Isabelle Faustがバッハの無伴奏を弾くとあっては行かねばならん!
Isabelle Faustは私の中では極めて信頼できるヴァイオリニストだと思っている。彼女のCDはほぼ私が満足できるものばかりで,現在のヴァイオリニストの中では一番だと言っても過言ではない。彼女が昨年出したバロック音源集の"Solo"も,私は昨年のベスト作の一枚に選んでいるぐらいで,何を弾いてもうまいのだ。
そんな彼女が,バッハの無伴奏ソナタとパルティータの全曲演奏会を二夜に渡ってやると知ったからには,これは行くぞ!と思って私は二夜分のチケットをすかさずゲットしていた。しかし,浮世の義理とでも言うべき「諸般の事情」により,第二夜に行くことがかなわなくなってしまい,シャコンヌが一番聞きたかったという思いを抱えていたから,ある意味忸怩たる思いで第一夜に行ってきた。
今回のヴェニューは横浜市青葉台のフィリア・ホールだったが,元町田市民の私としては,町田時代なら近場と言えたが,引っ越した現在では何とも遠いなぁと思いつつ,1時間も掛からないのだから贅沢は言ってはならん。このフィリア・ホールはキャパ500人ぐらいのホールだが,どうせなら同じようなキャパの紀尾井ホール辺りでやって欲しいというのがわがままな本音だったが,まぁそれは言いっこなしってことにしよう。私は二十数年前,このホールに子供のためのコンサートみたいな企画で当時3~4歳ぐらいの娘ともども行って以来の再訪であった。その時はジブリの音楽とかやっていたなぁ...。
それでもって私が行った第一夜はソナタの1番/3番,パルティータの1番というプログラムであったが,ステージに登場した瞬間,何と笑顔が素敵な人だと思ったというのが正直なところである。無茶苦茶第一印象の良い人だ。そんなIsabelle Faustが一旦演奏を始めると表情はぐっと引き締まりながらも,ある意味「踊りながら」のようにヴァイオリンを演奏する姿に釘付けになってしまったのであった。音色は素晴らしく,アーティキュレーションも見事なのだが,こんな曲をある意味身体を揺らしながら弾いてしまうというところに驚きつつも,演奏には満足していた私であった。
そもそもIsabelle Faustは最初のアルバムにバルトークの無伴奏を選んでしまうような人なので,ある意味チャレンジャーと言ってもよいが,今回のバッハは余裕で弾きこなしたってところか。それでも満席の聴衆からは大喝采を受けていたから,ほかのオーディエンスにとっても満足感が高い演奏だったと思う。やっぱりこの人は「できる人」だと思った。だからこそ,第二夜のシャコンヌが聞けないことは痛恨事ではあるのだが,それはCDを聞いて補うことにしたい。ってことで,帰り道も遠いなぁとは思いつつ,心地よい気分で家路についた私であった。
Live at フィリア・ホール on June 12, 2024
Personnel: Isabelle Faust(vln)
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