今更ながらのEric Dolphyの"Outward Bound"。
"Outward Bound" Eric Dolphy (Prestige)
私は結構なEric Dolphy好きだとは思っているが,なぜかPrestigeのリーダー作は買うのは"Far Cry"以降でいいや,みたいなところがあって,それを長年貫いてきたのだが,ここに来て,やっぱりDolphyのアルバムはちゃんと「保有」すべきだと考え始め,初リーダー作の本作と,2作目"Out There"を合わせて購入するに至った。今やストリーミングで聞けるのだからそれで十分だという考え方もある訳だが,やはりEric Dolphyは例外の位置づけに置くべき人だと思ったのだ。
Eric Dolphyについては多くを語る必要はないが,この初リーダー作とて,冒頭の"G.W."からして,リリースされた当時は何と変わった音楽だと思われたであろうことは想像に難くない。だからこそ付いたアルバム・タイトルも"Ourward Bound"だったんだろうなぁというところで,ある意味伝統的なサウンドから既に「逸脱」していたことは明らかだ。本作にしろ,2作目にしろ,タイトルに"Out"が付いているのは象徴的であり,ジャズの枠を広げたことは間違いないだろう。
ではOrnette Colemanはどうなのかというと,Ornette Colemanも同様にジャズの枠を広げたにしろ,Eric Dolphyとではサウンドに違いがあって,音楽的なルーツが異なっているというところだろう。よく指摘されることだが,Ornette Colemanはよりブルーズ寄り。本作においても,基本的にEric Dolphyはジャズの「技法」に則ってはいるが,「語法」あるいは「話法」が違うと言ってもよいように思える。改めて二人が共演した"Free Jazz"も聞かないといかんなぁ。いずれにしても,"On Green Dolphin Street"をこうしちゃうかねぇと感じさせる部分もあって,現在の耳で聞いても十分刺激的な音楽を1960年というタイミングでやっていたことは,今にして思えば凄いことであった。
相当に期待されていたであろうことは,本作の共演者の面々を見ても明らかだが,バックのピアノ・トリオは比較的コンベンショナルに響く中で,Freddie HubbardはDolphyの語法に相応について行っているところは立派。後にややアバンギャルドな方向へ一瞬向かうFreddie Hubbardもこういう「逸脱」路線に魅力を感じていたのかもしれないと感じられた。そう言えばFreddie Hubbardも"Free Jazz"に参加していたしねぇ。とにもかくにも,今聞いても十分に楽しめてしまうところが素晴らしいと思えた一作。星★★★★☆。それにしても,Eric Dolphyはアルト,バスクラ,フルートどれを取っても名人の領域だわ。
Recorded on April 1, 1960
Personnel: Eric Dolphy(as, b-cl, fl), Freddie Hubbard(tp), Jackie Byard(p), George Tucker(b), Roy Haynes(ds)
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