Antonio Faraoの新作がCriss Crossから出るとは思わなかった。
"Tributes" Antonio Farao(Criss Cross)
ジャケを見て,相変わらずの強面ぶりに笑ってしまったが,久々のAntonio Faraoである。私がAntonio Faraoについてこのブログに記事をアップしたのは2015年の"Boundaries"にまで遡る。その間,2017年にエレクトリックに傾斜した"Eklektik"もリリースしているが,私はストリーミングで聞いただけ(のはず)で,記事としてはアップしていなかったし,単独リーダー作はそれ以来なので,実に久しぶりということになる。
暫くリーダー作が途絶える中,これまでEnjaやVerveからアルバムをリリースしていたAntonio FaraoがCriss Crossと契約するとは全く想定していなかった。だがライナーの謝辞にAlex Sipiaginの名前があり,そしてライナーにも記述されているが,Criss Crossと縁深いSipiaginがAntonio FaraoとCriss Crossの間を取り持ったとのことだ。
それはそれとして,私としては今回バックを支えるのがJohn PatitucciとJeff Ballardという強力リズム隊であるから,本作のリリースがアナウンスされた時から,期待値は相当に大きかった。ストリーミングではとっくに公開されていて,既にそのよさは把握していたたが,その現物がようやくデリバリーされたので早速聞いた。
Antonio Faraoのピアノは基本的にはハード・ドライヴィングな感覚が強いと思っているが,本作もそうした感覚は維持されているが,一部リリカルな部分も加わってバランスのよいピアノ・トリオ・アルバムになっていると思う。全10曲中8曲がAntonio Faraoのオリジナルで,それに加えてCole Porterの"I Love You"とChick Coreaの"Matrix"というプログラムを通じて,硬軟交えた演奏は大いに楽しめる。
このアルバムはタイトル通り,いろいろな人へのトリビュートの意味が込められていることがライナーにも記されている。直接的な影響,間接的な影響の双方があると思うが,"MT"や"Song for Shorter"のようにストレートにMcCoy TynerやWayne Shorterに捧げられているタイトルに加えて,Chick CoreaやHerbie Hancock,Michel Petrucciani,Didier Lockwoodの名前がライナーには見られて,なるほどなぁなんて思っていた。
いずれにしても,ピアノ・トリオのアルバムとしてはなかなかに楽しめるアルバムであり,久々のアルバムへのご祝儀の意味も含めて星★★★★☆としよう。
Recorded on July 26, 2023
Personnel: Antonio Farao(p), John Patitucci(b), Jeff Ballard(ds)
本作へのリンクはこちら。
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コメント
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こんにちは。
何とアントニオ・ファラオのアルバムがCriss Crossから、それもなかなかのメンバーで出るということで、久しぶりに楽しく聴けました。
確かにお腹がいっぱいになるような音数の多さですが、個人的にはこういうピアノは好きなので、それは全然問題ありません。Criss Crossレーベルは、代が変わっても、いい仕事をするなあ、と思いました。
当方のブログアドレスは下記の通りです。
https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2024/06/post-417084.html
投稿: 910 | 2024年8月 4日 (日) 16時31分
910さん,こんばんは。リンクありがとうございます。
>何とアントニオ・ファラオのアルバムがCriss Crossから、それもなかなかのメンバーで出るということで、久しぶりに楽しく聴けました。
確かにびっくりですよねぇ。最初はレーベル・カラーとはちょっと違う気がしました。
>確かにお腹がいっぱいになるような音数の多さですが、個人的にはこういうピアノは好きなので、それは全然問題ありません。Criss Crossレーベルは、代が変わっても、いい仕事をするなあ、と思いました。
Antonio Faraoの個性なんでしょうが,確かに音数は多いですよね。でもこういうのにウハウハしてしまう自分がいるのも事実です。結局好きなんですね(笑)。Criss Crossは先代が亡くなって,レーベルの継続が疑問視されていたことを考えると,続いてよかったですよねぇというのが正直なところです。
投稿: 中年音楽狂 | 2024年8月 4日 (日) 18時11分
閣下、こちらもリンクをありがとうございました。m(_ _)m
私も、アントニオ・ファラオの新譜がクリス・クロスから出るって、びっくりでした。
しかも、かなりのいいメンツで。。
ハード・ドライビングだけど、バラッドもビターな感じが素敵で、、
怖いジャケットからは想像つかない内容でしたわ。
私のリンク先も置いていきます。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2024/07/post-2c3ba2.html
投稿: Suzuck | 2024年8月 5日 (月) 18時11分
Suzuckさん,更に続けておはようございます。こちらもリンクありがとうございます。
>私も、アントニオ・ファラオの新譜がクリス・クロスから出るって、びっくりでした。
>しかも、かなりのいいメンツで。。
レーベルのイメージとはちょっと違うって気もしましたが,結果は全然問題なしでした。
>ハード・ドライビングだけど、バラッドもビターな感じが素敵で、、
>怖いジャケットからは想像つかない内容でしたわ。
相変わらずのAntonio Faraoでしたね。強面ぶりも不変でした(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2024年8月 6日 (火) 07時21分