会社の創立記念日に観に行った映画が「メイ・ディセンバー ゆれる真実」。これがなかなか強烈な心理ドラマであった。
「メイ・ディセンバー ゆれる真実("May December")」('23,米)
監督:Todd Haynes
出演:Natalie Portman, Julianne Moore, Charles Melton, Elizabeth Yu, Gabriel Chung
Todd Haynesの映画を観るのは「キャロル」以来だが,あの映画もCate BlanchettとRooney Maraの演技合戦による心理劇だった。今回は役者をNatalie PortmanとJulianne Mooreに変えての新たな演技合戦みたいなものであった。
私がこの映画を観に行ったのは会社の創立記念日の平日だったのだが,劇場が結構混み合っていたのは火曜日で入場料が割引になるせいだったのかもしれない。この映画も日経の映画評で高い評価を受けたこともあってか,平均年齢の高い観客でかなりの客入りであった。しかし,60歳以上なら毎日がシニア割引なんだから,こういう日に来なくてもいいようにも思うが,映画好きにとってはやはりこのディスカウントは魅力ってことなのかもしれない。
それはさておきである。ここで描かれる「メイ・ディセンバー事件」というのは実話らしいのだが,そういう話を映画化しようなんていう舞台設定も考えられる話だ。Natlie Portman演じるElizabethは女優としてその映画に主演すべく,事件の当事者である二人とその関係者に取材を行うというのも,女優の行動としてはわからないでもない話で,この辺りはリアリティのある設定だと思いながら見ていた。そして,その行動から本来は語りたくなかったであろうことまで明らかになっていくというのがかなり重苦しいドラマであった。ネタバレになるので詳しくは書かないが,とにかく終盤に見られるNatalie Portmanのモノローグ・シーンが強烈で,(役柄上ではあるが)女優も行くところまで行くとこうなるか~なんてことも考えてしまった。プロデューサーも兼ねるNatalie Portmanはこのシーンがやりたかったのかもと思わせるシーンだった。
そしてJulianne Mooreがこれまた強烈。この人が演じたGracieという役の性格というのは結局よくわからないところがあるが,それを演じ切るのがJulianne Mooreたるところ。何をやっても上手い人だと改めて感心してしまったが,まさにNatalie Portmanとの火花散る共演ぶりって感じだろう。
こういう心理劇ゆえに見ていてかなりしんどい部分はあるし,解釈に困る部分もない訳ではないが,演技ってのはこういうもんだと思わせる主役二人に敬意を表して星★★★★☆としよう。
そしてもう一点,この映画の音楽は71年の映画「恋("The Go-Between")」のためにMichel Legrandが書いたメロディがアダプテーションされているのだが,これがこの映画に実にフィットしていたことは追記しておきたい。
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