それにしてもである。Terence Blanchardと言えば,かつてはJazz Messengersにも所属し,Donald Harrisonとの双頭コンボでの活動は「新伝承派」なんて呼ばれたのも今は昔。その後は映画音楽の作曲家としても成功を収めていたが,今回の演奏の超コンテンポラリーな響きには心底イメージを覆された。今回のライブ参戦に当たり,E-Collectiveとのアルバムは聞いていたから,ある程度は予想がついた訳だが,それ以上のコンテンポラリー度だったのだ。
バンドのメンツも年齢的には中堅どころって感じながら,非常にタイトなバンドで,ビートも強烈なところにTurtle Island Quartetのストリングスがうまくブレンドして,音楽的に充実したライブを聞かせてもらった。Wayne Shorterの曲をやらなかったのは残念な気もしたが,メンバーのオリジナルで勝負しようという意図の表れと解釈しよう。
今回,ほぼ私と同年代のTerence Blanchardの吹きっぷりにも感心したが,一番驚かされたのはCharles Alturaだったかもしれない。この人,無表情にギターをプレイしながら,えぐいフレーズを連発していた。Chick CoreaのVigilで初めて知った名前だったが,改めてChick Coreaの審美眼は凄かったんだなと思わされた。ギタリストにはプレイ中,自己陶酔型の表情を示す人が多いが,Charles Alturaはその真逆。その無表情ぶりが逆に印象に残ってしまった。是非早い機会にリーダー・アルバムも聞いてみたいと思わせるギタリストである。
いずれにしても,こちらの勝手な想像よりも,ずっといい演奏を聞かせてもらったと思えた好ライブであった。
Live at Blue Note東京 on September 4, 2024 2ndセット
Personnel:Terence Blanchard(tp,synth), Charles Altura(g), Taylor Eigsti(p,key,synth), David Ginyard(b), Oscar Seaton Jr.(ds), Turtle Island Quartet<David Balakrishnan(vln), Gabriel Terracciano(vln), Benjamin von Gutzeit(vla), Malcolm Parson(cello)>
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